説明

半導体結晶の製造方法

【課題】種結晶配置部と種結晶との間にBを充填することなく、種結晶配置部と種結晶との間への半導体融液の流入を再現性よく抑制することが可能な半導体結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】ルツボ2内の底部に設けられた種結晶配置部20内に種結晶4を配置し、ルツボ2内における種結晶4より上方を半導体融液3で満たし、半導体融液3を種結晶4側から鉛直方向上方に向けて徐々に固化させる半導体結晶の製造方法において、種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面に、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に小さくなるような傾斜面をそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体融液を徐々に固化させる半導体結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化合物半導体の単結晶を成長させる縦型ボート成長法として、熱分解窒化ホウ素(pyrolytic Boron Nitride:pBN)により構成されたルツボ内に収容した半導体融液を、ルツボの底部に設けられた種結晶配置部内に配置した種結晶と接触させつつ、種結晶側から鉛直方向上方に向けて徐々に固化させる縦型徐冷(Vertical Gradient Freeze:VGF)法や縦型ブリッジマン(Vertical Bridgman:VB)法等が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、原料融液を収容する容器と、容器の周囲に配置した温度勾配炉と、温度勾配炉を容器に対して相対的に移動する手段とを有し、容器の一端から固化成長させる単結晶の製造装置において、容器の壁内にBを含有させたpBN製容器を用いた単結晶の製造装置が開示されている。特許文献1に記載の単結晶製造装置によれば、結晶成長時にpBN製容器の壁面から徐々にBが滲み出して容器の壁面がB膜で覆われるので、原料融液と容器の壁面の凹凸部とが接触することにより生じる結晶核の発生を防止できる。
【0004】
また、特許文献2には、原料融液の収容部と、原料融液の収容部の底部に設けられた種結晶収容部からなる容器と、液体封止材とを用いた単結晶の製造方法が開示されている。特許文献2に記載の単結晶製造方法によれば、種結晶の外径と前記容器の種結晶収容部の内径との公差を規定することにより多結晶や双晶の発生を防止できる。
【0005】
更には、特許文献3には、液体封止材を用いる縦型ボート法において、原料のGaAs融液と液体封止材のBとの界面に、砒化ホウ素を浮遊させながら結晶成長を行う結晶成長方法が開示されている。特許文献3に記載の単結晶製造方法によれば、結晶成長時に砒化ホウ素の析出による転位の発生が防止できる。
【特許文献1】特許第2585415号公報
【特許文献2】特開2002−121100号公報
【特許文献3】特開2004−115339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単結晶を成長させるには、種結晶の側面からの結晶成長を抑制しつつ、先端からのみ結晶成長を開始させる必要がある。しかしながら、従来の縦型ボート成長法では、種結晶の上方に収容された半導体融液が、種結晶配置部と種結晶との間の隙間に流れ込み、種結晶の側面からも結晶成長が開始されてしまい、単結晶が得られ難い場合があった。
【0007】
種結晶配置部と種結晶との間に隙間が生じないよう、種結晶配置部の内径と種結晶の外径とを完全に一致させるように加工することも考えられる。しかしながら、加工精度の問題があり、完全に隙間のない状態を再現良く作り出すことは困難であった。また、種結晶配置部の内径と種結晶の外径とを完全に一致させると、種結晶配置部内に種結晶を配置させる(嵌めこむ)ことが難しくなってしまう場合があった。
【0008】
種結晶配置部と種結晶との間に三酸化ホウ素(B)を充填し、かかる隙間に半導
体融液が流れ込んでしまうことを抑制する方法も考えられる。しかしながら、種結晶配置部と種結晶との間の隙間にBを充填すると、結晶成長を行うたびにルツボが損耗してしまい、ルツボの寿命が短期化し、半導体結晶の製造コストが増大してしまう場合があった。すなわち、Bは、pBNに対する濡れ性が良好であるため、ルツボの内壁(種結晶配置部の内壁)に密着したまま凝固すると、収縮する際にルツボの内壁をむしりとってしまい、ルツボにダメージを与えてしまう場合があった。また、ルツボの内壁がむしりとられ、ルツボの肉厚が薄くなると、ルツボの熱伝導特性が変化して結晶成長時の温度条件が変化してしまい、単結晶率が低下したり、製造ロット間で結晶特性が変化したりしてしまう場合があった。また、Bはルツボと成長させた結晶との隙間に入り込んだまま凝固するため、ルツボを破壊することなく結晶を取り出すには、加熱したアルコール水溶液中にルツボ全体を浸漬してBを溶解させるB除去工程を実施する必要がある。かかる工程を実施するには非常に長い時間を要するため、半導体結晶を製造する際の生産性が低下してしまう場合があった。
【0009】
