説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置の実装時に、保護シールにより透明部材をキズやほこりから十分に保護しつつ、実装時の高温環境下でも透明部材の表面において保護シールによる糊残りの発生をなくすことができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透明部材11を保護する保護シールS1は、有機基材16と接着剤層17および接着力が弱い第2接着剤層18からなり、接着剤層17が有機基材16の透明部材側面部11bにあたる周縁部のみに設けられ、有機基材16の透明部材表面部11aにあたる部分には第2接着剤層18が設けられ、有機基材16が接着剤層17、18により透明部材11の側面部11bおよび表面部11aに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子として例えば受光素子を有する半導体撮像装置等の半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域を有する光学素子として例えば受光領域を有する受光素子であるCCDやCMOS構成のイメージセンサを使用した半導体撮像装置等を構成する半導体装置では、受光素子としてイメージセンサを形成する撮像領域と複数のボンディングパッドを備える半導体素子を、パッケージ本体に形成した凹状のキャビティ内に搭載し、そのキャビティ部を覆うように透明部材を設置し、透明部材とパッケージ本体を樹脂接着剤で固着する構造が提案されている。
【0003】
以上のような半導体装置において、提案されている構造は、半導体素子を、エポキシ樹脂等の樹脂あるいは樹脂シートにより、セラミックで作られたパッケージ本体のキャビティ内のダイアタッチ面にダイボンドし、パッケージ本体の接続端子と半導体素子のAl電極(ボンディングパッド)をワイヤーボンドで電気接続した後に、透明部材でキャビティ部を覆う構造を有している。また、透明部材をパッケージ本体に固定する方法としては、樹脂接着剤を用いて接着する方法が用いられている。この後、輸送時の透明部材を保護するため、あるいは実装時の透明部材面保護のために、透明部材を覆うように保護シールが貼り付けられる。
【0004】
以上のような半導体装置に搭載される半導体素子の表面部には、これまで、オンチップレンズと呼ばれ集光率を高めるアクリル系樹脂を材料とする複数のマイクロレンズが形成されているのであるが、このようなレンズには耐熱性の観点で課題がある。つまり、長時間熱を加えるとマイクロレンズが軟化し、マイクロレンズの形状変化を起こしてしまう。また、透明部材をパッケージ本体に固定する時に用いる樹脂接着剤も耐熱性をもった材料ではなかった。
【0005】
しかしながら、最近では、CCDやCMOS構成のイメージセンサを使用した半導体装置に対して、高温高湿環境下での使用要求が高まる中、オンチップレンズ材料および樹脂接着剤の改良等により、半導体装置およびそれに使用する樹脂接着剤に対して、高温環境下および高湿環境下での耐熱性および耐湿性が向上し、半導体装置をそのような環境下で使用することが可能になった。
【0006】
また、上記の半導体装置は、その実装基板へ実装する際にも高温環境下に置かれ、その際の高温環境にも耐えることが可能な材料が必要となってきた。一方、半導体装置を基板へ実装する際には、透明部材をキズやほこりから保護するための保護シールが必要になるが、この保護シールにも、半導体装置を実装する際の高温環境下に対する耐熱性が必要であり、さらに実装時の高温環境を通った後に保護シールを剥した際にも、透明部材の表面部に保護シールの接着剤(糊)が残らないことが重要な要素となっている。
【0007】
保護シールの糊残りが発生しない方法として、例えば特許文献1に、ポリエチレンナフタレートを基材とし、少なくとも片面に粘着層を有する粘着テープを貼り合せることを特徴とする保護シールであって、映像センサ表面部を構成するガラス面上で受光部領域にかかる部分には粘着層を設けないことが好ましいという技術が開示されている。
【0008】
この場合、保護シールの粘着層は、ガラス面上で受光部領域には残らないがその他のガラス面領域には残ることになり、結局、ガラス面を拭き取る必要があった。
【特許文献1】特開2005−340752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記のような従来の半導体装置においては、保護シールが有機材料の基材と接着剤層からできており、保護シールを剥した際に、保護シールの外形跡および撮像面である透明部材の表面部に接着剤(糊)が残るという問題が有り、この糊残りが撮像面に発生した場合、撮像面の糊が画像に映ってしまうという問題があった。
【0010】
このような糊残りは、保護シールが加熱された時と加熱されない時とを比べると、糊の熱分解により加熱された時のほうがより残り易い傾向にあり、また、高湿環境下で処理された方が、高湿環境下で処理されない場合と比較すると糊残りが発生し易い傾向がある。
【0011】
また、保護シールを透明部材に貼り付ける際、気泡(ボイド)を抱き込むことが有り、その場合、気泡の周囲には糊残りが発生し易くなっていた。
以上のような糊残りに対して、その対策の一つとして、テープ状保護シールの剥し後に透明部材の表面部を拭き取る方法があるが、拭き取る際に残った糊(接着剤)を透明部材の表面部に塗り拡げてしまうことが有り、特殊な薬品を使用しなければならない。
【0012】
