説明

半導体加工のための一時的ウェハー接着方法

一時的ウェハー接着のための方法は、硬化性接着剤組成物、及び、この硬化性接着剤組成物と組み合わせた分解剤、を採用する。本接着剤組成物は、(A)ケイ素に結合した不飽和有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、(B)組成物を硬化させるのに十分な量の、ケイ素に結合した水素原子を分子あたり平均少なくとも2個含有する有機ケイ素化合物、(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、及び(D)塩基、を含んでもよい。この組成物を硬化させることにより調製されるフィルムは、熱により分解可能であり、及び、除去可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、硬化性接着剤組成物を用いて基材にウェハーを接着するための方法に関する。接着剤を除去するための方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
市場圧力が製造業者をより薄いダイパッケージへと向かわせるにあたり、包装の全高を低減させるための一方法は、シリコンダイを薄くすることであった。この薄化操作は、ダイシンギュレーション前にシリコンウェハー上で最も効率的に行われる。しかしながら、ウェハーはより大きくなりダイはより薄くなるため、ウェハー全体の構造的一体性は減少する。結果として、大きく薄いウェハーは、既存の装置及び材料を使用して加工すると、破断する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に対する一解決案は、ウェハーを強化基材(別のウェハー又はウェハーキャリア)に接着剤で結合して、機械的強度を増加させ、例えば、薄化といった所望の加工を行い、シンギュレーションの前にウェハーを剥離させる。このプロセスにおいて接着剤及び基材は機械的支持体として作用して、加工中構造的安定性をもたらす。
【0005】
半導体産業において、ウェハーの加工を可能にするための特性を有する接着剤を使用する一時的ウェハー接着プロセスに対して必要が存在する。この接着剤は、産業的に受容可能な方法(スプレーコーティング、印刷、ディッピング又はコーティング)により適用可能であるべきであり、数時間にわたる200℃以上の温度での加工に持ちこたえることが可能であるべきであり、一般に使用される様々なエレクトロニクス用化学薬品に対して頑健であるべきであり、並びに、コマンドにてウェハーからきれいに剥離すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウェハー加工方法に関する。本方法は、
(1)第一基材上にてフィルムを形成する工程であって、前記フィルムが、
(I)硬化性接着剤組成物と、
(II)分解剤と、を含む、工程、
選択的に、(2)工程(1)の生成物を加熱する工程、
(3)第二基材を前記フィルムに適用する工程であって、前記第一基材及び前記第二基材のうちの少なくとも1つが半導体ウェハーである、適用する工程、
(4)前記フィルムを硬化させて硬化済みフィルムを形成する工程、
(5)前記半導体ウェハーを加工する工程、
(6)加熱により前記硬化済みフィルムを分解する工程、
選択的に、(7)溶媒で前記半導体ウェハーから残留物を除去する工程、
(8)前記第一基材と前記第二基材を分離する工程、並びに
選択的に、(9)溶媒及び/エッチング液で前記導体ウェハーから残留物を除去する工程、を具える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】下記の実施例1におけるカリウムt−ブトキシドを全く含有しないQ1−4010接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。熱重量分析(TGA)のために、サンプルをPtパンの中に配置し、TA InstrumentsのQ500 V6.7 Build 203 TGAを使用して、窒素下で5℃/分の速度にて温度上限に加熱した。
【図2】下記の実施例1からの104、53、26、13及び0ppmのカリウムt−ブトキシド(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)を含有するQ1−4010接着剤についての重量喪失vs温度のプロット。
【図3】下記の実施例3からの105ppmのジメチルスズジネオデカノエート(Fomrez UL−28)を含有するQ1−4010接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。
【図4】下記の実施例5からのカリウムt−ブトキシドを全く含有しない実験的無樹脂接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。
【図5】下記の実施例5からの117ppmのカリウムt−ブトキシドを含有する実験的無樹脂接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。
【図6】下記の実施例6からの塩基を全く含有しない実験的ラジカル硬化接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。
【図7】下記の実施例6における103ppmのカリウムt−ブトキシドを含有する実験的ラジカル硬化接着剤についての熱分解(TGA)プロファイル(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)。
【図8】窒素雰囲気下で1時間にわたっての実施例1サンプル1a(104ppmのカリウムt−ブトキシドを含有するQ1−4010接着剤)の等温329℃ TGA分解プロファイル。サンプルの熱分解及び揮発のほとんどは、加熱して30分以内に生じた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
すべての量、比率及び百分率は、特に示さない限り、重量によるものとする。
【0009】
成分(I)接着剤組成物
本発明の方法における使用のための接着剤組成物は、その硬化反応から実質的な副生成物を生じない任意の接着剤組成物であり得る。接着剤組成物は、付加反応硬化性接着剤組成物又はラジカル硬化性接着剤組成物又はエポキシ硬化性組成物であり得る。硬化性接着剤組成物としては、アクリレート硬化性、エポキシ硬化性、ヒドロシリル化硬化性及びメタクリレート硬化性が挙げられるが、これらに限定されない。硬化性接着剤組成物は、硬化性シリコーン接着剤組成物であってもよい。本方法での使用に好適なヒドロシリル化硬化性接着剤組成物は、
(A)ケイ素に結合した不飽和有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、
(B)組成物を硬化させるのに十分な量の、ケイ素に結合した水素原子を分子あたり平均少なくとも2個含有する有機ケイ素化合物、及び
(C)ヒドロシリル化触媒、を含む。
【0010】
成分(A)ポリオルガノシロキサン
成分(A)は、ケイ素に結合した不飽和有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサンを少なくとも1種含む。これらの不飽和有機基は、ヒドロシリル化反応を起こすことが可能であり、アルケニル基により例示される。このポリオルガノシロキサンは、直鎖、分枝鎖又は樹脂性構造を有する分子の混合物であってもよい。あるいは、このポリオルガノシロキサンは、直鎖又は分枝鎖構造を有する分子の混合物であってもよい。あるいは、このポリオルガノシロキサンは、直鎖構造であってもよい。あるいは、この接着剤組成物は、無樹脂であってもよい。本明細書の目的に関して、用語「無樹脂」は、硬化性シリコーン接着剤組成物が、下記方法における工程(6)、(7)、(8)若しくは(9)の後で組成物固体又は液体を硬化させることにより調製される接着剤を下塗りするのに不十分であるT及び/又はQ単位を有するポリオルガノシロキサン成分を含有することを意味する。あるいは、無樹脂は、ポリオルガノシロキサン成分中のSi−O単位の数に基づいて、組成物のポリオルガノシロキサン成分中に0重量%〜3重量%のT及びQ単位を含有する硬化性接着剤組成物、あるいは組成物の0重量%のポリオルガノシロキサン成分を含有する硬化性接着剤組成物、あるいは組成物の0.01重量%〜3重量%のポリオルガノシロキサン成分を含有する硬化性接着剤組成物を包含する。理論に束縛されるものではないが、T又はQ単位を有する樹脂が過剰に硬化性接着剤組成物中に存在する場合、塩基性分解剤の存在下での再平衡化プロセスが存在することになり、これは、ウェハーからの接着剤残留物の適切な除去を可能にするためのガス状副生成物に対して十分に分解可能ではない樹脂を形成し得る。したがって、シリコーン接着剤中の過剰の樹脂は、その分解生成物が液体又は固体であり得、これが本明細書に記載の方法において使用される基材上に残留物を残す恐れがあるので、本プロセスにとって有害である。このポリオルガノシロキサンは、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい。この不飽和有機基は2〜10個の炭素原子を有してもよく、炭素原子の数は2〜10の各整数及び全整数を含み、ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルなどのアルケニル基により例示されるがこれらに限定されない。ポリオルガノシロキサン中の不飽和有機基は、末端に、側枝に、又は末端及び側枝位置の両方に、配置され得る。
【0011】
ポリオルガノシロキサン中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を有さない有機基である。これらの有機基は、脂肪族不飽和を有さない一価炭化水素及び一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択されてもよい。これらの一価基は1〜20個の炭素原子を有してもよく、炭素原子の数は1〜20の各整数及び全整数を含み、あるいは、1〜10個の炭素原子を有してもよく、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルなどのアリール、並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニルなどのハロゲン化炭化水素基により例示されるがこれらに限定されない。このポリオルガノシロキサン中の脂肪族不飽和を有さない有機基の少なくとも50モル%、あるいは少なくとも80モル%は、メチルであってもよい。
25℃におけるポリオルガノシロキサンの粘度は、分子量及び構造と共に変化するが、0.001〜100,000パスカル・秒(Pa・s)、0.01〜10,000パスカル・秒(Pa・s)、あるいは0.01〜1,000Pa・sであり得る。粘度は、25℃の温度にてASTM D 1084により測定した。
【0012】
ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物中で有用なポリオルガノシロキサンの例としては、以下の式を有するポリジオルガノシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない:ViMeSiO(MeSiO)SiMeVi、ViMeSiO(MeSiO)0.25a(MePhSiO)0.75aSiMeVi、