そこで本発明は、種結晶配置部と種結晶との間にBを充填することなく、種結晶配置部と種結晶との間への半導体融液の流入を再現性よく抑制することが可能な半導体結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、ルツボ内の底部に設けられた種結晶配置部内に種結晶を配置し、前記ルツボ内における前記種結晶より上方を半導体融液で満たし、前記半導体融液を前記種結晶側から鉛直方向上方に向けて徐々に固化させる半導体結晶の製造方法において、前記種結晶配置部の内壁面及び前記種結晶の外側面に、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に小さくなるような傾斜面をそれぞれ形成しておくことを特徴とする半導体結晶の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記種結晶配置部の内壁面に形成する傾斜面の傾斜角度をθ1(度)、前記種結晶の外側面に形成する傾斜面の傾斜角度をθ2(度)としたときに、θ1<θ2とする第1の態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、0°<θ1<θ2≦2°とする第2の態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、0°<θ2−θ1≦1°とする第3の態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、前記種結晶の上端における水平方向の断面と、前記種結晶配置部内の前記種結晶の上端と接触する部位における水平方向の断面とを一致させることにより、前記種結晶配置部の内壁面と前記種結晶の上端外側面との間を気密に封止する第1〜4のいずれかの態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の第6の態様によれば、前記種結晶配置部内の前記種結晶より下方側に空間を確保し、上端が溶解した前記種結晶を前記種結晶配置部内の鉛直方向下方に降下させることにより、前記種結晶配置部の内壁面と前記種結晶の上端外側面との間を気密に封止しつつ、前記半導体融液と前記種結晶との接触面の水平を維持する第1〜5のいずれかの態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第7の態様によれば、前記種結晶配置部内の底面と前記種結晶との間の空間内のガスを、前記種結晶配置部内の下方から前記種結晶配置部外へと排出させる第6の態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の第8の態様によれば、前記種結晶配置部と前記種結晶との間に液体封止材を充填せず、前記半導体融液の上面を液体封止材で封止しない第1〜7のいずれかの態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第9の態様によれば、前記半導体融液がIII族元素とV族元素とを含む融液で
あり、前記半導体融液を収容した前記ルツボを気密容器内に密閉し、前記気密容器内の雰囲気をV族元素の飽和蒸気で充満させる第8のいずれかの態様に記載の半導体結晶の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる半導体結晶の製造方法によれば、種結晶配置部と種結晶との間にBを充填することなく、種結晶配置部と種結晶との間への半導体融液の流入を再現性よく抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体結晶の製造方法を実施する結晶成長炉の断面構成図である。図2は、本発明の第1の実施形態にかかる種結晶配置部付近の断面拡大図である。
【0021】
(1)結晶成長炉の構成
図1に示すように、本実施形態に係る結晶成長炉10は、筐体5を備えている。筐体5内には半導体融液3を収容する容器としてのルツボ2と、ルツボ2を収容する石英(SiO)からなるアンプル1と、アンプル1を介してルツボ2を側面から加熱する複数の外周加熱ヒータユニット6a〜6dを備えた原料加熱用ヒータ6と、を有している。
【0022】
ルツボ2は、半導体結晶の種結晶4を収容する細径部として構成された種結晶配置部20と、種結晶配置部20の上部に所定の角度で接合される円錐状の傾斜部21と、傾斜部の上部に略垂直方向に立設するように接合される直胴部22と、を有する。種結晶配置部20と傾斜部21とによりルツボ2の底部が構成される。種結晶配置部20の長手方向と直胴部22の胴部とは略平行に設けられている。直胴部22は、断面直径が例えば160mmであり、高さが例えば300mmであるような略円筒形に構成されている。直胴部22の上端部には、ルツボ2の内部を露出する開口部23が構成されている。ルツボ2は、例えばpBNから形成されている。なお、ルツボ2は石英から形成されていてもよい。
【0023】
ルツボ2の種結晶配置部20内には、種結晶4として例えばGaAsの単結晶が収容される。ルツボ2の内部(傾斜部21及び直胴部22の内部)には、半導体結晶の主原料として例えば塊状のGaAs多結晶が収容(充填)される。なお、p型あるいはn型半導体結晶を製造する場合、ルツボ2の内部には、ドーパント材料としての例えば亜鉛(Zn)元素やシリコン(Si)元素がさらに収容される。なお、ドーパント材料は、塊状のGaAs多結晶内に予め添加しておいてもよい。
【0024】
