説明

半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法

【課題】化合物半導体に適用可能で、かつ、小型化が可能で、かつ、気密封止型のシーリング構造を有する半導体素子の実装構造を提供する。
【解決手段】搭載した機能回路の配線層を利用して半導体素子基板1の外周部に少なくとも該機能回路を囲うシーリング構造21を形成し、かつ、実装基板6に、半導体素子基板1を収納するキャビティ7を設けるとともに、実装基板6の外周部に、配線層を利用して、シーリング構造21と鏡像対称な形状のシーリング構造5を形成し、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5とを、共晶温度が300℃以下の共晶合金による接合または表面活性化接合により接合する。また、半導体素子基板1上の機能回路の電極4と、実装基板6に設けられた電極15とを、共晶温度が300℃以下の共晶合金または表面活性化接合またはワイヤボンディングにより接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法に関し、特に、高周波帯域に使用される半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、非特許文献1のインターネットURL「http://www.hittite.com/index.cfm?body_content=company&company_sub=tools&type=connectorized_modules&catid=0&sort=function&source=leftnav」(Hittite Microwave Corporation)に記載されている模式図であって、第1の従来例の半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。図11に示す第1の従来例においては、気密封止を実現するために、金属筐体38(パッケージ金属筐体)が用いられている。
【0003】
金属筐体38の側壁には、高周波同軸コネクタの構成部品であるガラス同軸ビーズ36が設けられている。機能回路(IC)32が搭載された半導体素子基板31を金属筐体38に実装した後に、金属などからなるシールキャップ39を、シーム溶接、ろう付け、あるいは、接着等の手段によって金属筐体38の上面に接続することによって機能回路32周辺の気密性を確保する。
【0004】
金属筐体38内部には、半導体素子基板31を搭載するキャビティが設けられた実装基板34が配置されており、実装基板34上には、実装基板上配線として、マイクロストリップ線路、グランデッドコプレーナ線路等の平面導波路配線33が配置されている。半導体素子基板31上の機能回路32と実装基板34上の平面導波路配線33とは、半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ35を用いたワイヤボンディングによって、また、実装基板34上の平面導波路配線33とガラス同軸ビーズ36の同軸線路中心導体37とは、はんだ、あるいは、銀ペースト等によって、電気的・機械的に接続されている。
【0005】
しかし、図8に示すような第1の従来例による半導体実装は、気密性に大変優れているものの大変高価であった。また、外部端子が、Vコネクタ、Kコネクタなどの同軸コネクタとなるため、小型化することが難しかった。
【0006】
図9は、非特許文献2のインターネットURL「http://www.hittite.com/index.cfm?body_content=company&company_sub=tools&type=pack_pcb_layout_ceramic_glass&catid=0&sort=function&source=leftnav」(Hittite Microwave Corporation)に記載されている模式図であって、第2の従来例の半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。図12に示す第2の従来例においては、気密封止を実現するために、Al2O3やAlNなどのセラミック筐体を用いている。セラミック筐体は、図9に示すように、実装基板下部48、半導体素子基板41を搭載するキャビティを有する実装基板44、および、実装基板側壁46からなる。
【0007】
実装基板44上には、実装基板上配線として、コプレーナ線路等の平面導波路配線43が配置されており、平面導波路配線43は、外部へ信号を取り出すためのフィードスルー電極47とはんだなどによって接続されている。半導体素子基板41上に搭載された機能回路(IC)42は、半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ45を用いたワイヤボンディングによって実装基板44上の平面導波路配線43と接続される。機能回路42が搭載された半導体素子基板41は、実装基板44内のキャビティに銀ペースト等によって接着される。
【0008】
半導体素子基板41を実装した後に、金属などからなるシールキャップ49をシーム溶接、ろう付け、あるいは、接着等の手段によってセラミック筐体すなわち実装基板側壁46の上面に接続することによって機能回路42周辺の気密性を確保する。
【0009】
しかし、図9に示すような第2の従来例よる半導体実装は、セラミック筐体を用いることによって、図8のような金属筐体38に比較すると、低コスト化が可能になっているが、プラスチックパッケージには遠く及ばない。また、同軸コネクタではなく、フィードスルー電極47を用いることによって小型化されているが、搭載している半導体素子基板41の大きさに比較すると、数倍から数十倍の大きさとなってしまっている。また、インピーダンス整合を考慮していない半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ45というボンディングワイヤやフィードスルー電極47を採用しているため、実装構造自体での電気的特性の劣化が大きい。
【非特許文献1】インターネットURL「http://www.hittite.com/index.cfm?body_content=company&company_sub:tools&type=connectorized_modules&catid=0&sort=function&source=leftnav」(Hittite Microwave Corporation)
【非特許文献2】インターネットURL「http://www.hittite.com/index.cfm?body_content=company&company_sub:tools&type=pack_pcb_layout_ceramic_glass&catid:0&sort=function&source=leftnav」(Hittite Microwave Corporation)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、従来技術においては、次のような欠点があった。