ViMeSiO(MeSiO)0.95a(Ph2SiO)0.05aSiMeVi、ViMeSiO(MeSiO)0.98a(MeViSiO)0.02aSiMeVi、MeSiO(MeSiO)0.95a(MeViSiO)0.05aSiMe及びPhMeViSiO(Me2SiO)aSiPhMeVi:式中、Me、Vi及びPhはそれぞれメチル、ビニル及びフェニルを指し、下付き文字は、ポリジオルガノシロキサンの粘度が0.001〜100,000Pa・sであるような値を有し、下付き文字がaの前に数値を有する場合にはこれはaの値が数値により乗算されることを意味する。
対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡などの、接着剤組成物での使用に好適な調製方法は、当該技術分野において既知である。
【0013】
溶媒及び/又はエッチング液が下記方法において使用され得る特定の実施形態では、樹脂は、本組成物中に存在してもよい。ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物中に存在し得るポリオルガノシロキサン樹脂の例としては、RSiO1/2(M)単位及びSiO4/2(Q)単位から本質的になるMQ樹脂、RSiO3/2(T)樹脂及びRSiO2/2(D)樹脂から本質的になるTD樹脂、RSiO1/2単位及びRSiO3/2単位から本質的になるMT樹脂、並びに、RSiO1/2単位、RSiO3/2単位及びRSiO2/2単位から本質的になるMTD樹脂が挙げられ、式中、各Rは、独立して、一価炭化水素及び一価ハロゲン化炭化水素基から選択される。Rにより表される一価基は1〜20個の炭素原子を有してもよく、炭素原子の数は1〜20の各整数及び全整数を含み、あるいは、1〜10個の炭素原子を有してもよい。
【0014】
により表される一価基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル、ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルなどのアルケニル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルなどのアリール、並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニルなどのハロゲン化炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、ポリオルガノシロキサン樹脂中の少なくとも1/3及び代替的にほぼすべてのR基は、メチルであってもよい。代表的なポリオルガノシロキサン樹脂は、(CHSiO1/2シロキサン単位及びSiO4/2から本質的になり、ここで、SiO4/2単位に対する(CHSiO1/2単位のモル比率は0.6〜1.9である。
【0015】
このポリオルガノシロキサン樹脂は、アルケニル基などのヒドロシリル化反応を起こすことが可能な不飽和有機基を平均3〜30モルパーセント含有し得る。樹脂中の不飽和有機基のモルパーセントは、樹脂中のシロキサン単位のモルの総数に対する樹脂中の不飽和有機基含有シロキサン単位のモル数の比率に100を乗算したものである。
このポリオルガノシロキサン樹脂は、当該技術分野において既知の方法により調製され得る。例えば、ポリオルガノシロキサン樹脂は、少なくとも1種のアルケニル含有末端保護(endblocking)試薬を用いるDaudt,et al.のシリカヒドロゾル封鎖法により生じる樹脂コポリマーを処理することにより、調製され得る。Daudt,et al.の方法は、米国特許第2,676,182号に開示されている。
【0016】
簡潔に述べるとDaudt,et al.の方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルとトリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はそれらの組み合わせとを反応させる工程とM及びQ単位を有するコポリマーを回収する工程を伴う。得られるコポリマーは、2〜5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0017】
このポリオルガノシロキサン樹脂は、ケイ素に結合したヒドロキシル基を2重量パーセント未満含有してもよく、Daudt,et al.の生成物を、最終生成物中に3〜30モルパーセントのアルケニル基をもたらすのに十分な量のアルケニル含有末端保護剤又はアルケニル含有末端保護剤と脂肪族不飽和を有さない末端保護剤との混合物と、反応させることにより調製されてもよい。末端保護剤の例としては、シラザン、シロキサン及びシランが挙げられるがこれらに限定されない。好適な末端保護剤は、当該技術分野において既知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号及び同第4,585,836号に例示されている。単一の末端保護剤又は末端保護剤の混合物を使用して、ポリオルガノシロキサン樹脂を調製してもよい。
【0018】
成分(A)は、単一のポリオルガノシロキサン、又は、以下の特性のうちの少なくとも1つのうちで異なる2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位及び配列。ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物に添加され得る成分(A)の正確な量は、成分(A)及び(B)の種類、並びに、ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物中の成分(B)の量、並びに、ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物の成分中のケイ素に結合した水素原子とヒドロシリル化反応を起こすことが可能な不飽和有機基の比(SiH:ビニルの比)などの様々な因子に依存する。しかしながら、成分(A)の量は、ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物の20重量%〜95重量%の範囲であり得る。
【0019】
成分(B)有機ケイ素化合物
ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物中の成分(B)は、ケイ素に結合した水素原子を分子あたり平均少なくとも2個含有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物である。成分(A)中の分子あたりのアルケニル基の平均数と成分(B)中の分子あたりのケイ素に結合した水素原子の平均数の和が4を超える場合に、架橋が生じることは一般に理解されている。成分(B)中のケイ素に結合した水素原子は、末端に、側枝に、又は末端及び側枝位置の両方に、配置され得る。
【0020】
有機ケイ素化合物は、オルガノシラン又はオルガノハイドロジェンシロキサンであり得る。このオルガノシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン又はポリシランであってもよい。同様に、このオルガノハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン又はポリシロキサンであってもよい。この有機ケイ素化合物はオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよく、あるいは、この有機ケイ素化合物はオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分枝鎖、環状又は樹脂性であり得る。有機ケイ素化合物中の有機基の少なくとも50パーセントは、メチルであり得る。
【0021】
オルガノシランの例としては、ジフェニルシラン及び2−クロロエチルシランなどのモノシラン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル及び1,4−ジメチルジシリルエタンなどのジシラン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン及び1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシランなどのトリシラン、並びに、ポリ(メチルシリレン)フェニレン及びポリ(メチルシリレン)メチレンなどのポリシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
オルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン及び1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンなどのジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン及び1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンなどのトリシロキサン、並びに、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)などのポリシロキサン、並びに、H(CHSiO1/2単位、(CHSiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になる樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】
成分(B)は、単一の有機ケイ素化合物、又は、以下の特性のうちの少なくとも1つにおいて異なる2種以上のこのような化合物を含む組み合わせであり得る:構造、平均分子量、粘度、シラン単位、シロキサン単位及び配列。
【0024】
本発明の接着剤組成物中の成分(B)の量は、本組成物を硬化させるのに十分である。成分(B)の正確な量は硬化の所望される程度に依存し、これはSiH:ビニル比が増加するにつれて一般に上昇する。成分(B)の量は、ケイ素に結合した水素原子を、成分(A)中のヒドロシリル化反応を起こすことが可能な不飽和有機基あたり0.5〜3個もたらすのに十分であり得る。あるいは、成分(B)の濃度は、ケイ素に結合した水素原子を、成分(A)中のアルケニル基あたり0.7〜1.2個もたらすのに十分である。しかしながら、成分(B)の量は、本組成物の1重量%〜80重量%、あるいは2重量%〜10重量%の範囲であり得る。
【0025】
ケイ素に結合した水素原子を含有する有機ケイ素の調製方法は、当該技術分野において既知である。例えば、オルガノポリシランは、ナトリウム又はリチウム金属の存在下で炭化水素溶媒中でクロロシランを反応させること(Wurtz反応)により、調製され得る。オルガノポリシロキサンは、オルガノハロシランの加水分解及び縮合により調製され得る。
【0026】
成分(A)及び(B)の適合性を改善するために、各成分中で優勢な有機基は同じであってもよい。例えば、この基はメチルであってもよい。
【0027】
成分(C)触媒
好適なヒドロシリル化触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。成分(C)は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム金属から選択される白金族金属、あるいはこれらの有機金属化合物、あるいはこれらの組み合わせを含み得る。成分(C)は、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、白金アセチルアセトネートなどの化合物、上記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンの錯体、あるいは、マトリックス又はコアシェル型構造でマイクロカプセル化された白金化合物により例示される。白金と低分子量オルガノポリシロキサンの錯体としては、白金を有する1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されてもよい。
