説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】上面への発光効率が優れた発光素子の構造を提供する。
【解決手段】発光層を挟んで基板面に平行な方向に2つの電極を並べる構造とする。発光層の下方にも電極が配置されない。従って、発光層の下方に反射膜を設けて、上面への発光効率を向上させることもできる。例えば、発光層よりも屈折率の低い膜を設け、屈折率に差がある積層の界面で発光層の下方への発光を反射し、上面への発光効率を向上させることができる。また、発光層の下方に反射率の高い金属膜(固定電位またはフローティング状態の反射金属膜)を配置することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機材料を用いた発光素子に関し、発光素子を含む回路を有する半導体装置およびその作製方法に関する。例えば、無機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
従来の無機材料を用いた発光素子の構造を図10に示す。図10に示す発光素子は、基板2000上に、下部電極2002、第1絶縁膜2004、無機半導体材料からなる発光層2006、第2絶縁膜2008、及び上部電極2010を順に積層した構造である。下部電極2002及び上部電極2010のそれぞれに所定の電位を与えると、それらの電極間に生じる電位差によって加速されたキャリア(電子)が発光層2006中の不純物原子またはそれらが作る不純物準位に捕獲されてエネルギー緩和するときにそのエネルギーが光として射出される。
【0004】
下部電極2002及び上部電極2010の材料として金属材料を用いた場合、光を基板2000表面と平行な方向にしか取り出せないため、製品への使用用途が限られてしまう。
【0005】
また、金属材料を用いた上部電極2010の膜厚を5〜20nmとすることにより、上面から光を放出させる方法が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−221132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構造では、上部電極の材料として透明導電膜を用いたとしても、上面への発光が上部電極を通過することになるため、射出する発光輝度が低減する構造であった。また、透明導電膜は、金属材料に比べて電気抵抗が高いため、電圧降下が生じて発光素子の発光効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上面への発光効率が優れた発光素子の構造を提供し、その発光素子を有する半導体装置、表示装置、電子機器、およびそれらの作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発光層の上下に2つの電極を配置する従来の構造ではなく、発光層を挟んで基板面に平行な方向に2つの電極を並べる構造とする。
【0009】
本発明においては、発光層の上方には電極が配置されないため、上面から発光を効率よく放出させることができる。
【0010】
加えて、発光層の下方にも電極が配置されない。従って、発光層の下方に反射膜を設けて、上面への発光効率を向上させることもできる。例えば、発光層よりも屈折率の低い膜を設け、屈折率に差がある積層の界面で発光層の下方への発光を反射し、上面への発光効率を向上させることができる。また、発光層の下方に反射率の高い金属膜(固定電位またはフローティング状態の反射金属膜)を配置することもできる。
【0011】
本明細書で開示する発明の構成は、絶縁表面上に離間して並べられた第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極及び第2の電極を覆う絶縁膜と、前記絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成されることを特徴とする半導体装置である。
【0012】
また、発光効率を向上させるため、発光層の下方に屈折率の異なる積層を設けて界面で発光を反射させてもよく、他の発明の構成は、絶縁表面上に第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極と、前記第1の電極及び第2の電極を覆う第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成され、前記第1の絶縁膜において前記第1の電極及び前記第2の電極と重なる領域は、前記第1の電極と前記第2の電極の間の領域よりも膜厚が厚いことを特徴とする半導体装置である。
【0013】
また、上記構成において、前記第2の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜よりも屈折率が高いことを特徴としている。第2の絶縁膜と第1の絶縁膜の屈折率を調節することで、より発光効率を向上させることができる。
【0014】
また、発光効率を向上させるため、発光層の下方に反射性を有する金属膜を設けて鏡面で発光を反射させてもよく、他の発明の構成は、絶縁表面上に第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に反射性を有する金属膜と、前記反射性を有する金属膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極と、前記第1の電極及び第2の電極を覆う第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成され、前記反射性を有する金属膜と前記第1の電極との間、及び前記反射性を有する金属膜と前記第2の電極との間には第3の絶縁膜を有することを特徴とする半導体装置である。
