半導体装置及びその製造方法
【課題】アンダーフィル樹脂のフィレット幅が非対称となった場合の半導体装置の反りを抑制する。
【解決手段】チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれている。封止樹脂6の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれている。
【解決手段】チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれている。封止樹脂6の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度実装が可能な小面積、薄型の半導体パッケージ(以下、単にパッケージ)として、半導体チップ(以下、単にチップ)とプリント配線基板(以下、単に基板)との電気的接続にフリップチップ実装方式を採用したパッケージの需要が高まっている。
【0003】
図25及び図26はフリップチップ実装方式を採用した一般的な半導体装置を示す図であり、このうち図25は断面図、図26は平面図である。
【0004】
フリップチップ実装方式とは、図25に示すように、チップ101の表面(回路面)に形成された電極パッド(図示略)と基板102の配線(図示略)上に形成された電極パッド(図示略)とを、はんだ、金、銅等により形成されたバンプ103を介して相互に接合することにより、チップ101と基板102とを相互に接続する方式である。
【0005】
バンプ103がある程度の高さ(10μm〜150μm程度)を持つ為、通常は、実装されたチップ101と基板102との間には間隙が生じる。この間隙には、アンダーフィル樹脂104を充填することが一般的である。アンダーフィル樹脂104の充填は、バンプ103を介して接合されている接合部とチップ101の表面とを保護する目的と、パッケージの実装時等に施される高温の処理によりバンプ103が溶融してバンプ103どうしがショートしてしまうことを防止する目的で行われる。
【0006】
アンダーフィル樹脂104をチップ101と基板102との間の間隙へ充填する処理は、多くの場合、チップ101が基板102に接続された後で行われる。この処理は、一般的に、ニードル等を用いて、チップ101の近傍からアンダーフィル樹脂104を滴下し、毛管現象によりチップ101と基板102との間にアンダーフィル樹脂104を浸透させる(注入する)ようにして行う。
【0007】
アンダーフィル樹脂104の充填は、殆どの場合、チップ101の近傍の一点から注入するか、或いはチップ101の4辺(チップ101の平面形状の外周を構成する4辺)から任意に選択した1つの辺に沿ってニードルを移動させながら注入することにより行われる。
【0008】
ここで、チップ101、基板102及びバンプ103からなる部分をフリップチップ実装体と称することとする。フリップチップ実装体には、アンダーフィル樹脂104を注入する工程の前工程であるフリップチップ実装工程において、既に反りが生じている。この反りは、基板102が下、チップ101が上とすると、チップ101の中心位置107を中心として左右対称で上に凸の反りとなっている。この反りは、例えばバンプ103が鉛フリーはんだの場合、250℃以上の高温でバンプ103を溶融してチップ101を基板102に接続した後で室温まで冷却する間に、基板102とチップ101との熱膨張係数の差により発生する。基板102の熱膨張係数は、チップ101の熱膨張係数の5倍から10倍である。なお、バンプ103が鉛フリーはんだの場合、アンダーフィル樹脂104が反りに与える影響は限定的であるため、フリップチップ実装体の反りの大部分は、前工程であるフリップチップ実装工程での反りが引き継がれていると考えて良い。
【0009】
基板102が薄いなどの理由で反りが大きい場合、フリップチップ実装体の反りの矯正を目的として、アンダーフィル樹脂104の硬化後にフリップチップ実装体を樹脂封止してパッケージとして使用する場合がある。すなわち、アンダーフィル樹脂104の硬化後に存在する凸反りを矯正するために、例えば、図25及び図26に示すように、フリップチップ実装体の上部を覆うように収縮応力の大きい封止樹脂106で封止することにより、パッケージ全体での反りを緩和させる。
【0010】
一般的なパッケージでは、図25及び図26に示すように、基板102の中心位置108(パッケージの中心でもあり、フリップチップ実装体の中心でもある)と、チップ101の中心位置107と、封止樹脂106の中心位置109と、が相互に一致する構造となっている。
【0011】
なお、図26は個々のパッケージを個片化する前の段階を示している。図26に示すダイシングライン115に沿って基板102及び封止樹脂106を切断することにより、個々のパッケージを個片化し、図25に示す半導体装置を得ることができる。
【0012】
図25及び図26に示すのと同様に、フリップチップ実装方式を採用した半導体装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0013】
特許文献2には、第1基板上にフリップチップ実装され、アンダーフィル樹脂が充填されたチップの上に、該チップの中心に対して対称に樹脂と第2基板とを配置することにより、チップの上下で熱応力、特に樹脂の硬化収縮のバランスを取り、構造体全体での反りを相殺する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−166373号公報
【特許文献2】特開平11−017070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、チップ101の周囲に形成されるアンダーフィル樹脂104のはみ出し部は、フィレット105と呼ばれる。フィレット105の形状は、アンダーフィル樹脂104の注入方法に依存した形状となる。一般的に、フィレット105は1つのチップ101の周囲のなかでもアンダーフィル樹脂104の注入を行った箇所で相対的に大きくなり、それ以外の箇所では相対的に小さくなる。このため、一般的には、アンダーフィル樹脂104の全体(フィレット外周)の位置は、チップ101の中心位置107に対して非対称となる。
【0016】
フィレット105の形状の具体例について図27及び図28を用いて説明する。図27はアンダーフィル樹脂104を一点から注入した場合のフィレット105の形状を、図28はアンダーフィル樹脂104の注入をチップ101の1つの辺に沿ってニードルを移動させながら行った場合のフィレット105の形状を、それぞれ示す。図27、図28の何れにおいても、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【0017】
図27に示すように、アンダーフィル樹脂104を注入するニードルの位置を一点(図27(b)のニードル位置111)に固定してアンダーフィル樹脂104を注入した場合、フィレット105においてニードル位置111を中心とする部分は、相対的に寸法が大きい大寸法部105aとなる。また、フィレット105において、ニードル位置111及びその周囲以外の部分は、大寸法部105aよりも小さい小寸法部105bとなる。また、図28に示すように、ニードル位置111をチップ101の一辺112に沿って移動させながらアンダーフィル樹脂104を注入した場合には、フィレット105においてその一辺112に沿う部分が大寸法部105aとなり、その他の部分が小寸法部105bとなる。
【0018】
このようにアンダーフィル樹脂104のフィレット105がチップ101の中心位置107に対して非対称に形成されていると、パッケージにおける封止樹脂106の量の分布もフィレット105の形状に依存して非対称となる。この結果、封止樹脂106による反り矯正効果も、非対称となる。つまり、フィレット105が大きい箇所(大寸法部105a)では封止樹脂106の量が相対的に少なくなるために十分な反り矯正効果が得られず、逆にフィレット105が小さい場所(小寸法部105b)では封止樹脂106の量が相対的に多くなるために反り矯正効果が過剰になってしまう場合がある。
【0019】
一般的なパッケージでは、基板102の中心位置108と、チップ101の中心位置107と、封止樹脂の中心位置109と、が相互に一致している。この場合において、アンダーフィル樹脂104のフィレット105がチップ101の中心位置107に対して非対称に形成されていると、パッケージ全体で見ると、樹脂封止後における反り矯正効果のバランスが崩れてしまう。このため、結果として、例えば、図29(a)に示すように、半導体装置(パッケージ)が非対称な反り形状を呈することがある。なお、図29(a)は、樹脂封止後に常温となったパッケージの反り形状を誇張して示す図である。
【0020】
フリップチップ実装体の反りに対しては、封止樹脂106の収縮力が支配的に影響を与える。このため、主として、パッケージにおける部分ごとの、封止樹脂106による反り矯正効果の大きさに起因して、パッケージの反り形状が非対称となる。
【0021】
ただし、アンダーフィル樹脂104が熱硬化性である場合、その硬化は常温よりも高い温度(例えば80℃〜200℃程度)で行われる。このため、アンダーフィル樹脂104が硬化後に常温へ戻るとアンダーフィル樹脂104と基板102との間に熱膨張係数及び弾性率の差により熱応力が発生し、それとともに、フリップチップ実装時の熱応力により元々反っていたフリップチップ実装体の反りの状態が若干変化する。その変化は、チップ101の周囲に形成されたフィレット105の形状による影響を僅かながらも受ける。ここで、基板102が下、チップ101が上であるとすると、アンダーフィル樹脂104の硬化前はチップ101を中心として対称、且つ、上に凸な反りになっている。しかし、チップ101の中心位置107と基板102の中心位置108とが一致している場合に、フィレット105の形状、特にフィレット105の大きさがチップ101の周囲における部分に応じて異なった状態でアンダーフィル樹脂104が硬化すると、硬化後の基板102の反りは、フリップチップ実装体の中心(基板102の中心位置108)に対して厳密には非対称となる。つまり、アンダーフィル樹脂104のフィレット105の形状がフリップチップ実装体の反りへ与える影響は限定的であるとは言え、厳密には、アンダーフィル樹脂104によって生じる熱応力によっても、フリップチップ実装体の反り、ひいては半導体装置全体の反りが非対称となってしまう。更に、このようにフリップチップ実装体、ひいては半導体装置全体の反りが非対称となることにより、フリップチップ実装体、ひいては半導体装置の片側における反りの量も大きくなってしまう。
【0022】
ここで、封止樹脂106、アンダーフィル樹脂104、基板102、及びチップ101の各々の具体的な物性値の例について説明する。封止樹脂106は、例えば、Tg(ガラス転移温度)が120〜130℃、α1(Tg未満における線膨張係数)が30〜40ppm/℃、α2(Tg以上における線膨張係数)が80〜120ppm/℃である。アンダーフィル樹脂104は、例えば、Tgが135〜145℃、α1が20〜30ppm/℃、α2が80〜100ppm/℃である。基板102は、例えば、Tgが160〜190℃、α1が15〜30ppm/℃、α2が10〜35ppm/℃である。チップ101は、例えば、α(線膨張係数)が3〜5ppm/℃である。一般的に封止樹脂106の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂104の熱膨張係数よりも大きい場合、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂106に左右されることになる(封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。また、封止樹脂106のTgがアンダーフィル樹脂104のTgよりも低い場合も、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂106に左右されることになる(封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。すなわち、封止樹脂106のTgが低くなるほど、封止樹脂106の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂104の熱膨張係数よりも大きくなる温度領域(温度範囲)が広がるという意味において、封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対してより一層支配的となる。
【0023】
また、このような物性値から、図25及び図26に示すように、チップ101、基板102及び封止樹脂106の中心位置107,108,109が一致している場合には、常温時の反りが対称とならない(図29(a))ということの他に、温度応答(温度変化に対する反りの応答)に対してもパッケージの反りが非対称な挙動を示す可能性があることが分かる。
【0024】
半導体装置を実装基板へ搭載し、リフローする時の温度での反りの温度応答が非対称である場合には、半導体装置の実装性に悪影響を及ぼす可能性がある。すなわち、半導体装置のBGAボール110(図25)を溶融(リフロー)させて半導体装置を最終製品の実装基板(マザー基板:図示略)に実装する際には、パッケージはアンダーフィル樹脂104及び封止樹脂106の硬化温度よりも高い温度(例えば、230℃〜260℃)となるため、パッケージ内部の熱応力バランスが崩れ、パッケージの反りが非対称な挙動を示す。
【0025】
図29(b)は、実装のリフロー時(はんだ溶融温度:上述のように、例えば、230℃〜260℃)におけるパッケージの反り挙動を誇張して示す図である。なお、図29に示すように、常温時(図29(a))とはんだ溶融温度時(図29(b))とでは、パッケージの反りの方向が逆転する。これは、基板102とチップ101とで線膨張係数が異なるためである。パッケージの反りは、基板102にチップ101をフリップチップ実装する温度ではほぼゼロになる。しかし、基板102の方がチップ101よりも線膨張係数が大きいため、フリップチップ実装温度以下の温度では、基板102の方がチップ101よりも収縮量が大きくなるので半導体装置全体では上に凸の反りになる。逆に、フリップチップ実装温度より高温、すなわち、はんだ融点より高温となる実装リフロー時には、基板102の膨張量がチップ101のそれよりも大きくなるので半導体装置全体では下に凸の反りとなる。
【0026】
パッケージが常温の際に非対称な反り形状であると、実装時のフラックスの転写性に影響がある。また、実装基板へ実装する際のリフロー時に非対称な反りとなると、BGAボール110の実装基板への接合性、ないしは実装後の接続信頼性に影響が出てくる。このように、パッケージの反り特性が非対称となると、実装性のマージン低下や実装歩留の低下、並びに実装信頼性の低下が起きてしまう。特に、最近の400μm未満といった薄い基板を使用したパッケージにおいては、このような反りの非対称化による弊害が顕在化している。
【0027】
このように、アンダーフィル樹脂のフィレットの幅が非対称となることによりチップの中心に対してアンダーフィル樹脂の中心がずれている場合に、半導体装置の反りを抑制することは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、配線基板と、一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、を備え、前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、前記半導体チップの中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずれていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0029】
この半導体装置によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、半導体チップの中心位置を、配線基板の中心位置に対して、半導体チップの中心位置に対する第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずらした構成とすることにより、半導体装置の全体での反りの対称性を改善することができる。その結果、半導体装置の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば片側が大きく反った形となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0030】
また、本発明は、配線基板と、一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂と、を備え、前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0031】
この半導体装置によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、第2樹脂の中心位置を、配線基板の中心位置に対して、半導体チップの中心位置に対する第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずらした構成とすることにより、半導体装置の全体での反りの対称性を改善することができる。その結果、半導体装置の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば片側が大きく反った形となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0032】
