説明

半導体薄膜結晶化方法及び半導体薄膜結晶化装置

【課題】複数台の光学ユニット毎のアニールのばらつきの影響を抑制できる半導体薄膜結晶化方法及び半導体薄膜結晶化装置を提供する。
【解決手段】n(nは2以上の整数)の光学ユニット13のそれぞれで、第1のレーザービームLBをL(Lは2以上の整数)本の第2のレーザービームLBsに分岐して基板14に照射して、当該基板上の非晶質シリコン薄膜を結晶化させる半導体薄膜結晶化方法は、前記基板上に形成される画素43が第1のピッチaで離間し、前記L本の第2のレーザービームはa×n×m(mは1以上の整数)で表される第2のピッチで離間する場合、前記第2のピッチ内に在って、前記n台の光学ユニットのある一台から照射された第2のレーザービームによって照射されず、当該第2のレーザービームで照射された画素に隣接する画素を前記ある一台の光学ユニットとは別の一台の光学ユニットにより照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された非晶質半導体薄膜にレーザービームを照射して、非晶質半導体薄膜を結晶化する装置、及びそれを用いた結晶化方法に関し、特に詳述すれば、レーザービームを照射する光学ユニットを複数有して生産性を高めた半導体薄膜結晶化方法及び半導体薄膜結晶化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに対して、60インチを超える大型化及び4000×2000画素から成る4K2K等の従来のハイビジョンよりも高精細なビデオフォーマットへの対応が求められている。このような大型化及び高精細化の要求を満たすためには、液晶ディスプレイに用いられるTFTの半導体層の高移動度化が必須である。また、次世代のディスプレイと期待される有機ELディスプレイに用いられるTFTにも高移動度化が求められている。
【0003】
大面積の基板上に形成されるTFTの高移動度化のためには、例えば、TFTの半導体層として用いられる非晶質シリコンを効率良く多結晶化させて、低温ポリシリコンやマイクロクリスタルシリコン等の多結晶構造に変化させる必要がある。そのために、一括で大面積のシリコン薄膜を効率よく結晶化させることができるラインビーム照射方式のアニール装置が提案されている。図10に、従来のラインビームによる結晶化装置の一例を示す。結晶化装置Accは、レーザーステージ101、ガントリ102、及び光学ユニット103を含む。光学ユニット103は、ミラー及びレンズなどの光学素子(図示せず)を含み、レーザー発振源(図示せず)から供給されたレーザービームをライン状に整形して、レーザーステージ101に載置された基板104の表面で合焦するようにラインビームLbを照射する。基板104上の非晶質シリコン膜は、レーザービームで加熱されて、結晶化されてレーザーアニールされる。つまり、結晶化装置Accは半導体薄膜結晶化装置(以降、必要に応じて「レーザーアニール装置」と呼ぶ)である。
【0004】
レーザーアニール装置を用いるとレーザービームが半導体層で直接吸収され熱に変化して、この熱によって半導体層がアニールされる。レーザーアニール装置に用いるレーザー発振源としては、高出力で照射可能であるエキシマーレーザーが広く用いられている。エキシマーレーザーを用いたレーザーアニール装置の場合、数百mmの照射幅をもつライン状のレーザービームLbを基板104に照射して、ラインの軸と直交する方向に基板104とレーザービームLbを相対走査させて順次基板104の表面の非晶質シリコン膜をアニールする。
【0005】
エキシマーレーザーはレーザー発振源に、波長308nmのXeCl(塩化キセノン)や、波長351nmのXeF(フッ化キセノン)などのガスを用いるガスレーザーである。エキシマーレーザーでは、レーザーの安定性を保つためには頻繁にこれらのガスを交換する必要があり、メンテナンスが煩雑である。メンテナンスの煩雑さを解消するべく、メンテナンスが容易な固体レーザーを使ってレーザーアニールを行うという方法がある。特に発振源が安価で安定性が高く、メンテナンスが容易なYAGレーザーの第2次高調波の連続波(波長532nm、以降「グリーンレーザー」と呼ぶ)を用いる方法を好適な例として挙げることができる。
【0006】
レーザーアニールの生産性を高める種々の技術が考案されている。特許文献1では光学ユニットを増やさずに、生産性の向上を図る方法が提案されている。具体的には、分岐光学系を有する光学ユニットを用いてラインビームを分割し、元のラインビームから画素幅と同じピッチで分割されたビーム(以降、「サブビーム」と呼ぶ)間の非照射領域と、アニールを行う基板の照射不要領域(これから基板上に形成する画素のうち、トランジスタが形成されない領域)とを一致させ、サブビームを照射が必要な領域のみに照射する。これにより実質的に照射幅を広げ、装置1台あたりの生産性を高くする。
【0007】
特許文献2では、光学ユニットを増やして、生産性の向上を図る方法が提案されている。具体的には、グリーンレーザーの発振源と、レーザーの形状と照射方向とを調整するレンズなどの光学素子などを有して基板にレーザービームの照射を行う光学ユニット(以降、「光学ユニット」と呼ぶ)を複数台搭載する。そして、これら複数の光学ユニットから複数のレーザービームを同時に基板に照射して、装置1台あたりの生産性を高くする。
【0008】
特許文献3では、レーザーアニールによるシリコン薄膜の結晶化を均一に行う技術が提案されている。具体的には、複数台の光学ユニットを搭載したレーザーアニール装置を用いてディスプレイパネルを生産する場合に、基板上に複数のディスプレイパネルを多面付けで形成するにあたって、基板上の1つのディスプレイパネルは複数台の光学ユニットのうちの1台のみでアニールをされるように構成される。
【0009】
特許文献4では、複数台の光学ユニットのそれぞれで照射される画素を基板の縦横両方向に混在させる技術が提案されている。具体的には、基板上に多面付けされるディスプレイパネルの1枚を複数台の光学ユニット(以降、「隣接した光学ユニット」と呼ぶ)で分担してレーザービームを照射し、アニール処理を行う。隣接した光学ユニットのそれぞれに対して、ディスプレイパネルのうちのある部分はそれぞれの光学ユニットのみによって照射を行う。ただし、隣接した光学ユニットがそれぞれ照射する照射エリアが隣接する部分を境界領域とし、境界領域は隣接した光学ユニットの両方で照射を行う。なお、それぞれの光学ユニットで照射される画素は基板の縦横両方向に混在させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−60314号公報
【特許文献2】特許第4410926号公報
【特許文献3】特開2004−153150号公報
【特許文献4】特開2008−270540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のグリーンレーザーはエキシマーレーザーと比較して発振源の出力が低く、ラインビームの照射幅をエキシマーレーザーのように広く出来ない。ディスプレイパネルを作成する基板のサイズにもよるが、エキシマーレーザーは上述のように照射幅が広く、ディスプレイパネルの短辺方向全体をカバーできる。結果、エキシマーレーザーでは照射の走査数は1回ないし数往復でよい。これに反して、照射幅が狭いグリーンレーザーでは、基板全体を照射するためには数十往復の走査を必要とする。つまり、グリーンレーザーでは、基板1枚あたりのアニールに掛かる時間が長く、装置1台あたりの生産性が低いという問題を有する。
【0012】
装置1台あたりの生産性が低いという問題の解消に関して、上述の特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4で提案されている技術のそれぞれについて以下にのべる。
【0013】
