説明

半導体用接着フィルム、これを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置並びに半導体装置の製造方法

【課題】フォトソルダーレジストに対して十分な接着力を有し、なおかつパッケージ組み立て後に簡易に剥離可能であり、さらにはパッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぎ、かつ半導体用途に必要とされる諸特性を兼ね備える半導体用接着フィルム、これを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置並びに高密度化、小面積化及び薄型化した半導体装置を優れた生産性で製造することのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】フォトソルダーレジストに接着フィルムを貼付けて保護し、半導体パッケージ組み立て後に引き剥がす方法に使用される半導体用接着フィルム6であって、半導体用接着フィルム6は支持フィルムの片面に樹脂層が形成されて成り、前記支持フィルムの25℃における弾性率が5GPa以上、50GPa以下である半導体用接着フィルム、これを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置並びに半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトソルダーレジストに対する接着力が良好で、半導体パッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りが少なく、なおかつ半導体パッケージ組み立て後、簡便に剥がせる半導体用接着フィルム、この半導体用接着フィルムを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージは、特許文献1に示されるように、ダイパッド上に銀ペーストなどの接着剤により半導体素子を接着し、これとリードフレームをワイヤで接合した後に、外部接続用のアウターリードを残して全体を封止する構造のパッケージが用いられてきた。その中には、例えばQFP(uad lat ackage)構造などがあるが、小面積化、薄型化の点では未だ課題を有していた。
【0003】
これらの課題を解決するために、パッケージの片面(半導体素子側)のみを封止し、裏面のむき出しのリードフレームを外部接続用に用いる構造のパッケージが開発されてきた(例えばQFN(uad lat on lead package))。この構造のパッケージは、リードフレームが封止樹脂から突出していないので、小面積化及び薄型化が図れる。
【0004】
しかし近年では、一層の小面積化及び薄型化が求められている。例えば、特許文献2などには、リードフレームを用いずにフォトソルダーレジストを基板材料として用いることにより、薄型化した半導体装置が挙げられている。しかし、この場合、パッケージが非常に薄いためパッケージ組み立て中に半導体パッケージ用基板が反りやすいという問題点がある。
【0005】
このためパッケージ組み立て中に基板を支持するための半導体用接着フィルムが必要である。このような用途に用いる半導体用接着フィルムは、パッケージ組み立て中に基板を支持するためにフォトソルダーレジストに対して十分な接着力が必要であり、なおかつパッケージ組み立て後に簡便に引き剥がせる必要がある。さらにはパッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぐ必要がある。このように相反する特性を満たす半導体用接着フィルムは開発されてなかった。
【特許文献1】特開2001−329243号公報
【特許文献2】特開2006−295114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フォトソルダーレジストに対して十分な接着力を有し、なおかつ半導体パッケージ組み立て後に簡便に剥離可能であり、さらには半導体パッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぎ、かつ半導体用途に必要とされる諸特性を兼ね備える半導体用接着フィルム、これを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
また、本発明は、高密度化、小面積化及び薄型化した半導体装置を優れた生産性で製造することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)フォトソルダーレジストに半導体用接着フィルムを貼り付けて保護し、半導体パッケージ組み立て後に引き剥がす方法に使用される半導体用接着フィルムであって、
前記半導体用接着フィルムは支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成され成り、前記支持フィルムの25℃における弾性率が5GPa以上、50GPa以下である半導体用接着フィルムに関する。
【0009】
また、本発明は、(2)前記支持フィルムの200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が、0.15%以下である前記(1)記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0010】
また、本発明は、(3)前記支持フィルムの20〜200℃における線熱膨張係数が、2.0×10−5/℃以下である前記(1)又は(2)記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0011】
また、本発明は、(4)前記支持フィルムのガラス転移温度が、200℃以上である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、(5)前記支持フィルムの材質が、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートからなる群から選ばれる前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、(6)前記支持フィルムの材質が、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルからなる群から選ばれる前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、(7)前記支持フィルムの厚さが、10〜200μmである前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0015】
また、本発明は、(8)前記樹脂層Aの厚さが2〜50μmである前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0016】
