半導体装置の製造方法
【課題】
金バンプを備えたLED素子を粘着シート上に配列させ、この粘着シートを集合基板に重ね、LED素子群を同時にフリップチップ実装する際、加圧加熱ヘッドを使うと接続状態が安定しなかった。
【解決手段】
金バンプ34,35を備えたLED素子13を粘着シート81上に配列させる(a)。この粘着シート81を集合基板84に重ねる(c)。この集合基板84を上板87と下板88を備える加圧治具89に収納する(d)。この加圧治具89をベルト炉95で加熱する。すなわち加圧治具89ごと集合基板84やLED素子13を加熱すると接合部の温度が安定し接続状態が改善する。
金バンプを備えたLED素子を粘着シート上に配列させ、この粘着シートを集合基板に重ね、LED素子群を同時にフリップチップ実装する際、加圧加熱ヘッドを使うと接続状態が安定しなかった。
【解決手段】
金バンプ34,35を備えたLED素子13を粘着シート81上に配列させる(a)。この粘着シート81を集合基板84に重ねる(c)。この集合基板84を上板87と下板88を備える加圧治具89に収納する(d)。この加圧治具89をベルト炉95で加熱する。すなわち加圧治具89ごと集合基板84やLED素子13を加熱すると接合部の温度が安定し接続状態が改善する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート上に半導体素子を配列し、その半導体素子を個別の基板領域が多数個分含まれる集合基板にフリップチップ実装する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハーから切り出された状態の半導体素子は、ふつうリードフレームや小型の回路基板に実装し、さらに樹脂をモールドして部品化する(以下、部品化したものを半導体装置と呼ぶ)。部品化により信頼性が保たれ取り扱い易くされた半導体装置は、様々な電子部品が実装されるマザー基板にとり付けられる。
【0003】
また、このような半導体装置の製造方法としては、生産効率を上げるためしばしば一括実装方式が採用される。一括実装方式では、個別の回路基板領域を多数個分含む集合基板(樹脂やセラミック基板、リードフレームなど)に複数の半導体素子を実装し、樹脂モールドなどの追加工を行なってから、最後に集合基板を分割し個別の半導体装置を得ている。
【0004】
一括実装方式には様々のやり方があり、これらのなかに粘着シートを使う方法がある。これは、粘着シート上に半導体素子を配列し、この粘着シートを裏返して集合基板に重ね、半導体素子を集合基板上に再配置して実装する方法である。例えば特許文献1の3頁左上欄6〜11行には「すなわち半導体ウェハーをスクライブし半導体ペレット(半導体素子)に分割し、次いで粘着シートへの転写をくり返して縦、横所定の間隔になるように半導体ペレット相互を整列することによつて、一基板(集合基板)に所定の間隔で設けた複数個のマウント固定部(回路基板領域)に同時に多数のペレットをマウント(実装)できるものである。」と記載されている{()は用語の対比関係を明確にするため挿入した}。
【0005】
特許文献1の実施例では、半導体素子の電極と集合基板の電極とをワイアーボンディングで接続することが例示されている(3頁右下欄12〜14行)。これに対し放熱性の向上や実装コスト低減のため、集合基板の電極と半導体素子の電極とを向かいあわせ直接的に接続するフリプチップ実装を採用することがある。粘着シートを使い、且つフリップチップ実装を採用した一括実装方式としては、例えば特許文献2がある。特許文献2の段落(0015)〜(0018)及び図1には、バンプ3aを上向きにしてLED素子3を粘着シート21上に貼り付け、次にバンプ3aにペースト半田27を付着させ、最後にLED素子3と集合基板11の接続電極とを接触させ、このままリフローさせてLED素子をボンディングする方法が記載されている。
【0006】
一般に半導体素子は、素子毎に厚みがばらついており、さらに粘着シートに付着したりすれば完全に水平な状態を維持できることはない。粘着シートを集合基板に重ねたまま集合基板を加熱する特許文献2の接合方法は、ペースト半田27の溶融時に働く表面張力で厚みのばらつきや素子の傾きを吸収しているものと考えられる。しかしながら確実に厚さのばらつきや素子の傾きを補償するには、半導体素子を加圧しながら加熱して接合させることが好ましい。例えば、特許文献3の請求項1には、テープにマウントされたICチップ(半導体素子)を一個づつベース(集合基板)にフリップチップ状態で仮固定し、一括して加熱及び加圧を行なう方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−52143号公報 (3頁左上欄6〜11行)
【特許文献2】特開2003−243720号公報 (段落(0015)〜(0018)、図1)
【特許文献3】特開2007−27549号公報 (請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本願発明者は、金バンプを備えたLED素子を粘着シート上に配列し、この粘着シートを集合基板に重ね、粘着シートの上からヘッドでLED素子を加圧しながら集合基板を加熱してLED素子のフリップチップ実装を試みた。ところがこのやり方では接続強度が一枚の集合基板におけるLED素子同士間でさえ一定にならなかった。このさい半導体素子毎に高さや傾きがばらつくことに対応するため、接合部を溶融させた後も加圧したまま集合基板を保持し接合部の温度を降下させた。このような機能を備える製造装置は、短時間でヘッド及び台を加熱及び冷却できるようになっているが、構造や制御機能が複雑になり高価になるという課題がある。さらにパルス状の加熱冷却では、半導体素子と粘着シートとが積層した複合系の集合基板に対し接合部の温度管理が難しくなり接続が安定しにくいという課題がある。
【0009】