【0015】
また、上記構成において、前記第3の絶縁膜の側面は、前記第2の絶縁膜と接していることを特徴としている。また、上記構成において、前記反射性を有する金属膜は、電気的にフローティング、或いは、前記第1の電極及び前記第2の電極とは異なる電位に固定されていることを特徴としている。また、前記反射性を有する金属膜は、Al、Agなどを用いればよい。
【0016】
また、上記各構成において、発光層は、Au、Ag、Cu、Mn、Fなどの元素、またはそれら複数種の元素を添加した無機化合物半導体材料を構成物質として用いる。無機化合物半導体材料としては、ZnとS、Se、Teから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料を用いればよく、具体的には、ZnS、ZnSe、ZnTe等が挙げられる。また、他の無機化合物半導体材料としてGaN、SiC、ZnO、MgZn1−XOなどを挙げることができる。
【0017】
また、上記各構成において、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜、または第3の絶縁膜としては、PCVD法またはスパッタ法または塗布法により形成される酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、酸化アルミニウム膜、チタン酸バリウム(BaTiO)膜から選ばれる単層またはそれらの積層を用いればよい。
【0018】
また、上記各構成において、第1の電極、及び第2の電極としては、Al、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Inから選ばれる元素を含む導電膜、またはこれらの積層膜を用いればよい。
【0019】
なお、本明細書中での屈折率は、空気中(真空中)の屈折率を1.0とし、その数値が高いほど高屈折率と呼ぶこととする。
【0020】
また、本発明の発光素子をマトリクス状に配置してアクティブマトリクス型の発光表示装置を作製することができる。また、本発明は、アクティブマトリクス型の発光装置に限らず、パッシブマトリクス型の発光装置にも適用できる。
【0021】
また、上記各構成において、フルカラー表示をする場合、前記発光素子は、赤色、緑色、または青色のうち、いずれか一色を発光することを特徴としている。また、上記各構成において、単色表示をする場合、全ての前記複数の発光素子は、赤色、緑色、青色、あるいは白色を発光することを特徴としている。また、単一の発光色の発光素子と蛍光(カラー)フィルタとを組み合わせてフルカラー表示を行う構成としてもよい。
【0022】
また、上記構成を得るための作製方法も本発明の一つであり、その作製方法に関する構成は、絶縁表面上に第1の絶縁膜を形成し、前記第1の絶縁膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極を形成し、前記第1の電極及び第2の電極をマスクとして前記第1の絶縁膜の一部をエッチングして膜厚の薄い部分を形成し、前記第1の絶縁膜の膜厚の薄い部分、前記第1の電極、及び前記第2の電極を覆う第2の絶縁膜を形成し、前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層を形成して、前記発光層が、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に配置することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の構成により、発光素子の効率(輝度/電流)向上を図り、低消費電力を実現できる。さらに、発光層の下方に反射多層膜、または反射金属膜を設けることにより発光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
まず、基板10上に膜厚500nm〜1000nmの第1の絶縁膜11を形成する。基板10としては、光透過性を有するガラス基板や石英基板を用いればよい。また、処理温度に耐えうる耐熱性を有する光透過性のプラスチック基板を用いてもよい。また、基板10側とは逆の面を表示面(発光を取り出す面)として発光を取り出す場合は、前述の基板の他にシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。ここでは基板10としてガラス基板を用いる。なお、ガラス基板の屈折率は1.55前後である。
【0026】
第1の絶縁膜11としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの絶縁膜から成る下地膜を形成する。ここでは下地膜として単層構造を用いた例を示すが、絶縁膜を2層以上積層させた構造を用いても良い。ここでは、CVD法を用いて酸化珪素膜を500nm形成する。
【0027】
次いで、第1の絶縁膜11上に膜厚100nm〜500nmの金属層12を形成する(図1(A))。ここでは、金属層12として、スパッタ法を用い、膜厚500nmのAlからなる導電膜を形成する。なお、ここでは金属層をAl膜の単層としたが、特に限定されず、Ta、W、Ti、Mo、Cu、Inから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料の単層、またはこれらの積層で形成してもよい。また、金属層12として、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いてもよい。
【0028】
