説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 複数の半導体チップが積層して配置された半導体装置及び半導体装置の製造方法に関し、下段側の半導体チップに接続されたワイヤが変形しにくく、且つ薄型に構成することのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 半導体装置は、基板12に搭載された第1の半導体チップ14と、第1の半導体チップ14に積層して配置された第2の半導体チップ16と、第1及び第2の半導体チップを基板12に電気的に接続するワイヤ26,28とからなり、第2の半導体チップ16は、第1の接着層38と第2の接着層40とを含み、その界面に微細な凹凸構造42が一様に形成された絶縁性接着層36により第1の半導体チップ14に固定され、第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層36の第1の接着層38に入り込んでいる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤボンディングされた複数の半導体チップを積層配置して封止した構造の半導体装置及び半導体装置の製造方法に関し、より詳細には、ボンディングされたワイヤのループ上に半導体チップが配置されるように構成された半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の発達に伴い、電子機器に使用される半導体装置には、小型化、薄型化、多機能化、高性能化、高密度化、低コスト化がますます要求されている。このような要求に対処するべく、複数の半導体チップを積層配置してなる三次元構造の半導体装置が実用化されている。このような半導体装置はスタックドパッケージと呼ばれる。
【0003】
半導体装置は、半導体チップをチップ搭載部材(例えば、基板やリードフレーム)に搭載して構成される。半導体チップとチップ搭載部材とを電気的に接続するために、ワイヤボンディング法が低コストな接続方法として広く用いられており、スタックドパッケージにおいてもワイヤボンディング法が採用されている。例えばチップ搭載部材として基板が使用されるスタックドパッケージにおいては、第1の半導体チップを絶縁性接着層(接着剤)により基板に接着、固定し、第1の半導体チップを第1のワイヤにより基板に電気的に接続した後、第2の半導体チップを前に搭載した第1の半導体チップに積層して配置し、第2の半導体チップを絶縁性接着層(接着剤)により第1の半導体チップに接着、固定する。それから、第2の半導体チップを第2のワイヤにより基板に電気的に接続し、第1及び第2の半導体チップ及び第1及び第2のワイヤを封止樹脂により封止する。
【0004】
第2の半導体チップを第1の半導体チップに固着する絶縁性接着層は一般にエポキシ系樹脂等からなる接着剤が使用され、この接着剤は、液状の絶縁性接着層、又はフィルム状の絶縁性接着層として使用される。フィルム状の絶縁性接着層は、作業性及び生産性の点で有利なことが多いので、多く用いられている。例えば、フィルム状の絶縁性接着層を予め半導体ウエハの非回路面に貼り合わせておくと、フィルム状の絶縁性接着層をウエハレベルで一括処理することが可能であり、また、これによりダイシングされた個々の半導体チップに均一な量の接着剤が付与される。
【0005】
このようなワイヤボンディング接続を用いたスタックドパッケージにおいては、下段側の第1の半導体チップが上段側の第2の半導体チップよりも大きく、第1の半導体チップの電極パッドが第2の半導体チップよりも外側の領域に設けられているようにすると、第1のワイヤが第2の半導体チップに接触しないようにワイヤボンディングすることができる。しかし、積層する半導体チップの組み合わせによっては、同じ大きさの第1の半導体チップと第2の半導体チップが積層して配置され、第1のワイヤが第2の半導体チップの底面に接触する可能性がある。そこで、第1のワイヤが第2の半導体チップの底面に接触しないようにするために、第1のワイヤを第2の半導体チップを第1の半導体チップに固着する絶縁性接着層内に入り込ませる(埋め込む)ようにした提案がある(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【0006】
特許文献1では、上段の第2の半導体チップの裏面を下段の第1の半導体チップの表面に絶縁性接着層を用いて固着する際に、絶縁性接着層の厚みが第1の半導体チップに接続された第1のワイヤのループトップ(最上部)より高くなるように厚く設定する。この方法では、絶縁性接着層を第1の半導体チップ上に供給した後に第2の半導体チップを載置して、絶縁性接着層を加熱硬化させる。絶縁性接着層は液状のものでもフィルム状のものでもよい。
【0007】
この場合の問題点は、第1のワイヤのループを変形させないように第1及び第2の半導体チップ間の距離を絶縁性接着層で保つようにしているため、絶縁性接着層の厚みが大きくなり、積層する第2の半導体チップの位置が高くなり、半導体装置全体を薄型化することが困難である。また、絶縁性接着層の厚さの制御が困難であり、第1の半導体チップと第2の半導体チップの平行度を制御することも困難である。
【0008】
特許文献2では、第2の半導体チップと、第1の半導体チップに接続された第1のワイヤとの間にポリイミド系の絶縁性樹脂層を介在させている。具体的には、予め第2の半導体チップの裏面に、離間作用を目的としたポリイミド系の絶縁性樹脂膜のような100℃〜200℃での塑性変形が少ない樹脂層と、接着作用を目的としたエポキシ系樹脂等の加熱により流動性が高まるような樹脂層とからなる2層構造のフィルム状ダイボンド材を貼りつけておき、これにより、第2の半導体チップを第1の半導体チップに搭載する際に、第1のワイヤが流動性の高い樹脂層に入り込み、塑性変形が少ない樹脂層に当接して、第2の半導体チップの裏面が第1のワイヤに接触することを防止する。
【0009】
この場合の問題点は、第2の半導体チップを第1の半導体チップに積層搭載する際に、第1の半導体チップに接続された第1のワイヤのループが、上記2層構造からなるダイボンド材に押しつけられることである。なお、第1のワイヤのループを流動性の高い樹脂層に埋め込ませるために加熱しながら積層搭載が行われる。従って、加熱により流動性の高い樹脂層の流動性が十分に高まっている場合には、第1のワイヤのループがその樹脂層に押しつけられても、第1のワイヤのループの変形はわずかである。しかし、第1のワイヤのループがその樹脂層を越えて離間層である塑性変形の少ない樹脂層に到達した場合には、塑性変形の少ない樹脂層は固いために第1のワイヤのループが変形しやすい。
【0010】
また、流動性の高い樹脂層の流動性が十分でない場合には、第1のワイヤのループがその樹脂層に押しつけられ、それに入り込んでいく際に、第1のワイヤに応力が加わり、第1のワイヤが変形しやすい。第1のワイヤの変形が生じると、隣接する第1のワイヤとの間でショートが生じる。とりわけ、第1の半導体チップの電極パッドのピッチが微細になった場合や、電極パッドの位置が第1の半導体チップの中央部に配置されているような場合には、第1のワイヤのショートの問題が生じやすい。
【0011】
特許文献3でも、第2の半導体チップと第1の半導体チップとをダイボンド材により接着する際に、第1の半導体チップに接続された第1のワイヤがダイボンド材の一部に入り込むように構成されている。第2の半導体チップを第1の半導体チップに積層搭載する際に、ダイボンド材への第1のワイヤの埋め込みが十分可能になるようにダイボンド材の粘度を低下させる工程を含む。
【0012】
また、第2の半導体チップの積層搭載に用いるダイボンド材は、加熱時の粘度が異なる複数の接着層からなるフィルム状の接着剤であり、第1の半導体チップと接触する側の接着層が低粘度であるように配置される。ダイボンド材は予め第2の半導体チップの裏面側に貼り付けられる。
【0013】
この場合の問題点は、上記特許文献2の場合と同様に、第2の半導体チップを第1の半導体チップに積層搭載する際に、第1のワイヤが変形し、隣接する第1のワイヤとの間でのショートが発生しやすいことである。
【0014】
【特許文献1】特開2001−60657号公報
【特許文献2】特開2002−222913号公報