また、本発明は、(9)前記樹脂層Aが5重量%減少する温度が、200℃以上である前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、(10)前記半導体用接着フィルムの樹脂層Aをフォトソルダーレジストに接着した後の、樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの25℃における90度ピール強度が、5N/m以上、200N/m以下である前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0018】
また、本発明は、(11)前記樹脂層Aが、アクリル系樹脂からなる前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムに関する。
【0019】
また、本発明は、(12)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを用いて得られる半導体パッケージ用基板に関する。
【0020】
また、本発明は、(13)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを用いて得られる半導体装置に関する。
【0021】
また、本発明は、(14)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを複数のパターンからなるフォトソルダーレジストに接着してなる半導体パッケージ用基板に半導体素子を搭載する工程、半導体パッケージ用基板の内部接続端子と半導体素子とを接続する工程、半導体パッケージ用基板の露出面及び半導体素子を封止材で封止して半導体パッケージを組み立てる工程、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストから剥離する工程からなる半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フォトソルダーレジストに対して十分な接着力を有し、なおかつ半導体パッケージ組み立て後に簡便に剥離可能であり、さらには半導体パッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぎ、かつ半導体用途に必要とされる諸特性を兼ね備える半導体用接着フィルム、これを用いた半導体パッケージ用基板及び半導体装置を提供することができる。また、本発明は、高密度化、小面積化及び薄型化した半導体装置を優れた生産性で製造することのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明になる半導体用接着フィルム、半導体パッケージ用基板及び半導体装置並びに半導体装置の製造方法について詳しく説明する。
【0024】
(半導体用接着フィルム)
本発明の半導体用接着フィルムは、例えば、半導体装置の製造法に好適に使用することができる。本発明の半導体用接着フィルムを半導体装置の製造法に使用する場合、下記の工程からなる方法により半導体装置を製造することが好ましい。図1−1及び図1−2を参照して説明する。
【0025】
即ち、(1)銅箔aに剥離可能層を介して銅箔bを形成したピーラブル銅箔1と接着テープ2を、銅箔bと接着テープ2が接する形で貼りあわせる工程(図1−1(1))、
(2)銅箔aにフォトソルダーレジスト3を塗工する工程(図1−1(2))、
(3)露光、現像工程を経てフォトソルダーレジスト3にパターンを形成する工程(図1−1(3))、
(4)レジスト開口部にニッケル、金等からなるメッキ4を施す工程(図1−1(4))、
(5)メッキ面側に表面保護と支持のために、メッキ保護フィルム5を貼る工程(図1−1(5))、
(6)接着テープ2を銅箔bとともに引き剥がす工程(図1−1(6))、
(7)銅箔bを引き剥がすことによって露出した銅箔aをフォトエッチングにより配線加工し、表面にメッキを施す工程(図1−2(7))、
(8)メッキ保護フィルム5を引き剥がし、フォトソルダーレジスト3面を露出させる工程(図1−2(8))、
(9)フォトソルダーレジスト3の露出面に、0〜200℃で本発明の半導体用接着フィルム6を接着して半導体パッケージ用基板を作製する工程(図1−2(9))、
(10)反対側のフォトソルダーレジスト3の露出面上に銀ペーストなどの接着剤を用いて半導体素子7を接着し、140〜200℃で30分〜2時間の加熱を行うことにより、銀ペースト等の接着剤を硬化する工程(図1−2(10))、
(11)150〜250℃で3分〜1時間加熱して、基板の内部接続端子と半導体素子7とをワイヤ8などにより接続する工程(図1−2(11))、
(12)複数の半導体素子7及び複数のワイヤ8を封止材9で一括封止して半導体パッケージを組み立てる工程(図1−2(12))、
(13)本発明の半導体用接着フィルム6をフォトソルダーレジスト3から剥離する工程(図1−2(13))、
(14)150〜200℃で4〜6時間の加熱を行うことにより、封止材9を硬化する工程、
(15)封止した半導体パッケージを分割することにより、各々1個の半導体素子7を有する複数の半導体装置を得る工程、からなる。
【0026】
また、上記(11)の工程において半導体素子の電極パッドと基板の内部接続端子とをワイヤで接続する方法のかわりに、バンプ付き半導体素子をフェイスダウンで配線に接合することもできる。
【0027】
また、上記(8)〜(9)の工程においてメッキ保護フィルム5を引き剥がして本発明の半導体用接着フィルム6を接着するかわりに、上記(5)の工程においてメッキ保護フィルム5のかわりに本発明の半導体用接着フィルム6をメッキ面側に貼り、そのまま引き剥がさずに上記(10)以降の工程を行い、複数の半導体素子7及び複数のワイヤを封止材9で一括封止した後に、半導体用接着フィルム6をフォトソルダーレジスト3から剥離することもできる。この場合、半導体用接着フィルム6はメッキ保護フィルム5に必要とされる諸特性も併せ持つ必要がある。
【0028】
本発明の半導体用接着フィルムはフォトソルダーレジストに半導体用接着フィルムを貼り付けて保護し、半導体パッケージ組み立て後に引き剥がす方法に使用される半導体用接着フィルムであり、前記半導体用接着フィルムは支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成され成り、前記支持フィルムの25℃における弾性率が5GPa以上、50GPa以下であることを特徴としている。前記支持フィルムは、パッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぎ、なおかつワイヤボンド時の作業性を向上してワイヤ接合不良を低減するために、25℃での弾性率が5GPa以上であり、8GPa以上であることが好ましい。またフォトソルダーレジストに貼る際の作業性を向上するために25℃における弾性率が50GPa以下であり、30GPa以下であることが好ましく、20GPa以下であることがより好ましい。なお、支持フィルムの25℃における弾性率は、動的粘弾性測定装置「DVE RHEOSPECTOLER」(レオロジ社製)を用いて、測定周波数10Hzの引張モードによって測定することができる。
