説明

半導体装置の製造方法

【課題】ウエハ処理後のパターンの出来映え形状を高精度で予測することのできる技術を提供する。
【解決手段】各反応生成物の量をそれぞれプラズマ発光強度によって表し、これらを規格化する。そして、規格化された各反応生成物のプラズマ発光強度をそれぞれ予測値補正データに変換し、これら予測値補正データのなかから開口率に応じた最適な予測値補正データを選択し、この最適な予測値補正データを、モニタリング信号から得られた予測値データに加えることにより、パターンの出来映え形状を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、ドライエッチング技術を用いたウエハ加工処理工程に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回路パターンの微細化に伴いプロセスウィンドウが縮小しており、高精度なプロセス制御が要求されている。この要求を実現するには、ウエハ加工処理後の出来映え検査の頻度の増加が避けられず、半導体製品の生産性低下およびコスト増加が問題となる。そこで、ウエハ加工処理後の出来映えを予測する技術であるVM(Virtual Metrology)技術の確立が期待されている。
【0003】
例えば特開2009−152269号公報(特許文献1)には、ウエハ開口率および局所パターンの立体角に応じて、反応生成物フラックスと立体角の積で表される加工側壁に入射する堆積物量を制御する形状シミュレータと、形状シミュレータで得られたデータベースとドライエッチング中のエッチング状態から検出された実測値とを比較してエッチングプロセスの補正値を算出し、補正値をエッチングチャンバに指示する制御部とを備えたドライエッチング装置が開示されており、エッチングプロセスのパラメータをリアルタイムに補正する技術が記載されている。
【0004】
また、特開2007−250902号公報(特許文献2)には、所定枚数のモデル作成用ウエハをエッチング処理しながら電気的データを測定し、各モデル作成用ウエハのCD(Critical Dimension)シフト量を実測し、各CDシフト量の移動平均値を求め、多変量解析法を用いて運転データと移動平均化されたCDシフト量との相関関係式を求め、他のウエハをエッチング処理したときの運転データを相関関係式に当てはめることによりCDシフト量を予測する方法が開示されている。
【0005】
また、特開2006−83433号公報(特許文献3)には、プラズマのリアクタンスの高調波成分を測定するセンサと、所定の線形関数を利用して、高調波成分に対応するエッチングの終点時間を算出する手段とを備えたプラズマエッチング装置が開示されており、所定の線形関数は、プラズマエッチングされる薄膜のパターン開口率に応じて、複数の線形関数の中から選択することが記載されている。
【0006】
また、特開2005−12218号公報(特許文献4)には、エッチング処理の間に実施されたインサイチューモニタリング(例えば分光、干渉計測、散乱計測、反射率測定など)と組み合わせて、エッチング処理に対してエクスサウチューで提供された測定情報(例えば限界寸法、層の膜厚など)を使用することにより、エッチング処理をモニタリングする方法が開示されている。
【0007】
また、特開2005−183756号公報(特許文献5)には、プラズマ処理装置において、反応室内の圧力を設定圧力に制御する圧力制御バルブの開度と、高周波電力印加時に発生するバイアス電圧とを設備モニタリングシステムにて常時モニタリングして、反応室内のプラズマ状態を確認する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−152269号公報
【特許文献2】特開2007−250902号公報
【特許文献3】特開2006−83433号公報
【特許文献4】特開2005−12218号公報
【特許文献5】特開2005−183756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えばAPC(Advanced Process Control)システムを搭載したドライエッチング装置では、VM技術を適用しない場合、前のロットの検査が完了して、その仕上がり寸法等の情報がフィードバックされるのを待ってから次のロットが処理される。そのため、前のロットの検査が完了するまでの待ち時間が生じてしまう。これに対して、VM技術を適用した場合は、リアルタイムで一ロット内の全ウエハの仕上がり寸法の予測値が得られるので、VM技術を適用しない場合と比べて、ドライエッチング工程のTAT(Turn Around Time)を短くすることができる。
【0010】
そこで、本発明者らは、ドライエッチング装置のモニタリング信号からウエハの出来映えを予測するVM技術を適用することにより、ウエハ加工処理後の出来映え検査の回数を低減している。しかし、モニタリング信号のみを用いたVM技術では、ナノメートル(nm)スケールの寸法制御が難しいため、ナノメートルスケールの精度が要求される微細加工工程では、ウエハ加工処理後の出来映え検査の数を減らすことができない。
【0011】
また、多層配線を形成するドライエッチング工程では、通常、配線パターンの加工形状(例えば寸法など)の規格が同じであれば、製品種または配線層を問わず、一つのエッチング条件で加工処理を行っている。しかし、配線パターンの加工形状の規格が同じであっても、パターン開口率またはパターン密度等が異なると、モニタリング信号のみを用いたVM技術では、ウエハ処理後の出来映え形状の予測精度が低くなるという問題が生じる。特に、パターン開口率の違いは、エッチングプロセス(処理圧力、エッチングガス種、反応生成物フラックス、および流量等)に影響を及ぼし、配線パターンの微細化およびウエハの大口径化が進むに従い、その影響は顕著となっている。
【0012】
本発明の目的は、ウエハ処理後のパターンの出来映え形状を高精度で予測することのできる技術を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、ウエハ処理後のパターンの出来映え検査の回数を低減することにより、製品の生産性の向上およびコスト低減を実現することのできる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
