半導体発光素子及びその製造方法
【課題】高効率の半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、積層構造体、第1電極、第2電極、高抵抗層及び透明導電層を備えた半導体発光素子が提供される。積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、それらの間の発光層と、を含む。第1電極は第1半導体層の第2半導体層とは反対側に設けられる。第2電極は第2半導体層の第1半導体層とは反対側に設けられ反射性を有す。高抵抗層は、第2半導体層と第2電極との間で第2半導体層に接し、第1半導体層から第2半導体層への方向に沿ってみたときに第1電極と重なる部分を有し、第2半導体層よりも抵抗が高い。透明導電層は、第2半導体層と第2電極との間で第2半導体層に接し、透過性を有し、第2半導体層よりも屈折率が低く、高抵抗層よりも抵抗が低い。
【解決手段】実施形態によれば、積層構造体、第1電極、第2電極、高抵抗層及び透明導電層を備えた半導体発光素子が提供される。積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、それらの間の発光層と、を含む。第1電極は第1半導体層の第2半導体層とは反対側に設けられる。第2電極は第2半導体層の第1半導体層とは反対側に設けられ反射性を有す。高抵抗層は、第2半導体層と第2電極との間で第2半導体層に接し、第1半導体層から第2半導体層への方向に沿ってみたときに第1電極と重なる部分を有し、第2半導体層よりも抵抗が高い。透明導電層は、第2半導体層と第2電極との間で第2半導体層に接し、透過性を有し、第2半導体層よりも屈折率が低く、高抵抗層よりも抵抗が低い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子において、効率の向上が望まれている。効率の向上のために、半導体発光素子の発光層から放出された光の取り出し効率の向上が重要である。
【0003】
例えば、半導体発光素子において、コンタクト層の表面にオーミック接触しこのコンタクト層の表面のほぼ全域を覆う透明電極と、この透明電極のほぼ全域に対向して配置された金属反射膜と、を備えた構成がある。
光取り出し効率の向上には、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/006555A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、高効率の半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、高抵抗層と、透明導電層と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む。前記第1電極は、前記第1半導体層の前記第2半導体層とは反対の側に設けられる。前記第2電極は、前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記発光層から放出される発光光に対して反射性を有する。前記高抵抗層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記第1電極と重なる部分を有し、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する。前記透明導電層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0007】
本発明の実施形態によれば、半導体発光素子の製造方法は提供される。前記製造方法は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体の前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、前記発光層から放出される発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、を形成することを含む。前記製造方法は、前記高抵抗層と前記透明導電層との上に、前記発光光に対して反射性を有する第2電極を形成することをさらに含む。前記製造方法は、前記第1半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記高抵抗層と重なる部分を有する第1電極を形成することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、半導体発光素子の動作を示す模式的断面図である。
【図4】半導体発光素子の光学特性を示すグラフ図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、半導体発光素子の動作を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図10】実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図11】実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図12】実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図1(b)は模式的平面図であり、図1(a)は図1(b)のA1−A2線断面図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体10sと、第1電極70と、第2電極80と、高抵抗層60と、透明導電層50と、を備える。
【0011】
積層構造体10sは、第1導電形の第1半導体層10と、第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を含む。
【0012】
第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、例えば、窒化物半導体を含む。
例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。ただし、実施形態はこれに限らず、第1導電形がp形であり、第2導電形がn形でも良い。以下では、第1導電形がn形であり、第2導電形がp形である場合として説明する。
【0013】
ここで、第1半導体層10から第2半導体層20に向かう方向をZ軸方向(第1方向)とする。Z軸方向に垂直な1つの方向をX軸方向(第2方向)とする。Z軸方向に対して垂直で、X軸方向に対して垂直な方向をY軸方向(第3方向)とする。
【0014】
このように、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20は、Z軸方向に沿って積層されている。ここで、本願明細書において、「積層」とは、互いに接して重ねられる場合の他に、間に他の層が挿入されて重ねられる場合も含む。
発光層30の構成の例については、後述する。
【0015】
第1電極70は、第1半導体層10の第2半導体層20とは反対の側に設けられる。第1電極70は、第1半導体層10に接触する。ただし、第1電極70は、第1半導体層10に電気的に接続されていれば良い。
【0016】
第2電極80は、第2半導体層20の第1半導体層10とは反対の側に設けられる。第2電極80は、発光層30から放出される発光光に対して反射性を有する。第2電極80は、少なくとも透明導電層50を介して、第2半導体層20と電気的に接続されている。
【0017】
高抵抗層60は、第2半導体層20と第2電極80との間において第2半導体層20に接する。高抵抗層60は、第1半導体層10から第2電極80に向かうZ軸方向に沿ってみたときに第1電極70と重なる部分を有する。高抵抗層60は、第2半導体層20の抵抗よりも高い抵抗を有する。高抵抗層60には、例えば絶縁材料が用いられる。高抵抗層60には、例えば酸化シリコンなどが用いられる。
【0018】
本具体例では、第1電極70の平面形状(Z軸方向に沿ってみたときの形状)は矩形(例えば長方形)であり、高抵抗層60の平面形状(Z軸方向に沿ってみたときの形状)は矩形(例えば長方形)であるが、実施形態はこれに限らない。第1電極70及び高抵抗層60は、任意の多角形、または、扁平円及び円を含む、曲線の外形を含む任意の形状の背面形状を有することができる。
【0019】
透明導電層50は、第2半導体層20と第2電極80との間において第2半導体層20に接する。透明導電層50は、例えば、Z軸方向に対して垂直な平面(X−Y平面)内において高抵抗層60と並置される。透明導電層50は、発光光に対して透過性を有し、第2半導体層20の屈折率よりも低い屈折率を有する。透明導電層50は、高抵抗層60の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0020】
透明導電層50は、例えば、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含む酸化物を含む。透明導電層50には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。透明導電層50の屈折率は、例えば1.80以上2.20以下である。一方、第2半導体層20には、例えばGaN層などが用いられる。第2半導体層20の屈折率は、例えば2.15以上2.70以下である。
【0021】
本具体例では、半導体発光素子110は、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側に設けられた導電性基板93と、導電性基板93と第2電極80との間に設けられた第1導電層91と、導電性基板93と第1導電層91との間に設けられた第2導電層92と、をさらに備える。導電性基板93は、第2電極80と電気的に接続される。導電性基板93には、例えばシリコン基板などが用いられる。第1導電層91及び第2導電層92は、例えば、第2電極80と導電性基板93とを接着する機能を有する。第1導電層91及び第2導電層92には、種々の金属層が用いられる。
【0022】
このように、半導体発光素子110は、導電性基板93と、第2電極80と導電性基板93との間に設けられた導電層(第1導電層91及び第2導電層92)と、をさらに備えることができる。
【0023】
導電性基板93を設けることで、積層構造体10sで動作時に発生する熱を、導電性基板93に効率良く伝達し、効率良く放熱できる。これにより、発光層30における発光効率を向上できる。
【0024】
発光層30は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造または多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を有する。
【0025】
図2(a)〜図2(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、これらの図は、発光層30の構成の例を示す模式図である。
【0026】
図2(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110aにおいては、発光層30は、SQW構造を有している。すなわち、発光層30は、第1障壁層BL1と、p側障壁層BLpと、第1障壁層BL1とp側障壁層BLpとの間に設けられた第1井戸層WL1と、を含む。
【0027】
なお、第1障壁層BL1と第1井戸層WL1との間、及び、第1井戸層WL1とp側障壁層BLpとの間に別の層が設けられても良い。
【0028】
図2(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110bにおいては、発光層30は、MQW構造を有している。すなわち、発光層30は、Z軸方向に沿って積層された複数の障壁層(第1〜第4障壁層BL1〜BL4、及び、p側障壁層BLp)と、複数の障壁層どうしのそれぞれの間に設けられた井戸層(第1〜第4井戸層WL1〜WL4)と、を含む。本具体例では、井戸層が4層設けられているが、井戸層の数は任意である。
