説明

半導体装置の接続方法

【課題】配線テープの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮し熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を向上させ、続端子間での位置ズレを抑制して、接続部の電気的導通の信頼性を向上させる半導体装置の接続方法を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム1上に配線パターン3を備えた配線テープ4の接続端子2´と、シリコン製液晶駆動用半導体素子5の接続端子2と、及び/又は、ガラス製配線基板の接続端子と、熱圧着により接続するにあたり、接続端子の端子ピッチを累積した累積ピッチもしくは累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を、熱圧着時の実際の加熱温度かそれよりもやや低い実際の加熱温度に近い温度に上昇させて測定し、測定結果を熱圧着用加熱装置13にフィードバックし、加熱装置13により接続部材(配線テープ、半導体素子、ガラス製配線基板)の加熱温度を調整して熱圧着を行う、半導体装置の接続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を対象とした半導体装置の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、多数の液晶素子を組み込んだ液晶パネルを主要構成とする液晶ディスプレイ等の表示装置を構成するにあたっては、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えた、通常COFテープ、TCPテープと呼ばれる配線テープの前記接続端子(内部接続端子)と、シリコン製液晶駆動用半導体素子(IC、LSI)の接続端子とを、夫々熱圧着により接続(ILB)して、前記配線テープに前記半導体素子を搭載する一方、前記配線テープの前記接続端子(外部接続端子)に、前記表示装置の液晶パネルを構成するガラス基板上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えたガラス製配線基板の前記接続端子を、異方性導電膜(ACF)を介して熱圧着により接続(OLB)することが、行われている。
(COF:Chip On Filmの略。TCP:Tape Carrier Packageの略。ILB:Inner Lead Bondingの略。OLB:Outer Lead Bondingの略。ACF:Anisotropic Conducting Filmの略。)
【0003】
前記ILBにおいては、前記配線テープの前記接続端子(内部接続端子)と、前記半導体素子の前記接続端子との、夫々接続端子同士の熱圧着後の位置合わせ精度が重要であり、また、前記OLBにおいても、前記配線テープの前記接続端子(外部接続端子)と、前記ガラス製配線基板の前記接続端子との、夫々接続端子同士の熱圧着後の位置合わせ精度が重要である。これはいずれも熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度が悪いと、夫々接続すべき接続端子間で位置ズレが生じ、使用時に、その接続部において接続抵抗が上昇したり、オープン不良を起こしたり、隣接する接続端子間でショートが発生するなど、電気的導通の面で問題があり信頼性が低下するからである。
【0004】
しかるに、最近の半導体素子の高集積化に基づいて、いずれの接続端子もますます微細化、ファインピッチ化されつつある状況においては、ILB、OLB等の半導体装置の接続にあたり、夫々接続端子同士を正確に位置合わせして接続(熱圧着)することが難しく、仮にそれらを正確に位置合わせして接続することができたとしても、接続部材(前記配線テープ、前記半導体素子及び前記ガラス製配線基板)の熱膨張係数の相違により、熱圧着後の、夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確保することが困難になり、夫々接続すべき接続端子間で位置ズレが生じるという問題がある。
【0005】
このため、従来においては、前記接続部材の熱膨張係数差を考慮して、予めそれらの接続端子の端子ピッチを調整する補正を加えることにより、通常は熱膨張係数の大きい前記配線テープの接続端子の端子ピッチを、前記半導体素子及び前記ガラス製配線基板の夫々接続端子の端子ピッチよりも小さく形成することにより、熱圧着後の夫々接続すべき接続端子間で位置ズレが生じないように、対策を施している。
【0006】