この実施の形態は、基板の主面上に形成された被エッチング膜を、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングにより加工して、被エッチング膜のパターンを形成する工程を有する半導体装置の製造方法において、ドライエッチングにより生成される各反応生成物の量をそれぞれプラズマ発光強度によって表し、これらを規格化した後、規格化された各反応生成物のプラズマ発光強度をそれぞれ予測値補正データに変換し、これら予測値補正データのなかから開口率に応じた最適な予測値補正データを選択し、この最適な予測値補正データを、モニタリング信号から得られた予測値データに導入することにより、パターンの出来映え形状を予測するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
ウエハ処理後のパターンの出来映え形状を高精度で予測することのできる技術を提供することができる。また、ウエハ処理後のパターンの出来映え検査の回数を低減することにより、製品の生産性の向上およびコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態によるドライエッチング装置に備わる各演算部の構成を説明する概略図である。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ開口率が小さい場合(開口率は約5%)の被エッチンング膜上に形成されたレジストパターンの概略平面図、および開口率が大きい場合(開口率は約55%)の被エッチング膜上に形成されたレジストパターンの概略平面図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ開口率が小さい場合のエッチンングによる反応生成物の発生の様子、および開口率が大きい場合のエッチングによる反応生成物の発生の様子を説明する模式図である。
【図4】本発明の一実施の形態による発光データ演算処理部におけるプラズマ発光データの規格化の手順を説明する工程図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるSiO膜をドライエッチングした際に得られるプラズマ発光強度と発光波長(波長領域200〜800nm)との関係の一例を示すグラフ図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるSiO膜をドライエッチングした際に得られるプラズマ発光強度の経時変化を示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるSiO膜をドライエッチングした際に得られる各反応生成物のプラズマ発光強度の平均値および規格化したプラズマ発光強度の平均値をまとめた図である。
【図8】本発明の一実施の形態による規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)と開口率データとの関係を説明するグラフ図である。
【図9】本発明の一実施の形態による開口率が小さい場合に使用する規格化した各反応生成物(CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I)と開口率データとの関係を説明するグラフ図である。
【図10】本発明の一実施の形態による開口率が大きい場合に使用する規格化した各反応生成物(CO、SiF)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I)と開口率データとの関係を説明するグラフ図である。
【図11】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅のモニタリング信号のみから求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の幅のモニタリング信号のみから求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。
【図12】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅の式(1)から求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の幅の式(1)から求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。
【図13】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さのモニタリング信号のみから求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の深さのモニタリング信号のみから求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。
【図14】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さの式(2)から求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の深さの式(2)から求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。
【図15】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅の式(9)から求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の幅の式(9)から求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。
【図16】(a)および(b)は、それぞれウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さの式(10)から求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、および配線溝の深さの式(10)から求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。
【図17】本発明の一実施の形態による半導体装置の製造方法を説明する製造工程中の半導体装置の要部断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図21】本発明の一実施の形態によるエッチング工程の流れの一例を示す工程図である
【図22】図20に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程中の図17と同じ箇所の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0021】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0023】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施の形態)