【0029】
このように、発光層30は、2以上の整数Nにおいて、第(N−1)井戸層WLの第(N−1)障壁層とは反対の側に設けられた第N障壁層と、第N障壁層の第(N−1)井戸層とは反対の側に設けられた第N井戸層と、をさらに含む。
【0030】
図2(c)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110cにおいては、発光層30は、障壁層と井戸層との間のそれぞれに設けられた中間層をさらに含む。すなわち、発光層30は、第(N−1)障壁層と第(N−1)井戸層との間に設けられた第1中間層IL1と、第(N−1)井戸層と第N障壁層との間に設けられた第2中間層IL2と、をさらに含む。さらに、第2中間層IL2は、第N井戸層とp側障壁層BLpとの間に設けられる。なお、第1中間層IL1と第2中間層IL2は、必要に応じて設けられ、省略可能である。また、第1中間層IL1を設け、第2中間層IL2を省略しても良い。また、第2中間層IL2を設け、第1中間層IL1を省略しても良い。
【0031】
障壁層(例えば第1〜第4障壁層BL1〜BL4、第N障壁層)には、例えば、Inx1Aly1Ga1−x1−y1N(0≦x1<1、0≦y1<1、x1+y1≦1)を用いることができる。障壁層には、例えばIn0.02Al0.33Ga0.65Nを用いることができる。障壁層の厚さは、例えば12.5nmとすることができる。
【0032】
p側障壁層BLpには、例えば、Inx2Aly2Ga1−x2−y2N(0≦x2<1、0≦y2<1、x2+y2≦1)を用いることができる。p側障壁層BLpには、例えばIn0.02Al0.33Ga0.65Nを用いることができる。障壁層の厚さは、例えば12.5nmとすることができる。
【0033】
井戸層(例えば、第1井戸層WL1〜WL4、第N井戸層)には、例えば、Inx3Aly3Ga1−x3−y3N(0<x3≦1、0≦y3<1、x3+y3≦1)を用いることができる。井戸層には、例えばIn0.15Ga0.85Nを用いることができる。井戸層の厚さは、例えば2.5nmとすることができる。
【0034】
井戸層に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)は、障壁層(第1〜第4障壁層BL1〜BL4、第N障壁層、及び、p側障壁層BLp)に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)よりも高い。これにより、障壁層におけるバンドギャップエネルギーが井戸層におけるバンドギャップエネルギーよりも大きくできる。
【0035】
第1中間層IL1には、例えば、Inx4Ga1−x4N(0≦x4<1)を用いることができる。第1中間層IL1には、例えばIn0.02Ga0.98Nを用いることができる。第1中間層IL1の厚さは、例えば0.5nmとすることができる。
【0036】
第2中間層IL2には、例えば、Inx5Ga1−x5N(0≦x5<1)を用いることができる。第2中間層IL2には、例えばIn0.02Ga0.98Nを用いることができる。第2中間層IL2の厚さは、例えば0.5nmとすることができる。
【0037】
なお、井戸層に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)は、第1中間層IL1及び第2中間層IL2に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)よりも高い。これにより、第1中間層IL1及び第2中間層IL2におけるバンドギャップエネルギーが井戸層におけるバンドギャップエネルギーよりも大きくできる。
【0038】
なお、第1中間層IL1は、障壁層の一部と見なすこともできる。また、第2中間層IL2は、障壁層の一部とみなすこともできる。すなわち、井戸層と積層される障壁層は、組成の異なる複数の層を含んでも良い。
【0039】
なお、図2(a)に例示したSQW構造において、第1中間層IL1と第2中間層IL2とを設けても良い。この場合には、第1中間層IL1は、第1障壁層BL1と第1井戸層WL1との間に設けられ、第2中間層IL2は、第1井戸層WL1とp側障壁層BLpとの間に設けられる。
【0040】
上記は、発光層30の構成の例であり、実施形態はこれに限らず、障壁層、p側障壁層BLp、井戸層、第1中間層IL1及び第2中間層IL2に用いられる材料及び厚さは種々の変形が可能である。なお、上記のように、障壁層、p側障壁層BLp、井戸層、第1中間層IL1及び第2中間層IL2は、窒化物半導体を含む。
半導体発光素子110においては、上記の半導体発光素子110a〜110cに関して説明した種々の構成の発光層30を有することができる。
【0041】
図3(a)及び図3(b)は、半導体発光素子の動作を例示する模式的断面図である。 すなわち、図3(a)は、実施形態に係る半導体発光素子110における光学的な動作を例示し、図3(b)は、第1参考例の半導体発光素子119aにおける光学的な動作を例示している。
【0042】
図3(b)に表したように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、透明導電層50が設けられていない。この場合、発光層30から放出された発光光のうちの一部の光L5(第2電極80の側に進行する光)は、第2半導体層20と第2電極80との界面53において反射し、光L6として半導体発光素子119aの外部に取り出される。
【0043】
一方、図3(a)に表したように、発光層30から放出された発光光のうちの一部の光L1は、第2半導体層20と透明導電層50との界面51において反射し、光L2として半導体発光素子110の外部に取り出される。さらに、発光光のうちの別の一部の光L3は、透明導電層50と第2電極80との界面52において反射し、光L4として半導体発光素子110の外部に取り出される。
【0044】
このように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、発光光は、第2半導体層20と第2電極80との界面53の1つの界面で反射するのに対して、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、発光光は、第2半導体層20と透明導電層50との界面51と、透明導電層50と第2電極80との界面52と、の2つの界面で反射することで、半導体発光素子119aよりも、光取り出し効率が高い。
【0045】
図4は、半導体発光素子の光学特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、金属層と、金属層に積層した第1透明層と、を有する2層積層膜119s1及び119s2の光学特性と、金属層と、第1透明層と、金属層と第1透明層との間に設けられ、第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層と、を有する3層積層膜110s1及び110s2の光学特性のシミュレーション結果を例示している。このシミュレーションでは、第1透明層の屈折率は1.78とされ、第2透明層の屈折率は1.46とされた。2層積層膜119s1及び3層積層膜110s1においては、金属層として金(Au)が用いられた場合とされ、2層積層膜119s2及び3層積層膜110s2においては、金属層として銀(Ag)が用いられた場合とされた。発光光の波長は450ナノメートル(nm)とされた。
同図の横軸は、2層積層膜または3層積層膜への光の入射角θ(度)であり、縦軸は、反射率Rrである。
【0046】
2層積層膜119s1及び119s2は、第1参考例の半導体発光素子119aに相当し、3層積層膜110s1及び110s2は、実施形態に係る半導体発光素子110に相当する。
【0047】
図4に表したように、金属層がAuである場合、2層積層膜119s1においては、入射角θが0度のときの反射率Rrは約0.3であり、入射角θが大きくなると反射率Rrは徐々に高くなる。金属層がAuである場合、3層積層膜110s1においては、入射角θが0度のときの反射率Rrは2層積層膜119s1とほぼ同じであるが、入射角θが50度以上になると反射率Rrは急激に大きくなり、ほぼ1になる。このように、3層積層膜110s1においては、入射角θが50度以上において、2層積層膜119s1よりも反射率Rrが著しく向上する。
【0048】
また、図4に表したように、金属層がAgである場合においても、3層積層膜110s1においては、入射角θが50度以上において、2層積層膜119s1よりも反射率Rrが向上する。
【0049】
このように、3層積層膜110s1において2層積層膜119s1よりも反射率Rrが向上するのは、第1透明層と第2透明層との間の屈折率差により、全反射現象が生じるためである。
【0050】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、この現象を利用する。すなわち、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射に加え、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における例えば全反射による反射を利用することで、高い光取り出し効率が得られる。
【0051】
図5(a)及び図5(b)は、半導体発光素子の動作を例示する模式的断面図である。 すなわち、図5(a)は、実施形態に係る半導体発光素子110における電気的な動作を例示し、図5(b)は、第2参考例の半導体発光素子119bにおける電気的な動作を例示している。
【0052】
図5(b)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、透明導電層50が第2電極80と第2半導体層20との間、及び、高抵抗層60と第2半導体層20との間、に設けられている。半導体発光素子119bにおいては、第2電極80から第1半導体層10に向かって流れる電流Icは、透明導電層50において横方向(Z軸方向に対して垂直な方向)に広がる。このため、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域にも電流Icが流れる。このため、発光層30においては、電流Icによって発光する発光領域38は、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域に重なる。高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域で発光した光は、第1電極70によって遮蔽されるため、直接外部には取り出されない。このため、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、光取り出し効率が低い。
【0053】
これに対し、図5(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、電流Icは、高抵抗層60が設けられている領域には実質的には流れない。すなわち、電流Icは、横方向(Z軸方向に対して垂直な方向)に広がらずに第2電極80から第1半導体層10に向かって流れる。このため、電流Icによって発光する発光領域38は、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域とは実質的に重ならない。すなわち、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向し、第1電極70によって遮蔽される領域においては、実質的に発光しない構成が実現できる。このため、半導体発光素子110においては、光取り出し効率が高い。
【0054】