【0029】
本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムは、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストに貼り付けた後の半導体パッケージ用基板の反りを低減するために、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.15%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。なお、支持フィルムの加熱収縮率はJIS C2318に準拠して測定することができる。
【0030】
本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムは、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストに貼り付けた後の半導体パッケージ用基板の反りを低減するために、20〜200℃における線熱膨張係数が2.0×10−5/℃以下であることが好ましく、1.5×10−5/℃以下であることがより好ましく、1.0×10−5/℃以下であることが特に好ましい。なお、支持フィルムの線熱膨張係数は、熱機械的分析装置「TMA−120」(セイコー電子工業製)を用いて、昇温速度10℃/分、荷重10gの引張モードにより測定することができる。
本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムは、耐熱性を向上させるために、ガラス転移温度が200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが特に好ましい。なお、支持フィルムのガラス転移温度は、熱機械的分析装置「TMA−120」(セイコー電子工業製)を用いて、昇温速度10℃/分、荷重10gの引張モードにより測定することができる。
【0031】
本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムの材質は、特に制限はないが、半導体装置の製造工程中の熱に耐えられるよう耐熱性樹脂が好ましく、例えば、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。上記の耐熱性樹脂からなる支持フィルムを用いることにより、ワイヤボンド工程、封止工程等の熱の加わる工程において、支持フィルムが軟化せず効率よく作業を行うことができる。
【0032】
また、上記の耐熱性樹脂の中でも、耐熱性が高く、線熱膨張係数が低く、加熱収縮率が小さいという点で芳香族ポリイミドが特に好ましい。芳香族ポリイミドからなる支持フィルムを用いることにより、ワイヤボンド時の支持フィルムの軟化によるワイヤ接合不良や、半導体パッケージ用基板との剥がれを防止できる。
【0033】
また、本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムの材質としては、上記した樹脂以外に、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルよりなる群から選ばれる金属板を使用することが好ましい。上記の金属板を用いることにより、ワイヤボンド工程、封止工程などの熱の加わる工程において、支持フィルムが軟化せず効率よく作業を行うことができる。上記の金属板の中でも、半導体パッケージ用基板に用いられている銅箔と線熱膨張係数を近づけて半導体パッケージ用基板の反りを低減するために、銅を用いることが特に好ましい。
【0034】
本発明の半導体用接着フィルムに用いられる支持フィルムの厚さは、10〜200μmであることが好ましい。前記支持フィルムの厚さが10μm未満であると引き剥がす際に支持フィルムが裂けやすく、200μmを超えると作業性が低下するともに材料費が高くなりやすい。
【0035】
本発明の半導体用接着フィルムは支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成されて成り、前記樹脂層Aの厚さは2〜50μmであることが好ましい。前記樹脂層Aの厚さが2μm未満であると接着力が低下して半導体パッケージから半導体用接着フィルムが剥がれやすく、50μmを越えるとワイヤボンドする際、ワイヤの接合不良が生じやすい。同様の理由から樹脂層Aの厚さは3〜30μmであることがより好ましく、4〜25μmであることが特に好ましい。
【0036】
前記樹脂層Aが5重量%減少する温度は、200℃以上であることが好ましい。前記樹脂層Aが5重量%減少する温度が200℃未満の場合、ワイヤボンド工程における熱でアウトガスが生じ、リードフレームやワイヤを汚染しやすい傾向がある。同様の理由から、樹脂層Aが5重量%減少する温度は、250℃以上であることがより好ましい。なお、樹脂層Aが5重量%減少する温度は、示差熱天秤(セイコー電子工業製、TG/DTA−220)により、昇温速度10℃/分で測定して求めることができる。
【0037】
本発明の半導体用接着フィルムは、樹脂層Aをフォトソルダーレジストに接着した後の、樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの25℃における90度ピール強度が5N/m以上、200N/m以下であることが好ましい。前記90度ピール強度が5N/m未満であると、半導体用接着フィルムがフォトソルダーレジストから剥がれやすく、200N/mを超えると、半導体パッケージ組み立て後、半導体用接着フィルムを剥がす際に剥がし難くくなる。同様の理由から前記90度ピール強度は10N/m以上、150N/m以下であることがより好ましく、20N/m以上、100N/m以下であることが特に好ましい。
【0038】
本発明において、樹脂Aとフォトソルダーレジストとの25℃における90度ピール強度は、JIS Z 0237の90度引き剥がし法に準じて、フォトソルダーレジストに対して半導体用接着フィルムを90度方向に引き剥がして測定する。具体的には、25℃において、毎分270〜330mmの速さで半導体用接着フィルムを引きはがす際の90度ピール強度を、90度剥離試験機(テスタ産業製)で測定することができる。
【0039】