次いで、第1のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、金属層12をエッチングして、第1の電極13、及び第2の電極14を得る(図1(B))。また、インクジェットなどの液滴吐出法を用いて導電材料を含む液滴を選択的に吐出し、焼成して第1の電極13、及び第2の電極14を形成してもよい。また、レジストマスクを液滴吐出法で形成し、金属層12のエッチングを行ってもよい。
【0029】
次いで、レジストマスクを除去した後、第1の電極13、及び第2の電極14をマスクとして第1の絶縁膜11を部分的に薄くエッチングする(図1(C))。エッチングは、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いて行う。ここでは、自己整合的にエッチングを行い、例えば、第1の絶縁膜11が部分的に膜厚400nmとなるようにする。即ち、第1の絶縁膜11において第1の電極13及び第2の電極14と重なる領域(500nmの領域)は、エッチングされず、前記第1の電極と前記第2の電極の間の領域(膜厚400nmの領域)よりも膜厚が厚くなる。
【0030】
次いで、第1の電極13、第2の電極14、及び露呈している第1の絶縁膜11上に膜厚100nmの第2の絶縁膜15を形成する(図1(D))。ここでは、第2の絶縁膜15として、スパッタ法を用い、膜厚100nmのBaTiO膜からなる絶縁膜を形成する。ここでは、発光効率を考慮し、薄くエッチングした凹部の深さが100nmであるので、第2の絶縁膜15の膜厚も100nmとしたが、特に限定されない。
【0031】
次いで、第2の絶縁膜15上に膜厚100nm〜1000nmの無機化合物半導体材料膜を形成する。ここでは、無機化合物半導体材料膜として、スパッタ法を用い、膜厚500nmのMnを含むZnS膜を形成する。
【0032】
次いで、第2のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、無機化合物半導体材料膜をエッチングして、発光層16を得る(図2(A))。また、レジストマスクを液滴吐出法で形成し、無機化合物半導体材料膜のエッチングを行ってもよい。
【0033】
こうして得られた発光素子は、第1の電極13及び第2の電極14に交流電圧または直流電圧を印加すると、ZnS膜に含まれているMnが発光中心となって可視光が放出される。発光層16は、第1の電極13の側面と、該側面に対向する前記第2の電極14の側面との間に挟まれて配置されており、発光層16の上下に発光が射出する。
【0034】
また、発光層16の下方に射出された発光は、第1の絶縁膜11(酸化珪素膜:屈折率1.47)と第2の絶縁膜15(BaTiO膜:屈折率2.4)の界面で反射され、発光層16の上方に射出する発光量が増加する。
【0035】
また、得られた発光素子の上面図の一例を図2(B)に示す。図2(B)中の鎖線A−Bで切断した断面図が図2(A)に相当する。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態1では、屈折率の異なる積層を用いて反射させた例を示したが、ここでは発光層の下方に反射性を有する金属膜を設ける例を図3に示す。
【0037】
実施の形態1と同様に、基板310上に第1の絶縁膜311を形成する。次いで、反射性を有する金属膜312を形成する。反射性を有する金属膜312としては、Al、Ag、Ptなどを主成分とする材料が挙げられる。反射性を有する金属膜312の膜厚は、十分な反射性が得られる膜厚とすればよい。ここではAl膜を用いる。
【0038】
次いで、第2の絶縁膜を形成した後、第2の絶縁膜上に膜厚100nm〜500nmの金属層を形成する。次いで、第1のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、金属層をエッチングして、第1の電極313、及び第2の電極314を得た後、エッチング条件を変えて第2の絶縁膜を選択的にエッチングする。こうして絶縁物317、318が形成される。この絶縁物317、318によって、反射性を有する金属膜312を第1の電極313及び第2の電極314と電気的に絶縁させている。
【0039】
次いで、レジストマスクを除去する。次いで、第1の電極313、第2の電極314、及び露呈している反射性を有する金属膜312上に膜厚100nmの第3の絶縁膜315を形成する。ここでは、第3の絶縁膜315として、スパッタ法を用い、膜厚150nmのBaTiO膜からなる絶縁膜を形成する。
【0040】
次いで、第3の絶縁膜315上に膜厚100nm〜1000nmの無機化合物半導体材料膜を形成する。ここでは、無機化合物半導体材料膜として、スパッタ法を用い、膜厚500nmのMnを含むZnS膜を形成する。
【0041】
次いで、第2のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法またはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、無機化合物半導体材料膜をエッチングして、発光層316を得る。
【0042】
こうして得られた発光素子は、第1の電極313及び第2の電極314に交流電圧または直流電圧を印加すると、ZnS膜に含まれているMnが発光中心となって可視光が放出される。発光層316は、第1の電極313の側面と、該側面に対向する前記第2の電極314の側面との間に挟まれて配置されており、発光層316の上下に発光が射出する。
【0043】