第2参考例においては、透明導電層50が設けられるため、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射と、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における反射と、を利用できるため、光学的には第1参考例よりも高い光取り出し効率が得られる可能性がある。しかしながら、第2参考例においては、透明導電層50が高抵抗層60と第2半導体層20との間にも設けられているため、電流Icが横方向に広がり、第1電極70で遮蔽される領域で発光するため、光が損失される。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射と、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における反射と、を利用できるため、光学的に高い光取り出し効率が得られると同時に、高抵抗層60が第2半導体層20と接触し、透明導電層50は高抵抗層60と並置されるため、電流Icが広がらず、第1電極70で遮蔽される領域での発光が抑制される。これにより、光の損失が抑制され、光取り出し効率が高い半導体発光素子が提供できる。すなわち、透明導電層50の界面による反射と、高抵抗層60による電流Icの制御と、により、高効率の半導体発光素子が提供できる。
【0056】
実施形態において、高抵抗層60の厚さは、50ナノメートル(nm)以上200nm以下とすることが望ましい。高抵抗層60の厚さが50nmよりも薄いときは、高抵抗層60による電流Icのブロック性が低下し、電流Icの制御性が低下する場合がある。高抵抗層60の厚さが200nmよりも厚い場合は、第2電極80の平坦性が劣化し、後述する第1導電層91と第2導電層92との接着性が低下する場合がある。ただし、実施形態はこれに限らず、高抵抗層60の厚さは任意である。
【0057】
以下、半導体発光素子110の製造方法の例について説明する。
図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
以下の製造方法において、半導体層の結晶成長には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)が用いられる。この他、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)により結晶成長を行っても良い。
【0058】
図6(a)に表したように、サファイアなどの基板5の主面上に、バッファ層6を形成する。基板5には、サファイア以外に、GaN、SiC、Si及びGaAsなどの各種の材料を用いることができる。バッファ層6には、例えばAlx0Ga1−x0N(0≦x0≦1)層が用いられる。バッファ層6の上に、第1半導体層10の結晶を成長させる。第1半導体層10には、例えばn形GaN層などが用いられる。第1半導体層10の上に発光層30の結晶を成長させる。発光層30には、図2(a)〜図2(c)に関して説明した種々の構成が適用される。発光層30の上に第2半導体層20の結晶を成長させる。第2半導体層20には、例えばp形GaN層などが用いられる。
【0059】
第2半導体層20の上に、例えばITO膜を成膜し、ITO膜を所定の形状に加工して透明導電層50を形成する。この加工には、例えばウェットエッチングが用いられる。透明導電層50の上、及び、透明導電層50から露出する第2半導体層20の上に、高抵抗層60となる絶縁膜60fを形成する。絶縁膜60fには、例えば、酸化シリコンが用いられる。絶縁膜60fの形成には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)が用いられる。
【0060】
図6(b)に表したように、絶縁膜60fを研磨して、平坦化し、透明導電層50の表面を露出させる。これにより、高抵抗層60が形成される。
【0061】
図6(c)に表したように、高抵抗層60及び透明導電層50の上に、第2電極80を形成する。第2電極80として、Ag層が用いられる。本具体例では、第2電極80は、Ag層の上に設けられたNi層をさらに含む。すなわち、第2電極80は、第1金属層81(例えばNi層)と、第1金属層81と高抵抗層60との間、及び、第1金属層81と透明導電層50との間に設けられ、発光光に対する反射率が第1金属層81よりも高い第2金属層82(銀層)と、を含むことができる。第1金属層81は、例えばバリアメタル層として機能し、例えばニッケルなどが用いられる。
【0062】
さらに、第2電極80の上に、第1導電層91を形成する。具体的には、第2電極80の上に第3金属層91cを形成し、第3金属層91cの上に第4金属層91dを形成し、第4金属層91dの上に第5金属層91eを形成する。第3金属層91cには例えばTi層が用いられ、第4金属層91dには例えばPt層が用いられ、第5金属層91eには例えばAu層が用いられる。
【0063】
図7(a)に表したように、導電性基板93の主面に設けられた第2導電層92と、第1導電層91と、が互いに対向して設置される。第2導電層92には、Au及びSnを含む層が用いられる。第2導電層92と第1導電層91とを接触させた状態で、例えば、250℃以上の高温下において、一定時間圧力が印加される。
【0064】
これにより、図7(b)に表したように、第1導電層91と第2導電層92とが互いに接着される。
【0065】
そして、基板5の第1半導体層10とは反対の側から紫外光レーザ(例えば、KrFの波長が248nmのレーザ)をパルス照射する。
これにより、図7(b)に表したように、積層構造体10sが基板5から剥離される。このように、積層構造体10sを形成する際に用いられた基板5が除去されることにより、半導体発光素子110においては、放熱性を向上でき、高い発光効率が得られる。
【0066】
その後、積層構造体10sを所定の形状に加工にする。すなわち、基板5の上に複数の積層構造体10sが形成され、複数の積層構造体10sごとに分離される。なお、このとき、分離された複数の積層構造体10sどうしの間において、第1金属層81が露出する。積層構造体10sにおいては、例えば、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうに従って、積層構造体10sのX−Y平面における面積が増大する。すなわち、積層構造体10sの側壁がZ軸方向に対して傾斜したテーパー形状のメサ形状が形成される。
【0067】
積層構造体10s及び第1金属層81を覆うように、保護層としてシリコン酸化膜(図示しない)を形成する。積層構造体10sがメサ形状を有することで、保護層の被覆性が向上する。なお、保護層は必要に応じて設けられ、場合によっては省略しても良い。
【0068】
第1半導体層10の上面(第2半導体層20とは反対の側の面)を覆っている保護層の一部を除去し、第1半導体層10を露出させる。第1半導体層10に対して、例えば、濃度が1モル/リットル(mol/l)で、温度が70℃の水酸化カリウムを用いて15分間のエッチング処理を実施する。これにより、第1半導体層10の上面が粗面化される。 なお、上記の第1半導体層10の粗面化は必要に応じて実施され、場合によっては省略される。
【0069】
図7(c)に表したように、第1半導体層10の上(第2半導体層20とは反対の側)に、第1電極70を形成する。すなわち、第1半導体層10の上に、第1電極70となる導電膜が形成され、この導電膜が、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうZ軸方向に沿ってみたときに高抵抗層60と重なる部分を有するように加工される。
【0070】
なお、第1電極70の形成と、第1半導体層10の粗面化と、の順序は互いに入れ替えても良い。第1電極70には、例えば、Pt、Au、Ni及びTiからなる群から選ばれたいずれかを含む材料を用いることができる。ただし、実施形態において、第1電極70には任意の導電材料を用いることができる。
【0071】
以上のような工程により、図1(a)及び図1(b)に例示した半導体発光素子110が製造できる。
【0072】
図1(b)に表したように、半導体発光素子110においては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pは、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pの内側に位置する。これにより、電流Icが、発光層30のうちで第1電極70に覆われた領域の中に通電されることが抑制され、効率がより向上し易い。
【0073】
高抵抗層60の面積は、透明導電層50の面積よりも小さい。すなわち、高抵抗層60は、第2半導体層20のうちで第1電極70に対応する領域に、電流Icが通電されないように制御できればよい。高抵抗層60の面積を透明導電層50の面積よりも小さくすることで、電流Icが通電される面積を大きくでき、すなわち、発光領域38を大きく設定できる。これにより、効率がより向上できる。
【0074】
半導体発光素子110においては、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じである。
【0075】
すなわち、本具体例では、高抵抗層60の第2電極80の側の面60aと第2半導体層20との距離は、透明導電層50の第2電極80の側の面50aと第2半導体層20との距離と同じである。高抵抗層60の第2電極80の側の面60aと、透明導電層50の第2電極80の側の面50a、とは、同じ平面内に位置している。面60aと面50aとは平坦である。
【0076】
これにより、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側の面を平坦にし易くなり、第2電極80上の第1導電層91と、第2導電層92との接着がより安定して実施できる。
【0077】
図8(a)〜図8(c)は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的平面図である。
図8(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111aにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置と、実質的に一致する。
【0078】
図8(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111bにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置と、異なっている。ただし、この場合も、高抵抗層60は、Z軸方向に沿ってみたときに第1電極70と重なる部分を有している。
【0079】
図8(c)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111cにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのY軸方向に沿った位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのY軸方向に沿った位置と、実質的に一致している。そして、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX軸方向に沿った位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX軸方向に沿った位置と、異なっている。このように、外縁70pの1つの位置が、外縁60pの位置と一致しており、外縁70pの別の1つの位置が、外縁60pの位置と異なっていても良い。
【0080】
図8(a)〜図8(c)において、第1電極70及び高抵抗層60は、任意の多角形、または、扁平円及び円を含む、曲線の外形を含む任意の形状の背面形状を有することができ、この場合も、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置、及び、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置、は種々の変形が可能である。
【0081】