【0028】
成分(C)に好適なヒドロシリル化触媒は、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号並びに欧州特許第0 347 895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びこれらの調製方法は、米国特許第4,766,176号及びそこに引用されている参照文献並びに米国特許第5,017,654号に例示されているように、当該技術分野において既知である。
【0029】
成分(C)の濃度は、本明細書に記載の方法において加熱に曝露した際に成分(A)及び(B)のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分である。成分(C)の量は、成分(A)、(B)及び(C)の組み合わせた重量に基づいて、0.1〜1000百万分率(ppm)の白金族金属、あるいは0.5〜100ppmの白金族金属、あるいは1〜25ppmの白金族金属であり得る。硬化速度は、1ppm以下の白金族金属では遅いものであり得る。100ppmを超える白金族金属を使用するのは不経済であり得、あるいは、接着剤組成物の安定性を低減させる恐れがある。
【0030】
本明細書に記載の方法での使用に好適なヒドロシリル化硬化性接着剤組成物は、市販されている。例えば、DOW CORNING(登録商標)Q1−4010はヒドロシリル化硬化性接着剤組成物を含有する樹脂であり、DOW CORNING(登録商標)1−4105はヒドロシリル化硬化性接着剤組成物を含有する樹脂であり、これらはどちらもDow Corning Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。代表的な無樹脂ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物は、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン、トリオルガノシロキシ末端ポリ(ジオルガノ/オルガノハイドロジェン)シロキサン及び白金触媒を含んでもよく、例えば、アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン中の白金との1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体1.5部を混合したものが挙げられる。
【0031】
成分(II)分解剤
本明細書に記載の方法においてフィルムを形成するために使用される硬化性接着剤組成物に分解剤が添加される。この分解剤は、塩基又は酸であり得る。この塩基は、熱的に(硬化性接着剤組成物を硬化させることにより調製される)接着剤を熱分解可能にする。例えば、分解剤は、シリコーン接着剤組成物に添加される塩基であってもよく、ここで、塩基とシリコーン接着剤組成物から生成したフィルムは、硬化して、ウェハー接着及び加工方法を通して接着剤として機能するシリコーン接着剤を形成するが、このシリコーン接着剤は高温では分解して(戻って)環状ポリオルガノシロキサンと副生成物になり、結果として、シリコーン接着剤の蒸発を生じ、これによりキャリア又は別のウェハーなどの基材からの加工済みウェハーのきれいな取り外しが可能になる。この副生成物はガス状であり得る。
【0032】
この塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化セシウム、リチウムtert−ブトキシド、水酸化カリウム、カリウムブトキシド、ケイ酸カリウム、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、これらの炭酸塩、及びこれらの組み合わせなどの無機塩基を含んでもよい。あるいは、この塩基は、ナトリウムメトキシド、アルミニウムアルコキシド、スズアルコキシド、チタンアルコキシド、亜鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシドなどの金属アルコキシド又はこれらの組み合わせを含み得る。金属アルコキシドの例は、米国特許第6,262,289号の10段66行〜11段54行に開示されている。あるいは、この塩基は、ホスファゼン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム及び水酸化テトラプロピルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウムといった有機塩基、並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。上記塩基の炭酸塩は、強塩基を添加した硬化性接着剤組成物を通して二酸化炭素を発泡させることにより、調製され得る。炭酸塩の使用により、本組成物はより安定になり得、硬化性接着剤組成物の貯蔵寿命は改善され得る。硬化性シリコーン接着剤組成物中の塩基の量は、硬化性シリコーン接着剤組成物の10百万分率(ppm)〜200ppm、あるいは25〜150ppmの範囲であり得る。
【0033】
あるいは、分解剤は、tert−ブチルホスファゼンなどのホスファゼン塩基を含んでもよい。あるいは、分解剤は、酸を含んでもよい。この酸は、カルボラン酸であってもよい。好適なホスファゼン塩基及びカルボラン酸の例はそれぞれ、国際公開第2008/157080号の段落[0014]〜[0016]及び[0017]〜[0019]に開示されている。
【0034】
任意成分
本明細書の方法に記載のフィルムは、任意成分が本発明の方法において接着剤組成物の硬化に悪影響を与えないのであれば、1種以上の任意成分を更に含んでもよい。任意成分の例としては、(III)溶媒、(IV)阻害物質、(V)充填剤、(VI)処理剤、(VII)スペーサー、(VIII)接着促進剤、(IX)界面活性剤、(X)顔料又は色素などの着色剤、(XI)蛍光増白剤及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
成分(III)溶媒
このフィルムは、選択的に、溶媒を更に含んでもよい。好適な溶媒は当該技術分野において既知であり、市販されている。この溶媒は、3〜20個の炭素原子を有する有機溶媒であり得る。溶媒の例としては、ノナン、デカリン及びドデカンなどの脂肪族炭化水素、メシチレン、キシレン及びトルエンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル及びγ−ブチロラクトンなどのエステル、n−ブチルエーテル及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、メチルイソブチルケトン及びメチルペンチルケトンなどのケトン、テトラヒドロフラン、直鎖、分枝鎖及び環状ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン流体、並びにこのような溶媒の組み合わせが挙げられる。接着剤組成物中での具体的な溶媒の最適濃度は、ルーチンの実験により容易に判定することができる。しかしながら、溶媒の量は、本組成物の0重量%〜95重量%、あるいは1重量%〜95重量%であり得る。
【0036】
成分(IV)阻害物質
成分(A)、(B)及び(C)の組み合わせは、周囲温度で硬化を開始し得る。より長い作用時間又は「可使時間」を得るために、周囲条件下での触媒の活性は、硬化性接着剤組成物に任意成分(IV)阻害物質を添加することにより遅らせることができる又は抑制することができる。阻害物質は、周囲温度にて本接着剤組成物の硬化を遅らせるが、本組成物が高温にて硬化するのを妨げない。ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物に好適な阻害物質としては、3−メチル−3−ペンテン−1−イン及び3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどの様々な「エン−イン」系、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール及び2−フェニル−3−ブチン−2−オールなどのアセチレンアルコール、周知のジアルキル、ジアルケニル及びジアルコキシアルキルのフマル酸塩及びマレイン酸塩などのマレイン酸塩及びフマル酸塩、並びに、シクロビニルシロキサンが挙げられる。
【0037】
接着剤組成物中の阻害物質の量は、高温での硬化を阻害する又は過剰に遅らせることなく、周囲温度での組成物の硬化を遅らせるのに十分である。この量は、使用される具体的な阻害物質、成分(C)の性質及び量、並びに、成分(B)の性質に応じて様々である。しかしながら、ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物中で、白金族金属のモルあたり阻害物質1モルの低さにもなる阻害物質阻害物質濃度は、満足な貯蔵安定性及び硬化速度を生じ得る。白金族金属のモルあたり阻害物質最大500モル又はそれ以上の阻害物質濃度も使用され得る。当業者であれば、ルーチンの実験により具体的な接着剤組成物中で具体的な阻害物質について最適濃度を判定できるであろう。
【0038】
成分(V)充填剤
任意成分(V)は、充填剤である。成分(V)は、熱伝導性充填剤、補強充填剤又はこれらの組み合わせを含んでもよい。成分(V)に好適な熱伝導性充填剤としては、金属粒子、金属酸化物粒子及びこれらの組み合わせが挙げられる。成分(V)に好適な熱伝導性充填剤は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化マグネシウム、銅、金、ニッケル又は銀などの金属微粒子、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛及びこれらの組み合わせにより例示される。
【0039】
熱伝導性充填剤は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、米国特許第6,169,142号(4段、7〜33行)を参照されたい。例えば、CB−A20S及びAl−43−Meは、昭和電工株式会社から市販されている様々な粒径の酸化アルミニウムであり、AA−04、AA−2及びAA18は、住友化学株式会社から市販されている酸化アルミニウムである。銀充填剤は、Metalor Technologies U.S.A.Corp.(Attleboro,Massachusetts,U.S.A.)から市販されている。窒化ホウ素充填剤は、Advanced Ceramics Corporation(Cleveland,Ohio,U.S.A.)から市販されている。
【0040】
補強充填剤としては、シリカ、並びに、チョップドKEVLAR(登録商標)などのチョップドファイバーが挙げられる。
【0041】
異なる粒径及び異なる粒径分布を有する充填剤の組み合わせは、成分(V)として使用されてもよい。
【0042】
成分(VI)処理剤
この充填剤は、選択的に、成分(VI)処理剤で処理された表面であり得る。処理剤及び処理方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第6,169,142号(4段42行〜5段2行)を参照されたい。
【0043】