【0011】
(1)金属筐体パッケージは、気密性に大変優れているものの大変高価である。また、外部端子が、Vコネクタ、Kコネクタなどの同軸コネクタとなるため、小型化することが難しい。
【0012】
(2)セラミック筐体パッケージは、金属筐体パッケージに比較して低コストであるが、プラスチックパッケージよりもはるかに高価である。また、フィードスルー電極を用いる場合、金属筐体パッケージにおける同軸コネクタよりも小型化されているが、搭載している半導体素子基板の大きさに比較すると、数倍から数十倍の大きさとなってしまっている。また、インピーダンス整合を考慮していないボンディングワイヤやフィードスルー電極を採用しているため、実装構造自体での電気的特性の劣化が大きい。
【0013】
(3)さらには、実装組立時のプロセス温度が高く、化合物半導体を実装することが困難である。
【0014】
本発明は、前述のような従来技術の欠点ならびに問題点を解決するために、化合物半導体に適用可能であり、かつ、チップレベルまで小型化が可能な、気密封止型のシーリング構造を有する半導体素子の実装構造およびその実装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の課題を解決するために、以下のような実装構造および実装方法を主に採用している。
【0016】
(1)半導体機能素子(チップ)の周辺部つまり半導体素子基板の外周部と実装基板の外周部とに配線金属を利用した同様の形状のシーリング構造を設け、双方のシーリング構造同士を接合することによって、良好な気密封止を実現する。
【0017】
(2)実装組立におけるプロセス温度を低く抑えるために、機能回路を搭載した半導体素子基板と実装基板との接合には、共晶温度が300℃以下の共晶合金による接合、または、表面活性化接合(SAB:Surface Activated Bonding)を用いる。
【0018】
より具体的には、以下のごとき各技術手段から構成されている。
【0019】
第1の技術手段は、搭載した機能回路の配線層を利用して、少なくとも該機能回路を囲うシーリング構造が外周部に形成された半導体素子基板を有し、かつ、前記半導体素子基板を収納するキャビティを表面に設けるとともに、表面の外周部に、配線層を利用して、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造が形成された実装基板を有する半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とが接合されていることを特徴とする。
【0020】
第2の技術手段は、前記第1の技術手段に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板に形成された機能回路の電極と、前記実装基板に設けられた電極とが接続されていることを特徴とする。
【0021】
第3の技術手段は、前記第2の技術手段に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の配線層として配線層間絶縁膜が介在した複数の配線層を有し、前記半導体素子基板に形成された機能回路の電極が、最下層の配線層上または最上位の配線層上に形成されていることを特徴とする。
【0022】
第4の技術手段は、前記第3の技術手段に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の配線層間絶縁膜が、SiN,SiO2、ポリイミド、BCB(benzcyclobutene)、ポリシロキサン、パレリン(Parylene)、エポキシ樹脂のいずれかからなることを特徴とする。
【0023】
第5の技術手段は、前記第2ないし第4の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記実装基板の配線層として1ないし複数の配線層を有し、前記実装基板の電極が、前記実装基板の表面に形成された表面配線層上または前記実装基板の中間に形成された中間配線層上に形成されていることを特徴とする。
【0024】
第6の技術手段は、前記第2ないし第5の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とが、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかのうち、または、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかを含む共晶合金のうち、共晶温度が300℃以下の共晶合金により接合されているか、あるいは、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とのそれぞれを構成する金属同士を直接接続する表面活性化接合により接合されていることを特徴とする。
【0025】
第7の技術手段は、前記第2ないし第5の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とが、ワイヤボンディングにより接続されていることを特徴とする。
【0026】
第8の技術手段は、前記第1ないし第7の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板は、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれか、または、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれかを含む混晶からなることを特徴とする。
【0027】
第9の技術手段は、前記第1ないし第8の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記実装基板は、半導体、セラミック、ガラス、ガラスセラミックス、テフロン(登録商標)のいずれかからなることを特徴とする。
【0028】
第10の技術手段は、前記第1ないし第9の技術手段のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とが、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかのうち、または、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかを含む共晶合金のうち、共晶温度が300℃以下の共晶合金により接合されているか、あるいは、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とのそれぞれを構成する金属同士を直接接続する表面活性化接合により接合されていることを特徴とする。