図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子112においては、透明導電層50の一部は、高抵抗層60と第2電極80との間に延在している。このように、高抵抗層60と透明導電層50とのそれぞれが、第2半導体層20に接していれば良く、第2半導体層20と第2電極80との電気的な接続が得られれば、透明導電層50の形状は任意である。
【0082】
なお、半導体発光素子112においても、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じである。
【0083】
図9(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子113においては、透明導電層50の一部は、高抵抗層60と第2電極80との間に延在している。そして、この場合には、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離よりも長い。すなわち、第2電極80の第1電極70の側の面(面80a及び面80b)には段差がある。この場合も、高効率の半導体発光素子が提供できる。
【0084】
ただし、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側の面が平坦である場合の方が、第1導電層91と第2導電層92との接着がより安定して実施でき、より望ましい。
【0085】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、半導体発光素子の製造方法である。
図10は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図10に表したように、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、第1導電形の第1半導体層10と、第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を含む積層構造体10sの第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に、高抵抗層60と透明導電層50とを形成する(ステップS110)。
高抵抗層60は、第2半導体層20の抵抗よりも高い抵抗を有する。透明導電層50は、発光層30から放出される発光光に対して透過性を有し、第2半導体層20の屈折率よりも低い屈折率を有し、高抵抗層60の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0086】
本製造方法においては、高抵抗層60と透明導電層50との上に、発光層30から放出される発光光に対して反射性を有する第2電極80を形成する(ステップS120)。
【0087】
本製造方法においては、第1半導体層10の発光層30とは反対の側の面の上に、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうZ軸方向に沿ってみたときに高抵抗層60と重なる部分を有する第1電極70を形成する(ステップS130)。
【0088】
すなわち、例えば、図6(a)〜図6(c)、及び、図7(a)〜図7(c)に関して説明した処理を実施する。これにより、透明導電層50の界面による反射と、高抵抗層60による電流Icの制御と、が可能になり、高効率の半導体発光素子が製造できる。
【0089】
図11(a)及び図11(b)は、第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図11(a)及び図11(b)に例示した方法では、透明導電層50を形成した後に高抵抗層60が形成される。
【0090】
すなわち、図11(a)に表したように、高抵抗層60と透明導電層50との形成(ステップS110)は、第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の一部の上に透明導電層50を形成すること(ステップS111a)を含む。
【0091】
ステップS110は、透明導電層50の形成の後に、透明導電層50が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に高抵抗層60を形成すること(ステップS112a)をさらに含む。すなわち、すなわち、図6(a)に関して説明した処理が実施される。
【0092】
図11(b)に表したように、高抵抗層の形成(ステップS112a)は、透明導電層50が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上、及び、透明導電層50の上、に高抵抗材料膜を形成すること(ステップS112b)と、高抵抗材料膜を研磨して、透明導電層50を露出すること(ステップS112c)と、を含む。
【0093】
上記において、透明導電層50の形成、及び、高抵抗層60の形成には任意の手法を用いることができる。透明導電層50または高抵抗層60となる膜を形成したのち、フォトリソグラフィとエッチングにより、透明導電層50または高抵抗層60を形成することができる。また、リフトオフ法を用いても良い。
【0094】
図12は、第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図12に表したように、本製造方法においては、高抵抗層60と透明導電層50との形成(ステップS110)は、第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の一部の上に高抵抗層60を形成すること(ステップS112d)を含む。
【0095】
そして、ステップS110は、高抵抗層60の形成の後に、高抵抗層60が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に透明導電層50を形成すること(ステップS111b)をさらに含む。
【0096】
これにより、例えば図9(b)に例示した半導体発光素子113が製造できる。
【0097】
図12に表したように、本製造方法においては、ステップS110は、透明導電層50を研磨して平坦化すること(ステップS113)をさらに含むことができる。これにより、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じすることができ、第1導電層91と第2導電層92との接着がより安定して実施でき、より望ましい。
【0098】
実施形態によれば、高効率の半導体発光素子及びその製造方法が提供できる。
【0099】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0100】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0101】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれる基板、バッファ層、半導体層、障壁層、井戸層、積層構造体、電極、高抵抗層、透明導電層、導電層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。例えば、上記実施形態の中で説明した組成や膜厚なども一例であり、種々の選択が可能である。
【0102】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0103】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0104】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
5…基板、 6…バッファ層、 10…第1半導体層、 10s…積層構造体、 20…第2半導体層、 30…発光層、 33…発光領域、 50…透明導電層、 50a…面、 51、52、53…界面、 60…高抵抗層、 60a…面、 60f…絶縁膜、 60p…外縁、 70…第1電極、 70p…外縁、 80…第2電極、 80a、80b…面、 81…第1金属層、 82…第2金属層、 91…第1導電層、 91c、91d、91e…第3、第4及び第5金属層、 92…第2導電層、 93…導電性基板、 θ…入射角、 110、110a〜110c…半導体発光素子、 110s1、110s2…3層積層膜、 111a〜111c、112、113、119a、119b…半導体発光素子、 119s1、119s2…2層積層膜、 BL1〜BL4…第1〜第4障壁層、 BLp…p側障壁層、 IL1、IL2…第1及び第2中間層、 Ic…電流、 L1〜L6…光、 Rr…反射率、 WL1〜WL4…井戸層
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子において、効率の向上が望まれている。効率の向上のために、半導体発光素子の発光層から放出された光の取り出し効率の向上が重要である。
【0003】
例えば、半導体発光素子において、コンタクト層の表面にオーミック接触しこのコンタクト層の表面のほぼ全域を覆う透明電極と、この透明電極のほぼ全域に対向して配置された金属反射膜と、を備えた構成がある。
光取り出し効率の向上には、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2006/006555A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、高効率の半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、高抵抗層と、透明導電層と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む。前記第1電極は、前記第1半導体層の前記第2半導体層とは反対の側に設けられる。前記第2電極は、前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記発光層から放出される発光光に対して反射性を有する。前記高抵抗層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記第1電極と重なる部分を有し、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する。前記透明導電層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0007】
本発明の実施形態によれば、半導体発光素子の製造方法は提供される。前記製造方法は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体の前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、前記発光層から放出される発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、を形成することを含む。前記製造方法は、前記高抵抗層と前記透明導電層との上に、前記発光光に対して反射性を有する第2電極を形成することをさらに含む。前記製造方法は、前記第1半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記高抵抗層と重なる部分を有する第1電極を形成することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、半導体発光素子の動作を示す模式的断面図である。
【図4】半導体発光素子の光学特性を示すグラフ図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、半導体発光素子の動作を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図10】実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図11】実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図12】実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図1(b)は模式的平面図であり、図1(a)は図1(b)のA1−A2線断面図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体10sと、第1電極70と、第2電極80と、高抵抗層60と、透明導電層50と、を備える。