また、本発明は、半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、前記第1工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、前記半導体チップの中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0033】
また、本発明は、半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に第2樹脂を形成する第3工程と、を備え、前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、前記第3工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺の方向に、前記第2樹脂の中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、半導体装置の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1及び第2の実施形態に係る半導体装置に共通の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程フローを示す平面図である。
【図7】第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図9】図7の要部拡大図である。
【図10】第3及び第4の実施形態に係る半導体装置に共通の断面図である。
【図11】図10の要部拡大図である。
【図12】第3の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図13】第3の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図14】図12の要部拡大図である。
【図15】第4の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図16】第4の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図17】図15の要部拡大図である。
【図18】第5及び第6の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図19】第5の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図20】第5の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図21】第6の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図22】第6の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図23】第7の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図24】図23の要部拡大図である。
【図25】一般的な半導体装置の断面図である。
【図26】図25の半導体装置の平面図である。
【図27】フリップチップ実装体に対し、チップの近傍の一点からアンダーフィル樹脂を注入した場合のフィレットの形状を示す図である。
【図28】フリップチップ実装体に対し、チップの1つの辺に沿ってアンダーフィル樹脂を注入した場合のフィレットの形状を示す図である。
【図29】半導体装置の反りを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0037】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る半導体装置10の断面図、図2は図1の要部拡大図、図3及び図4は第1の実施形態に係る半導体装置10の平面図である。このうち図4は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図5は図3の要部拡大図である。なお、図3及び図4は個々の半導体装置(パッケージ)10を個片化する前の状態を示す。また、図6は第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程フローを示す平面図である。
【0038】
本実施形態に係る半導体装置10は、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、半導体チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれている。また、本実施形態に係る半導体装置10は、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において前記間隙からはみ出ている部分(フィレット5)と、を覆うように、配線基板2の一方の面に形成されている第2樹脂(封止樹脂6)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれている。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体チップ1の一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に半導体チップ1を搭載する第1工程と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を充填する第2工程と、を備え、第2工程では、半導体チップ1の何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル:図示略)を移動させながら、該第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)によって、前記間隙へ第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を注入し、第1工程では、第2工程において第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)により第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の注入が行われる半導体チップ1の1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、半導体チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体チップ1の一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に半導体チップ1を搭載する第1工程と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を充填する第2工程と、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、配線基板2の一方の面に第2樹脂(封止樹脂6)を形成する第3工程と、を備え、第2工程では、半導体チップ1の何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル:図示略)を移動させながら、該第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)によって、前記間隙へ第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を注入し、第3工程では、第2工程において第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)により第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の注入が行われる半導体チップ1の1つ又は2つの辺の方向に、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。以下、詳細に説明する。
【0039】
先ず、半導体装置10の構成を説明する。
【0040】
本実施形態の場合、半導体装置10は、例えば、樹脂封止されたFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)パッケージである。
【0041】
図1、図3及び図4に示すように、本実施形態に係る半導体装置10は、例えば、配線基板(以下、単に基板)2と、半導体チップ(以下、単にチップ)1と、アンダーフィル樹脂4と、封止樹脂6と、バンプ3と、PoPランド7と、BGAボール8と、を備える。
【0042】
基板2の一方の面には、1つのチップ1がフリップチップ実装方式で実装されている。すなわち、チップ1の表面(回路面)には図示しない電極パッドが形成されている。基板2は配線層と絶縁層とが逐次積層されることにより形成されており(図示略)、基板2の表面(図1の基板2の上側表面)にはチップ1との接続用の電極パッド(図示略)が形成されている。そして、チップ1の電極パッドと基板2の電極パッドとがバンプ3を介して相互に接合されることにより、チップ1の一方の面が基板2の一方の面に対向するように、基板2にチップ1が搭載されている。なお、バンプ3は、例えば、はんだ、金、銅等により構成されている。また、基板2の厚さは特に限定しないが、一例としては、例えば、400μm未満とすることができる。
【0043】
チップ1は、平面視矩形状(正方形又は長方形)に形成されている。
【0044】
アンダーフィル樹脂4は、例えば、熱硬化性樹脂からなる。アンダーフィル樹脂4は、基板2の一方の面とチップ1の一方の面との間隙に充填されている。アンダーフィル樹脂4の一部分は、平面視において基板2とチップ1との間隙からはみ出している。このはみ出した部分は、フィレット5である。
【0045】
封止樹脂6は、例えば、チップ1とフィレット5とを覆うように、基板2上に形成されている。
【0046】
ここで、PoP(Package on Package:パッケージ・オン・パッケージ)とは、2つ以上のパッケージを積層(スタック)して相互に接続することにより構成したパッケージ構造である。PoPランド7は、PoP用のランド(端子)であり、下パッケージのBGAボール8と反対側(図では上側)の面に形成された上パッケージ(図示略)との接続に用いられる。このPoPランド7は、封止樹脂6の形成領域の周囲において、基板2上に形成されている。
【0047】
BGA(Ball Grid Array)ボール8は、基板2のチップ1の実装面と反対側の面に形成された電極パッド(図示略)上に接合されている。
【0048】
ここで、図4に示す動線18は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の先端部位置17の動線である。アンダーフィル樹脂注入ノズルは、例えばニードル等からなる。本実施形態は、図4に示すように、チップ1の1つの辺(例えば、図4の下辺)に沿ってアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながらアンダーフィル樹脂4を基板2とチップ1との間隙に充填(注入)した例である。
【0049】
このため、フィレット5は、チップ1の1つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さくなっている。すなわち、フィレット5において、例えば、チップ1における図1の左辺(図3及び図4の下辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W1が相対的に大きい大寸法部5aであり、その他の辺(図1の右、手前及び奥の辺、図3及び図4の上、左及び右の辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W2が相対的に小さい小寸法部5bである。
【0050】
このように、フィレット5は、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12を基準として、非対称(図1では左右非対称、図3及び図4では上下非対称)となっている。つまり、基板2の一方の面に沿う方向におけるフィレット5の中心位置11は、図1及び図2ではチップ1の中心位置12の左方向(矢印A方向)にずれており、図3乃至図5では該中心位置12の下方向(矢印A方向)にずれている。このように、フィレット5の形状の非対称は、チップ1の周囲におけるアンダーフィル樹脂注入辺(例えば、図3及び図4の下辺)のフィレット5(大寸法部5a)の幅が、その他の辺のフィレット5(小寸法部5b)の幅よりも大きくなるために生じる。
【0051】
ここで、チップ1、基板2及びバンプ3からなる部分を、フリップチップ実装体と称する。基板2の一方の面に沿う方向における基板2の中心位置13は、フリップチップ実装体の中心位置でもあり、半導体装置(半導体パッケージ)10の中心位置でもある。
【0052】
本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12と、基板2の中心位置13と、のずれ量S1は、0よりも大きく、且つ、中心位置12は中心位置13に対して図1及び図2の右方向(図3乃至図5の上方向)にずれている。上述したように、アンダーフィル樹脂注入辺のフィレット5の幅W1は他辺のフィレット5の幅W2よりも大きくなる。このため、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす方向は、チップ1のアンダーフィル樹脂注入辺が半導体装置10の端(縁辺)から遠ざかる方向に設定する。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の1つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部(縁辺)から遠ざかる方向に、チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。換言すれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)とは逆方向(図1乃至図5の矢印B方向)にずれている。つまり、チップ1の中心位置12は基板2の中心位置13に対してフィレット5の小寸法部5b側へずれている。更に別の表現をすれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、アンダーフィル樹脂注入辺に対して対向する辺の方向にずれている。
【0053】
また、本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向における封止樹脂6の中心位置14と、基板2の中心位置13と、のずれ量S2は、0よりも大きく、且つ、中心位置14は中心位置13に対して図1及び図2の左方向(図3乃至図5の下方向)にずれている。換言すれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)と同方向(図1乃至図5の矢印A方向)にずれている。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の1つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の方向に、封止樹脂6の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。つまり、封止樹脂6の中心位置14は基板2の中心位置13に対してフィレット5の大寸法部5a側へずれている。更に別の表現をすれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、アンダーフィル樹脂注入辺の方向にずれている。
【0054】
このように、本実施形態の場合、例えば、ずれ量S1>0であるとともに、ずれ量S2>0である。ただし、ずれ量S1とずれ量S2のうちの何れか一方のみを0よりも大きくしても良い。
【0055】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0056】
なお、図6に示す半導体装置の製造方法の一連の工程フローは、第1の実施形態以外の各実施形態でも同様であるため、第1の実施形態以外の各実施形態では半導体装置の製造方法の一部又は全部を省略する。
【0057】
先ず、図6(a)に示すように、基板2上にバンプ3及びPoPランド7を形成する。このうちバンプ3は、基板2上に予め形成されているフリップチップ実装用電極パッド(図示略)上にそれぞれ形成する。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、チップ1を基板2上にフリップチップ実装する。この実装は、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように行う(具体的には、例えば、図1及び図2の右方向、図3乃至図5の上方向にずれるように行う)。なお、このように基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように、基板2のフリップチップ実装用電極パッド(図示略)を予め配置及び設計しておくことにより、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるような実装を行うことができる。
【0059】
このようなチップ1の実装は、通常は230℃以上の高温で行われる。このため、チップ1の熱膨張係数と基板2の熱膨張係数の違いから、実装後に常温に戻った際にはフリップチップ実装体は、チップ1が上で基板2が下であるとすると、上に凸の反りとなる。この反りは、例えばバンプ3が鉛フリーはんだの場合、250℃以上の高温でバンプ3を溶融してチップ1を基板2に接続した後で室温まで冷却する間に、基板2とチップ1との熱膨張係数の差により発生する。基板2の熱膨張係数は、例えば、チップ1の熱膨張係数の5倍から10倍である。なお、バンプ3が鉛フリーはんだの場合、アンダーフィル樹脂4が反りに与える影響は限定的であるため、フリップチップ実装体の反りの大部分は、前工程であるフリップチップ実装工程での反りが引き継がれていると考えて良い。