本発明において、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストに接着する際の接着条件は特に制限はないが、接着温度は0〜200℃の間であることが好ましく、0〜150℃の間であることがより好ましく、0〜100℃の間であることが特に好ましい。接着温度が0℃未満の場合、樹脂Aとフォトソルダーレジストとの25℃における90度ピール強度が低下する傾向がある。また200℃を超えると、フォトソルダーレジストが熱劣化しやすい。
【0040】
前記樹脂層Aの形成に用いられる樹脂は特に制限はないが、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらのなかでもアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂からなる樹脂層Aを用いた場合、0〜200℃でフォトソルダーレジストに接着した際、十分な接着力を得ることができる。また高温での弾性率が高いため、ワイヤボンド工程での熱により樹脂層Aが軟化しにくく、ワイヤの接合不良が生じにくい。さらには耐熱性に優れるためワイヤボンドや封止時の熱で劣化しにくく、このため半導体用接着フィルムを剥がす際に糊残りが生じにくい。
【0041】
上記において、アクリル系樹脂の代わりにブチルゴムなどの粘着剤を用いた場合、ワイヤボンドや封止時の熱で劣化して、半導体用接着フィルムを剥がす際に糊残りが生じやすい。またシリコーン系樹脂を用いた場合、高温での弾性率が低いため、ワイヤボンド工程での熱により、樹脂層が軟化しやすく、ワイヤの接合不良が生じやすい。
【0042】
上記アクリル系樹脂の組成は特に制限はないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアルキル基が1〜8の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。特にフォトソルダーレジストに対する接着力を向上するために、アクリル酸2−エチルヘキシルを含むことが好ましい。また耐熱性を向上するために、アクリル酸2−エチルヘキシルの他に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルを併用することが好ましい。
【0043】
また、架橋剤に対する反応性を高めるために、前記アクリル酸アルキルエステルに他のモノマーを共重合することが好ましい。共重合するモノマーは特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル等の水酸基含有モノマー;酢酸ビニル等のビニルモノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有モノマー;アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、メタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、アクリル酸ポリプロピレングリコールエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールエステル、アクリル酸セルロースエステル、メタクリル酸セルロースエステル等のエーテル基含有モノマー;イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャルブチルアミノエチルアクリレート、ターシャルブチルアミノエチルメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン等が好ましい。
【0044】
上記アクリル系樹脂は、高温での弾性率を高めてワイヤボンド工程でのワイヤ接合不良を防止するために、架橋剤を添加することが好ましい。
【0045】
架橋剤の種類は特に制限はないが、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン4−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシル)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシルアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が好ましい。
【0046】
本発明の半導体用接着フィルムは、180℃で1時間加熱した後の180℃での弾性率が0.01MPa以上、50MPa以下のアクリル系粘着剤を支持フィルムに形成したものであることが好ましい。
【0047】
即ち、本発明の製造方法においては、通常、フォトソルダーレジストの露出面上に銀ペースト等の接着剤を用いて半導体素子を接着し、140〜200℃(好ましくは180℃)で、30分〜2時間(好ましくは1時間)の加熱を行うことにより銀ペースト等の接着剤を硬化する工程が行われる。
【0048】
その後、150〜250℃(好ましくは180℃)で3分〜1時間加熱して、基板のボンディングパッドと半導体素子とに金線等のワイヤボンドを行う工程が行われる。このため、180℃で1時間加熱した後の180℃での弾性率がワイヤボンド時の作業性に大きな影響を与えることを本発明者らは見出した。
【0049】
アクリル系粘着剤の180℃での弾性率が0.01MPa未満の場合、応力が十分伝わらず、ワイヤ接合不良が生じやすい。
【0050】
また、50MPaを超えると半導体用接着フィルムとリードフレームとの接着力が低下しやすい。同様の理由で、180℃での弾性率は0.1MPa以上、10MPa以下であることがより好ましく、0.3MPa以上、5MPa以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の半導体用接着フィルムは支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成されて成るものである。支持フィルム上に樹脂層Aを形成する方法は、特に制限はなく、例えば、樹脂層Aを形成する樹脂を溶剤に溶解して作製した接着剤ワニスを支持フィルムの片面に塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去する方法が挙げられる。接着剤ワニスを塗布する方法は、特に制限されず、例えば、ロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコートなどを用いて行うことができる。
【0052】
また、本発明の半導体用接着フィルムは、支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成され、前記樹脂層Aの上に離型用のカバーフィルムを設けてなる半導体用接着フィルムであり、フォトソルダーレジストに半導体用接着フィルムを接着する時に前記カバーフィルムを剥離して使用することが好ましい。離型用のカバーフィルムを設けることにより、半導体用接着フィルムにテープを巻いて保管する際にテープが半導体用接着フィルムにくっついて剥がれなくなることが防止できる。また、離型用のカバーフィルムを設けることにより、巻いてあるテープからテープを簡単に引き出して使用することができる。