本実施の形態によるVM技術を用いたウエハ処理後のパターンの出来映え予測の方法を以下に説明する。本実施の形態では、配線パターンの出来映え予測を一例に挙げて説明する。具体的には、ダマシン(Damascene)配線を形成する際に、ドライエッチング法により絶縁膜に形成される配線溝の出来映え形状を予測する。
【0025】
図1に、本実施の形態によるドライエッチング装置に備わる各演算部の構成を説明する概略図を示す。
【0026】
ドライエッチング装置1の内部には、モニタリング信号記憶部2および発光強度検出部3が備わっており、さらに、外部には、統計処理部4、発光データ演算処理部5、開口率データ演算処理部6、モデル式演算処理部7が備わっている。なお、外部に備わるこれら処理部4、5,6,7は、ドライエッチング装置1の内部に設けてもよい。
【0027】
ドライエッチング装置1は枚葉式のエッチング装置である。ドライエッチング装置1に備わるチャンバ8の内部には、所定の距離を空けて下部電極9および上部電極10が平行に配置されており、下部電極9上にウエハ11が配置される。下部電極9と上部電極10との間にプラズマ12を作り、プラズマ12中に発生したイオンまたはラジカルを利用して、ウエハ11に形成された被エッチング膜(本実施の形態ではSiOからなる絶縁膜)がエッチングされる。
【0028】
モニタリング信号記憶部2では、例えば下部電極温度(temp)、下部電極電位差(Vpp)、および上部整合キャパシタの位置(C1)などのエッチング処理時のプラズマ状態を制御するエッチングプロセスの設定値(以下、モニタリング信号という)を記憶する。
【0029】
発光強度検出部3では、所定の波長領域(例えば200〜800nm)におけるエッチング処理時に発生するプラズマの発光強度データを取得する。
【0030】
統計処理部4では、エッチング処理時のモニタリング信号のうち、ウエハ処置後の配線パターン(配線溝の幅および深さ)の出来映え形状と相関があり、配線パターンの出来映え形状の予測式に必要となる複数のモニタリング信号を抽出する。
【0031】
発光データ演算処理部5では、発光強度検出部3で得られたプラズマの発光強度データから、各反応生成物のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の時系列データを求め、さらに、平均値データを求める。そして、その平均値データを規格化した後、さらに、その規格化した各反応生成物のプラズマ発光強度の平均値データを予測式に導入できる予測値補正データに変換する。
【0032】
開口率データ演算処理部6では、発光データ演算処理部5において得られた各反応生成物の予測値補正データのなかから、ウエハ情報から得られる開口率に応じて最適な予測値補正データ(f(Ix),g(Ix))を選択する。
【0033】
モデル式演算処理部7では、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに、開口率データ演算処理部6において、開口率に応じて選択された最適な予測値補正データ(f(Ix),g(Ix))を加えた予測式(式(1)および式(2))により、配線パターンの出来映え形状の予測値を求める。モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データの算出には、統計処理部4において抽出された複数のモニタリング信号を用いる。
【0034】
配線溝の幅=f(temp,Vpp,C1)+(Δマスク寸法)+f(Ix) 式(1)
配線溝の深さ=g(Vpp,temp)+g(Ix) 式(2)
次に、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値デーに、開口率に応じて選択される最適な予測値補正データを加えた配線パターンの出来映え形状の予測式(式(1)および式(2))について詳細に説明する。
【0035】
まず、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データについて説明する。
【0036】
統計処理部4で抽出された、例えば下部電極温度(temp)、下部電極電位差(Vpp)、および上部整合キャパシタの位置(C1)などのモニタリング信号を用いて、実験計画法を用いた実験および統計解析を行い、ウエハ処理後の配線パターン(配線溝の幅および深さ)の出来映え形状の予測値データを求める。本実施の形態では、統計解析に重回帰分析を用いる。
【0037】
配線溝の幅は、ドライエッチング装置のモニタリング信号のうち下部電極温度(temp)、下部電極電位差(Vpp)、および上部整合キャパシタの位置(C1)の統計解析から得られる予測値データ(f(temp,Vpp,C1))と、マスク寸法データ(Δマスク寸法)とにより予測することが可能である。マスク寸法データとは、例えばレジストパターン寸法とマスク寸法(設計寸法)との誤差等である。
【0038】
また、配線溝の深さは、ドライエッチング装置のモニタリング信号のうち下部電極電位差(Vpp)および下部電極温度(temp)の統計解析から得られる予測値データ(g(Vpp,temp))により予測することが可能である。
【0039】
次に、開口率に応じて選択される最適な予測値補正データを加えた配線パターンの出来映え形状の予測式(式(1)および式(2))について詳細に説明する。
【0040】
ここで、開口率とは、被処理面全体のうちエッチングされる部分の占める割合または面積比で定められる量である。例えば絶縁膜をエッチングする場合に、絶縁膜の全表面積のうち80%がレジストパターンにより被覆され、20%が露出しているとすると、開口率は20%となる。
【0041】
図2(a)および(b)に、それぞれ開口率が小さい場合(開口率は約5%)の概略図および開口率が大きい場合(開口率は約55%)の概略図を示す。図2中、符号14は被エッチンング膜上に形成されたレジストパターン、符号15は被エッチング膜が露出した開口部を示している。
【0042】
開口率が相対的に大きいとエッチングにより生じる反応生成物の量が多くなり、開口率が相対的に小さいとエッチングにより生じる反応生成物の量が少なくなる。また、一般に、開口率が相対的に大きいとエッチングレートが遅くなり、開口率が相対的に小さいとエッチングレートが速くなる傾向がある。従って、開口率が様々に変化することにより、プラズマ発光強度またはエッチングレートも変化する。
【0043】