【0029】
第11の技術手段は、半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造を作製する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造が外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含む半導体素子の実装方法とすることを特徴とする。
【0030】
第12の技術手段は、半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造と、電極とを作製する工程と、前記半導体素子基板の電極に接続するために電極と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造とが外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板に設けられた電極と前記実装基板に設けられた電極とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含む半導体素子の実装方法とすることを特徴とする。
【0031】
第13の技術手段は、半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造と、電極とを作製する工程と、前記半導体素子基板の電極に接続するために電極と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造とが外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板に設けられた電極と前記実装基板に設けられた電極とをワイヤボンディングにより接続する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含む半導体素子の実装方法とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法によれば、次のような効果が得られる。
【0033】
(1)機能回路を搭載した半導体素子基板の外周部と実装基板の外周部とに配線金属を利用した同様の形状のシーリングを設け、双方のシーリング構造同士を接合するだけで、気密封止を実現しているので、金属筐体やセラミック筐体による気密封止構造を別途作製する必要がなく、チップレベルの大きさで気密封止を実現することが可能である。
【0034】
(2)実装基板には、プロセス互換性のないチップも同時に搭載可能である。気密封止が必要な化合物半導体チップを搭載または収納する場所にキャビティを設け、外周部に、余分に金属のシーリング構造を設けるだけで良く、簡易な構造で気密封止を実現することができ、実装工程数が大幅に削減される。
【0035】
(3)実装におけるプロセス温度を300℃以下に低く抑えることができるため、化合物半導体にも適用可能であり、化合物半導体を用いた機能素子の電気的な特性を損なうことなく、実装することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明に係る半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法の最良の実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてまずその概要を説明する。本発明は、化合物半導体の気密封止ウェハレベルパッケージ技術として好適に適用可能な半導体素子の実装構造および半導体素子の実装方法に関するものである。化合物半導体素子基板の外周部に、配線層を利用してシーリング構造を設け、該化合物半導体素子基板上のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造を備えるとともに、該化合物半導体素子基板を搭載するキャビティを備えた実装基板を、化合物半導体素子基板に対向させて、共晶合金または表面活性化接合を用いて互いに接合することを特徴としている。
【0038】
つまり、本発明の大きな特徴として、下記の3点がある。
【0039】
(1)化合物半導体からなる半導体素子を搭載した半導体素子基板の外周部と実装基板の外周部とに、配線層を利用して、互いに鏡像対称な形状の金属のシーリング構造を設け、互いに接合することによって、ウエハレベルでの気密封止を実現する。
【0040】
(2)実装基板には、様々な化合物半導体素子(チップ)を同時に搭載することが可能であり、プロセス互換性のないチップであっても搭載することが可能である。気密封止が必要な化合物半導体素子(チップ)を搭載または収納する場所にキャビティを設け、その外周部に、余分に金属シーリング構造を設ける構造である。
【0041】
(3)実装組立におけるプロセス温度を低く抑えるために、機能回路を搭載した半導体素子基板と実装基板との接合には、共晶合金接合または表面活性化接合(SAB:Surface Activated Bonding)を用いる。共晶合金接合の材料としては、共晶温度が300℃以下の共晶合金を用い、SnAu(Au5%、Sn95%、共晶温度217℃)が最適である。
【0042】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る半導体素子の実装構造として第1の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。また、図2は、図1に示す半導体実装素子の上面を示す模式図であり、図2(a)は、半導体素子基板表面の構造、図2(b)は、実装基板表面の構造をそれぞれ示している。
【0043】
半導体素子基板1は、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれか、または、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれかを含む混晶などの半導体材料からなり、半導体素子基板1上には、図2(a)に示すように、トランジスタ、ダイオードなどの能動回路やキャパシタ、抵抗、インダクタなどの受動素子を用いて機能回路が形成されている。図1、図2(a)に示す第1の配線層2、第2の配線層12などの機能回路の配線層は、Au,Cu,Al,Wのいずれか、または、Au,Cu,Al,Wのいずれかを含む合金などからなっている。
【0044】