【0053】
上記カバーフィルムの材質は特に制限はないが、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。
【0054】
(半導体パッケージ用基板)
本発明の半導体パッケージ用基板は、上記本発明の半導体用接着フィルムの樹脂層Aをフォトソルダーレジストに接して接着することにより製造することができる。フォトソルダーレジストは、通常、複数のパターンを有している。フォトソルダーレジストへの半導体用接着フィルムの接着条件は特に制限はないが、接着温度は0〜200℃であることが好ましく、25〜100℃であることがより好ましい。接着温度が0℃未満の場合、接着力が低下しやすい傾向があり、200℃を超える場合、フォトソルダーレジストが熱劣化しやすい傾向がある。フォトソルダーレジストへの半導体用接着フィルムの接着圧力は0.01〜3MPaであることが好ましく、0.1〜1MPaであることがより好ましい。接着圧力が0.01MPa未満の場合、接着力が低下しやすい傾向があり、3MPaを超える場合、フォトソルダーレジストが破損しやすい傾向がある。フォトソルダーレジストへの半導体用接着フィルムの接着時間は0.1〜5秒であることが好ましく、0.5〜3秒であることがより好ましい。接着時間が0.1秒未満の場合、接着力が低下しやすい傾向があり、5秒を超える場合、生産性が低下しやすい傾向がある。
(半導体装置及び半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置は、上記本発明の半導体用接着フィルムを用いて得られるものである。
【0055】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記本発明の半導体用接着フィルムを複数のパターンからなるフォトソルダーレジストに接着してなる半導体パッケージ用基板に半導体素子を搭載する工程、半導体パッケージ用基板の内部接続端子と半導体素子とを接続する工程、半導体パッケージ用基板の露出面及び半導体素子を封止材で封止して半導体パッケージを組み立てる工程、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストから剥離する工程からなることを特徴とする。
【0056】
本発明の半導体装置の製造方法を、図1−1及び図1−2を参考に具体的に示すと以下の工程(1)〜(15)からなる。
【0057】
(1)銅箔aに剥離可能層を介して銅箔bを形成したピーラブル銅箔1と接着テープ2を、銅箔bと接着テープ2が接する形で貼りあわせる工程(図1−1(1))、
(2)銅箔aにフォトソルダーレジスト3を塗工する工程(図1−1(2))、
(3)露光、現像工程を経てフォトソルダーレジスト3にパターンを形成する工程(図1−1(3))、
(4)レジスト開口部にニッケル、金等からなるメッキ4を施す工程(図1−1(4))、
(5)メッキ面側に表面保護と支持のために、メッキ保護フィルム5を貼る工程(図1−1(5))、
(6)接着テープ2を銅箔bとともに引き剥がす工程(図1−1(6))、
(7)銅箔bを引き剥がすことによって露出した銅箔aをフォトエッチングにより配線加工し、表面にメッキを施す工程(図1−2(7))、
(8)メッキ保護フィルム5を引き剥がし、フォトソルダーレジスト3面を露出させる工程(図1−2(8))、
(9)フォトソルダーレジスト3の露出面に本発明の半導体用接着フィルム6を接着して半導体パッケージ用基板を作製する工程(図1−2(9))、
(10)反対側のフォトソルダーレジスト3の露出面上に銀ペースト等の接着剤を用いて半導体素子7を接着し、銀ペースト等の接着剤を硬化する工程(図1−2(10))、
(11)基板の内部接続端子と半導体素子7とをワイヤ8などにより接続する工程(図1−2(11))、
(12)複数の半導体素子7及び複数のワイヤ8を封止材9で一括封止して半導体パッケージを組み立てる工程(図1−2(12))、
(13)本発明の半導体用接着フィルム6をフォトソルダーレジスト3から剥離する工程(図1−2(13))、
(14)封止材9を硬化する工程、
(15)封止した半導体パッケージを分割することにより、各々1個の半導体素子7を有する複数の半導体装置を得る工程、からなる。
【0058】
上記(11)の工程において半導体素子の電極パッドと基板の内部接続端子とをワイヤで接続するワイヤボンディング法のかわりに、バンプ付き半導体素子をフェイスダウンで配線に接合するフィリップチップ法で行なうこともできる。
【0059】
また、上記(8)〜(9)の工程においてメッキ保護フィルム5を引き剥がして本発明の半導体用接着フィルム6を接着するかわりに、上記(5)の工程においてメッキ保護フィルム5のかわりに本発明の半導体用接着フィルム6をメッキ面側に貼り、そのまま引き剥がさずに上記(10)以降の工程を行い、複数の半導体素子7及び複数のワイヤを封止材9で一括封止した後に、半導体用接着フィルム6をフォトソルダーレジスト3から剥離することもできる。この場合、半導体用接着フィルム6はメッキ保護フィルム5に必要とされる諸特性も併せ持つ必要がある。
【0060】
また、上記(15)の分割工程は、(12)の封止する工程又は(13)の半導体用接着フィルムを剥離する工程の後のいずれにおいて行ってもよい。
【0061】
上記(9)の工程において、フォトソルダーレジスト3の露出面に本発明の半導体用接着フィルム6を接着する際の接着条件は特に制限はないが、接着温度は0〜200℃の間であることが好ましく、0〜150℃の間であることがより好ましく、0〜100℃の間であることが特に好ましい。
【0062】
上記(10)の工程において、銀ペースト等の接着剤を硬化する際の条件は特に制限はないが、140〜200℃で30分〜2時間加熱を行なうことが好ましい。
【0063】
上記(11)の工程において、半導体素子と内部接続端子とを接続するのに用いるワイヤの材質は特に制限されず、例えば金線などが挙げられる。接続工程では、例えば、150〜250℃で3分〜1時間加熱してワイヤを接続する。
【0064】
上記(12)の工程において用いられる封止材の材質は特に制限されず、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂などのエポキシ樹脂等が挙げられる。前記封止材にはフィラー、ブロム化合物等の難燃性物質等の添加剤が添加されていてもよい。封止材による封止条件は特に制限はないが、通常、150〜200℃、圧力10〜15MPaで、2〜5分の加熱を行うことにより封止することができる。