処理剤は、式:RSi(OR)(4−c)を有するアルコキシシランであり得る(式中、cは、1、2又は3であり、あるいはcは3である)。Rは、1〜50個の炭素原子の置換又は未置換一価炭化水素基であり、炭素原子の数は1〜50の各整数及び全整数を含み、あるいは8〜30個の炭素原子、あるいは1〜18個の炭素原子の置換又は未置換一価炭化水素基である。Rは、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルなどのアルキル基、並びに、ベンジル、フェニル及びフェニルエチルなどの芳香族基により例示される。Rは、飽和若しくは不飽和の、分枝鎖又は非分枝鎖で、未置換であり得る。あるいは、Rは、飽和、非分枝鎖で、未置換であり得る。
【0044】
は、未置換、飽和の、少なくとも1個の炭素原子の炭化水素基である。Rは、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子を有し得る。
【0045】
成分(VI)は、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメチオキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせにより例示される。
【0046】
アルコキシ官能性オリゴシロキサンもまた、成分(VI)として使用され得る。アルコキシ官能性オリゴシロキサン及びこれらの調製方法は当該技術分野において既知であり、例えば、欧州特許第1 101 167(A2)号を参照されたい。例えば、好適なアルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、式(RO)Si(OSiR4−dのものが挙げられる。この式中、dは、1、2又は3であり、あるいはdは3である。各Rは、独立して、飽和及び不飽和の、1〜10個の炭素原子の一価炭化水素基から選択され得、炭素原子の数は1〜10の各整数及び全整数を含む。各Rは、飽和及び不飽和の、少なくとも11個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。各Rは、アルキル基であり得る。
【0047】
金属充填剤は、オクタデシルメルカプタンなどのアルキルチオール、並びに、オレイン酸、ステアリン酸、チタン酸塩、チタン酸塩カップリング剤、ジルコン酸塩カップリング剤などの脂肪酸、並びにこれらの組み合わせで処理され得る。
【0048】
アルミナ又は不動態化窒化アルミニウムのための処理剤は、アルコキシシリル官能性アルキルメチルポリシロキサン(例えば、RSi(OR10(4−e−f)の部分加水分解縮合体又は共加水分解縮合体又は混合物)、加水分解可能な基がシラザン、アシルオキシ又はオキシモである同様な物質を含み得る。これらのすべてにおいて、上式中のRなどのSiに連結された基は、不飽和一価炭化水素又は一価芳香族官能性炭化水素である。Rは一価炭化水素基であり、R10は1〜4個の炭素原子の一価炭化水素基である。上式中、eは1、2又は3であり、fは0、1又は2であり、但し、e+fは1、2又は3である。当業者は、ルーチンの実験により、充填剤の分散を助けるために具体的な処理剤を最適化し得る。
【0049】
成分(VIII)スペーサー
任意成分(VIII)は、スペーサーである。スペーサーは、有機粒子、無機粒子又はこれらの組み合わせを含み得る。スペーサーは、熱伝導性、導電性又は両方であり得る。スペーサーは、ウェハーと基材がどれだけ離れていることが望ましいかなどの様々な因子に依存して粒径を有するが、スペーサーは25〜250マイクロメートルの範囲の粒径を有し得る。スペーサーは、単分散ビーズを含んでもよい。スペーサーは、ポリスチレン、ガラス、ペルフルオロ化炭化水素ポリマー及びこれらの組み合わせにより例示されるが、これらに限定されない。スペーサーは、充填剤のすべて若しくは一部分に加えて又はそれらの代わりに、添加され得る。スペーサーは、成分(VI)で処理され得る。
【0050】
成分(VIII)接着促進剤
成分(VIII)は、接着促進剤である。成分(VIII)は、遷移金属キレート、アルコキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサン又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0051】
成分(VIII)は、不飽和又はエポキシ官能性化合物であり得る。好適なエポキシ官能性化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、米国特許第4,087,585号、同第5,194,649号、同第5,248,715号及び同第5,744,507号4〜5段を参照されたい。成分(VIII)は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含み得る。例えば、この官能性アルコキシシランは、式R11gSi(OR12(4−g)を有してもよく、式中、gは1、2又は3であり、あるいはgは1である。
【0052】
各R11は、独立して、一価有機基であるが、但し、少なくとも1つのR11は、不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基である。R11についてのエポキシ官能性有機基は、3−グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルにより例示される。R11についての不飽和有機基は、3−メタクリロイルオキシプロピル、3−アクリロイルオキシプロピル、並びに、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレノイル(undecylenyl)などの不飽和一価炭化水素基により例示される。
【0053】
各R12は、独立して、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子の飽和炭化水素基である。R12は、メチル、エチル、プロピル及びブチルにより例示される。
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレノイル(undecylenyl)トリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
成分(VIII)は、上記のようなヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランの反応生成物、又は、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランの物理的ブレンドなどのエポキシ官能性シロキサンを含んでもよく、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンの混合物は、接着促進剤として使用され得る。成分(VIII)は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンの組み合わせを含んでもよい。例えば、成分(VIII)は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物との混合物、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンの混合物、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーの混合物により、例示される。反応生成物としてよりもむしろ物理的ブレンドとして使用されるとき、これらの化合物は、多分画キットに別個に収容され得る。
【0055】
好適な遷移金属キレートとしては、チタン酸塩、アセチルアセトナトジルコニウムなどのジルコン酸塩、アセチルアセトナトアルミニウムなどのアルミニウムキレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。遷移金属キレート及びこれらの調製方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,248,715号、欧州特許第0 493 791(A1)号及び同第0 497 349(B1)号を参照されたい。
【0056】
成分(XI)蛍光増白剤
成分(XI)は、蛍光増白剤である。好適な蛍光増白剤は当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、(チオフェンジイル)ビス(t−ブチルベンゾオキサゾール)は、BASF Corporation(Florham Park,New Jersey,USA)からCiba(登録商標)TINOPAL(登録商標)OBとして市販されている。
【0057】
ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び阻害物質を単一部に含む一部組成物であり得、あるいは、成分(A)〜(C)を二部以上に含む複数部組成物であり得る。複数部組成物では、成分(A)、(B)及び(C)は、阻害剤もまた存在しない限りは、典型的には同じ部に存在しない。複数部接着剤組成物は、成分(A)の一部分及び成分(B)のすべてを含有する第一部と、成分(A)の残部と成分(C)のすべてを含有する第二部と、を含み得る。
【0058】
一部ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物は、成分(A)〜(C)といずれかの任意成分を上記量で室温にて上記溶媒の補助により、又はよらずに組み合わせることにより、調製され得る。シリコーン組成物が直ちに使用されるのであれば様々な成分の添加の順番は決定的ではないが、ヒドロシリル化触媒は、本組成物の早発の硬化を防止するために約30℃以下の温度にて最後に添加され得る。また、本発明の複数部シリコーン組成物は、各部について示された具体的な成分を組み合わせることにより、調製することができる。
【0059】
ラジカル硬化性組成物
あるいは、ラジカル硬化性シリコーン接着剤組成物は、工程(I)の硬化性接着剤組成物として本明細書に記載の方法で使用され得る。本方法で有用な、好適なラジカル硬化性接着剤組成物は、
(a)ラジカル硬化性有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、及び
(b)ラジカル反応開始剤、を含む。
【0060】
成分(a)は、ラジカル硬化性有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサンを少なくとも1種含む。これらのラジカル硬化性有機基は、ラジカル硬化反応を起こすことが可能であり、アクリレート官能性有機基又はメタクリレート官能性有機基、あるいは、アルケニルなどの脂肪族不飽和炭化水素基により例示される。ラジカル硬化性接着剤組成物中の成分(a)は、ヒドロシリル化硬化性組成物中の上記成分(A)と同じであってもよい。成分(a)のためのポリオルガノシロキサンは、直鎖又は分枝鎖構造を有し得る。このポリオルガノシロキサンは、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい。このラジカル硬化性有機基は、2〜10員原子を有してもよく、この原子数は2〜10の各整数及び全整数を含む。このラジカル硬化性有機基に好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