先ず、特許文献1では、生産性を高める技術が開示されているが、開示された方法による生産性の向上の割合を見積もった場合、特に画素ピッチが小さい高精細なディスプレイを作成するためのTFT基板や画素内のトランジスタ数が液晶ディスプレイと比較して多く、照射が必要な領域の割合が高い有機ELディスプレイ用のTFTをレーザーアニール処理しようとすると、装置の生産性を十分に向上させるには他の追加の手段を必要とすることが分かる。
【0014】
一例を挙げると、有機ELディスプレイ用TFTを作成する場合、回路の設計にもよるが、1画素(本明細書においては、1画素とはフルカラーディスプレイの場合はフルカラーを表示する画素を構成する複数の発光部を形成するための各色のサブピクセルのことを指す)の中にトランジスタは3〜5個配置されており、照射が必要な領域の面積は画素全体の面積の半分程度になっていることが多い。また、レーザービームの照射位置精度や、照射方向に垂直な軸側(以降、「長軸」と呼ぶ)の裾の部分の幅を位置精度のマージンとして組み込む必要がある。そのために、分岐光学系を用いてレーザービームを分岐させた場合の元の照射幅に対する実質的な照射幅の拡大の割合、即ち生産性の向上の割合を見積もると、元の装置の生産性に対して高々150〜180%程度にしかならならず、生産性向上の効果は不十分である。
【0015】
これに対して、特許文献2では、光学ユニットを複数台搭載しているので、装置の生産性は単純にユニットの搭載台数にほぼ比例して向上する。つまり、特許文献1に比べて装置1台あたりの生産性向上の度合いは高い。なお、「ほぼ比例」とは、照射を行わない時間、即ち基板のロード、アンロード、及びアライメントなど照射の為の準備に要する時間は光学ユニットの搭載台数とは無関係であるためである。
【0016】
しかしながら、特許文献2のように光学ユニットを複数台搭載した場合、各々の光学ユニットから照射されるレーザービームのエネルギー密度や長軸方向の均一性、走査方向(レーザービームの短軸側)のビームプロファイルの半値幅などに、わずかにばらつきが発生する。この光学ユニット毎に生じるレーザービームのわずかなばらつきにより、異なる光学ユニットで照射を受けたそれぞれの画素の間では、そのトランジスタ特性がわずかに異なる。このトランジスタ特性のばらつきが、ディスプレイの画素の発光ばらつきとして人の目に認識されてしまう。発光ばらつきを抑えるためには、レーザー発振源の調整やレンズ及びミラーなどの光学素子の調整を入念に行う必要がある。
【0017】
光学素子の調整を入念に行っても、量産時の長時間連続運転時においては経時で光学ユニット毎にわずかなばらつきが発生してしまうのが実情である。このように複数台の光学ユニットを搭載したレーザーアニール装置を用いてディスプレイパネルを生産する場合、異なる光学ユニットから照射されたレーザービーム間のばらつきがあったとしても、ディスプレイの画素の発光ばらつきとして使用者に認識されにくくするような対策が求められる。上述のように、レーザーアニールにおいては生産性の向上とともに、結晶化の均一性も課題である。
【0018】
これらの課題に対して、特許文献3に開示されている技術を用いると、それぞれのパネル面内は必ず同じレーザービームでアニールをされるために、画素の発光特性はレーザービームのばらつきの影響を受けない。しかしながら、特許文献3の方法を用いてディスプレイパネルを生産した場合、照射時の走査方向に垂直な方向に配置されるパネルの面付けの数よりも照射に用いる光学ユニットの数を多くすることは出来ない。例えば3×3の9面付けの基板を照射する場合は、縦横どちらに走査するとしても、3台以上の光学ユニットを使うことは出来ない。そのため、生産するディスプレイの面付け数に応じて、装置の生産性が変わり、面付け数によらず生産タクトが一定である前後の工程とタクトタイムが合わなくなってしまうため、必ずしも最良の解決手段ではない。
【0019】
また、特許文献4に開示されている技術を用いると、隣接した光学ユニットをそれぞれ光学ユニットA及び光学ユニットBとすると、パネルの中には照射時の走査方向に垂直な方向で光学ユニットAのみで照射される領域と、光学ユニットA及び光学ユニットBの両方で照射される境界領域、光学ユニットBのみで照射される領域とが順番に並ぶ。つまり、光学ユニットAと光学ユニットBのばらつきによるディスプレイの画素の発光ばらつきが境界領域で挟まれるために、ばらつきは使用者に認識されにくくなる。
【0020】
しかしながら、特許文献4の方法によってディスプレイパネルを生産した場合、複数の光学ユニットによって照射される境界領域に形成する2次元方向の混在パターンの精細度(例えば市松模様の個々の四角の1辺)が重要である。つまり、この精細度が低いと、照射箇所を混在させて画素の全体的な発光の均一化を図ったとしても、その混在パターンそのものが使用者の目に認識されてしまう。これを避けるには混在パターンの精細度を高くする必要がある。そのためには、1本のレーザービームの照射幅を小さくしなければならない。しかし、複数台の光学ユニットを搭載したとしても、光学ユニット1台あたりの照射処理能力に制限があるので、装置の生産性向上が制限されてしまう。
【0021】
本発明は、上述の問題に鑑みて、複数台の光学ユニット毎のアニールのばらつきの影響を抑制できる結晶化方法及び結晶化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の半導体薄膜結晶化方法は、n(nは2以上の整数)の光学ユニットのそれぞれで、第1のレーザービームをL(Lは2以上の整数)本の第2のレーザービームに分岐して基板に照射して、当該基板上の非晶質シリコン薄膜を結晶化させる半導体薄膜結晶化方法であって、前記基板上に形成される画素が第1のピッチaで離間し、前記L本の第2のレーザービームはa×n×m(mは1以上の整数)で表される第2のピッチで離間する場合、前記第2のピッチ内に在って、前記n台の光学ユニットのある一台から照射された第2のレーザービームによって照射されず、当該第2のレーザービームで照射された画素に隣接する画素を、前記n台の光学ユニットのある一台とは別の一台の光学ユニットによって照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、複数台の光学ユニットのそれぞれのばらつきの影響を抑えて、半導体薄膜を結晶化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体薄膜結晶化装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の光学ユニットを模式的に示す側面図である。
【図3】図1の半導体薄膜結晶化装置によるレーザーアニール工程が施される前の状態の基板の断面図である。
【図4】図3の基板を一部を上方から見たときの平面図である。
【図5】基板走査方向とサブビームの長軸幅との関係を示す説明図である。
【図6】図1の半導体薄膜結晶化装置におけるサブビームの照射方法の説明図である。
【図7】図1の半導体薄膜結晶化装置の変形例におけるサブビームの照射方法の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化装置を模式的に示す斜視図である。
【図9】図8に示した半導体薄膜結晶化装置の異なる形態を模式的に示す斜視図である。
【図10】従来の半導体薄膜結晶化装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図1、図2、図3、図4、図5、図6、及び図7を参照して本発明の実施の形態1、図8及び図9を参照して本発明の実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化方法及び結晶化装置について説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る半導体薄膜結晶化装置を示す。半導体薄膜結晶化装置Ac1は、ステージ11、ガントリ12、及び光学ユニット13を含む。光学ユニット13は、それぞれ図示されていないミラー及びレンズなどの光学素子と、レーザービームをその長軸方向に分岐させる分岐光学系と、レーザービームを供給するレーザー発振源とを含む。光学ユニット13は、レーザー発振源から供給されたレーザービームから、複数本のサブビームLBsを生成して、ステージ11に載置されたガラス基板14の表面に合焦するように照射する。