また、図1に示す第1−第2の配線層間絶縁膜3などの配線層間絶縁膜は、SiO2,SiNなどのいずれかの無機材料か、または、ポリイミド、BCB(benzcyclobutene)、ポリシロキサン、パレリン(Parylene、パラキシリレン系樹脂)などのいずれかの有機系材料からなっている。また、半導体素子基板1上には、高周波信号端子、直流バイアス端子や、グランド端子などの電極4が、半導体素子基板1−実装基板6接続部として、最下層の配線層つまり第1の配線層2などによって形成されている。
【0045】
同様に、電極4と同じ配線層を用いて、機能回路と電極4とを囲むように、10〜200μm程度の幅で、半導体素子基板1の外周部にシーリング構造21が形成されている。図2(a)に示すように、半導体素子基板1上に形成された機能回路は、第1の配線層2、第2の配線層12などによって、外部との接続用の電極4と接続される。なお、配線層は、図1に示すように、第1の配線層2、第2の配線層12など、多層の配線層からなっており、各配線層間には、第1−第2の配線層間絶縁膜3などの配線層間絶縁膜が形成されている。
【0046】
実装基板6は、半導体、セラミック、ガラス、ガラスセラミックス、テフロン(登録商標)などの気密性の良い基板からなり、半導体素子基板1を搭載する部分には、図1、図2(b)に示すように、半導体素子基板1の形状・大きさに応じて、矩形状に穿設されたキャビティ7が設けられている。また、実装基板6の外周部には、Au,Cu,Al,W,MoのいずれかまたはAu,Cu,Al,W,Moのいずれかを含む合金などによる中間配線層9、表面配線層8などの2層以上の配線層を有している。この配線層により、半導体素子基板1上の電極4、シーリング構造21と鏡像対称な形状の電極15、シーリング構造5が実装基板6上に形成されている。
【0047】
実装基板6の表面に形成される表面配線層8により、実装基板6−半導体素子基板1接続部として、実装基板6を半導体素子基板1に電気的に接続するための電極15と、実装基板6−半導体素子基板1接続部として、半導体素子基板1上の機能回路を囲む形で、実装基板6を半導体素子基板1に接続するためのシーリング構造5とが形成されている。電極15からは、図1、図2(b)に示すように、配線層間ビア10、中間配線層9を介して、実装基板6−半導体素子基板1接続部のシーリング構造5の位置よりもさらに実装基板6の外周側に形成されている表面配線層8と接続されて、外部への信号取り出しを行うことができる構造となっている。
【0048】
半導体素子基板1と実装基板6とは、半導体素子基板1上に作製された電極4と実装基板6上に作製された電極15とで、また、半導体素子基板1上に作製されたシーリング構造21と実装基板6上に作製されたシーリング構造5とによって、互いに接続されている。半導体素子基板1と実装基板6とは、それぞれの電極用の配線金属同士、シーリング構造用の配線金属同士を、直接接続する表面活性化接合か、あるいは、InSn(共晶温度117℃)、SnBi(共晶温度139℃)、SnZn(共晶温度198℃)、SnAu(共晶温度217℃、280℃)、SnCu(共晶温度227℃)のいずれかのうち、あるいは、これらのいずれかを含む共晶の合金などのうち、共晶温度が300℃以下の共晶合金を介して接続する共晶合金接合か、のいずれかによって接続される。
【0049】
以上のような半導体素子の実装構造により、実装基板6と半導体素子基板1とのシーリング構造5,21で封止された内部空間は、チップレベルの大きさで、気密性を確保することが可能となる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る半導体素子の実装構造の第2の実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る半導体素子の実装構造として第2の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【0051】
図3に示す半導体素子の実装構造は、第1の実施形態における図1、図2の半導体素子の実装構造とは異なり、半導体素子基板1の構成において、実装基板6の電極15と接続する半導体素子基板1−実装基板6接続部として、最下層の配線層つまり第1の配線層2を利用して電極4を形成するのではなく、第1の配線層2を、半導体素子基板貫通ビア13を介して、半導体素子基板裏面電極14に接続し、半導体素子基板裏面電極14を、半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ16により、実装基板6上のシーリング構造5よりもさらに外周側に形成されている表面配線層8の電極15にワイヤボンディング接続していることである。
【0052】
したがって、本第2の実施形態においては、実装基板6は、2層以上の配線構造を有する必要はなく、実装基板6の表面に表面配線層8を備えているだけで構わなく、図1に示すような中間配線層9、配線層間ビア10を形成する必要はない。
【0053】
なお、本第2の実施形態においても、図3に示すように、実装基板6の外周部に形成されたシーリング構造5と半導体素子基板1の外周部に形成されたシーリング構造21とが互いに接合された構造であり、チップレベルの大きさで、第1の実施形態の場合と同様の気密性を得ることが可能である。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る半導体素子の実装構造の第3の実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、本発明に係る半導体素子の実装構造として第3の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【0055】
図4に示す半導体素子の実装構造は、第1の実施形態における図1、図2の半導体素子の実装構造とは異なり、半導体素子基板1の構成において、実装基板6の電極15と接続する半導体素子基板1−実装基板6接続部として、電極4が、最下層の配線層つまり第1の配線層2ではなく、半導体素子基板1の最上層の配線層(図4の場合、第3の配線層)上に形成されることである。
【0056】
また、実装基板6は、第1の実施形態における図1の場合よりも、中間配線層9の長さを長くして、あるいは、キャビティ7の幅または深さを大きくとって、半導体素子基板1を搭載するためのキャビティ7内に、中間配線層9を露出させ、実装基板6上の電極15は、表面配線層8ではなく、中間配線層9上に形成して、半導体素子基板1の最上層の配線層に形成されている電極4と接続するように構成される。なお、図4の例では、半導体素子基板1の配線層間絶縁膜数が、図1の場合よりも少ない場合を示しているが、図1の場合と同数の配線層間絶縁膜数を有している場合であっても構わなく、最上層の配線層が、実装基板からあらかじめ定めた距離だけ離れた状態になるように、キャビティ7の深さをより深く穿設した構造にすれば良い。
【0057】