例えば絶縁膜にSiO膜を用いた場合、CF系ガスおよび不活性ガスArを用いると、式(3)の反応によりSiO膜のエッチングが進む。
【0044】
SiO+CF→SiF+CO 式(3)
従って、エッチンングにより反応生成物として、例えばCO、SiF、CF、CN等が生じるが、これらの量は開口率に依存する。
【0045】
図3(a)および(b)に、それぞれ開口率が相対的に小さい場合のエッチンングによる反応生成物の発生の様子および開口率が相対的に大きい場合のエッチングによる反応生成物の発生の様子を説明する模式図を示す。SiO膜13上に形成されたレジストパターン14の開口部15において、エッチングガス種(CF*)によりSiO膜13がエッチングされる。このエッチンングにより反応生成物であるCO、SiF等が生じるが、開口率が相対的に大きいとCO、SiF等の量は多く、開口率が相対的に小さいとCO、SiF等の量は少なくなる。
【0046】
すなわち、エッチングにより生じる反応生成物の量は、式(4)に示すように、単位時間当たりのエッチング量(エッチングレート)と開口率との積に比例する。
【0047】
(反応生成物の量)∝(エッチングレート)×(開口率) 式(4)
本実施の形態では、各反応生成物の量をそれぞれプラズマ発光強度によって表し、これを規格化する。そして、規格化された各反応生成物のプラズマ発光強度のデータを、予測式に加えることのできる予測値補正データに変換する。そのなかから開口率に応じた最適な予測値補正データを選択し、この最適な予測値補正データを、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに加えた予測式(式(1)および式(2))を構築し、この予測式(式(1)および式(2))を用いて配線パターンの出来映え形状を予測する。
【0048】
予測値補正データの基となる各反応生成物のプラズマ発光強度は、発光データ演算処理部5でデータ処理され、最適な予測値補正データは、開口率データ演算処理部6で開口率に応じて選択され、配線パターンの出来映え形状は、モデル式演算処理部7において最適な予測値補正データを導入した予測式(式(1)および式(2))を用いて算出される。
【0049】
次に、発光データ演算処理部5における各反応生成物のプラズマ発光強度の規格化について図4〜図7を用いて詳細に説明する。図4は、発光データ演算処理部5におけるプラズマ発光データの規格化の手順を説明する工程図、図5は、SiO膜をドライエッチングした際に得られるプラズマ発光強度と発光波長(波長領域200〜800nm)との関係の一例を示すグラフ図、図6は、SiO膜をドライエッチングした際に得られるプラズマ発光強度の経時変化を示すグラフ図、図7は、SiO膜をドライエッチングした際に得られる各反応生成物のプラズマ発光強度の平均値および規格化したプラズマ発光強度の平均値をまとめた図である。
【0050】
(図4の工程P1)発光データ演算処理部5では、発光強度検出部3において取得された200〜800nmの波長領域におけるプラズマ発光強度を、例えば±1nmの間隔でウエハ処理が終了するまでモニタリングする。
【0051】
(図4の工程P2)各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の時系列データを求める。図5に示すように、200〜800nmの波長領域において、例えばCOでは約483nmの発光波長におけるプラズマ発光強度を求め、Arでは約750nmの発光波長におけるプラズマ発光強度を求める。
【0052】
(図4の工程P3)各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(ICO、ISiF、ICF、ICN)をそれぞれ求める。図6に示すように、時系列データを、例えば移動平均等のスムージングを行った後、プラズマ放電開始時と終了時の数秒間のプラズマ発光強度が安定していない時間は含まずに、平均値データを求める。
【0053】
(図4の工程P4)各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(ICO、ISiF、ICF、ICN)を、Arの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(IAr)を用いて規格化する。例えば規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(I,I,I,I)は、式(5)〜式(8)のように表すことができる。
【0054】
=ICO/IAr 式(5)
=ISiF/IAr 式(6)
=ICF/IAr 式(7)
=ICN/IAr 式(8)
図7に、各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(ICO、ISiF、ICF、ICN)および規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)をまとめる。
【0055】
(図4の工程P5)規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のそれぞれの発光波長におけるプラズマ発光強度の平均値データを、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに加えて補正できるように、予測値補正データ(f(Ix):x=1〜4およびg(Ix):x=1〜4)に変換する。
【0056】
次に、開口率データ演算処理部6における最適な予測値補正データの選択方法について図8〜図10を用いて説明する。図8は、規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)(プラズマ発光データ)と開口率データとの関係を説明するグラフ図、図9は、開口率が小さい場合に使用する規格化した各反応生成物(CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I)(プラズマ発光データ)と開口率データとの関係を説明するグラフ図、図10は、開口率が大きい場合に使用する規格化した各反応生成物(CO、SiF)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I)と開口率データとの関係を説明するグラフ図である。
【0057】
図8に示すように、規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)と開口率データとの間には、相関関係がある。
【0058】