【0060】
フリップチップ実装後、ニードル等からなるアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)を用いてアンダーフィル樹脂4を注入する。本実施形態の場合、図4及び図6(c)に動線18を示すように、チップ1の1つの辺(具体的には、例えば、図1の左辺、図6(c)及び図3の下辺)に沿って直線状(I字状)にアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながら、アンダーフィル樹脂注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4を配線基板2と半導体チップ1との間隙に充填する。
【0061】
図6(d)はアンダーフィル樹脂注入後の様子を示す。図6(d)に示すように、チップ1の周囲にはアンダーフィル樹脂4のフィレット5が形成されている。アンダーフィル樹脂4のフィレット5の幅は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺(具体的には、例えば、図1の左辺、図3、図4及び図6(d)の下辺)に沿う部分ではその他の辺(例えば、図1の右、手前及び奥の辺、図3、図4及び図6(d)の左右及び上の辺)に沿う部分よりも大きくなっている。すなわち、アンダーフィル樹脂4のフィレット5は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺に沿う部分では相対的に大きい大寸法部5aとなり、その他の辺に沿う部分では相対的に小さい小寸法部5bとなる。つまり、その他の辺では、毛管現象によりチップ1と基板2との間にアンダーフィル樹脂4を浸透させる(注入する)ため、チップ1の周囲を濡らす程度の小さなフィレット形状となる。
【0062】
ここで、チップ1の実装の際に基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12をずらす方向(図1乃至図5、図6(b)の矢印B方向)は、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)とは逆方向である。換言すれば、チップ1の中心位置12から見てアンダーフィル樹脂4の注入を行う辺とは反対方向に向けて、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12をずらす。
【0063】
アンダーフィル樹脂4の注入(充填)が完了すると、フリップチップ実装体を加熱することによりアンダーフィル樹脂4を硬化させる。アンダーフィル樹脂4の硬化に伴い、フリップチップ実装体の反りの状態は多少変化するが、基本的に上に凸反りとなっていることは変わらない。
【0064】
アンダーフィル樹脂4の硬化が完了すると、図6(e)に示すように、封止樹脂6によるフリップチップ実装体の封止を行う。通常は、基板2の表面側、すなわちチップ1が実装されている側に対してのみ封止樹脂6を形成する。
【0065】
ここで、封止樹脂6、アンダーフィル樹脂4、基板2、及びチップ1の各々の具体的な物性値の例について説明する。封止樹脂6は、例えば、Tg(ガラス転移温度)が120〜130℃、α1(Tg未満における線膨張係数)が30〜40ppm/℃、α2(Tg以上における線膨張係数)が80〜120ppm/℃である。アンダーフィル樹脂4は、例えば、Tgが135〜145℃、α1が20〜30ppm/℃、α2が80〜100ppm/℃である。基板2は、例えば、Tgが160〜190℃、α1が15〜30ppm/℃、α2が10〜35ppm/℃である。チップ1は、例えば、α(線膨張係数)が3〜5ppm/℃である。一般的に封止樹脂6の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きい場合、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂6に左右されることになる(封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。また、封止樹脂6のTgがアンダーフィル樹脂4のTgよりも低い場合も、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂6に左右されることになる(封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。すなわち、封止樹脂6のTgが低くなるほど、封止樹脂6の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きくなる温度領域(温度範囲)が広がるという意味において、封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対してより一層支配的となる。
【0066】
本実施形態では、例えば、封止樹脂6の熱膨張係数がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きく、且つ、封止樹脂6のTgがアンダーフィル樹脂4のTgよりも小さい。つまり、本実施形態は、封止樹脂6が反りに対して支配的である場合を想定している。
【0067】
本実施形態の場合、封止樹脂6による封止は、各半導体装置10毎に個別に行う。すなわち、本実施形態に係る半導体装置10は個片封止タイプである。
【0068】
封止樹脂6による封止は、その中心位置14が基板2の中心位置13に対してずれるように行う(具体的には、例えば、図1及び図2の左方向、図3乃至図5の下方向にずれるように行う)。ここで、基板2の中心位置13に対して封止樹脂6の中心位置14をずらす方向(図1乃至図5の矢印A方向)は、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)と同じ方向である。換言すれば、チップ1の中心位置12から見てアンダーフィル樹脂4の注入を行う辺と同じ方向に向けて、基板2の中心位置13に対して封止樹脂6の中心位置14がずれるように封止する。
【0069】
なお、基板2の中心位置13からのチップ1の中心位置12のずれ量S1、並びに、基板2の中心位置13からの封止樹脂6の中心位置14のずれ量S2は、チップ1、基板2、アンダーフィル樹脂4及び封止樹脂6の物性及び寸法にもよるが、アンダーフィル樹脂4を注入及び硬化させたフリップチップ実装体を液状樹脂で封止(オーバーモールド)する場合、次の様に設定する。すなわち、ずれ量S1は、例えば、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)よりも小さいことが好ましい。更に、ずれ量S1は、例えば、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)の100分の1以上とすることが好ましい。また、ずれ量S2は、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)よりも小さいことが好ましい。
【0070】
また、封止樹脂6の形成後、基板2にBGAボール8を形成する。更に、図3、図4及び図6(e)に示すダイシングライン15に沿って基板2を切断することにより、各パッケージ(半導体装置10)を個片化する。これにより、図1に示す半導体装置10を得ることができる。
【0071】
一般的な半導体装置の場合には図25及び図26に示すように基板102の中心位置108とチップ101の中心位置107とが一致しているためにアンダーフィル樹脂104の量の分布が非対称となるに対し、本実施形態では、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらして配置することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とするアンダーフィル樹脂4の量の分布のバランスを改善することができる。よって、アンダーフィル樹脂4による反りの影響の対称性を改善することができる。その結果、半導体装置10の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。更に、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらして形成することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とする封止樹脂6の量の分布のバランスを改善することができる。すなわち、フィレット5の体積が大きい箇所(図1ではチップ1の左辺に沿う部分、図3ではチップ1の下辺に沿う部分)で封止樹脂6の量を増やすことができる。また、フィレット5の体積が小さい箇所(図1ではチップ1の右、手前及び奥の辺に沿う部分、図3ではチップ1の上、右及び左の辺に沿う部分)で封止樹脂6の量を減らすことができる。このように、チップ1の中心位置12と、封止樹脂6の中心位置14と、をずらすことにより、封止樹脂6の量の偏在を軽減し、封止樹脂6による反り矯正効果の対称性を改善することができる。その結果、半導体装置10の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば半導体装置10の片側が大きく反った形状となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0072】
以上のような第1の実施形態によれば、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、半導体チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれているので、半導体装置10の全体におけるアンダーフィル樹脂4の量の分布のバランスを改善し、半導体装置10の全体での反りの対称性を改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。その結果、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。また、構成要素を追加することなく反りの対称性を改善することができるので、特許文献2の技術と比較して、半導体装置10が大型化しないようにできるとともに、製造コストが増大しないようにできる。
【0073】
また、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において前記間隙からはみ出ている部分(フィレット5)と、を覆うように、配線基板2の一方の面に形成されている第2樹脂(封止樹脂6)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれているので、半導体装置10の全体における封止樹脂6の量の分布のバランスを改善し、半導体装置10の全体での反りの対称性を改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。その結果、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。また、構成要素を追加することなく反りの対称性を改善することができるので、特許文献2の技術と比較して、半導体装置10が大型化しないようにできるとともに、製造コストが増大しないようにできる。
【0074】
一般的に、アンダーフィル樹脂4の厚さは例えば数μm程度であるのに対して、封止樹脂6の厚さは例えば100μオーダーである。また、封止樹脂6はフィラーの含有率がアンダーフィル樹脂4よりも高いためにアンダーフィル樹脂4よりも剛性が高い。これらのことにより、アンダーフィル樹脂4が反りに与える影響よりも封止樹脂6が反りに与える矯正効果の方が大きくなる。このため、ずれ量S1の調節による反りの改善効果よりも、ずれ量S2の調節による反りの改善効果の方が大きくなることが期待できる。
【0075】
なお、上記の第1の実施形態では、パッケージ・オン・パッケージ(PoP)用のPoPランド7を備える例を説明したが、PoPランド7を備えない構造としても良く、この場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
図7及び図8は第2の実施形態に係る半導体装置20の平面図、図9は図7の要部拡大図である。このうち図8は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図7及び図8は個々の半導体装置(パッケージ)20を個片化する前の状態を示す。また、図1及び図2は半導体装置20の断面図を兼ねる。
【0077】
図8に示す動線18は、本実施形態の場合のアンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の先端部位置17の動線である。本実施形態は、図8に示すように、チップ1の相互に隣り合う2つの辺(例えば、図8の右辺及び下辺)に沿ってL字状にアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながらアンダーフィル樹脂4を基板2とチップ1との間隙に充填した例である。
【0078】
このため、フィレット5は、チップ1の相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さくなっている。すなわち、フィレット5において、例えば、チップ1における図7及び図8の右辺及び下辺(図1の手前の辺及び左辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W1が相対的に大きい大寸法部5aであり、その他の辺(図7の左辺及び上辺、図1の右辺及び奥の辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W2が相対的に小さい小寸法部5bである。
【0079】
このように、フィレット5は、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12を基準として、非対称となっている。つまり、基板2の一方の面に沿う方向におけるフィレット5の中心位置11は、図7及び図9ではチップ1の中心位置12の右下方向(図7及び図9の矢印C方向)にずれている。このように、フィレット5の形状の非対称は、チップ1の周囲におけるアンダーフィル樹脂注入辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)のフィレット5(大寸法部5a)の幅が、その他の辺のフィレット5(小寸法部5b)の幅よりも大きくなるために生じる。
【0080】
本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の左辺及び右辺と平行な方向におけるチップ1の中心位置12と基板2の中心位置13とのずれ量S1は、0よりも大きい。また、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の上辺及び下辺と平行な方向におけるチップ1の中心位置12と基板2の中心位置13とのずれ量S3は、0よりも大きい。そして、中心位置12は中心位置13に対して図7乃至図9の左上方向(矢印D方向)にずれている。上述したように、アンダーフィル樹脂注入辺のフィレット5の幅W1は他辺のフィレット5の幅W2よりも大きくなる。このため、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす方向は、チップ1のアンダーフィル樹脂注入辺が半導体装置10の端(縁辺)から遠ざかる方向に設定する。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の2つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の各々が、当該2つの辺の最も近くにそれぞれ位置する半導体装置端部(縁辺)から遠ざかる方向に、チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。換言すれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図7乃至図9の矢印C方向)とは逆方向(図7乃至図9の矢印D方向)にずれている。つまり、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、2つのアンダーフィル樹脂注入辺の間の角の対角の方向にずれている。
【0081】
また、本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の左辺及び右辺と平行な方向における封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2は、0よりも大きい。また、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7におけるチップ1の上辺及び下辺と平行な方向における封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S4は、0よりも大きい。そして、中心位置14は中心位置13に対して図7乃至図9の右下方向(矢印C方向)にずれている。換言すれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図7乃至図9の矢印C方向)と同方向(図7乃至図9の矢印C方向)にずれている。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の2つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の方向に、封止樹脂6の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。つまり、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、2つのアンダーフィル樹脂注入辺の間の角の方向にずれている。