また、発光層316の下方に射出された発光は、反射性を有する金属膜312表面で反射され、発光層316の上方に射出する発光量が増加する。なお、発光時において、反射性を有する金属膜312は電気的にフローティング状態としているが、第1の電極313及び第2の電極314と電気的に接続していなければ特に限定されず、反射性を有する金属膜312の電位は、発光時にある値に固定されていればよい。
【0044】
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0045】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【実施例1】
【0046】
本実施例では、本発明の半導体装置の一構成例に関して図面を用いて説明する。より具体的には、複数の発光素子が配置された回路の構成がパッシブマトリクス型の場合に関して以下に示す。
【0047】
基板400上には、ストライプ状に複数の第1の配線401が等間隔で配置されている。そして、第2の配線402は、第1の配線401と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。一つの発光素子は、第1の配線401と第2の配線402の交点付近に配置されており、第1の配線401と第2の配線402とに電位をそれぞれ与えることによって発光させる。この一つの発光素子の上面図を図4(B)に示し、図4(B)中の鎖線CDで切断した断面図を図4(A)に示す。
【0048】
図4(A)に示すように、第1の電極404は、第1の絶縁膜403上に設けられ、第2の絶縁膜406、及び第3の絶縁膜408に設けられたコンタクトホールを介して第2の配線402と電気的に接続している。また、第2の電極405は、第1の絶縁膜403上に設けられ、第1の絶縁膜403に設けられたコンタクトホールを介して第1の配線401と電気的に接続している。
【0049】
第1の絶縁膜403は第1の電極404と第2の電極405との間の領域が他の領域よりも薄くなっている。また、第2の絶縁膜406は、第1の電極404、第2の電極405を覆って形成する。また、第1の電極404と第2の電極405との間の領域、即ち、第1の絶縁膜403の薄い領域と重なる位置に無機化合物半導体材料膜からなる発光層407を形成する。
【0050】
図4(A)及び図4(B)に示した発光素子は、第1の電極404及び第2の電極405に交流電圧または直流電圧を印加すると、無機化合物半導体材料膜に含まれている添加物(Au、Ag、Cu、Mn、Fなど)が発光中心となって図4(A)に示す矢印の方向に光が放出される。発光層407として、Mnを添加したZnS膜を用いた場合、ZnS膜に含まれているMnが発光中心となって可視光が放出される。
【0051】
さらに、第2の絶縁膜406及び第3の絶縁膜408を屈折率の高い材料、例えば、屈折率2.4のBaTiO膜を用いると、発光層407(Mnを添加したZnS膜)が屈折率2.4と同じであるため、効率よく発光層407の上方に射出する発光を取り出すことができる。従って、第2の絶縁膜406及び第3の絶縁膜408は、発光層407と屈折率が同じ、若しくは屈折率の差がほとんどない材料を用いることが望ましい。
【0052】
また、発光層407の下方に射出された発光は、第1の絶縁膜403(酸化珪素膜:屈折率1.47)と第2の絶縁膜406(BaTiO膜:屈折率2.4)の界面で反射され、発光層407の上方に射出する発光量が増加する。加えて、第1の配線401を反射性を有する金属膜で形成すれば、発光層407の下方に射出された発光は、第1の配線401表面で反射され、発光層407の上方に射出する発光量がさらに増加する。
【0053】
また、本実施例では、発光層と第1の配線を重ねた例を示したが、特に限定されず、第1の配線と第2の配線とで囲まれた領域に発光層が位置するようにしてもよい。どちらの構成であっても、本発明により、第1の配線と第2の配線の両方の材料を電気抵抗の低い金属材料、例えばAl膜、Ag膜、Cu膜などを用いることができるため、発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0054】
また、本実施例は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【実施例2】
【0055】
実施例1ではパッシブマトリクス型の例を示したが、本実施例では、アクティブマトリクス型の一例を示す。絶縁表面を有する基板上に複数の発光素子及び複数のスイッチング素子がマトリクス状に配置された半導体装置である。
【0056】
図5に一つのトランジスタ501をスイッチング素子として用いた画素部の等価回路図を示す。トランジスタ501は発光素子502のスイッチングとして用いる。ゲート線503にはトランジスタをオン状態、或いはオフ状態とするための直流電圧Vgateを印加し、データ線504には発光素子502を駆動するための交流電圧または直流電圧Vsigを印加する。階調表示はVsigの振幅の大きさを変えることにより行うことができる。
【0057】
また、図6には、二つのトランジスタを用いた画素部の等価回路図を示す。画素部の回路にはスイッチング用トランジスタ601の他に発光素子602を駆動するための駆動用トランジスタ605が回路構成として加わる。そして、画素部の回路には発光素子の電源供給線606が追加される。図6に示す画素部の回路の場合、データ線604およびゲート線603には直流電圧を印加し、発光素子602に印加する電圧VELを交流電圧または直流電圧にする。
【0058】
また、二つのトランジスタを用いた画素部を有するアクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合について、作製手順を以下に説明する。
【0059】