開口率が相対的に小さい場合は、被エッチング膜(SiO膜)の露出した面積の割合が小さく、レジストパターンの割合が大きい。このため、エッチングガス種の反応生成物(CF)のプラズマ発光強度の平均値データ(I)またはエッチングガス種の反応生成物(CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I)が大きくなる。そこで、図9に示すように、規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)から、平均値データ(I)または平均値データ(I)を選択する。そして、これらを変換して予測値補正データを求めて、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに、最適な予測値補正データを補正値として導入する。
【0059】
これに対して、開口率が相対的に大きい場合は、被エッチング膜(SiO膜)の露出した面積の割合が大きく、レジストパターンの割合が小さい。このため、被エッチング膜を構成するSiOの反応生成物(CO)のプラズマ発光強度の平均値データ(I)またはSiOの反応生成物(SiF)の発光強度の平均値データ(I)が大きくなる。そこで、図10に示すように、規格化した各反応生成物(CO、SiF、CF、CN)のプラズマ発光強度の平均値データ(I、I、I、I)から、平均値データ(I)または平均値データ(I)を選択する。そして、これらを変換して予測値補正データを求めて、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに、最適な予測値補正データを補正値として導入する。
【0060】
このように、開口率に応じて、予測式(式(1)および式(2))に導入する最適な予測値補正データを選択することにより、配線パターンの出来映え形状を高精度に予測することができる。
【0061】
次に、モデル式演算処理部7において算出される配線溝の出来映え形状の予測結果について図11〜図16を用いて説明する。
【0062】
配線溝の幅を予測する式(1)では、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データ(f(temp,Vpp,C1)+(Δマスク寸法))に予測値補正データf(Ix)を加える。f(Ix)には、予測値補正データf(I)、f(I)、f(I)、f(I)のうちから、開口率から選択される最適な予測値補正データが導入される。同様に、配線溝の深さを予測する式(2)では、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データ(g(Vpp,temp)に予測値補正データg(Ix)を加える。g(Ix)には、予測値補正データg(I)、g(I)、g(I)、g(I)のうちから、開口率から選択される最適な予測値補正データが導入される。
【0063】
例えば、開口率が5%のウエハを処理する場合は、発光データ演算処理部5で得られた予測値補正データf(I)、f(I)、f(I)、f(I)のうち、予測値補正データf(I)またはf(I)を加え、予測値補正データg(I)、g(I)、g(I)、g(I)のうち、予測値補正データg(I)またはg(I)を加える。
【0064】
また、開口率が55%のウエハを処理する場合は、発光データ演算処理部5で得られた予測値補正データf(I)、f(I)、f(I)、f(I)のうち、予測値補正データf(I)またはf(I)を加え、予測値補正データg(I)、g(I)、g(I)、g(I)のうち、予測値補正データg(I)またはg(I)を加える。
【0065】
図11(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅のモニタリング信号のみから求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、図11(b)は、配線溝の幅のモニタリング信号のみから求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。また、図12(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅の式(1)から求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、図12(b)は、配線溝の幅の式(1)から求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。
【0066】
図11および図12に示すように、モニタリング信号のみから求めた配線溝の幅の予測値よりも、予測値補正データを導入した式(1)から求めた配線溝の幅の予測値のほうが、予測精度が高いことが分かる。
【0067】
図13(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さのモニタリング信号のみから求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、図13(b)は、配線溝の深さのモニタリング信号のみから求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。また、図14(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さの式(2)から求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、図14(b)は、配線溝の深さの式(2)から求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。
【0068】
図13および図14に示すように、モニタリング信号のみから求めた配線溝の深さの予測値よりも、予測値補正データを導入した式(2)から求めた配線溝の深さの予測値のほうが、予測精度が高いことが分かる。
【0069】
なお、本実施の形態では、統計解析に重回帰分析を用いているため、独立変数(説明変数)間に相関がある場合は、多重共線性の状態となり予測値が不安定となる。本実施の形態では、プラズマ発光データ同士に強い相関関係があるため、予測式(式(1)および式(2))に複数の予測値補正データを導入すると、予測値の精度が低下する。
【0070】