そこで本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、粘着シートを使う一括実装方式において、簡単な製造装置でありながら半導体素子を集合基板に安定してフリップチップ実装できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以記目的を達成するため本発明の半導体装置の製造方法は、複数の半導体素子をフリップチップ実装した集合基板を個別の基板領域に分割して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法において、前記複数の半導体素子が前記集合基板上の前記個別の基板領域に対応する配置となるように前記半導体素子を粘着シート上に付着し、前記半導体素子の電極と前記集合基板の電極とが向かいあうようにして前記粘着シートを前記集合基板に重ね、上板と下板とを備える加圧治具に該集合基板を収納する収納工程と、該加圧治具の上板と下板で該集合基板を加圧しながら該加圧治具を加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
前記半導体素子がLED素子であっても良い。
【0012】
前記半導体素子が電解メッキ法により形成された金バンプを備え、前記加熱工程において金錫共晶結合により前記半導体素子と前記集合基板の電極とが接合することが好ましい。
【0013】
前記加熱工程において前記加圧治具が加熱装置内を移動しながら加熱されることが好ましい。
【0014】
前記収納工程において前記上板または前記下板と前記集合基板との間に緩衝シートを備えても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の製造方法は、粘着シートを積層した集合基板を加圧治具に挟み込み、加圧治具を加熱するだけである。すなわち加圧治具と加熱装置とが分離しているため製造装置全体としては著しく簡単なものとなる。さらに加圧治具ごと粘着シートを積層した集合基板を加熱するので接合部の温度がゆっくり上昇し、同様に加熱を止めると接合部の温度がゆっくり下降するので、接合部の温度管理が容易になり接続(フリップチップ実
装)が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の製造方法で得られるLED装置の斜視図。
【図2】図1のLED装置の分解斜視図。
【図3】図2で示したLED素子をバンプ面から見た平面図。
【図4】図2で示したLED素子と回路基板の接合前の断面図。
【図5】図2で示したLED素子と回路基板の接合後の断面図。
【図6】図4のBで囲んだ領域の拡大図。
【図7】図5のCで囲んだ領域の拡大図。
【図8】第1実施形態の収納工程の説明図。
【図9】第1実施形態で使用する集合基板の一部分を示す平面図。
【図10】第1実施形態で使用する加圧治具の分解斜視図。
【図11】第1実施形態の加熱工程の説明図。
【図12】第2実施形態の収納工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
以下、添付図面1〜11を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。
【0019】
先ず図1〜7によりLED装置(半導体装置)と回路基板(基板領域)及びこれらの接合について説明する。
【0020】
図1により本実施形態の製造方法で得られるLED装置の外観を説明する。図1はこのLED装置の斜視図である。LED装置10は回路基板12の上に蛍光体を含有した樹脂層11が積層している。
【0021】
図2により図1のLED装置10に実装されるLED素子(半導体素子)の実装状況を概説する。図2は図1のLED装置10から樹脂層11を取り去った状態のLED装置20の分解斜視図である。回路基板12の板材16上には+電極15と−電極14が形成されている。さらにその上にLED素子13がフリップチップ実装されている。このLED素子13のp電極(図示せず)とn電極(図示せず)はそれぞれ回路基板12の+電極15と−電極14に接続している。
【0022】
図3によりLED素子13の電極面を説明する。図3はLED素子13を電極面側から眺めた平面図である。サファイア基板31の内側には半導体層36があり、半導体層36にはp型半導体領域32とn型半導体領域33がある。p型半導体層領域32の内側にはバンプ34があり、同様にn型半導体層領域33の内側にはバンプ35がある。バンプ34とバンプ35はそれぞれLED素子13のp電極とn電極に相当する。
【0023】
図4によりLED素子13と回路基板12の断面を説明する。図4は、図2及び図3のA−A線に沿う接合前の断面図である。なお本実施形態の製造方法は複数のLED素子13を集合基板にフリップチップ実装するものであるから、個別のLED素子13を個別の回路基板12に実装することはない。あくまでも図4は説明のため便宜的に個別のLED素子13と回路基板12を近接させたものである。またLED素子13のバンプ35と回路基板12のスルーホール電極14a,15a(図4で説明する)を同時に図示するため、図2及び図3においてA−A線を屈曲させた。
【0024】
まずLED素子13側から説明する。サファイア基板31の下面に形成された半導体層36にバンプ34,35が付着している。サファイア基板31は厚さが100〜150μm、半導体層36は厚さが5μm程度、バンプ34,35は厚さが10〜15μmである。半導体層36はn型半導体層(図示せず)とp型半導体層(図示せず)とが積層したものである。図2のp型半導領域32は半導体領域36の凸部に相当し、n型半導体領域33は半導体層36の段差部に相当する。段差部は段差が1μm程度であり、p型半導体層の一部を削ってn型半導体層を露出させている。また発光層(図示せず)は、n型半導体層とp型半導体層の境界部にあり、平面的には概ねp型半導体領域32に等しい。
【0025】
次に回路基板12側を説明する。板材16の上面に+電極15と−電極14、下面にはマザー基板の電極と接続するための出力電極15b,14bが形成されている。+電極15と出力電極15b,−電極14と出力電極14bはそれぞれスルーホール電極15a,14aで接続している。板材16は厚さが300μmでBTレジン(三菱瓦斯化学の商標名であり、ビスマレイミドトリアジン樹脂等からなる熱硬化性樹脂)からなる。+及び−電極15,14と出力電極15b,14bは銅上にニッケルを積層した銅箔である。スルーホール電極15a,14aは直径が200μmで銅が充填されている。
【0026】
図5は、図2及び図3のA−A線に沿うLED装置20の接合後の断面図である。図4では段差に対応してバンプ34とバンプ35の底面の位置が1μm程度違っていた。しかしながら接合工程において加圧しながら加熱するため、図4のように接合後はそれぞれバンプ34,35の底面の高さが揃う。
【0027】
