説明

半導体式ガス検知素子

【課題】ガス感応部の電気抵抗を小さくして、被検知ガスに対して高感度となる半導体式ガス検知素子を提供する。
【解決手段】貴金属線にガス感応部を設けた半導体式ガス検知素子であって、ガス感応部は、酸化スズに、アンチモンを0.8mol%以下の範囲、セリウムを0.8mol%以下の範囲で、固溶させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属線にガス感応部を設けた半導体式ガス検知素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体式ガス検知素子は、金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を備える。ガス感応部は、通常、検知対象となるガス(以下、「被検知ガス」と称する。)が存在しない雰囲気では、金属酸化物半導体の粒子表面に酸素が吸着しており、この吸着酸素によって生じる空間電荷層が粒子内部に向かって広がっているため、自由電子の伝導パスが狭くなり、電気抵抗が高くなっている。一方、被検知ガスが存在する雰囲気では、ガス感応部に吸着している吸着酸素は被検知ガスとの酸化還元反応により、金属酸化物半導体の粒子表面から脱離するため、空間電荷層の厚みが薄くなり、ガス感応部の電気抵抗が低くなる。半導体式ガス検知素子は、この電気抵抗の変化をセンサ出力として取り出すことによって、被検知ガスを検知している。
【0003】
尚、本発明における従来技術となる半導体式ガス検知素子は、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような半導体式ガス検知素子において、貴金属線を備え、この貴金属線が電極と加熱ヒーターとを兼ねる半導体式ガス検知素子では、半導体式ガス検知素子の電気抵抗は、ガス感応部の電気抵抗と貴金属線の電気抵抗との複合電気抵抗となる。このため、より低濃度(電気抵抗の変化が小さい)の被検知ガスを検知する場合には、半導体式ガス検知素子の複合電気抵抗におけるガス感応部の電気抵抗変化の寄与率を高める必要があり、ガス感応部自体の電気抵抗を小さくすることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ガス感応部の電気抵抗を小さくして、被検知ガスに対して高感度となる半導体式ガス検知素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、金属酸化物半導体に、金属酸化物半導体の金属の価数より大きな価数を有する金属を固溶させることによって、金属酸化物半導体の電気抵抗が小さくなることに着目し、鋭意検討した結果、特に金属酸化物半導体として酸化スズを用いた場合において、スズより大きな価数を有するアンチモンを所定量固溶させると共に、さらにセリウムを所定量固溶させることにより、被検知ガスに対して高感度なガス検知素子が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る半導体式ガス検知素子の第1特徴構成は、貴金属線にガス感応部を設けた半導体式ガス検知素子であって、前記ガス感応部は、酸化スズに、アンチモンを0.8mol%以下の範囲、セリウムを0.8mol%以下の範囲で、固溶させた点にある。
【0008】
本構成のように、酸化スズにアンチモンを固溶させることにより酸化スズの電気抵抗を小さくすることができるため、被検知ガスに対する感度を向上させることができる。
一方、酸化スズにセリウムを固溶させると、酸化スズの焼成時における粒成長を抑制し、酸化スズの一次粒子径を小さくすることができる。酸化スズの粒子表面に吸着している吸着酸素の吸着・脱離による酸化スズの電気抵抗の変化は、その粒子径が小さい方が顕著になる。このため、本構成のように、酸化スズにセリウムを固溶させることにより、被検知ガスに対する感度を向上させることができる。
また、酸化スズにセリウムを固溶させると、ガス検知素子としての高温動作中に粒成長することを抑えることもできるため、熱安定性も向上する。
【0009】
したがって、本構成によれば、被検知ガスに対して高感度であり、長期に亘って熱安定性に優れた半導体ガス検知素子を提供することができる。
【0010】
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第2特徴構成は、酸化スズに固溶させるセリウムとアンチモンとの比率を、Ce/Sb≦1とする点にある。
【0011】
