説明

半導体光増幅器及び光通信システム

【課題】利得、飽和出力の低下を抑制する半導体光増幅器を提供する。
【解決手段】半導体光増幅器は、半導体基板1と、その上方に形成されバリア層2に挟まれたコラムナ量子ドット層を複数層含み、各コラムナ量子ドット層は、量子ドット層とサイドバリア層7とを交互に成長し、サイドバリア層が量子ドットの側面を囲む活性層21と、活性層上方に形成されたクラッド層25と、クラッド層と半導体基板に接続された電極16、27と、を有し、複数のサイドバリア層を積層した積層部のバンド構造の価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、バリア層2の価電子帯のバンド端準位と同等であるか、より高く、さらに、コラムナ量子ドット層の最上のサイドバリア層とその第2導電型電極側のバリア層との間に配置され、価電子帯のバンド端準位が、バリア層の価電子帯のバンド端準位よりも高く、サイドバリア層の価電子帯のバンド端準位よりも低い中間層8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを用いて光信号を増幅する半導体光増幅器(SOA;semiconductor optical amplifier)及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信需要の飛躍的な増大に伴い、加入者に身近なメトロ・アクセス系にも大容量で高速なフォトニックネットワークの適用範囲が広がっている。特に、LANシステムのOTDM−NIC(光時分割多重−ネットワークインターフェースカード)への集積化に向けて、高効率で低消費電力のSOAが必要である。また、ペルチエ素子を用いず、シリコンデバイスと共用できるようにするため、85℃まで良好な温度特性が望まれる。
【0003】
ストランスキークラスタノフ(S−K)モードにより形成した自己組織化量子ドットは、横方向サイズに対して高さが極端に低い扁平な形状を有し、偏波依存性を有する。そこで扁平な量子ドットを複数段近接積層させた量子ドットを開発し、その構造を最適化することで偏波無依存性を実現した。このような構造の量子ドットをコラムナ量子ドットと定義した。コラムナ量子ドットも量子効果により離散的準位を形成し、温度安定性も高くなると期待される。
【0004】
コラムナ量子ドットを形成するプロセスパラメータ、特に活性層の成長時の成長温度、成長厚、成長ガス流量比(III族ガスの流量/V族ガスの流量)を調整することにより、コラムナ量子ドットの特性を種々制御することができる。例えば、量子ドット層を形成した後、埋め込み層を形成し、基板温度を量子ドット形成温度より上げることにより、量子ドットの頂部を平坦化できる(例えば、特開2007−42840号)。
【0005】
例えば、(001)面を主面とするn型InP基板上に、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)により、基板に格子整合するn型InPバッファ層とn型InGaAsP下地層(バリア層とも呼ぶ)を600℃で成長し、基板温度を460度に降温して、基板より格子定数の大きなInAs量子ドット層と基板より格子定数の小さなi型InGaAsPサイドバリア層を成長し、基板温度を500℃に昇温して平坦化を行い、再び基板温度を460℃に降温してInAs量子ドット層、InGaAsPサイドバリア層を成長し、基板温度を500℃に昇温して平坦化を行う工程を必要回数繰り返してコラムナ量子ドットを形成し、下地層と同じ組成のp型InGaAsPバリア層、p型InPクラッド層を成長する。
【0006】
十分な利得特性を得るためには、コラムナ量子ドット層を複数層、バリア層を介して積層することができる。偏波無依存のコラムナ量子ドットを複数層形成するには、500℃以下の温度で下部コラムナ量子ドット構造、その上の第1のInGaAsPバリア層を形成し、その後500℃以上で第2のInGaAsPバリア層を形成し、基板温度を降温して、第2のコラムナ量子ドット構造を形成することができる(例えば特開2007−157975号)。第2のバリア層の成長温度を高くすることにより、結晶性を向上し、成長速度を高くすることができる。
【0007】