図15に、例えば2つの予測値補正データf(Ix,Iy)を導入した式(9)を用いて求めた配線溝の幅の予測値を示し、図16に、例えば2つの予測値補正データg(Ix,Iy)を導入した式(10)を用いて求めた配線溝の深さの予測値を示す。図15(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の幅の式(9)から求めた予測値および配線溝の幅の実測値の変動の様子を示すグラフ図、図15(b)は、配線溝の幅の式(9)から求めた予測値と配線溝の幅の実測値との関係を示すグラフ図である。また、図16(a)は、ウエハ処理枚数の増加に伴う配線溝の深さの式(10)から求めた予測値および配線溝の深さの実測値の変動の様子を示すグラフ図、図16(b)は、配線溝の深さの式(10)から求めた予測値と配線溝の深さの実測値との関係を示すグラフ図である。
【0071】
配線溝の幅=f(temp, Vpp, C1)+(Δマスク寸法)+f(Ix, Iy) 式(9)
配線溝の深さ=g(Vpp, temp)+g(Ix, Iy) 式(10)
図15および図16に示すように、2つの予測値補正データを用いると、1つの予測値補正データを用いた場合(前述の図12および図14)よりも、配線溝の幅および深さの予測値の精度が低くなっている。従って、統計解析に重回帰分析を用いた予測式には、選択された1つの予測値補正データの使用が望ましい。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、各反応生成物のプラズマ発光データから得られる各予測値補正データのなかから、開口率に応じた最適な予測値補正データを選択し、これをモニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測値データに加えた予測式(式(1)および式(2))を用いることにより、モニタリング信号のみを用いて得られる配線パターンの出来映え形状の予測よりも高精度な予測、例えばナノメートルスケールの精度の予測が可能となる。これにより、ウエハ処理後の検査頻度を削減できて、生産性の向上およびコストの低減を実現することができる。
【0073】
次に、本実施の形態による半導体装置の製造方法について図17〜図27を用いて工程順に説明する。半導体装置には、電界効果トランジスタ、抵抗素子、容量素子等の種々の半導体素子が形成されるが、本実施の形態では、CMIS(Complementary Metal Insulator Oxide Semiconductor)デバイスを例示する。図17〜図20および図22〜図27は、半導体装置の要部断面図、図21は、エッチング工程の流れの一例を示す工程図である。また、以下の説明においては、電界効果トランジスタを代表するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型のMISFETをpMISと略し、nチャネル型のMISFETをnMISと略す。
【0074】
まず、図17に示すように、例えば単結晶シリコンからなる半導体基板(ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)21を用意する。次に、半導体基板21の主面の素子分離領域に絶縁膜からなる分離部22を形成する。続いて、nMISが形成される領域(nMIS形成領域)の半導体基板21にp型の導電性を示す不純物をイオン注入してp型ウェル23を形成し、同様に、pMISが形成される領域(pMIS形成領域)の半導体基板21にn型の導電性を示す不純物をイオン注入してn型ウェル24を形成する。
【0075】
次に、半導体基板21の主面(p型ウェル23およびn型ウェル24のそれぞれの表面)にゲート絶縁膜25を形成する。続いて、nMIS形成領域のゲート絶縁膜25上にnMISのゲート電極26nを形成し、同様に、pMIS形成領域のゲート絶縁膜25上にpMISのゲート電極26pを形成する。
【0076】
次に、nMISのゲート電極26nおよびpMISのゲート電極26pのそれぞれの側壁にサイドウォール27を形成する。続いて、nMISのゲート電極26nの両側のp型ウェル23にn型の導電性を示す不純物をイオン注入し、nMISのソース・ドレインとして機能するn型半導体領域28をゲート電極26nおよびサイドウォール27に対して自己整合的に形成する。同様に、pMISのゲート電極26pの両側のn型ウェル24にp型の導電性を示す不純物をイオン注入し、pMISのソース・ドレインとして機能するp型半導体領域29をゲート電極26pおよびサイドウォール27に対して自己整合的に形成する。
【0077】
次に、図18に示すように、半導体基板21の主面上に絶縁膜30を形成した後、レジストパターンをマスクとしたドライエッチングにより絶縁膜30を加工して接続孔31を形成する。この接続孔31はn型半導体領域28上またはp型半導体領域29上などの必要部分に形成する。続いて、接続孔31の内部に、例えばタングステン(W)膜を主導体とするプラグ32を形成する。
【0078】
次に、半導体基板21の主面上にストッパ絶縁膜33および配線形成用の絶縁膜34を順次形成する。ストッパ絶縁膜33は絶縁膜34への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜34に対してエッチング選択比を有する材料を用いる。ストッパ絶縁膜33は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される窒化シリコン膜とし、絶縁膜34は、例えばプラズマCVD法により形成される酸化シリコン膜とすることができる。なお、ストッパ絶縁膜33と絶縁膜34には次に説明する第1層目の配線M1が形成される。
【0079】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線M1を形成する。
【0080】
まず、図19に示すように、絶縁膜34上にレジストパターンRPを形成する。ここで、所定の領域に形成されたレジストパターンRPにおいて、レジストパターン寸法を測定し、レジストパターン寸法とマスク寸法(設計寸法)との誤差(Δマスク寸法)を求める。
【0081】
次に、図20に示すように、レジストパターンRPをマスクとして、絶縁膜34およびストッパ絶縁膜33を順次ドライエッチングして、ストッパ絶縁膜33および絶縁膜34の所定の領域に凹形状の配線溝35を形成する。
【0082】
ここで、図21に示すように、エッチング処理時にリアルタイムで、モニタリング信号およびプラズマ発光データを求める。さらに、各反応生成物のプラズマ発光強度から求まるそれぞれの予測値補正データを求め、これらのなかかから、開口率に応じた最適な予測値補正データを求める。配線溝35の出来映え形状を予測する式(1)に、モニタリング信号から得られた予測値データ(f(temp,Vpp,C1))と、マスク寸法との誤差(Δマスク寸法)と、最適な予測値補正データ(f(Ix))とを入力することにより、配線溝35の幅の予測値をリアルタイムで得ることができる。同様に、配線溝35の出来映え形状を予測する式(2)に、モニタリング信号から得られた予測値データ(g(Vpp,temp))と、最適な予測値補正データ(g(Ix))とを入力することにより、配線溝35の深さの予測値をリアルタイムで得ることができる。