【0011】
積層構造体10sは、第1導電形の第1半導体層10と、第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を含む。
【0012】
第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、例えば、窒化物半導体を含む。
例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。ただし、実施形態はこれに限らず、第1導電形がp形であり、第2導電形がn形でも良い。以下では、第1導電形がn形であり、第2導電形がp形である場合として説明する。
【0013】
ここで、第1半導体層10から第2半導体層20に向かう方向をZ軸方向(第1方向)とする。Z軸方向に垂直な1つの方向をX軸方向(第2方向)とする。Z軸方向に対して垂直で、X軸方向に対して垂直な方向をY軸方向(第3方向)とする。
【0014】
このように、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20は、Z軸方向に沿って積層されている。ここで、本願明細書において、「積層」とは、互いに接して重ねられる場合の他に、間に他の層が挿入されて重ねられる場合も含む。
発光層30の構成の例については、後述する。
【0015】
第1電極70は、第1半導体層10の第2半導体層20とは反対の側に設けられる。第1電極70は、第1半導体層10に接触する。ただし、第1電極70は、第1半導体層10に電気的に接続されていれば良い。
【0016】
第2電極80は、第2半導体層20の第1半導体層10とは反対の側に設けられる。第2電極80は、発光層30から放出される発光光に対して反射性を有する。第2電極80は、少なくとも透明導電層50を介して、第2半導体層20と電気的に接続されている。
【0017】
高抵抗層60は、第2半導体層20と第2電極80との間において第2半導体層20に接する。高抵抗層60は、第1半導体層10から第2電極80に向かうZ軸方向に沿ってみたときに第1電極70と重なる部分を有する。高抵抗層60は、第2半導体層20の抵抗よりも高い抵抗を有する。高抵抗層60には、例えば絶縁材料が用いられる。高抵抗層60には、例えば酸化シリコンなどが用いられる。
【0018】
本具体例では、第1電極70の平面形状(Z軸方向に沿ってみたときの形状)は矩形(例えば長方形)であり、高抵抗層60の平面形状(Z軸方向に沿ってみたときの形状)は矩形(例えば長方形)であるが、実施形態はこれに限らない。第1電極70及び高抵抗層60は、任意の多角形、または、扁平円及び円を含む、曲線の外形を含む任意の形状の背面形状を有することができる。
【0019】
透明導電層50は、第2半導体層20と第2電極80との間において第2半導体層20に接する。透明導電層50は、例えば、Z軸方向に対して垂直な平面(X−Y平面)内において高抵抗層60と並置される。透明導電層50は、発光光に対して透過性を有し、第2半導体層20の屈折率よりも低い屈折率を有する。透明導電層50は、高抵抗層60の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0020】
透明導電層50は、例えば、In、Sn、Zn及びTiよりなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含む酸化物を含む。透明導電層50には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。透明導電層50の屈折率は、例えば1.80以上2.20以下である。一方、第2半導体層20には、例えばGaN層などが用いられる。第2半導体層20の屈折率は、例えば2.15以上2.70以下である。
【0021】
本具体例では、半導体発光素子110は、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側に設けられた導電性基板93と、導電性基板93と第2電極80との間に設けられた第1導電層91と、導電性基板93と第1導電層91との間に設けられた第2導電層92と、をさらに備える。導電性基板93は、第2電極80と電気的に接続される。導電性基板93には、例えばシリコン基板などが用いられる。第1導電層91及び第2導電層92は、例えば、第2電極80と導電性基板93とを接着する機能を有する。第1導電層91及び第2導電層92には、種々の金属層が用いられる。
【0022】
このように、半導体発光素子110は、導電性基板93と、第2電極80と導電性基板93との間に設けられた導電層(第1導電層91及び第2導電層92)と、をさらに備えることができる。
【0023】
導電性基板93を設けることで、積層構造体10sで動作時に発生する熱を、導電性基板93に効率良く伝達し、効率良く放熱できる。これにより、発光層30における発光効率を向上できる。
【0024】
発光層30は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造または多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を有する。
【0025】
図2(a)〜図2(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、これらの図は、発光層30の構成の例を示す模式図である。
【0026】
図2(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110aにおいては、発光層30は、SQW構造を有している。すなわち、発光層30は、第1障壁層BL1と、p側障壁層BLpと、第1障壁層BL1とp側障壁層BLpとの間に設けられた第1井戸層WL1と、を含む。
【0027】
なお、第1障壁層BL1と第1井戸層WL1との間、及び、第1井戸層WL1とp側障壁層BLpとの間に別の層が設けられても良い。
【0028】
図2(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110bにおいては、発光層30は、MQW構造を有している。すなわち、発光層30は、Z軸方向に沿って積層された複数の障壁層(第1〜第4障壁層BL1〜BL4、及び、p側障壁層BLp)と、複数の障壁層どうしのそれぞれの間に設けられた井戸層(第1〜第4井戸層WL1〜WL4)と、を含む。本具体例では、井戸層が4層設けられているが、井戸層の数は任意である。
【0029】
このように、発光層30は、2以上の整数Nにおいて、第(N−1)井戸層WLの第(N−1)障壁層とは反対の側に設けられた第N障壁層と、第N障壁層の第(N−1)井戸層とは反対の側に設けられた第N井戸層と、をさらに含む。
【0030】
図2(c)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110cにおいては、発光層30は、障壁層と井戸層との間のそれぞれに設けられた中間層をさらに含む。すなわち、発光層30は、第(N−1)障壁層と第(N−1)井戸層との間に設けられた第1中間層IL1と、第(N−1)井戸層と第N障壁層との間に設けられた第2中間層IL2と、をさらに含む。さらに、第2中間層IL2は、第N井戸層とp側障壁層BLpとの間に設けられる。なお、第1中間層IL1と第2中間層IL2は、必要に応じて設けられ、省略可能である。また、第1中間層IL1を設け、第2中間層IL2を省略しても良い。また、第2中間層IL2を設け、第1中間層IL1を省略しても良い。
【0031】
障壁層(例えば第1〜第4障壁層BL1〜BL4、第N障壁層)には、例えば、Inx1Aly1Ga1−x1−y1N(0≦x1<1、0≦y1<1、x1+y1≦1)を用いることができる。障壁層には、例えばIn0.02Al0.33Ga0.65Nを用いることができる。障壁層の厚さは、例えば12.5nmとすることができる。
【0032】
p側障壁層BLpには、例えば、Inx2Aly2Ga1−x2−y2N(0≦x2<1、0≦y2<1、x2+y2≦1)を用いることができる。p側障壁層BLpには、例えばIn0.02Al0.33Ga0.65Nを用いることができる。障壁層の厚さは、例えば12.5nmとすることができる。
【0033】
井戸層(例えば、第1井戸層WL1〜WL4、第N井戸層)には、例えば、Inx3Aly3Ga1−x3−y3N(0<x3≦1、0≦y3<1、x3+y3≦1)を用いることができる。井戸層には、例えばIn0.15Ga0.85Nを用いることができる。井戸層の厚さは、例えば2.5nmとすることができる。
【0034】
井戸層に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)は、障壁層(第1〜第4障壁層BL1〜BL4、第N障壁層、及び、p側障壁層BLp)に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)よりも高い。これにより、障壁層におけるバンドギャップエネルギーが井戸層におけるバンドギャップエネルギーよりも大きくできる。
【0035】
第1中間層IL1には、例えば、Inx4Ga1−x4N(0≦x4<1)を用いることができる。第1中間層IL1には、例えばIn0.02Ga0.98Nを用いることができる。第1中間層IL1の厚さは、例えば0.5nmとすることができる。
【0036】
第2中間層IL2には、例えば、Inx5Ga1−x5N(0≦x5<1)を用いることができる。第2中間層IL2には、例えばIn0.02Ga0.98Nを用いることができる。第2中間層IL2の厚さは、例えば0.5nmとすることができる。
【0037】
なお、井戸層に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)は、第1中間層IL1及び第2中間層IL2に含まれるInの組成比(III族元素中におけるInの原子数の割合)よりも高い。これにより、第1中間層IL1及び第2中間層IL2におけるバンドギャップエネルギーが井戸層におけるバンドギャップエネルギーよりも大きくできる。
【0038】
なお、第1中間層IL1は、障壁層の一部と見なすこともできる。また、第2中間層IL2は、障壁層の一部とみなすこともできる。すなわち、井戸層と積層される障壁層は、組成の異なる複数の層を含んでも良い。
【0039】
なお、図2(a)に例示したSQW構造において、第1中間層IL1と第2中間層IL2とを設けても良い。この場合には、第1中間層IL1は、第1障壁層BL1と第1井戸層WL1との間に設けられ、第2中間層IL2は、第1井戸層WL1とp側障壁層BLpとの間に設けられる。
【0040】
上記は、発光層30の構成の例であり、実施形態はこれに限らず、障壁層、p側障壁層BLp、井戸層、第1中間層IL1及び第2中間層IL2に用いられる材料及び厚さは種々の変形が可能である。なお、上記のように、障壁層、p側障壁層BLp、井戸層、第1中間層IL1及び第2中間層IL2は、窒化物半導体を含む。
半導体発光素子110においては、上記の半導体発光素子110a〜110cに関して説明した種々の構成の発光層30を有することができる。
【0041】
図3(a)及び図3(b)は、半導体発光素子の動作を例示する模式的断面図である。 すなわち、図3(a)は、実施形態に係る半導体発光素子110における光学的な動作を例示し、図3(b)は、第1参考例の半導体発光素子119aにおける光学的な動作を例示している。
【0042】
図3(b)に表したように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、透明導電層50が設けられていない。この場合、発光層30から放出された発光光のうちの一部の光L5(第2電極80の側に進行する光)は、第2半導体層20と第2電極80との界面53において反射し、光L6として半導体発光素子119aの外部に取り出される。