しかしながら、一般に、前記配線テープを構成する前記プラスチックフィルムとしては、吸水性を有するポリイミドを原料としたポリイミドフィルムが多用されているが、特に、前記ポリイミドフィルムは、その吸水性により製造環境や保管環境における温度及び湿度により寸法形状が変化し易いことから、上記対策を施しても、前記配線テープの端子ピッチについての寸法調整が難しい上、熱圧着したときの前記配線テープの熱膨張にばらつきが生じ易いため、上記対策を施すことにより得られる効果は極めて小さく、熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確保することには限界があり、前記した位置ズレの問題を十分に解消することができないという問題がある。したがって、その位置ズレが原因で、使用時に、接続部において接続抵抗が上昇したり、オープン不良を起こしたり、隣接する接続端子間でショートが発生するなど、電気的導通の面で問題があり、信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、先行技術文献である特許文献1には、複数の接続端子を有する半導体素子を、前記半導体素子が有する複数の接続端子に対応する複数の接続端子を有する配線回路基板上に実装する方法であって、配線回路基板の温度を調節して前記基板の寸法を調整することにより、半導体素子の接続端子と配線回路基板の接続端子とを適合させる工程を有する、半導体素子の接合方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−183735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の接続方法は、要するに、配線回路基板の温度を調節して前記基板の寸法を調整することにより、半導体素子の接続端子と配線回路基板の接続端子とを適合させるというものであり、その具体的な方法としては、半導体素子が有する複数の接続端子のピッチと配線回路基板が有する複数の接続端子のピッチの差を、予め定めた温度で測定し、このピッチの差と、配線回路基板の熱膨張係数とに基づいて、半導体素子を配線回路基板に搭載する際の配線回路基板の温度を決定し、この決定に基づいて配線回路基板の温度を調整して、半導体素子の接続端子と配線回路基板の接続端子とを適合させるというものである。ここで「予め定めた温度」とは、特許文献1の記載([0015])によれば、『「予め定めた温度で」測定するとは、ピッチの差を測定する時の温度を把握し、かつ、当該温度で半導体素子および配線回路基板の寸法が変動しない程度に安定した状態で測定することを意味する。ピッチの差の測定時の温度を把握することにより、ピッチの差と配線回路基板の熱膨張係数とから、実装時の温度を定めることができる。ピッチの差を測定するときの温度は、特に限定はないが25〜30℃に定めることが好ましい。』とある。
【0010】
この記載によれば、特許文献1に記載の接続方法では、半導体素子が有する複数の接続端子のピッチと配線回路基板が有する複数の接続端子のピッチの差を測定する時の温度を把握することにより、そのピッチの差と配線回路基板の熱膨張係数とから、実装時の加熱温度を定めることができるとされ、その時の「予め定めた温度」として、実装時(熱圧着時)の加熱温度よりも相当低い温度で測定することが好ましいとされている。言い換えれば、特許文献1に記載の接続方法では、配線回路基板の熱膨張係数が加熱温度に応じて一定の値を有しており(これを前提としており)、それ故に、その「予め定めた温度」で測定した時のピッチの差と配線回路基板の熱膨張係数とから、実装時(熱圧着時)の加熱温度を定めることができるとされている。そして、このようにして定められた加熱温度で実際の熱圧着を行うことにより、半導体素子の接続端子と配線回路基板の接続端子とを適合させることができるとされている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の接続方法おいても、配線回路基板を構成するプラスチックフィルムとしてポリイミドフィルムが用いられているが、既に述べた通り、特に前記ポリイミドフィルムは、その吸水性により製造環境や保管環境における温度及び湿度により寸法形状が変化し易いことから、熱圧着したときの熱膨張にもばらつきが生じ易いという問題がある。したがって、特許文献1に記載の接続方法のように、「予め定めた温度」で測定した時のピッチの差と配線回路基板の熱膨張係数とから、実装時(熱圧着時)の加熱温度を定めたとしても、ピッチの差を測定した時の「予め定めた温度」が実装時(熱圧着時)の加熱温度よりも相当低い場合は、そのような熱膨張のばらつきの問題は解消されず、熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度が悪く、夫々接続すべき接続端子間で位置ズレが生じるという問題がある。因みに、特許文献1に記載の接続方法においてこの問題を解消するためには、特許文献1に記載の接続方法が好ましいとされる25〜30℃の温度で、半導体素子が有する複数の接続端子のピッチと配線回路基板が有する複数の接続端子のピッチの差を測定した場合は、通常200℃前後の実装時(熱圧着時)の加熱温度で再度、そのような熱膨張のばらつきによる位置ズレを解消するための温度調整を行う必要があり、効率的でない。