酸化スズにアンチモンを固溶させると、その固溶量に応じて酸化スズの電気抵抗は低下する。一方、アンチモンを固溶させた酸化スズに、さらにセリウムを固溶させると、その固溶量に応じて酸化スズの電気抵抗の低下率が小さくなる。このため、本構成のように、セリウムの固溶量(mol%)/アンチモンの固溶量(mol%)を1以下となるように、それぞれを固溶させることによって、セリウムを固溶させることによる電気抵抗への影響を抑え、ガス感度を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第3特徴構成は、前記ガス感応部を被覆する触媒層をさらに備え、前記触媒層は、酸化スズにセリウムを0.8mol%以下の範囲で固溶させた点にある。
【0013】
本構成のように、酸化スズにセリウムを固溶させることにより、酸化スズの一次粒子径を小さくすることができるため、触媒層の比表面積を増やすことができる。このため、被検知ガスに対する選択性を向上させることができる。
【0014】
本発明に係る半導体式ガス検知素子の第4特徴構成は、前記触媒層に、白金、パラジウム、金、ロジウム、ルテニウム、イリジウムのうちの少なくともいずれか一種の貴金属触媒を担持させた点にある。
【0015】
本構成によれば、触媒層における化学活性が高まるため、被検知ガスに対する選択性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る半導体式ガス検知素子の概略図である。
【図2】(a)は酸化スズへのアンチモンの固溶量を変えたときの酸化スズの電気抵抗の変化を示すグラフであり、(b)はアンチモンの固溶量を変えたときのメタンガスに対する濃度毎のガス感度を示すグラフである。
【図3】(a)は酸化スズへのアンチモンの固溶量を変えたときの酸化スズの格子定数の変化を示すグラフであり、(b)はアンチモンの固溶量を変えて、長期高温動作をしたときのベースのセンサ出力の経時変化を示すグラフである。
【図4】(a)は酸化スズへのセリウムの固溶量を変えたときの酸化スズの粒径の変化を示すグラフであり、(b)はセリウムの固溶有無によるメタンガスに対するガス感度の変化を示すグラフである。
【図5】長期高温動作をしたときの、酸化スズへのセリウムの固溶有無によるベースのセンサ出力の経時変化を示すグラフである。
【図6】酸化スズへのセリウムの固溶量を変えたときの酸化スズの格子定数の変化を示すグラフである。
【図7】別実施形態に係る半導体式ガス検知素子の概略図である。
【図8】(a)は触媒層を設けない場合の各ガス種に対するガス感度の変化を示すグラフであり、(b)は触媒層として酸化スズを用いた場合の各ガス種に対するガス感度の変化を示すグラフであり、(c)は触媒層として酸化スズにセリウムを固溶させたものを用いた場合の各ガス種に対するガス感度の変化を示すグラフであり、(d)は触媒層としてセリウムを固溶させた酸化スズに白金を担持させたものを用いた場合の各ガス種に対するガス感度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る半導体式ガス検知素子の一実施形態について、図面を参照して説明する。但し、本発明はこれに限られるものではない。
【0018】
本実施形態の半導体式ガス検知素子は、図1に示すように、コイル状の貴金属線1にガス感応部2を設けたものである。貴金属線1は、材質、線径、コイル径、コイル巻数等、特に限定されるものではなく、半導体式ガス検知素子において、一般に用いられるものを適用できる。
【0019】
ガス感応部2は、酸化スズに、アンチモンを0.8mol%以下の範囲、セリウムを0.8mol%以下の範囲で、固溶させたものである。
【0020】
アンチモンは、酸化スズに固溶させることにより、酸化スズの電気抵抗を小さくすることができ、被検知ガスに対するガス感度を向上させることができる。一方、アンチモンの酸化スズへの添加においては、半導体式ガス検知素子の作製直後には酸化スズに対してアンチモンが完全に固溶していない場合、半導体式ガス検知素子として高温で動作中に固溶が進み、センサ出力が不安定となる。このため、酸化スズへのアンチモンの固溶量は、後述する実施例で示すように、完全に固溶する0.8mol%以下としている。尚、酸化スズへのアンチモンの固溶量は、0.8mol%以下においては多い方が酸化スズの電気抵抗は小さくなるため好ましく、具体的には、0.1mol%〜0.8mol%が好ましく、0.2mol%〜0.8mol%がより好ましく、0.4mol%〜0.8mol%がさらに好ましく、0.6mol%〜0.8mol%がよりさらに好ましい。