【特許文献3】特開2004−72009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、複数の半導体チップが積層して配置され、下段側の半導体チップに接続されたワイヤが変形しにくく、且つ薄型に構成することのできる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による半導体装置は、チップ搭載部材に搭載された第1の半導体チップと、該第1の半導体チップ上に積層して配置された第2の半導体チップとを含む半導体装置において、該第1の半導体チップと該第2の半導体チップとの間には重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなる絶縁性接着層が配設され、該第1の接着層と該第2の接着層との界面には微細な凹凸構造が一様に形成されている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁性接着層は互いに重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなるので、第2の半導体チップを第1の半導体チップに積層搭載する際には、第1の半導体チップに接続された第1のワイヤが第1の接着層に入り込み、第2の接着層には入り込みにくくなっている。さらに、第1の接着層と第2の接着層との界面には微細な凹凸構造が一様に形成されているので、第2の半導体チップを第1の半導体チップに積層搭載する際に第1の半導体チップに接続されたワイヤが押しつけられてループが低くなるように変形しても、この微細な凹凸構造はワイヤに係合してワイヤが横にずれるのを防止し、隣接するワイヤとワイヤとの間でショートが生じることがなくなる。従って、第1の接着層の厚みがそれほど厚くなくてもよく、半導体装置全体を薄型化することができる。また、第1の半導体チップと第2の半導体チップの組み合わせの自由度が高い積層型半導体装置を得ることができる。
【0018】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、
第1の半導体チップをチップ搭載部材に搭載し、該第1の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第1のワイヤにより電気的に接続し、互いに重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなり、該第1の接着層と該第2の接着層の界面に微細な凹凸構造が形成されている絶縁性接着層の該第2の接着層が固着されている第2の半導体チップを該第1の半導体チップに積層して配置し、且つ該第1のワイヤの一部が該絶縁性接着層の該第1の接着層に入り込むように絶縁性接着層の該第1の接着層を該第1の半導体チップに固着し、該第2の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第2のワイヤにより電気的に接続する
ことを特徴とする。
【0019】
この半導体装置の製造方法によれば、上記した特徴をもつ半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例による半導体装置を示す断面図である。半導体装置10は、チップ搭載部材としての基板12と、基板12に搭載された第1の半導体チップ14と、第1の半導体チップ14に積層して配置された第2の半導体チップ16とからなる。
【0021】
基板12はボンディング端子18,20を有し、第1の半導体チップ14は電極パッド22を有し、第2の半導体チップ16は電極パッド24を有する。第1の半導体チップ14の電極パッド22と基板12のボンディング端子18とは第1のワイヤ26によってボンディングされ、電気的に接続されている。第2の半導体チップ16の電極パッド24と基板20のボンディング端子20とは第2のワイヤ28によってボンディングされ、電気的に接続されている。
【0022】
さらに、半導体装置10は、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28を封止する封止樹脂30を含む。基板12の裏面側には外部接続端子としてのはんだボール32が設けられている。基板12は図示しない導体による回路を含み、はんだボール32はその回路によってボンディング端子18,20に接続されている。
【0023】
第1の半導体チップ14は例えば主としてエポキシ樹脂系の接着剤からなる絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定されている。第2の半導体チップ16は絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定されている。絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる2層構造のものである。第1の接着層38は第1の半導体チップ14側にあり、第2の接着層40は第2の半導体チップ16側にある。
【0024】
第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。微細な凹凸構造42は、凸部と凹部とが交互に一定のピッチで形成されたものであり、凸部と凸部との間のピッチ又は凹部と凹部との間のピッチは第1の半導体チップ14の電極パッド22のピッチと同じかそれよりも小さい。
【0025】
図16は第1のワイヤ26が凹凸構造42の凹部に嵌合した例を示す断面図である。この例では、微細な凹凸構造42の凸部と凸部との間のピッチ又は凹部と凹部との間のピッチは、第1の半導体チップ14の電極パッド22のピッチ(第1のワイヤ26のピッチ)と同じである。
【0026】
図17は第1のワイヤ26が凹凸構造42の凹部に嵌合した他の例を示す断面図である。この例では、微細な凹凸構造42の凸部と凸部との間のピッチ又は凹部と凹部との間のピッチは、第1の半導体チップ14の電極パッド22のピッチ(すなわち第1のワイヤ26のピッチ)より小さい。微細な凹凸構造42の凸部又は凹部の数は第1の半導体チップ14の電極パッド22の数(第1のワイヤ26の数)の整数倍(図17では2倍)である。
【0027】
図1において、第1のワイヤ26は第1の接着層38に入り込んでいる(埋め込まれている)。第1のワイヤ26は第2の接着層40の表面に接し、凹凸構造42に嵌合している。第1のワイヤ26は実質的に第2の接着層40によって受け止められ、第2の半導体チップ16の底面に接触しないようになっている。第1の接着層38は比較的に軟らかく又は粘度の低い材料で形成され、第2の接着層40は第1の接着層38と比べて固く又は粘度の高い材料で形成される。
【0028】
すなわち、第2の半導体チップ16を絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定する際の加熱時において、第1の接着層38は第1のワイヤ26が第1の接着層38に容易に入り込むことができる硬度又は粘度を有し、第2の接着層40は第1のワイヤ26が第2の接着層40に入り込めず、凹凸構造42を維持できる硬度又は粘度を有し、塑性変形が少ない材料とする。
【0029】
第1及び第2の接着層38,40はそれぞれフィルム状の樹脂接着層からなるのが好ましい。この場合、互いに接着されている第1の接着層38と第2の接着層40とからなる絶縁性接着層36が貼りつけられている第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって押圧することにより両者を接着、固定するのが作業効率上好ましい。この場合、第1の接着層38が熱硬化型の接着剤からなるものとすれば、ハンドリングに好都合である。第1の接着層38が十分な接着力をもつ樹脂からなるのが好ましい。
【0030】
例えば、第1の接着層38は主としてエポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂とポリイミド樹脂の混合物からなる。第2の接着層40はポリイミド樹脂、又はポリイミド樹脂とエポキシ樹脂の混合物からなる。第1及び第2の接着層38,40がともにエポキシ樹脂とポリイミド樹脂の混合物からなる場合には、エポキシ樹脂とポリイミド樹脂の混合比を変えることにより両者の物性を互いに異ならせることができる。エポキシ樹脂とポリイミド樹脂の混合物においてエポキシ樹脂の混合比が低い場合(例えば数%程度)には、その混合樹脂の常温での粘度は100Pa・s程度であり、混合比が高い場合(例えば数10%程度)には、その混合樹脂の常温での粘度は10000Pa・s程度である。
【0031】
第1の接着層38は、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に搭載するときに70〜200℃程度に加熱した条件で、粘度が10〜50Pa・s程度に低下し、第1のワイヤ26が第1の接着層38に容易に入り込めるように流動性が高くなる材料にする。第2の接着層40は、加熱した条件で粘度が1000Pa・s程度以上あり、第1のワイヤ26が第2の接着層40に入り込めず、凹凸構造42を維持できるように塑性変形が少ない材料にする。
【0032】
また、第1及び第2の接着層38,40は、他の物質を混合したり、フィラーを入れたりして物性を調節することができる。第2の接着層40は無機フィラーを高濃度に含有して高い硬度をもつようにすることができる。
【0033】
第1の接着層38は低粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなり、第2の接着層40は高粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなるようにするのが好ましい。また、第1の接着層38は熱硬化性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなり、第2の接着層40は高粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなるようにしてもよい。熱硬化性樹脂を用いることで、接着強度を高める樹脂設計が容易となる。
【0034】