図2に示すように、種結晶配置部20の内壁面には、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の内径が徐々に小さくなるような傾斜面が形成されている。また、同様に、種結晶配置部20内に配置される種結晶4の外側面にも、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の外径が徐々に小さくなるような傾斜面が形成されている。種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角(種結晶配置部20の水平断面の法線と種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面との挟角)θ1は例えば1.0°であり、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角(種結晶4の水平断面の法線と種結晶4の外側面に形成された
傾斜面との挟角)θ2も例えば1.0°であって、本実施形態ではθ1とθ2とが同一になるよう構成されている。
【0025】
なお、0°<θ1,θ2≦2°とすることが好ましい。θ1,θ2≦0°である場合、すなわち種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面に傾斜面が設けられていないか、あるいは逆テーパとなっている場合(鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に大きくなるような傾斜面が形成されている場合)には、種結晶配置部20と種結晶4との間に隙間が生じやすくなるためである。また、θ1,θ2>2°であると、種結晶4上端の融解に伴う種結晶4径の変化の割合が大きくなりすぎて、結晶成長の開始条件を安定させることが困難となり、成長させる結晶の多結晶化を抑制することが困難となってしまうためである。
【0026】
種結晶4の上端における水平方向の断面と、種結晶配置部20内の種結晶4の上端と接触する部位における水平方向の断面とは一致している。本実施形態では、種結晶4の上端における水平方向の断面と種結晶配置部20内の種結晶4の上端と接触する部位における水平方向の断面はいずれも同じ大きさの円形となっている(種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面をそれぞれテーパ加工面としている)。但し、本発明はこれらの断面形状が円形である場合に限定されず、例えば楕円形であっても多角形であってもよい。種結晶配置部20内の上端における水平方向の断面は、種結晶4の上端における水平方向の断面よりも大きく構成されており、種結晶配置部20内の下端における水平方向の断面は、種結晶4の下端における水平方向の断面よりも小さく構成されている。そして、種結晶配置部20の上下方向の長さ(深さ)は、種結晶4の全長よりも長く構成されており、種結晶配置部20内には種結晶4全体が収容されるように構成されている。種結晶配置部20内に種結晶4が収容された状態では、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間が気密に封止され、種結晶配置部20内の種結晶4より下方側にわずかな空間20aが確保されるように構成されている。すなわち、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端の外側面とが、種結晶4の上端の外側面全面に亘り密着するように接触し、種結晶4が種結晶配置部20内に吊り下げられるように配置されるように構成されている。
【0027】
種結晶配置部20の下端部は、種結晶配置部キャップ9により塞がれている。種結晶配置部20内に種結晶4が収容されることで空間20a内に閉じ込められたガスは、加熱された際に、例えば種結晶配置部20と種結晶配置部キャップ9との嵌め合わせの隙間から、ルツボ2外(種結晶配置部20外)へと排出させることが可能なように構成されている。
【0028】
外周加熱ヒータは、上述したように、アンプル1を介してルツボ2を側面から加熱するリング状の外周加熱ヒータユニット6a〜6dを備えている。外周加熱ヒータユニット6a〜6dは、結晶成長炉10内の鉛直方向上方から順に配置されている。具体的には、外周加熱ヒータユニット6aがルツボ2の開口部23の上方に、外周加熱ヒータユニット6bが外周加熱ヒータユニット6aの下であって開口部23付近に、外周加熱ヒータユニット6cが外周加熱ヒータユニット6bの下であって直胴部22付近に、外周加熱ヒータユニット6dが外周加熱ヒータユニット6cの下であって種結晶配置部20付近に、それぞれ配置される。
【0029】
外周加熱ヒータユニット6a〜6dの設定温度は、結晶成長炉10の上部から下部へ向かう方向に沿って順次低下するように設定される。すなわち、外周加熱ヒータユニット6aの設定温度>外周加熱ヒータユニット6bの設定温度>外周加熱ヒータユニット6cの設定温度>外周加熱ヒータユニット6dの設定温度となるように、それぞれ設定される。
【0030】
アンプル1内のルツボ2の下方には、As元素からなる飽和蒸気原料8が収容されてい
る。また、筐体5内であってアンプル1の下方外周を囲うように、V族元素加熱用ヒータ7が設けられている。V族元素加熱用ヒータ7は、飽和蒸気原料8が収容される高さ位置に配置される。半導体結晶を成長させている間は、V族元素加熱用ヒータ7を用いて飽和蒸気原料8を加熱し、Asガス(蒸気)をアンプル1内に発生させる。この際、アンプル1内のAsガスの圧力(分圧)を、半導体融液3からのAs元素の解離圧と同程度の圧力とすることで、半導体融液3内からのAs元素の揮発を抑制できる。例えば、GaAs結晶を成長させる場合、半導体融液3からのAs元素の解離圧は略1atmであるから、ルツボ2内に半導体融液3が存在する間は、アンプル1内は常に1atmのAsガスで満たされるよう、V族元素加熱用ヒータ7の温度を制御する。