【0043】
一方、図3(a)に表したように、発光層30から放出された発光光のうちの一部の光L1は、第2半導体層20と透明導電層50との界面51において反射し、光L2として半導体発光素子110の外部に取り出される。さらに、発光光のうちの別の一部の光L3は、透明導電層50と第2電極80との界面52において反射し、光L4として半導体発光素子110の外部に取り出される。
【0044】
このように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、発光光は、第2半導体層20と第2電極80との界面53の1つの界面で反射するのに対して、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、発光光は、第2半導体層20と透明導電層50との界面51と、透明導電層50と第2電極80との界面52と、の2つの界面で反射することで、半導体発光素子119aよりも、光取り出し効率が高い。
【0045】
図4は、半導体発光素子の光学特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、金属層と、金属層に積層した第1透明層と、を有する2層積層膜119s1及び119s2の光学特性と、金属層と、第1透明層と、金属層と第1透明層との間に設けられ、第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層と、を有する3層積層膜110s1及び110s2の光学特性のシミュレーション結果を例示している。このシミュレーションでは、第1透明層の屈折率は1.78とされ、第2透明層の屈折率は1.46とされた。2層積層膜119s1及び3層積層膜110s1においては、金属層として金(Au)が用いられた場合とされ、2層積層膜119s2及び3層積層膜110s2においては、金属層として銀(Ag)が用いられた場合とされた。発光光の波長は450ナノメートル(nm)とされた。
同図の横軸は、2層積層膜または3層積層膜への光の入射角θ(度)であり、縦軸は、反射率Rrである。
【0046】
2層積層膜119s1及び119s2は、第1参考例の半導体発光素子119aに相当し、3層積層膜110s1及び110s2は、実施形態に係る半導体発光素子110に相当する。
【0047】
図4に表したように、金属層がAuである場合、2層積層膜119s1においては、入射角θが0度のときの反射率Rrは約0.3であり、入射角θが大きくなると反射率Rrは徐々に高くなる。金属層がAuである場合、3層積層膜110s1においては、入射角θが0度のときの反射率Rrは2層積層膜119s1とほぼ同じであるが、入射角θが50度以上になると反射率Rrは急激に大きくなり、ほぼ1になる。このように、3層積層膜110s1においては、入射角θが50度以上において、2層積層膜119s1よりも反射率Rrが著しく向上する。
【0048】
また、図4に表したように、金属層がAgである場合においても、3層積層膜110s1においては、入射角θが50度以上において、2層積層膜119s1よりも反射率Rrが向上する。
【0049】
このように、3層積層膜110s1において2層積層膜119s1よりも反射率Rrが向上するのは、第1透明層と第2透明層との間の屈折率差により、全反射現象が生じるためである。
【0050】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、この現象を利用する。すなわち、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射に加え、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における例えば全反射による反射を利用することで、高い光取り出し効率が得られる。
【0051】
図5(a)及び図5(b)は、半導体発光素子の動作を例示する模式的断面図である。 すなわち、図5(a)は、実施形態に係る半導体発光素子110における電気的な動作を例示し、図5(b)は、第2参考例の半導体発光素子119bにおける電気的な動作を例示している。
【0052】
図5(b)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、透明導電層50が第2電極80と第2半導体層20との間、及び、高抵抗層60と第2半導体層20との間、に設けられている。半導体発光素子119bにおいては、第2電極80から第1半導体層10に向かって流れる電流Icは、透明導電層50において横方向(Z軸方向に対して垂直な方向)に広がる。このため、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域にも電流Icが流れる。このため、発光層30においては、電流Icによって発光する発光領域38は、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域に重なる。高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域で発光した光は、第1電極70によって遮蔽されるため、直接外部には取り出されない。このため、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、光取り出し効率が低い。
【0053】
これに対し、図5(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、電流Icは、高抵抗層60が設けられている領域には実質的には流れない。すなわち、電流Icは、横方向(Z軸方向に対して垂直な方向)に広がらずに第2電極80から第1半導体層10に向かって流れる。このため、電流Icによって発光する発光領域38は、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向する領域とは実質的に重ならない。すなわち、高抵抗層60と第1電極70とが互いに対向し、第1電極70によって遮蔽される領域においては、実質的に発光しない構成が実現できる。このため、半導体発光素子110においては、光取り出し効率が高い。
【0054】
第2参考例においては、透明導電層50が設けられるため、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射と、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における反射と、を利用できるため、光学的には第1参考例よりも高い光取り出し効率が得られる可能性がある。しかしながら、第2参考例においては、透明導電層50が高抵抗層60と第2半導体層20との間にも設けられているため、電流Icが横方向に広がり、第1電極70で遮蔽される領域で発光するため、光が損失される。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、透明導電層50と第2電極80との界面52における反射と、第2半導体層20と透明導電層50との界面51における反射と、を利用できるため、光学的に高い光取り出し効率が得られると同時に、高抵抗層60が第2半導体層20と接触し、透明導電層50は高抵抗層60と並置されるため、電流Icが広がらず、第1電極70で遮蔽される領域での発光が抑制される。これにより、光の損失が抑制され、光取り出し効率が高い半導体発光素子が提供できる。すなわち、透明導電層50の界面による反射と、高抵抗層60による電流Icの制御と、により、高効率の半導体発光素子が提供できる。
【0056】
実施形態において、高抵抗層60の厚さは、50ナノメートル(nm)以上200nm以下とすることが望ましい。高抵抗層60の厚さが50nmよりも薄いときは、高抵抗層60による電流Icのブロック性が低下し、電流Icの制御性が低下する場合がある。高抵抗層60の厚さが200nmよりも厚い場合は、第2電極80の平坦性が劣化し、後述する第1導電層91と第2導電層92との接着性が低下する場合がある。ただし、実施形態はこれに限らず、高抵抗層60の厚さは任意である。
【0057】
以下、半導体発光素子110の製造方法の例について説明する。
図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
以下の製造方法において、半導体層の結晶成長には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)が用いられる。この他、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)により結晶成長を行っても良い。
【0058】
図6(a)に表したように、サファイアなどの基板5の主面上に、バッファ層6を形成する。基板5には、サファイア以外に、GaN、SiC、Si及びGaAsなどの各種の材料を用いることができる。バッファ層6には、例えばAlx0Ga1−x0N(0≦x0≦1)層が用いられる。バッファ層6の上に、第1半導体層10の結晶を成長させる。第1半導体層10には、例えばn形GaN層などが用いられる。第1半導体層10の上に発光層30の結晶を成長させる。発光層30には、図2(a)〜図2(c)に関して説明した種々の構成が適用される。発光層30の上に第2半導体層20の結晶を成長させる。第2半導体層20には、例えばp形GaN層などが用いられる。
【0059】
第2半導体層20の上に、例えばITO膜を成膜し、ITO膜を所定の形状に加工して透明導電層50を形成する。この加工には、例えばウェットエッチングが用いられる。透明導電層50の上、及び、透明導電層50から露出する第2半導体層20の上に、高抵抗層60となる絶縁膜60fを形成する。絶縁膜60fには、例えば、酸化シリコンが用いられる。絶縁膜60fの形成には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)が用いられる。
【0060】
図6(b)に表したように、絶縁膜60fを研磨して、平坦化し、透明導電層50の表面を露出させる。これにより、高抵抗層60が形成される。
【0061】
図6(c)に表したように、高抵抗層60及び透明導電層50の上に、第2電極80を形成する。第2電極80として、Ag層が用いられる。本具体例では、第2電極80は、Ag層の上に設けられたNi層をさらに含む。すなわち、第2電極80は、第1金属層81(例えばNi層)と、第1金属層81と高抵抗層60との間、及び、第1金属層81と透明導電層50との間に設けられ、発光光に対する反射率が第1金属層81よりも高い第2金属層82(銀層)と、を含むことができる。第1金属層81は、例えばバリアメタル層として機能し、例えばニッケルなどが用いられる。
【0062】
さらに、第2電極80の上に、第1導電層91を形成する。具体的には、第2電極80の上に第3金属層91cを形成し、第3金属層91cの上に第4金属層91dを形成し、第4金属層91dの上に第5金属層91eを形成する。第3金属層91cには例えばTi層が用いられ、第4金属層91dには例えばPt層が用いられ、第5金属層91eには例えばAu層が用いられる。
【0063】
図7(a)に表したように、導電性基板93の主面に設けられた第2導電層92と、第1導電層91と、が互いに対向して設置される。第2導電層92には、Au及びSnを含む層が用いられる。第2導電層92と第1導電層91とを接触させた状態で、例えば、250℃以上の高温下において、一定時間圧力が印加される。
【0064】
これにより、図7(b)に表したように、第1導電層91と第2導電層92とが互いに接着される。
【0065】
そして、基板5の第1半導体層10とは反対の側から紫外光レーザ(例えば、KrFの波長が248nmのレーザ)をパルス照射する。
これにより、図7(b)に表したように、積層構造体10sが基板5から剥離される。このように、積層構造体10sを形成する際に用いられた基板5が除去されることにより、半導体発光素子110においては、放熱性を向上でき、高い発光効率が得られる。