【0082】
このように、本実施形態の場合、例えば、ずれ量S1>0、且つ、ずれ量S3>0であるとともに、ずれ量S2>0、且つ、ずれ量S4>0である。ただし、ずれ量S1>0、且つ、ずれ量S3>0であるが、ずれ量S2=0、且つ、ずれ量S4=0であっても良いし、或いは、ずれ量S1=0、且つ、ずれ量S3=0であるが、ずれ量S2>0、且つ、ずれ量S4>0であっても良い。
【0083】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0084】
本実施形態の場合、基板2へのチップ1の実装は、例えば、チップ1の中心位置12が基板2の中心位置13に対して図7乃至図9の左上方向(矢印D方向)にずれるように行う。なお、このように基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように、基板2のフリップチップ実装用電極パッドを予め配置及び設計しておくことにより、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるような実装を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の場合、アンダーフィル樹脂4の注入は、図8に動線18を示すように、チップ1の互いに隣り合う2つの辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)に沿ってアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)を移動させながら行う。
【0086】
アンダーフィル樹脂4のフィレット5は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)に沿う部分では相対的に大きい大寸法部5aとなり、その他の辺(例えば、図7及び図8の左辺及び上辺)に沿う部分では相対的に小さい小寸法部5bとなる。
【0087】
アンダーフィル樹脂4の注入が完了すると、フリップチップ実装体を加熱することによりアンダーフィル樹脂4を硬化させる。
【0088】
次に、アンダーフィル樹脂4が充填及び硬化されたフリップチップ実装体を封止樹脂6により封止する。封止樹脂6は、例えば、その中心位置14が基板2の中心位置13に対して図7乃至図9の右下方向(矢印C方向)にずれるように行う。
【0089】
このように封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらして形成することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とする封止樹脂量のバランスを改善することができる。
【0090】
このようにチップ1の中心位置12と、封止樹脂6の中心位置14と、をずらすことにより、封止樹脂6の量の実質的な偏在を軽減し、半導体装置20の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。
【0091】
なお、ずれ量S1及びS2の範囲は、上述の第1の実施形態と同様である。また、ずれ量S3の範囲は、ずれ量S1と同様であり、ずれ量S4の範囲は、ずれ量S2と同様である。
【0092】
ただし、アンダーフィル樹脂4の注入方法に応じてチップ1のそれぞれの辺におけるフィレット5のはみ出し幅を異なる値にできるため、ずれ量S1とS3は互いに同一である必要は無く、同様に、ずれ量S2とずれ量S4は互いに同一である必要は無い。この点については、図15等を用いて後に説明する第4の実施形態、並びに、図21等を用いて後に説明する第6の実施形態でも同様である。
【0093】
また、その他の工程については第1の実施形態と同様に行うことにより、図7及び図8に示すような本実施形態に係る半導体装置20を得ることができる。
【0094】
第2の実施形態によれば、アンダーフィル樹脂4の注入をチップ1の互いに隣り合う2辺に沿って行った場合に、換言すれば、基板2とチップ1との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅が、アンダーフィル樹脂4においてチップ1の相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さい場合に、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
〔第3の実施形態〕
図10は第3の実施形態に係る半導体装置30の断面図、図11は図10の要部拡大図、図12及び図13は第3の実施形態に係る半導体装置30の平面図である。このうち図13は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図14は図12の要部拡大図である。なお、図12及び図13は個々の半導体装置(パッケージ)30を個片化する前の状態を示す。
【0096】
第3の実施形態は、図10乃至図14から分かるように、封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2が0である点でのみ上記の第1の実施形態と相違し、その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0097】
以上のような第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
〔第4の実施形態〕
図15及び図16は第4の実施形態に係る半導体装置40の平面図である。このうち図16は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図17は図15の要部拡大図である。なお、図15及び図16は個々の半導体装置(パッケージ)40を個片化する前の状態を示す。また、図10及び図11は半導体装置40の断面図を兼ねる。
【0099】
第4の実施形態は、図15乃至図17から分かるように、封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2、S4が0である点でのみ上記の第2の実施形態と相違し、その他の点は第2の実施形態と同様である。
【0100】
以上のような第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
〔第5の実施形態〕
図18は第5の実施形態に係る半導体装置50の断面図、図19及び図20は第5の実施形態に係る半導体装置50の平面図である。このうち図20は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図19及び図20は個々の半導体装置(パッケージ)50を個片化する前の状態を示す。また、図18の要部拡大図は図11と同様であり、図19の要部拡大図は図14と同様であるため、それぞれ省略する。
【0102】
第5の実施形態は、図18乃至図20、図11及び図14から分かるように、封止樹脂6による封止を複数の半導体装置50に対して一括して行う点で上記の第3の実施形態と相違する。更に、第5の実施形態は、半導体装置50がPoPランド7を備えていない点で上記の第3の実施形態と相違する。第5の実施形態は、その他の点は第3の実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態の場合、半導体装置50は、封止樹脂6を複数の半導体装置50に対して一括して行う一括封止タイプである。このため、図18乃至図20に示すように、封止樹脂6は個々の半導体装置50の基板2の全面を覆っている。つまり、基板2の面積と封止樹脂6の面積とがほぼ1:1となっている。このため、第1の実施形態とは異なり、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらすことによって半導体装置50の対称性を改善することができない。しかし、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす(ずれ量S1を0よりも大きくする)ことにより、半導体装置50の対称性を改善することができる。すなわち、第5の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0104】
〔第6の実施形態〕
図21及び図22は第6の実施形態に係る半導体装置60の平面図である。このうち図22は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図21及び図22は個々の半導体装置(パッケージ)60を個片化する前の状態を示す。また、図18は半導体装置60の断面図を兼ねる。なお、図21の要部拡大図は図17と同様であり、本実施形態の場合の図18の要部拡大図は図11と同様であるため、それぞれ省略する。
【0105】
第6の実施形態は、封止樹脂6による封止を複数の半導体装置60に対して一括して行う点で上記の第4の実施形態と相違する。更に、第6の実施形態は、半導体装置60がPoPランド7を備えていない点で上記の第4の実施形態と相違する。第6の実施形態は、その他の点は第4の実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態の場合、半導体装置60は、封止樹脂6を複数の半導体装置60に対して一括して行う一括封止タイプであるため、図18、図21及び図22に示すように、封止樹脂6は個々の半導体装置60の基板2の全面を覆っている。つまり、基板2の面積と封止樹脂6の面積とがほぼ1:1となっている。このため、第2の実施形態とは異なり、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらすことによって半導体装置60の対称性を改善することができない。しかし、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす(ずれ量S1、S3を0よりも大きくする)ことにより、半導体装置60の対称性を改善することができる。すなわち、第6の実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
〔第7の実施形態〕
図23は第7の実施形態に係る半導体装置70の断面図、図24は図23の要部拡大図である。
【0108】
上述の各実施形態では、樹脂封止されたFCBGAについて説明したが、本実施形態に係る半導体装置70は、図23及び図24に示すように、封止樹脂6を備えていない点でのみ第3又は第4の実施形態と相違し、その他の点は第3又は第4の実施形態と同様である。
【0109】
第7の実施形態によれば、封止樹脂6を備えていない半導体装置70において、上述の第3又は第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
上記の各実施形態では、アンダーフィル樹脂4の注入をチップ1の1つの辺又は2つの辺に沿ってニードル等を移動させながら行う例を説明したが、例えば、図27に示すように、チップ1の周囲の一点にニードル等を固定してアンダーフィル樹脂4を注入した場合、つまり、ニードル位置111を中心とする大寸法部105aが形成されている場合にも同様に適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体チップ
2 配線基板
3 バンプ
4 アンダーフィル樹脂
5 フィレット
5a 大寸法部
5b 小寸法部
6 封止樹脂
7 PoPランド
8 BGAボール
10 半導体装置
11 アンダーフィル樹脂(第1樹脂)の中心位置
12 半導体チップの中心位置
13 配線基板の中心位置
14 封止樹脂(第2樹脂)の中心位置
15 ダイシングライン
17 先端部位置
18 動線
20 半導体装置
30 半導体装置
40 半導体装置
50 半導体装置
60 半導体装置
70 半導体装置
A 矢印
B 矢印
C 矢印
D 矢印
S1 配線基板の中心位置と半導体チップの中心位置とのずれ量
S2 配線基板の中心位置と封止樹脂の中心位置とのずれ量
S3 配線基板の中心位置と半導体チップの中心位置とのずれ量
S4 配線基板の中心位置と封止樹脂の中心位置とのずれ量
W1 フィレットの大寸法部の幅
W2 フィレットの小寸法部の幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度実装が可能な小面積、薄型の半導体パッケージ(以下、単にパッケージ)として、半導体チップ(以下、単にチップ)とプリント配線基板(以下、単に基板)との電気的接続にフリップチップ実装方式を採用したパッケージの需要が高まっている。
【0003】
図25及び図26はフリップチップ実装方式を採用した一般的な半導体装置を示す図であり、このうち図25は断面図、図26は平面図である。
【0004】
フリップチップ実装方式とは、図25に示すように、チップ101の表面(回路面)に形成された電極パッド(図示略)と基板102の配線(図示略)上に形成された電極パッド(図示略)とを、はんだ、金、銅等により形成されたバンプ103を介して相互に接合することにより、チップ101と基板102とを相互に接続する方式である。
【0005】
バンプ103がある程度の高さ(10μm〜150μm程度)を持つ為、通常は、実装されたチップ101と基板102との間には間隙が生じる。この間隙には、アンダーフィル樹脂104を充填することが一般的である。アンダーフィル樹脂104の充填は、バンプ103を介して接合されている接合部とチップ101の表面とを保護する目的と、パッケージの実装時等に施される高温の処理によりバンプ103が溶融してバンプ103どうしがショートしてしまうことを防止する目的で行われる。
【0006】
アンダーフィル樹脂104をチップ101と基板102との間の間隙へ充填する処理は、多くの場合、チップ101が基板102に接続された後で行われる。この処理は、一般的に、ニードル等を用いて、チップ101の近傍からアンダーフィル樹脂104を滴下し、毛管現象によりチップ101と基板102との間にアンダーフィル樹脂104を浸透させる(注入する)ようにして行う。
【0007】
アンダーフィル樹脂104の充填は、殆どの場合、チップ101の近傍の一点から注入するか、或いはチップ101の4辺(チップ101の平面形状の外周を構成する4辺)から任意に選択した1つの辺に沿ってニードルを移動させながら注入することにより行われる。
【0008】
ここで、チップ101、基板102及びバンプ103からなる部分をフリップチップ実装体と称することとする。フリップチップ実装体には、アンダーフィル樹脂104を注入する工程の前工程であるフリップチップ実装工程において、既に反りが生じている。この反りは、基板102が下、チップ101が上とすると、チップ101の中心位置107を中心として左右対称で上に凸の反りとなっている。この反りは、例えばバンプ103が鉛フリーはんだの場合、250℃以上の高温でバンプ103を溶融してチップ101を基板102に接続した後で室温まで冷却する間に、基板102とチップ101との熱膨張係数の差により発生する。基板102の熱膨張係数は、チップ101の熱膨張係数の5倍から10倍である。なお、バンプ103が鉛フリーはんだの場合、アンダーフィル樹脂104が反りに与える影響は限定的であるため、フリップチップ実装体の反りの大部分は、前工程であるフリップチップ実装工程での反りが引き継がれていると考えて良い。
【0009】
基板102が薄いなどの理由で反りが大きい場合、フリップチップ実装体の反りの矯正を目的として、アンダーフィル樹脂104の硬化後にフリップチップ実装体を樹脂封止してパッケージとして使用する場合がある。すなわち、アンダーフィル樹脂104の硬化後に存在する凸反りを矯正するために、例えば、図25及び図26に示すように、フリップチップ実装体の上部を覆うように収縮応力の大きい封止樹脂106で封止することにより、パッケージ全体での反りを緩和させる。
【0010】
一般的なパッケージでは、図25及び図26に示すように、基板102の中心位置108(パッケージの中心でもあり、フリップチップ実装体の中心でもある)と、チップ101の中心位置107と、封止樹脂106の中心位置109と、が相互に一致する構造となっている。
【0011】
なお、図26は個々のパッケージを個片化する前の段階を示している。図26に示すダイシングライン115に沿って基板102及び封止樹脂106を切断することにより、個々のパッケージを個片化し、図25に示す半導体装置を得ることができる。
【0012】
図25及び図26に示すのと同様に、フリップチップ実装方式を採用した半導体装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0013】
特許文献2には、第1基板上にフリップチップ実装され、アンダーフィル樹脂が充填されたチップの上に、該チップの中心に対して対称に樹脂と第2基板とを配置することにより、チップの上下で熱応力、特に樹脂の硬化収縮のバランスを取り、構造体全体での反りを相殺する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−166373号公報