【0031】
外周加熱ヒータユニット6a〜6d及びV族元素加熱用ヒータ7は、例えば、グラファイト等の材料から形成される抵抗加熱ヒータとして構成される。なお、外周加熱ヒータユニット6a〜6d及びV族元素加熱用ヒータ7は、上記構成に限定されず、炭化ケイ素(SiC)ヒータ、カンタル線ヒータ、RFコイルで加熱した発熱体を2次ヒータとして用いるヒータ等として構成することも可能である。
【0032】
(2)半導体結晶の製造方法
続いて、上述の結晶成長炉10により実施されるGaAs単結晶の製造方法について説明する。なお、以下では、GaAs結晶中にドーパント材料を添加しないアンドープ結晶を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0033】
ルツボ2の種結晶配置部20内に、GaAs単結晶からなる種結晶4を収容する。その際、種結晶4の上端における水平方向の断面と、種結晶配置部20内の種結晶4の上端と接触する部位における水平方向の断面とが一致しているため、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間が気密に封止される。なお、種結晶配置部20内における種結晶4の下方側には、わずかな空間20aが形成される。また、種結晶4の上端面は水平に保持される。その後、ルツボ2内(傾斜部21及び直胴部22の内部)に、主原料としての塊状のGaAs多結晶を収容(充填)する。
【0034】
種結晶4及び主原料としてのGaAs多結晶を収容したルツボ2を、飽和蒸気原料8と共にアンプル1内に収容し、アンプル1内を真空排気して封止する。アンプル1を筐体5内に収容して筐体5を密閉し、筐体5内を不活性ガスとしての例えば窒素ガスでガス置換し、アンプル1を回転させることによりルツボ2の回転を開始する。ルツボ2の回転は、後述する結晶成長が終了するまで継続させる。
【0035】
外周加熱ヒータユニット6a〜6dのそれぞれに通電して、ルツボ2の加熱を開始する。ルツボ2の加熱を所定時間継続することにより、ルツボ2内の塊状のGaAs多結晶が完全に融解されて半導体融液3となる。ここで、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間が気密に封止されているため(種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面とが、種結晶4の上端の外側面全面に亘り密着するように接触しているため)、種結晶配置部20と種結晶4との間への半導体融液3の流れ込みが抑制される。その結果、種結晶4の上端面のみが半導体融液3と接触し、種結晶4の他の部分(側面等)は半導体融液3と接触しない状態となる。そして、後述するGaAsの結晶成長は、種結晶4の上端面からのみ開始されることとなる。
【0036】
上述のルツボ2を加熱する工程では、V族元素加熱用ヒータ7に通電して飽和蒸気原料8を加熱し、Asガスをアンプル1内に発生させる。この際、アンプル1内のAsガスの圧力(分圧)が、後述する半導体融液3からのAs元素の解離圧と同程度の圧力となるように、V族元素加熱用ヒータ7への通電量を制御する。
【0037】
なお、外周加熱ヒータユニット6a〜6dやV族元素加熱用ヒータ7への通電を開始すると、筐体5内の雰囲気ガスの体積は膨張するため、結晶成長中に筐体5内の圧力が所定圧力を超えないように制御する。
【0038】
続いて、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの設定温度を、結晶成長炉10の上から下に行くにつれて徐々に低下するような温度にそれぞれ設定する。例えば、最上部に配置されている外周加熱ヒータユニット6aの設定温度を1290℃に、外周加熱ヒータユニット6bの設定温度を1260℃に、外周加熱ヒータユニット6cの設定温度を1120℃に、最下部に配置されている外周加熱ヒータユニット6dの設定温度を1050℃にそれぞれ設定する。
【0039】
その後、半導体融液3の温度が安定するまで所定時間保持する。なお、外周加熱ヒータ(外周加熱ヒータユニット6a〜6d)に対するルツボ2の高さ位置は、種結晶4が融解して消失してしまうことがないように設定する。例えば、半導体融液3内における1238℃(GaAsの融点)の等温線が種結晶4の上端部分にかかるような高さ位置に、ルツボ2を配置する。
【0040】
半導体融液3の温度が安定した後、ルツボ2の回転を継続させながら、アンプル1を所定の速度時速で所定の距離を降下させる。ルツボ2を所定距離降下させたところで、ルツボ2の降下を停止させる。
【0041】
ルツボ2をこのように徐々に降下させることにより、半導体融液3内の下方が低温であり、上方が高温であるような温度勾配中を半導体融液3が通過して行く。そして、種結晶4の先端と半導体融液3との固液界面にて開始された結晶成長が、半導体融液3の下方から上方へ向けて徐々に進行する。
【0042】
ルツボ2の降下を停止させたら、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの温度を徐々に低下させて成長させたGaAs結晶(インゴットともいう)を徐冷する。外周加熱ヒータユニット6a〜6dの温度が所定温度まで低下したら、外周加熱ヒータユニット6a〜6dへの通電を停止し、ルツボ2の温度が室温になるまで徐冷することによりインゴットを徐冷して、本実施形態にかかる半導体結晶の製造方法を終了する。