このように、絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなるので、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に積層搭載する際には、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって押しつけることにより、第1の半導体チップ14に接続された第1のワイヤ26が第1の接着層38に入り込み、第2の接着層40に達して第2の接着層40によって押しつけられ、ループが低くなるように変形するが、微細な凹凸構造42によって案内又は規制され、第1のワイヤ26が横にずれるのが防止される。従って隣接する第1のワイヤ26同士の間でショートが生じることを防止することができる。
【0035】
図24は凹凸構造42がない場合に第1のワイヤ26を押しつけるときに第1のワイヤ26が変形する例を示す図である。図24(A)は矢印Aで示されるように第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって移動しているところを示し、第1の半導体チップ14の一側面から見た図に相当する。図24(A)においては、複数の第1のワイヤ26がたがいに平行に並んでいる。第1のワイヤ26は基板12のボンディング端子18から立ち上がり、ループを形成しながら図24の紙面の向こう側に向かって延び、第1の半導体チップ14の電極パッド22に接続される。
【0036】
図24(B)は第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14に向かって押圧され、第2の半導体チップ16に固着されている絶縁性接着層36の第1の接着層38が第1の半導体チップ14に達し、第1のワイヤ26が軟らかい第1の接着層38に入り込み、固い第2の接着層40の表面に接触しているところを示す。第1のワイヤ26は第2の接着層40に押しつけられて、そのループの高さが低くなるように変形する。それによって、第1の接着層38の厚みを薄くでき、半導体装置10全体の薄型化が可能になる。しかし、第1のワイヤ26は第2の接着層40に押しつけられる際に第2の接着層40に沿って横方向にずれるように変形することがある。すると、隣接する第1のワイヤ26同士が互いに近寄るように変形し、互いに接触して、ショートが生じる可能性がある。
【0037】
図25は凹凸構造42がある場合に第1のワイヤ26を押しつけるときに第1のワイヤ26が変形する例を示す図である。図25(A)は矢印Aで示されるように第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって移動させているところを示し、第1の半導体チップ14の一側面から見た図に相当する。図25(A)においては、複数の第1のワイヤ26がたがいに平行に並んでいる。第1のワイヤ26は基板12のボンディング端子18から立ち上がり、ループを形成しながら図25の紙面の向こう側に向かって延び、第1の半導体チップ14の電極パッド22に接続される。
【0038】
図25(B)は第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14に向かって押圧され、第2の半導体チップ16に固着されている絶縁性接着層36の第1の接着層38が第1の半導体チップ14に達し、第1のワイヤ26が軟らかい第1の接着層38に入り込み、固い第2の接着層40の表面に接触しているところを示す。第1のワイヤ26は第2の接着層40に押しつけられて、そのループの高さが低くなるように変形する。それによって、第1の接着層38の厚みを薄くでき、半導体装置10全体の薄型化が可能になる。この場合には、第1のワイヤ26が第2の接着層40に押しつけられる際に第2の接着層40に沿って横方向にずれるような力を受けても、第1のワイヤ26は凹凸構造42によって案内又は規制されているので、第2の接着層40に沿って横方向にずれるように変形しない。
【0039】
つまり、第1のワイヤ26は凹凸構造42に達した段階で凹凸構造42の凹部によって案内又は規制され、あるいは凹凸構造42の凹部に嵌合し、第1のワイヤ26が第2の接着層40に押しつけられても第2の接着層40に沿って横方向にずれることがない。従って、隣接する第1のワイヤ26同士が互いに接触してショートが生じることがない。このように、第1の半導体チップ14のボンディング端子18は第2の半導体チップ16に重なる領域に配置されることができ、第1の半導体チップ14と第2の半導体チップ16の組み合わせの自由度が高い積層型半導体装置を得ることができる。
【0040】
図2は第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に固着する絶縁性接着層36の例を示す断面図である。絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる2層構造のものである。第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。微細な凹凸構造42は、第2の接着層40側から見て、凸部42Pと凹部42Qを有する。凸部42Pは台形状であり、凹部42Qは円弧状である。凸部42Pと凸部42Pとの間のピッチ又は凹部42Qと凹部42Qとの間のピッチは一定である。
【0041】
図3は絶縁性接着層36の他の例を示す断面図である。この例では、凹凸構造42の凸部42P及び凹部42Qは三角形状又は鋸歯状に形成されている。
【0042】
図4は図2に示す絶縁性接着層36の凹凸構造42の斜視図である。この凹凸構造42は凸部42Pと凹部42Qとからなり、互いに平行に長く延びる。
【0043】
図5は図3に示す絶縁性接着層36の凹凸構造42の斜視図である。この凹凸構造42は凸部42Pと凹部42Qとからなり、凸部42P及び凹部42Qはそれぞれ2斜面42Rを有する鋸歯の頂部及び底部として形成される。凸部42P及び凹部42Qは互いに平行に長く延びる。
【0044】
図6は絶縁性接着層36の凹凸構造42の他の例を示す斜視図である。この凹凸構造42は4斜面42Rを有する四角錐の頂部を凸部42Pとする形状のものであり、凹部42Qは連続する四角錐の底部として直交する2方向に長く延びる。四角錐の頂部を通る断面をとると、図6の凹凸構造42は図3の形状に相当する。
【0045】
図7は絶縁性接着層36の凹凸構造42の他の例を示す平面図である。この凹凸構造42は格子状に形成されている。凸部42Pは縦横に列状に不連続に配置された四角柱形状の突起であり、凹部42Qは凸部42Pのまわりに縦横の列状に連続して長く延びる。図7の凹凸構造42は断面をとると、図2の形状に相当する。
【0046】
図8は図7と同様に格子状に形成されている凹凸構造42を示す。ただし図8の凸部42Pは4つの三角柱形状の凸起42Sの集合体として形成され、凹部42Qは凸部42Pのまわりに縦横の列状に連続して長く延びる。
【0047】
図9は絶縁性接着層36の凹凸構造42の他の例を示す平面図である。この凹凸構造42では、凸部42Pは円柱形状の突起である。凸部42Pは縦方向に列状に連続に配置され、隣接する2つの縦方向の列では、凸部42Pは半ピッチずらして配置される。凹部42Qは凸部42Pのまわりに形成される。
【0048】
図2から図9を参照して種々の凹凸構造42の例を示したが、本発明では、凹凸構造42は図示した例に限定されることなく種々の形状に形成されることができる。ただし、凸部42Pの形状が図3及び図6に示されるように斜面の頂部として形成されていると、第1のワイヤ26をその斜面に沿って凹部42Qに誘導しやすい。凸部42Pと凹部42Qの間の高さの差は、例えば第1のワイヤ26の直径が25μmの場合に、5〜30μm程度であるのが好ましい。
【0049】
図10及び図11は図1の半導体装置10の変形例を示す断面図である。図10及び図11の半導体装置10は、図1の半導体装置10と同様に、チップ搭載部材としての基板12と、基板12に搭載された第1の半導体チップ14と、第1の半導体チップ14に積層して配置された第2の半導体チップ16とからなる。第1の半導体チップ14の電極パッド22と基板12のボンディング端子18とは第1のワイヤ26によって電気的に接続されている。第2の半導体チップ16の電極パッド24と基板20のボンディング端子20とは第2のワイヤ28によって電気的に接続されている。さらに、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28は封止樹脂30によって封止されている。基板12の裏面側には外部接続端子としてのはんだボール32が設けられている。
【0050】
第1の半導体チップ14は絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定され、第2の半導体チップ16は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定されている。第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が形成されている。そして、第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層36の第1の接着層38に入り込み、凹凸構造42に接している。