また、透明部材の表面部を拭き取る場合、透明部材に汚れやダストが残ってしまうと品質不良となるため、拭き取る際には慎重な作業が必要になり、コスト面を考慮した場合、大きなデメリットとなっていた。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、半導体装置の実装時に、保護シールにより透明部材をキズやほこりから十分に保護しつつ、実装時の高温環境下でも透明部材の表面部において保護シールによる糊残りの発生をなくすことができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の半導体装置は、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域を有する半導体素子と、透明部材と、前記透明部材の表面部を覆う保護シールとを備えた半導体装置であって、前記透明部材は、前記半導体素子の上に配置され、前記保護シールは、前記透明部材の側面部のみに接着されたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置であって、前記半導体素子と前記透明部材は、樹脂接着剤を介して接着されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置であって、前記半導体素子と前記透明部材の間は中空となっていることを特徴とする。
また、本発明の請求項4に記載の半導体装置は、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子と、前記半導体素子を収納するキャビティ内に複数の接続端子が設けられた基板と、前記ボンディングパッドと前記接続端子を接続するワイヤーと、前記基板に接合された透明部材と、前記透明部材の表面部を覆う保護シールとを備え、前記保護シールは、前記透明部材の側面部のみに接着されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5に記載の半導体装置は、請求項4に記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、前記基材における前記透明部材の側面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とからなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6に記載の半導体装置は、請求項4または請求項5に記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部より大きい第1面形状部と、前記第1面形状部周囲の各辺から前記透明部材の側面部さらに前記キャビティの上面に掛かるまで伸びた第2面形状部とを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7に記載の半導体装置は、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子と、前記半導体素子の上面に前記素子領域を覆うように取り付けられた透明部材と、複数の接続端子が設けられて前記半導体素子がダイボンドされた基板と、前記ボンディングパッドと前記接続端子を接続するワイヤーと、前記基板上で前記半導体素子と前記透明部材の側面部と前記ワイヤーを封止する封止樹脂と、前記透明部材の表面部および前記封止樹脂の上面部を覆う保護シールとを備え、前記保護シールは、前記封止樹脂の上面部のみに接着されたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8に記載の半導体装置は、請求項7に記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、前記基材における前記封止樹脂の上面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とからなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項9に記載の半導体装置は、請求項7または請求項8に記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部より大きい第3面形状部と、前記第3面形状部周囲の各辺から前記封止樹脂の上面部まで伸びた第4面形状部とを有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項10に記載の半導体装置は、請求項4から請求項9のいずれかに記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の1辺と平行に折り目が1本以上形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項11に記載の半導体装置は、請求項4から請求項10のいずれかに記載の半導体装置であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部を覆う領域に、それ以外の領域より弱い接着力を持たせたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項12に記載の半導体装置は、請求項4から請求項11のいずれかに記載の半導体装置であって、保護シールは、前記透明部材の表面部を覆う領域が無色透明あるいは色つき透明であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項13に記載の半導体装置の製造方法は、予め、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子を用意する工程と、前記半導体素子を収納するためのキャビティ内に複数の接続端子が設けられた基板を用意する工程と、前記キャビティ内に前記半導体素子を収納する工程と、前記ボンディングパッドと前記接続端子をワイヤーにより接続する工程と、前記基板に透明部材を接合する工程と、前記透明部材の表面部を保護するための保護シールを前記透明部材の側面部のみに接着した状態で、前記保護シールにより前記透明部材の表面部を覆う工程とを有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項14に記載の半導体装置の製造方法は、請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、前記基材における前記透明部材の側面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とで形成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