なお、本第3の実施形態においても、図4に示すように、実装基板6の外周部に形成されたシーリング構造5と半導体素子基板1の外周部に形成されたシーリング構造21とが互いに接合された構造であり、チップレベルの大きさで、第1の実施形態の場合と同様の気密性を得ることが可能である。
【0058】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る半導体素子の実装方法について、図1に示す半導体素子の実装構造を製造する製造方法の一例を説明する。図5は、本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の一例を説明するための模式図であり、第1の実施形態における図1の半導体素子の実装構造を製造する場合を例にとって示している。
【0059】
まず、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれか、または、これらのいずれかを含む混晶などの半導体材料からなる半導体素子基板1を用意し、デジタル回路、アナログ回路、マイクロ波回路などの能動回路やキャパシタ、抵抗、インダクタなどからなる受動回路などの機能回路を作製する。同時に、機能回路を作製する本工程で、機能回路用の配線層を用いて、実装基板6と接続するための電極4およびシーリング構造21を作製する。該配線層に用いる配線金属や配線層間絶縁膜は、機能回路で用いるものと同一の材料である。
【0060】
例えば、配線金属がAu、配線層間絶縁膜がBCB(benzcyclobutene)の場合、図5(a)の第1の工程つまり機能回路作製工程に示すように、Auの第1の配線層2は、厚膜化が容易な電界メッキを用いて、例えば、厚さ1〜5μmで作製する。実装基板6と接続するための電極4およびシーリング構造21も、第1の配線層2を用いて、半導体素子基板1の外周部に、作製する。例えば、電極4の大きさは、10〜100μm角で形成し、シーリング構造21は、幅100μmで形成する。
【0061】
次に、図5(b)の第2の工程つまりビアホール作製工程に示すように、BCBを用いた第1−第2の配線層間絶縁膜3を、第1の配線層2上に、例えば1〜10μmの厚さで、スピンコーティングした後、フッ素系の反応性イオンエッチングによって、第1−第2の配線層間ビアホール17を作製する。
【0062】
次に、図5(c)の第3の工程つまり配線層作製工程に示すように、製作工程簡易化の観点から、第1−第2の配線層間ビアホール17へ個別に金属を充填することはしないで、第1−第2の配線層間ビアホール17への金属充填つまり第1−第2の配線層間ビア11の形成は、上層の配線層である第2の配線層12の形成と一括して行う。
【0063】
しかる後、図5(c)に示すように、必要な配線層数分だけ、前述の第2の工程つまりビアホール作製工程および当該第3の工程つまり配線層作製工程を繰り返す。図5(c)の例においては、配線層は3層の場合を示している。
【0064】
なお、半導体素子基板1側の電極4を或る程度の高さ例えば第1−第2の配線層間絶縁膜3と同程度の高さを有するように形成する場合は、前述の第2の工程つまりビアホール作製工程において、第1−第2の配線層間ビアホール17を形成する際に、同時に、実装基板6と接続するための電極4を形成するための電極形成用ビアホールも作製する。該電極形成用ビアホールの大きさは、電極4の大きさの10〜100μm角である。しかる後、第3の工程つまり配線層作製工程において、上層の配線層である第2の配線層12の形成の際に、第1−第2の配線層間ビアホール17への金属充填による第1−第2の配線層間ビア11の形成と同時に、該電極形成用ビアホールへの金属充填つまり電極4の形成を一括して行う。ただし、この場合においては、配線層数分だけ、第2の工程および第3の工程を繰り返す際に、電極形成用ビアホールのさらなる作製は行わなくても良い。
【0065】
次に、図5(d)の第4の工程つまり電極およびシーリング構造露出工程に示すように、機能回路の周辺部つまり半導体素子基板1の外周部に形成された電極4およびシーリング構造21を露出するように、フッ素系の反応性イオンエッチングを用いて、BCBを用いた多層の配線層間絶縁膜をエッチングする。さらに、電極4およびシーリング構造21上には、それぞれ、実装基板6との接合のための接合金属18、接合金属19として、共晶温度が300℃以下の共晶合金を堆積する。
【0066】
接合金属18、接合金属19の共晶合金として、例えば、特許文献の特許第3640017号公報「鉛フリーはんだバンプとその形成法」(石井他)に記載されているように、6.2μm厚さのSnAu(Au5%、共晶温度217℃)を用いる場合、電子ビーム蒸着装置を用いて、600nmのSnと20nmのAuとを交互に10層積層して形成する。
【0067】
次に、図5(e)の第5の工程つまり実装基板作製工程に示すように、実装基板6は、例えば、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic:低温同時焼成セラミックス)などの積層が比較的容易なセラミック材料を用いて2層以上形成して、キャビティ7を作製するとともに、配線層についても、CuやAgなどの金属材料を用いて、中間配線層9、表面配線層8と、2層以上、形成する。
【0068】
さらに、実装基板6の上層基板には、表面配線層8を形成するための配線層を形成する際に、表面配線層8を形成するための配線層を利用して、中間配線層9と表面配線層8とを接続するための配線層間ビア10を形成する。また、表面配線層8を形成するための配線層を利用して、半導体素子基板1と電気的に接続するための電極15、および、半導体素子基板1上に搭載された機能回路を囲むように、半導体素子基板1と接合するためのシーリング構造5を形成するとともに、シーリング構造5よりもさらに外周側に、外部端子となるフィードを作製しておく。電極15は、シーリング構造5を避けるように、配線層間ビア10、中間配線層9を介して、外部への取り出し端子であるフィードの表面配線層8ヘと接続する構造とされる。
【0069】
また、実装基板6上の半導体素子基板1を搭載する領域には、図5(d)までの工程によって作製された半導体素子基板1上の配線層や配線層間絶縁膜の厚さに合わせて、10〜1,000μmの深さを有するキャビティ7をエッチングすることによって穿設する。
【0070】
最後に、図5(f)の第6の工程つまり半導体素子基板接合工程において、半導体素子基板1の表面を下側に向けて、半導体素子基板1の電極4と実装基板6の電極15とを合わせ、かつ、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5とを合わせて、接合金属18、接合金属19として、それぞれ、電極4およびシーリング構造21上に堆積した共晶合金の共晶温度以上の温度を用いて、例えば、SnAu(Au5%、共晶温度217℃)の共晶合金の場合には、220℃の温度を用いて、互いに接合させることによって、半導体素子の実装構造が完成する。