【0043】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0044】
(a)本実施形態によれば、種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面には、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に小さくなるような傾斜面がそれぞれ形成されている。また、種結晶4の上端における水平方向の断面と、種結晶配置部20内の種結晶4の上端と接触する部位における水平方向の断面とは一致している。また、種結晶配置部20内の上端における水平方向の断面を種結晶4の上端における水平方向の断面よりも大きく構成し、種結晶配置部20内の下端における水平方向の断面を種結晶4の下端における水平方向の断面よりも小さく構成している。また、種結晶配置部20の上下方向の長さ(深さ)を、種結晶4の全長よりも長く構成しており、種結晶配置部20内には種結晶4全体が収容されるように構成している。その結果、種結晶配置部20内に種結晶4を収容すると、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間が気密に封止され、種結晶配置部20と種結晶4との間への半導体融液3の流れ込みが抑制される。そして、種結晶4はその上端面でのみ半導体融液3と接触し、他の部分(側面部等)では半導体融液3とは接触しなくなるため、結晶の成長を種結晶4の上端面からのみ開始させることが可能となり、多結晶化を抑制できる。
【0045】
(b)本実施形態によれば、種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面を上述のように構成することにより、種結晶配置部20の内径と種結晶4の外径とを完全に一致させるように加工しなくても、種結晶配置部20と種結晶4との間に完全に隙間のない状態を再現良く作り出すことが可能となる。すなわち、種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面を形成する際に、径寸法に誤差が生じたとしても、種結晶配置部20内における種結晶4の支持位置(高さ)が若干変化するのみで、種結晶配置部20と種結晶4との間に完全に隙間のない状態を再現良く作り出すことが可能となる。
【0046】
(c)本実施形態によれば、種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面を上述のように構成することにより、種結晶配置部20内への種結晶4の収容を容易に行うことが可能となる。すなわち、種結晶配置部20内の上端部断面を種結晶4の上端部断面よりも大きく構成し、種結晶配置部20内の下端部断面を種結晶4の下端部断面よりも小さく構成していることから、種結晶配置部20内への種結晶4の収容を容易に行うことが可能となる。なお、種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面に傾斜面を設けず、種結晶配置部20の内径と種結晶4の外径とを完全に一致させるように加工した場合には、種結晶配置部20内への種結晶4の収容(嵌めこみ)は一般的に困難となる。
【0047】
(d)本実施形態によれば、外周加熱ヒータユニット6a〜6dのそれぞれに通電して半導体融液3を生成する際に、V族元素加熱用ヒータ7に通電して飽和蒸気原料8を加熱し、Asガス(蒸気)をアンプル1内に発生させる。この際、アンプル1内のAsガスの圧力(分圧)が、後述する半導体融液3からのAs元素の解離圧と同程度の圧力となるように、V族元素加熱用ヒータ7への通電量を制御する。その結果、半導体融液3内からのAs元素の揮発が抑制される。
【0048】
(e)本実施形態によれば、種結晶配置部20と種結晶4との間の隙間にBを充填せずに、かかる隙間に半導体融液3が流れ込んでしまうことを抑制できる。また、半導体融液3の上面を液体封止材としてのBにより封止せずに、半導体融液3からのV族元素の解離を抑制できる。このように、ルツボ2内へBを投入しないため、Bの収縮によりルツボ2の内壁がむしりとられ、ルツボ2がダメージを受けてしまうことが抑制される。その結果、ルツボ2の寿命を長期化でき、半導体結晶の製造コストの増大を抑制できる。
【0049】
(f)本実施形態によれば、ルツボ2内へBを投入しないため、Bの収縮に伴ってルツボ2の内壁がむしりとられることがなく、ルツボ2の肉厚が薄くなってしまうことを抑制でき、ルツボ2の熱伝導特性の変化を抑制できる。その結果、成長させる結晶の多結晶化を抑制でき、製造ロット間での結晶特性の変化を抑制できる。
【0050】
(g)本実施形態によれば、ルツボ2内へBを充填しないため、加熱したアルコール水溶液中にルツボ2全体を浸漬してBを溶解させるB除去工程を実施する必要がない。そのため、半導体結晶を製造する際の生産性の低下を抑制できる。
【0051】
<本発明の第2の実施形態>
第1の実施形態では、種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角度θ1と、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角度θ2とを、同一の角度(θ1=θ2)としていた。これに対し第2の実施形態では、図3に示すように、種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角度θ1よりも、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角度θ2が大きくなるように(θ1<θ2)となるように構成されている。