要するに、特許文献1に記載の接続方法は、配線回路基板を構成するプラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮したものではない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、配線テープを構成するプラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮することにより熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確実に向上させることができ、これにより熱圧着後の夫々接続すべき接続端子間での位置ズレを抑制して、接続部の電気的導通の信頼性を向上させることができる半導体装置の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、プラスチックフィルム上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えた配線テープの前記接続端子と、シリコン製液晶駆動用半導体素子の接続端子とを、夫々熱圧着により接続し、及び/又は、前記配線テープの前記接続端子と、ガラス基板上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えたガラス製配線基板の前記接続端子とを、夫々熱圧着により接続するにあたり、互いに接続される夫々接続端子の端子ピッチを累積した累積ピッチもしくは前記累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を、夫々熱圧着時の実際の加熱温度かそれよりもやや低い実際の加熱温度に近い温度に上昇させて測定し、測定結果を熱圧着用加熱装置にフィードバックして、夫々接続端子の前記累積ピッチもしくは前記位置合わせ用マーク間の熱膨張によるズレを無くすべく、前記加熱装置により前記接続部材(前記配線テープ、前記半導体素子、前記ガラス製配線基板)の加熱温度を調整して熱圧着を行うことを特徴とする半導体装置の接続方法を提供する。
【0014】
この半導体装置の接続方法によれば、上記構成を採用することにより、特に、その接続にあたり、互いに接続される夫々接続端子の端子ピッチを累積した累積ピッチもしくは前記累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を、夫々熱圧着時の実際の加熱温度かそれよりもやや低い実際の加熱温度に近い温度に上昇させて測定し、測定結果を熱圧着用加熱装置にフィードバックして、夫々接続端子の前記累積ピッチもしくは前記位置合わせ用マーク間の熱膨張によるズレを無くすべく、前記加熱装置により前記接続部材(前記配線テープ、前記半導体素子、前記ガラス製配線基板)の加熱温度を調整して熱圧着を行うことにより、配線テープを構成するプラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮して、実際の加熱温度に近い温度でそのズレを調整することにより熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確実に向上させることができ、これにより熱圧着後の夫々接続すべき接続端子間での位置ズレを抑制して、接続部の電気的導通の信頼性を向上させることができる。
【0015】
請求項2の発明は、前記実際の加熱温度に近い温度が、実際の加熱温度を含むそれよりも最大50℃低い範囲の温度であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の接続方法を提供する。
【0016】
この半導体装置の接続方法によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、請求項1の発明を実施するにあたり、工業的に好ましい実施形態を提供することができる。実際の加熱温度を超える高い温度の場合は、温度を下げての加熱温度の調整が難しく、また、50℃を越える低い温度の場合は、その段階では熱膨張によるズレを解消できたとしても、実際の加熱温度では再び熱膨張のばらつきによりそのズレが顕現されるため、効率的にそのズレを解消することができず、効果的に加熱温度の調整を図ることができない。
【0017】
請求項3の発明は、前記加熱温度の調整が、前記実際の加熱温度に近い温度(標準加熱温度)に、次式で表される温度上昇(t)を前記配線テープに付加して、調整するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の接続方法を提供する。
【0018】
t=c÷(a×b)
(t:温度上昇
a:配線テープの熱膨張係数
b:配線テープの接続端子の累積ピッチ