【0021】
セリウムは、酸化スズに固溶させることにより、焼成時における酸化スズの粒成長を抑制し、酸化スズの一次粒子径を小さくすることができる。このため、酸化スズの粒子表面に吸着している吸着酸素の吸着・脱離による酸化スズの電気抵抗の変化を大きくすることができ、被検知ガスに対するガス感度を向上させることができる。また、半導体式ガス検知素子として高温で動作させた場合の酸化スズの粒成長も抑えることができるため、長期に亘る熱安定性を向上させることができる。尚、セリウムの場合にもアンチモンの場合と同様に、酸化スズへの添加量が多くなると、酸化スズに対してセリウムが完全に固溶せず、センサ出力が不安定となる。このため、酸化スズへのセンサの固溶量は、後述する実施例で示すように、完全に固溶する0.8mol%以下としている。酸化スズへのセリウムの固溶量も、0.8mol%以下においては多い方が好ましく、具体的には、0.1mol%〜0.8mol%が好ましく、0.2mol%〜0.8mol%がより好ましく、0.4mol%〜0.8mol%がさらに好ましく、0.6mol%〜0.8mol%がよりさらに好ましい。
【0022】
また、酸化スズにアンチモンを固溶させると、その固溶量に応じて酸化スズの電気抵抗は低下する。一方、アンチモンを固溶させた酸化スズに、さらにセリウムを固溶させると、その固溶量に応じて酸化スズの電気抵抗の低下率が小さくなる。このため、酸化スズに固溶させるアンチモンとセリウムとは、その比率がCe/Sb≦1となるように固溶させることが好ましい。これにより、アンチモンの酸化スズに対する電気抵抗の寄与率がセリウムの酸化スズに対する電気抵抗の寄与率より大きくなるため、酸化スズの粒成長を抑えつつ、酸化スズの電気抵抗を小さくすることができる。このような観点から、Ce/Sb≦0.4(mol%)/0.6(mol%)となるように固溶することがより好ましい。
【0023】
ガス感応部2は、共沈法等の従来公知の方法により酸化スズにアンチモン及びセリウムを固溶させた後、焼成(か焼)することにより作製することができる。焼成温度は、通常600℃〜900℃であるが、特にアンチモンの固溶量を多くする場合には高い方が好ましく、例えば、700℃〜900℃が好ましい。一方、焼成温度が高くなると、粒成長が促進され、酸化スズの一次粒子径が大きくなる傾向にある。この点についても、本発明のように、酸化スズに対し、アンチモンをセリウムと共に固溶させた場合には、多くの量のアンチモンを固溶させるべく焼成温度を高くしても、同時に固溶させたセリウムにより粒成長を抑えることができる。
【0024】
本発明に係る半導体式ガス検知素子では、被検知ガスは、特に限定されないが、後述の実施例に示すように、特にメタンに対してガス感度が向上することがわかっている。
【実施例1】
【0025】
以下に、本発明を用いた実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
図1に示す半導体式ガス検知素子において、貴金属線1として白金コイル(線径20μm、コイル径0.28μm、コイル巻数12ターン)を用い、ガス感応部2として酸化スズ(SnO2)にアンチモン(Sb)を固溶させたものを用い、アンチモンの固溶量を変えた場合のガス感応部2の抵抗値の変化、及び10ppm〜5000ppmのメタンガス(CH4)に対するガス感度(Rair/Rgas)の変化について調べた。尚、ガス感応部2は、共沈法により酸化スズにアンチモンを固溶させた後、600〜900℃で焼成することにより作製した。
【0026】
その結果、図2(a)に示すように、酸化スズにアンチモンを固溶させることによって、その固溶量の増加に応じて抵抗値が小さくなることが確認できた。特に、アンチモンの固溶量に関しては、0〜0.8mol%の範囲で抵抗値は急激に小さくなり、それ以降では抵抗値の変化は緩やかになっていることがわかった。
メタンガスに対するガス感度についても、図2(b)に示すように、アンチモンの固溶量の増加に応じて、ガス感度が高くなることが確認できた。また、アンチモンの固溶量が増えることにより、メタンガスの濃度差によるガス感度の差が大きくなり、ガス濃度に対する精度も向上していることがわかった。
したがって、ガス感度の観点からは、酸化スズに固溶させるアンチモンの量は、0.1mol%以上が好ましく、0.2mol%以上がより好ましく、0.4mol%以上がさらに好ましく、0.6mol%以上がよりさらに好ましいことがわかった。