【0027】
照射された複数のサブビームLBsは、ガラス基板14で熱に代わり、ガラス基板14上に成膜されている非晶質シリコン膜が加熱されて、再結晶化されてアニールされる。なお、半導体薄膜結晶化装置Ac1は、生産性向上のためにサブビームLBsを照射する光学ユニット13をn台(nは2以上の整数)搭載している。図1に示す例では、4台(n=4)の光学ユニット13が搭載されているが、搭載台数は2台以上(n≧2)であれば特に制限は無い。光学ユニット13の搭載台数は、照射する基板の面積、光学ユニット13の1台あたりの照射処理能力、及びアニール工程のタクトタイムに応じて決定すれば良い。
【0028】
レーザー発振源は、照射するレーザーによってガラス基板14上の非晶質シリコン膜を結晶化させることが出来るものであれば制限はないが、特にメンテナンスが容易な波長532nmのYAGレーザー第2次高調波の連続波(グリーンレーザー)を好適に用いることができる。1台の光学ユニット13に接続するレーザー発振源の数は1台でも複数台でも良いが、装置の生産性を高めるためには、1台の光学ユニット13に接続するレーザー発振源を複数台にして、レーザービーム(サブビームLBs)の出力を大きくし、光学ユニット13の1台あたりの照射処理能力を向上させることが好ましい。複数台のレーザー発振源から供給されるレーザービームは、ファイバーやフライアイレンズなどを通して1箇所に重畳され、光学ユニット13において1本のレーザービームに合成される。ただし、1台で十分な出力のレーザービームが得られる高出力の発振源を用いることができる場合にはこのようなビームの合成は行わなくてよい。
【0029】
図2を参照して、光学ユニット13について説明する。光学ユニット13は、ビームシェイパー23、ビーム分岐手段24、及びfθレンズ26を含む。ビームシェイパー23は、レーザー発振源より供給されたレーザビームを、ガラス基板14上に照射される時に走査軸と直交する向きの軸(長軸)方向に、トップハット形状のプロファイルを有するラインビームに整形してレーザービームLBをビーム分岐手段24に出力する。この場合、長軸と直交する向き、即ち基板走査方向(以降、「短軸」と呼ぶ)のプロファイルには特に制限は無く、ガウシアン形状でもトップハット形状でも良い。
【0030】
レーザービームLBは、ビーム分岐手段24にて複数のサブビームLBs’に分岐される。入射光を複数に分岐する光学素子は、ビームスプリッターや回折格子などいくつかあるが、本発明においてはビーム分岐手段24としては高い分岐精度を得ることができる回折格子(Diffractive Optical Elements:以降、「DOE」と呼ぶ)が好適に用いられる。通常、DOEは石英やガラスなどを基板にして、ドライエッチング加工などにより、表面に周期的な凹凸の微細模様が形成されている。DOEを通ったレーザービームLBは、DOE表面の凹凸により回折が発生し、元の光軸に対してそれぞれ一定の角度を持った複数のサブビームLBs’に分岐される。
【0031】
上述のように、本明細書においては、元のレーザービームLBに対して、DOEを通過し、分岐されたビームをサブビームLBs’と呼んで識別する。なお、レーザービームLBとサブビームLBs’とを包括して表現する場合は単にレーザーと呼ぶものとする。分岐され、扇状に進行するサブビームLBs’は、fθレンズ26を通過することで各サブビームLBs’が平行な向きに進行するサブビームLBsになる。サブビームLBs同士の中心間距離は、DOEの設計及び配置によって設定することができる。サブビームLBsの適切な中心間距離については後述する。
【0032】
またサブビームLBsのプロファイルは、元のビーム(レーザービームLB)のプロファイルをほぼ維持する。ただし、当然ながらサブビームLBs(サブビームLBs’)は分岐されたビームであるため、そのエネルギー密度は元のビーム(レーザービームLB)の分岐数分の1以下になっている。
【0033】
また本発明においてサブビームLBs(サブビームLBs’)の分岐数は、特に限定はされない。しかし、あまり分岐数が多いとサブビームLBsの1本あたりのエネルギー密度が低下し、照射エネルギーの低下によって非晶質シリコン膜の結晶化がうまく進まなくなる為、発振源の出力に応じて適切に決められる。ただしDOEは、その原理上、奇数個のサブビームへの分岐を行うとサブビームの強度を揃えることが難しいため、通常はサブビームの分岐数は偶数(図2の例では4本)である。
【0034】
上述の光学系を通過して、光学ユニット13から出射したサブビームLBsは、ガラス基板14の表面で焦点が合うように光学設計されているため、合焦してガラス基板14の表面に照射される。本実施の形態において好適に使用されるグリーンレーザーは、非晶質シリコンに対する吸収係数が比較的低く、透過しやすいため、ガラス基板14の表面に到達したサブビームLBsは、非晶質シリコンの膜深くにまで到達することができ、膜の深さ方向に均一に吸収されて熱に変わり効率的にシリコン膜を結晶化することができる。さらに、レーザー照射によって半導体層を結晶化するTFT基板でボトムゲート型トランジスタを形成する場合、半導体層の下部にはゲート絶縁膜層とトランジスタ形状に応じたゲート電極が形成されている。そのため、一部のサブビームLBsの光は下部のゲート電極表面で反射し、再度シリコン膜を通過して熱に変わるため、さらにアニールを効果的に行うことが出来る。
【0035】
ガラス基板14と光学ヘッド(光学ユニット13)を、レーザービームLBの短軸方向に走査することにより、ガラス基板14上の非晶質シリコン膜のうち、トランジスタが形成される部分の列全体をアニールすることができる。そして、1回の走査が終了する毎に、光学ヘッドをガントリ12上で移動させて、ガラス基板14上の別のトランジスタが形成される部分に対して走査を行う。この動作を繰り返すことで、ガラス基板14全体のトランジスタの列をアニールできる。このように、複数台の光学ユニット13の各々が照射する複数のサブビームLBsが同時にガラス基板14上の複数のトランジスタの列を照射すことにより、装置1台あたりの生産性を高くできる。
【0036】
半導体薄膜結晶化装置Ac1は、複数台の光学ユニット13を搭載しているために、上述のように、長期間連続の運転を行っていると、光学ユニット13毎にレーザービームLBのプロファイルにわずかなばらつきが発生する。結果、アニールして結晶化したシリコン膜の膜質にわずかなばらつきが発生し、形成したトランジスタの電気特性にばらつき、特に移動度にばらつきが発生してしまう。この膜質にばらつきを有する結晶化シリコン膜に形成されたTFTで液晶ディスプレイパネル、或いは有機ELディスプレイパネル(以降、液晶ディスプレイパネルと有機ELディスプレイパネルとを「ディスプレイパネル」と総称する)を作成すると入力信号に対する各画素の発光が画素毎にわずかにばらついてしまう。
【0037】
しかしながら、半導体薄膜結晶化装置Ac1において、照射されるガラス基板14上に形成される画素のピッチをaとした場合、レーザー照射を行うn台の光学ユニット13(nは2以上の整数)はa×n×m(mは1以上の整数)のピッチで照射光(サブビームLBs)を等間隔に分岐する光学系を有している。かつ、n台の光学ユニット13の中のある1台がガラス基板14上に分岐したサブビームLBsを走査して照射を行う際に、サブビームLBsのピッチaの間にあって、この光学ユニット13によって照射されなかった画素のうち、隣接する画素をn台の光学ユニット13中の別の光学ユニット13によって照射する機構が設けられている。