ポリオルガノシロキサン中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を有さない有機基である。これらの有機基は、脂肪族不飽和を有さない一価炭化水素及び一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択されてもよい。これらの一価基は1〜20個の炭素原子を有してもよく、炭素原子の数は1〜20の各整数及び全整数を含み、あるいは、1〜10個の炭素原子を有してもよく、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルなどのアリール、並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニルなどのハロゲン化炭化水素基により例示されるがこれらに限定されない。このポリオルガノシロキサン中の脂肪族不飽和を有さない有機基の少なくとも50パーセント、あるいは少なくとも80パーセントは、メチルであってもよい。
【0062】
25℃における成分(a)のためのポリオルガノシロキサンの粘度は、分子量及び構造と共に変化するが、0.001〜100,000パスカル・秒(Pa・s)、あるいは0.01〜10,000Pa・s、あるいは0.01〜1,000Pa・sであり得る。粘度は、25℃の温度にてASTM D 1084により測定した。
【0063】
対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡などの、接着剤組成物での使用に好適な調製方法は、当該技術分野において既知である。
【0064】
成分(a)は、単一のポリオルガノシロキサン、又は、以下の特性のうちの少なくとも1つのうちで異なる2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位及び配列。本組成物に添加され得る成分(a)の正確な量は、本組成物中の成分(a)の種類並びに本組成物中の成分(b)の種類及び量などの様々な因子に依存する。しかしながら、成分(a)の量は、ラジカル硬化性接着剤組成物の50重量%〜99重量%の範囲であり得る。
【0065】
成分(b)ラジカル反応開始剤は、熱ラジカル反応開始剤又は放射線ラジカル反応開始剤であり得る。熱ラジカル反応開始剤としては、ジクミルペルオキシド、n−ブチル4,4’−ビス(ブチルペルオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド及び2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5ジメチルヘキサン、1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン(Luperox(登録商標)531M80);2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン;2,4−ペンタンジオンペルオキシド(Luperox(登録商標)224)、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(Luperox(登録商標)101)、2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン;2−ブタノンペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド(Luperox(登録商標)DTA(登録商標))、ラウロイルペルオキシド(Luperox(登録商標)LP)、tert−ブチルヒドロペルオキシド;tert−ブチルペルアセテート;tert−ブチルペルオキシベンゾエート;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジクロロベンゾイルペルオキシド(R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Connecticut,USA)からVarox(登録商標)DCBPとして入手可能);ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;tert−ブチルクミルペルオキシド;ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Perkadox 16として入手可能);ジセチルペルオキシジカーボネート;ジミリスチルペルオキシジカーボネート;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ジオクタノイルペルオキシド;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
このような熱ラジカル反応開始剤の例は、以下の商品名で市販されている:Arkema,Inc.(Philadelphia,Pennsylvania,U.S.A.)により販売されているLuperox(登録商標)、Akzo Nobel Polymer Chemicals LLC(Chicago,Illinois,U.S.A.)により販売されているTrigonox及びPerkadox、E.I.duPont deNemours and Co.(Wilmington,Delaware,USA)により販売されているVAZO、R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Connecticut,U.S.A.)により販売されているVAROX(登録商標)、Syrgis Performance Initiators,Inc.(Helena,Arkansas,U.S.A.)により販売されているNorox。熱ラジカル反応開始剤の濃度は、本組成物の0.01重量%〜15重量%、あるいは0.1重量%〜5重量%、あるいは0.1重量%〜2重量%の範囲であり得る。
【0066】
エポキシ硬化性接着剤組成物
あるいは、エポキシ硬化性シリコーン接着剤組成物は、工程(I)の硬化性接着剤組成物として本明細書に記載の方法で使用され得る。本方法で有用な、好適なエポキシ硬化性シリコーン接着剤組成物は、
(a)エポキシ官能性有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、及び
(b)エポキシ硬化剤、を含む。
【0067】
成分(a)に好適なエポキシ官能性基としては、3,4−エポキシシクロヘキシル、エポキシエチル(オキシラニル)、エポキシメチル、グリシドキシ、グリシドキシメチル、2−グリシドキシエチル、3−グリシドキシプロピル及び4−グリシドキシブチルなどのグリシドキシアルキル、4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル(methylcylohexyl)、2,3−エポキシペンチル及び(2,3−エポキシシクロペンチル(epoxycylopentyl))メチルなどのエポキシシクロヘキシルアルキル基、並びに、4−オキシラニルブチル及び8−オキシラニルオクチルなどのオキシラニルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、成分(a)は、脂環式エポキシ官能性基を有してもよい。好適な脂環式エポキシ官能性基の例としては、
【化1】

が挙げられるが、これらに限定されず、式中、各下付き文字kは、独立して、1〜5の範囲の値を有する。ポリオルガノシロキサン中のラジカル硬化性有機基は、末端に、側枝に、又は末端及び側枝位置の両方に、配置され得る。
【0068】
ポリオルガノシロキサン中の残りのケイ素に結合した有機基は、脂肪族不飽和を有さない有機基である。これらの有機基は、脂肪族不飽和を有さない一価炭化水素及び一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択されてもよい。これらの一価基は1〜20個の炭素原子を有してもよく、あるいは、1〜10個の炭素原子を有してもよく、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルなどのアリール、並びに、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニルなどのハロゲン化炭化水素基により例示されるがこれらに限定されない。このポリオルガノシロキサン中の脂肪族不飽和を有さない有機基の少なくとも50パーセント、あるいは少なくとも80パーセントは、メチルであってもよい。
【0069】
25℃におけるエポキシ硬化性シリコーン接着剤組成物中の成分(a)のためのポリオルガノシロキサンの粘度は、分子量及び構造と共に変化するが、0.001〜100,000パスカル・秒(Pa・s)、あるいは0.01〜10,000Pa・s、あるいは0.01〜1,000Pa・sの範囲であり得る。粘度は、25℃の温度にてASTM D 1084により測定した。
対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡などの、エポキシ硬化性接着剤組成物での使用に好適な調製方法は、当該技術分野において既知である。
【0070】
成分(a)は、単一のポリオルガノシロキサン、又は、以下の特性のうちの少なくとも1つのうちで異なる2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位及び配列。本組成物に添加され得る成分(a)の正確な量は、本組成物中の成分(a)の種類並びに本組成物中の成分(b)の種類及び量などの様々な因子に依存する。しかしながら、成分(a)の量は、エポキシ硬化性接着剤組成物の50重量%〜99重量%の範囲であり得る。
【0071】
エポキシ硬化性接着剤組成物中の成分(b)は、放射線光開始剤であってもよく、例えば、この放射線光開始剤は、例えば、米国特許第4,313,988号(Koshar,et al.)及び同第4,310,469号(Crivello)並びに欧州特許出願第0 562 922号に開示されているものなどの当該技術分野において既知の任意の従来光開始剤であってもよい。この放射線光開始剤は、カチオン性光開始剤を含んでもよい。このカチオン性光開始剤は、150〜800nmの範囲の波長を有する放射線に曝露すると硬化性接着剤組成物の硬化(架橋)を開始することが可能な任意のカチオン性光開始剤であり得る。カチオン性光開始剤の例としては、オニウム塩が挙げられるがこれに限定されない。
【0072】
好適なオニウム塩としては、R19I+MG−、R19S+MG−、R19Se+MG−、R19P+MG−及びR19N+MG−から選択される式を有する塩が挙げられ、ここで、各R19は、独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基などの一価有機基であり、Mは、遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、半金属、リン及びイオウから選択される元素であり、Gはハロゲン原子(例えば、Cl、Br又はI)であり、下付き文字uは、uとGの電荷の積+Mの酸化数=−1となるような値を有する。炭化水素基に対する置換の例としては、1〜8個の炭素原子のアルコキシ基、1〜16個の炭素原子のアルキル基、ニトロ、クロロ、ブロモ、シアノ、カルボキシル、メルカプト、並びに、ピリジル、チオフェニル及びピラニルなどの複素環式芳香族基が挙げられるが、これらに限定されない。Mにより表される金属の例としては、Fe、Ti、Zr、Sc、V、Cr及びMnなどの遷移金属、Pr及びNdなどのランタニド金属、Cs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga及びInなどの他の金属、B及びAsなどの半金属、並びに、Pが挙げられるがこれらに限定されない。式MG−は、非塩基性、非求核性アニオンを表す。式MGu−を有するアニオンの例としては、BF−、PF−、AsF−、SbF=、SbCl−及びSnCl−が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