図6によりバンプ34に係わる金属膜の積層構造を説明する。図6は図4のBで囲んだ領域の拡大図である。半導体層36は、GaN層61、反射膜として機能する銀層(以下Ag層と呼ぶ)62、金層(以下Au層と呼ぶ)63、保護膜64を含んでいる。Au層63を被覆する保護膜64は一部が開口し、この開口部(周辺を含む)にバンプ34が付着している。バンプ34は、半導体素子36側から下に向かって、UBM(アンダーバンプメタル)層65、金バンプ部66、錫層(以下Sn層と呼ぶ)67、Au層68が積層している。UBM層65は、半導体層36側から厚さが200nmのTiW層と厚さが100nmのAu層が積層した2層構造をなしており、金バンプ部66、Sn層67、Au層68を電解メッキ法で形成するためウェハー全面に形成されていた共通電極が残った部分である。金バンプ部66は厚さが10μm程度の厚膜であるのに対し、Sn層67は厚さが1〜2μm、Au層68は厚さが0.5〜1μmの薄膜である。+電極15は、Au層71側にNi層を備えた厚さが10〜20μmの銅箔72と、厚さが50nm程度のAu層71とからなっている。
【0028】
図7で共晶接合を説明する。図7は図5のCで囲んだ領域の拡大図である。バンプ34と電極15とを接触させ、加熱するとSn層67が約230℃で融解し始め、更に50℃程度温度を上昇させるとSn層67に金バンプ部66の底面及びAu層68,71から金が溶け出す。加熱を止めるとSn層67及び金バンプ部66の一部とAu層68,71は融点が300℃〜420℃のAu−Sn共晶部73となる。このように共晶接合は、250℃前後のリフロー温度では融解しないのでLED装置10をマザー基板に実装するさい有効である。
【0029】
以上、本実施形態で製造するLED装置10と、その接合について説明してきた。ひき続き、図8〜図11により本実施形態の製造方法に係わる事項を説明する。
【0030】
図8により本実施形態の収納工程を説明する。図8は収納工程の説明図であり、(a)〜(d)の4段階で示した。
【0031】
(a)集合基板の電極(図示せず)と同じピッチでLED素子13を粘着シート81上に配列する。まずピックアップ装置(図示せず)の真空吸着ノズル83が容器(図示せず)に移動し、そこからLED素子13を一個取り上げる。次に真空吸着ノズル83は粘着シート81の所定位置に移動し、LED素子を粘着シートに付着する。このときLED素子13の電極面(バンプ34,35)は図の上側を向き、サファイア基板31が粘着シート81に付着する。この作業を繰り返すことによりLED素子13が粘着シート81上に配列する。なお粘着シート81は台(図示せず)の上で広げた状態で固定されており、周辺部には枠82が備えられている。
【0032】
(b)次に粘着シート81を裏返し集合基板84に貼りつける。まず粘着シート81を裏返し、断面が円の支柱85に取り付けられた支持部85aに枠82を乗せる。次に可動台86上に搭載された集合基板84と、粘着シート81に付着したLED素子13との位置あわせを行なう。最後に可動台86を上昇させ集合基板84の周辺部で粘着シート81と集合基板84とを接着する。
【0033】
(c)接着後、粘着シート81のうち集合基板84の周辺からはみ出した部分を除去し、可動台から集合基板を取り外す。
【0034】
(d)粘着シート81が接着した集合基板84を、金属製の上板87と下板88からなる加圧治具89に挟み込む。このとき上板87は、自重で粘着シート81が接着した集合基板84を加圧する。
【0035】
図9と図10により、図8にあった集合基板と加圧治具について説明する。図9は集合基板84の部分拡大図である。集合基板84は点線で示した切断線91により個々の回路基板12(個別の基板領域)が区分けされる。各回路基板12に相当する領域には+電極15と−電極14が形成されている。同様に各領域には出力電極15b,14b(図示せず)とスルーホール電極15a,14a(図示せず)も形成されている。なお−電極14の凸部にバンプ35が接合する。また+電極15の上側中央部にバンプ34が接続する。
【0036】
図10は加圧治具89の分解斜視図である。上板87は底面に凹部(図示せず)があり、左右の辺に位置出し用のピン87a(1本のみ図示)を備えている。下板88は上面にも凹部88bがあり、左右の辺に位置出し用の穴88aを備えている。図8(d)で示したように粘着シート81が接着した集合基板84は、上板87の凹部と下板88の凹部88bで形成される空間に収納される。ここで上板87は、中央部の厚さが約1cm、重量が約1kgである。この上板87の重量で加圧させるため、集合基板84、LED素子13、粘着シート81とを積層した被加圧体の厚み(約600μm)に対し収納用の室内の高さは200μm程度小さくしている。
【0037】
最後に図11により加熱工程を説明する。図11は加熱工程の説明図である。粘着シート81が接着した集合基板84を収納した加圧治具89は、ベルトコンベア96に搭載され、赤外線ヒーター(図示せず)を有するベルト炉95に搬入され加熱される。ベルト炉内の温度を350℃程度に設定し、接合部の温度が30秒程度の間280℃以上になるようにベルトコンベア96の移動速度を調整する。ここで一枚の集合基板84には500個ほどのLED素子13が実装されているので、加圧治具89は1個のLED素子13あたり1〜3gw程度加圧している。最後に加圧治具89がベルト炉95から出てきて加熱工程が終了する。加圧治具89の温度が下がるとLED素子13の電極と回路基板12の電極とが電気的にも機械的にも接合する。
【0038】
接合が完了したら加圧治具から集合基板84を取り出し粘着テープ81を除去する。こ
の集合基板84上に金型を使って蛍光体を含有する樹脂を積層し、最後に集合基板84をダイシングして個別のLED素子10を得る。
【0039】
なお加圧ヘッドを使って接合部の温度を280℃にする場合、実用的な条件としては回路基板に接するヘッド(又は台)を400℃程度まで上昇させる必要がある。これに対しベルト炉95は、加熱工程における最高温度を50℃程度下げられ、さらに特別な冷却機構も持っていない。
【0040】
本実施形態ではピックアップ装置を使い粘着シート81上にLED素子13を一個ずつ配置し整列させていた。本発明はこの整列方法に限られるものはなく、例えば、集合基板の電極ピッチで開口部を有する金属枠にLED素子を装填し一気に複数のLED素子を粘着シートに付着する方法や、台の上に仮配列させた複数のLED素子をナイフ状の板を使って集合基板の電極ピッチに合うようにx及びy方向を調整し一気に複数のLED素子を粘着シートに付着する方法などであっても良い。