c:配線テープの接続端子の累積ピッチと半導体素子の接続端子の累積ピッチのズレ、もしくは、配線テープの接続端子の累積ピッチとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチのズレ
ここで、累積ピッチとは、当該累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を含むものである。)
ここで、上記数式について説明すると、(加熱温度の調整前の)実際の加熱温度に近い標準加熱温度における配線テープの基準長さを配線テープの接続端子の累積ピッチ(b)とすると、(加熱温度の調整により)温度上昇(t)に応じて熱膨張により変化する配線テープの伸びは、実際の加熱温度に近い標準加熱温度における配線テープの接続端子の累積ピッチと半導体素子の接続端子の累積ピッチのズレ、もしくは、配線テープの接続端子の累積ピッチとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチのズレ(c)に相当する(ほぼ匹敵する)長さであるということができる。これを数式で表すと、c=a×b×tとなる。これから上記数式を求めることができる。なお、標準加熱温度における、配線テープの接続端子の累積ピッチと半導体素子の接続端子の累積ピッチのズレ、もしくは、配線テープの接続端子の累積ピッチとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチのズレ(c)は、可能な限り極小となるように、予め夫々の熱膨張係数差を考慮して、端子ピッチ等の寸法を調整した設計を行うことが好ましい。例えば、通常は熱膨張係数の大きい配線テープの接続端子の端子ピッチを、半導体素子及びガラス製配線基板の夫々接続端子の端子ピッチよりも小さく形成することにより、そのズレ(c)が極小となるように設計を行うことが好ましい。しかしながら、このように設計を行っても、実際には、プラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきがあるので、そのズレ(c)がゼロになることはない。したがって逆に言えば、そのズレ(c)の大部分は、プラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきによるものであるということができる。このことは、これまでの説明からも容易に理解されよう。
【0019】
この半導体装置の接続方法によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、請求項1又は2の発明を実施するにあたり、工業的に好ましい実施形態を提供することができる。
【0020】
請求項4の発明は、前記加熱装置が、接続すべき前記接続部材側に夫々配置された複数の加熱装置からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の接続方法を提供する。
【0021】
この半導体装置の接続方法によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、請求項1〜3の発明を実施するにあたり、接続すべき前記接続部材の夫々温度調節が容易で、工業的に好ましい実施形態を提供することができる。
【0022】
請求項5の発明は、前記加熱装置が、接続すべき前記接続部材を夫々熱圧着する際に固定する固定装置を兼ねたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の接続方法を提供する。
【0023】
この半導体装置の接続方法によれば、上記効果に加えて、上記構成の採用により、請求項1〜4の発明を実施するにあたり、工業的に好ましい実施形態を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の半導体装置の接続方法によれば、配線テープを構成するプラスチックフィルムの特にポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮することにより熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確実に向上させることができ、これにより熱圧着後の夫々接続すべき接続端子間での位置ズレを抑制して、接続部の電気的導通の信頼性を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る半導体装置の接続方法の概要を示す説明図である。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】同本発明の一実施の形態に係る半導体装置の接続方法のうち、OLBの接続方法を示す説明図である。
【図3】図2のOLBの接続方法において、加熱温度調整前の夫々接続端子同士の位置合わせ状態を示す説明図である。
【図4】図2のOLBの接続方法において、加熱温度調整後の夫々接続端子同士の位置合わせ状態を示す説明図である。