コラムナ量子ドット形成に、以下のモデルが用いられる。各量子ドット層が離散的量子ドット領域とその周囲に広がるウェット層で形成され、量子ドットの側面にサイドバリア層が接する層構成が複数層積層され、量子ドットの上に量子ドットが積層されてコラムナ量子ドットを形成し、その周囲にはウェット層とサイドバリア層とが交互に積層された領域が形成される。コラムナ量子ドット周辺に積層構造によりミニバンドが形成されている。
【0008】
キャリアが有効に量子ドットで消費されるようにするには、ミニバンドの基底量子準位をバリア層の基底量子準位より高くし、バリア層内のキャリアはミニバンドに向かわないようにすることが考えられる(例えば、特開2010−40872号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−42840号公報
【特許文献1】特開2007−157975号公報
【特許文献1】特開2010−40872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、ミニバンドの基底量子準位がバリア層の基底量子準位より高くなる構成のSOAを試作し、温度特性が改善されることを確認した。ところが、コラムナ量子ドット層を複数積層させたSOAにおいて、利得と、飽和出力が低下するという新たな問題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施例によれば、
n型の半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成され、バリア層に挟まれたコラムナ量子ドット層を複数層含む活性層であって、各コラムナ量子ドット層は、量子ドット層とサイドバリア層とを交互に成長して、量子ドットの上方に量子ドットが積層されてコラムナ量子ドットを形成し、サイドバリア層が量子ドットの側面を囲む、活性層と、
前記活性層上方に形成された、p型クラッド層と、
前記p型クラッド層に接続されたp側電極と、
前記半導体基板に接続されたn側電極と、
を有し、前記コラムナ量子ドットの側部で前記複数のサイドバリア層を積層した積層部のバンド構造の価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位と同等であるか、より高い半導体光増幅器であって、
さらに、前記コラムナ量子ドット層の前記p側電極に最も近い最上のサイドバリア層と隣接する前記バリア層との間に配置され、価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位よりも高く、前記サイドバリア層の価電子帯のバンド端準位よりも低い中間層、
を備えた半導体光増幅器
により解決が提供される。
【発明の効果】
【0012】
中間層を挿入することで積層部界面におけるキャリアの蓄積、及び漏れ出しが抑制でき、量子ドットSOAの利得低下及び飽和出力低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】と、
【図1−2】図1Aは、本発明の要部を示す断面図、図1B、1C、1Dは、実施例1による半導体光増幅器の要部断面図、全体を示す一部破断斜視図、バンドダイアグラムである。
【図2−1】と、
【図2−2】と、
【図2−3】図2A〜2I、2K〜2Mは、実施例1による半導体光増幅器の製造プロセスを示す断面図、図2Jは図2Iの状態の平面図、図2Nは図2Mの状態の一部破断斜視図である。
【図3】図3A,3Bは、実施例2による半導体光増幅器の要部断面図、及びバンドダイアグラムである。
【図4】図4A,4Bは、実施例3による半導体光増幅器の要部断面図、及びバンドダイアグラムである。
【図5】半導体光増幅器を用いた光通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】図6A、図6Bは、参考例による半導体光増幅器の要部断面図、バンドダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図6Aは、参考例によるSOAの構成を概略的に示す断面図である。n型InP基板101の上に下バリア層102−1、第1コラムナ量子ドット構造103−1、第1中間バリア層102−2、第2コラムナ量子ドット構造103−2、第2中間バリア層102−3、と必要数コラムナ量子ドット構造とバリア層とが交互に積層され、最上バリア層上にp型InPクラッド層109が積層されている。なお、InP基板の上に、n型InPクラッド層を形成してもよい。