まず、絶縁表面を有する基板800上にタングステン膜をスパッタ法で形成する。次いで、選択的にエッチングしてゲート線603とゲート電極701を形成する。このゲート線603の一部はスイッチング用トランジスタ601のゲート電極となる。また、ゲート電極701は駆動用トランジスタ605のゲート電極として機能する。
【0060】
次いで、ゲート線603及びゲート電極701を覆う第1の絶縁膜801を形成する。第1の絶縁膜801は酸化窒化珪素膜を用いる。次いで、第1の絶縁膜801を選択的にエッチングしてゲート電極701に達するコンタクトホールを形成する。次いで、第1の絶縁膜801上に半導体膜を成膜する。半導体膜としてはZnO膜を用いる。
【0061】
次いで、ZnO膜を選択的にエッチングして第1の半導体層702と第2の半導体層703を形成する。第1の半導体層702は、スイッチング用トランジスタ601の活性層として機能する。また、第1の半導体層702は第1の絶縁膜801に設けられたコンタクトホールを介してゲート電極701と電気的に接続される。また、第2の半導体層703は駆動用トランジスタ605の活性層として機能する。
【0062】
次いで、第1の半導体層702及び第2の半導体層703を覆う第2の絶縁膜802を形成する。第2の絶縁膜802には酸化珪素膜を用いる。第2の絶縁膜802を選択的にエッチングして第1の半導体層702に達するコンタクトホールを形成する。
【0063】
次いで、第2の絶縁膜802上に金属膜、ここではTiを微量に含むAl膜を形成する。次いで、金属膜を選択的にエッチングしてデータ線604と、電源供給線606を形成する。データ線604は第2の絶縁膜802に設けられたコンタクトホールを介して第1の半導体層702と電気的に接続される。
【0064】
ここまでの作製工程が終わった段階での上面図を図7に示す。図7において、図6と同一の箇所には同じ符号を用いる。また、図7中の点線EFで切断した断面図を図8(A)に示す。なお、図8(A)において、図6または図7と同一の箇所には同じ符号を用いる。
【0065】
こうして、図8(A)の構造が得られた後、実施の形態1に示した工程と同じ工程を経て発光素子を積み重ねて形成する。
【0066】
データ線604及び電源供給線606を覆う第3の絶縁膜811を形成した後、実施の形態1と同様に膜厚100nm〜500nmの金属層を形成する。本実施例では、第3の絶縁膜811は、CVD法を用いて酸化珪素膜を500nm形成する。次いで、金属層を選択的にエッチングして、第1の電極813、及び第2の電極814を得る。次いで、第1の電極813、及び第2の電極814をマスクとして第3の絶縁膜を部分的に薄くエッチングする。次いで、第1の電極813、及び第2の電極814上に膜厚100nmの第4の絶縁膜815を形成する。本実施例では、第4の絶縁膜815として、膜厚100nmのBaTiO膜からなる絶縁膜を形成する。
【0067】
次いで、第4の絶縁膜815上に膜厚100nm〜1000nmの無機化合物半導体材料膜を形成する。本実施例では、無機化合物半導体材料膜として、スパッタ法を用い、膜厚500nmのMnを含むZnS膜を形成する。次いで、無機化合物半導体材料膜を選択的にエッチングして、発光層816を得る。
【0068】
こうして得られた発光素子は、第1の電極813及び第2の電極814に交流電圧または直流電圧を印加すると、ZnS膜に含まれているMnが発光中心となって可視光が放出される。
【0069】
ここまでの工程終了後の断面図を図8(B)に示す。
【0070】
また、必要があれば、発光層816上に可視光に対して透明な保護膜を形成してもよい。可視光に対して透明な保護膜としては、PCVD法による緻密な無機絶縁膜(SiN、SiNO膜など)、スパッタ法による緻密な無機絶縁膜(SiN、SiNO膜など)、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)、金属酸化物膜(WO、CaF、Alなど)などを用いることが好ましい。なお、ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜とも呼ばれる)は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法、熱フィラメントCVD法など)、燃焼炎法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、レーザー蒸着法などで形成することができる。成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH、C、Cなど)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。また、CN膜は反応ガスとしてCガスとNガスとを用いて形成すればよい。なお、DLC膜やCN膜は、膜厚にもよるが、可視光に対して透明もしくは半透明な絶縁膜である。可視光に対して透明とは可視光の透過率が80〜100%であることを指し、可視光に対して半透明とは可視光の透過率が50〜80%であることを指す。
【0071】
また、スイッチング素子として機能し得るものであれば、スイッチング素子の構造に関係なく、本発明を適用することが可能である。図8(A)では、絶縁性を有する基板上にZnO膜を用いたボトムゲート型(逆スタガ型)のトランジスタを用いた例を示したが、トップゲート型のトランジスタや、順スタガ型のトランジスタを用いることが可能である。また、シングルゲート構造のトランジスタに限定されず、複数のチャネル形成領域を有するマルチゲート型のトランジスタ、例えばダブルゲート型のトランジスタとしてもよい。
【0072】