【0041】
本実施形態における半導体素子はLED素子13であった。半導体素子としては、他にトランジスターやICなどがあり、本実施形態と同様な方法で回路基板上に半導体素子を備える半導体装置を得ることができる。本実施形態ではLED装置10が熱伝導率の小さいサファイア基板31を備え、さらに接合部がサファイア基板31と樹脂からなる回路基板12に挟まれている。このように半導体素子の中で接合部の周りに熱伝導性の悪い部材があるLED素子では、本実施形態のように全体的に比較的ゆっくりと加熱及び冷却がなされると、接合部の温度が安定し、その結果として良好な接合品質が得られるという本発明の効果が大きく現れる。
【0042】
本実施形態における半導体素子(LED素子13)は金バンプを備えていた。しかしながら本発明の製造方法においてバンプの主たる材料は金に限定されない。例えば、バンプ全体を半田で形成しても良いし、銅やアルミニウムからなるバンプの接合部に半田など比較的低温で融解する金属(または合金)をコートしたものでも良い。このような材料を使うと加熱時に接合部が溶融し冷却により電極同士が接合するので、本発明の一括実装方式では簡単な製造装置でありながら緩やかな温度の上昇と降下により安定した接合品質が達成される。
【0043】
このなかでとくに電解メッキ法で形成する金バンプは、その形成過程においてホトリソグラフィ法を使うので、バンプの平面形状を比較的任意に設定できる。本実施形態では発熱量の多い領域(発光層)に接するバンプ34の面積を大きくし、熱を回路基板12側に効率よく伝えられるようにしていた。このように目的に応じてバンプが様々な平面形状とっても、加熱及び冷却時に接合部の温度が管理し易いと共晶接合の品質が安定化し、さらに放熱特性の改善などの目的達成と同時に前述の金バンプによる金錫共晶接合のメリットも享受できる。
【0044】
本実施形態の加熱工程では加熱装置としてベルト炉95を使用していた。しかしながら本発明の加熱工程で使用する加熱装置はベルト炉に限定されない。本発明の加熱工程では、半導体素子と粘着シートが積層した集合基板を加圧治具ごと加熱できればよい。たとえば集合基板を収納した加圧治具が一定の数量に達したら、これらをまとめて熱風オーブンで加熱し、ひきつづき加圧治具を熱風オーブンから引き出し冷却しても良い。いろいろな加熱装置があるなかで、とくに本実施形態ので用いたベルト炉95のように加圧治具89が加熱装置内を移動しながら加熱される方式は、連続的な製造が可能となるから製造ラインの自動化に適している。
(第2実施形態)
【0045】
以下、添付図面12を参照しながら、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、LED素子13、粘着シート81、集合基板84は第1実施形態と同一であり、粘着シート81が接着した集合基板84を製作する工程も第1実施形態(図8(a)から(c))と同一なので重複する説明は省略する。
【0046】
図12により本実施形態の収納工程を説明する。図12は加圧治具99に集合基板84を収納した状態の説明図であり、図8(d)に対応する。図12において、粘着シート81が接着した集合基板84の上部を緩衝材としてテフロン(登録商標)からなる緩衝シート100が覆っており、これらを金属製の上板97と下板98からなる加圧治具99に挟み込んでいる。この状態で上板97が自重で、粘着シート81が接着した集合基板84を加圧している。なお加圧が不足する場合は上板97上に重りを乗せてもよい。
【0047】
粘着シート81に付着したLED素子13は、素子毎にサファイア基板31の厚さや他の部材の高さ(厚さ)が一定であるとは限らない。このばらつきの一部分はバンプ34,35が溶融して変形することで吸収できるが、さらに第1実施形態では粘着シート81の弾性もこれらのばらつきの影響を緩和(緩衝)している。粘着シート81だけでは緩衝作用が不足する場合、第2実施形態のように緩衝シート100を追加すれば接合が安定化する。また集合基板84の下に緩衝シートを挿入しても良く、この場合は主に集合基板84や下板98の非平坦性の影響を吸収する。同様に集合基板84の上下に緩衝シートを挿入しても良い。
【符号の説明】
【0048】
10,20…LED装置、11…樹脂層、12…回路基板(個別の基板領域)、13…LED素子(半導体素子)、14…−電極、14a,15a…スルーホール電極、14b,15b…出力電極、15…+電極、16…板材、31…サファイア基板、32…p型半導体領域、33…n型半導体領域、34,35…バンプ、36…半導体層、61…GaN層、62…Ag層、63,68,71…Au層、64…保護膜、65…UBM(アンダーバンプメタル)層、66…金バンプ部、67…Sn層、72…銅箔、73…Au−Sn共晶部、81…粘着シート、82…枠、83…真空吸着ノズル、84…集合基板、85…支柱、85a…支持部、86…可動台、87,97…上板、87a…ピン、88,98…下板、88a…穴、88b…凹部、89,99…加圧治具、91…切断線、95…ベルト炉(加熱装置)、96…ベルトコンベア、100…緩衝シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート上に半導体素子を配列し、その半導体素子を個別の基板領域が多数個分含まれる集合基板にフリップチップ実装する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハーから切り出された状態の半導体素子は、ふつうリードフレームや小型の回路基板に実装し、さらに樹脂をモールドして部品化する(以下、部品化したものを半導体装置と呼ぶ)。部品化により信頼性が保たれ取り扱い易くされた半導体装置は、様々な電子部品が実装されるマザー基板にとり付けられる。
【0003】
また、このような半導体装置の製造方法としては、生産効率を上げるためしばしば一括実装方式が採用される。一括実装方式では、個別の回路基板領域を多数個分含む集合基板(樹脂やセラミック基板、リードフレームなど)に複数の半導体素子を実装し、樹脂モールドなどの追加工を行なってから、最後に集合基板を分割し個別の半導体装置を得ている。
【0004】