【0015】
各コラムナ量子ドット構造103は、分散配置された量子ドット104と、量子ドット104に連続し、その周囲に延在するウェット層105を含むInAs層106と、量子ドット104の側面に接し、量子ドット周囲ではウェット層105と交互に積層されたサイドバリア層107とを含む。2層目以降の量子ドット104は下地層の量子ドット104の上に選択的に形成され、量子ドットが積層されたコラムナ量子ドット111を形成する。コラムナ量子ドット111の周囲には、ウェット層105とサイドバリア層107との積層部112が形成される。ウェット層105とサイドバリア層107の各厚さは、量子効果を生じる範囲であり、バルク状態とは異なる、いわゆるミニバンドを構成する。
【0016】
例えば、バリア層102、サイドバリア層107を同じ組成のInGaAsPで形成するとする。積層部はサイドバリア層102と大幅にバンドギャップの狭いInAsウェット層の交互積層で形成され、その基底量子準位は両者の中間になることが考えられる。すると、積層部のバンドギャップがバリア層のバンドギャップよりも狭くなり、キャリアがバリア層から積層部に抜けてしまい、この部分のポテンシャルが下がることでコラムナ量子ドットの温度特性が劣化する可能性が大きい。
【0017】
積層部の実効的な基底量子準位を、バリア層の基底量子準位以上のエネルギとするには、サイドバリア層107を、バルク状態のバンドギャップがバリア層のバンドギャップより大きな材料で形成することが必要であろう。例えば、バリア層102は、In0.85Ga0.15As0.3270.673で形成し、サイドバリア層107はAlAsで形成する。
【0018】
図6Bは積層部112のポテンシャルプロファイルの概略図である。横方向にエネルギを取り、伝導帯端部のエネルギをE、価電子帯端部のエネルギをEで示す。バリア層102のバンドギャップは、積層部112のミニバンドのバンドギャップより狭い。言い換えれば、サイドバリア層107とウェット層105の積層部112は、バリア層102より高いバンドギャップを有する。
【0019】
このコラムナ量子ドット構造を用いたSOAを試作し、材料利得の温度特性が改善することを確認した。ところが、利得、飽和特性が低下するという新たな問題が生じた。
【0020】
図6Bにおいて、バリア層102の価電子帯端部のエネルギEは、積層部112の価電子帯端部より低い。上方のp型InP層109から供給された正孔は、バリア層102と積層部112の界面で遮られ、蓄積される可能性を有する。
【0021】
界面に正孔が蓄積されると、p型InP層109から下方に供給される正孔は、蓄積電荷による反発力を受け、下段の構成要素に十分伝達されない状況が生じ得る。飽和出力の低下が生じ得る。
【0022】
この現象を防止するためには、バリア層102と積層部112との界面におけるポテンシャルバリアの高さを実効的に低くすることが望まれる。バリア層102のバンドギャップを高くすることによっても、バリア層102と積層部112との間のポテンシャルバリアは低減できる。
【0023】
そこで、バリア層102のバンドギャップを高くした半導体光増幅器を試作した。ところが、利得が低下し、半導体光増幅器の特性は改善しなかった。その可能性として、コラムナ量子ドットの光閉じ込めの減少によるモダールゲインの減少と、バンドギャップを高くしたバリア層とInPクラッド層とのバンド不連続の差が小さくなり、バリア層からクラッド層にキャリアが漏れ出すことが考えられる。利得の低下は、光閉じ込めの減少から見積もった値よりも小さな値であった。また、近視野像の評価でInPクラッド層からも発光が観測された。これらの結果から、InPクラッド層キャリアの漏れが利得低下の主原因になっていると考えられる。そこで、本発明者は、以下の説明する構造を考察した。
【0024】
図1Aに示すように、複数段のコラムナ量子ドット構造3(積層部12)の各々のp側電極側において、バリア層2とコラムナ量子ドット構造3(積層部12)との間に中間層8を挿入することにより、コラムナ量子ドット周辺部における積層部12とバリア層2との間の正孔に対するポテンシャルバリアを実効的に低減することを着想した。中間層8の価電子帯端部のエネルギは、バリア層2の価電子帯端部のエネルギより高く、積層部12の価電子帯端部のエネルギより低く選ぶ。中間層8の厚さは、正孔トラップを抑制できる最低限必要な厚さとすることが、好ましい。