【0051】
図10においては、第1の接着層38と第2の接着層40とは第1及び第2の半導体チップ14,16と同様の形状に形成され、凹凸構造42は第1の接着層38と第2の接着層40との界面の一部の第1の半導体チップ14の電極パッド22を覆う領域にのみ形成されている。従って、第1のワイヤ26は第1の接着層38と第2の接着層40の界面の凹凸構造42に達した段階で凹凸構造42の凹部によって案内又は規制され、あるいは第1のワイヤ26は凹凸構造42の凹部に嵌合する。従って、図10の半導体装置10の作用は、図1の半導体装置10の作用と同様である。
【0052】
図11においては、第1の接着層38は第1の半導体チップ14と同様の形状に形成され、第2の接着層40は第1の半導体チップ14の周辺部、すなわち第1の半導体チップ14の電極パッド22を覆う領域に相当する環状の形状に形成されている。凹凸構造42は第1の接着層38と第2の接着層40との界面に形成されている。従って、第1のワイヤ26は第1の接着層38と第2の接着層40の界面の凹凸構造42に達した段階で凹凸構造42の凹部によって案内又は規制され、あるいは第1のワイヤ26は凹凸構造42の凹部に嵌合する。従って、図11の半導体装置10の作用は、図1の半導体装置10の作用と同様である。
【0053】
図12は第1の半導体チップと第2の半導体チップの重ね合わせの例を示す平面透視図である。図15は図12の矢印XVから見た半導体装置の側面図である。図12及び図15において、第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14よりも大きい。第1のワイヤ26は第1の半導体チップ14に接続され、第2のワイヤ28が第2の半導体チップ16に接続される。このように、本発明によれば、第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14と同じ大きさの場合だけでなく、上段側の第2の半導体チップ16が下段側の第1の半導体チップ14よりも大きい場合にも、スタックドパッケージタイプの半導体装置を構成することができる。
【0054】
図13は第1の半導体チップ14と第2の半導体チップ16の重ね合わせの例を示す平面透視図である。図面の上下方向で見ると、第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14よりも大きく、図面の横方向で見ると、第1の半導体チップ14が第2の半導体チップ16よりも大きい。第1のワイヤ26は第1の半導体チップ14に接続され、第2のワイヤ28が第2の半導体チップ16に接続される。第1の半導体チップ14はセンターパッドのタイプのものである。
【0055】
図18は電極パッド22が中央部に列状に配置されているセンターパッドのタイプの第1の半導体チップ14の例を示す平面図である。図13の第1のワイヤ26は図18の電極パッド22に接続される。センターパッドのタイプの第1の半導体チップ14の場合、第1のワイヤ26の長さが長くなり、その分だけ変形しやすいので、ショートが発生しやすい。従って、2層構造の絶縁性接着層36に凹凸構造42を採用することにより、第1のワイヤ26のずれを抑制し、ショートの発生を防止することができる。
【0056】
図14は第1の半導体チップ14と第2の半導体チップ16の重ね合わせの例を示す平面透視図である。図面の上下方向で見て、第1の半導体チップ14が第2の半導体チップ16よりも大きく、図面の横方向で見て、第2の半導体チップ16が第1の半導体チップ14よりも大きい。第1のワイヤ26は第1の半導体チップ14に接続され、第2のワイヤ28が第2の半導体チップ16に接続される。第1のワイヤ26及び第2のワイヤ28は千鳥状に列状に配置されている。
【0057】
図19は電極パッド22が千鳥状に列状に配置されている第1の半導体チップ14の例を示す平面図である。電極パッド22は半導体チップの各辺に沿って2列に配置され、1列目の電極パッド22と2列目の電極パッド22とが互いに半ピッチずらされている。図19においては、電極パッド22は半導体チップの4辺に設けられている。図14の第1のワイヤ26は第1の半導体チップ14の2辺に沿って配置されているので、図14の第1の半導体チップ14は図19の第1の半導体チップ14において電極パッド22が2辺に沿って設けられているものに相当する。
【0058】
図20は半導体チップの電極パッド22が列をなして配置され、かつ第1のワイヤ26が千鳥配置となるように電極パッド22にボンディングされている第1の半導体チップ14の例を示す平面図である。つまり、電極パッド22は一列に配置されているが、第1のワイヤ26の電極パッド22への接続位置が千鳥配置となっている。図19及び図20の千鳥配置を採用した半導体チップの場合、第1のワイヤ26のピッチが微細になり、第1のワイヤ26の変形時にショートが発生しやすいが、凹凸構造42を採用することにより、第1のワイヤ26のずれを抑制し、ショートの発生を防止することができる。なお、図18,19,20の配置はあらゆる半導体チップに採用することができる。
【0059】
図21は半導体装置の変形例を示す断面図である。この例では、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に固着する絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる2層構造のものである。第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。この例においては、第1の接着層38に無機フィラー44が混合されている。無機フィラー44は第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に押圧するときに第1の接着層38の厚さを一定にするスペーサの作用をする。
【0060】
図22は半導体装置の変形例を示す断面図である。半導体装置10は、チップ搭載部材としての基板12と、基板12に搭載された第1の半導体チップ14と、第1の半導体チップ14に積層して配置された第2の半導体チップ16と、第2の半導体チップ16に積層して配置された第3の半導体チップ46とからなる。第1の半導体チップ14の電極パッド22と基板12のボンディング端子18とは第1のワイヤ26によって電気的に接続されている。第2の半導体チップ16の電極パッド24と基板20のボンディング端子20とは第2のワイヤ28によって電気的に接続されている。第3の半導体チップ46の電極パッド48と基板20のボンディング端子50とは第3のワイヤ52によって電気的に接続されている。第1の半導体チップ14はセンターパッドタイプのものである。
【0061】
第1、第2及び第3の半導体チップ14,16,46及び第1、第2及び第3のワイヤ26,28,52は封止樹脂30によって封止されている。基板12の裏面側には外部接続端子としてのはんだボール32が設けられている。さらに、第1の半導体チップ14は絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定され、第2の半導体チップ16は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定され、第3の半導体チップ46は絶縁性接着層54によって第2の半導体チップ16に接着、固定されている。絶縁性接着層54は絶縁性接着層36と同様に物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる2層構造のものであり、第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。このように、本発明では、2つの半導体チップを積層するばかりでなく、3つ以上の半導体チップを積層することができる。
【0062】
さらに、第1及び第2の半導体チップ14,16の表面には絶縁性樹脂からなるカバー膜56,58が設けられている。図23は図22の半導体チップを示す平面図である。図23(A)は第1の半導体チップ14の表面に設けられたカバー膜56を示す。図23(B)は第2の半導体チップ16の表面に設けられたカバー膜58を示す。カバー膜56,58はそれぞれ第1及び第2の半導体チップ14,16の電極パッド22,24が設けられている面の少なくとも電極パッド22,24から半導体チップ14,16の外周端までの領域に設けられている。カバー膜56,58は第1及び第2のワイヤ26,28を押しつけたときに第1及び第2のワイヤ26,28が第1及び第2の半導体チップ14,16の表面に直接に接触しないようにするために設けられている。
【0063】
図26は本発明の実施例による半導体装置の製造方法を示す図である。図26(A),(B)において、第1の半導体チップ14をチップ搭載部材としての基板12に搭載する。第1の半導体チップ14は上面に回路及び電極パッド22を有し、基板12はボンディング端子18,20を有する。第1の半導体チップ14の下面(非回路面)にはフィルム状の絶縁性接着層34が固着されており、基板12を加熱しながら矢印で示されるように第1の半導体チップ14を基板12に向かって押しつけることにより、第1の半導体チップ14を絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定する。それから、第1の半導体チップ14の電極パッド22と基板12のボンディング端子18とを第1のワイヤ26によってワイヤボンディングする。なお、接着に際して、基板12を加熱する代わりに、第1の半導体チップ14を加熱してもよい。
