説明

半導体素子固定用クリップ

【課題】 半導体素子固定用クリップ1において,前記のクリップ1の挟み強度が強く,又サイズが小さいため,前記のクリップ1の脚2を開くことが難しく,半導体素子4と放熱体あるいは筐体5をクリップ1で挟み込み,固定する作業が困難な点である。
【解決手段】 半導体素子固定用クリップ1の脚2の先端部2cに穴3を開け,前記の穴3に細いネジ回し7又はスナップリングプライヤー8などを差し入れクリップ1の脚2を開き,容易に半導体素子4を放熱体あるいは筐体5に固定する。半導体素子固定用クリップ1の脚2の先端部2cを外側へほぼ一周カール9させ,略円筒形状部10を形成し,前記の略円筒形状部10に細いネジ回し7又はスナップリングプライヤー8などを差し入れクリップ1の脚2を開き,半導体素子4を放熱体あるいは筐体5に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体素子を放熱体あるいは筐体へ固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,半導体素子を放熱体あるいは筐体へ固定する方法として,金属板の弾性を利用したクリップ方式が採用され,特許文献1〜4にその方法が開示されている。
【0003】
図4に従来のクリップ1を使って半導体素子4の固定を行っている一例を示す。図4において,プリント基板6に実装されている半導体素子4は概U字型に折り曲げ加工した金属製のクリップ1によって,筐体5のクリップ装着スペース5bを使って,筐体5と一体に形成された筐体放熱壁5aに固定されている。
【0004】
前記のクリップ1は,半導体素子4を固定するというその目的から,クリップ1の両脚2間の挟み強度は強く,又サイズは小さいため,クリップ1の脚2を開き,半導体素子4と筐体放熱壁5aなどの固定物とを挟む作業は困難であった。
【特許文献1】特開平9―102682号公報
【特許文献2】実開平3―071696号公報
【特許文献3】実開平1―162249号公報
【特許文献4】特開昭61―212100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体素子4を固定するクリップ1の挟み強度が強く,前記のクリップ1の脚2を開き,半導体素子4と放熱体あるいは筐体とを挟み込む作業が困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は,半導体素子4を放熱体あるいは筐体5にクリップ1を用いて固定する作業において,例えば細いネジ回し7を差し入れて容易にクリップ1の脚2を開き,半導体素子4を固定することができるような穴3をクリップ1の脚2の先端部2cに開けたことを特徴とする。
【0007】
第二の発明は,クリップ1の脚2の先端部2cを外側へほぼ一周カール9させて,半導体素子4を放熱体あるいは筐体5にクリップ1を用いて固定する作業において,例えば細いネジ回し7を差し入れて容易にクリップ1の脚2を開き,半導体素子4を固定することができるような略円筒形状10を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
半導体素子4を放熱体あるいは筐体5に固定する作業が容易になり,作業性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
クリップ1を用いて半導体素子4を放熱体あるいは筐体5へ固定する作業において,容易に固定の作業を行うという目的をクリップ1の基本形状・機能を変えることなく実現した。
【実施例1】
【0010】
図1に第一の発明による半導体素子固定用クリップ1を示す。金属製半導体素子固定用クリップ1の半導体素子側の脚2aの先端部2cに,ネジ回し7などの道具を差し込むための穴3を開けた。
【0011】
図2にネジ回し7を使って,第一の発明であるのクリップ1の脚2を開く動作を示す。図示しているように,クリップ1の固定物側の脚2bの一部を筐体放熱壁5aなどの固定物に引っ掛け,クリップ1を支えた状態で脚2を開く操作を行う。
【0012】
図3に第一の発明のクリップ1を用いて,半導体素子4を筐体放熱壁5aに固定する作業を説明する。
図3において,プリント基板6に実装されている半導体素子4は概U字型に折り曲げ加工した金属製のクリップ1によって,筐体5のクリップ装着スペース5bを使って,クリップ1の固定物側の脚2bの一部を筐体放熱壁5aの先端へ引っ掛けた状態で,ネジ回し7のように先端が細くなった道具を用いて,図2に示したように脚2を開き,筐体5と一体に形成された筐体放熱壁5aと半導体素子4をクリップ1で挟み,半導体素子4の固定を行っている。
【実施例2】
【0013】
前記の実施例はねじ回し7のような棒状の道具を使ってクリップ1の脚2を開き,半導体素子4を固定する実施例を説明したが,以下に第一の発明による他の実施例について,説明をする。
【0014】
図5に第一の発明による他の実施例を示す。クリップ1の両脚2の先端部2cそれぞれに穴3を開け,スナップリングプライヤー8の先端を穴3に差し入れ,クリップ1の脚2を開くようにすることもできる。この場合は,前述例のように,クリップ1を開く前にクリップ1の固定物側の脚2bの一部を筐体放熱壁5aの先端へ引っ掛けて,クリップ1を支える必要はない。クリップ1の形状に合わせて,スナップリングプライヤー8の形状は,先端がストレートタイプや,先曲がりタイプ11を選定して,使用することができる。