【0025】
図1Bは、実施例1による半導体光増幅器の要部を示す断面図である。n型InP基板1の上に、必要に応じてn型InPバッファ層を介して、第1バリア層2−1、第1コラムナ量子ドット構造3−1、第1中間層8−1、第2バリア層2−2の積層構造を形成する。第2バリア層2−2の上に、第2コラムナ量子ドット構造3−2、第2中間層8−2、第3バリア層2−3、・・・と複数段の積層構造を形成する。第2以降の積層構造も、第1段の積層構造同様の構造を有する。
【0026】
コラムナ量子ドット構造3においては、InAsの量子ドット層6とサイドバリア層7とが交互に積層される。InAsの量子ドット層6は、InPの半導体基板より大きな格子定数を有し、量子ドットを形成する。InAsの量子ドット層を成長すると、当初全体に拡がる濡れ層を形成し、その後、局所的に厚くなって量子ドット4を形成し、その周囲にウェット層5を残す。例えば、底面サイズ20nm×25nm、高さ1nm程度の量子ドットを密度7×1010cm−2で形成した量子ドット層6を形成する。量子ドット層6とサイドバリア層7を交互に5対〜16対積層すると、量子ドット4の上に量子ドット4が積層され、コラムナ量子ドット11が形成される。サイドバリア層7は、半導体基板より小さな格子定数を有し、歪みを緩和する機能を有する。コラムナ量子ドット11間の領域は、サイドバリア層7とウェット層5が積層された積層部12を構成する。
【0027】
偏光無依存のコラムナ量子ドット11は、積層数の制約を受ける。所望の厚さを有する活性層を形成するには、コラムナ量子ドット層を多段構成とし、コラムナ量子ドット層間はバリア層で分離する必要がある。本実施例においては、各コラムナ量子ドット層のp側電極側に中間層8を介して、バリア層2を配置する。
【0028】
例えば、バリア層2はInP基板に格子整合する、厚さ30nmのIn0.85Ga0.15As0.320.68で形成し、サイドバリア層は引張歪み−0.8%、厚さ1nmのIn0.83Ga0.17As0.140.86で形成する。InAs量子ドット4の厚さも約1nmとなる。中間層8は、例えば、InP基板に格子整合する、厚さ10nmのIn0.89Ga0.11As0.240.76で形成する。量子ドット層6、サイドバリア層7の厚さに較べて、中間層8の厚さは1桁程度厚く、バリア層2はさらに厚い。サイドバリア層7、ウェット層5が積層全体として所謂ミニバンドを形成するのに対し、中間層8、バリア層2は、バルク材料の性質を反映した層となる。
【0029】
図1Cに示すように、InP基板1上に複数段のコラムナ量子ドットを含む活性層21を形成した後、ストライプ形状のメサエッチングを行ない、半絶縁性InP層22を成長し、メサ上方に酸化シリコン等のマスクを形成し、n型InP層24、p型InP層25の一部を成長する。メサの両側に電流狭窄用のpn接合が形成される。ここで酸化シリコン等のマスクを除去する。さらに、p型InP層25の残り厚さを成長する。メサの両側で、表面からn型InP層24を貫通するリーク遮断用溝26をエッチングし、メサ上方にp側電極27を形成する。基板を劈開してキャビティを形成する。例えば、キャビティの幅Wは、約2μm程度、長さLは2mm程度である。活性層21に対して、上方のp側電極27から正孔が供給され、下方の基板から電子が供給される。
【0030】
図1Dは、コラムナ量子ドット11間に形成される積層部12のバンドダイアグラムを示す。InP基板1、バリア層2は、バルク材料の特性で定まるギャップを有する。ウェット層5、サイドバリア層7は、いわゆるミニバンドを構成し共通の量子準位を規定する。実線で示す基底準位のバンドギャップは、バリア層のバンドギャップよりも広い。右側(上側)のバリア層2と積層部12の間に配置された中間層8は、バルク状態のサイドバリア層7のバンドギャップより低く、バリア層2のバンドギャップより高いバンドギャップを有する。価電子帯の正孔に対するエネルギは、上から下に向かって高くなる。中間層8の価電子帯端部のエネルギは、バリア層2の価電子帯端部より高く、積層部12の価電子帯端部より低い。中間層8の価電子帯端部のエネルギは、バリア層2の価電子帯端部より10mV以上高く、積層部12の価電子帯端部より10mV以上低いことが好ましい。