【特許文献2】特開平11−017070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、チップ101の周囲に形成されるアンダーフィル樹脂104のはみ出し部は、フィレット105と呼ばれる。フィレット105の形状は、アンダーフィル樹脂104の注入方法に依存した形状となる。一般的に、フィレット105は1つのチップ101の周囲のなかでもアンダーフィル樹脂104の注入を行った箇所で相対的に大きくなり、それ以外の箇所では相対的に小さくなる。このため、一般的には、アンダーフィル樹脂104の全体(フィレット外周)の位置は、チップ101の中心位置107に対して非対称となる。
【0016】
フィレット105の形状の具体例について図27及び図28を用いて説明する。図27はアンダーフィル樹脂104を一点から注入した場合のフィレット105の形状を、図28はアンダーフィル樹脂104の注入をチップ101の1つの辺に沿ってニードルを移動させながら行った場合のフィレット105の形状を、それぞれ示す。図27、図28の何れにおいても、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【0017】
図27に示すように、アンダーフィル樹脂104を注入するニードルの位置を一点(図27(b)のニードル位置111)に固定してアンダーフィル樹脂104を注入した場合、フィレット105においてニードル位置111を中心とする部分は、相対的に寸法が大きい大寸法部105aとなる。また、フィレット105において、ニードル位置111及びその周囲以外の部分は、大寸法部105aよりも小さい小寸法部105bとなる。また、図28に示すように、ニードル位置111をチップ101の一辺112に沿って移動させながらアンダーフィル樹脂104を注入した場合には、フィレット105においてその一辺112に沿う部分が大寸法部105aとなり、その他の部分が小寸法部105bとなる。
【0018】
このようにアンダーフィル樹脂104のフィレット105がチップ101の中心位置107に対して非対称に形成されていると、パッケージにおける封止樹脂106の量の分布もフィレット105の形状に依存して非対称となる。この結果、封止樹脂106による反り矯正効果も、非対称となる。つまり、フィレット105が大きい箇所(大寸法部105a)では封止樹脂106の量が相対的に少なくなるために十分な反り矯正効果が得られず、逆にフィレット105が小さい場所(小寸法部105b)では封止樹脂106の量が相対的に多くなるために反り矯正効果が過剰になってしまう場合がある。
【0019】
一般的なパッケージでは、基板102の中心位置108と、チップ101の中心位置107と、封止樹脂の中心位置109と、が相互に一致している。この場合において、アンダーフィル樹脂104のフィレット105がチップ101の中心位置107に対して非対称に形成されていると、パッケージ全体で見ると、樹脂封止後における反り矯正効果のバランスが崩れてしまう。このため、結果として、例えば、図29(a)に示すように、半導体装置(パッケージ)が非対称な反り形状を呈することがある。なお、図29(a)は、樹脂封止後に常温となったパッケージの反り形状を誇張して示す図である。
【0020】
フリップチップ実装体の反りに対しては、封止樹脂106の収縮力が支配的に影響を与える。このため、主として、パッケージにおける部分ごとの、封止樹脂106による反り矯正効果の大きさに起因して、パッケージの反り形状が非対称となる。
【0021】
ただし、アンダーフィル樹脂104が熱硬化性である場合、その硬化は常温よりも高い温度(例えば80℃〜200℃程度)で行われる。このため、アンダーフィル樹脂104が硬化後に常温へ戻るとアンダーフィル樹脂104と基板102との間に熱膨張係数及び弾性率の差により熱応力が発生し、それとともに、フリップチップ実装時の熱応力により元々反っていたフリップチップ実装体の反りの状態が若干変化する。その変化は、チップ101の周囲に形成されたフィレット105の形状による影響を僅かながらも受ける。ここで、基板102が下、チップ101が上であるとすると、アンダーフィル樹脂104の硬化前はチップ101を中心として対称、且つ、上に凸な反りになっている。しかし、チップ101の中心位置107と基板102の中心位置108とが一致している場合に、フィレット105の形状、特にフィレット105の大きさがチップ101の周囲における部分に応じて異なった状態でアンダーフィル樹脂104が硬化すると、硬化後の基板102の反りは、フリップチップ実装体の中心(基板102の中心位置108)に対して厳密には非対称となる。つまり、アンダーフィル樹脂104のフィレット105の形状がフリップチップ実装体の反りへ与える影響は限定的であるとは言え、厳密には、アンダーフィル樹脂104によって生じる熱応力によっても、フリップチップ実装体の反り、ひいては半導体装置全体の反りが非対称となってしまう。更に、このようにフリップチップ実装体、ひいては半導体装置全体の反りが非対称となることにより、フリップチップ実装体、ひいては半導体装置の片側における反りの量も大きくなってしまう。
【0022】
ここで、封止樹脂106、アンダーフィル樹脂104、基板102、及びチップ101の各々の具体的な物性値の例について説明する。封止樹脂106は、例えば、Tg(ガラス転移温度)が120〜130℃、α1(Tg未満における線膨張係数)が30〜40ppm/℃、α2(Tg以上における線膨張係数)が80〜120ppm/℃である。アンダーフィル樹脂104は、例えば、Tgが135〜145℃、α1が20〜30ppm/℃、α2が80〜100ppm/℃である。基板102は、例えば、Tgが160〜190℃、α1が15〜30ppm/℃、α2が10〜35ppm/℃である。チップ101は、例えば、α(線膨張係数)が3〜5ppm/℃である。一般的に封止樹脂106の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂104の熱膨張係数よりも大きい場合、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂106に左右されることになる(封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。また、封止樹脂106のTgがアンダーフィル樹脂104のTgよりも低い場合も、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂106に左右されることになる(封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。すなわち、封止樹脂106のTgが低くなるほど、封止樹脂106の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂104の熱膨張係数よりも大きくなる温度領域(温度範囲)が広がるという意味において、封止樹脂106の収縮力がパッケージの反り形状に対してより一層支配的となる。
【0023】
また、このような物性値から、図25及び図26に示すように、チップ101、基板102及び封止樹脂106の中心位置107,108,109が一致している場合には、常温時の反りが対称とならない(図29(a))ということの他に、温度応答(温度変化に対する反りの応答)に対してもパッケージの反りが非対称な挙動を示す可能性があることが分かる。
【0024】
半導体装置を実装基板へ搭載し、リフローする時の温度での反りの温度応答が非対称である場合には、半導体装置の実装性に悪影響を及ぼす可能性がある。すなわち、半導体装置のBGAボール110(図25)を溶融(リフロー)させて半導体装置を最終製品の実装基板(マザー基板:図示略)に実装する際には、パッケージはアンダーフィル樹脂104及び封止樹脂106の硬化温度よりも高い温度(例えば、230℃〜260℃)となるため、パッケージ内部の熱応力バランスが崩れ、パッケージの反りが非対称な挙動を示す。
【0025】
図29(b)は、実装のリフロー時(はんだ溶融温度:上述のように、例えば、230℃〜260℃)におけるパッケージの反り挙動を誇張して示す図である。なお、図29に示すように、常温時(図29(a))とはんだ溶融温度時(図29(b))とでは、パッケージの反りの方向が逆転する。これは、基板102とチップ101とで線膨張係数が異なるためである。パッケージの反りは、基板102にチップ101をフリップチップ実装する温度ではほぼゼロになる。しかし、基板102の方がチップ101よりも線膨張係数が大きいため、フリップチップ実装温度以下の温度では、基板102の方がチップ101よりも収縮量が大きくなるので半導体装置全体では上に凸の反りになる。逆に、フリップチップ実装温度より高温、すなわち、はんだ融点より高温となる実装リフロー時には、基板102の膨張量がチップ101のそれよりも大きくなるので半導体装置全体では下に凸の反りとなる。
【0026】
パッケージが常温の際に非対称な反り形状であると、実装時のフラックスの転写性に影響がある。また、実装基板へ実装する際のリフロー時に非対称な反りとなると、BGAボール110の実装基板への接合性、ないしは実装後の接続信頼性に影響が出てくる。このように、パッケージの反り特性が非対称となると、実装性のマージン低下や実装歩留の低下、並びに実装信頼性の低下が起きてしまう。特に、最近の400μm未満といった薄い基板を使用したパッケージにおいては、このような反りの非対称化による弊害が顕在化している。
【0027】
このように、アンダーフィル樹脂のフィレットの幅が非対称となることによりチップの中心に対してアンダーフィル樹脂の中心がずれている場合に、半導体装置の反りを抑制することは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、配線基板と、一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、を備え、前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、前記半導体チップの中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずれていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0029】
この半導体装置によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、半導体チップの中心位置を、配線基板の中心位置に対して、半導体チップの中心位置に対する第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずらした構成とすることにより、半導体装置の全体での反りの対称性を改善することができる。その結果、半導体装置の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば片側が大きく反った形となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0030】
また、本発明は、配線基板と、一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂と、を備え、前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0031】
この半導体装置によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、第2樹脂の中心位置を、配線基板の中心位置に対して、半導体チップの中心位置に対する第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずらした構成とすることにより、半導体装置の全体での反りの対称性を改善することができる。その結果、半導体装置の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば片側が大きく反った形となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0032】
また、本発明は、半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、前記第1工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、前記半導体チップの中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0033】
また、本発明は、半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に第2樹脂を形成する第3工程と、を備え、前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、前記第3工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺の方向に、前記第2樹脂の中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1樹脂の中心位置と半導体チップの中心位置とが配線基板の一方の面に沿う方向において相互にずれている場合において、半導体装置の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1及び第2の実施形態に係る半導体装置に共通の断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程フローを示す平面図である。
【図7】第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図8】第2の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図9】図7の要部拡大図である。
【図10】第3及び第4の実施形態に係る半導体装置に共通の断面図である。
【図11】図10の要部拡大図である。
【図12】第3の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図13】第3の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図14】図12の要部拡大図である。
【図15】第4の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図16】第4の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図17】図15の要部拡大図である。
【図18】第5及び第6の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図19】第5の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図20】第5の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図21】第6の実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図22】第6の実施形態に係る半導体装置のアンダーフィル樹脂を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズルの動作を示す平面図である。
【図23】第7の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図24】図23の要部拡大図である。
【図25】一般的な半導体装置の断面図である。
【図26】図25の半導体装置の平面図である。
【図27】フリップチップ実装体に対し、チップの近傍の一点からアンダーフィル樹脂を注入した場合のフィレットの形状を示す図である。
【図28】フリップチップ実装体に対し、チップの1つの辺に沿ってアンダーフィル樹脂を注入した場合のフィレットの形状を示す図である。
【図29】半導体装置の反りを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0037】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る半導体装置10の断面図、図2は図1の要部拡大図、図3及び図4は第1の実施形態に係る半導体装置10の平面図である。このうち図4は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図5は図3の要部拡大図である。なお、図3及び図4は個々の半導体装置(パッケージ)10を個片化する前の状態を示す。また、図6は第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程フローを示す平面図である。
【0038】