【0052】
すなわち、種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角度θ1は例えば1.0°であり、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角度θ2も例えば1.5°であ
って、θ1<θ2なるよう構成されている。その他の構成は上述の実施形態と同様である。その結果、種結晶配置部20内に種結晶4が収容された状態では、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間が気密に封止され、種結晶配置部20内の種結晶4より下方側にわずかな空間20aが確保されることとなる。
【0053】
なお、0°<θ1<θ2≦2°とすることが好ましい。θ1≦0°である場合、すなわち種結晶配置部20の内壁面に傾斜面が設けられていないか、あるいは逆テーパとなっている場合(鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に大きくなるような傾斜面が形成されている場合)には、種結晶配置部20と種結晶4との間に隙間が生じやすくなるためである。また、θ2>2°であると、種結晶4先端の融解に伴う種結晶4径の変化の割合が大きくなりすぎて、結晶成長の開始条件を安定させることが困難となり、成長させる結晶の多結晶化を抑制することが困難となってしまうためである。
【0054】
また、0°<θ2−θ1≦1°とすることが好ましい。θ2とθ1との差が1°以上付いてしまうと、種結晶配置部20と種結晶4との接触面積が少なくなりすぎてしまい、種結晶配置部20と種結晶4との接触部位における半導体融液3へのシール性が低下してしまうためである。また、種結晶配置部20内にて種結晶4が傾いて固定されてしまう可能性が高くなるためである。
【0055】
本実施形態によれば、第1の実施形態で記載した効果に加え、以下に示す1つ又は複数の効果を更に奏する。
【0056】
(a)本実施形態によれば、θ1<θ2とすることにより、種結晶配置部20と種結晶4との接触部位を、種結晶4の上部外側面に限定でき、種結晶4の上部から加わる半導体融液3の加重を、分散させることなく種結晶4の上部外側面周辺に集中させることが可能となる。その結果、種結晶配置部20と種結晶4との間に隙間の発生をより確実に抑制でき、種結晶配置部20と種結晶4との間への半導体融液3の流れ込みをより確実に抑制できる。
【0057】
(b)本実施形態によれば、θ1<θ2とすることにより、種結晶配置部20や種結晶4への加工精度のバラつきに起因する傾斜面の傾斜角度のズレが発生した場合においても、種結晶配置部20と種結晶4との間の隙間の発生をより確実に抑制でき、種結晶配置部20と種結晶4との間への半導体融液3の流れ込みをより確実に抑制できる。加工精度のバラつきによりθ1>θ2となってしまうと、種結晶配置部20と種結晶4との間(の上部)に、半導体融液3が流れ込む隙間が生じてしまうことになるが、θ1=θ2を目標として加工するよりも、θ1<θ2を目標として加工する方がθ1>θ2となってしまう可能性が少ないからである。
【0058】
(c)本実施形態によれば、種結晶配置部20内の種結晶4より下方側にわずかな空間20aを確保しつつ、θ1<θ2とし、θ2−θ1≦1°とすることにより、種結晶4の上端が半導体融液3との接触により融解・消失した場合でも、種結晶4を種結晶配置部20内の鉛直方向下方に降下させることにより、種結晶配置部20の内壁面と種結晶4の上端外側面との間を気密に封止しつつ、半導体融液3と種結晶4との接触面の水平を維持することが出来る。種結晶4の上部が融解や消失した場合には、種結晶4先端の径は傾斜面の傾斜角度に依存する分だけ小さくなってしまう(種結晶4が細くなってしまう)が、θ1<θ2としていれば、種結晶4が種結晶配置部20内を鉛直方向下方に降下するため、種結晶配置部20と種結晶4との間の隙間の発生を抑制できるからである。また、θ2−θ1<1とすることにより、降下する際に種結晶4が傾いてしまうことが抑制されるからである。
【0059】
<実施例>
以下に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
【0060】
(実施例1)
本実施例では、θ1=θ2として、連続して20回の結晶成長を実施した。
【0061】
まず、pBN製のルツボ2の種結晶配置部20にGaAsの種結晶4を収容した。ルツボ2の直胴部22の直径は160mmであり、直胴部22の高さ(長さ)は300mmであった。種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角度θ1を1.0°とし、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角度θ2を1.0°として、θ1とθ2とを同一の角度とした。続いて、予め合成した主原料としての塊状のGaAsの多結晶をルツボ2内に24000g収容した。
【0062】
次に、As元素からなる16gの飽和蒸気原料8とルツボ2とをアンプル1内に収容し、アンプル1内を真空排気した状態で酸水素バーナーにより封止した。アンプル1を筐体5内に収容して筐体5を密閉し、筐体5内を不活性ガスとしての例えば窒素ガスでガス置換し、アンプル1を回転させることによりルツボ2の回転を開始した。ルツボ2の回転速度は1rpmに設定した。
【0063】