【0031】
上方に形成するクラッド層に対するバリア層2のポテンシャルは従来と変わらず、バリア層と積層部12との間の正孔に対するポテンシャルバリアが、絶対値が小さくなる2段のポテンシャルバリアに分割されている。正孔が界面でトラップされることが抑制され、バリア層全体に均一に拡散するようになり、全コラムナドットにキャリアが十分供給されるようになると期待される。また、本構造を用いると、バリア層全体を中間層と同じ材料組成の材料を用いた時と比較して、InPクラッド層とバリア層のバンド不連続が十分な値となるため、クラッド層へのキャリアの漏れが低減され、光閉じ込めも十分となる。シミュレーションによれば、中間層を挿入した量子ドットSOAは、良好な温度特性を維持し、中間層無しの場合と比べ、利得、飽和出力が向上することとなった。
【0032】
図2A〜図2Nを参照して、実施例1の半導体光増幅器の製造プロセスを説明する。図2Aに示すように、n型InP基板1の上に、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)により、下側バリア層14、複数段のコラムナ量子ドット構造を含む活性層21、上側バリア層16を成長する。活性層21に含まれる複数段のコラムナ量子ドット構造の各々は、量子ドット層とサイドバリア層との交互積層上に中間層を配置し、この上下にバリア層を配置した構成を有する。任意数のコラムナ量子ドット構造を、積層する。バリア層は光を伝播させる光導波路層の役割もする。
【0033】
図2Bに示すように、上側バリア層16、活性層21、下側バリア層14の積層をメサ形状にパターニングする。上側バリア層16上にストライプ状のレジストマスクを形成し、積層に対してエッチングを行なう。その後レジストマスクは除去する。
【0034】
図2Cに示すように、メサ構造を埋め込むように、半絶縁性InP層22をMOVPEで成長する。メサストライプ上方の半絶縁性InP層22上に酸化シリコンのマスク23を形成する。次に行うエピタキシャル成長を生じさせないマスクとして機能する層であり、形成方法はCVDでもスパッタリングでもよい。酸化シリコンのマスク23の両側に露出しているInP層22上にn型InP層24、p型InP層25の一部をMOVPEで成長し、pn接合を形成する。
【0035】
図2Dに示すように、酸化シリコンのマスク23を除去し、p型InP層25の残りのInP上側クラッド層を成長し、InP層22の露出表面も覆う。InP下側クラッド層はInPバッファ層及びInP基板1の一部がその役割をする
図2Eに示すように、レジストマスクを用い、メサストライプの両側に溝26をエッチングする。n型InP層を貫通する溝26をエッチングすることにより、リーク電流を低減する。なお、溝は必須要件ではない。
【0036】
図2Fに示すように、溝26表面を覆って、酸化シリコン、窒化シリコン等のパッシベーション膜31をCVD等によって形成する。
【0037】
図2Gに示すように、レジストマスクなどを用いて、電極接触用の窓(開口)をパッシベーション膜31中に形成する。
【0038】
図2Hに示すように、窓を形成したパッシベーション膜31上に、メッキシード層32を形成する。
【0039】
図2Iに示すように、メッキ領域を開口内に露出するレジストパターン33をシード層32上に形成する。
【0040】
図2Jは、レジストパターン33の平面図を示す。
【0041】
図2Kに示すように、レジストパターン33の開口内に露出したシード層32上に電極層34を電解メッキで形成する。
【0042】
図2Lに示すように、レジストパターンを除去し、露出したシード層32をエッチング、ミリングなどで除去する。厚いメッキ層34はほとんどが残る。
【0043】
図2Mに示すように、n型InP基板1の裏面上にn側電極35をスパッタリング、蒸着などで形成する。
【0044】
図2Nは、形成された半導体光増幅器の構造を概略的に示す一部破断斜視図である。図1Bに示した構造に対応する。なお、以上説明した製造プロセスは、制限的なものではない。特許文献1,2,3記載の種々の技術内容を組み合わせることもできる。
【0045】