一括実装方式には様々のやり方があり、これらのなかに粘着シートを使う方法がある。これは、粘着シート上に半導体素子を配列し、この粘着シートを裏返して集合基板に重ね、半導体素子を集合基板上に再配置して実装する方法である。例えば特許文献1の3頁左上欄6〜11行には「すなわち半導体ウェハーをスクライブし半導体ペレット(半導体素子)に分割し、次いで粘着シートへの転写をくり返して縦、横所定の間隔になるように半導体ペレット相互を整列することによつて、一基板(集合基板)に所定の間隔で設けた複数個のマウント固定部(回路基板領域)に同時に多数のペレットをマウント(実装)できるものである。」と記載されている{()は用語の対比関係を明確にするため挿入した}。
【0005】
特許文献1の実施例では、半導体素子の電極と集合基板の電極とをワイアーボンディングで接続することが例示されている(3頁右下欄12〜14行)。これに対し放熱性の向上や実装コスト低減のため、集合基板の電極と半導体素子の電極とを向かいあわせ直接的に接続するフリプチップ実装を採用することがある。粘着シートを使い、且つフリップチップ実装を採用した一括実装方式としては、例えば特許文献2がある。特許文献2の段落(0015)〜(0018)及び図1には、バンプ3aを上向きにしてLED素子3を粘着シート21上に貼り付け、次にバンプ3aにペースト半田27を付着させ、最後にLED素子3と集合基板11の接続電極とを接触させ、このままリフローさせてLED素子をボンディングする方法が記載されている。
【0006】
一般に半導体素子は、素子毎に厚みがばらついており、さらに粘着シートに付着したりすれば完全に水平な状態を維持できることはない。粘着シートを集合基板に重ねたまま集合基板を加熱する特許文献2の接合方法は、ペースト半田27の溶融時に働く表面張力で厚みのばらつきや素子の傾きを吸収しているものと考えられる。しかしながら確実に厚さのばらつきや素子の傾きを補償するには、半導体素子を加圧しながら加熱して接合させることが好ましい。例えば、特許文献3の請求項1には、テープにマウントされたICチップ(半導体素子)を一個づつベース(集合基板)にフリップチップ状態で仮固定し、一括して加熱及び加圧を行なう方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−52143号公報 (3頁左上欄6〜11行)
【特許文献2】特開2003−243720号公報 (段落(0015)〜(0018)、図1)
【特許文献3】特開2007−27549号公報 (請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本願発明者は、金バンプを備えたLED素子を粘着シート上に配列し、この粘着シートを集合基板に重ね、粘着シートの上からヘッドでLED素子を加圧しながら集合基板を加熱してLED素子のフリップチップ実装を試みた。ところがこのやり方では接続強度が一枚の集合基板におけるLED素子同士間でさえ一定にならなかった。このさい半導体素子毎に高さや傾きがばらつくことに対応するため、接合部を溶融させた後も加圧したまま集合基板を保持し接合部の温度を降下させた。このような機能を備える製造装置は、短時間でヘッド及び台を加熱及び冷却できるようになっているが、構造や制御機能が複雑になり高価になるという課題がある。さらにパルス状の加熱冷却では、半導体素子と粘着シートとが積層した複合系の集合基板に対し接合部の温度管理が難しくなり接続が安定しにくいという課題がある。
【0009】
そこで本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、粘着シートを使う一括実装方式において、簡単な製造装置でありながら半導体素子を集合基板に安定してフリップチップ実装できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以記目的を達成するため本発明の半導体装置の製造方法は、複数の半導体素子をフリップチップ実装した集合基板を個別の基板領域に分割して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法において、前記複数の半導体素子が前記集合基板上の前記個別の基板領域に対応する配置となるように前記半導体素子を粘着シート上に付着し、前記半導体素子の電極と前記集合基板の電極とが向かいあうようにして前記粘着シートを前記集合基板に重ね、上板と下板とを備える加圧治具に該集合基板を収納する収納工程と、該加圧治具の上板と下板で該集合基板を加圧しながら該加圧治具を加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
前記半導体素子がLED素子であっても良い。
【0012】
前記半導体素子が電解メッキ法により形成された金バンプを備え、前記加熱工程において金錫共晶結合により前記半導体素子と前記集合基板の電極とが接合することが好ましい。
【0013】
前記加熱工程において前記加圧治具が加熱装置内を移動しながら加熱されることが好ましい。
【0014】
前記収納工程において前記上板または前記下板と前記集合基板との間に緩衝シートを備えても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の製造方法は、粘着シートを積層した集合基板を加圧治具に挟み込み、加圧治具を加熱するだけである。すなわち加圧治具と加熱装置とが分離しているため製造装置全体としては著しく簡単なものとなる。さらに加圧治具ごと粘着シートを積層した集合基板を加熱するので接合部の温度がゆっくり上昇し、同様に加熱を止めると接合部の温度がゆっくり下降するので、接合部の温度管理が容易になり接続(フリップチップ実
装)が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の製造方法で得られるLED装置の斜視図。
【図2】図1のLED装置の分解斜視図。
【図3】図2で示したLED素子をバンプ面から見た平面図。
【図4】図2で示したLED素子と回路基板の接合前の断面図。
【図5】図2で示したLED素子と回路基板の接合後の断面図。
【図6】図4のBで囲んだ領域の拡大図。
【図7】図5のCで囲んだ領域の拡大図。
【図8】第1実施形態の収納工程の説明図。
【図9】第1実施形態で使用する集合基板の一部分を示す平面図。
【図10】第1実施形態で使用する加圧治具の分解斜視図。
【図11】第1実施形態の加熱工程の説明図。
【図12】第2実施形態の収納工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