【0064】
図26(C),(D),(E)において、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に積層して配置し、搭載する。第2の半導体チップ16は上面に回路及び電極パッド24を有し、第2の半導体チップ16の下面(非回路面)には絶縁性接着層36が固着されている。絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなり、第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。絶縁性接着層36の詳細な構造は例えば図1から図9に示されているものに相当する。
【0065】
図26(C)に示す状態においては、絶縁性接着層36の第2の接着層40が第2の半導体チップ16に固着されており、絶縁性接着層36の第1の接着層38は第2の接着層40に重ね合わせられて固着された状態で第1の半導体チップ14に対面している。
第2の半導体チップ16を加熱しながら矢印で示されるように第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって押しつけることにより、第2の半導体チップ16を絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定する。絶縁性接着層36の第1の接着層38は、例えば、加熱により第2の接着層40よりも粘度が低くなり、70〜200℃程度に加熱することで10〜50Pa・s程度の粘度となる。そこで、第1の半導体チップ14にボンディングされている第1のワイヤ26の少なくとも一部が第1の接着層38に容易に入り込む。第1のワイヤ26の少なくとも一部は第1の接着層38に入り込むが、第2の接着層40には入り込まず、上記したように、第1の接着層38と第2の接着層40との界面の微細な凹凸構造42の凹部によって案内又は規制され、あるいは第1のワイヤ26は凹凸構造42の凹部に嵌合する。これによって、第1のワイヤ26が第2の接着層40によって押しつけられるにもかかわらず、第1のワイヤ26の位置ずれが防止され、ショートの発生が防止される。なお、接着に際して、第2の半導体チップ16を加熱する代りに、基板12をホットプレート等で加熱することで、第1の半導体チップ14および第1のワイヤ26を加熱しておいてもよい。
【0066】
その後、図26(F)に示されるように、第2の半導体チップ16の電極パッド24と基板12のボンディング端子20とを第2のワイヤ28によってワイヤボンディングする。それから、図26(G)に示されるように、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28を封止樹脂30によってモールディングし、樹脂封止を行う。それから、図26(H)に示されるように、基板12の裏面側に外部接続端子としてのはんだボール32を形成する。
【0067】
このようにして、第1の半導体チップ14が絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定され、第2の半導体チップ16が物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定されてなる半導体装置10が形成される。
【0068】
図27は図26(C)の絶縁性接着層36を貼りつけた第2の半導体チップ16を得る例を示す図である。図27(A)において、絶縁性接着層36の第2の接着層40となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)40Fを準備する。シート状接着剤40Fは第2の半導体チップ16の面積よりも大きく、図27(E)で示す半導体ウエハ60に相当する面積を有する。
【0069】
図27(B)において、シート状接着剤40Fに凹凸パターン42Pを形成する。凹凸パターン42Pの形成は、型押し法、エッチング、および機械加工(レーザー加工やブレードによる加工)などの種々の方法で実施することができる。図27(C),(D)において、凹凸パターン42Pを有するシート状接着剤40Fに、絶縁性接着層36の第1の接着層38となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)38Fを貼り合わせる。この場合にも、シート状接着剤38Fは半導体ウエハ60に相当する面積を有する。こうして、シート状接着剤38Fとシート状接着剤40Fとからなるシート状絶縁性接着層36Fが形成される。凹凸パターン42Pはシート状接着剤40Fとシート状接着剤38Fとの間の界面に設けられた凹凸構造42となる。
【0070】
図27(E)において、シート状絶縁性接着層36Fを半導体集積回路が形成された半導体ウエハ60の非回路面に貼り合わせる。この場合、シート状接着剤40Fを半導体ウエハ60側にしてシート状絶縁性接着層36Fを半導体ウエハ60に貼り合わせる。図27(F),(G)において、ダイシングシート62をシート状絶縁性接着層36Fに貼り合わせ、図27(H)において、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。第2の半導体チップ16はダイシングシート62からはがして使用される。第2の半導体チップ16には絶縁性接着層36が貼りつけられており、絶縁性接着層36は、物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなり、それらの界面に凹凸構造42が形成された絶縁性接着層36が貼りつけられている。
【0071】
図28は図26(C)の絶縁性接着層36を貼りつけた第2の半導体チップ16を得る他の例を示す図である。図28(A),(B)において、半導体ウエハ60に絶縁性接着層36の第2の接着層40となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)40Fを貼りつける。図28(C)において、シート状接着剤40Fに凹凸パターン42Pを形成する。凹凸パターン42Pの形成は、型押し法、エッチング、および機械加工(レーザー加工やブレードによる加工)などの種々の方法で実施することができる。図28(D)において、凹凸パターン42Pを有するシート状接着剤40Fに、絶縁性接着層36の第1の接着層38となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)38Fを貼り合わせる。
【0072】
図28(E),(F)において、こうして、シート状接着剤38Fとシート状接着剤40Fとからなるシート状絶縁性接着層36Fが形成される。シート状絶縁性接着層36Fのシート状接着剤40Fは半導体ウエハ60側にある。凹凸パターン42Pはシート状接着剤40Fとシート状接着剤38Fとの間の界面に設けられた凹凸構造42となる。ダイシングシート62をシート状絶縁性接着層36Fに貼り合わせ、図28(G)において、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。第2の半導体チップ16はダイシングシート62からはがして使用される。第2の半導体チップ16には絶縁性接着層36が貼りつけられており、絶縁性接着層36は、物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなり、それらの界面に凹凸構造42が形成されている。
【0073】
図27及び図28に示すようにして得られた第2の半導体チップ16を図26(C)において使用する。絶縁性接着層36は、半導体ウエハ60に貼り付けられたシート状接着剤38F,40Fにより形成されたものであり、シート状接着剤38F,40Fは半導体ウエハ60の段階で貼りつけ処理されるものであるので、取り扱いが容易であり、かつ個片化された半導体チップ当たりの接着剤量をより均一にすることができる。
【0074】
図29は本発明の実施例による半導体装置の製造方法を示す図である。この例では、第2の半導体チップ16は単一の凹凸構造を有する絶縁性接着層64によって第1の半導体チップ14に接着、固定される。
【0075】
図29(A),(B)において、第1の半導体チップ14をチップ搭載部材としての基板12に搭載する。第1の半導体チップ14は上面に回路及び電極パッド22を有し、基板12はボンディング端子18,20を有する。第1の半導体チップ14の下面(非回路面)には絶縁性接着層34が固着されており、第1の半導体チップ14を加熱しながら第1の半導体チップ14を基板12に向かって押しつけることにより、第1の半導体チップ14を絶縁性接着層34によって基板12に接着、固定する。それから、第1の半導体チップ14の電極パッド22と基板12のボンディング端子18とを第1のワイヤ26によってワイヤボンディングする。
【0076】