本実施形態に係る半導体装置10は、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、半導体チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれている。また、本実施形態に係る半導体装置10は、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において前記間隙からはみ出ている部分(フィレット5)と、を覆うように、配線基板2の一方の面に形成されている第2樹脂(封止樹脂6)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれている。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体チップ1の一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に半導体チップ1を搭載する第1工程と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を充填する第2工程と、を備え、第2工程では、半導体チップ1の何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル:図示略)を移動させながら、該第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)によって、前記間隙へ第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を注入し、第1工程では、第2工程において第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)により第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の注入が行われる半導体チップ1の1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、半導体チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、半導体チップ1の一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に半導体チップ1を搭載する第1工程と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を充填する第2工程と、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、配線基板2の一方の面に第2樹脂(封止樹脂6)を形成する第3工程と、を備え、第2工程では、半導体チップ1の何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル:図示略)を移動させながら、該第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)によって、前記間隙へ第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)を注入し、第3工程では、第2工程において第1樹脂注入ノズル(アンダーフィル樹脂注入ノズル)により第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の注入が行われる半導体チップ1の1つ又は2つの辺の方向に、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。以下、詳細に説明する。
【0039】
先ず、半導体装置10の構成を説明する。
【0040】
本実施形態の場合、半導体装置10は、例えば、樹脂封止されたFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)パッケージである。
【0041】
図1、図3及び図4に示すように、本実施形態に係る半導体装置10は、例えば、配線基板(以下、単に基板)2と、半導体チップ(以下、単にチップ)1と、アンダーフィル樹脂4と、封止樹脂6と、バンプ3と、PoPランド7と、BGAボール8と、を備える。
【0042】
基板2の一方の面には、1つのチップ1がフリップチップ実装方式で実装されている。すなわち、チップ1の表面(回路面)には図示しない電極パッドが形成されている。基板2は配線層と絶縁層とが逐次積層されることにより形成されており(図示略)、基板2の表面(図1の基板2の上側表面)にはチップ1との接続用の電極パッド(図示略)が形成されている。そして、チップ1の電極パッドと基板2の電極パッドとがバンプ3を介して相互に接合されることにより、チップ1の一方の面が基板2の一方の面に対向するように、基板2にチップ1が搭載されている。なお、バンプ3は、例えば、はんだ、金、銅等により構成されている。また、基板2の厚さは特に限定しないが、一例としては、例えば、400μm未満とすることができる。
【0043】
チップ1は、平面視矩形状(正方形又は長方形)に形成されている。
【0044】
アンダーフィル樹脂4は、例えば、熱硬化性樹脂からなる。アンダーフィル樹脂4は、基板2の一方の面とチップ1の一方の面との間隙に充填されている。アンダーフィル樹脂4の一部分は、平面視において基板2とチップ1との間隙からはみ出している。このはみ出した部分は、フィレット5である。
【0045】
封止樹脂6は、例えば、チップ1とフィレット5とを覆うように、基板2上に形成されている。
【0046】
ここで、PoP(Package on Package:パッケージ・オン・パッケージ)とは、2つ以上のパッケージを積層(スタック)して相互に接続することにより構成したパッケージ構造である。PoPランド7は、PoP用のランド(端子)であり、下パッケージのBGAボール8と反対側(図では上側)の面に形成された上パッケージ(図示略)との接続に用いられる。このPoPランド7は、封止樹脂6の形成領域の周囲において、基板2上に形成されている。
【0047】
BGA(Ball Grid Array)ボール8は、基板2のチップ1の実装面と反対側の面に形成された電極パッド(図示略)上に接合されている。
【0048】
ここで、図4に示す動線18は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の先端部位置17の動線である。アンダーフィル樹脂注入ノズルは、例えばニードル等からなる。本実施形態は、図4に示すように、チップ1の1つの辺(例えば、図4の下辺)に沿ってアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながらアンダーフィル樹脂4を基板2とチップ1との間隙に充填(注入)した例である。
【0049】
このため、フィレット5は、チップ1の1つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さくなっている。すなわち、フィレット5において、例えば、チップ1における図1の左辺(図3及び図4の下辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W1が相対的に大きい大寸法部5aであり、その他の辺(図1の右、手前及び奥の辺、図3及び図4の上、左及び右の辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W2が相対的に小さい小寸法部5bである。
【0050】
このように、フィレット5は、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12を基準として、非対称(図1では左右非対称、図3及び図4では上下非対称)となっている。つまり、基板2の一方の面に沿う方向におけるフィレット5の中心位置11は、図1及び図2ではチップ1の中心位置12の左方向(矢印A方向)にずれており、図3乃至図5では該中心位置12の下方向(矢印A方向)にずれている。このように、フィレット5の形状の非対称は、チップ1の周囲におけるアンダーフィル樹脂注入辺(例えば、図3及び図4の下辺)のフィレット5(大寸法部5a)の幅が、その他の辺のフィレット5(小寸法部5b)の幅よりも大きくなるために生じる。
【0051】
ここで、チップ1、基板2及びバンプ3からなる部分を、フリップチップ実装体と称する。基板2の一方の面に沿う方向における基板2の中心位置13は、フリップチップ実装体の中心位置でもあり、半導体装置(半導体パッケージ)10の中心位置でもある。
【0052】
本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12と、基板2の中心位置13と、のずれ量S1は、0よりも大きく、且つ、中心位置12は中心位置13に対して図1及び図2の右方向(図3乃至図5の上方向)にずれている。上述したように、アンダーフィル樹脂注入辺のフィレット5の幅W1は他辺のフィレット5の幅W2よりも大きくなる。このため、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす方向は、チップ1のアンダーフィル樹脂注入辺が半導体装置10の端(縁辺)から遠ざかる方向に設定する。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の1つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部(縁辺)から遠ざかる方向に、チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。換言すれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)とは逆方向(図1乃至図5の矢印B方向)にずれている。つまり、チップ1の中心位置12は基板2の中心位置13に対してフィレット5の小寸法部5b側へずれている。更に別の表現をすれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、アンダーフィル樹脂注入辺に対して対向する辺の方向にずれている。
【0053】
また、本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向における封止樹脂6の中心位置14と、基板2の中心位置13と、のずれ量S2は、0よりも大きく、且つ、中心位置14は中心位置13に対して図1及び図2の左方向(図3乃至図5の下方向)にずれている。換言すれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)と同方向(図1乃至図5の矢印A方向)にずれている。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の1つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の方向に、封止樹脂6の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。つまり、封止樹脂6の中心位置14は基板2の中心位置13に対してフィレット5の大寸法部5a側へずれている。更に別の表現をすれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、アンダーフィル樹脂注入辺の方向にずれている。
【0054】
このように、本実施形態の場合、例えば、ずれ量S1>0であるとともに、ずれ量S2>0である。ただし、ずれ量S1とずれ量S2のうちの何れか一方のみを0よりも大きくしても良い。
【0055】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0056】
なお、図6に示す半導体装置の製造方法の一連の工程フローは、第1の実施形態以外の各実施形態でも同様であるため、第1の実施形態以外の各実施形態では半導体装置の製造方法の一部又は全部を省略する。
【0057】
先ず、図6(a)に示すように、基板2上にバンプ3及びPoPランド7を形成する。このうちバンプ3は、基板2上に予め形成されているフリップチップ実装用電極パッド(図示略)上にそれぞれ形成する。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、チップ1を基板2上にフリップチップ実装する。この実装は、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように行う(具体的には、例えば、図1及び図2の右方向、図3乃至図5の上方向にずれるように行う)。なお、このように基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように、基板2のフリップチップ実装用電極パッド(図示略)を予め配置及び設計しておくことにより、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるような実装を行うことができる。
【0059】
このようなチップ1の実装は、通常は230℃以上の高温で行われる。このため、チップ1の熱膨張係数と基板2の熱膨張係数の違いから、実装後に常温に戻った際にはフリップチップ実装体は、チップ1が上で基板2が下であるとすると、上に凸の反りとなる。この反りは、例えばバンプ3が鉛フリーはんだの場合、250℃以上の高温でバンプ3を溶融してチップ1を基板2に接続した後で室温まで冷却する間に、基板2とチップ1との熱膨張係数の差により発生する。基板2の熱膨張係数は、例えば、チップ1の熱膨張係数の5倍から10倍である。なお、バンプ3が鉛フリーはんだの場合、アンダーフィル樹脂4が反りに与える影響は限定的であるため、フリップチップ実装体の反りの大部分は、前工程であるフリップチップ実装工程での反りが引き継がれていると考えて良い。
【0060】
フリップチップ実装後、ニードル等からなるアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)を用いてアンダーフィル樹脂4を注入する。本実施形態の場合、図4及び図6(c)に動線18を示すように、チップ1の1つの辺(具体的には、例えば、図1の左辺、図6(c)及び図3の下辺)に沿って直線状(I字状)にアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながら、アンダーフィル樹脂注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4を配線基板2と半導体チップ1との間隙に充填する。
【0061】
図6(d)はアンダーフィル樹脂注入後の様子を示す。図6(d)に示すように、チップ1の周囲にはアンダーフィル樹脂4のフィレット5が形成されている。アンダーフィル樹脂4のフィレット5の幅は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺(具体的には、例えば、図1の左辺、図3、図4及び図6(d)の下辺)に沿う部分ではその他の辺(例えば、図1の右、手前及び奥の辺、図3、図4及び図6(d)の左右及び上の辺)に沿う部分よりも大きくなっている。すなわち、アンダーフィル樹脂4のフィレット5は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺に沿う部分では相対的に大きい大寸法部5aとなり、その他の辺に沿う部分では相対的に小さい小寸法部5bとなる。つまり、その他の辺では、毛管現象によりチップ1と基板2との間にアンダーフィル樹脂4を浸透させる(注入する)ため、チップ1の周囲を濡らす程度の小さなフィレット形状となる。
【0062】
ここで、チップ1の実装の際に基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12をずらす方向(図1乃至図5、図6(b)の矢印B方向)は、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)とは逆方向である。換言すれば、チップ1の中心位置12から見てアンダーフィル樹脂4の注入を行う辺とは反対方向に向けて、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12をずらす。
【0063】
アンダーフィル樹脂4の注入(充填)が完了すると、フリップチップ実装体を加熱することによりアンダーフィル樹脂4を硬化させる。アンダーフィル樹脂4の硬化に伴い、フリップチップ実装体の反りの状態は多少変化するが、基本的に上に凸反りとなっていることは変わらない。
【0064】
アンダーフィル樹脂4の硬化が完了すると、図6(e)に示すように、封止樹脂6によるフリップチップ実装体の封止を行う。通常は、基板2の表面側、すなわちチップ1が実装されている側に対してのみ封止樹脂6を形成する。
【0065】
ここで、封止樹脂6、アンダーフィル樹脂4、基板2、及びチップ1の各々の具体的な物性値の例について説明する。封止樹脂6は、例えば、Tg(ガラス転移温度)が120〜130℃、α1(Tg未満における線膨張係数)が30〜40ppm/℃、α2(Tg以上における線膨張係数)が80〜120ppm/℃である。アンダーフィル樹脂4は、例えば、Tgが135〜145℃、α1が20〜30ppm/℃、α2が80〜100ppm/℃である。基板2は、例えば、Tgが160〜190℃、α1が15〜30ppm/℃、α2が10〜35ppm/℃である。チップ1は、例えば、α(線膨張係数)が3〜5ppm/℃である。一般的に封止樹脂6の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きい場合、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂6に左右されることになる(封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。また、封止樹脂6のTgがアンダーフィル樹脂4のTgよりも低い場合も、パッケージの反りの縮小効果(反り矯正効果)は封止樹脂6に左右されることになる(封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対して支配的となる)。すなわち、封止樹脂6のTgが低くなるほど、封止樹脂6の熱膨張係数(具体的には例えば線膨張係数)がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きくなる温度領域(温度範囲)が広がるという意味において、封止樹脂6の収縮力がパッケージの反り形状に対してより一層支配的となる。
【0066】
本実施形態では、例えば、封止樹脂6の熱膨張係数がアンダーフィル樹脂4の熱膨張係数よりも大きく、且つ、封止樹脂6のTgがアンダーフィル樹脂4のTgよりも小さい。つまり、本実施形態は、封止樹脂6が反りに対して支配的である場合を想定している。
【0067】
本実施形態の場合、封止樹脂6による封止は、各半導体装置10毎に個別に行う。すなわち、本実施形態に係る半導体装置10は個片封止タイプである。