【0083】
得られた配線溝35の幅の予測値と深さの予測値とはドライエッチング装置にフィードバック(FB)されて、リアルタイムでエッチングプロセスの設定値を補正しながら、各ウエハのストッパ絶縁膜33および絶縁膜34はエッチングされる。配線溝35の幅の予測値と深さの予測値が規格値よりもずれている場合は、エッチング処理条件を調整することにより、早期に配線溝35の幅および深さを規格値に戻すことができるので、配線溝35の加工不良の増加を抑えることができる。
【0084】
次に、図22に示すように、レジスタパターンRPを除去する。ここで、前述の図21に示したように、配線溝35の幅および深さの仕上がり寸法を測定してもよい。
【0085】
次に、図23に示すように、半導体基板21の主面上にバリアメタル膜36を形成する。バリアメタル膜36は、例えば窒化チタン(TiN)膜、タンタル(Ta)膜、または窒化タンタル(TaN)膜等である。続いて、CVD法またはスパッタリング法によりバリアメタル膜36上にCuのシード層(図示は省略)を形成し、さらに電解めっき法を用いてシード層上にCuめっき膜37を形成する。Cuめっき膜37により配線溝35の内部を埋め込む。
【0086】
次に、図24に示すように、配線溝35の内部以外の領域のCuめっき膜37、シード層、およびバリアメタル膜36をCMP法により除去して、Cu膜を主導体とする第1層目の配線M1を形成する。なお、本実施の形態では、第1層目の配線M1を構成する主導体であるCu膜を電解めっき法により形成したが、CVD法、スパッタリング法、またはスパッタリフロー法などにより形成してもよい。
【0087】
次に、デュアルダマシン法により第2層目の配線を形成する。
【0088】
まず、図25に示すように、半導体基板21の主面上にキャップ絶縁膜38、層間絶縁膜39、および配線形成用のストッパ絶縁膜40を順次形成する。キャップ絶縁膜38および層間絶縁膜39には、後に説明するように接続孔が形成される。キャップ絶縁膜38は、層間絶縁膜39に対してエッチング選択比を有する材料で構成され、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とすることができる。さらにキャップ絶縁膜38は第1層目の配線M1を構成するCuの拡散を防止する保護膜としての機能を有している。層間絶縁膜39は、例えばプラズマCVD法により形成されるTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜とすることができる。ストッパ絶縁膜40は、層間絶縁膜39および後にストッパ絶縁膜40の上層に堆積される配線形成用の絶縁膜に対してエッチング選択比を有する絶縁材料で構成され、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とすることができる。
【0089】
次に、孔形成用のレジストパターンをマスクとしたドライエッチングによりストッパ絶縁膜40を加工する。ここで、前述した配線溝35を形成する際のドライエッチング工程と同様に、パターンの出来映え形状の予測値を求め、これをドライエッチング装置へフィードバックして、リアルタイムでエッチングプロセスの設定値を補正しながら、各ウエハのストッパ絶縁膜40を加工する。
【0090】
続いて、ストッパ絶縁膜40上に配線形成用の絶縁膜41を形成する。絶縁膜41は、例えばTEOS膜とすることができる。
【0091】
次に、配線溝形成用のレジストパターンをマスクとしたドライエッチングにより絶縁膜41を加工する。この際、ストッパ絶縁膜40がエッチングストッパとして機能する。ここで、前述した配線溝35を形成する際のドライエッチング工程と同様に、パターンの出来映え形状の予測値を求め、これをドライエッチング装置へフィードバックして、リアルタイムでエッチングプロセスの設定値を補正しながら、各ウエハの絶縁膜41を加工する。
【0092】
続いて、ストッパ絶縁膜40および配線溝形成用のレジストパターンをマスクとしたドライエッチングにより層間絶縁膜39を加工する。この際、キャップ絶縁膜38がエッチングストッパとして機能する。続いて、露出したキャップ絶縁膜38をドライエッチングにより除去することにより、キャップ絶縁膜38および層間絶縁膜39に接続孔42が形成され、ストッパ絶縁膜40および絶縁膜41に配線溝43が形成される。
【0093】
次に、図26に示すように、接続孔42および配線溝43の内部に第2層目の配線M2を形成する。第2層目の配線M2は、バリアメタル層および主導体であるCu膜からなり、この配線M2と下層配線である第1層目の配線M1とを接続する接続部材は第2層目の配線M2と一体に形成される。まず、接続孔42および配線溝43の内部を含む半導体基板21の主面上にバリアメタル膜を形成する。バリアメタル膜は、例えば窒化チタン(TiN)膜、タンタル(Ta)膜または窒化タンタル(TaN)膜等である。続いて、CVD法またはスパッタリング法によりバリアメタル膜上にCuのシード層を形成し、さらに電解めっき法を用いてシード層上にCuめっき膜を形成する。Cuめっき膜により接続孔42および配線溝43の内部を埋め込む。続いて、接続孔42および配線溝43以外の領域のCuめっき膜、シード層、およびバリアメタル膜をCMP法により除去して、第2層目の配線M2を形成する。
【0094】
その後、図27に示すように、例えば前述した第2層目の配線M2と同様な方法によりさらに上層の配線を形成する。図27では、第3層目〜第6層目の配線M3、M4、M5、およびM6を形成した半導体装置を例示している。
【0095】
本実施の形態による半導体装置では、第1層目の配線M1から第4層目の配線M4には、例えば最小線幅が70nm以下の相対的に細いCu配線を採用し、第5層目の配線M5および第6層目の配線M6には、例えば最小線幅が100nm以上の相対的に太いCu配線を採用する。また、配線溝が形成される絶縁膜の厚さ、開口率、およびパターン密度等も各配線層によって異なる。しかし、各配線層の配線溝パターンに対してそれぞれ予測値補正データを加えた予測式を立てることができるので、各配線層の配線溝パターンの出来映え形状の予測値を精度よく求めることができる。
【0096】