図3Aは、実施例2による半導体光増幅器の要部構成を示す断面図である。実施例1と較べて異なる点を主に説明する。実施例1においては量子ドット層6とサイドバリア層7を交互に積層し、層6,7の対を複数形成した後、中間層8を形成した。実施例2においては、最上層の量子ドット層6を成長した後、(対応するサイドバリア層は形成せず、)直接中間層8を成長する。
【0046】
図3Bは、実施例2の半導体光増幅器の積層部のバンドダイアグラムを示す。コラムナ量子ドット構造3の最上層がウェット層となり、バリア層2との間に、バリア層2よりバンドギャップが広く、バルク状態のサイドバリア層7よりバンドギャップが狭い中間層8が配置されている。中間層8のバリア層2と逆側にサイドバリア層が存在しないので、ホールトラップの抑制にはより効果的となる。
【0047】
図4Aは、実施例3による半導体光増幅器の要部構成を示す断面図である。実施例2と較べて異なる点を主に説明する。実施例2においては量子ドット層6とサイドバリア層7を交互に積層し、最上層の量子ドット層6を成長した後、中間層8を成長した。中間層8の組成は厚さ方向で一定であった。実施例3においては、中間層8を組成一定の均一中間層8−1fと組成が徐々に変化するグレーデッド中間層8−1gの積層で形成する。グレーデッド中間層8gの組成は、下方から、均一中間層8fに近い組成からバリア層2に近い組成に変化する。
【0048】
図4Bは、実施例3の半導体光増幅器の積層部のバンドダイアグラムを示す。
中間層8が均一組成の均一中間層8fとグレーデッド組成のグレーデッド中間層8gで構成され、ポテンシャルポロファイルに傾斜部が導入されている。実施例2と較べて、右側バリア層2との界面におけるエネルギ段差がエネルギ傾斜に置換された形状となっていると考えることができよう。ホールトラップの抑制にはより効果的となる。なお、実施例1の構成にグレーデッド中間層を導入することもできる。
【0049】
また、図4Aのコラムナ量子ドット構造3−1の下方に破線で示したように、下方のバリア層2と量子ドット層6との間にサイドバリア層と同等組成の中間層8−1sを形成することもできる。この場合、積層部の構成としては、最上層のサイドバリア層を下方に移動したと考えることも可能であろう。
【0050】
上述の各実施例の半導体デバイスを他の素子とともに実装して光モジュールを構成することができる。このような光モジュールを用いて、光通信用の送信装置や受信装置に設けられ、光通信システム(光通信システム)を構成することができる。PLCプラットフォーム上に、SOAアレイ、CMOSからなるマルチプレクサ/デマルチプレクサ(MUX/DEMUX)、ドライバ/アンプ回路、光クロック、光源/PDなどを実装することによって、集積化モジュール(光モジュール)としての光ゲートを構成できる。
【0051】
図5に示すように、このような光ゲート26を用いて、OTDM送信器30のフォーマット変換器31やOTDM受信器32のデマルチプレクサ(DEMUX)33を構成し、光通信システム34を構成することができる。
【0052】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、ホールトラップに関係するのは価電子帯の構造であり、上記実施例でバンドギャップの大小で説明した要件は価電子帯の端部のエネルギの高低の関係であればよい。コラムナ量子ドットSOAの構成、製造プロセスに関しては、特許文献1,2,3それぞれの発明を実施するための最良の形態の欄の開示内容を取り入れることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 InP基板、
2 バリア層、
3 コラムナ量子ドット構造、
4 量子ドット、
5 ウェット層、
6 (InAsの)量子ドット層、
7 サイドバリア層、
8 中間層、
8f 均一中間層、
8g グレーデッド中間層、
11 コラムナ量子ドット、
12 積層部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型の半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成され、バリア層に挟まれたコラムナ量子ドット層を複数層含む活性層であって、各コラムナ量子ドット層は、量子ドット層とサイドバリア層とを交互に成長して、量子ドットの上方に量子ドットが積層されてコラムナ量子ドットを形成し、サイドバリア層が量子ドットの側面を囲む、活性層と、