本実施例は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0073】
本実施例では、本発明で発光素子を有する発光装置を用いて完成させた様々な電気機器について説明する。本発明を適用した発光装置が低消費電力であることから、当該発光装置を用いた電気機器においても、例えば表示部や照明部に係る電力を軽減できる。
【0074】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0075】
本発明を用いて形成される発光装置を用いて作製された電気機器として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話器、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置〔具体的にはDVD等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置〕、照明機器などが挙げられる。電気機器のいくつかの具体例を図9により説明する。本発明の発光装置を用いた電気機器はこれら例示の具体例に限定されない。
【0076】
図9(A)は表示装置であり、筐体1001、支持台1002、表示部1003、スピーカー部1004、ビデオ入力端子1005等を含む。本発明を用いて形成される発光装置をその表示部1003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
【0077】
図9(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体1201、筐体1202、表示部1203、キーボード1204、外部接続ポート1205、ポインティングマウス1206等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部1203に用いることにより作製される。
【0078】
図9(C)はビデオカメラであり、本体1301、表示部1302、筐体1303、外部接続ポート1304、リモコン受信部1305、受像部1306、バッテリー1307、音声入力部1308、操作キー1309、接眼部1310等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部1302に用いることにより作製される。
【0079】
図9(D)は卓上照明機器であり、照明部1401、傘1402、可変アーム1403、支柱1404、台1405、電源1406を含む。本発明の発光素子を用いて形成される発光装置を照明部1401に用いることにより作製される。なお、照明機器には天井固定型の照明機器または壁掛け型の照明機器なども含まれる。
【0080】
また、図9(E)は携帯電話器(機)であり、本体1501、筐体1502、表示部1503、音声入力部1504、音声出力部1505、操作キー1506、外部接続ポート1507、アンテナ1508等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部1503に用いることにより作製される。
【0081】
以上のようにして、本発明の発光素子、発光装置を有する電気機器を得ることができる。また、以上のような本発明を用いた電気機器は、本発明の発光素子の発光効率がよいことから、低消費電力であることから経済的でもある。
【0082】
本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1、または実施例2と自由に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】発光素子の作製工程を示す断面図である。
【図2】発光素子の断面図及び上面図である。
【図3】発光素子の断面図である。
【図4】半導体装置の断面図および上面図を示す図である。
【図5】等価回路を示す図である。
【図6】等価回路を示す図である。
【図7】作製途中の上面図を示す図である。
【図8】半導体装置の断面図を示す図である。
【図9】電子機器の一例を示す図。
【図10】従来例を示す図。
【符号の説明】
【0084】
10 基板
11 第1の絶縁膜
12 金属層
13 第1の電極
14 第2の電極
15 第2の絶縁膜
16 発光層
310 基板
311 第1の絶縁膜
312 金属膜
313 第1の電極
314 第2の電極
315 第3の絶縁膜
316 発光層
317 絶縁物
318 絶縁物
400 基板
401 第1の配線
402 第2の配線
403 第1の絶縁膜
404 第1の電極
405 第2の電極
406 第2の絶縁膜
407 発光層
408 第3の絶縁膜
501 トランジスタ
502 発光素子
503 ゲート線
504 データ線
601 スイッチング用トランジスタ
602 発光素子
603 ゲート線
604 データ線
605 駆動用トランジスタ
606 電源供給線
701 ゲート電極
702 第1の半導体層
703 第2の半導体層
800 基板
801 第1の絶縁膜
802 第2の絶縁膜
811 第3の絶縁膜
813 第1の電極
814 第2の電極
815 第4の絶縁膜
816 発光層
1001 筐体
1002 支持台
1003 表示部
1004 スピーカー部
1005 ビデオ入力端子
1201 本体
1202 筐体
1203 表示部
1204 キーボード
1205 外部接続ポート
1206 ポインティングマウス
1301 本体
1302 表示部
1303 筐体
1304 外部接続ポート
1305 リモコン受信部
1306 受像部
1307 バッテリー
1308 音声入力部
1309 操作キー