【図5】TCPに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態を図1〜4に基づいて説明する。
図1には、多数の液晶素子を組み込んだ液晶パネルを主要構成とする液晶ディスプレイ等の表示装置の構造の一部が示されている。
【0027】
この図1においては、ポリイミドフィルムからなるプラスチックフィルム1上に複数の接続端子2(銅により構成)を配列した配線パターン3を備えた、通常COFテープと呼ばれる配線テープ4の前記接続端子(内部接続端子)2と、シリコン製液晶駆動用半導体素子(IC、LSI)5の接続端子6とを、夫々熱圧着により接続(ILB)して、前記配線テープ4に前記半導体素子5を搭載する一方、前記配線テープ4の前記接続端子(外部接続端子)2´に、前記表示装置の液晶パネルを構成するガラス基板7上に複数の接続端子(インジウムと錫の酸化物(ITO)により構成)8を配列した配線パターン9を備えたガラス製配線基板10の前記接続端子8を、異方性導電膜(ACF)11を介して熱圧着により接続(OLB)して、ILB、OLB等の半導体装置の接続を行う。なお、COFテープの代わりに、図5のように半導体素子5を搭載するTCPテープを用いることもできる。
【0028】
ここで、OLBを対象とした本実施例においては、前記配線テープ4の前記接続端子(外部接続端子)2´に、前記表示装置の前記ガラス製配線基板10の前記接続端子8を、異方性導電膜(ACF)11を介して熱圧着により接続(OLB)するにあたり、図2に示されるように、カメラ12と熱圧着用加熱装置(ヒーター)13を用いて、互いに接続される夫々接続端子2´、8の図示しない端子ピッチを累積した累積ピッチもしくは前記累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を、夫々熱圧着時の実際の加熱温度かそれよりもやや低い実際の加熱温度に近い温度に上昇させて測定し、本実施例においてはポリイミドフィルムからなるプラスチックフィルム1や異方性導電膜(ACF)11の材質を考慮して200℃前後の温度に上昇させて測定し、測定結果を前記加熱装置13にフィードバックして、夫々接続端子2´、8の前記累積ピッチもしくは前記位置合わせ用マーク間の熱膨張によるズレを無くすべく、前記加熱装置13により前記接続部材(前記配線テープ4、前記ガラス製配線基板10)の加熱温度を調整して熱圧着を行う。前記加熱装置13は、前記接続部材側に夫々配置された複数の加熱装置からなることが好ましく、また、前記加熱装置は、前記接続部材を夫々熱圧着する際に固定する固定装置を兼ねたものであることが好ましい。
【0029】
なお、前記ズレは通常数μmから十数μmであり、前記ズレの大部分はポリイミドフィルムからなるプラスチックフィルム1の製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきによるものである。すなわち、本実施例においても、予め夫々の熱膨張係数差を考慮して、配線テープ4の接続端子2´の端子ピッチを、ガラス製配線基板10の接続端子8の端子ピッチよりも小さく形成して、そのズレが極小となるように設計を行っている。
【0030】
本実施例におけるOLBの加熱温度の調整例を説明すると、実際の加熱温度に近い温度である標準加熱温度が200℃であり、ポリイミドフィルムからなる配線テープ4の熱膨張係数(a)が10ppm/℃、前記により測定した、配線テープ4の接続端子2エの累積ピッチが40000μm、配線テープ4の接続端子2´の累積ピッチとガラス配線基板10の接続端子8の累積ピッチのズレが10μmの場合、ズレを解消するための加熱温度の調整による温度上昇(t)は、上記数式により、
t=c÷(a×b)=10×10-4cm÷(10×10-6cm×40000×10-4cm)=25℃
となり、この25℃を標準加熱温度200℃に付加し、配線テープ4の温度を少しずつ上昇させて加熱温度の調整を図ることにより、そのズレを解消して圧着により接続することが可能になる。加熱温度調整後の225℃という温度は、熱圧着温度としても充分採用可能な温度領域である。
【0031】
本実施例によれば、上記のように、配線テープ4を構成するポリイミドフィルムの製造環境や保管環境による熱膨張のばらつきを考慮して、実際の加熱温度に近い温度で熱膨張によるズレを調整することにより熱圧着後の夫々接続端子同士の位置合わせ精度を確実に向上させることができ、これにより熱圧着後の夫々接続すべき接続端子間での位置ズレを抑制して、接続部の電気的導通の信頼性を向上させることができる。また、その位置合わせ精度の確実な向上により、よりファインピッチな接続端子同士の接続が可能になる。
【0032】
本実施例はOLBを対象とするものであるが、ILBにおいても同様の接続方法により接続することができることは勿論である。
【0033】