【0065】
上記(13)の工程において、半導体用接着フィルムを引き剥がした際、フォトソルダーレジスト面及び金などからなるメッキ面に樹脂が残らないことが好ましい。樹脂の残留量が多い場合、外観が劣るだけでなく、メッキ面を外部接続用に用いると、接触不良の原因になりやすい。従って、半導体用接着フィルムを引き剥がした後に、フォトソルダーレジスト面及びメッキ面に残留した樹脂を機械的ブラッシング、溶剤、水、酸、アルカリ等で除去することが好ましい。溶剤には特に制限はないが、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等が好ましい。
【0066】
本発明の半導体用接着フィルムを用いて製造される半導体装置は、高密度化、小面積化、薄型化等の点で優れており、例えば携帯電話等の情報機器に組み込まれる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【0068】
実施例1
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックス25SGA、25℃における弾性率が9.1GPa、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.1%、20〜200℃における線熱膨張係数が1.2×10−5/℃、ガラス転移温度500℃以上)を用いた。該支持フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名SKダイン1439U、5重量%減少温度276℃)を塗布し、90℃で2分乾燥して、支持フィルムの片面に5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルム(I)を得た。
【0069】
次に図1−1及び図1−2に示すように、厚さ18μmの銅箔aに剥離可能層を介して厚さ3μmの銅箔bを形成したピーラブル銅箔とエポキシ系接着剤をポリイミド支持基材に塗工した接着テープ2を、銅箔bと接着テープ2が接する形で貼りあわせた。次に、銅箔aにフォトソルダーレジスト3を厚さ20μmで塗工し、露光、現像工程を経てレジストパターンを形成した。次いで、レジスト開口部にニッケル、金等からなるメッキ4を施し、メッキ面側に表面保護と支持のために、メッキ保護フィルム5を貼り、接着テープ2を銅箔bと共に引き剥がした。銅箔bを引き剥がすことによって露出した銅箔aをフォトエッチングにより配線加工し、表面にメッキを施した後、メッキ保護フィルム5を引き剥がして、露出したフォトソルダーレジスト3面に、上記で作製した半導体用接着フィルム(I)の樹脂層Aが接するように、25℃、圧力0.5MPa、時間1秒で接着し、半導体パッケージ用基板を作製した。
【0070】
上記半導体パッケージ用基板の25℃における樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、10N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じなかった。また、半導体パッケージ用基板の反りは0.5mmで作業性は良好だった。
【0071】
次いで、上記半導体パッケージ用基板のフォトソルダーレジスト3の露出面上に銀ペーストを用いて半導体素子7を接着し、175℃で60分間加熱して銀ペーストを硬化させた。内部接続端子と半導体素子7を金線を用い、200℃で5分加熱して接続した。複数の半導体素子7及びワイヤ8を封止材9(ビフェニルジエポキシ樹脂、日立化成工業(株)製、商品名CEL9220)を用い、温度180℃、圧力10MPa、時間3分で一括封止し、複数のパッケージが繋がった構造の半導体パッケージを組み立てた。
【0072】
前記組み立て工程中、半導体用接着フィルム(I)が半導体パッケージ用基板を支持しているため、作業性は良好であった。またいずれの工程でも問題は生じなかった。
【0073】
封止工程後、25℃でフォトソルダーレジスト3から半導体用接着フィルム(I)を引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、90度ピール強度は30N/mで、簡単に引き剥がせ、樹脂はフォトソルダーレジスト3にほとんど残留しなかった。ごくわずかに残留した樹脂もアセトンで洗浄することにより、除去することができた。
【0074】
その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材9を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
【0075】
さらに、このパッケージを分割して各々1つの半導体素子を有するパッケージを作製したが、工程中、問題はなかった。
【0076】
実施例2
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名カプトンEN、25℃における弾性率が5.7GPa、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.02%、20〜200℃における線熱膨張係数が1.5×10−5/℃、ガラス転移温度500℃以上)を用いた。該支持フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名SKダイン1439U)を塗布し、90℃で2分乾燥して、支持フィルムの片面に5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルム(II)を得た。
【0077】
半導体用接着フィルム(I)の代りに半導体用接着フィルム(II)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して、半導体パッケージ用基板を作製した。上記半導体パッケージ用基板の25℃における樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、10N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じなかった。また、半導体パッケージ用基板の反りは0.8mmで作業性は良好だった。
【0078】
さらに、実施例1と同様に操作して半導体パッケージを組み立てた。前記組み立て工程中、半導体用接着フィルム(II)が半導体パッケージ用基板を支持しているため、作業性は良好であった。またいずれの工程でも問題は生じなかった。
【0079】
封止工程後、25℃でフォトソルダーレジスト3から半導体用接着フィルム(II)を引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、90度ピール強度は30N/mで簡単に引き剥がせた。樹脂はフォトソルダーレジスト3にほとんど残留しなかった。ごくわずかに残留した樹脂もアセトンで洗浄することにより、除去することができた。