以下、添付図面1〜11を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。
【0019】
先ず図1〜7によりLED装置(半導体装置)と回路基板(基板領域)及びこれらの接合について説明する。
【0020】
図1により本実施形態の製造方法で得られるLED装置の外観を説明する。図1はこのLED装置の斜視図である。LED装置10は回路基板12の上に蛍光体を含有した樹脂層11が積層している。
【0021】
図2により図1のLED装置10に実装されるLED素子(半導体素子)の実装状況を概説する。図2は図1のLED装置10から樹脂層11を取り去った状態のLED装置20の分解斜視図である。回路基板12の板材16上には+電極15と−電極14が形成されている。さらにその上にLED素子13がフリップチップ実装されている。このLED素子13のp電極(図示せず)とn電極(図示せず)はそれぞれ回路基板12の+電極15と−電極14に接続している。
【0022】
図3によりLED素子13の電極面を説明する。図3はLED素子13を電極面側から眺めた平面図である。サファイア基板31の内側には半導体層36があり、半導体層36にはp型半導体領域32とn型半導体領域33がある。p型半導体層領域32の内側にはバンプ34があり、同様にn型半導体層領域33の内側にはバンプ35がある。バンプ34とバンプ35はそれぞれLED素子13のp電極とn電極に相当する。
【0023】
図4によりLED素子13と回路基板12の断面を説明する。図4は、図2及び図3のA−A線に沿う接合前の断面図である。なお本実施形態の製造方法は複数のLED素子13を集合基板にフリップチップ実装するものであるから、個別のLED素子13を個別の回路基板12に実装することはない。あくまでも図4は説明のため便宜的に個別のLED素子13と回路基板12を近接させたものである。またLED素子13のバンプ35と回路基板12のスルーホール電極14a,15a(図4で説明する)を同時に図示するため、図2及び図3においてA−A線を屈曲させた。
【0024】
まずLED素子13側から説明する。サファイア基板31の下面に形成された半導体層36にバンプ34,35が付着している。サファイア基板31は厚さが100〜150μm、半導体層36は厚さが5μm程度、バンプ34,35は厚さが10〜15μmである。半導体層36はn型半導体層(図示せず)とp型半導体層(図示せず)とが積層したものである。図2のp型半導領域32は半導体領域36の凸部に相当し、n型半導体領域33は半導体層36の段差部に相当する。段差部は段差が1μm程度であり、p型半導体層の一部を削ってn型半導体層を露出させている。また発光層(図示せず)は、n型半導体層とp型半導体層の境界部にあり、平面的には概ねp型半導体領域32に等しい。
【0025】
次に回路基板12側を説明する。板材16の上面に+電極15と−電極14、下面にはマザー基板の電極と接続するための出力電極15b,14bが形成されている。+電極15と出力電極15b,−電極14と出力電極14bはそれぞれスルーホール電極15a,14aで接続している。板材16は厚さが300μmでBTレジン(三菱瓦斯化学の商標名であり、ビスマレイミドトリアジン樹脂等からなる熱硬化性樹脂)からなる。+及び−電極15,14と出力電極15b,14bは銅上にニッケルを積層した銅箔である。スルーホール電極15a,14aは直径が200μmで銅が充填されている。
【0026】
図5は、図2及び図3のA−A線に沿うLED装置20の接合後の断面図である。図4では段差に対応してバンプ34とバンプ35の底面の位置が1μm程度違っていた。しかしながら接合工程において加圧しながら加熱するため、図4のように接合後はそれぞれバンプ34,35の底面の高さが揃う。
【0027】
図6によりバンプ34に係わる金属膜の積層構造を説明する。図6は図4のBで囲んだ領域の拡大図である。半導体層36は、GaN層61、反射膜として機能する銀層(以下Ag層と呼ぶ)62、金層(以下Au層と呼ぶ)63、保護膜64を含んでいる。Au層63を被覆する保護膜64は一部が開口し、この開口部(周辺を含む)にバンプ34が付着している。バンプ34は、半導体素子36側から下に向かって、UBM(アンダーバンプメタル)層65、金バンプ部66、錫層(以下Sn層と呼ぶ)67、Au層68が積層している。UBM層65は、半導体層36側から厚さが200nmのTiW層と厚さが100nmのAu層が積層した2層構造をなしており、金バンプ部66、Sn層67、Au層68を電解メッキ法で形成するためウェハー全面に形成されていた共通電極が残った部分である。金バンプ部66は厚さが10μm程度の厚膜であるのに対し、Sn層67は厚さが1〜2μm、Au層68は厚さが0.5〜1μmの薄膜である。+電極15は、Au層71側にNi層を備えた厚さが10〜20μmの銅箔72と、厚さが50nm程度のAu層71とからなっている。
【0028】
図7で共晶接合を説明する。図7は図5のCで囲んだ領域の拡大図である。バンプ34と電極15とを接触させ、加熱するとSn層67が約230℃で融解し始め、更に50℃程度温度を上昇させるとSn層67に金バンプ部66の底面及びAu層68,71から金が溶け出す。加熱を止めるとSn層67及び金バンプ部66の一部とAu層68,71は融点が300℃〜420℃のAu−Sn共晶部73となる。このように共晶接合は、250℃前後のリフロー温度では融解しないのでLED装置10をマザー基板に実装するさい有効である。
【0029】
以上、本実施形態で製造するLED装置10と、その接合について説明してきた。ひき続き、図8〜図11により本実施形態の製造方法に係わる事項を説明する。
【0030】
図8により本実施形態の収納工程を説明する。図8は収納工程の説明図であり、(a)〜(d)の4段階で示した。
【0031】
(a)集合基板の電極(図示せず)と同じピッチでLED素子13を粘着シート81上に配列する。まずピックアップ装置(図示せず)の真空吸着ノズル83が容器(図示せず)に移動し、そこからLED素子13を一個取り上げる。次に真空吸着ノズル83は粘着シート81の所定位置に移動し、LED素子を粘着シートに付着する。このときLED素子13の電極面(バンプ34,35)は図の上側を向き、サファイア基板31が粘着シート81に付着する。この作業を繰り返すことによりLED素子13が粘着シート81上に配列する。なお粘着シート81は台(図示せず)の上で広げた状態で固定されており、周辺部には枠82が備えられている。