前記活性層上方に形成された、p型クラッド層と、
前記p型クラッド層に接続されたp側電極と、
前記半導体基板に接続されたn側電極と、
を有し、前記コラムナ量子ドットの側部で前記複数のサイドバリア層を積層した積層部のバンド構造の価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位と同等であるか、より高い半導体光増幅器であって、
さらに、前記コラムナ量子ドット層の前記p側電極に最も近い最上のサイドバリア層と隣接する前記バリア層との間に配置され、価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位よりも高く、前記サイドバリア層の価電子帯のバンド端準位よりも低い中間層、
を備えた半導体光増幅器。
【請求項2】
前記量子ドット層は前記半導体基板より大きな格子定数を有し、前記サイドバリア層は前記半導体基板より小さな格子定数を有する請求項1に記載の半導体光増幅器。
【請求項3】
前記半導体基板はInP基板であり、前記量子ドット層はInAs層であり、前記サイドバリア層はInGa1−xAs1−y層であり、前記中間層はInGa1−pAs1−q層(p>x、q>y)である請求項2に記載の半導体光増幅器。
【請求項4】
前記最上のサイドバリア層は、最上層の量子ドットの側面に接する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体光増幅器。
【請求項5】
前記最上のサイドバリア層は、2層目の量子ドットの側面に接する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体光増幅器。
【請求項6】
前記各コラムナ量子ドット層の最上の量子ドットの側面は、前記中間層に接する請求項5に記載の半導体光増幅器。
【請求項7】
さらに、
前記中間層と、隣接する前記バリア層との間に、組成が前記中間層の組成に近い組成から前記バリア層の組成に近い組成まで徐々に変化するグレーデッド層、
を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体光増幅器。
【請求項8】
前記量子ドット層は局所的に厚さが厚い量子ドットとその周辺に延在するウェット層とを含み、前記サイドバリア層は前記ウェット層と交互に積層されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体光増幅器。
【請求項9】
半導体光増幅器を含む光通信システムであって、前記半導体光増幅器は、
n型の半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成され、バリア層に挟まれたコラムナ量子ドット層を複数層含む活性層であって、各コラムナ量子ドット層は、量子ドット層とサイドバリア層とを交互に成長して、量子ドットの上方に量子ドットが積層されてコラムナ量子ドットを形成し、サイドバリア層が量子ドットの側面を囲む、活性層と、
前記活性層上方に形成された、p型クラッド層と、
前記p型クラッド層に接続されたp側電極と、
前記半導体基板に接続されたn側電極と、
を有し、前記コラムナ量子ドットの側部で前記複数のサイドバリア層を積層した積層部のバンド構造の価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位と同等であるか、より高い半導体光増幅器であって、
さらに、前記各コラムナ量子ドット層の前記p側電極に最も近い最上のサイドバリア層と隣接する前記バリア層との間に配置され、価電子帯のバンド端準位が、エネルギ的に、前記バリア層の価電子帯のバンド端準位よりも高く、前記サイドバリア層の価電子帯のバンド端準位よりも低い中間層、
を備える、
光通信システム。
【請求項10】
OTDM送信器、またはOTDM受信器を構成する、請求項9記載の光通信システム。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16539(P2013−16539A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146283(P2011−146283)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】