【実施例3】
【0015】
図6に第二の発明によるクリップの実施例を示す。第一の発明によるクリップ1と共通する部位は同一の番号を用いている。第一の発明によるクリップ1と異なる部分について説明をする。クリップ1の半導体素子側の脚2aの先端部2cを外側へほぼ一周カールさせて,ネジ回し7などの道具を差し込むための略円筒形状部10を形成する。
【0016】
ネジ回しなどの道具を使って,第二の発明であるクリップ1の脚2を開く操作を説明する。第一の発明であるクリップ1の脚2を開く操作と同様に,クリップ1の固定物側の脚2bの一部を筐体放熱壁5aなどの固定物に引っ掛け,クリップ1を支えた状態で前記の略円筒形状部10にネジ回し7などの道具を指し込み,クリップ1の脚2を開く。
【実施例4】
【0017】
図7に第二の発明によるクリップの他の実施例を示す。クリップ1の両脚2の先端部2cをそれぞれ外側へほぼ一周カールさせて,略円筒形状部10を形成する。スナップリングプライヤー8の先端を前記の略円筒形状部10に差し入れ,クリップ1の脚2を開くようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
半導体素子固定用クリップ1と類似した目的と形状を有し,市販され一般に利用されているものに,書類などを綴じるためのクリップが有る。前記の書類用のクリップに対し専用の綴じ具は有るが,前記の綴じ具を使用せずに書類などを直接手で綴じようとする場合は,半導体素子固定用クリップ1の場合と同様に,綴じる作業は困難である。前記の書類などを綴じるクリップに対しても,本発明を応用すれば,使用する道具はねじ回しでなくとも,例えばボールペンのペン先や挟みなどの手近な文具を使用して,書類を容易に綴じることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の発明によるクリップの図
【図2】第一の発明によるクリップの脚を広げる操作を示す図
【図3】第一の発明によるクリップを使用した半導体の固定方法を示す図
【図4】従来のクリップを用いた半導体固定の構造を示す図
【図5】第一の発明による他の実施例
【図6】第二の発明によるクリップを示す図
【図7】第二の発明によるクリップの他の実施例を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 クリップ
2 脚
2a 半導体素子側の脚
2b 固定物側の脚
2c 脚の先端部
3 穴
4 半導体素子
5 筐体
5a 筐体放熱壁
5b クリップ装着スペース
6 プリント基板
7 ネジ回し
8 スナップリングプライヤー
9 カール
10 略円筒形状部
11 先曲がりタイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と放熱体あるいは筐体とを金属板の弾性を利用して挟み込み固定する半導体素子固定用のクリップにおいて,クリップの脚を開くための穴をクリップの脚の先端部に開けたことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子固定用クリップにおいて,ネジ回しなどの棒状の道具を使ってクリップの脚を開くための穴を,クリップの半導体素子側の脚の先端部に開けたことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体素子固定用クリップにおいて,スナップリングプライヤーのような開く道具を使ってクリップの脚を開くための穴を,クリップの両脚の先端部それぞれに開けたことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。
【請求項4】
半導体素子と放熱体あるいは筐体とを金属板の弾性を利用して挟み込み固定する半導体素子固定用のクリップにおいて,クリップの脚の先端部を外側へほぼ一周カールさせ,クリップの脚を開くための略円筒形状部を形成したことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体素子固定用クリップにおいて,クリップの半導体素子側の脚の先端部を外側へほぼ一周カールさせ,ネジ回しなどの棒状の道具を使ってクリップの脚を開くための略円筒形状部を形成したことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体素子固定用クリップにおいて,クリップの両脚の先端部それぞれを外側へほぼ一周カールさせ,スナップリングプライヤーのような開く道具を使ってクリップの脚を開くための略円筒形状部を形成したことを特徴とする半導体素子固定用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−13008(P2007−13008A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194268(P2005−194268)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】