【0038】
このため、半導体薄膜結晶化装置Ac1によって、非晶質シリコン膜の結晶化を行ったTFTで作成したディスプレイパネルは、画素毎に詳細に観察すると、照射した光学ユニット13毎にばらついているレーザービームLB(サブビームLBs)の影響で発光の様子がばらついているのが認められる。しかし、アニールを行ったときの走査方向と垂直な方向に隣接する画素同士は必ず異なった光学ユニット13で照射が行なわれているので、ばらつきの様子が均一化される。そのために、レーザビームLB(サブビームLBs)の照射ユニット(光学ユニット13)毎の画素の発光のばらつきの境界がない。よって、レーザー照射した光学ユニット13の違いによる画素毎の発光のばらつきがあったとしてもディスプレイパネルの使用者はその境界を認識することが困難である。
【0039】
図3に、半導体薄膜結晶化装置Ac1によるレーザーアニール工程が施される前の製造工程途中のボトムゲート型TFT基板(以降、「被照射基板」と呼ぶ)の断面を模式的に示す。TFTを形成するガラス基板14上には、モリブデンやモリブデンタングステンなどの高融点金属で形成されたゲート電極32がパターニングされ、その上にゲート絶縁膜33、及び半導体層のプリカーサとして非晶質シリコン膜34が形成されている。化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)などにより成膜された非晶質シリコン膜は、レーザービーム(サブビームLBs)の照射時に膜中に含まれる水素が照射の熱で爆発的に気化し、シリコン膜が破裂してしまうこと(アブレーション)がある。このアブレーションを防ぐために、通常はレーザーアニールを行う前にバッチ式オーブンなどで脱水素アニールを行う。
【0040】
図4に、被照射基板の一部を上方から見たときの概略を示す。ゲート電極が形成されている領域41は、2つの直交する基板辺の向きに2次元的に周期的に配列されていて、これが最終的にはディスプレイの画素の配列になる。なお、紙面左右方向をx方向とし、紙面上下方向をy方向とする。ディスプレイパネルの画素配列には各種あるが、同図には、一般的なストライプ配列が例示されている。ストライプ配列とは、ディスプレイの画素43がなす格子が正方形で、各画素が持っているサブピクセル42(通常は赤青緑に発光する3つのサブピクセルで1つの画素をなしている)のうち、同じ色のサブピクセルが縦あるいは横に1列に並んだ配列を指し、ここでは同じ発光色のサブピクセルはy方向に並んでいる。
【0041】
正方形の画素43の1辺の長さ(画素ピッチ)は、a(μm)であり、サブピクセル42はx方向に並んでいるため、サブピクセル42が3つである場合、サブピクセル42の大きさ、即ちピッチはx方向はa/3(μm)、y方向はa(μm)である。ただし、発光色毎に発光の効率が大きく違っている場合などは、サブピクセル42の大きさを変えた画素設計も行うこともある。例えば、フルカラー有機ELディスプレイの場合、赤及び緑に比べて青の発光効率が悪いため、青のサブピクセル42のサイズ(x方向の幅)を赤及び緑のサブピクセル42よりも大きくするということが行われているが、本発明においてはサブピクセル42の大きさが色毎に異なっていても問題はない。
【0042】
図5に、基板走査方向とサブビームLBsの長軸幅との関係を示す。図5に示すように、半導体薄膜結晶化装置Ac1によって、TFT基板のシリコン膜の結晶化を行う場合、アニール時の走査方向はx方向でもy方向でも構わない。但し、y方向に走査してレーザー(サブビームLBsの)照射を行う場合、照射するサブビームLBsの長軸幅はビーム幅51のように画素幅とほぼ等しくする必要がある。これに対して、x方向に走査して照射を行う場合、サブビームLBsの長軸幅は画素のうち、ゲート電極がある領域、即ちトランジスタが形成される領域だけに絞ってビーム幅52の照射幅で照射を行うだけでよい。なお、照射されなかった部分の非晶質シリコン膜は結晶化されないが、この部分は後の工程で除去される部分であるため問題はない。照射幅(ビーム幅52)を狭められる分だけ、レーザービームの利用効率を高めることができる。
【0043】
被照射基板であるガラス基板14は、搬送ロボット及びコンベヤなどによって上流の工程から搬送され、半導体薄膜結晶化装置Ac1のステージ11に戴置される。ガラス基板14に形成されたアライメントマーク(通常はゲート電極と同時に形成される)がアライメントカメラで読みとられて、アライメントが行われて、サブビームLBsの照射位置が決定される。
【0044】
次に、光学ユニット13から、ガラス基板14にレーザビーム(サブビームLBs)が照射される。半導体薄膜結晶化装置Ac1は、上述のように、それぞれが分岐光学系を有するn台(nは2以上の整数))の光学ユニット13を備えている。レーザー発振源から供給されたレーザービームは、この分岐光学系によりL本のサブビームLBsに分岐される(Lは2以上の整数)。分岐した各サブビームLBsのピッチは、a×n×m(μm)(mは1以上の整数)である。
【0045】
分岐したサブビームLBsの列の方向をy方向として画素43上に照射し、ガラス基板14と光学ユニット13をx方向に相対的に走査し、画素列に対してはx方向に順次サブビームLBsが照射される。このとき、ガラス基板14(被照射基板)の画素43のy方向の列に注目し、或る光学ユニット13のL本のサブビームの1回目の走査で照射を受ける画素列のy方向の位置の一方の端を1列目とすると、照射を受ける画素列は、1列目、1+n×m列目、1+2×n×m列目・・・、1+(L−1)×n×m列目、である。また、照射を行った光学ユニット13をU(1)とする(光学ユニット13はn台、即ちU(2)、U(3)・・・、U(n)まである)。
【0046】
1回目の走査が終わると、U(1)と被照射基板(ガラス基板14)とは、走査方向と垂直の方向(本例においては、y方向)にa×n×m×Lだけ相対的に移動し、次の照射位置につく。U(1)の2回目の照射画素列のうち、1回目の照射位置に一番近い画素列は1回目の照射位置のうち、2回目の照射位置に一番近い画素列からn×m画素列分だけ離れて隣接するので、2回目の走査で照射するy方向の画素列はL×n×m+1列目、L×n×m+1+n×m列目、L×n×m+1+2×n×m列目・・・L×n×m+1+(L−1)×n×m列目、である。
【0047】
さらに走査数k(回目)に対しては、サブビームLBsのk回目の走査で照射を受ける画素列のx方向の位置の一方の端は(k−1)×(L×n×m)+1列目になり、照射を受ける画素列は(k−1)×(L×n×m)+1列目、(k−1)×(L×n×m)+1+n×m列目、(k−1)×(L×n×m)+1+2×n×m列目・・・、(k−1)×(L×n×m)+1+(L−1)×n×m列目となる。
【0048】
なお、上述の「隣接する」とは、光学ユニットU(n)でk回目の走査で照射される両端の画素列とk±1回目の走査で照射を受ける画素列のうち、両端の画素列同士が分岐数分の画素列、即ちL−1列分だけ離れて隣接していることを指す。本例においては、m=1になる。ただし、mを2以上にして、k±1回目の走査ではm−1走査分の照射列分を飛ばして照射を行ってもよい。この場合、光学ユニットU(n)が被照射基板の照射エリアの端から端までx方向に順次移動して照射を行ったあと、光学ユニットU(n)を引き返して残りの部分の照射を行うことになる。この動作をm回繰り返すことで、最終的にはm=1の時と同様に照射すべき画素列を全て照射する。
【0049】
