説明

半導体装置とその製造方法

【課題】本発明は、熱抵抗が低く、かつ信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明にかかる半導体装置は、半導体チップと金属板の間に絶縁シートを有するモジュールと、該モジュールを冷却する冷却フィンとを有する。そして、該モジュールの該金属板と、該冷却フィンがはんだで接続され、該はんだの内部には該はんだの高さを均一化する金属網が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップおよび絶縁シートを有するモジュールと放熱用冷却フィンとを備えた半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体チップとヒートシンク部材との間に絶縁シートを用いたトランスファーモールド型のパワーモジュールが記載されている。この絶縁シートは、発熱体からの熱をヒートシンク部材へ伝えて放熱させる熱伝導材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−10897号公報
【特許文献2】特開昭62−198140号公報
【特許文献3】特開昭63−73700号公報
【特許文献4】特開2007−173825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたパワーモジュールを冷却フィンにはんだ付けする場合、モジュールと冷却フィンとの間のはんだ高さの不均一性により、組立時や動作時などにモジュール内の絶縁シートに局所的な熱の集中や機械的な応力の集中が発生し、絶縁シートが劣化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、熱抵抗が低く、かつ信頼性の高い半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明に係る半導体装置は、半導体チップと金属板の間に絶縁シートを有するモジュールと、冷却フィンを有する。そして、該モジュールの該金属板と該冷却フィンがはんだで接続され、該はんだの内部に金属網が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本願の第2の発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体チップと金属板の間に絶縁シートを形成する工程と、該半導体チップと該金属板と該絶縁シートを、該金属板の一部が露出するように樹脂で覆ってモジュールを形成する工程と、該モジュールの露出した該金属板と冷却フィンとを、内部に金属網が形成されたはんだで接続する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱抵抗が低く、かつ信頼性の高い半導体装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の正面図である。
【図2】図1の樹脂筐体の内部とはんだの内部を可視化した図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を表すフローチャートである。
【図4】パワーモジュールを示す図である。
【図5】金属網が金属板に接合された状態を示す図である。
【図6】図5の底面図である。
【図7】変形例のパワーモジュールを示す底面図である。
【図8】別の変形例の金属網と冷却フィンを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の正面図である。なお、以後の図において同一構成要素には同一の符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0011】
半導体装置10はパワーモジュール12を備えている。パワーモジュール12は、樹脂筐体13、及び樹脂筐体13から外部に伸びる電極端子14を備えている。パワーモジュール12の底面にははんだ16により冷却フィン18が接合されている。
【0012】
図2は、図1の樹脂筐体13の内部とはんだ16の内部を可視化した図である。パワーモジュール12は、樹脂筐体13の内部に基板20を備えている。基板20は熱伝導率の高い材料で形成されている。基板20の表面にははんだ22を介して半導体チップ24が接合されている。半導体チップ24は主に珪素で形成されている。半導体チップ24はワイヤ26により電極端子14と接合され、外部との接続がとられている。
【0013】
一方、基板20の裏面には絶縁シート28を介して金属板30が接合されている。絶縁シート28は、基板20と金属板30を電気的に絶縁しつつ、両者間の熱は伝導するシートである。そして、金属板30はパワーモジュール12の外部に露出している。このようにして、半導体チップ24は、はんだ22、基板20、絶縁シート28を経由して金属板30と熱接続されている。
【0014】
はんだ16の内部には金属網32が形成されている。金属網32は、はんだ16よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。この金属網32は金属板30に対してはプレス加工により接合され、冷却フィン18に対しては接している。よって、金属板30と冷却フィン18は、はんだ16により熱接続されるとともに、金属網32によっても熱接続されている。
【0015】
次に、図3乃至6を参照して本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。図3は本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を表すフローチャートである。以後、フローチャートに沿って説明していく。まず、パワーモジュールを製造する(ステップ40)。図4はステップ40で製造されたパワーモジュール12を示す図である。図4では樹脂筐体13の内部が可視化されている。パワーモジュール12は、半導体チップ24を備えている。半導体チップ24と金属板30との間には、はんだ22、基板20、及び絶縁シート28が形成されており、これらにより半導体チップ24と金属板30は熱接続されている。そして、金属板30はパワーモジュール12の外部に露出する。
【0016】
次いで、パワーモジュール12の金属板30に金属網32を接合する(ステップ42)。この接合はプレス加工により行われる。図5はステップ42により金属網32が金属板30に接合された状態を示す図である。図6は図5の底面図である。金属網32は金属板30と重なるように接合されている。
【0017】