【0032】
(b)次に粘着シート81を裏返し集合基板84に貼りつける。まず粘着シート81を裏返し、断面が円の支柱85に取り付けられた支持部85aに枠82を乗せる。次に可動台86上に搭載された集合基板84と、粘着シート81に付着したLED素子13との位置あわせを行なう。最後に可動台86を上昇させ集合基板84の周辺部で粘着シート81と集合基板84とを接着する。
【0033】
(c)接着後、粘着シート81のうち集合基板84の周辺からはみ出した部分を除去し、可動台から集合基板を取り外す。
【0034】
(d)粘着シート81が接着した集合基板84を、金属製の上板87と下板88からなる加圧治具89に挟み込む。このとき上板87は、自重で粘着シート81が接着した集合基板84を加圧する。
【0035】
図9と図10により、図8にあった集合基板と加圧治具について説明する。図9は集合基板84の部分拡大図である。集合基板84は点線で示した切断線91により個々の回路基板12(個別の基板領域)が区分けされる。各回路基板12に相当する領域には+電極15と−電極14が形成されている。同様に各領域には出力電極15b,14b(図示せず)とスルーホール電極15a,14a(図示せず)も形成されている。なお−電極14の凸部にバンプ35が接合する。また+電極15の上側中央部にバンプ34が接続する。
【0036】
図10は加圧治具89の分解斜視図である。上板87は底面に凹部(図示せず)があり、左右の辺に位置出し用のピン87a(1本のみ図示)を備えている。下板88は上面にも凹部88bがあり、左右の辺に位置出し用の穴88aを備えている。図8(d)で示したように粘着シート81が接着した集合基板84は、上板87の凹部と下板88の凹部88bで形成される空間に収納される。ここで上板87は、中央部の厚さが約1cm、重量が約1kgである。この上板87の重量で加圧させるため、集合基板84、LED素子13、粘着シート81とを積層した被加圧体の厚み(約600μm)に対し収納用の室内の高さは200μm程度小さくしている。
【0037】
最後に図11により加熱工程を説明する。図11は加熱工程の説明図である。粘着シート81が接着した集合基板84を収納した加圧治具89は、ベルトコンベア96に搭載され、赤外線ヒーター(図示せず)を有するベルト炉95に搬入され加熱される。ベルト炉内の温度を350℃程度に設定し、接合部の温度が30秒程度の間280℃以上になるようにベルトコンベア96の移動速度を調整する。ここで一枚の集合基板84には500個ほどのLED素子13が実装されているので、加圧治具89は1個のLED素子13あたり1〜3gw程度加圧している。最後に加圧治具89がベルト炉95から出てきて加熱工程が終了する。加圧治具89の温度が下がるとLED素子13の電極と回路基板12の電極とが電気的にも機械的にも接合する。
【0038】
接合が完了したら加圧治具から集合基板84を取り出し粘着テープ81を除去する。こ
の集合基板84上に金型を使って蛍光体を含有する樹脂を積層し、最後に集合基板84をダイシングして個別のLED素子10を得る。
【0039】
なお加圧ヘッドを使って接合部の温度を280℃にする場合、実用的な条件としては回路基板に接するヘッド(又は台)を400℃程度まで上昇させる必要がある。これに対しベルト炉95は、加熱工程における最高温度を50℃程度下げられ、さらに特別な冷却機構も持っていない。
【0040】
本実施形態ではピックアップ装置を使い粘着シート81上にLED素子13を一個ずつ配置し整列させていた。本発明はこの整列方法に限られるものはなく、例えば、集合基板の電極ピッチで開口部を有する金属枠にLED素子を装填し一気に複数のLED素子を粘着シートに付着する方法や、台の上に仮配列させた複数のLED素子をナイフ状の板を使って集合基板の電極ピッチに合うようにx及びy方向を調整し一気に複数のLED素子を粘着シートに付着する方法などであっても良い。
【0041】
本実施形態における半導体素子はLED素子13であった。半導体素子としては、他にトランジスターやICなどがあり、本実施形態と同様な方法で回路基板上に半導体素子を備える半導体装置を得ることができる。本実施形態ではLED装置10が熱伝導率の小さいサファイア基板31を備え、さらに接合部がサファイア基板31と樹脂からなる回路基板12に挟まれている。このように半導体素子の中で接合部の周りに熱伝導性の悪い部材があるLED素子では、本実施形態のように全体的に比較的ゆっくりと加熱及び冷却がなされると、接合部の温度が安定し、その結果として良好な接合品質が得られるという本発明の効果が大きく現れる。
【0042】
本実施形態における半導体素子(LED素子13)は金バンプを備えていた。しかしながら本発明の製造方法においてバンプの主たる材料は金に限定されない。例えば、バンプ全体を半田で形成しても良いし、銅やアルミニウムからなるバンプの接合部に半田など比較的低温で融解する金属(または合金)をコートしたものでも良い。このような材料を使うと加熱時に接合部が溶融し冷却により電極同士が接合するので、本発明の一括実装方式では簡単な製造装置でありながら緩やかな温度の上昇と降下により安定した接合品質が達成される。
【0043】
このなかでとくに電解メッキ法で形成する金バンプは、その形成過程においてホトリソグラフィ法を使うので、バンプの平面形状を比較的任意に設定できる。本実施形態では発熱量の多い領域(発光層)に接するバンプ34の面積を大きくし、熱を回路基板12側に効率よく伝えられるようにしていた。このように目的に応じてバンプが様々な平面形状とっても、加熱及び冷却時に接合部の温度が管理し易いと共晶接合の品質が安定化し、さらに放熱特性の改善などの目的達成と同時に前述の金バンプによる金錫共晶接合のメリットも享受できる。
【0044】
本実施形態の加熱工程では加熱装置としてベルト炉95を使用していた。しかしながら本発明の加熱工程で使用する加熱装置はベルト炉に限定されない。本発明の加熱工程では、半導体素子と粘着シートが積層した集合基板を加圧治具ごと加熱できればよい。たとえば集合基板を収納した加圧治具が一定の数量に達したら、これらをまとめて熱風オーブンで加熱し、ひきつづき加圧治具を熱風オーブンから引き出し冷却しても良い。いろいろな加熱装置があるなかで、とくに本実施形態ので用いたベルト炉95のように加圧治具89が加熱装置内を移動しながら加熱される方式は、連続的な製造が可能となるから製造ラインの自動化に適している。