次に、第6層目の配線M6上に窒化シリコン膜44を形成し、窒化シリコン膜44上に酸化シリコン膜45を形成する。これら窒化シリコン膜44および酸化シリコン膜45は、外部からの水分や不純物の侵入防止およびα線の透過の抑制を行うパッシベーション膜として機能する。
【0097】
次に、レジストパターンをマスクとしたエッチングにより窒化シリコン膜44および酸化シリコン膜45を加工して、第6層目の配線M6の一部(ボンディングパッド部)を露出させる。続いて、露出した第6層目の配線M6上に金(Au)膜およびニッケル(Ni)膜等の積層膜からなるバンプ下地電極46を形成し、バンプ下地電極46上に金(Au)または半田等からなるバンプ電極47を形成することにより、本実施の形態である半導体装置が略完成する。なお、このバンプ電極47は外部接続用電極となる。この後、ウエハから半導体チップに個々に切り分けられ、パッケージ基板等に実装されるが、それらの説明は省略する。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0099】
例えば前述した実施の形態では、本発明をSiO膜のエッチングプロセスへ適用した場合について説明したが、被エッチング膜はこれに限定されるものではない。例えばSi膜またはAl膜へも適用することができる。
【0100】
Si膜の場合は、式(11)の反応によりSi膜のエッチングが進む。
【0101】
Si+Cl→SiCl 式(11)
従って、エッチングにより反応生成物として、例えばSiClが生成されるので、SiClのプラズマ発光データと開口率データとを用いて、予測値補正データを得ることができる。これにより、ウエハ処理後のパターン形状を高精度に予測することができる。
【0102】
また、Al膜の場合は、式(12)の反応によりAl膜のエッチングが進む。
【0103】
Al+Cl→AlCl 式(12)
従って、エッチングにより反応生成物として、例えばAlClが生成されるので、AlClのプラズマ発光データと開口率データとを用いて、予測値補正データを得ることができる。これにより、ウエハ処理後のパターン形状を高精度に予測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、半導体装置を製造するためのドライエッチング装置を用いたエッチングプロセスに適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 ドライエッチング装置
2 モニタリング信号記憶部
3 発光強度検出部
4 統計処理部
5 発光データ演算処理部
6 開口率データ演算処理部
7 モデル式演算処理部
8 チャンバ
9 下部電極
10 上部電極
11 ウエハ
12 プラズマ
13 SiO
14 レジストパターン
15 開口部
21 半導体基板
22 分離部
23 p型ウェル
24 n型ウェル
25 ゲート絶縁膜
26n,26p ゲート電極
27 サイドウォール
28 n型半導体領域
29 p型半導体領域
30 絶縁膜
31 接続孔
32 プラグ
33 ストッパ絶縁膜
34 絶縁膜
35 配線溝
36 バリアメタル膜
37 銅(Cu)めっき膜
38 キャップ絶縁膜
39 層間絶縁膜
40 ストッパ絶縁膜
41 絶縁膜
42 接続孔
43 配線溝
44 窒化シリコン膜
45 酸化シリコン膜
46 バンプ下地電極
47 バンプ電極
M1〜M6 配線
RP レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法:
(a)基板の主面上に被エッチング膜を形成する工程;
(b)前記被エッチング膜上にレジストパターンを形成する工程;
(c)ドライエッチング装置において、前記レジストパターンをマスクとして前記被エッチング膜を加工し、前記被エッチング膜からなるパターンを形成する工程、
ここで、前記(c)工程では、
モニタリング信号から得られる予測値データと、各反応生成物のプラズマ発光強度から得られるそれぞれの予測値補正データのなかから、開口率に応じて選択される最適な予測値補正データとを含む予測式により、前記パターンの出来映え形状を予測し、エッチングプロセスの設定値をリアルタイムに補正する。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記開口率が相対的に小さい場合は、前記最適な予測値補正データに、エッチングガス種の反応生成物のプラズマ発光強度から得られる前記予測値補正データを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記開口率が相対的に大きい場合は、前記最適な予測値補正データに、前記被エッチング膜の反応生成物のプラズマ発光強度から得られる前記予測値補正データを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記最適な予測値補正データは、以下の工程を含む処理により求めることを特徴とする半導体装置の製造方法:
(c1)所定の発光波長の範囲におけるプラズマの発光強度データをモニタリングする工程;
(c2)前記プラズマの発光強度データから、前記各反応生成物のプラズマ発光強度をそれぞれ求める工程;
(c3)前記各反応生成物のプラズマ発光強度の平均値データを求める工程;
(c4)前記平均値データを規格化する工程;
(c5)規格化した前記平均値データを、前記予測値補正データに変換する工程;
(c6)前記予測値補正データのなかから前記開口率に応じて前記最適な予測値補正データを選択する工程。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記予測式には、前記レジストパターンの寸法と、前記(b)工程で前記レジストパターンを形成する際に用いられるマスクの寸法との誤差を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記被エッチング膜がSiO膜の場合は、CO、SiF、CF、およびCNのプラズマ発光強度を求め、
前記開口率が相対的に小さい場合は、前記最適な予測値補正データに、CFまたはCNのプラズマ発光強度から求まる前記予測値補正データを用い、
前記開口率が相対的に大きい場合は、前記最適な予測値補正データに、COまたはSiFのプラズマ発光強度から求まる前記予測値補正データを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−190842(P2012−190842A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50577(P2011−50577)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】