図29(C),(D),(E)において、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に積層して配置し、搭載する。第2の半導体チップ16は上面に回路及び電極パッド24を有し、第2の半導体チップ16の下面(非回路面)には絶縁性接着層64が固着されている。絶縁性接着層36は単一のシート状接着層からなり、絶縁性接着層64の第2の半導体チップ16とは反対側の表面に微細な凹凸構造66が一様に形成されている。
【0077】
基板12を加熱しながら第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって押しつけることにより、第2の半導体チップ16を絶縁性接着層64によって第1の半導体チップ14に接着、固定する。絶縁性接着層64は温度上昇により粘度が低くなり、すでにボンディングされている第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層64に入り込む。例えば、絶縁性接着層64は60〜150℃程度に加熱することで30〜50Pa・s程度の粘度となる。
【0078】
この場合、基板12をホットプレート等で加熱し、第1のワイヤ26の温度が高く、絶縁性接着層64の温度が低い状態で、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に向かって押しつける。第1のワイヤ26は温度が低い状態の絶縁性接着層64によって押しつけられ、凹凸構造66の凹部によって案内又は規制されつつループが低くなるように変形する。第1のワイヤ26は位置ずれすることなく変形し、よって、ショートの発生が防止される。
【0079】
絶縁性接着層64は第1のワイヤ26と接触することによりその温度が上昇していき、粘度が低下して、第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層64に入り込む。この場合、第1のワイヤ26は絶縁性接着層64によって押しつけられてループが低くなるように変形しながら絶縁性接着層64に入り込む。従って、第1のワイヤ26が第2の半導体チップ16の底面と接触することがない。
【0080】
その後、図29(F)に示されるように、第2の半導体チップ16の電極パッド24と基板12のボンディング端子20とを第2のワイヤ28によってワイヤボンディングする。それから、図29(G)に示されるように、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28を封止樹脂30によってモールディングし、樹脂封止を行う。それから、基板12の裏面側に外部接続端子としてのはんだボール32を形成する。
【0081】
図30は図29(C)の絶縁性接着層64を貼りつけた第2の半導体チップ16を得る例を示す図である。図30(A),(B)において、絶縁性接着層64となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)64Fを半導体集積回路が形成された半導体ウエハ60の非回路面に貼り合わせる。シート状接着剤64Fには凹凸構造66が形成されている。凹凸構造66は前に説明した凹凸構造42と同様に微小な一様なパターンで形成される。
【0082】
シート状接着剤64Fを、半導体集積回路が形成された半導体ウエハ60の非回路面に貼り合わせる。図30(C),(D)において、ダイシングシート62をシート状接着剤64Fに貼り合わせ、図30(E)において、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。第2の半導体チップ16には絶縁性接着層64が貼りつけられており、その表面には凹凸構造66が形成されている。
【0083】
図31は図29(C)の絶縁性接着層36を貼りつけた第2の半導体チップ16を得る他の例を示す図である。図31(A),(B)において、絶縁性接着層64となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)64Fを半導体集積回路が形成された半導体ウエハ60の非回路面に貼り合わせる。図31(C)において、シート状接着剤64Fに凹凸構造(凹凸パターン)66を形成する。凹凸構造66の形成は、型押し法、エッチング、および機械加工(レーザー加工やブレードによる加工)などの種々の方法で実施することができる。図31(D),(E)において、ダイシングシート62をシート状接着剤64Fに貼り合わせ、図31(F)において、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。第2の半導体チップ16には絶縁性接着層64が貼りつけられている。
【0084】
図30及び図31に示すようにして得られた第2の半導体チップ16を図29(C)において使用する。絶縁性接着層64は、半導体ウエハ60に貼り付けられたシート状接着剤64Fにより形成されたものであり、シート状接着剤64Fは半導体ウエハ60の段階で貼りつけ処理されるものであるので、取り扱いが容易であり、かつ1つの個片化された半導体チップ当たりの接着剤量をより均一にすることができる。
【0085】
図32は本発明の実施例による半導体装置を示す断面図である。図33は図32で示した半導体装置10を構成するために用いられるリードフレームを示す部分平面図である。この実施例においては、チップ搭載部材としてリードフレーム68が使用される。図33に示されるように、リードフレーム68は、複数のダイパッド70と、各ダイパッド70のまわりに形成されたリード72とを有する。ダイパッド70は四隅部に位置する支持部74により周辺フレーム部分76に支持されている。半導体チップの搭載後にリード72及び支持部74は周辺フレーム部分76から切断される。
【0086】
図32において、半導体装置10は、チップ搭載部材としてのリードフレーム68と、リードフレーム68のダイパッド70に搭載された第1の半導体チップ14と、第1の半導体チップ14に積層して配置された第2の半導体チップ16とからなる。第1の半導体チップ14の電極パッド22とリードフレーム68のリード72の内端部分(インナーリード)72Iとは第1のワイヤ26によって電気的に接続されている。第2の半導体チップ16の電極パッド24とリードフレーム68の他のリード72の内端部分(インナーリード)72Iとは第2のワイヤ28によって電気的に接続されている。
【0087】
実施例においては、リードフレーム68のダイパッド70の上下にそれぞれ2組の積層された第1及び第2の半導体チップ14,16が設けられている。さらに、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28は封止樹脂30によって封止されている。リードフレーム68のリード72の外端部分(アウターリード)72Oは外部接続端子となる。
【0088】
第1の半導体チップ14は絶縁性接着層34によってダイパッド70に接着、固定され、第2の半導体チップ16は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなる絶縁性接着層36によって第1の半導体チップ14に接着、固定されている。第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。そして、第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層36の第1の接着層38に入り込み、凹凸構造42に接している。従って、図32の半導体装置10の作用は、図1の半導体装置10の作用と同様である。
【0089】
図34は図32の半導体装置10の製造方法を示す図である。図34の製造方法は図26の製造方法と類似している。図34(A),(B)において、第1の半導体チップ14をチップ搭載部材としてのリードフレーム68のダイパッド70に搭載する。第1の半導体チップ14の非回路面には絶縁性接着層34が固着さられており、ダイパッド70を加熱しながら第1の半導体チップ14をダイパッド70に向かって押しつけることにより、第1の半導体チップ14を絶縁性接着層34によってダイパッド70に接着、固定する。なお、接着に際して、ダイパッド70を加熱する代わりに、第1の半導体チップ14を加熱してもよい。
図34(C),(D)において、第1の半導体チップ14の電極パッド22とリードフレーム68のリード72の内端部分(インナーリード)72Iとを第1のワイヤ26によってワイヤボンディングする。
【0090】
図34(E),(F)において、第2の半導体チップ16を第1の半導体チップ14に積層して配置し、第2の半導体チップ16を加熱しながら搭載する。第2の半導体チップ16の非回路面には絶縁性接着層36が固着されている。絶縁性接着層36は物性の異なる第1の接着層38と第2の接着層40とからなり、第1の接着層38と第2の接着層40との界面には微細な凹凸構造42が一様に形成されている。絶縁性接着層36の詳細な構造は例えば図1から図9に示されているものに相当する。なお、搭載に際して、第2の半導体チップ16を加熱する代わりに、ダイパッド70を加熱することで第1の半導体チップ14および第1のワイヤ26を加熱しておいてもよい。
【0091】