さらに、1台目の光学ユニットU(1)が1列目の画素列を照射した後に、もしくは同時に2台目の光学ユニットU(2)が2列目の画素列を、3台目の光学ユニットU(3)が3列目の画素列を、・・・、n台目の光学ユニットU(n)がn列目の画素列を照射する。即ちU(n)=nとすると、走査k回目の照射において、n台目の光学ユニットは(k−1)×(L×n×m)+U(n)列目、(k−1)×(L×n×m)+U(n)+n×m列目、(k−1)×(L×n×m)+U(n)+2×n×m列目・・・、(k−1)×(L×n×m)+U(n)+(L−1)×n×m列目を照射する。
【0050】
m=1或いはm≧2の何れの場合でも、レーザー(サブビームLBs)の照射走査を所定回数分行うことで、被照射基板(ガラス基板14)のレーザーアニール(結晶化)工程を終える。このとき、被照射基板(ガラス基板14)のx方向の画素列は、1走査目で照射を始めた側から順にU(1)、U(2)・・・、U(n)、U(1)、U(2)・・・、U(n)、・・・の光学ユニット13で照射を受けており、隣接する画素列は常に異なる光学ユニット13のサブビームLBsで照射を受けている。
【0051】
図6を参照して、半導体薄膜結晶化装置Ac1によるサブビームLBsの照射方法について説明する。同図には、光学ユニット13の数n=2、サブビームLBsの分岐数L=2の場合の例が示されている。つまり、半導体薄膜結晶化装置Ac1は、レーザービームLBを2本のサブビームLBsに分岐する2台の光学ユニット13(以下U(1)及びU(2)とする)のそれぞれから出力された2本のサブビームLBsをディスプレイ基板に照射している様子を示している。
【0052】
光学ユニットU(1)及びU(2)は、ディスプレイの画素43のピッチをaとした場合、a×2×m(mは1以上の整数)のピッチで照射光を等間隔のサブビームLBsに分岐する光学系を有しており、かつU(1)が基板上に分岐したサブビームを走査して照射を行う際に、サブビームLBsのピッチの間にあって、このU(1)によって照射されなかった画素43のうち、隣接する画素43をU(2)によって照射する。
【0053】
図6においては、m=1での例を示す。なお、説明の都合上、2台の光学ユニット13であるU(1)及びU(2)の内、U(1)から1回目の走査により照射される2本のサブビームLBsをサブビーム61a及び61bとして表示し、U(2)から1回目の走査により照射される2本のサブビームLBsをサブビーム62a及び62bとして表示し、U(1)から2回目の走査により照射される2本のサブビームLBsをサブビーム63a及び63bとして表示し、U(2)から2回目の走査により照射される2本のサブビームLBsをサブビーム64a及び64bとして表示している。
【0054】
従って、同図に示すように、画素列は上から順にサブビーム61a、62a、61b、62b、63a、64a、63b、64bによって照射される。つまり、1画素列毎にU(1)、U(2)の2台の光学ユニット13で交互に照射を受けており、U(1)とU(2)のサブビームLBs(レーザービームLB)にばらつきがあり、これが原因でディスプレイの発光ばらつきがあったとしても、ばらつきが1画素レベルの精細さで平均化されるために、使用者にはそのばらつきを認識することは困難である。
【0055】
上記の説明では、繰り返しの数m=1の場合を示しているが、次に、m>1の一例としてm=2の場合について説明する。なお、繰り返しの数とは、繰り返しの数が1の時、光学ユニット13の列が1回の走査を終えてガントリ12の方向に移動し、次の回の走査に入る、という動作をガラス基板14上の必要な照射領域に対して照射できるようにガントリ12の一端から別の一端までステップ移動する際の各々の光学ユニット13のガントリ12への方向に片道移動する回数を指している。つまり、繰り返しの数mが1であればガントリの一端から別の一端まで1回の片道の移動をしながら走査、照射することでガラス基板14基板上の必要な照射領域の全体に対して照射が行えることを表す。また、繰り返しの数mが2であれば、ガントリ12の一端から別の一端まで2回の片道移動、即ち1往復の移動をしながら走査、照射することでガラス基板14上の必要な照射領域の全体に対して照射が行えるということを意味している。
【0056】
m=2の場合でも1画素列毎に、U(1)、U(2)の2台の光学ユニット13で交互に照射する点では変わりはなく、時間軸での照射順が変化するのみである。即ち、m=1の場合は1回目の走査でサブビーム61a、62a、61b、及び62bが照射され、2回目の走査でサブビーム63a、64a、63b、及び64bが照射される。一方、m=2の場合は、1回目の走査でサブビーム61a、62a、63a、及び64aが照射され、2回目の走査でサブビーム61b、62b、63b、及び64bが照射される。しかし上述のように、照射するサブビームLBsと照射される画素列の組み合わせは同じである。
【0057】
このように、照射した光学ユニット13毎に、ばらついているレーザービームLB(サブビームLBs)の影響で、画素の発光の様子がばらついていたとしても、アニールを行ったときの走査方向と垂直な方向に隣接する画素列同士は常に異なった光学ユニット13(U)で照射が行なわれているため、ばらつきの様子が均一化される。従って照射する光学ユニット13毎の発光のばらつきの境界がなくなる。よって画素43毎の発光のばらつきがあったとしても、ディスプレイパネルの使用者にはその境界を認識することが困難になる。また、半導体薄膜結晶化装置Ac1は、光学ユニット13を少なくともn(nは2以上の整数)台搭載しており、さらに、分岐光学系によって1本のレーザービームLBがL本のサブビームLBsに分岐されているために、1回の走査動作でn×L列の画素列を同時に照射でき生産性が高い。
よって本発明は生産性を高めるために複数台の光学ユニットを用いて非晶質シリコン薄膜を結晶化アニールする場合でも、光学ユニット13毎のアニールのばらつきの影響を抑制でき、本発明の目的を実現するものである。
【0058】
以下に、上述の半導体薄膜結晶化装置Ac1の変形例について説明する。上述のように、半導体薄膜結晶化装置Ac1は、被照射基板(ガラス基板14)上に形成される画素43のピッチをaとした場合、レーザー照射を行うn台の光学ユニット13(nは2以上の整数)は、a×n×m(mは1以上の整数)のピッチで照射光(レーザービームLB)を等間隔に分岐する光学系を有している。そして、n台の光学ユニット13の或る1台がガラス基板14上に分岐したサブビームLBsを走査して照射を行う際に、サブビームLBsのピッチの間にあって、この光学ユニット13によって照射されなかった画素43のうち、隣接する画素をn台の中の別の光学ユニット13によって照射する。そして、n台の光学ユニットの中のある1台が基板上に分岐したL本のサブビームLBsを走査して照射を行う際に、L本のサブビームLBsのうちの両端のサブビームLBsによって照射される画素43と、別の1台の光学ユニット13がガラス基板14上に分岐したL本のサブビームLBsを走査して照射を行う際のサブビームLBsのうちの両端のサブビームLBsによって照射される画素43とが隣接しないように照射するように構成されている。
【0059】
なお、発振源から出射されたレーザービーム(サブビームLBs)は、分岐光学系により複数(L本)のサブビームLBsに分割される。このとき、分岐光学系の光学素子であるDOEで分岐された、L本のサブビームLBs’はある角度を持った扇状に分かれて進み、fθレンズ26によって進行方向が平行なサブビームLBsになる(図2を参照)。しかしながら、扇状に進もうとするL本のサブビームLBs’のうち、一番外側を進行する2本のサブビームLBsは元のレーザービームLBの光軸から大きく角度をとって進み、fθレンズ26の中心から遠い部分で屈折するために、DOEやfθレンズ26の加工精度や配置精度の誤差の影響を受けやすい。そのため分岐光学系を用いて被照射基板であるガラス基板14をアニールした場合に、両端のサブビームLBsの照射を受けた画素列はそれ以外の画素列と比較すると結晶化のばらつき、ひいては画素列の発光ばらつきが大きくなる傾向がある。さらにこの両端の画素列は1列だけ独立してばらついている場合よりも、複数列が隣接してばらついている場合の方がディスプレイの画素列の筋状の発光ばらつきとして使用者の目に認識されやすい。