【0080】
その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材9を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
【0081】
さらに、このパッケージを分割して各々1つの半導体素子を有するパッケージを作製したが、工程中、問題はなかった。
【0082】
実施例3
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックス25SGA、25℃における弾性率が9.1GPa、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.1%、20〜200℃における線熱膨張係数が1.2×10−5/℃、ガラス転移温度500℃以上)を用いた。該支持フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名SKダイン1495、5重量%減少温度270℃)を塗布し、90℃で2分乾燥して、支持フィルムの片面に5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルム(III)を得た。
【0083】
半導体用接着フィルム(I)の代りに半導体用接着フィルム(III)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して、半導体パッケージ用基板を作製した。上記半導体パッケージ用基板の25℃における樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、20N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じなかった。また、半導体パッケージ用基板の反りは0.5mmで作業性は良好だった。
【0084】
さらに、実施例1と同様に操作して半導体パッケージを組み立てた。前記組み立て工程中、半導体用接着フィルム(III)が半導体パッケージ用基板を支持しているため、作業性は良好であった。またいずれの工程でも問題は生じなかった。
【0085】
封止工程後、25℃でフォトソルダーレジスト3から半導体用接着フィルム(III)を引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、90度ピール強度は40N/mで簡単に引き剥がせた。樹脂はフォトソルダーレジスト3にやや残留したものの、アセトンで洗浄することにより、除去することができた。
【0086】
その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材9を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
【0087】
さらに、このパッケージを分割して各々1つの半導体素子を有するパッケージを作製したが、工程中、問題はなかった。
【0088】
実施例4
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名ユーピレックス25SGA、25℃における弾性率が9.1GPa、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.1%、20〜200℃における線熱膨張係数が1.2×10−5/℃、ガラス転移温度500℃以上)を用いた。該支持フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名SKダイン1439U)を塗布し、90℃で2分乾燥して、支持フィルムの片面に5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルム(IV)を得た。
【0089】
実施例1におけるメッキ保護フィルム5のかわりに上記半導体用接着フィルム(IV)を、25℃、圧力0.5MPa、時間1秒でレジスト開口部に施されたメッキ面側に接着した。25℃における樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、10N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じなかった。
【0090】
その後、接着テープ2を、銅箔bと共に引き剥がした。銅箔bを引き剥がすことによって露出した銅箔aをフォトエッチングにより配線加工し、表面にメッキを施し、半導体パッケージ用基板を作製した。
【0091】
上記半導体パッケージ用基板の反りは0.5mmで作業性は良好だった。
【0092】
上記半導体パッケージ用基板を用いて、実施例1と同様に操作して半導体パッケージを組み立てた。前記組み立て工程中、半導体用接着フィルム(IV)が半導体パッケージ用基板を支持しているため、作業性は良好であった。またいずれの工程でも問題は生じなかった。
【0093】
封止工程後、25℃でフォトソルダーレジスト3から半導体用接着フィルム(IV)を引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、90度ピール強度は30N/mで簡単に引き剥がせた。樹脂はフォトソルダーレジスト3にやや残留したものの、アセトンで洗浄することにより、除去することができた。
【0094】
その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材9を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
【0095】
さらに、このパッケージを分割して各々1つの半導体素子を有するパッケージを作製したが、工程中、問題はなかった。
【0096】
比較例1
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名カプトンH、25℃における弾性率が3.4GPa、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.2%、20〜200℃における線熱膨張係数が2.7×10−5/℃、ガラス転移温度500℃以上)を用いた。該支持フィルムの片面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名SKダイン1439U)を塗布し、90℃で2分乾燥して、支持フィルムの片面に5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルム(V)を得た。
【0097】