【0066】
その後、積層構造体10sを所定の形状に加工にする。すなわち、基板5の上に複数の積層構造体10sが形成され、複数の積層構造体10sごとに分離される。なお、このとき、分離された複数の積層構造体10sどうしの間において、第1金属層81が露出する。積層構造体10sにおいては、例えば、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうに従って、積層構造体10sのX−Y平面における面積が増大する。すなわち、積層構造体10sの側壁がZ軸方向に対して傾斜したテーパー形状のメサ形状が形成される。
【0067】
積層構造体10s及び第1金属層81を覆うように、保護層としてシリコン酸化膜(図示しない)を形成する。積層構造体10sがメサ形状を有することで、保護層の被覆性が向上する。なお、保護層は必要に応じて設けられ、場合によっては省略しても良い。
【0068】
第1半導体層10の上面(第2半導体層20とは反対の側の面)を覆っている保護層の一部を除去し、第1半導体層10を露出させる。第1半導体層10に対して、例えば、濃度が1モル/リットル(mol/l)で、温度が70℃の水酸化カリウムを用いて15分間のエッチング処理を実施する。これにより、第1半導体層10の上面が粗面化される。 なお、上記の第1半導体層10の粗面化は必要に応じて実施され、場合によっては省略される。
【0069】
図7(c)に表したように、第1半導体層10の上(第2半導体層20とは反対の側)に、第1電極70を形成する。すなわち、第1半導体層10の上に、第1電極70となる導電膜が形成され、この導電膜が、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうZ軸方向に沿ってみたときに高抵抗層60と重なる部分を有するように加工される。
【0070】
なお、第1電極70の形成と、第1半導体層10の粗面化と、の順序は互いに入れ替えても良い。第1電極70には、例えば、Pt、Au、Ni及びTiからなる群から選ばれたいずれかを含む材料を用いることができる。ただし、実施形態において、第1電極70には任意の導電材料を用いることができる。
【0071】
以上のような工程により、図1(a)及び図1(b)に例示した半導体発光素子110が製造できる。
【0072】
図1(b)に表したように、半導体発光素子110においては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pは、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pの内側に位置する。これにより、電流Icが、発光層30のうちで第1電極70に覆われた領域の中に通電されることが抑制され、効率がより向上し易い。
【0073】
高抵抗層60の面積は、透明導電層50の面積よりも小さい。すなわち、高抵抗層60は、第2半導体層20のうちで第1電極70に対応する領域に、電流Icが通電されないように制御できればよい。高抵抗層60の面積を透明導電層50の面積よりも小さくすることで、電流Icが通電される面積を大きくでき、すなわち、発光領域38を大きく設定できる。これにより、効率がより向上できる。
【0074】
半導体発光素子110においては、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じである。
【0075】
すなわち、本具体例では、高抵抗層60の第2電極80の側の面60aと第2半導体層20との距離は、透明導電層50の第2電極80の側の面50aと第2半導体層20との距離と同じである。高抵抗層60の第2電極80の側の面60aと、透明導電層50の第2電極80の側の面50a、とは、同じ平面内に位置している。面60aと面50aとは平坦である。
【0076】
これにより、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側の面を平坦にし易くなり、第2電極80上の第1導電層91と、第2導電層92との接着がより安定して実施できる。
【0077】
図8(a)〜図8(c)は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的平面図である。
図8(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111aにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置と、実質的に一致する。
【0078】
図8(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111bにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置と、異なっている。ただし、この場合も、高抵抗層60は、Z軸方向に沿ってみたときに第1電極70と重なる部分を有している。
【0079】
図8(c)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111cにおいては、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのY軸方向に沿った位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのY軸方向に沿った位置と、実質的に一致している。そして、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX軸方向に沿った位置は、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX軸方向に沿った位置と、異なっている。このように、外縁70pの1つの位置が、外縁60pの位置と一致しており、外縁70pの別の1つの位置が、外縁60pの位置と異なっていても良い。
【0080】
図8(a)〜図8(c)において、第1電極70及び高抵抗層60は、任意の多角形、または、扁平円及び円を含む、曲線の外形を含む任意の形状の背面形状を有することができ、この場合も、第1電極70のZ軸方向に沿ってみたときの外縁70pのX−Y平面における位置、及び、高抵抗層60のZ軸方向に沿ってみたときの外縁60pのX−Y平面における位置、は種々の変形が可能である。
【0081】
図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子112においては、透明導電層50の一部は、高抵抗層60と第2電極80との間に延在している。このように、高抵抗層60と透明導電層50とのそれぞれが、第2半導体層20に接していれば良く、第2半導体層20と第2電極80との電気的な接続が得られれば、透明導電層50の形状は任意である。
【0082】
なお、半導体発光素子112においても、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じである。
【0083】
図9(b)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子113においては、透明導電層50の一部は、高抵抗層60と第2電極80との間に延在している。そして、この場合には、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離よりも長い。すなわち、第2電極80の第1電極70の側の面(面80a及び面80b)には段差がある。この場合も、高効率の半導体発光素子が提供できる。
【0084】
ただし、第2電極80の第2半導体層20とは反対の側の面が平坦である場合の方が、第1導電層91と第2導電層92との接着がより安定して実施でき、より望ましい。
【0085】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、半導体発光素子の製造方法である。
図10は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図10に表したように、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、第1導電形の第1半導体層10と、第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を含む積層構造体10sの第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に、高抵抗層60と透明導電層50とを形成する(ステップS110)。
高抵抗層60は、第2半導体層20の抵抗よりも高い抵抗を有する。透明導電層50は、発光層30から放出される発光光に対して透過性を有し、第2半導体層20の屈折率よりも低い屈折率を有し、高抵抗層60の抵抗よりも低い抵抗を有する。
【0086】
本製造方法においては、高抵抗層60と透明導電層50との上に、発光層30から放出される発光光に対して反射性を有する第2電極80を形成する(ステップS120)。
【0087】
本製造方法においては、第1半導体層10の発光層30とは反対の側の面の上に、第1半導体層10から第2半導体層20に向かうZ軸方向に沿ってみたときに高抵抗層60と重なる部分を有する第1電極70を形成する(ステップS130)。
【0088】
すなわち、例えば、図6(a)〜図6(c)、及び、図7(a)〜図7(c)に関して説明した処理を実施する。これにより、透明導電層50の界面による反射と、高抵抗層60による電流Icの制御と、が可能になり、高効率の半導体発光素子が製造できる。
【0089】
図11(a)及び図11(b)は、第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図11(a)及び図11(b)に例示した方法では、透明導電層50を形成した後に高抵抗層60が形成される。
【0090】
すなわち、図11(a)に表したように、高抵抗層60と透明導電層50との形成(ステップS110)は、第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の一部の上に透明導電層50を形成すること(ステップS111a)を含む。
【0091】
ステップS110は、透明導電層50の形成の後に、透明導電層50が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に高抵抗層60を形成すること(ステップS112a)をさらに含む。すなわち、すなわち、図6(a)に関して説明した処理が実施される。
【0092】
図11(b)に表したように、高抵抗層の形成(ステップS112a)は、透明導電層50が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上、及び、透明導電層50の上、に高抵抗材料膜を形成すること(ステップS112b)と、高抵抗材料膜を研磨して、透明導電層50を露出すること(ステップS112c)と、を含む。
【0093】
上記において、透明導電層50の形成、及び、高抵抗層60の形成には任意の手法を用いることができる。透明導電層50または高抵抗層60となる膜を形成したのち、フォトリソグラフィとエッチングにより、透明導電層50または高抵抗層60を形成することができる。また、リフトオフ法を用いても良い。
【0094】
図12は、第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図12に表したように、本製造方法においては、高抵抗層60と透明導電層50との形成(ステップS110)は、第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の一部の上に高抵抗層60を形成すること(ステップS112d)を含む。
【0095】
そして、ステップS110は、高抵抗層60の形成の後に、高抵抗層60が設けられていない第2半導体層20の発光層30とは反対の側の面の上に透明導電層50を形成すること(ステップS111b)をさらに含む。