【0060】
しかしながら、半導体薄膜結晶化装置Ac1により両端のサブビームLBsの照射を受ける画素列は常に独立した1列になっているため、ディスプレイの画素列の発光ばらつきは目立たない。以下に、ある光学ユニット13の両端のサブビームLBsによって照射される画素列と、別の光学ユニット13の両端のサブビームLBsによって照射される画素列とが隣接しないように照射する照射方法について具体的に説明する。
【0061】
これまで述べたように、半導体薄膜結晶化装置Ac1は、1本のレーザービームLBをL本のサブビームLBsに分岐する光学系を有する光学ユニット13をn台有している。また、画素43のピッチを、a(μm)とすると、光学ユニット13の光学系によって分岐されたL本のサブビームLBsのピッチはa×n×m(μm)(mは1以上の整数)である。ただし、mの値は画素列の時系列的な照射順には影響するが、ガラス基板14の全体を照射し終わった後に、どの画素列が、どの光学ユニット13の、どのサブビームLBsによって照射されたかの組み合わせについては影響を与えないため、以下にm=1の場合についてのみ説明する。
【0062】
また、サブビームLBsの照射時の走査S(k)(k回目の走査動作という意味)に対して、これまでに示してきた照射方法での走査順をS(1)、S(2)・・・、S(k−1)、S(k)、S(k+1)・・・とすると、走査順を変更して、例えばS(1)、S(3)、・・・S(k−2)、S(k)、S(k+2)・・・、・・・S(k+1)、S(k−1)・・・、S(2)というように飛ばし飛ばしに走査して、折り返しの動作で残りの画素を照射するというようなことも出来る。
【0063】
この場合でも画素列の時系列的な照射順には影響するが、ガラス基板14全体を照射し終わった後に、どの画素列が、どの光学ユニット13の、どのサブビームLBsによって照射されたかの組み合わせについては影響を与えないため、照射動作の走査順はS(1)、S(2)・・・、S(k−1)、S(k)、S(k+1)・・・とする。また、以降の説明ではn台の光学ユニットを画素列への照射位置順にU(1)、U(2)・・・、U(p)・・・、U(n)とし、p列目の画素列をU(p)のサブビームLBsで照射したとすると、隣接するp−1列目の画素列はU(p−1)、p+1列目の画素列はU(p+1)の光学ユニット13で照射するものとする。なお、U(n+1)=U(1)とする。
【0064】
さらに、U(p)の光学ユニット13からはそれぞれL本のサブビームが照射されている。このL本のサブビームLBsを端から順にU(p,1)、U(p,2)・・・、U(p,q)・・・、U(p,L)とする。これら各光学ユニット13のサブビームLBsのうち、ばらつきが発生しやすい両端のサブビームはU(p,1)とU(p,L)である。以降、これらのサブビームLBsを両端のサブビームLBseと呼び、そうでないサブビームを中央のサブビームLBscと呼んで識別する。
【0065】
まず、全ての光学ユニット13の両端のサブビームLBseが全て隣接している場合について述べる。この場合、画素列に対するサブビームLBsの照射配列は次列(1)で表される。
【0066】
U(1,1)、U(2,1)、・・・、U(p,1)、・・・、U(n,1)、U(1,2)、U(2,2)、・・・、U(n,2)、・・・、U(p,q)、・・・、U(1,L)、U(2,L)、・・・、U(n,L) ・・・・ (1)
以降、どの画素列がどの光学ユニット13のどのサブビームLBsによって照射を受けているかを画素列順に並べたものの1繰り返し単位を照射配列と呼ぶ。
【0067】
U(n,L)の隣の画素列はU(1,1)になるため、2×n個の両端のサブビームLBseで照射される画素列が隣接している。ここでU(2)について、n画素列分だけ(n及びLの値が大きくなる方向に)照射位置をずらすとする。この場合、(1)の照射配列は、次列(2)で表される。
【0068】
U(1,1)、U(2,L)、U(3,1)、・・・、U(p,1)、・・・、U(n,1)、U(1,2)、U(2,1)、U(3,2)・・・、U(n,2)・・・、U(p,q)、・・・、U(1,L)、U(2,L−1)、U(3,L)、・・・、U(n,L) ・・・・ (2)
照射配列のn+1番目、n+2番目、n+3番目の画素列はそれぞれU(1,2)、U(2,1)、U(3,2)となり、両端のサブビームLBseであるU(2,1)の隣接画素列は中央のサブビームLBscの照射を受けている。以降、この状態を「両端のサブビームLBseが孤立している」と呼ぶ。つまり、本変形例は、全ての両端のサブビームを孤立させるようなレーザーの照射方法とも言える。
【0069】
一方、そのn画素列前の2番目の画素列は、照射配列U(2、L)で両端のサブビームLBseの照射を受けているが、1番目と3番目の画素列も両端のサブビームLBseで照射を受けており、照射配列がU(2、L)の画素43は孤立していない。
【0070】
ここでU(2)について、n画素列分だけ(n、Lの値が大きくなる方向に)ずらす操作を行っているが、n画素列でn台の光学ユニット13が一巡しているので、この操作を「U(2)を+1シフトさせる」と呼ぶことにする。nで一巡する周期がL回繰り返されるので、+Lのシフトは0のシフトに等しい。
【0071】
また、照射配列に対して、各光学ユニット13のシフトの量を光学ユニット13の順に並べたn個の数字から並ぶ配列をシフト配列と呼ぶことにする。即ち、列(1)はシフト配列で表記すると(0,0,0・・・,0)となり、同様に列(2)は(0,1,0・・・,0)となる。
【0072】
上述のように、+1のシフトでは両端のサブビームLBseのうちの1つしか孤立させることができない。従って、U(2)の両端のサブビームLBseを孤立させるためには、+2以上のシフトが必要になる。つまり、U(2)の両端のサブビームLBseを孤立させるために、シフト配列を(0,2,0・・・,0)にする。
【0073】
次に、U(3)について述べる。U(2)は、既に+2シフトされており、U(3)と両端のサブビームLBse同士は隣接していない。従って、U(3)のシフト量は0でよい。
【0074】
次にU(4)について述べる。U(3)のシフト量は0であるため、U(1)と同じように考えることが出来る。従って、U(4)は+2シフトさせることで、U(3)の両端のサブビームLBseを孤立させることができる。この操作を繰り返すとシフト配列は(0,2,0,2,0,2・・・)となり、nが奇数ならば(0,2,0,2,0,2・・・,0)、nが偶数ならば(0,2,0,2,0,2・・・,2)となる。
【0075】
U(n)とU(1)とを考えると、照射を受ける画素列はU(n)とU(1)とで隣接するので、U(n+1)=U(1)である。従って、上記のシフト配列のうち、nが偶数の場合のシフト配列(0,2,0,2,0,2・・・,2)は全ての光学ユニット13の両端のサブビームを孤立させることが出来るので問題はない。しかし、nが奇数の場合のシフト配列(0,2,0,2,0,2・・・,0)は、U(1)とU(n)とのシフト量が同じになり、U(1)とU(n)との両端のサブビームLBseは孤立しない。この場合、U(n)をさらに+2シフトさせ、シフト配列を(0,2,0,2,0,2・・・,4)とすれば良い。
【0076】
説明の便宜上、シフト配列の1例を示したが、全ての光学ユニット13の両端のサブビームLBseを孤立させることが出来れば、シフト配列は上記のものに限定されない。また、Lが十分に大きく、シフト量に制限が無いものとして説明した。しかしながら、nが奇数の場合、シフト量が0から4まであるため、Lは8(前述のようにLは偶数である)以上必要になる。即ち、L≧8ならばnの値によらず全ての光学ユニット13の両端のサブビームLBseを孤立させることが出来るシフト配列が少なくとも1つ存在する。