【0071】
ここで、半導体素子基板1と実装基板6との接合については、前述のような、共晶合金による接合を用いずに、「表面活性化による低エネルギー接合」(須賀 唯知、まてりあ、35(5)、476(1996))に記載されているような表面活性化接合(SAB:Surface Activated Bonding)を用いることも可能である。表面活性化接合の場合には、接合する2つの基板の互いに接合させる面に、真空中で、Arイオンビームなどを照射してエッチングした後、活性化した金属同士を直接接合させる。表面活性化接合を用いる場合には、前述のように、半導体素子基板1上の電極4やシーリング構造21の上には、接合金属18や接合金属19として、共晶合金を堆積する必要はない。
【0072】
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る半導体素子の実装方法について、図3に示す半導体素子の実装構造を製造する製造方法の一例を説明する。図6は、本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の図5とは異なる例を説明するための模式図であり、第2の実施形態における図3の半導体素子の実装構造を製造する場合を例にとって示している。
【0073】
本実施形態における図6(a)の第1の工程つまり機能回路作製工程から図6(d)の第4の工程つまり電極およびシーリング構造露出工程までの製造工程は、第4の実施形態として示した図5(a)から図5(d)までの製造工程と同一である。ただし、本実施形態においては、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5とは、第4の実施形態の場合と同様、共晶合金による接合を行うが、半導体素子基板1の裏面電極14と実装基板6の電極15とはワイヤボンディング接続する場合であるので、第1の工程つまり機能回路作製工程において半導体素子基板1の第1の配線層2上に電極を形成する必要はないし、さらに、第4の工程つまり電極およびシーリング構造露出工程でも、電極の露出や電極上への共晶合金の堆積を行う必要はない。
【0074】
次に、図6(e)の第4の工程つまり裏面電極作製工程において、まず、半導体素子基板1の裏面から、当該半導体素子基板1を貫通するように、基板貫通ビアホールを作製する。例えば、半導体素子基板1がGaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれか、または、これらのいずれかを含む混晶などの半導体材料の場合には、塩素系の反応性イオンエッチングを用いて、基板貫通ビアホールを作製する。その後、図6(e)の第4の工程つまり裏面電極作製工程に示すように、Auなどの金属を、半導体素子基板1の裏面側から基板貫通ビアホールに充填して半導体素子基板貫通ビア13を形成するとともに、半導体素子基板裏面電極14を作製する。
【0075】
ここで、半導体素子基板貫通ビア13は、図6(a)〜図6(d)のような、多層配線を形成する工程を行う前に作製しておいても良い。この場合には、半導体素子基板貫通ビア13は、半導体素子基板1の裏面側には貫通させずに、半導体素子基板1の表面側から基板貫通ビアホール内に金属充填だけ行っておき、図6(a)〜図6(d)の工程を経た多層配線の完成後に、半導体素子基板1を裏面から研磨して半導体素子基板貫通ビア13に充填された金属の先端を露出させて、しかる後、半導体素子基板裏面電極14を作製する。
【0076】
次に、図6(f)の第6の工程つまり実装基板作製工程に示すように、実装基板6は、例えば、セラミック材料を用いてキャビティ7を形成するとともに、配線層については、CuやAgなどの金属材料を用いて、表面配線層8のみを形成する。なお、実装基板6は、第4の実施形態の場合とは異なり、中間配線層9を形成しない場合であるので、1層だけでも構わない。
【0077】
また、実装基板6の表面配線層8を形成するための配線層を利用して、半導体素子基板1と電気的に接続するための電極15、および、半導体素子基板1上の機能回路を囲むように、半導体素子基板1と接続するためのシーリング構造5を形成する。
【0078】
最後に、図6(g)の第7の工程つまり半導体素子基板接合工程において、半導体素子基板1の表面を下側に向けて、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5と合わせて、接合金属19として、シーリング構造21上に堆積した共晶合金の共晶温度以上の温度を用いて、例えば、SnAu(Au5%、共晶温度217℃)の共晶合金の場合には、220℃の温度を用いて、互いのシーリング構造同士を接合させた後、半導体素子基板1の電極4と実装基板6の電極15とを半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ16を用いてワイヤボンディング接続することによって、半導体素子の実装構造が完成する。
【0079】
なお、本第5の実施形態の場合も、第4の実施形態における場合と同様、半導体素子基板1と実装基板6との接合には、共晶合金による接合を用いずに、表面活性化接合を用いることも可能である。表面活性化接合を用いる場合には、前述のように、半導体素子基板1上のシーリング構造21の上には、接合金属19として、共晶合金を堆積する必要はない。
【0080】
(第6の実施形態)
次に、本発明に係る半導体素子の実装方法について、図4に示す半導体素子の実装構造を製造する製造方法の一例を説明する。図7は、本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の図5とはさらに異なる例を説明するための模式図であり、第3の実施形態における図4の半導体素子の実装構造を製造する場合を例にとって示している。
【0081】
本実施形態における図7(a)の第1の工程つまり機能回路作製工程から図7(c)の第3の工程つまり配線層作製工程までの製造工程は、第4の実施形態として示した図5(a)から図7(5)までの製造工程と同一である。ただし、半導体素子基板1−実装基板6接続部として、実装基板6に接続する電極4は、最下層の配線層つまり第1層の配線層2を利用するものではなく、最上層の配線層を利用する場合であるので、図7(c)の第3の工程つまり配線層作製工程においては、半導体素子基板1の表面に最上層の配線層(図7の場合、第3の配線層)を露出した状態で作製し、最上層の配線層に電極4を作製しておく。
【0082】