オニウム塩の例としては、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセナート及びビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートにより例示されるビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム塩などのビス−ジアリールヨードニウム塩、アルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのアルキルフェニルヨードニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及びボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、ペルフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩及びトリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、パラ−トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩及び3−ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、ペルフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩及びトリフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのペルフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、並びに、パラ−トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩及び3−ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
ボロン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、ペルハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。ボロン酸のトリトリアリールスルホニウム塩の例としては、ペルハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
このカチオン性光開始剤は、単一のカチオン性光開始剤、又は、それぞれ上記のような二種以上の異なるカチオン性光開始剤を含む混合物であることができる。このカチオン性光開始剤の濃度は、硬化性シリコーン接着剤組成物の0.01重量%〜15重量%、あるいは0.1重量%〜10重量%、あるいは0.1重量%〜5重量%、あるいは0.1重量%〜2重量%の範囲であり得る。
ラジカル硬化性接着剤組成物及び/又はエポキシ硬化性接着剤組成物は、選択的に、段落[0044]〜[0066]の上記任意成分を1種以上更に含んでもよい。
【0078】
方法
一時的ウェハー接着方法は、
(1)第一基材上にてフィルムを形成する工程であって、このフィルムが、
(I)硬化性接着剤組成物と、
(II)分解剤と、を含む、工程、
選択的に、(2)工程(1)の生成物を加熱する工程、
(3)第二基材をフィルムに適用する工程であって、第一基材及び第二基材のうちの少なくとも1つが半導体ウェハーである、適用する工程、
(4)フィルムを硬化させて硬化済みフィルムを形成する工程、
(5)半導体ウェハーを加工する工程、
(6)加熱により硬化済みフィルムを分解する工程、
選択的に、(7)溶媒中に工程(6)の生成物を浸漬する工程、
(8)第一基材と第二基材を分離する工程、並びに
選択的に、(9)溶媒又はエッチング液中に半導体ウェハーを浸漬する工程、を具える。任意の工程(7)及び/又は(9)はそれぞれ、いずれかの残留物が工程(6)及び/又は(8)後にウェハー上に残っていた場合に行われ得る。
【0079】
工程(1)は、フィルムを形成するために、第一基材上にて硬化性接着剤組成物及び分解剤をスピンコーティング、ディッピング、スプレー又は印刷するなどの任意の従来方法を用いて行われ得る。あるいは、このフィルムは、500〜6,000rpmの速度にて5〜60秒にわたってスピンコーティングすることにより適用され得る。この硬化性接着剤組成物及びこの分解剤は、混合などの任意従来手段により組み合わせられ得る。スピンコーティング法で適用される容量は、0.1〜5ミリリットル(mL)の範囲であり得る。スピン速度、スピン時間及び容量は、0.1〜200マイクロメートル(μm)の範囲の厚さを有するフィルムを作製するように調整され得る。第一基材は、半導体ウェハー又はウェハーキャリアであり得る。このフィルムは、模様付き機構又はその上に配置されたデバイス(例えば、集積回路若しくはMicroElectro Mechanical Systems(MEMS)デバイス)を有する半導体ウェハーの表面に適用され得る。
【0080】
工程(2)は、任意である。しかしながら、存在する場合、工程(2)は、任意従来手段によりフィルムを加熱することにより行われ得る。加熱時間及び温度は、選択される具体的な接着剤組成物及び工程(2)の目的に依存する。工程(2)は、溶媒が接着剤組成物中に存在する場合には溶媒の少なくとも一部を除去する目的のために、あるいは、接着剤組成物を部分的に硬化させる目的のために、あるいは、その両方の目的のために、行われ得る。上記ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物及び/又はラジカル硬化性接着剤組成物の溶媒除去のために、工程(2)は、溶媒を除去するのに十分な温度及び時間で行われ得るが、ここで、この温度は、ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物が硬化する温度よりも低く、例えば、50℃〜120℃にて最長5分にわたって加熱することにより行われる。上記ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物の部分硬化のために、工程(2)は、最高200℃の温度にて1〜30分にわたってヒドロシリル化硬化性接着剤組成物を加熱することにより、あるいは、80℃〜200℃の温度にて2〜4分にわたってヒドロシリル化硬化性接着剤組成物を加熱することにより、行われ得る。
【0081】
工程(3)は、任意従来手段により行われ得る。例えば、第二基材は、フィルムと接し得、手又は機械的手段により一緒に押圧され得る。
【0082】
工程(4)は、フィルムを硬化させるのに十分な温度及び時間でフィルムを加熱することにより行われ得、例えば、上記ヒドロシリル化硬化性接着剤組成物については、工程(4)は、150℃〜250℃の温度にて30〜120分にわたって加熱することにより、行われ得る。あるいは、上記ラジカル硬化性接着剤組成物については、工程(4)は、120℃〜170℃の範囲の温度にて加熱することにより、行われ得る。
【0083】
工程(5)は、薄化、電気メッキ、金属被覆、プラズマ処理、フォトレジスト加工、誘電体コーティング及びこれらの組み合わせなどの任意従来手段により、行われ得る。
【0084】
工程(6)は、工程(8)において第一基材と第二基材がきれいに分離するように、接着剤を分解するのに十分な温度にて加熱することにより、行われ得る。加熱の正確な温度及び時間量は、本硬化性接着剤組成物中の分解剤の強度及び量、並びに、半導体ウェハー及びその上の任意構造物が耐え得る温度などの様々な因子に依存する。しかしながら、温度は、0.1〜2時間の範囲の時間について、260℃〜450℃の範囲であり得る。
【0085】
工程(7)は任意であり、硬化性接着剤組成物、分解剤及び工程(1)〜(6)の条件は、好ましくは、工程(7)が使用されないように、選択される。しかしながら、存在する場合、工程(7)は、任意従来手段により行われ得る。例えば、工程(7)は、溶媒中に工程(6)の生成物を浸漬することにより、行われ得る。好適な溶媒は当該技術分野において既知であり、市販されている。この溶媒は、3〜20個の炭素原子を有する有機溶媒であり得る。溶媒の例としては、ノナン、デカリン及びドデカンなどの脂肪族炭化水素、メシチレン、キシレン及びトルエンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル及びγ−ブチロラクトンなどのエステル、n−ブチルエーテル及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、メチルイソブチルケトン及びメチルペンチルケトンなどのケトン、直鎖、分枝鎖及び環状ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン流体、並びにこのような溶媒の組み合わせが挙げられる。
【0086】
あるいは、工程(7)は、存在する場合、エッチング液に工程(6)の生成物を浸漬することにより、行われ得る。このエッチング液は、(i)有機溶媒と、(ii)塩基又は酸と、を含み得る。この有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどの一価アルコール及びこれらの組み合わせ、エチレングリコール及びプロピレングリコールなどの二価アルコール並びにこれらの組み合わせ、エチレングリコールエーテル及びプロピレングリコールエーテルなどのモノエーテル並びにこれらの組み合わせ、エチレンジグリコールエーテル、プロピレンジグリコールエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールなどのジエーテル及びこれらの組み合わせ、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン及びジメチルアセトアミドなどの極性非プロトン性溶媒並びにこれらの組み合わせであり得る。
【0087】
この塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基及びこれらの組み合わせを含み得る。あるいは、この塩基は、ホスファゼン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム及び水酸化テトラプロピルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウムといった有機塩基、並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。エッチング液中の塩基の量は、0.01重量%〜溶媒中の塩基の溶解度限界まで、あるいは最大10重量%の範囲であり得る。
【0088】
この酸は、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、硫酸などの無機酸又はこれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、この酸は、有機スルホン酸などの有機酸を含んでもよい。有機スルホン酸の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、トルエンスルホン酸及びこれらの組み合わせが挙げられる。エッチング液中の酸の量は、0.01重量%〜溶媒中の酸の溶解度限界まで、あるいは最大10重量%の範囲であり得る。
【0089】