半導体用接着フィルム(I)の代りに半導体用接着フィルム(V)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して、半導体パッケージ用基板を作製した。上記半導体パッケージ用基板の25℃における樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、10N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じなかった。また、半導体パッケージ用基板の反りは10mmで、作業性が低下した。
【0098】
さらに、実施例1と同様に操作して半導体パッケージを組み立てた。前記組み立て工程中、半導体用接着フィルム(V)の弾性率が低いため半導体パッケージ用基板を十分支持できず、作業性が低下した。またワイヤボンド時の接合不良が多発した。
【0099】
封止工程後、25℃でフォトソルダーレジスト3から半導体用接着フィルム(V)を引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、90度ピール強度は30N/mで簡単に引き剥がせた。樹脂はフォトソルダーレジスト3にほとんど残留しなかった。ごくわずかに残留した樹脂もアセトンで洗浄することにより、除去することができた。
【0100】
その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材9を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
【0101】
さらに、このパッケージを分割して各々1つの半導体素子を有するパッケージを作製したが、工程中、問題はなかった。
【0102】
以上の結果より、実施例1〜4の半導体用接着フィルムは25℃における弾性率が5GPa以上50GPa以下である支持フィルムを用いているため、フォトソルダーレジストに対して十分な接着力を有し、なおかつ半導体パッケージ組み立て後に簡便に剥離可能であり、さらには半導体パッケージ組み立て中の半導体パッケージ用基板の反りを防ぎ、半導体パッケージを高い作業性と生産性で製造できる。これに対して、比較例1の半導体用接着フィルムは25℃における弾性率が3.4GPaである支持フィルムを用いているため、半導体パッケージ用基板の反りが大きくなり、半導体パッケージ組み立て工程中、半導体パッケージ用基板を十分支持できず作業性が低下してしまった。またワイヤボンド時の接合不良が多発してしまい、生産性が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1−1】本発明になる半導体用パッケージ用基板の作業工程図である。
【図1−2】本発明になる半導体用パッケージ用基板の作業工程図である。
【図2】本発明になる半導体用接着フィルムを用いた半導体装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0104】
a 銅箔
b 銅箔
1 ピーラブル銅箔
2 接着テープ
3 フォトソルダーレジスト
4 メッキ
5 メッキ保護フィルム
6 半導体用接着フィルム
7 半導体素子
8 ワイヤ
9 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトソルダーレジストに半導体用接着フィルムを貼り付けて保護し、半導体パッケージ組み立て後に引き剥がす方法に使用される半導体用接着フィルムであって、
前記半導体用接着フィルムは支持フィルムの片面に樹脂層Aが形成され成り、前記支持フィルムの25℃における弾性率が5GPa以上、50GPa以下である半導体用接着フィルム。
【請求項2】
前記支持フィルムの200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が、0.15%以下である請求項1記載の半導体用接着フィルム。
【請求項3】
前記支持フィルムの20〜200℃における線熱膨張係数が、2.0×10−5/℃以下である請求項1又は2記載の半導体用接着フィルム。
【請求項4】
前記支持フィルムのガラス転移温度が、200℃以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項5】
前記支持フィルムの材質が、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートからなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項6】
前記支持フィルムの材質が、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項7】
前記支持フィルムの厚さが、10〜200μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項8】
前記樹脂層Aの厚さが2〜50μmである請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項9】
前記樹脂層Aが5重量%減少する温度が、200℃以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項10】
前記半導体用接着フィルムの樹脂層Aをフォトソルダーレジストに接着した後の、樹脂層Aとフォトソルダーレジストとの25℃における90度ピール強度が、5N/m以上、200N/m以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項11】
前記樹脂層Aが、アクリル系樹脂からなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを用いて得られる半導体パッケージ用基板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを用いて得られる半導体装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを複数のパターンからなるフォトソルダーレジストに接着してなる半導体パッケージ用基板に半導体素子を搭載する工程、半導体パッケージ用基板の内部接続端子と半導体素子とを接続する工程、半導体パッケージ用基板の露出面及び半導体素子を封止材で封止して半導体パッケージを組み立てる工程、半導体用接着フィルムをフォトソルダーレジストから剥離する工程からなる半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−33082(P2009−33082A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275158(P2007−275158)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】