次に、図7(d)の第4の工程つまりシーリング構造露出工程に示すように、機能回路を少なくとも囲む周辺部つまり半導体素子基板1の外周部に形成されたシーリング構造21を露出するように、フッ素系の反応性イオンエッチングを用いて、BCBを用いた多層の配線層間絶縁膜をエッチングする。さらに、電極4およびシーリング構造21上には、それぞれ、実装基板6との接合のための接合金属18、接合金属19として、共晶温度が300℃以下の共晶合金を堆積する。
【0083】
次に、図7(e)の第5の工程つまり実装基板作製工程に示すように、実装基板6は、例えば、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic:低温同時焼成セラミックス)などの積層が比較的容易なセラミック材料を用いて2層以上形成して、キャビティ7を作製するとともに、配線層についても、CuやAgなどの金属材料を用いて、中間配線層9、外部端子となるフィードとして表面配線層8と、2層以上、形成する。
【0084】
さらに、実装基板6の上層基板には、表面配線層8を利用して、中間配線層9と表面配線層8とを接続するための配線層間ビア10を形成するとともに、半導体素子基板1と接続するためのシーリング構造5を形成する。
【0085】
また、第4の実施形態の場合よりも、中間配線層9の長さを長く形成して、あるいは、キャビティ7の幅または深さをさらに大きくとることによって、実装基板6のキャビティ7内に中間配線層9を露出させて、半導体素子基板1と電気的に接続するための電極15は、キャビティ7内に露出させた中間配線層9上に作製する。ここで、半導体素子基板1を実装基板6に接合する際に、半導体素子基板1の電極4と実装基板6の電極15と、および、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5と、の双方が同時に接触するように、キャビティ7は、半導体素子基板1上の各配線層間絶縁膜の合計の厚さに合わせるような深さまで穿設する。
【0086】
最後に、図7(f)の第6の工程つまり半導体素子基板接合工程において、半導体素子基板1の表面を下側に向けて、半導体素子基板1の電極4と実装基板6の電極15とを合わせ、かつ、半導体素子基板1のシーリング構造21と実装基板6のシーリング構造5とを合わせて、接合金属18、接合金属19として、それぞれ、電極4およびシーリング構造21上に堆積した共晶合金の共晶温度以上の温度を用いて、例えば、SnAu(Au5%、共晶温度217℃)の共晶合金の場合には、220℃の温度を用いて、互いに接合させることによって、半導体素子の実装構造が完成する。
【0087】
なお、本第6の実施形態の場合も、第4の実施形態における場合と同様、半導体素子基板1と実装基板6との接合には、共晶合金による接合を用いずに、表面活性化接合を用いることも可能である。表面活性化接合を用いる場合には、前述のように、半導体素子基板1上の電極4およびシーリング構造21の上には、接合金属18、接合金属19として、共晶合金を堆積する必要はない。
【0088】
(本発明の作用効果)
以上に詳細に説明したように、本発明の半導体素子の実装構造およびその実装方法によれば、次のような作用効果が得られる。
【0089】
(1)機能回路を構成する半導体機能素子(チップ)を少なくとも囲む周辺部つまり半導体素子基板1の外周部と実装基板6の外周部とに、それぞれ、配線金属を利用したシーリング構造21、シーリング構造5を設け、双方のシーリング構造21,5同士を接合させるだけで、気密封止を実現しているので、金属筐体やセラミック筐体による気密封止構造を別途作製する必要がなく、かつ、チップレベルの大きさで気密封止を実現することが可能である。
【0090】
(2)実装基板6には、プロセス互換性のない半導体素子(チップ)も同時に搭載することが可能である。気密封止が必要な化合物半導体素子(チップ)を搭載または収納する場所にキャビティ7を設け、外周部に、余分に金属のシーリング構造5を設けるだけで良く、簡易な構造で実現することができ、実装工程数が大幅に削減される。
【0091】
(3)実装におけるプロセス温度を300℃以下に低く抑えることができるので、化合物半導体にも適用可能であり、化合物半導体を用いた機能素子の電気的な特性を損なうことなく、実装することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る半導体素子の実装構造として第1の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【図2】図1に示す半導体実装素子の上面を示す模式図である。
【図3】本発明に係る半導体素子の実装構造として第2の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【図4】本発明に係る半導体素子の実装構造として第3の実施形態を例示する半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【図5】本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の一例を説明するための模式図である。
【図6】本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の図5とは異なる例を説明するための模式図である。
【図7】本発明に係る半導体素子の実装方法に関する製造工程の図5とはさらに異なる例を説明するための模式図である。
【図8】第1の従来例の半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【図9】第2の従来例の半導体実装素子の断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
1…半導体素子基板、2…第1の配線層、3…第1−第2の配線層間絶縁膜、4…電極(半導体素子基板−実装基板接続部)、5…シーリング構造(実装基板−半導体素子基板接続部)、6…実装基板、7…キャビティ(実装基板キャビティ)、8…表面配線層、9…中間配線層、10…配線層間ビア、11…第1−第2の配線層配線間ビア、12…第2の配線層、13…半導体素子基板貫通ビア、14…半導体素子基板裏面電極、15…電極(実装基板電極、実装基板−半導体素子基板接続部)、16…半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ、17…第1−第2の配線層配線間ビアホール、18…接合金属、19…接合金属、21…シーリング構造(半導体素子基板側)、31…半導体素子基板、32…機能回路(IC)、33…実装基板上配線、34…実装基板、35…半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ、36…ガラス同軸ビーズ、37…同軸線路中心導体、38…パッケージ金属筐体、39…キャップ、41…半導体素子基板、42