1310 接眼部
1401 照明部
1402 傘
1403 可変アーム
1404 支柱
1405 台
1406 電源
1501 携帯電話器の本体
1502 筐体
1503 表示部
1504 音声入力部
1505 音声出力部
1506 操作キー
1507 外部接続ポート
1508 アンテナ
2000 基板
2002 下部電極
2004 第1絶縁膜
2006 発光層
2008 第2絶縁膜
2010 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に離間して並べられた第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極及び第2の電極を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、
前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
絶縁表面上に第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極と、
前記第1の電極及び第2の電極を覆う第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、
前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成され、
前記第1の絶縁膜において前記第1の電極及び前記第2の電極と重なる領域は、前記第1の電極と前記第2の電極の間の領域よりも膜厚が厚いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第2の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜よりも屈折率が高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
絶縁表面上に第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に反射性を有する金属膜と、
前記反射性を有する金属膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極と、
前記第1の電極及び第2の電極を覆う第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層とを有し、
前記発光層は、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に形成され、
前記反射性を有する金属膜と前記第1の電極との間、及び前記反射性を有する金属膜と前記第2の電極との間には第3の絶縁膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第3の絶縁膜の側面は、前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記反射性を有する金属膜は、電気的にフローティング、或いは、前記第1の電極及び前記第2の電極とは異なる電位に固定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、前記発光層を構成する物質は、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、GaN、SiC、又はMgZn1−XOであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、前記発光層は、Au、Ag、Cu、Mn、Fから選ばれる少なくとも1種または複数種が添加されることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、前記第2の絶縁膜は、プラズマCVD法またはスパッタ法または塗布法により形成される酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、酸化アルミニウム膜、チタン酸バリウム(BaTiO)膜から選ばれる単層またはそれらの積層であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、前記第1の電極及び前記第2の電極は、Al、W、Ti、Ta、Mo、Cu、Inから選ばれる元素を含む導電膜、またはこれらの積層膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
絶縁表面上に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜上に離間して並べられた第1の電極と第2の電極を形成し、
前記第1の電極及び第2の電極をマスクとして前記第1の絶縁膜の一部をエッチングして膜厚の薄い部分を形成し、
前記第1の絶縁膜の膜厚の薄い部分、前記第1の電極、及び前記第2の電極を覆う第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の絶縁膜上に無機材料を含む発光層を形成して、前記発光層が、前記第1の電極の側面と、該側面に対向する前記第2の電極の側面との間に配置することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−242594(P2007−242594A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16136(P2007−16136)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】