図34(E),(F)においては、前に説明したのと同様に、第1のワイヤ26の少なくとも一部が絶縁性接着層36の第1の接着層38に入り込む。第1のワイヤ26の少なくとも一部は第1の接着層38に入り込むが、第2の接着層40に入り込まず、第1の接着層38と第2の接着層40との界面の微細な凹凸構造42の凹部によって案内又は規制され、あるいは第1のワイヤ26は凹凸構造42の凹部に嵌合する。これによって、第1のワイヤ26が第2の接着層40によって押しつけられるにもかかわらず、第1のワイヤ26の位置ずれが防止され、ショートの発生が防止される。
【0092】
図35は図34の続きの工程を示す図である。図35(A),(B)において、第2の半導体チップ16の電極パッド24と別のリード72の内端部分(インナーリード)72Iとを第2のワイヤ28によってワイヤボンディングする。それから、図35(C)に示されるように、第1及び第2の半導体チップ14,16及び第1及び第2のワイヤ26,28を封止樹脂30によってモールディングし、樹脂封止を行う。それから、図34(D)に示されるように、リード72及び支持部74をリードフレーム68の周辺フレーム部分76から切断し、リード72を所定の形状に成形する。なお、リード72がめっきにより耐酸化性及び耐腐食性に優れたものとなるように、リードフレーム68には外装めっき処理(Snめっき等)を行っていてもよい。
【0093】
図34(E),(F)に示される絶縁性接着層36を貼りつけた第2の半導体チップ16は、図27及び図28に示した方法で得られる。すなわち、図27に示される方法では、第2の接着層38となる凹凸パターン42Pを形成したシート状接着剤40Fに、第1の接着層38となるシート状接着剤38Fを貼り合わせ、シート状接着剤38Fとシート状接着剤40Fとからなるシート状絶縁性接着層36Fを半導体ウエハ60に貼り合わせ、そして、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。
【0094】
また、図28に示される方法では、半導体ウエハ60に第2の接着層40となるシート状接着剤40Fを貼りつけ、シート状接着剤40Fに凹凸パターン42Pを形成し、シート状接着剤40Fに第1の接着層38となるシート状接着剤(絶縁性接着フィルム)38Fを貼り合わせ、半導体ウエハ60をダイシングし、第2の半導体チップ16に個片化する。
【0095】
図36は図34及び図35の半導体装置の製造方法の変形例を示す図である。図36(A),(B)は図34(E)に相当する。すなわち、この例では、第2の半導体チップ16は凹凸構造66を有する単一の絶縁性接着層64によって第1の半導体チップ14に接着、固定される。図34(A)から(D),(F)、及び図35(A)から(D)の処理は、図36(A),(B)の前後に適用される。図36に示される半導体装置10の製造方法の特徴は図29の半導体装置10の製造方法と同様であり、図29の半導体装置10の製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0096】
以上説明した実施例は以下の特徴を含む。
【0097】
(付記1)チップ搭載部材に搭載された第1の半導体チップと、
該第1の半導体チップ上に積層して配置された第2の半導体チップとを含む半導体装置において、
該第1の半導体チップと該第2の半導体チップとの間には重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなる絶縁性接着層が配設され、
該第1の接着層と該第2の接着層との界面には微細な凹凸構造が一様に形成されている、
ことを特徴とする半導体装置。(1)
【0098】
(付記2)前記第1の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを電気的に接続する第1のワイヤの一部が、前記絶縁性接着層の前記第1の接着層に入り込んでいることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。(2)
【0099】
(付記3)該チップ搭載部材は基板及びリードフレームの一方からなり、該チップ搭載部材の端子は該基板のボンディング端子及び該リードフレームのリードの一方からなることを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
【0100】
(付記4)該凹凸構造は、該第1のワイヤの一部が嵌合する形状を有することを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
【0101】
(付記5)該凹凸構造の凹部と凹部の間又は凸部と凸部の間のピッチが、第1の半導体チップの電極パッドのピッチと等しいか、またはそれよりも小さいことを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の半導体装置。(3)
【0102】
(付記6)該第1の接着層には、第1のワイヤの直径よりも大きな直径のフィラーが含有されていることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の半導体装置。
【0103】
(付記7)第の半導体チップの電極パッドが第1の半導体チップの中央部に列状に配置されていることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の半導体装置。
【0104】
(付記8)第1の半導体チップの電極パッドが千鳥状に列状に配置され、または、第1の半導体チップの電極パッドが列をなして配置され、かつ第1のワイヤが千鳥配置となるように該電極パッドにボンディングされていることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の半導体装置。
【0105】
(付記9)第1の半導体チップの電極パッドが設けられている面の少なくとも電極パッドから半導体チップの外周端までの領域には、絶縁性樹脂からなるカバー膜が形成されていることを特徴とする付記1から8のいずれかに記載の半導体装置。
【0106】
(付記10)第1の接着層は低粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなり、第2の接着層は高粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の半導体装置。(4)
【0107】
(付記11)第1の接着層は熱硬化性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなり、第2の接着層は高粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の半導体装置。
【0108】
(付記12)半導体装置の製造時に、第1の接着層は第1のワイヤが第1の接着層に容易に入り込むことができる硬度を有し、第2の接着層は第1のワイヤが第2の接着層に入り込みにくい硬度を有することを特徴とする付記1から11のいずれかに記載の半導体装置。
【0109】
(付記13)第2の接着層はポリイミド樹脂を含むことを特徴とする付記12に記載の半導体装置。
【0110】
(付記14)第2の接着層は無機フィラーを高濃度に含有することを特徴とする付記13に記載の半導体装置。
【0111】
(付記15)第1の半導体チップをチップ搭載部材に搭載し、
該第1の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第1のワイヤにより電気的に接続し、
互いに重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなり、該第1の接着層と該第2の接着層の界面に微細な凹凸構造が形成されている絶縁性接着層の該第2の接着層が固着されている第2の半導体チップを該第1の半導体チップに積層して配置し、
且つ該第1のワイヤの一部が該絶縁性接着層の該第1の接着層に入り込むように絶縁性接着層の該第1の接着層を該第1の半導体チップに固着し、
該第2の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第2のワイヤにより電気的に接続する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。(5)
【0112】
(付記16)前記ダイシングの前に、該第2の接着層の表面に凹凸構造を形成し、該第2の接着層と該第1の接着層とを重ね合わせ、該第1の接着層と該第2の接着層とからなる該絶縁性接着層を半導体ウエハに固着することを特徴とする付記15に記載の半導体装置の製造方法。
【0113】
(付記17)前記ダイシングの前に、該第2の接着層を半導体ウエハに固着し、該第2の接着層の表面に微細な凹凸構造を形成し、該第2の接着層と該第1の接着層とを重ね合わせ、該第1の接着層と該第2の接着層とからなる該絶縁性接着層を半導体ウエハに固着することを特徴とする付記15に記載の半導体装置の製造方法。
【0114】
(付記18)該絶縁性接着層の該第1の接着層を該第1の半導体チップに固着する際に、加熱により第1の接着層に第1のワイヤが入り込むことができる程度の粘度を付与することを特徴とする付記15に記載の半導体装置の製造方法。
【0115】