項15に記載の半導体装置の製造方法は、請求項13または請求項14に記載の半導体装置の製造方法であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部より大きい第1面形状部と、前記第1面形状部周囲の各辺から前記透明部材の側面部さらに前記キャビティの上面に掛かるまで伸びた第2面形状部とで形成することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項16に記載の半導体装置の製造方法は、請求項13から請求項15のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記保護シールは、前記透明部材の1辺と平行に折り目を1本以上形成することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項17に記載の半導体装置の製造方法は、請求項13から請求項16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記保護シールは、前記透明部材の表面部を覆う領域に、それ以外の領域より弱い接着力を持たせることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項18に記載の半導体装置の製造方法は、請求項13から請求項17のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、保護シールは、前記透明部材の表面部を覆う領域を無色透明あるいは色つき透明に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によれば、半導体装置の実装時に、保護シールにより透明部材をキズやほこりから十分に保護しつつ、実装時の高温環境下において熱ストレスが加わった場合においても、透明部材に取り付けられた保護シールを剥した時に、透明部材の表面部において接着剤層による糊残りの発生をなくすことができる。
【0032】
そのため、半導体装置として十分な高耐熱性および高耐湿性を得ることができ、高信頼性を有する半導体撮像装置等の半導体装置を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を示す半導体装置およびその製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、これらの図面において、それぞれの構成部材の厚みや長さ等は図面の作成上から実際の形状とは異なる。また、各構成部材の電極や端子の個数も実際とは異なり、図示しやすい数量としている。さらに、各構成部材の材質も下記説明の材質に限定するものではない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の半導体装置を説明する。
【0034】
図1は本実施の形態1の半導体装置の構造を示す断面図である。本実施の形態1の半導体装置は、図1に示すように、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1と複数のボンディングパッド15を有する半導体素子12と、半導体素子12を収納する凹状のキャビティC1を有しキャビティC1内に複数の接続端子T1が設けられた基板13と、ボンディングパッド15と接続端子T1を電気的に接続するワイヤー14と、基板13上部の半導体素子12より外側位置で樹脂接着剤22を用いて基板13に接合された透明部材11と、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆う保護シールS1とを備え、保護シールS1は、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆うことが可能な面積の有機基材16と、有機基材16における透明部材11の側面部11bを覆う部分にのみ設けられた接着剤層17とからなり、有機基材16の形状として、透明部材11の表面部11aより大きい第1面形状部M1と、第1面形状部M1周囲の各辺から透明部材11の側面部11bさらにキャビティC1の上面に掛かるまで伸びた第2面形状部M2とを有している。
【0035】
また、保護シールS1の有機基材16は、透明部材11に対して、透明部材11の側面部11bを覆う部分のみが接着剤層17によって接着されている。
なお、ワイヤー14としては、通常、Auワイヤーがよく用いられている。
【0036】
また、保護シールS1は、通常、有機基材16における透明部材11の表面部11aを覆う領域が、無色透明あるいは色つき透明に形成されている。
また、保護シールS1の有機基材16には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが主に使用され、接着剤層17としては、アクリル系、シリコーン系のものが主に使用される。
【0037】
このような構成とすることにより、保護シールS1の接着剤層17は半導体装置の透明部材11表面部11aを覆う部分には存在せず、半導体装置を実装基板へ実装する際に熱が加わっても、保護シールS1を剥した後に透明部材11表面部11aには糊残りが発生しない半導体装置を実現することができる。
【0038】
また、半導体装置が実装基板への実装時の高温環境下に置かれても、透明部材11に貼り付けられた保護シールS1の接着剤層17が透明部材11の表面部11aには残らないので、糊残りによる画像への映りこみが発生しない高信頼性の半導体装置を実現することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の半導体装置を説明する。
【0039】