そして、外周加熱ヒータユニット6a〜6dのそれぞれに通電してルツボ2の加熱を開始し、ルツボ2の加熱を所定時間継続して、ルツボ2内に半導体融液3を生成した。また、ルツボ2を加熱する工程では、アンプル1内が常に1atmのAsガス(蒸気)で満たされるよう、V族元素加熱用ヒータ7の温度を590〜650℃の間で制御して飽和蒸気原料8を加熱した。また、ルツボ2を加熱する工程では、筐体5内の圧力が0.5MPaを超えないように制御した。
【0064】
そして、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの設定温度を、1290℃、1260℃、1120℃、1050℃にそれぞれ設定し、半導体融液3の温度が安定するまで2時間保持した(S150)。なお、半導体融液3内における1238℃の等温線が種結晶4の上端部分にかかるような高さ位置に、ルツボ2を配置した。
【0065】
結晶成長炉10内の温度が安定した後、V族元素加熱用ヒータ7の温度をそのまま保持し、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの設定温度を−0.55℃/hの割合で約3日間低下させ、その後、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの全てが400℃になるまで−20℃/hの割合で温度を低下させた。その後、外周加熱ヒータユニット6a〜6d及びV族元素加熱用ヒータ7への通電を停止して、結晶成長炉10内の温度が室温になるまで冷却した。
【0066】
結晶成長炉10内の温度が室温になるまで冷却されたことを確認した後、アンプル1を開封してルツボ2を取り出した。本実施例ではルツボ2内へBを投入していないため、成長させたGaAs結晶(インゴット)を、ルツボ2をわずかに傾けるだけでルツボ2内から簡単に取り出すことができた。また、インゴット、ルツボ2の直胴部22、傾斜部21、種結晶配置部20のいずれも全くダメージを受けていないことが確認できた。また、インゴットは、種結晶配置部20と種結晶4との間の隙間にBを充填していないにもかかわらず、その全長に亘り単結晶化していることが確認できた。
【0067】
上述の工程と同様の工程を連続して20回行った。その結果、いずれの結晶成長においても、多結晶化することなく、全長に亘り単結晶化したインゴットを得ることができた。
【0068】
また、上記工程で得られた20本のインゴットから1本を選択し、その直胴部分をスラ
イスして(100)面を有する円形状の複数枚のウエハを切り出した。そして、切り出したウエハ表面を鏡面に研磨して、溶融KOHによるエッチング処理を施した。そして、転位に対応して発生したエッチピットの密度測定、すなわち転位密度測定を実施した。その結果、切り出したウエハ面内の平均転位密度は、インゴットの直胴部の全体に亘って0.5×10cm−2以下であった。具体的には、インゴットの直胴部の長さは260mmであり、インゴットの直胴部の少なくとも10mmから250mmまでの範囲内において、平均転位密度が0.4×10cm−2から0.5×10cm−2の範囲内であった。
【0069】
(実施例2)
本実施例では、実施例1とほぼ同様の条件で連続して20回の結晶成長を実施した。実施例1との違いは、種結晶配置部20の内壁面に形成された傾斜面の傾斜角度θ1は1.0°とし、種結晶4の外側面に形成された傾斜面の傾斜角度θ2を1.5°とし、θ1<θ2とした。その他の条件は、実施例1と同じである。
【0070】
実施例2においても、実施例1と同様に、全長に亘り単結晶化したインゴットを得ることができた。また、インゴット内の平均転位密度を評価したところ、ウエハ面内の平均転位密度が最も高かった部位においても、0.6×10cm−2を超えることはなく、インゴットの全長に亘りほぼ均一な転位密度分布となっていて、リネージや結晶の亜粒界のような欠陥の発生も生じていないことが確認できた。
【0071】
(比較例)
本比較例では、種結晶配置部20の内壁面及び種結晶4の外側面にそれぞれ傾斜面を設けなかった。そして、種結晶配置部20と種結晶4との間の隙間にBを充填することなく、連続して5回の結晶成長を実施した。その他の条件は、実施例1と同じである。
【0072】
本比較例では、全5回のいずれの結晶成長においても、結晶成長開始直後から多結晶化してしまっており、単結晶化したインゴットは1本も得ることが出来なかった。
【0073】
<本発明の他の実施形態>
種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面に設ける傾斜面の傾斜角は、上述の実施形態のように一定である場合に限らない。例えば、種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面に設ける傾斜面の傾斜角を除々に変化させ、種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面を例えば「ラッパ形状」に形成したり、種結晶配置部20の内壁面や種結晶4の外側面に「意図的な段差」を設けたりしても良い。
【0074】
上述の実施形態では、ルツボ2を降下させることにより、半導体融液3内の種結晶側から温度を降下させて結晶成長を進行させたが、本発明はかかる実施形態に限定されない。例えば、ルツボ2を降下させずに、外周加熱ヒータユニット6a〜6dの設定温度を所定の速度で徐々に低下させることにより上述の結晶成長を実施してもよい。また、加熱ヒータを備える炉体をルツボ2に対して移動させて結晶成長を行う炉体移動法(Traveling Furnace法:TF法)にも本発明は好適に適用可能である。