次いで、パワーモジュール12と冷却フィン18を接合する(ステップ44)。この接合は、金属網32を覆うように形成したはんだにより、金属網32が冷却フィン18と接するように、金属板30と冷却フィン18を接合(接続)するものである。ステップ44を終えると図1及び2に示す半導体装置10が完成する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る半導体装置10によれば、金属網32が金属板30と接合し、かつ冷却フィン18と接しているため、金属網32を経由した半導体チップ24の放熱を促進することができる。つまり、金属網32によりはんだ16を経由しない新たな放熱経路が確保できるので半導体チップ24の放熱を促進できる。この新たな放熱経路は、金属網32と金属板30が接合しているため、これらが接しているに過ぎない場合と比べて熱抵抗が非常に小さい。そして、熱抵抗が低減できた分だけ冷却フィン18を小さくできるので、半導体装置を小型化することもできる。
【0019】
さらに、金属板30と冷却フィン18の間の距離を金属網32により決定できるので、パワーモジュール12と冷却フィン18との間のはんだ16の高さを放熱性と機械的強度の観点から定められる所望の値に均一化できる。そのため半導体装置の組立時や動作時などにおけるパワーモジュール12内の絶縁シート28での局所的な熱の集中や機械的な応力の集中を防止し、絶縁シート28の劣化を防ぐことで半導体装置の信頼性を高めることができる。なお、絶縁シート28の劣化の防止効果は、はんだ16の高さ均一化による効果であるので、当該防止効果を得るためには必ずしも金属網32と金属板30とをプレス加工する必要はない。
【0020】
また、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、金属網32を金属板30に接合した状態で、金属板30と冷却フィン18のはんだ付けを行う。そのため、金属板30と冷却フィン18のはんだ付けの際に金属網32の位置決めが不要となり、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0021】
本発明は様々な変形が可能である。本発明の実施の形態では、金属網32と金属板30をプレス加工により接合した。しかしながら、両者が単に接しているに過ぎない場合と比較して熱抵抗を低減でき、かつ金属網32を金属板30に対して固定できる限りこれに限定されない。例えばUS接合を用いても良い。また、本発明の絶縁シートの劣化防止効果はパワーモジュールに絶縁シートが形成されている場合に限らず、「モジュール」内に絶縁シートが形成されている場合に広く応用できる。
【0022】
金属網32は金属板30の裏面と重なるように接合したが、本発明はこれに限定されない。例えば、金属網を金属板の縁に接合しても本発明の効果を得ることができる。図7は、そのような変形例のパワーモジュールを示す底面図である。このパワーモジュールは、金属網50を金属板30の縁にのみ接合したことを特徴とする。そして、パワーモジュールが冷却フィンと接合されると、金属網50は金属板30の縁と冷却フィンの間にのみ形成されることとなる。これにより、本発明の効果を得つつ、金属網の使用量を低減できる。
【0023】
本発明の実施の形態では金属網を金属板に接合したが、本発明はこれに限定されない。金属網を冷却フィン18に対して接合し、金属板に対しては接するようにしても本発明の効果を得ることができる。図8は、そのような変形例の金属網と冷却フィンを示す正面図である。この場合、パワーモジュールと冷却フィンをはんだ付けする前に、金属網60が冷却フィン18に接合される。金属網60と冷却フィン18を接合した後、金属網60を覆うように形成したはんだにより、金属網60が金属板と接するように、金属板と冷却フィン18を接合する。
【0024】
本発明の実施の形態では半導体チップ24は主に珪素で形成されていることとしたが、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成しても良い。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドを用いることができる。ワイドバンドギャップ半導体は珪素に比べて耐熱性が高いため、冷却フィンの小型化が可能であるので、半導体装置の一層の小型化が可能である。またワイドバンドギャップ半導体は耐圧及び許容電流密度が高いため、半導体チップ24も小型化できる。
【符号の説明】
【0025】
10 半導体装置、 12 パワーモジュール、 13 樹脂筐体、 14 電極端子、 16 はんだ、 18 冷却フィン、 24 半導体チップ、 30 金属板、 32 金属網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと金属板の間に絶縁シートを有するモジュールと、
冷却フィンを有し、
前記モジュールの前記金属板と前記冷却フィンがはんだで接続され、前記はんだの内部に金属網が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属網は、前記はんだよりも熱伝導率が高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属網は、前記金属板の縁と前記冷却フィンの間にのみ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップはワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップ半導体は炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体チップと金属板の間に絶縁シートを形成する工程と、
前記半導体チップと前記金属板と前記絶縁シートを、前記金属板の一部が露出するように樹脂で覆ってモジュールを形成する工程と、
前記モジュールの露出した前記金属板と冷却フィンとを、内部に金属網が形成されたはんだで接続する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記内部に金属網が形成されたはんだは、前記金属板に前記金属網を接合した後、前記金属網を覆うように形成されることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記内部に金属網が形成されたはんだは、前記冷却フィンに前記金属網を接合した後、前記金属網を覆うように形成されることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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