図2は本実施の形態2の半導体装置の構造を示す断面図である。本実施の形態2の半導体装置は、図2に示すように、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1と複数のボンディングパッド15を有する半導体素子12と、半導体素子12を収納する凹状のキャビティC1を有しキャビティC1内に複数の接続端子T1が設けられた基板13と、ボンディングパッド15と接続端子T1を電気的に接続するワイヤー14と、基板13上部の半導体素子12より外側位置で樹脂接着剤22を用いて基板13に接合された透明部材11と、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆う保護シールS1とを備え、保護シールS1は、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆うことが可能な面積の有機基材16と、有機基材16における透明部材11の側面部11bを覆う部分に設けられた接着剤層17と、有機基材16における透明部材11の表面部11aを覆う部分に設けられそれ以外の領域より弱い接着力を持たせるために接着剤層17より弱い接着力を有する第2接着剤層18とからなり、有機基材16の形状として、透明部材11の表面部11aより大きい第1面形状部M1と、第1面形状部M1周囲の各辺から透明部材11の側面部11bさらにキャビティC1の上面に掛かるまで伸びた第2面形状部M2とを有している。
【0040】
また、保護シールS1の有機基材16は、透明部材11に対して、透明部材11の側面部11bを覆う部分が接着剤層17によって接着され、透明部材11の表面部11aを覆う部分が第2接着剤層18によって接着されている。
【0041】
なお、ワイヤー14としては、通常、Auワイヤーがよく用いられている。
また、保護シールS1は、通常、有機基材16における透明部材11の表面部11aを覆う領域が、無色透明あるいは色つき透明に形成されている。
【0042】
また、保護シールS1の有機基材16には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが主に使用され、接着剤層17としては、アクリル系、シリコーン系のものが主に使用される。
【0043】
このような構成とすることにより、実装時の時など外部からの汚染から透明部材11表面部11aをより確実に保護することが可能になる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の半導体装置を説明する。
【0044】
図3は本実施の形態3の半導体装置の構造を示す断面図である。本実施の形態3の半導体装置は、図3に示すように、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1と複数のボンディングパッド15を有する半導体素子12と、半導体素子12を収納する凹状のキャビティC1を有しキャビティC1内に複数の接続端子T1が設けられた基板13と、ボンディングパッド15と接続端子T1を電気的に接続するワイヤー14と、基板13上部の半導体素子12より外側位置で樹脂接着剤22を用いて基板13に接合された透明部材11と、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆う保護シールS1とを備え、保護シールS1は、透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆うことが可能な面積の有機基材16と、有機基材16における透明部材11の側面部11bを覆う部分にのみ設けられた接着剤層17とからなり、有機基材16の形状として、透明部材11の表面部11aより大きい第1面形状部M1と、第1面形状部M1周囲の各辺から透明部材11の側面部11bさらにキャビティC1の上面に掛かるまで伸びた第2面形状部M2とを有し、透明部材11の1辺と平行に折り目19が1本以上形成されている。
【0045】
また、保護シールS1の有機基材16は、透明部材11に対して、透明部材11の側面部11bを覆う部分のみが接着剤層17によって接着されている。
なお、ワイヤー14としては、通常、Auワイヤーがよく用いられている。
【0046】
また、保護シールS1は、通常、有機基材16における透明部材11の表面部11aを覆う領域が、無色透明あるいは色つき透明に形成されている。
また、保護シールS1の有機基材16には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが主に使用され、接着剤層17としては、アクリル系、シリコーン系のものが主に使用される。
【0047】
また、本実施の形態3の半導体装置においても、実施の形態2の場合と同様に、保護シールS1の有機基材16として、透明部材11の表面部11aを覆う部分にそれ以外の領域より弱い接着力を持たせるために接着剤層17より弱い接着力を有する第2接着剤層18を設けた場合も実施できる。
【0048】
このような構成とすることにより、保護シールS1を透明部材11から剥す時に接着剤層17に応力が掛かることなく保護シールS1を剥すことが可能になる。
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。なおここでは、製造方法の一例として実施の形態1の半導体装置について説明する。
【0049】
図4は実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す断面図である。ここでは半導体装置の製造方法の作業手順を図4(a)〜図4(f)に分図して示している。
予め、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1と複数のボンディングパッド15を有する半導体素子12を用意しておく。また、半導体素子12を収納するための凹状のキャビティC1を有しキャビティC1内に複数の接続端子T1が設けられた基板13を用意する(工程(a))。
【0050】
次に、基板13のキャビティC1内に半導体素子12をダイボンド材料を用いてダイボンドすることにより収納する(工程(b))。次に、半導体素子12の複数のボンディングパッド15と基板13内の複数の接続端子T1をAuワイヤー14により電気的に接続する(工程(c))。次に、基板13上に透明部材11を接着搭載するための樹脂接着剤22を塗布する(工程(d))。
【0051】