【0068】
封止樹脂6による封止は、その中心位置14が基板2の中心位置13に対してずれるように行う(具体的には、例えば、図1及び図2の左方向、図3乃至図5の下方向にずれるように行う)。ここで、基板2の中心位置13に対して封止樹脂6の中心位置14をずらす方向(図1乃至図5の矢印A方向)は、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図1乃至図5の矢印A方向)と同じ方向である。換言すれば、チップ1の中心位置12から見てアンダーフィル樹脂4の注入を行う辺と同じ方向に向けて、基板2の中心位置13に対して封止樹脂6の中心位置14がずれるように封止する。
【0069】
なお、基板2の中心位置13からのチップ1の中心位置12のずれ量S1、並びに、基板2の中心位置13からの封止樹脂6の中心位置14のずれ量S2は、チップ1、基板2、アンダーフィル樹脂4及び封止樹脂6の物性及び寸法にもよるが、アンダーフィル樹脂4を注入及び硬化させたフリップチップ実装体を液状樹脂で封止(オーバーモールド)する場合、次の様に設定する。すなわち、ずれ量S1は、例えば、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)よりも小さいことが好ましい。更に、ずれ量S1は、例えば、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)の100分の1以上とすることが好ましい。また、ずれ量S2は、チップ1と基板2との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅の最大値(はみ出し幅W1)よりも小さいことが好ましい。
【0070】
また、封止樹脂6の形成後、基板2にBGAボール8を形成する。更に、図3、図4及び図6(e)に示すダイシングライン15に沿って基板2を切断することにより、各パッケージ(半導体装置10)を個片化する。これにより、図1に示す半導体装置10を得ることができる。
【0071】
一般的な半導体装置の場合には図25及び図26に示すように基板102の中心位置108とチップ101の中心位置107とが一致しているためにアンダーフィル樹脂104の量の分布が非対称となるに対し、本実施形態では、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらして配置することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とするアンダーフィル樹脂4の量の分布のバランスを改善することができる。よって、アンダーフィル樹脂4による反りの影響の対称性を改善することができる。その結果、半導体装置10の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。更に、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらして形成することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とする封止樹脂6の量の分布のバランスを改善することができる。すなわち、フィレット5の体積が大きい箇所(図1ではチップ1の左辺に沿う部分、図3ではチップ1の下辺に沿う部分)で封止樹脂6の量を増やすことができる。また、フィレット5の体積が小さい箇所(図1ではチップ1の右、手前及び奥の辺に沿う部分、図3ではチップ1の上、右及び左の辺に沿う部分)で封止樹脂6の量を減らすことができる。このように、チップ1の中心位置12と、封止樹脂6の中心位置14と、をずらすことにより、封止樹脂6の量の偏在を軽減し、封止樹脂6による反り矯正効果の対称性を改善することができる。その結果、半導体装置10の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。つまり、反りが非対称であれば半導体装置10の片側が大きく反った形状となるのに対し、反りが対称化されることにより、その反りが大きい側の反り量を小さくできる。よって、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。
【0072】
以上のような第1の実施形態によれば、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、半導体チップ1の中心位置12は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)とは逆方向(矢印B方向)にずれているので、半導体装置10の全体におけるアンダーフィル樹脂4の量の分布のバランスを改善し、半導体装置10の全体での反りの対称性を改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。その結果、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。また、構成要素を追加することなく反りの対称性を改善することができるので、特許文献2の技術と比較して、半導体装置10が大型化しないようにできるとともに、製造コストが増大しないようにできる。
【0073】
また、配線基板2と、一方の面が、配線基板2の一方の面に対向するように、配線基板2に搭載されている半導体チップ1と、配線基板2の一方の面と半導体チップ1の一方の面との間隙に充填され、該間隙から一部分がはみ出している第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)と、半導体チップ1と、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)において前記間隙からはみ出ている部分(フィレット5)と、を覆うように、配線基板2の一方の面に形成されている第2樹脂(封止樹脂6)と、を備え、第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11と、半導体チップ1の中心位置12とは、配線基板2の一方の面に沿う方向において相互にずれており、第2樹脂(封止樹脂6)の中心位置14は、配線基板2の中心位置13に対して、半導体チップ1の中心位置12に対する第1樹脂(アンダーフィル樹脂4)の中心位置11のずれ方向(矢印A方向)と同方向(矢印A方向)にずれているので、半導体装置10の全体における封止樹脂6の量の分布のバランスを改善し、半導体装置10の全体での反りの対称性を改善することができる。よって、半導体装置10の反りを抑制することができる。その結果、半導体装置10の実装性及び実装信頼性を向上することができる。また、構成要素を追加することなく反りの対称性を改善することができるので、特許文献2の技術と比較して、半導体装置10が大型化しないようにできるとともに、製造コストが増大しないようにできる。
【0074】
一般的に、アンダーフィル樹脂4の厚さは例えば数μm程度であるのに対して、封止樹脂6の厚さは例えば100μオーダーである。また、封止樹脂6はフィラーの含有率がアンダーフィル樹脂4よりも高いためにアンダーフィル樹脂4よりも剛性が高い。これらのことにより、アンダーフィル樹脂4が反りに与える影響よりも封止樹脂6が反りに与える矯正効果の方が大きくなる。このため、ずれ量S1の調節による反りの改善効果よりも、ずれ量S2の調節による反りの改善効果の方が大きくなることが期待できる。
【0075】
なお、上記の第1の実施形態では、パッケージ・オン・パッケージ(PoP)用のPoPランド7を備える例を説明したが、PoPランド7を備えない構造としても良く、この場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
図7及び図8は第2の実施形態に係る半導体装置20の平面図、図9は図7の要部拡大図である。このうち図8は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図7及び図8は個々の半導体装置(パッケージ)20を個片化する前の状態を示す。また、図1及び図2は半導体装置20の断面図を兼ねる。
【0077】
図8に示す動線18は、本実施形態の場合のアンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の先端部位置17の動線である。本実施形態は、図8に示すように、チップ1の相互に隣り合う2つの辺(例えば、図8の右辺及び下辺)に沿ってL字状にアンダーフィル樹脂注入ノズルを移動させながらアンダーフィル樹脂4を基板2とチップ1との間隙に充填した例である。
【0078】
このため、フィレット5は、チップ1の相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さくなっている。すなわち、フィレット5において、例えば、チップ1における図7及び図8の右辺及び下辺(図1の手前の辺及び左辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W1が相対的に大きい大寸法部5aであり、その他の辺(図7の左辺及び上辺、図1の右辺及び奥の辺)に沿う部分は、基板2とチップ1との間隙からのはみ出し幅W2が相対的に小さい小寸法部5bである。
【0079】
このように、フィレット5は、基板2の一方の面に沿う方向におけるチップ1の中心位置12を基準として、非対称となっている。つまり、基板2の一方の面に沿う方向におけるフィレット5の中心位置11は、図7及び図9ではチップ1の中心位置12の右下方向(図7及び図9の矢印C方向)にずれている。このように、フィレット5の形状の非対称は、チップ1の周囲におけるアンダーフィル樹脂注入辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)のフィレット5(大寸法部5a)の幅が、その他の辺のフィレット5(小寸法部5b)の幅よりも大きくなるために生じる。
【0080】
本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の左辺及び右辺と平行な方向におけるチップ1の中心位置12と基板2の中心位置13とのずれ量S1は、0よりも大きい。また、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の上辺及び下辺と平行な方向におけるチップ1の中心位置12と基板2の中心位置13とのずれ量S3は、0よりも大きい。そして、中心位置12は中心位置13に対して図7乃至図9の左上方向(矢印D方向)にずれている。上述したように、アンダーフィル樹脂注入辺のフィレット5の幅W1は他辺のフィレット5の幅W2よりも大きくなる。このため、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす方向は、チップ1のアンダーフィル樹脂注入辺が半導体装置10の端(縁辺)から遠ざかる方向に設定する。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の2つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の各々が、当該2つの辺の最も近くにそれぞれ位置する半導体装置端部(縁辺)から遠ざかる方向に、チップ1の中心位置12を配線基板2の中心位置13に対してずらす。換言すれば、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図7乃至図9の矢印C方向)とは逆方向(図7乃至図9の矢印D方向)にずれている。つまり、チップ1の中心位置12は、基板2の中心位置13に対して、2つのアンダーフィル樹脂注入辺の間の角の対角の方向にずれている。
【0081】
また、本実施形態の場合、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7及び図8におけるチップ1の左辺及び右辺と平行な方向における封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2は、0よりも大きい。また、例えば、基板2の一方の面に沿う方向であって、図7におけるチップ1の上辺及び下辺と平行な方向における封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S4は、0よりも大きい。そして、中心位置14は中心位置13に対して図7乃至図9の右下方向(矢印C方向)にずれている。換言すれば、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、チップ1の中心位置12に対するアンダーフィル樹脂4の中心位置11のずれ方向(図7乃至図9の矢印C方向)と同方向(図7乃至図9の矢印C方向)にずれている。すなわち、アンダーフィル注入ノズルによりアンダーフィル樹脂4の注入が行われるチップ1の2つの辺(アンダーフィル樹脂注入辺)の方向に、封止樹脂6の中心位置14を配線基板2の中心位置13に対してずらす。つまり、封止樹脂6の中心位置14は、基板2の中心位置13に対して、2つのアンダーフィル樹脂注入辺の間の角の方向にずれている。
【0082】
このように、本実施形態の場合、例えば、ずれ量S1>0、且つ、ずれ量S3>0であるとともに、ずれ量S2>0、且つ、ずれ量S4>0である。ただし、ずれ量S1>0、且つ、ずれ量S3>0であるが、ずれ量S2=0、且つ、ずれ量S4=0であっても良いし、或いは、ずれ量S1=0、且つ、ずれ量S3=0であるが、ずれ量S2>0、且つ、ずれ量S4>0であっても良い。
【0083】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0084】
本実施形態の場合、基板2へのチップ1の実装は、例えば、チップ1の中心位置12が基板2の中心位置13に対して図7乃至図9の左上方向(矢印D方向)にずれるように行う。なお、このように基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるように、基板2のフリップチップ実装用電極パッドを予め配置及び設計しておくことにより、基板2の中心位置13に対してチップ1の中心位置12がずれるような実装を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の場合、アンダーフィル樹脂4の注入は、図8に動線18を示すように、チップ1の互いに隣り合う2つの辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)に沿ってアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)を移動させながら行う。
【0086】
アンダーフィル樹脂4のフィレット5は、チップ1の周囲のうち注入を行った辺(例えば、図7及び図8の右辺及び下辺)に沿う部分では相対的に大きい大寸法部5aとなり、その他の辺(例えば、図7及び図8の左辺及び上辺)に沿う部分では相対的に小さい小寸法部5bとなる。
【0087】
アンダーフィル樹脂4の注入が完了すると、フリップチップ実装体を加熱することによりアンダーフィル樹脂4を硬化させる。
【0088】
次に、アンダーフィル樹脂4が充填及び硬化されたフリップチップ実装体を封止樹脂6により封止する。封止樹脂6は、例えば、その中心位置14が基板2の中心位置13に対して図7乃至図9の右下方向(矢印C方向)にずれるように行う。
【0089】
このように封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらして形成することにより、パッケージの中心(基板2の中心位置13)を基準とする封止樹脂量のバランスを改善することができる。
【0090】
このようにチップ1の中心位置12と、封止樹脂6の中心位置14と、をずらすことにより、封止樹脂6の量の実質的な偏在を軽減し、半導体装置20の反り挙動を対称に近い状態に改善することができる。
【0091】
なお、ずれ量S1及びS2の範囲は、上述の第1の実施形態と同様である。また、ずれ量S3の範囲は、ずれ量S1と同様であり、ずれ量S4の範囲は、ずれ量S2と同様である。
【0092】
ただし、アンダーフィル樹脂4の注入方法に応じてチップ1のそれぞれの辺におけるフィレット5のはみ出し幅を異なる値にできるため、ずれ量S1とS3は互いに同一である必要は無く、同様に、ずれ量S2とずれ量S4は互いに同一である必要は無い。この点については、図15等を用いて後に説明する第4の実施形態、並びに、図21等を用いて後に説明する第6の実施形態でも同様である。
【0093】
また、その他の工程については第1の実施形態と同様に行うことにより、図7及び図8に示すような本実施形態に係る半導体装置20を得ることができる。
【0094】
第2の実施形態によれば、アンダーフィル樹脂4の注入をチップ1の互いに隣り合う2辺に沿って行った場合に、換言すれば、基板2とチップ1との間隙からのアンダーフィル樹脂4のはみ出し幅が、アンダーフィル樹脂4においてチップ1の相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さい場合に、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
〔第3の実施形態〕
図10は第3の実施形態に係る半導体装置30の断面図、図11は図10の要部拡大図、図12及び図13は第3の実施形態に係る半導体装置30の平面図である。このうち図13は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図14は図12の要部拡大図である。なお、図12及び図13は個々の半導体装置(パッケージ)30を個片化する前の状態を示す。
【0096】