【0077】
次にL=6の場合について述べる。まずnが偶数の場合、シフト配列を(0,2,0,2,0,2・・・)とすれば全てのサブビームLBsを孤立させることが出来る。ただし、nが奇数の場合、シフト配列を(0,2,0,2,0,2・・・)とすると、U(n)のシフト量は0、+2及び+4のいずれの場合でもU(n)の両端のサブビームLBseのうちの少なくとも1つはU(1)の両端のサブビームLBseと隣接してしまう。
【0078】
この場合、U(n)の代わりにU(n−1)のシフト量を+4にして、U(n)のシフト量を+2にする。即ち、シフト配列は(0,2,0,2,0,2・・・,0,4,2)となる。すると、U(n−1)とU(n−2)とは、+4シフトがずれている。そのため、両端のサブビームLBseは孤立し、U(n)とU(n−1)とは+2シフトずれているため、両端のサブビームLBseは孤立する。そして、U(n)とU(1)とは+2シフトずれているため、両端のサブビームLBseが孤立する。即ち、全ての光学ユニット13の両端のサブビームLBseを孤立させることが出来る。説明の便宜上、L=6の場合のシフト配列の1例を示したが、全ての光学ユニット13の両端のサブビームを孤立させることが出来れば、シフト配列は上記のものに限定されない。
【0079】
次にL=4の場合について述べる。この場合、シフト量は+3までであり、nの値によらず全ての両端のサブビームLBseを孤立させるようなシフト配列は存在しない。
【0080】
次に最小のLであるL=2の場合について述べる。この場合、全てのサブビームLBsは両端のサブビームLBseであるため、両端のサブビームLBseを孤立させることはできない。但し、4分岐、あるいは2分岐の場合は、そもそも分岐数が少なく、扇状に進行する2本のサブビームLBsは元のレーザービームの光軸からの角度はそれほど大きく離れることはない。従って、DOEやfθレンズ26の加工精度や配置精度の誤差の影響はあまり受けないため、本変形例の照射方法を用いなくても、同一の光学ユニット13内でのサブビームLBsのばらつきはあまり問題にならない。
【0081】
また、4分岐、あるいは2分岐の場合でも、実施の形態1に係る半導体薄膜結晶化装置Ac1を用いて、n台の光学ユニット13の中のある1台がガラス基板14上に2つに分岐したサブビームLBs(LBse)を走査して照射を行う際に、サブビームLBs(LBse)のピッチの間にあって、この光学ユニット13によって照射されなかった画素43のうち、隣接する画素43をn台の中の別の光学ユニット13のサブビームLBsによって照射することは、光学ユニット13のばらつきに対して発生するディスプレイの画素の発光ばらつきを認識させ難くするのに有効である。
【0082】
図7を参照して、レーザービームLBを6本のサブビームLBsに分岐する2台の光学ユニット(以下U(1)、U(2)とする)を備える半導体薄膜結晶化装置Ac1によるレーザー照射について説明する。U(1)、U(2)は、それぞれ6本のサブビームを照射しており、画素ピッチをaとすると、サブビームLBsのピッチは2×aである。図7においては、m=1での例を示す。なお、2台の光学ユニット13であるU(1)及びU(2)の内、U(1)からk−1回目の走査により照射されるサブビームLBsをサブビーム71として表示し、U(2)からk回目の走査により照射されるサブビームLBsをサブビーム72として表示し、U(1)のk回目の走査により照射されるサブビームLBsをサブビーム73として表示し、U(2)からk+1回目の走査により照射されるサブビームLBsをサブビーム74として表示し、U(1)からk+1回目の走査により照射されるサブビームLBsをサブビーム75として表示している。
【0083】
U(1)の両端のサブビーム73のうち、紙面上側にある両端のサブビームLBseによって照射される画素列78は、サブビーム72のうちの2本の中央のサブビームLBscによって照射される画素列78の間の画素列78に照射されている。また、サブビーム73のうち、紙面下側にある両端のサブビームLBseによって照射される画素列78はU(2)のk+1回目の走査で照射されるサブビーム74のうちの2本の両端のサブビームLBseによって照射される画素列78に挟まれている。すなわち、この場合、U(1)の両端のサブビームLBseは孤立している。
【0084】
同様に繰り返しを見ていくと、U(1)及びU(2)の両端のサブビームLBseによって照射される画素列78は、すべてもう1台の光学ユニット13の中央のサブビームLBscによって照射を受けていることが分かる。ちなみに、上記の場合のU(1)及びU(2)の照射の方法をこれまで説明したシフト配列で表記すると(0,2)になる。このような照射方法を行うことで、ディスプレイの発光ばらつきのでやすい両端のサブビームLBSeによって照射される画素列78を中央のサブビームLBscによって照射される画素列78で挟み込むことができ、ディスプレイの画素の発光ばらつきを使用者に認識されにくくすることが出来る。
【0085】
(実施の形態2)
以下に、図8及び図9を参照して、本発明の実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化装置Ac2a及びAc2bについて説明する。半導体薄膜結晶化装置Ac2a及びAc2bを、実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化装置Ac2と呼ぶ。なお、実施の形態1に係る半導体薄膜結晶化装置Ac1と、実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化装置Ac2とを、本発明に係る半導体薄膜結晶化装置Acと呼ぶ。
【0086】
半導体薄膜結晶化装置Acは、少なくともn台(nは2以上の整数)のレーザーの照射を行う光学ユニット13と、レーザーが照射されるガラス基板14に形成される画素のピッチをaとした場合に、a×n×m(mは1以上の整数)のピッチでレーザービームLBを等間隔のサブビームLBsに分岐する各光学ユニット内の光学系と、n台の光学ユニット13の中のある1台がガラス基板14上に分岐したサブビームLBsの照射を行う際に、サブビームLBsのピッチの間にあって、この光学ユニット13によって照射されなかった画素43のうち、照射された画素43と隣接する画素43をn台の中の別の光学ユニットによって照射することができる制御機構とを有している。なお、実施の形態2に係る半導体薄膜結晶化装置Ac2は、上述の実施の形態1に係る半導体薄膜結晶化装置Ac1と基本的に同様に構成されており、少なくともn台(nは2以上の整数)の光学ユニット13を有しているので生産性が高い。
【0087】
また、サブビームLBsが照射されるガラス基板14上に形成される画素43のピッチをaとした場合、a×n×m(mは1以上の整数)のピッチでレーザービームLBを等間隔のサブビームLBsに分岐する各光学ユニット13内の光学系と、n台の光学ユニット13の中のある1台がガラス基板14上に分岐したサブビームLBsの照射を行う際に、サブビームLBsのピッチの間にあって、この光学ユニット13によって照射されなかった画素43のうち、照射された画素43と隣接する画素43とをn台の中の別の光学ユニット13によって照射することができる制御機構とを有している。結果、複数台の光学ユニット13を用いて非晶質シリコン薄膜を結晶化アニールする場合でも、光学ユニット13毎のアニールのばらつきの影響を抑制できる。
【0088】