次に、透明部材11を樹脂接着剤22上に載せた状態にして基板13上部で半導体素子12より外側の適切な位置に位置決めし、樹脂接着剤22をUVあるいは熱で硬化させることにより、透明部材11を基板13に接合する(工程(e))。次に、透明部材11の表面部11aを保護するため有機基材16と接着剤層17とからなる保護シールS1を、接着剤層17により透明部材11の側面部11bに接着することにより、保護シールS1で透明部材11の表面部11aおよび側面部11bを覆う(工程(f))。
【0052】
以上の工程により、半導体装置を製造する。
なお、上記の製造方法で説明した工程を用いることにより、同様に実施の形態2および実施の形態3の半導体装置を製造することができる。
(他の実施の形態)
次に、本発明の他の実施の形態の半導体装置の構造例を説明する。
【0053】
図5は本実施の形態の半導体装置の他の構造例を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、図5に示すように、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1と複数のボンディングパッド15を有する半導体素子12と、半導体素子12の上面にその素子領域J1を覆うように樹脂接着剤22を用いて接着されて取り付けられた透明部材11と、複数の接続端子T2が設けられて半導体素子12がダイボンドされた基板21と、ボンディングパッド15と接続端子T2を電気的に接続するワイヤー14と、基板21上で半導体素子12と透明部材11の側面部11bとワイヤー14を封止するモールド樹脂23と、透明部材11の表面部11aおよびモールド樹脂23の透明部材11表面部11aが露出する側の面上(上面部U1とする)を覆う保護シールS1とを備え、保護シールS1は、透明部材11の表面部11aおよびモールド樹脂23の上面部U1を覆うことが可能な面積の有機基材16と、有機基材16におけるモールド樹脂23の上面部U1を覆う部分のみに存在する接着剤層17とからなり、有機基材16の形状として、透明部材11の表面部11aより大きい第3面形状部M3と、第3面形状部M3周囲の各辺からモールド樹脂23の上面部U1まで伸びた第4面形状部M4とを有している。
【0054】
また、保護シールS1の有機基材16は、モールド樹脂23に対して、モールド樹脂23の上面部U1を覆う部分のみが接着剤層17によって接着されている。
なお、モールド樹脂23の上面部U1が、透明部材11の表面部11aと同じ面上の場合、透明部材11を除いた箇所であれば、保護シールS1の接着剤層17が存在しても構わない。
【0055】
また、保護シールS1は、通常、有機基材16における透明部材11の表面部11aを覆う領域が、無色透明あるいは色つき透明に形成されている。
また、保護シールS1は、有機基材16に透明部材11の1辺と平行に折り目19が1本以上形成することが好ましい。
【0056】
このようにすることにより、保護シールS1を透明部材11から剥す時に接着剤層17に応力が掛かることなく保護シールS1を剥すことが可能になる。
また、ワイヤー14としては、通常、Auワイヤーがよく用いられている。
【0057】
また、保護シールS1の有機基材16には、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが主に使用され、接着剤層17としては、アクリル系、シリコーン系のものが主に使用される。
【0058】
また、上記の基板21は、有機基板あるいはリードフレームであっても良い。
また、本実施の形態の半導体装置においても、実施の形態2の場合と同様に、保護シールS1の有機基材16として、透明部材11の表面部11aを覆う部分にそれ以外の領域より弱い接着力を持たせるために接着剤層17より弱い接着力を有する第2接着剤層18を設けた場合も実施できる。
【0059】
このような構成とすることによっても、上記の各実施の形態の場合と同様の効果が得られる。
なお、上記の各実施の形態において、保護シールS1の有機基材16は、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリエチレンナフタレート、フッ素樹脂などを主な材料とするものであってもかまわない。特に、有機基材16の耐熱性および収縮率からポリイミドを主な材料とすることが好ましい。
【0060】
また、保護シールS1において、接着剤層17の厚みは10μm、有機基材16の厚みは50μmであることが望ましい。
なお、本発明は、図6に示すように、半導体素子12に貫通配線KH1、ボールB1が設けられたSi貫通(個片貼り)タイプの半導体装置(パッケージ)にも適用が可能である。
【0061】
このパッケージは、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域J1を有するチップサイズの半導体装置であって、保護シールS1は、透明部材11の側面部11bを覆う部分のみが接着剤層17によって接着されている。
【0062】
このようなチップサイズの半導体装置では、ガラス面の汚れが特性に及ぼす影響が非常に顕著に現れることになるが、この実施例では、チップサイズの半導体装置において、保護シールによる糊残りの発生を無くすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、半導体装置の実装時に、保護シールにより透明部材をキズやほこりから十分に保護しつつ、実装時の高温環境下でも透明部材の表面部において保護シールによる糊残りの発生をなくすことができるもので、携帯電話やデジタルカメラなどに使用され、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域を有するイメージセンサなどを用いた半導体撮像装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1の半導体装置の構造を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態2の半導体装置の構造を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態3の半導体装置の構造を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す断面図