(第2実施形態)
【0045】
以下、添付図面12を参照しながら、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、LED素子13、粘着シート81、集合基板84は第1実施形態と同一であり、粘着シート81が接着した集合基板84を製作する工程も第1実施形態(図8(a)から(c))と同一なので重複する説明は省略する。
【0046】
図12により本実施形態の収納工程を説明する。図12は加圧治具99に集合基板84を収納した状態の説明図であり、図8(d)に対応する。図12において、粘着シート81が接着した集合基板84の上部を緩衝材としてテフロン(登録商標)からなる緩衝シート100が覆っており、これらを金属製の上板97と下板98からなる加圧治具99に挟み込んでいる。この状態で上板97が自重で、粘着シート81が接着した集合基板84を加圧している。なお加圧が不足する場合は上板97上に重りを乗せてもよい。
【0047】
粘着シート81に付着したLED素子13は、素子毎にサファイア基板31の厚さや他の部材の高さ(厚さ)が一定であるとは限らない。このばらつきの一部分はバンプ34,35が溶融して変形することで吸収できるが、さらに第1実施形態では粘着シート81の弾性もこれらのばらつきの影響を緩和(緩衝)している。粘着シート81だけでは緩衝作用が不足する場合、第2実施形態のように緩衝シート100を追加すれば接合が安定化する。また集合基板84の下に緩衝シートを挿入しても良く、この場合は主に集合基板84や下板98の非平坦性の影響を吸収する。同様に集合基板84の上下に緩衝シートを挿入しても良い。
【符号の説明】
【0048】
10,20…LED装置、11…樹脂層、12…回路基板(個別の基板領域)、13…LED素子(半導体素子)、14…−電極、14a,15a…スルーホール電極、14b,15b…出力電極、15…+電極、16…板材、31…サファイア基板、32…p型半導体領域、33…n型半導体領域、34,35…バンプ、36…半導体層、61…GaN層、62…Ag層、63,68,71…Au層、64…保護膜、65…UBM(アンダーバンプメタル)層、66…金バンプ部、67…Sn層、72…銅箔、73…Au−Sn共晶部、81…粘着シート、82…枠、83…真空吸着ノズル、84…集合基板、85…支柱、85a…支持部、86…可動台、87,97…上板、87a…ピン、88,98…下板、88a…穴、88b…凹部、89,99…加圧治具、91…切断線、95…ベルト炉(加熱装置)、96…ベルトコンベア、100…緩衝シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子をフリップチップ実装した集合基板を個別の基板領域に分割して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法において、
前記複数の半導体素子が前記集合基板上の前記個別の基板領域に対応する配置となるように前記半導体素子を粘着シート上に付着し、
前記半導体素子の電極と前記集合基板の電極とが向かいあうようにして前記粘着シートを前記集合基板に重ね、
上板と下板とを備える加圧治具に該集合基板を収納する収納工程と、
該加圧治具の上板と下板で該集合基板を加圧しながら該加圧治具を加熱する加熱工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体素子がLED素子であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体素子が電解メッキ法により形成された金バンプを備え、前記加熱工程において金錫共晶結合により前記半導体素子と前記集合基板の電極とが接合することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程において前記加圧治具が加熱装置内を移動しながら加熱されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記収納工程において前記上板または前記下板と前記集合基板との間に緩衝シートを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
複数の半導体素子をフリップチップ実装した集合基板を個別の基板領域に分割して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法において、
前記複数の半導体素子が前記集合基板上の前記個別の基板領域に対応する配置となるように前記半導体素子を粘着シート上に付着し、
前記半導体素子の電極と前記集合基板の電極とが向かいあうようにして前記粘着シートを前記集合基板に重ね、
上板と下板とを備える加圧治具に該集合基板を収納する収納工程と、
該加圧治具の上板と下板で該集合基板を加圧しながら該加圧治具を加熱する加熱工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体素子がLED素子であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体素子が電解メッキ法により形成された金バンプを備え、前記加熱工程において金錫共晶結合により前記半導体素子と前記集合基板の電極とが接合することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程において前記加圧治具が加熱装置内を移動しながら加熱されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記収納工程において前記上板または前記下板と前記集合基板との間に緩衝シートを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−155186(P2011−155186A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16626(P2010−16626)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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