【0027】
(実施例1−2)
酸化スズにアンチモンを固溶させた場合において、アンチモンの固溶量を変えた場合の酸化スズの格子定数の変化を調べた。また、実施例1−1と同様の半導体式ガス検知素子を用い、酸化スズにアンチモンを固溶させない場合、アンチモンをそれぞれ0.2mol%、0.8mol%、1.0mol%固溶させた場合の長期高温(350〜600℃)動作中におけるベースのセンサ出力の経時変化を調べた。
【0028】
その結果、図3(a)に示すように、アンチモンの固溶量が0.8mol%を越えたあたりから、アンチモンの固溶量に対する格子定数の増加割合に関して直線性が保てなくなることがわかった。すなわち、格子定数の大きさは、ドーパントの添加量に依存して、直線的に変化するというベガード則が成り立っていないことがわかった。
また、図3(b)に示すように、アンチモンの固溶量が0.8mol%までは、高温で動作させてもベース出力は経時変化しないのに対し、アンチモンの固溶量が1.0mol%では、ベース出力が経時的に上昇していることがわかった。これは、ガス感応部2を作製(焼成)した時点では固溶が完了しておらず、その後のガス検知素子の高温動作中に固溶がさらに進行したためであると考えられる。
以上より、アンチモンの固溶量が0.8mol%を越えると酸化スズに完全に固溶できていないことがわかった。
【0029】
実施例1−1及び1−2より、ガス検知素子として用いるためには、酸化スズに固溶するアンチモンの量は0.8mol%以下とする必要があり、ガス感度を考慮すれば、0.1mol%〜0.8mol%が好ましく、0.2mol%〜0.8mol%がより好ましく、0.4mol%〜0.8mol%がさらに好ましく、0.6mol%〜0.8mol%がよりさらに好ましいことがわかった。
【0030】
(実施例1−3)
実施例1−1と同様の半導体式ガス検知素子において、ガス感応部2として酸化スズに固溶させる金属をアンチモンからセリウム(Ce)に変え、セリウムの固溶量を変えた場合のガス感応部2を構成する酸化スズの粒径の変化を調べた。また、ガス感応部2として、(0.4mol%)Ce−(0.6mol%)Sb−SnO2と、電気抵抗が同じになるように調製した(0.4mol%)Sb−SnO2とを用い、メタンガスの濃度を変化させた場合のガス感度の変化、及び長期高温動作中におけるベースのセンサ出力の経時変化について調べた。
【0031】
その結果、図4(a)に示すように、酸化スズの一次粒子径はセリウムの固溶量の増加に応じて小さくなることが確認できた。
また、図4(b)に示すように、ガス感応部2の電気抵抗を同じにした場合には、メタンガスに対する感度は、セリウムを固溶させて酸化スズの一次粒子径を小さくしたものの方が大きくなっていることがわかった。
さらに、図5に示すように、セリウムを固溶させた場合((0.4mol%)Ce−(0.6mol%)Sb−SnO2)には、セリウムを固溶していない場合((0.4mol%)Sb−SnO2)に比べて、センサ出力の経時変化が小さいことがわかった。これは、セリウムを固溶させることで、高温動作中における粒成長を抑えることができたためであると考えられる。
したがって、酸化スズにセリウムを固溶させることにより、ガス感応部2における酸化スズの粒成長を抑えることができ、ガス検知素子としての熱安定性を向上させることができることがわかった。
【0032】
(実施例1−4)
酸化スズにセリウムを固溶させた場合において、セリウムの固溶量を変えた場合の酸化スズの格子定数の変化を調べた。
【0033】
その結果、図6に示すように、セリウムの固溶量が0.8mol%を越えたあたりから、ベガード則が成立しておらず、セリウムの固溶量が0.8mol%を越えると酸化スズに完全に固溶できていないことがわかった。
【0034】
以上より、ガス検知素子として用いるためには、酸化スズに固溶するセリウムの量は0.8mol%以下とする必要がある。一方、酸化スズの粒成長を抑え、ガス感度を向上させるため、及び熱安定性を向上させるためには、セリウムの固溶量が多い方が好ましい。このため、酸化スズへのセリウムの固溶量は、0.1mol%〜0.8mol%が好ましく、0.2mol%〜0.8mol%がより好ましく、0.4mol%〜0.8mol%がさらに好ましく、0.6mol%〜0.8mol%がよりさらに好ましい。
【0035】
〔別実施形態〕