複数台の光学ユニット13を並べる場合は、光学ユニット13同士が接触干渉しないように、図8に示す半導体薄膜結晶化装置Ac2aのようにガントリ12の前後に配置したり、また図9に示す半導体薄膜結晶化装置Ac2bのようにガントリ12を複数設けて、それぞれに複数の光学ユニット13を配置しても良い。
【0089】
また、ここまで分岐光学系を有する複数台の光学ユニットが照射する画素列、即ち操作方向に直交する方向について説明してきたが、本発明のレーザーアニールの照射方法及び装置は走査方向に関しては特に制限を有していない。1回の走査で基板の走査方向全体を走査して照射しても良いし、パネルの面付け毎に走査を分割しても良い。
【0090】
さらに、本実施の形態に係る半導体薄膜結晶化装置Ac2は、少なくともn台の光学ユニット13を有している。従って、複数回の走査で1台の光学ユニット13が操作方向に直交する方向の画素列全体を照射しても良いし、ディスプレイパネルの面付け数に応じて、複数台の光学ユニット13のうちの一部の光学ユニット群はガラス基板14の一部の領域を照射するように照射領域を分割しても良い。
【0091】
例えば、半導体薄膜結晶化装置Ac2に、光学ユニット13を2×n台搭載し、操作方向に直交する方向、即ちガントリ12の軸の方向でガラス基板14を2分割し、その右側をガントリ12に取り付けられた光学ユニット13のうち右側半分にある複数の光学ユニット13で照射するようにし、左側をガントリ12に取り付けられた光学ユニット13のうち左側半分にある複数の光学ユニット13で照射することができる。
【0092】
また、上記のように照射する領域を基板の面付けに応じて変えるという構成をとる場合、生産するディスプレイパネルの品種が変わり、ガラス基板14の面付け数が変わった場合でも光学ユニット群の数と1群あたりの光学ユニット13の台数、ガラス基板14の照射領域の分割方法の組み合わせを適切に変えることができる。
【0093】
例えば、6台の光学ユニット13を有する半導体薄膜結晶化装置Ac2のステージ11上に載置されているガラス基板14上にディスプレイパネルが3×3面付けになっている場合には、6台の光学ユニット13を2台、2台、2台の3群に分ける。そしてディスプレイパネルが2×2面や4×4面付けになっている場合には、6台の光学ユニット13を3台、3台の2群に分けることができる。即ち、n=2として6台の光学ユニット13を、3×n台の光学ユニット13として扱うこともできるし、n=3として6台の光学ユニットを2×n台の光学ユニットとして扱うこともできる。
【0094】
ただし、この場合、nが変わるため、光学ユニット群の数によってサブビームLBsの分岐のピッチの値が変化することに留意しなければならない。サブビームLBsの分岐のピッチはDOEを交換することで変更できる。また、DOEを回転すると分岐のピッチが変わるため、DOEを回転してピッチを変更することも可能である。また、ズームを有する光学系を使用することでも、ピッチを変更できる。
【0095】
このように、本発明に係る半導体薄膜結晶化装置は、面付け数の違いによる装置当たりの生産性の変化は少なく、前後の工程と連動して安定して生産を行うことができる。以上の説明により、本発明の半導体薄膜結晶化装置及び正結晶化方法を用いることで、生産性を高めるために複数台の光学ユニットを用いて非晶質シリコン薄膜を結晶化アニールする場合でも、光学ユニット毎のアニールのばらつきの影響を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、高品質の液晶ディスプレイパネルや有機ELディスプレイパネルの生産に利用できる。
【符号の説明】
【0097】
Ac、Ac1、Ac2、Ac2a、Ac2b、Acc 半導体薄膜結晶化装置
11、101 ステージ
12、102 ガントリ
13、103 光学ユニット
14、104 ガラス基板
LB、Lb レーザービーム
LBs’、LBs、LBsc、LBse サブビーム
23 ビームシェイパー
24 ビーム分岐手段
26 fθレンズ
32 ゲート電極
33 ゲート絶縁膜
34 非晶質シリコン膜
41 ゲート電極が形成されている領域
42 サブピクセル
43 画素
51 y方向に走査する場合に照射するサブビームの長軸幅
52 x方向に走査する場合に照射するサブビームの長軸幅
61a、61b 本発明の実施の形態1におけるユニットU(1)の1回目の走査により照射されるサブビーム
62a、62b 本発明の実施の形態1におけるユニットU(2)の1回目の走査により照射されるサブビーム
63a、63b 本発明の実施の形態1におけるユニットU(1)の2回目の走査により照射されるサブビーム
64a、64b 本発明の実施の形態1におけるユニットU(2)の2回目の走査により照射されるサブビーム
71 実施の形態1の変形例におけるU(1)のk−1回目の走査により照射されるサブビーム
72 実施の形態1の変形例におけるU(2)のk回目の走査により照射されるサブビーム
73 実施の形態1の変形例におけるU(1)のk回目の走査により照射されるサブビーム
74 実施の形態1の変形例におけるU(2)のk+1回目の走査により照射されるサブビーム
75 実施の形態1の変形例におけるU(1)のk+1回目の走査により照射されるサブビーム
78 画素列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは2以上の整数)の光学ユニットのそれぞれで、第1のレーザービームをL(Lは2以上の整数)本の第2のレーザービームに分岐して基板に照射して、当該基板上の非晶質シリコン薄膜を結晶化させる半導体薄膜結晶化方法であって、
前記基板上に形成される画素が第1のピッチaで離間し、前記L本の第2のレーザービームはa×n×m(mは1以上の整数)で表される第2のピッチ(a×n×m)で離間する場合、
前記第2のピッチ(a×n×m)内に在って、前記n台の光学ユニットのある一台から照射された第2のレーザービームによって照射されず、当該第2のレーザービームで照射された画素に隣接する画素を、前記n台の光学ユニットのある一台とは別の一台の光学ユニットによって照射することを特徴とする半導体薄膜結晶化方法。
【請求項2】
前記ある一台の光学ユニットから照射されたL本の第2のレーザービームの内の両端の2本で照射される画素に隣接する画素を避けて、前記別の一台の光学ユニットから前記第2のレーザービームを照射することを特徴とする請求項1に記載の半導体薄膜結晶化方法。
【請求項3】
n(nは2以上の整数)の光学ユニットのそれぞれで、第1のレーザービームをL(Lは2以上の整数)本の第2のレーザービームに分岐して基板に照射して、当該基板上の非晶質シリコン薄膜を結晶化させる半導体薄膜結晶化装置であって、
前記基板上に形成される画素が第1のピッチaで離間し、前記L本の第2のレーザービームはa×n×m(mは1以上の整数)で表される第2のピッチ(a×n×m)で離間する場合に、前記第2のピッチ(a×n×m)内に在って、前記n台の光学ユニットのある一台から照射された第2のレーザービームによって照射されず、当該第2のレーザービームで照射された画素に隣接する画素を、前記n台の光学ユニットのある一台とは別の一台の光学ユニットによって照射する制御機構を備える半導体薄膜結晶化装置。
【請求項4】
前記制御機構は、前記ある一台の光学ユニットから照射されたL本の第2のレーザービームの内の両端の2本で照射される画素に隣接する画素を避けて、前記別の一台の光学ユニットから前記第2のレーザービームを照射することを特徴とする請求項3に記載の半導体薄膜結晶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−4532(P2013−4532A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130506(P2011−130506)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】