(付記19)第1の半導体チップをチップ搭載部材に搭載し、
該第1の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第1のワイヤにより電気的に接続し、
表面に微細な凹凸構造が形成されている絶縁性接着層が固着されている半導体ウエハをダイシングして第2の半導体チップに分割し、
該第2の半導体チップを該第1の半導体チップに積層して配置し且つ該第1のワイヤの少なくとも一部が該絶縁性接着層に入り込むように絶縁性接着層を該第1の半導体チップに固着し、
該第2の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第2のワイヤにより電気的に接続する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0116】
(付記20)前記ダイシングの前に、該絶縁性接着層の表面に凹凸構造を形成し、該絶縁性接着層を半導体ウエハに固着することを特徴とする付記19に記載の半導体装置の製造方法。
【0117】
(付記21)前記ダイシングの前に、該絶縁性接着層を半導体ウエハに固着し、該絶縁性接着層の表面に微細な凹凸構造を形成し、該絶縁性接着層を半導体ウエハに固着することを特徴とする付記19に記載の半導体装置の製造方法。
【0118】
(付記22)該絶縁性接着層を該第1の半導体チップに固着する際に、第2の半導体チップを押下することで、第1のワイヤのループ形状を変形させることを特徴とする付記19に記載の半導体装置。
【0119】
(付記23)該絶縁性接着層を該第1の半導体チップに固着する際に、該絶縁性接着層内又は該絶縁性接着層の表面に形成された凹凸構造に第1のワイヤの少なくともループの一部を嵌合させることを特徴とする付記15又は19に記載の半導体装置の製造方法。
【0120】
(付記24)第2の半導体チップを押下して、第1のワイヤのループ形状を変形させる際に、第2の半導体チップを第1の半導体チップの電極パッドの列の方向に沿って移動させつつ押下することを特徴とする付記23に記載の半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、本発明によれば、複数の積層配置された半導体チップを含む半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は本発明の実施例による半導体装置を示す断面図である。
【図2】図2は第2の半導体チップを第1の半導体チップに固着する絶縁性接着層の例を示す断面図である。
【図3】図3は絶縁性接着層の他の例を示す断面図である。
【図4】図4は絶縁性接着層の凹凸構造の例を示す斜視図である。
【図5】図5は絶縁性接着層の凹凸構造の他の例を示す斜視図である。
【図6】図6は絶縁性接着層の凹凸構造の他の例を示す斜視図である。
【図7】図7は絶縁性接着層の凹凸構造の他の例を示す平面図である。
【図8】図8は絶縁性接着層の凹凸構造の他の例を示す平面図である。
【図9】図9は絶縁性接着層の凹凸構造の他の例を示す平面図である。
【図10】図10は図1の半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図11】図11は図1の半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図12】図12は第1の半導体チップと第2の半導体チップの組み合わせの例を示す平面図である。
【図13】図13は第1の半導体チップと第2の半導体チップの組み合わせの例を示す平面図である。
【図14】図14は第1の半導体チップと第2の半導体チップの組み合わせの例を示す平面図である。
【図15】図15は図12の矢印XVから見た半導体装置の側面図である。
【図16】図16は第1のワイヤが凹凸構造の凹部に嵌合した例を示す断面図である。
【図17】図17は第1のワイヤが凹凸構造の凹部に嵌合した他の例を示す断面図である。
【図18】図18は電極パッドが中央部に列状に配置されているセンターパッドのタイプの半導体チップの例を示す平面図である。
【図19】図19は電極パッドが千鳥状に列状に配置されている半導体チップの例を示す平面図である。
【図20】図20は半導体チップの電極パッドが列をなして配置され、かつ第1のワイヤが千鳥配置となるように電極パッドにボンディングされている半導体チップの例を示す平面図である。
【図21】図21は半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図22】図22は半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図23】図23は図22の半導体チップを示す平面図である。
【図24】図24は凹凸構造がない場合に第1のワイヤを押しつけるときに第1のワイヤが変形する例を示す図である。
【図25】図25は凹凸構造がある場合に第1のワイヤを押しつけるときに第1のワイヤが変形する例を示す図である。
【図26】図26は本発明の実施例による半導体装置の製造方法を示す図である。
【図27】図27は図26の絶縁性接着層を貼りつけた第2の半導体チップを得る例を示す図である。
【図28】図28は図26の絶縁性接着層を貼りつけた第2の半導体チップを得る図である。
【図29】図29は本発明の実施例による半導体装置の製造方法を示す図である。
【図30】図30は図29の絶縁性接着層を貼りつけた第2の半導体チップを得る例を示す図である。
【図31】図31は図29の絶縁性接着層を貼りつけた第2の半導体チップを得る例を示す図である。
【図32】図32は本発明の実施例による半導体装置を示す断面図である。
【図33】図33は図32のリードフレームを示す部分平面図である。
【図34】図34は図32の半導体装置の製造方法を示す図である。
【図35】図35は図34の続きの工程を示す図である。
【図36】図36は図34及び図35の半導体装置の製造方法の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0123】
10 半導体装置
12 基板
14 第1の半導体チップ
16 第2の半導体チップ
26 第1のワイヤ
28 第2のワイヤ
30 封止樹脂
34 絶縁性接着層
36 絶縁性接着層
38 第1の接着層
40 第2の接着層
42 凹凸構造
60 半導体ウエハ
64 絶縁性接着層
66 凹凸構造
68 リードフレーム
70 ダイパッド
72 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ搭載部材に搭載された第1の半導体チップと、
該第1の半導体チップ上に積層して配置された第2の半導体チップとを含む半導体装置において、
該第1の半導体チップと該第2の半導体チップとの間には重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなる絶縁性接着層が配設され、
該第1の接着層と該第2の接着層との界面には微細な凹凸構造が一様に形成されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の半導体チップの電極パッドと前記チップ搭載部材の電極とを電気的に接続する第1のワイヤの一部が、前記絶縁接着層の前記第1の接着層に入りこんでいることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹凸構造の凹部と凹部の間又は凸部と凸部の間のピッチが、第1の半導体チップの電極パッドのピッチと等しいか、またはそれよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の接着層は低粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなり、前記第2の接着層は高粘度熱可塑性を有する絶縁性フィルム状樹脂接着層からなることを特徴とする請求項1乃至3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の半導体チップをチップ搭載部材に搭載し、
該第1の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第1のワイヤにより電気的に接続し、
互いに重ね合わせられた物性の異なる第1の接着層と第2の接着層とからなり、該第1の接着層と該第2の接着層の界面に微細な凹凸構造が形成されている絶縁性接着層の該第2の接着層が固着されている第2の半導体チップを該第1の半導体チップに積層して配置し、
且つ該第1のワイヤの一部が該絶縁性接着層の該第1の接着層に入り込むように絶縁性接着層の該第1の接着層を該第1の半導体チップに固着し、
該第2の半導体チップの電極パッドと該チップ搭載部材の端子とを第2のワイヤにより電気的に接続する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2006−128169(P2006−128169A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310649(P2004−310649)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】