上記の実施形態に係る半導体式ガス検知素子において、図7に示すように、ガス感応部2を被覆する触媒層3をさらに設けることもできる。触媒層3を構成する材料としては、酸化スズにセリウムを0.8mol%以下の範囲で固溶させたものが好ましい。セリウムは、上述の通り、酸化スズに固溶させることにより、焼成時における酸化スズの粒成長を抑制し、酸化スズの一次粒子径を小さくすることができる。このため、触媒層の比表面積を向上させることができ、被検知ガスに対する選択性を向上させることができる。酸化スズへのセリウムの固溶量は、上述の通り、完全に固溶する0.8mol%以下としている。酸化スズへのセリウムの固溶量も、0.8mol%以下においては多い方が好ましく、具体的には、0.1mol%〜0.8mol%が好ましく、0.2mol%〜0.8mol%がより好ましく、0.4mol%〜0.8mol%がさらに好ましく、0.6mol%〜0.8mol%がよりさらに好ましい。
また、触媒層を構成する材料の表面に、白金、パラジウム、金、ロジウム、ルテニウム、イリジウムのうちの少なくともいずれか一種の貴金属触媒を担持させることもできる。
【実施例2】
【0036】
(実施例2−1)
図7に示す半導体式ガス検知素子において、貴金属線1として実施例1−1と同様の白金コイルを用い、ガス感応部2として(0.4mol%)Ce−(0.6mol%)Sb−SnO2を用い、(a)触媒層3を設けない場合、触媒層3として、(b)SnO2を用いた場合、(c)酸化スズにセリウムを固溶させた(0.7mol%)Ce−SnO2を用いた場合、(d)(0.7mol%)Ce−SnO2に(1mol%)Ptを担持させたものを用いた場合について、メタン(CH4)、イソブタン(i−C48)、エタノール(EtOH)、水素(H2)に対するガス感度を調べた。
【0037】
その結果、触媒層3を設けない図8(a)に示す場合に比べて、触媒層3を設けた図8(b)〜(d)では、H2、EtOHに対するガス感度が小さくなり、炭化水素選択性が向上していることがわかった。
触媒層3を設けたものの中では、SnO2を用いた図8(b)の場合に比べ、(0.7mol%)Ce−SnO2を用いた図8(c)の場合では、炭化水素選択性がさらに向上し、(0.7mol%)Ce−SnO2に(1mol%)Ptを担持させたものを用いた図8(d)の場合では、メタン選択性が向上していることがわかった。
以上により、ガス選択性を向上させるためには、ガス感応部2に触媒層3を設けることが好ましく、触媒層3としては、酸化スズにセリウムを固溶させたものが好ましく、酸化スズにセリウムを固溶させたものに貴金属触媒を担持させたものがより好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る半導体式ガス検知素子は、被検知ガスに対して高感度であるため、各種ガスセンサ、各種ガス警報器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 貴金属線
2 ガス感応層
3 触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属線にガス感応部を設けた半導体式ガス検知素子であって、
前記ガス感応部は、酸化スズに、アンチモンを0.8mol%以下の範囲、セリウムを0.8mol%以下の範囲で、固溶させてある半導体式ガス検知素子。
【請求項2】
酸化スズに固溶させるセリウムとアンチモンとの比率が、Ce/Sb≦1である請求項1に記載の半導体式ガス検知素子。
【請求項3】
前記ガス感応部を被覆する触媒層をさらに備え、前記触媒層は、酸化スズにセリウムを0.8mol%以下の範囲で固溶させてある請求項1または2に記載の半導体式ガス検知素子。
【請求項4】
前記触媒層に、白金、パラジウム、金、ロジウム、ルテニウム、イリジウムのうちの少なくともいずれか一種の貴金属触媒を担持させてある請求項3に記載の半導体式ガス検知素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112701(P2012−112701A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260066(P2010−260066)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 電気化学会 化学センサ研究会 刊行物名 Chemical Sensors Vol.26,Supplement B(2010) 発行年月日 平成22年9月2日
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】