第3の実施形態は、図10乃至図14から分かるように、封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2が0である点でのみ上記の第1の実施形態と相違し、その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0097】
以上のような第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
〔第4の実施形態〕
図15及び図16は第4の実施形態に係る半導体装置40の平面図である。このうち図16は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。また、図17は図15の要部拡大図である。なお、図15及び図16は個々の半導体装置(パッケージ)40を個片化する前の状態を示す。また、図10及び図11は半導体装置40の断面図を兼ねる。
【0099】
第4の実施形態は、図15乃至図17から分かるように、封止樹脂6の中心位置14と基板2の中心位置13とのずれ量S2、S4が0である点でのみ上記の第2の実施形態と相違し、その他の点は第2の実施形態と同様である。
【0100】
以上のような第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
〔第5の実施形態〕
図18は第5の実施形態に係る半導体装置50の断面図、図19及び図20は第5の実施形態に係る半導体装置50の平面図である。このうち図20は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図19及び図20は個々の半導体装置(パッケージ)50を個片化する前の状態を示す。また、図18の要部拡大図は図11と同様であり、図19の要部拡大図は図14と同様であるため、それぞれ省略する。
【0102】
第5の実施形態は、図18乃至図20、図11及び図14から分かるように、封止樹脂6による封止を複数の半導体装置50に対して一括して行う点で上記の第3の実施形態と相違する。更に、第5の実施形態は、半導体装置50がPoPランド7を備えていない点で上記の第3の実施形態と相違する。第5の実施形態は、その他の点は第3の実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態の場合、半導体装置50は、封止樹脂6を複数の半導体装置50に対して一括して行う一括封止タイプである。このため、図18乃至図20に示すように、封止樹脂6は個々の半導体装置50の基板2の全面を覆っている。つまり、基板2の面積と封止樹脂6の面積とがほぼ1:1となっている。このため、第1の実施形態とは異なり、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらすことによって半導体装置50の対称性を改善することができない。しかし、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす(ずれ量S1を0よりも大きくする)ことにより、半導体装置50の対称性を改善することができる。すなわち、第5の実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0104】
〔第6の実施形態〕
図21及び図22は第6の実施形態に係る半導体装置60の平面図である。このうち図22は、アンダーフィル樹脂4を形成する際のアンダーフィル樹脂注入ノズル(図示略)の動作(動線18)を示している。なお、図21及び図22は個々の半導体装置(パッケージ)60を個片化する前の状態を示す。また、図18は半導体装置60の断面図を兼ねる。なお、図21の要部拡大図は図17と同様であり、本実施形態の場合の図18の要部拡大図は図11と同様であるため、それぞれ省略する。
【0105】
第6の実施形態は、封止樹脂6による封止を複数の半導体装置60に対して一括して行う点で上記の第4の実施形態と相違する。更に、第6の実施形態は、半導体装置60がPoPランド7を備えていない点で上記の第4の実施形態と相違する。第6の実施形態は、その他の点は第4の実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態の場合、半導体装置60は、封止樹脂6を複数の半導体装置60に対して一括して行う一括封止タイプであるため、図18、図21及び図22に示すように、封止樹脂6は個々の半導体装置60の基板2の全面を覆っている。つまり、基板2の面積と封止樹脂6の面積とがほぼ1:1となっている。このため、第2の実施形態とは異なり、封止樹脂6の中心位置14を基板2の中心位置13に対してずらすことによって半導体装置60の対称性を改善することができない。しかし、チップ1の中心位置12を基板2の中心位置13に対してずらす(ずれ量S1、S3を0よりも大きくする)ことにより、半導体装置60の対称性を改善することができる。すなわち、第6の実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
〔第7の実施形態〕
図23は第7の実施形態に係る半導体装置70の断面図、図24は図23の要部拡大図である。
【0108】
上述の各実施形態では、樹脂封止されたFCBGAについて説明したが、本実施形態に係る半導体装置70は、図23及び図24に示すように、封止樹脂6を備えていない点でのみ第3又は第4の実施形態と相違し、その他の点は第3又は第4の実施形態と同様である。
【0109】
第7の実施形態によれば、封止樹脂6を備えていない半導体装置70において、上述の第3又は第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
上記の各実施形態では、アンダーフィル樹脂4の注入をチップ1の1つの辺又は2つの辺に沿ってニードル等を移動させながら行う例を説明したが、例えば、図27に示すように、チップ1の周囲の一点にニードル等を固定してアンダーフィル樹脂4を注入した場合、つまり、ニードル位置111を中心とする大寸法部105aが形成されている場合にも同様に適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体チップ
2 配線基板
3 バンプ
4 アンダーフィル樹脂
5 フィレット
5a 大寸法部
5b 小寸法部
6 封止樹脂
7 PoPランド
8 BGAボール
10 半導体装置
11 アンダーフィル樹脂(第1樹脂)の中心位置
12 半導体チップの中心位置
13 配線基板の中心位置
14 封止樹脂(第2樹脂)の中心位置
15 ダイシングライン
17 先端部位置
18 動線
20 半導体装置
30 半導体装置
40 半導体装置
50 半導体装置
60 半導体装置
70 半導体装置
A 矢印
B 矢印
C 矢印
D 矢印
S1 配線基板の中心位置と半導体チップの中心位置とのずれ量
S2 配線基板の中心位置と封止樹脂の中心位置とのずれ量
S3 配線基板の中心位置と半導体チップの中心位置とのずれ量
S4 配線基板の中心位置と封止樹脂の中心位置とのずれ量
W1 フィレットの大寸法部の幅
W2 フィレットの小寸法部の幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、
を備え、
前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、
前記半導体チップの中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂を更に備え、
前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線基板の中心位置に対する前記半導体チップの中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線基板の中心位置に対する前記半導体チップの中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値の100分の1以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
配線基板と、
一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂と、
を備え、
前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、
前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記配線基板の中心位置に対する前記第2樹脂の中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項2又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅は、前記第1樹脂において前記半導体チップの1つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅は、前記第1樹脂において前記半導体チップの相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1樹脂の熱膨張係数よりも前記第2樹脂の熱膨張係数の方が大きいことを特徴とする請求項2、5、6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1樹脂のガラス転移温度よりも前記第2樹脂のガラス転移温度の方が低いことを特徴とする請求項2、5、6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、前記半導体チップの中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記1つの辺と対向する辺の方向に前記半導体チップの中心位置をずらすことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程では、前記半導体チップの互いに隣り合う2つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記2つの辺の間の角に対する対角の方向に前記半導体チップの中心位置をずらすことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に第2樹脂を形成する第3工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第3工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺の方向に、前記第2樹脂の中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第3工程では、前記1つの辺の方向に前記第2樹脂の中心位置をずらすことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2工程では、前記半導体チップの互いに隣り合う2つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記2つの辺の間の角の方向に前記第2樹脂の中心位置をずらすことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
配線基板と、
一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、
を備え、
前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、
前記半導体チップの中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向とは逆方向にずれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂を更に備え、
前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線基板の中心位置に対する前記半導体チップの中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線基板の中心位置に対する前記半導体チップの中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値の100分の1以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
配線基板と、
一方の面が、前記配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に搭載されている半導体チップと、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙に充填され、前記間隙から一部分がはみ出している第1樹脂と、
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に形成されている第2樹脂と、
を備え、
前記第1樹脂の中心位置と、前記半導体チップの中心位置とは、前記配線基板の前記一方の面に沿う方向において相互にずれており、
前記第2樹脂の中心位置は、前記配線基板の中心位置に対して、前記半導体チップの中心位置に対する前記第1樹脂の中心位置のずれ方向と同方向にずれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記配線基板の中心位置に対する前記第2樹脂の中心位置のずれ量は、前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項2又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅は、前記第1樹脂において前記半導体チップの1つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記間隙からの前記第1樹脂のはみ出し幅は、前記第1樹脂において前記半導体チップの相互に隣り合う2つの辺に沿う部分では相対的に大きく、その他の辺に沿う部分では相対的に小さいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1樹脂の熱膨張係数よりも前記第2樹脂の熱膨張係数の方が大きいことを特徴とする請求項2、5、6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1樹脂のガラス転移温度よりも前記第2樹脂のガラス転移温度の方が低いことを特徴とする請求項2、5、6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺が、当該辺の最も近くに位置する半導体装置端部から遠ざかる方向に、前記半導体チップの中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記1つの辺と対向する辺の方向に前記半導体チップの中心位置をずらすことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程では、前記半導体チップの互いに隣り合う2つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記2つの辺の間の角に対する対角の方向に前記半導体チップの中心位置をずらすことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
半導体チップの一方の面が、配線基板の一方の面に対向するように、前記配線基板に前記半導体チップを搭載する第1工程と、
前記配線基板の前記一方の面と前記半導体チップの前記一方の面との間隙から一部分がはみ出すように、該間隙に第1樹脂を充填する第2工程と、
前記半導体チップと、前記第1樹脂において前記間隙からはみ出ている部分と、を覆うように、前記配線基板の前記一方の面に第2樹脂を形成する第3工程と、
を備え、
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺、又は、互いに隣り合う2つの辺に沿って第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって、前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第3工程では、前記第2工程において前記第1樹脂注入ノズルにより前記第1樹脂の注入が行われる前記半導体チップの1つ又は2つの辺の方向に、前記第2樹脂の中心位置を前記配線基板の中心位置に対してずらすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2工程では、前記半導体チップの何れか1つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第3工程では、前記1つの辺の方向に前記第2樹脂の中心位置をずらすことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2工程では、前記半導体チップの互いに隣り合う2つの辺に沿って前記第1樹脂注入ノズルを移動させながら、該第1樹脂注入ノズルによって前記間隙へ前記第1樹脂を注入し、
前記第1工程では、前記2つの辺の間の角の方向に前記第2樹脂の中心位置をずらすことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−232534(P2010−232534A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80212(P2009−80212)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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