【0096】
これにより、例えば図9(b)に例示した半導体発光素子113が製造できる。
【0097】
図12に表したように、本製造方法においては、ステップS110は、透明導電層50を研磨して平坦化すること(ステップS113)をさらに含むことができる。これにより、第2電極80の第1電極70に対向する部分の第1電極70の側の面80aと、第2半導体層20と、の距離は、第2電極80の第1電極には対向しない部分の第1電極70の側の面80bと、第2半導体層20と、の距離と同じすることができ、第1導電層91と第2導電層92との接着がより安定して実施でき、より望ましい。
【0098】
実施形態によれば、高効率の半導体発光素子及びその製造方法が提供できる。
【0099】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0100】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0101】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれる基板、バッファ層、半導体層、障壁層、井戸層、積層構造体、電極、高抵抗層、透明導電層、導電層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。例えば、上記実施形態の中で説明した組成や膜厚なども一例であり、種々の選択が可能である。
【0102】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0103】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0104】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
5…基板、 6…バッファ層、 10…第1半導体層、 10s…積層構造体、 20…第2半導体層、 30…発光層、 33…発光領域、 50…透明導電層、 50a…面、 51、52、53…界面、 60…高抵抗層、 60a…面、 60f…絶縁膜、 60p…外縁、 70…第1電極、 70p…外縁、 80…第2電極、 80a、80b…面、 81…第1金属層、 82…第2金属層、 91…第1導電層、 91c、91d、91e…第3、第4及び第5金属層、 92…第2導電層、 93…導電性基板、 θ…入射角、 110、110a〜110c…半導体発光素子、 110s1、110s2…3層積層膜、 111a〜111c、112、113、119a、119b…半導体発光素子、 119s1、119s2…2層積層膜、 BL1〜BL4…第1〜第4障壁層、 BLp…p側障壁層、 IL1、IL2…第1及び第2中間層、 Ic…電流、 L1〜L6…光、 Rr…反射率、 WL1〜WL4…井戸層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体と、
前記第1半導体層の前記第2半導体層とは反対の側に設けられた第1電極と、
前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記発光層から放出される発光光に対して反射性を有する第2電極と、
前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記第1電極と重なる部分を有し、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、
前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1電極の前記第1方向に沿ってみたときの外縁は、前記高抵抗層の前記第1方向に沿ってみたときの外縁の内側に位置すること特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記高抵抗層の面積は、前記透明導電層の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2電極の前記第1電極に対向する部分の前記第1電極の側の面と、前記第2半導体層と、の距離は、前記第2電極の前記第1電極には対向しない部分の前記第1電極の側の面と、前記第2半導体層と、の距離と同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第2電極の前記第2半導体層とは反対の側に設けられた導電性基板と、
前記第2電極と前記導電性基板との間に設けられた導電層と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記高抵抗層の厚さは、50ナノメートル以上200ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体の前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、前記発光層から放出される発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、を形成し、
前記高抵抗層と前記透明導電層との上に、前記発光光に対して反射性を有する第2電極を形成し、
前記第1半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記高抵抗層と重なる部分を有する第1電極を形成することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記高抵抗層と前記透明導電層との形成は、
前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の一部の上に前記透明導電層を形成し、
前記透明導電層の形成の後に、前記透明導電層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上に前記高抵抗層を形成することを含むことを特徴とする請求項7記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記高抵抗層の形成は、
前記透明導電層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上、及び、前記透明導電層の上、に高抵抗材料膜を形成し、
前記高抵抗材料膜を研磨して、前記透明導電層を露出することを含むことを特徴とする請求項8記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記高抵抗層と前記透明導電層との形成は、
前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の一部の上に前記高抵抗層を形成し、
前記高抵抗層の形成の後に、前記高抵抗層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上に前記透明導電層を形成することを含むことを特徴とする請求項7記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体と、
前記第1半導体層の前記第2半導体層とは反対の側に設けられた第1電極と、
前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対の側に設けられ、前記発光層から放出される発光光に対して反射性を有する第2電極と、
前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記第1電極と重なる部分を有し、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、
前記第2半導体層と前記第2電極との間において前記第2半導体層に接し、前記発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1電極の前記第1方向に沿ってみたときの外縁は、前記高抵抗層の前記第1方向に沿ってみたときの外縁の内側に位置すること特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記高抵抗層の面積は、前記透明導電層の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2電極の前記第1電極に対向する部分の前記第1電極の側の面と、前記第2半導体層と、の距離は、前記第2電極の前記第1電極には対向しない部分の前記第1電極の側の面と、前記第2半導体層と、の距離と同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第2電極の前記第2半導体層とは反対の側に設けられた導電性基板と、
前記第2電極と前記導電性基板との間に設けられた導電層と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記高抵抗層の厚さは、50ナノメートル以上200ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を含む積層構造体の前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第2半導体層の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗層と、前記発光層から放出される発光光に対して透過性を有し、前記第2半導体層の屈折率よりも低い屈折率を有し、前記高抵抗層の抵抗よりも低い抵抗を有する透明導電層と、を形成し、
前記高抵抗層と前記透明導電層との上に、前記発光光に対して反射性を有する第2電極を形成し、
前記第1半導体層の前記発光層とは反対の側の面の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう第1方向に沿ってみたときに前記高抵抗層と重なる部分を有する第1電極を形成することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記高抵抗層と前記透明導電層との形成は、
前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の一部の上に前記透明導電層を形成し、
前記透明導電層の形成の後に、前記透明導電層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上に前記高抵抗層を形成することを含むことを特徴とする請求項7記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記高抵抗層の形成は、
前記透明導電層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上、及び、前記透明導電層の上、に高抵抗材料膜を形成し、
前記高抵抗材料膜を研磨して、前記透明導電層を露出することを含むことを特徴とする請求項8記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記高抵抗層と前記透明導電層との形成は、
前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の一部の上に前記高抵抗層を形成し、
前記高抵抗層の形成の後に、前記高抵抗層が設けられていない前記第2半導体層の前記発光層とは反対の側の前記面の上に前記透明導電層を形成することを含むことを特徴とする請求項7記載の半導体発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−43893(P2012−43893A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182379(P2010−182379)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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