このエッチング液、スプレー又は浸漬などの任意従来方法により、適用され得る。このエッチング液への曝露は、例えば、浸漬によるものであり得る。浸漬についての正確な時間及び温度は、硬化性接着剤組成物の正確な成分などの様々な因子に依存する。しかしながら、浸漬は、1分〜72時間、あるいは24時間〜72時間にわたって、周囲温度にて行われ得る。浸漬時間は、高温ではより短くなり得る。あるいは、エッチング液への曝露は、残留物がエッチング液に残留物を除去するのに十分な時間にわたって曝露されるように、連続スプレーによるものであり得る。エッチング液への曝露は、周囲温度にて又は高温にてなされる。曝露中の温度は、15℃〜150℃であり得る。高温であればあるほどより速いエッチング速度をもたらすと予測される。
【0090】
工程(8)は、手による又は機械的手段によるなどの任意従来手段により、行われ得る。
【0091】
工程(9)は任意であり、硬化性接着剤組成物、分解剤及び工程(1)〜(6)の条件は、好ましくは、工程(9)が使用されないように、選択される。しかしながら、存在する場合、工程(9)は、請求項(7)に関して上記したような溶媒あるいは工程(7)に関して上記したようなエッチング液の中に工程(8)の生成物を浸漬することにより行われ得る。
【実施例】
【0092】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0093】
実施例1:カリウムtert−ブトキシドをドープしたQ1−4010接着剤の調製:
プラスチック製歯科用カップの中に、カリウムtert−ブトキシドのテトロヒドロフラン(Aldrich)1.0モル溶液を少量添加した、Dow Corning Corporation(Midland,MI,USA)から市販されているヒドロシリル化硬化性接着剤組成物であるDow Corning(登録商標)Q1−4010均一コーティングを40g配置した。添加に続き、歯科用カップを素早く閉じ、歯科用ミキサー上で内容物をそれぞれ30秒にわたって二回混合し、マスターバッチ配合物を準備した。次に、このマスターバッチ配合物を発泡二酸化炭素に15分間にわたってさらし、その後、真空下で脱気した。カリウムtert−ブトキシドの濃度を変えた一連のサンプルを調製するために、所望の濃度のカリウムtert−ブトキシドを配合物中で達成するまでDow Corning(登録商標)Q1−4010を添加することにより、このマスターバッチ配合物を希釈した。カリウムtert−ブトキシドを有する一連のサンプルを0〜104ppmの範囲の濃度で調製した。次に、これらを歯科用ミキサーを用いて二回の30秒混合にかけた。調製したサンプルを次にアルミニウム秤量皿に5ミリメートル(mm)の深さまで注入し、脱気した後、エアオーブンの中で130℃にて2時間にわたって硬化させた。硬化に続き、すべてのサンプルを気泡の無い硬質エラストマーとして単離した。これらのサンプルを次に熱重量分析(TGA)により分析して、カリウムtert−ブトキシドの濃度の関数としての配合物についての分解プロファイルを判定した。TGAのために、サンプルをPtパンの中に配置し、TA InstrumentsのQ500 V6.7 Build 203 TGAを使用して、窒素下で5℃/分の速度にて温度上限に加熱した。結果は表1並びに図1及び2にある。
【0094】
【表1】

【0095】
表1:様々な濃度のカリウムt−ブトキシド(t−BuOK)を含有するQ1−4010接着剤についての熱分解データ。Dmaxは、温度に対する重量喪失パーセント(%/℃)の最大値であり、Res500℃は、500℃で残留物が残っているパーセント(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)である。結果は表2及び図2にある。
【0096】
参照例1:カリウムtert−ブトキシドをドープしたQ1−4010接着剤についての一時的接着試験:
1センチメートル(cm)×1cmの寸法のシリコンダイを超音波浴でイソプロピルアルコールで5分にわたって洗浄し、その後、きれいな布で拭き、空気中で130℃に15分にわたって加熱し、ダイの厚さを測定した。実施例1で調製したドープ済み接着剤組成物を少量、1つのダイに適用し、少量のPotters Industries Glass Beads(#602589(最大直径0.0017”(0.004318cm))を接着剤の表面上に配置した。第二のダイを上面に配置し、二つのダイを圧縮した。これらのダイを次に130℃まで1時間にわたって空気還流オーブン内で加熱し、その後、冷却した。元々のダイの厚さ及び接着したダイの厚さを基に、接着剤の厚さを計算した。接着剤実施例1a、1d及び1eを使用して、サンプルを調製した。調製されたままの接着したダイを手による剪断力にさらしたところ、2つのダイの分離に失敗した。
【0097】
積層したダイサンプル1a、1d及び1eを次に、空気中で30分間にわたって329℃(サンプル1aについての最大限の分解温度)での加熱にさらした。取り出し及び冷却後、ダイを再び手による剪断力にさらした。これにより、1aサンプルはすべて剥離し、2個の離れたダイを生じた。接着剤1d及び1eを用いて作製したサンプルは、これらの熱条件下での剥離に失敗した。
【0098】
【表2】

【0099】
表2:空気雰囲気下における30分にわたっての329℃での等温加熱(T等温)後のカリウムt−ブトキシドの関数としてのダイ接着。サンプル1aは104ppmのカリウムt−ブトキシド(Dmax=329℃=T等温)を含有し、サンプル1dは13ppmのカリウムt−ブトキシド(Dmax=434℃>T等温)を含有し、サンプル1eはカリウムt−ブトキシド(Dmax=492℃>>T等温)を全く含有しない。
【0100】
実施例2:ホスファゼン塩基をドープしたQ1−4010接着剤の調製:
プラスチック製歯科用カップの中に、予めデカン中に10%に希釈しておいたホスファゼン塩基P−t−Buのヘキサン(Aldrich)1.0モル溶液を少量添加したDow Corning(登録商標)Q1−4010を40g配置した。添加直後に、カップを素早く閉じ、歯科用ミキサー上で内容物をそれぞれ30秒にわたって二回混合し、マスターバッチ配合物を準備した。このマスターバッチ配合物を次に脱気し、その後、これを用いて、Dow Corning(登録商標)Q1−4010を添加することにより希釈によってホスファゼン塩基の濃度を変えた一連のサンプルを配合した。ホスファゼン塩基を有する一連のサンプルを0〜450ppmの範囲の濃度で調製した。一部のホスファゼン塩基含有配合物に少量の酢酸を添加することにより、追加のサンプルも調製して、分解プロファイルに対する影響を観察した。次に、これらのサンプルをそれぞれ歯科用ミキサーに二回30秒混合にかけた。サンプルを次にアルミニウム秤量皿に5mmの深さまで注入し、脱気した後、エアオーブンの中で130℃にて1時間にわたって硬化させた。硬化後、すべてのサンプルを、発泡又は有意な気泡を有するスポンジ状エラストマーとして単離した。これらのサンプルを熱重量分析(TGA)により分析して、ホスファゼン塩基の濃度の関数としての配合物についての分解プロファイルを判定した。
【0101】
【表3】

【0102】
は、これらのサンプルが硬化しなかったために試験されなかったことを示す。
表3:様々な濃度のホスファゼン塩基(P−t−Bu、Aldrichから市販)及び酢酸を含有するQ1−4010接着剤についての熱分解データ。Dmax、温度に対する重量喪失パーセント(%/℃)の最大値であり、Res400℃は、400で残留物が残っているパーセント(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)である。
【0103】
実施例3:TinをドープしたQ1−4010接着剤の調製:
プラスチック製歯科用カップの中に、105ppmのジメチルスズジネオデカノエート(Fomrez UL−28)を添加したDow Corning(登録商標)Q1−4010均一コーティングを40g配置した。添加に続き、歯科用カップを素早く閉じ、歯科用ミキサー上で内容物をそれぞれ30秒にわたって二回混合した。このサンプルをアルミニウム秤量皿に5mmの深さまで注入し、脱気した後、エアオーブンの中で130℃にて2時間にわたって硬化させた。硬化後、このサンプルを気泡を全く有さない硬質エラストマーとして単離した。このサンプルを次に、TGAにより分析して、ジメチルスズジネオデカノエートの濃度の関数としてサンプルについての分解プロファイルを判定した。結果は図3にある。
【0104】
実施例4:リチウムtert−ブトキシドをドープしたQ1−4010接着剤の調製:
プラスチック製歯科用カップの中に、リチウムtert−ブトキシドのテトロヒドロフラン(Aldrich)1.0モル溶液を少量添加した、Dow Corning(登録商標)Q1−4010均一コーティングを40g配置した。添加後、歯科用カップを素早く閉じ、歯科用ミキサー上で内容物をそれぞれ30秒にわたって二回混合し、マスターバッチ配合物を準備した。リチウムtert−ブトキシドの濃度を変えた一連のサンプルを調製するために、所望の濃度のリチウムtert−ブトキシドを組成物中で達成するまでDow Corning(登録商標)Q1−4010を添加することにより、このマスターバッチ配合物を希釈した。リチウムtert−ブトキシドを有する一連のサンプルを20〜80ppmの範囲の濃度で調製した。次に、これらをそれぞれ歯科用ミキサーを用いて二回の30秒混合にかけた。サンプルを次にアルミニウム秤量皿に5mmの深さまで注入し、脱気した後、エアオーブンの中で130℃にて1時間にわたって硬化させた。硬化に続き、すべてのサンプルを気泡の無い硬質エラストマーとして単離した。これらのサンプルを次にTGAにより分析して、リチウムtert−ブトキシドの濃度の関数としての組成物についての分解プロファイルを判定した。
【0105】
【表4】

【0106】
表4:様々な濃度のリチウムt−ブトキシドを含有するQ1−4010接着剤についての熱分解データ。Dmaxは、温度に対する重量喪失パーセント(%/℃)の最大値であり、Res 700℃は、700℃で残留物が残っているパーセント(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)である。
【0107】
実施例5:無樹脂カリウムtert−ブトキシドをドープしたポリジメチルシロキサン接着剤の調製:
83.3部のビニル官能性ポリジオルガノシロキサン1と11.5部のビニル官能性ポリジオルガノシロキサン2と0.91部の接着促進剤と0.34部の触媒と0.39部のメチルブチノールと3.9部のSiHポリマーを混合することにより、追加硬化によって硬化可能な無樹脂ポリジメチルシロキサン接着剤を調製した。
【0108】
接着促進剤は、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサン46部あたり50部のグリシドキシプロピルトリメトキシシランの混合物である。ビニル官能性ポリジオルガノシロキサン1は、赤外線で測定すると0.38%〜0.6%の範囲のビニル含量と、円錐平板粘度計で12rpmにて測定すると300〜500mPa・sの範囲の粘度と、を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンであった。触媒は、ビニル官能性ポリジオルガノシロキサン1中の白金との1.5部の1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の混合物であった。ビニル官能性ポリジオルガノシロキサン2は、分子量と比較して0.11重量%〜0.23重量%の範囲のビニル含量と、円錐平板粘度計で0.6rpmにて測定すると7,000〜12,000mPa・sの範囲の粘度と、を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンであった。SiHポリマーは、25℃にて5mmの粘度と、7,600ppmのSiH含量と、を有するトリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンであった。