また、OLB、ILB以外に、液晶ディスプレイ等の表示装置を構成するにあたっては、前記配線テープを用いることなく、前記ガラス製配線基板の前記接続端子に、直接、前記半導体素子の前記接続端子を、異方性導電膜(ACF)を介して熱圧着により接続する場合(COG)があるが、この場合においても同様の接続方法を適用することができる。 (COG:Chip On Glassの略。)
【0034】
すなわち、COGにおいては、実際の加熱温度に近い標準加熱温度における、加熱温度の調整は、同様のカメラと加熱装置を用いて、半導体素子の接続端子の累積ピッチもしくはこれとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチの両方を測定し、それらの累積ピッチの差(ズレ)を加熱装置にフィードバックして、そのズレを無くすべく、加熱装置により接続部材たる半導体素子及びガラス製配線基板の加熱温度を調整して熱圧着を行う。因みに、例えば、半導体素子の熱膨張係数(a)が2〜3ppm/℃、半導体素子の累積ピッチが20mm、半導体素子の接続端子の累積ピッチとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチとのズレ(c)が5μmの場合、ズレを解消するための加熱温度の調整による温度上昇(t)は、上記数式により、
t=c÷(a×b)=5×10-4cm÷(2〜3×10-6cm×20×10-4cm)=12.5〜8.3℃
となる。これによれば、OLBの配線テープを用いた場合よりも低い温度で、そのズレを解消するための加熱温度の調整を図ることができる。
【0035】
本発明は、以上の実施の形態の限定されることなく、その発明の範囲において種々の改変が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 プラスチックフィルム
2、2´、6、8 接続端子
3、9 配線パターン
4 配線テープ
5 シリコン製液晶駆動用半導体素子
7 ガラス基板
10 ガラス製配線基板
11 異方性導電膜
12 カメラ
13 熱圧着用加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えた配線テープの前記接続端子と、シリコン製液晶駆動用半導体素子の接続端子とを、夫々熱圧着により接続し、及び/又は、前記配線テープの前記接続端子と、ガラス基板上に複数の接続端子を配列した配線パターンを備えたガラス製配線基板の前記接続端子とを、夫々熱圧着により接続するにあたり、互いに接続される夫々接続端子の端子ピッチを累積した累積ピッチもしくは前記累積ピッチに相当する位置合わせ用マーク間の寸法を、夫々熱圧着時の実際の加熱温度かそれよりもやや低い実際の加熱温度に近い温度に上昇させて測定し、測定結果を熱圧着用加熱装置にフィードバックして、夫々接続端子の前記累積ピッチもしくは前記位置合わせ用マーク間の熱膨張によるズレを無くすべく、前記加熱装置により前記接続部材(前記配線テープ、前記半導体素子、前記ガラス製配線基板)の加熱温度を調整して熱圧着を行うことを特徴とする半導体装置の接続方法。
【請求項2】
前記実際の加熱温度に近い温度が、実際の加熱温度を含むそれよりも最大50℃低い範囲の温度であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の接続方法。
【請求項3】
前記加熱温度の調整が、前記実際の加熱温度に近い温度(標準加熱温度)に、次式で表される温度上昇(t)を前記配線テープに付加して、調整するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の接続方法。
t=c÷(a×b)
(t:温度上昇
a:配線テープの熱膨張係数
b:半導体素子の接続端子の累積ピッチ、もしくは、ガラス配線基板の接続端子の累積ピッチ
c:配線テープの接続端子の累積ピッチと半導体素子の接続端子の累積ピッチのズレ、もしくは、配線テープの接続端子の累積ピッチとガラス配線基板の接続端子の累積ピッチのズレ
ここで、前記各累積ピッチとは、前記各累積ピッチに相当する夫々位置合わせ用マーク間の寸法を含むものである。)
【請求項4】
前記加熱装置が、前記により接続すべき前記接続部材側に夫々配置された複数の加熱装置からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の接続方法。
【請求項5】
前記加熱装置が、前記接続部材を夫々熱圧着する際に固定する固定装置を兼ねたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−61079(P2011−61079A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210675(P2009−210675)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508196494)日立電線フィルムデバイス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】