【0075】
本発明にかかる半導体結晶の製造方法においては、GaAsの単結晶だけではなく、他のIII-V族化合物半導体結晶を製造する際にも好適に適用可能である。例えば、InP、
InAs、GaSb、又はInSb等の化合物半導体を製造する際にも好適に適用可能である。また、AlGaAs、InGaAs、又はInGaP等のIII-V族化合物半導体結
晶の三元混晶結晶、若しくは、AlGaInP等のIII-V族化合物半導体結晶の四元混晶
結晶を製造する際にも好適に適用可能である。また、ZnSe、CdTe等のII−VI族化合物半導体結晶を製造する際にも好適に適用可能である。
【0076】
なお、ルツボ2内に生成する半導体融液3が大気圧以上の解離圧を有する場合には、筐体5を圧力容器として構成してもよい。例えば、InP結晶のように、融点における半導体融液3からのP元素の解離圧が大気圧よりも高い結晶を成長させる場合には、アンプル1内のPガス(蒸気)の圧力をP元素の解離圧以上の圧力にすると共に筐体5内を加圧して、アンプル1内の圧力と筐体5内の圧力とを釣り合わせ、アンプル1の破損を防止するように構成してもよい。
【0077】
ルツボ2は、石英からなるアンプル1内に収容する形態に限らず、例えばグラファイトからなるサセプタ内に収容してもよい。
【0078】
種結晶配置部キャップ9は、種結晶4が全て融解し消滅してしまった場合におけるルツボ2からの半導体融液3の漏れを防止する目的で設けているが、必ずしも必須ではない。
【0079】
本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態にかかる半導体結晶の製造方法を実施する結晶成長炉の断面構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる種結晶配置部付近の断面拡大図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる種結晶配置部付近の断面拡大図である。
【符号の説明】
【0081】
2 ルツボ
3 半導体融液
4 種結晶
8 飽和蒸気原料
10 結晶成長炉
20 種結晶配置部
20a 空間
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルツボ内の底部に設けられた種結晶配置部内に種結晶を配置し、前記ルツボ内における前記種結晶より上方を半導体融液で満たし、前記半導体融液を前記種結晶側から鉛直方向上方に向けて徐々に固化させる半導体結晶の製造方法において、
前記種結晶配置部の内壁面及び前記種結晶の外側面に、鉛直方向上方から下方に向けて水平方向の径が徐々に小さくなるような傾斜面をそれぞれ形成しておく
ことを特徴とする半導体結晶の製造方法。
【請求項2】
前記種結晶配置部の内壁面に形成する傾斜面の傾斜角度をθ1(度)、前記種結晶の外側面に形成する傾斜面の傾斜角度をθ2(度)としたときに、θ1<θ2とする
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項3】
0°<θ1<θ2≦2°とする
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項4】
0°<θ2−θ1≦1°とする
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項5】
前記種結晶の上端における水平方向の断面と、前記種結晶配置部内の前記種結晶の上端と接触する部位における水平方向の断面とを一致させることにより、前記種結晶配置部の内壁面と前記種結晶の上端外側面との間を気密に封止する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項6】
前記種結晶配置部内の前記種結晶より下方側に空間を確保し、上端が溶解した前記種結晶を前記種結晶配置部内の鉛直方向下方に降下させることにより、前記種結晶配置部の内壁面と前記種結晶の上端外側面との間を気密に封止しつつ、前記半導体融液と前記種結晶との接触面の水平を維持する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項7】
前記種結晶配置部内の底面と前記種結晶との間の空間内のガスを、前記種結晶配置部内の下方から前記種結晶配置部外へと排出させる
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項8】
前記種結晶配置部と前記種結晶との間に液体封止材を充填せず、前記半導体融液の上面を液体封止材で封止しない
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体結晶の製造方法。
【請求項9】
前記半導体融液がIII族元素とV族元素とを含む融液であり、前記半導体融液を収容した前記ルツボを気密容器内に密閉し、前記気密容器内の雰囲気をV族元素の飽和蒸気で充満させる
ことを特徴とする請求項8に記載の半導体結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−64936(P2010−64936A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234523(P2008−234523)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】