【0109】
所与の順番で成分を添加し、メチルブチノールの添加及びSiHポリマーの添加のそれぞれの後で30秒にわたって歯科用ミキサーで混合した。このサンプルを二部に分けた:カリウムブトキシドマスターバッチを調製するための40g、並びに、ある範囲のカリウムブトキシド濃度を有する一連のサンプルを得るべくこのマスターバッチを希釈するための第二部。プラスチック製歯科用カップの中に、カリウムtert−ブトキシドのテトロヒドロフラン(Aldrich)1.0モル溶液を少量添加した、接着剤組成物を40g配置した。添加後、歯科用カップを素早く閉じ、歯科用ミキサー上で内容物をそれぞれ30秒にわたって二回混合し、マスターバッチ配合物を準備した。次に、このマスターバッチ配合物を発泡二酸化炭素に15分間にわたってさらし、その後、真空下で脱気した。
【0110】
カリウムtert−ブトキシドの濃度を変えた一連のサンプルを調製するために、所望の濃度のカリウムtert−ブトキシドを組成物中で達成するまで追加の硬化性接着剤組成物を添加することにより、このマスターバッチ配合物を希釈した。カリウムtert−ブトキシドを有する一連のサンプルを0〜117ppmの範囲の濃度で調製した。次に、これらを歯科用ミキサーを用いて二回の30秒混合にかけた。サンプルを次にアルミニウム秤量皿に5mmの深さまで注入し、脱気した後、エアオーブンの中で130℃にて1時間にわたって硬化させた。硬化に続き、すべてのサンプルを気泡の無い硬質エラストマーとして単離した。これらのサンプルを次にTGAにより分析して、カリウムtert−ブトキシドの濃度の関数としての配合物についての分解プロファイルを判定した。結果は図4及び5並びに表5にある。
【0111】
【表5】

【0112】
表5:様々な濃度のカリウムt−ブトキシドを含有する無樹脂実験的硬化性接着剤組成物についての熱分解データ。Dmaxは、温度に対する重量喪失パーセント(%/℃)の最大値であり、Res 700℃は、700℃で残留物が残っているパーセント(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)である。
【0113】
実施例6:ラジカル硬化性塩基をドープしたポリジメチルシロキサン接着剤の調製:
40.0部のビニル官能性ポリジオルガノシロキサン1と0.32部の接着促進剤と0.48部の1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを混合することにより、ラジカル硬化性接着剤組成物を調製した。成分を所与の順番で添加し、歯科用ミキサーで30秒にわたって混合した。127ppmのホスファゼン塩基と103ppmのカリウムt−ブトキシドと89ppmのリチウムt−ブトキシドを有する接着剤組成物のサンプルを調製するために、同じ組成を反復した。サンプルを次にアルミニウム秤量皿に5mmの深さまで注入し、脱気した後、部分窒素雰囲気下で150℃にて1時間にわたって硬化させた。硬化後、すべてのサンプルを硬質エラストマーとして単離したが、表面上の液体シロキサンの薄膜は布を使用して取り外した。これらのサンプルを次に熱重量分析により分析して、分解剤の濃度の関数としての配合物についての分解プロファイルを判定した。結果は表6並びに図6及び7にある。
【0114】
【表6】

【0115】
表6:様々な濃度の異なる塩基を含有する実験的ラジカル硬化した接着剤についての熱分解データ。Dmaxは、温度に対する重量喪失パーセント(%/℃)の最大値であり、Res 700℃は、700℃で残留物が残っているパーセント(窒素雰囲気下で加熱速度5℃/分)である。
【0116】
実施例7
実施例1aで調製したサンプル1aを329℃にて加熱した。時間の関数としての等温重量喪失のプロットを図8に示す。この実施例は、ほとんどのフィルムが30分以内に分解されることを示す。ウェハーから残留物を除去するのに溶媒又はエッチング液が全く必要とされないので、この方法は有益である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
分解剤を含有する硬化性接着剤組成物は、一時的ウェハー接着のための方法のおいて有用である。この硬化性接着剤組成物は、硬化して、熱分解し高温にて基材からきれいに分離するシリコーン接着剤を形成し得る。
【0118】
分解剤と組み合わされたこの硬化性接着剤組成物は、一時的ウェハー接着方法においてウェハーを分離するための既知の方法に改善をもたらす。例えば、塩基などの分解剤の濃度は、本方法においては、ppm濃度と同程度であり得る。対照的に、溶媒中の分解剤の濃度は、3〜4%の範囲であり得る。この配合物はまた、接着剤が分解する温度をカスタム化するために、異なる量の塩基でカスタム化することもできる。別の利益は穿孔ウェハーが必要とされないことであるが、しかし、穿孔ウェハーは、溶媒が接着剤に確かに接触するように溶媒プロセスで使用された。更に、穿孔ウェハー及び必要とされる溶媒又はエッチング液を採用するプロセスでは、このプロセスは遅く、表面からのみ接着剤を除去することができた。対照的に、本明細書に記載の方法では、接着剤は、フィルムの大半にわたって除去され得、界面は溶媒/エッチング溶液プロセスにおけるほど重要ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第一基材上にてフィルムを形成する工程であって、前記フィルムが、
(I)硬化性接着剤組成物と、
(II)分解剤と、を含む、工程、
選択的に、(2)工程(1)の生成物を加熱する工程、
(3)第二基材を前記フィルムに適用する工程であって、前記第一基材及び前記第二基材のうちの少なくとも1つが半導体ウェハーである、適用する工程、
(4)前記フィルムを硬化させて硬化済みフィルムを形成する工程、
(5)前記半導体ウェハーを加工する工程、
(6)加熱により前記硬化済みフィルムを分解する工程、
選択的に、(7)溶媒で前記半導体ウェハーから残留物を除去する工程、
(8)前記第一基材と前記第二基材を分離する工程、並びに
選択的に、(9)溶媒及び/エッチング液で前記導体ウェハーから残留物を除去する工程、を具える、方法。
【請求項2】
前記硬化性接着剤組成物が、
(A)ケイ素に結合した不飽和有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、
(B)前記組成物を硬化させるのに十分な量の、ケイ素に結合した水素原子を分子あたり平均少なくとも2個含有する有機ケイ素化合物、及び
(C)触媒量のヒドロシリル化触媒、を含むヒドロシリル化硬化性接着剤組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化性接着剤組成物が、
(a)ラジカル硬化性有機基を分子あたり平均少なくとも2個含有するポリオルガノシロキサン、及び
(b)ラジカル反応開始剤、を含む、ラジカル硬化性接着剤組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルムが、(III)溶媒、(IV)阻害物質、(V)充填剤、(VI)処理剤、(VII)スペーサー、(VII)接着促進剤、(IX)界面活性剤、(X)着色剤、及び(XI)蛍光増白剤から選択される1種以上の成分を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)が、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディッピング又は印刷から選択される技術により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
成分(A)が、アルケニル官能性ポリオルガノシロキサン樹脂を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
成分(B)が、ケイ素に結合した水素を分子あたり平均少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
成分(C)が、ビニル官能性ポリオルガノシロキサンとの白金錯体である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
成分(II)が、カリウムt−ブトキシド、ケイ酸カリウム、リチウムt−ブトキシド、ケイ酸リチウム、これらの組み合わせ又はこれらの炭酸塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
成分(a)がアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンである、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
成分(b)が1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記第一基材が第一半導体ウェハーであり、前記第二基材が第二半導体ウェハーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第一基材が半導体ウェハーであり、前記第二基材がウェハーキャリアである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(2)が存在し、工程(2)が、前記フィルムを部分硬化させるために最高200℃の温度にて1〜30分にわたって加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(4)が、120℃〜250℃の温度にて30秒〜120分にわたって加熱することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(5)が、薄化、電気メッキ、金属被覆、プラズマ処理、フォトレジスト加工、誘電体コーティング及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(6)が、260℃〜450℃の範囲の温度にて0.1時間〜2時間の範囲の時間にわたって工程(5)の生成物を加熱することにより、行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
任意の工程(7)が存在し、溶媒及び/又はエッチング液中に前記半導体ウェハーを浸漬することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(8)が、手又は機械的手段により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
任意の工程(9)が存在し、溶媒及び/又はエッチング液中に前記半導体ウェハーを浸漬することにより行われる、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−520009(P2013−520009A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552864(P2012−552864)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060416
【国際公開番号】WO2011/100030
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】