…機能回路(IC)、43…実装基板上配線、44…実装基板、45…半導体素子基板−実装基板接続ワイヤ、46…実装基板側壁、47…フィードスルー電極、48…実装基板下部、49…キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載した機能回路の配線層を利用して、少なくとも該機能回路を囲うシーリング構造が外周部に形成された半導体素子基板を有し、かつ、前記半導体素子基板を収納するキャビティを表面に設けるとともに、表面の外周部に、配線層を利用して、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造が形成された実装基板を有する半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とが接合されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板に形成された機能回路の電極と、前記実装基板に設けられた電極とが接続されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の配線層として配線層間絶縁膜が介在した複数の配線層を有し、前記半導体素子基板に形成された機能回路の電極が、最下層の配線層上または最上位の配線層上に形成されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の配線層間絶縁膜が、SiN,SiO2、ポリイミド、BCB(benzcyclobutene)、ポリシロキサン、パレリン(Parylene)、エポキシ樹脂のいずれかからなることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記実装基板の配線層として1ないし複数の配線層を有し、前記実装基板の電極が、前記実装基板の表面に形成された表面配線層上または前記実装基板の中間に形成された中間配線層上に形成されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とが、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかのうち、または、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかを含む共晶合金のうち、共晶温度が300℃以下の共晶合金により接合されているか、あるいは、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とのそれぞれを構成する金属同士を直接接続する表面活性化接合により接合されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項7】
請求項2ないし5のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板の電極と前記実装基板の電極とが、ワイヤボンディングにより接続されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板は、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれか、または、GaAs,InP,InAs,InSb,Si,Geのいずれかを含む混晶からなることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記実装基板は、半導体、セラミック、ガラス、ガラスセラミックス、テフロン(登録商標)のいずれかからなることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体素子の実装構造において、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とが、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかのうち、または、InSn、SnBi、SnZn、SnAu、SnCuのいずれかを含む共晶合金のうち、共晶温度が300℃以下の共晶合金により接合されているか、あるいは、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とのそれぞれを構成する金属同士を直接接続する表面活性化接合により接合されていることを特徴とする半導体素子の実装構造。
【請求項11】
半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造を作製する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造が外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする半導体素子の実装方法。
【請求項12】
半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造と、電極とを作製する工程と、前記半導体素子基板の電極に接続するために電極と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造とが外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板に設けられた電極と前記実装基板に設けられた電極とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする半導体素子の実装方法。
【請求項13】
半導体素子基板の外周部に、配線用の金属を利用して、少なくとも前記半導体素子基板上に形成された機能回路を囲うシーリング構造と、電極とを作製する工程と、前記半導体素子基板の電極に接続するために電極と、前記半導体素子基板のシーリング構造と鏡像対称な形状のシーリング構造とが外周部に形成された実装基板を作製する工程と、前記半導体素子基板に設けられた電極と前記実装基板に設けられた電極とをワイヤボンディングにより接続する工程と、前記半導体素子基板のシーリング構造と前記実装基板のシーリング構造とを共晶合金接合または表面活性化接合を用いて接合する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする半導体素子の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−231556(P2009−231556A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75486(P2008−75486)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】