【図5】本発明の他の実施の形態の半導体装置の構造を示す断面図
【図6】本発明のさらに他の実施の形態の半導体装置の構造を示す断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域を有する半導体素子と、
透明部材と、
前記透明部材の表面部を覆う保護シールとを備えた半導体装置であって、
前記透明部材は、前記半導体素子の上に配置され、
前記保護シールは、
前記透明部材の側面部のみに接着された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子と前記透明部材は、樹脂接着剤を介して接着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子と前記透明部材の間は中空となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子と、
前記半導体素子を収納するキャビティ内に複数の接続端子が設けられた基板と、
前記ボンディングパッドと前記接続端子を接続するワイヤーと、
前記基板に接合された透明部材と、
前記透明部材の表面部を覆う保護シールとを備え、
前記保護シールは、
前記透明部材の側面部のみに接着された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、
前記基材における前記透明部材の側面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とからなる
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部より大きい第1面形状部と、
前記第1面形状部周囲の各辺から前記透明部材の側面部さらに前記キャビティの上面に掛かるまで伸びた第2面形状部とを有する
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子と、
前記半導体素子の上面に前記素子領域を覆うように取り付けられた透明部材と、
複数の接続端子が設けられて前記半導体素子がダイボンドされた基板と、
前記ボンディングパッドと前記接続端子を接続するワイヤーと、
前記基板上で前記半導体素子と前記透明部材の側面部と前記ワイヤーを封止する封止樹脂と、
前記透明部材の表面部および前記封止樹脂の上面部を覆う保護シールとを備え、
前記保護シールは、
前記封止樹脂の上面部のみに接着された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、
前記基材における前記封止樹脂の上面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とからなる
ことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部より大きい第3面形状部と、
前記第3面形状部周囲の各辺から前記封止樹脂の上面部まで伸びた第4面形状部とを有する
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記保護シールは、
前記透明部材の1辺と平行に折り目が1本以上形成されている
ことを特徴とする請求項4から請求項9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆う領域に、それ以外の領域より弱い接着力を持たせた
ことを特徴とする請求項4から請求項10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆う領域が無色透明あるいは色つき透明である
ことを特徴とする請求項4から請求項11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
予め、受光領域または発光領域のどちらか1つを少なくとも含む素子領域と複数のボンディングパッドを有する半導体素子を用意する工程と、
前記半導体素子を収納するためのキャビティ内に複数の接続端子が設けられた基板を用意する工程と、
前記キャビティ内に前記半導体素子を収納する工程と、
前記ボンディングパッドと前記接続端子をワイヤーにより接続する工程と、
前記基板に透明部材を接合する工程と、
前記透明部材の表面部を保護するための保護シールを前記透明部材の側面部のみに接着した状態で、前記保護シールにより前記透明部材の表面部を覆う工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆うことが可能な面積の基材と、
前記基材における前記透明部材の側面部を覆う部分のみに存在する接着剤層とで形成する
ことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部より大きい第1面形状部と、
前記第1面形状部周囲の各辺から前記透明部材の側面部さらに前記キャビティの上面に掛かるまで伸びた第2面形状部とで形成する
ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記保護シールは、
前記透明部材の1辺と平行に折り目を1本以上形成する
ことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆う領域に、それ以外の領域より弱い接着力を持たせる
ことを特徴とする請求項13から請求項16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
保護シールは、
前記透明部材の表面部を覆う領域を無色透明あるいは色つき透明に形成する
ことを特徴とする請求項13から請求項17のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−260260(P2009−260260A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7114(P2009−7114)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】