説明

半導体装置

【課題】電気的な接続不良が生じることが抑制された半導体装置を提供する。
【解決手段】モールドIC(10)と、筐体(20)と、ターミナル(30)と、ポッティング剤(40)と、を有し、モールドIC(10)が筐体(20)の底部(21)内面に固定され、モールドIC(10)のリード(11)と、ターミナル(30)における筐体(20)の収納空間内に突出した突出部位(31)との電気的な接続部位(31a)が、収納空間内の一部を充填するポッティング剤(40)によって被覆された半導体装置であって、底部(21)と突出部位(31)との間に、ポッティング剤(40)よりも線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が低い材料から成る低応力部(50)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドICが筐体の底部内面に固定され、モールドICのリードと、筐体に固定されたターミナルとが電気的に接続され、ターミナルにおけるリードとの電気的な接続部位が、筐体の内部に充填されたポッティング剤によって被覆された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、モールド樹脂によってモールドされたモールド点火回路が、コネクタハウジングに固定され、モールド樹脂から露出したリードフレームと、コネクタハウジングにインサートされたターミナルとが電気的に接続され、ポッティング樹脂によって、モールド点火回路とコネクタハウジングとが一体化された点火装置が提案されている。
【0003】
この点火装置では、ポッティング樹脂の一部とモールド点火回路との間に応力緩衝部材が介在され、線膨張係数差に起因する熱応力が、モールド点火回路に印加されることが抑制された構成となっている。なお、応力緩衝部材の一部は、上記したターミナルが担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−331753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示される点火装置では、リードフレームとターミナルとの電気的な接続部位がポッティング樹脂によって被覆されている。そのため、この電気的な接続部位に、線膨張係数差に起因する熱応力が印加され、電気的な接続不良が生じる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、電気的な接続不良が生じることが抑制された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リード(11)の一部とチップ(12)の全てとがモールド樹脂(13)に被覆されて成るモールドIC(10)と、該モールドIC(10)の収納空間が、底部(21)と、該底部(21)を囲む壁部(22)とによって構成された筐体(20)と、筐体(20)の収納空間と外部とを電気的に接続するターミナル(30)と、収納空間の一部を充填するポッティング剤(40)と、を有し、モールドIC(10)のモールド樹脂(13)が筐体(20)の底部(21)内面に固定され、リード(11)におけるモールド樹脂(13)から露出した部位と、ターミナル(30)における筐体(20)の壁部(22)から収納空間内に突出した突出部位(31)との電気的な接続部位(31a)が、ポッティング剤(40)によって被覆された半導体装置であって、突出部位(31)は、底部(21)の上方に位置し、底部(21)と突出部位(31)との間に、ポッティング剤(40)よりも線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が低い材料から成る低応力部(50)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
このように本発明によれば、突出部位(31)(ターミナル(30))におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)が、筐体(20)の収納空間の一部を充填するポッティング剤(40)によって被覆されている。この構成だけであれば、線膨張係数差に起因する熱応力が、上記した接続部位(31a)に印加されることとなる。
【0009】
しかしながら、本発明では、上記構成に加えて、底部(21)と突出部位(31)との間に、ポッティング剤(40)よりも線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が低い材料から成る低応力部(50)が設けられている。これによれば、突出部位(31)と底部(21)との間に充填されるポッティング剤(40)の充填量が低減される。そして、低応力部(50)が、ポッティング剤(40)よりも線膨張係数が低い材料から成る場合、熱応力の値自体が小さくなり、上記した接続部位(31a)に伝達される熱応力の値が小さくなる。また、低応力部(50)が、ポッティング剤(40)よりもヤング率が低い材料から成る場合、低応力部(50)がポッティング剤(40)よりも軟らかいので、接続部位(31a)に伝達される熱応力の値が小さくなる。このように、いずれの場合においても、接続部位(31a)に伝達される熱応力の値が小さくなる。したがって、熱応力によって、モールドIC(10)とターミナル(30)とに電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0010】
請求項2に記載のように、底部(21)と突出部位(31)におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)との間に、低応力部(50)が設けられた構成が好適である。これによれば、突出部位(31)におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)と底部(21)との間以外に、低応力部(50)が設けられた構成と比べて、接続部位(31a)に印加される熱応力が小さくなる。
【0011】
請求項3に記載のように、低応力部(50)は、筐体(20)の一部である構成が好ましい。これによれば、部品点数を低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の具体的な構成としては、請求項4若しくは請求項5に記載の構成を採用することができる。すなわち、請求項4に記載のように、底部(21)の一部は、突出部位(31)におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)に向って突出する凸形状を成しており、該凸形状を成す部位が、低応力部(50)である構成を採用することができる。又は、請求項5に記載のように、壁部(22)の一部は、突出部位(31)におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)と底部(21)との間に突出する凸形状を成しており、該凸形状を成す部位が、低応力部(50)である構成を採用することができる。
【0013】
請求項6に記載のように、低応力部(50)は、筐体(20)とは別体であり、筐体(20)に固定された構成が良い。これによれば、低応力部(50)が筐体(20)の一部である構成とは異なり、低応力部(50)の構成材料を、筐体(20)の構成材料に依らずに決定することができる。
【0014】
請求項7に記載のように、モールド樹脂(13)と突出部位(31)との間に、低応力部(50)が設けられた構成が良い。これによれば、突出部位(31)に印加される熱応力が低減されるので、突出部位(31)に印加された熱応力によって、突出部位(31)におけるリード(11)との電気的な接続部位(31a)に、電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0015】
請求項8に記載の発明の作用効果は、請求項3に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0016】
請求項9に記載の発明の作用効果は、請求項6に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0017】
請求項10に記載の発明の作用効果は、請求項2及び請求項7に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0018】
請求項11に記載のように、突出部位(31)と電気的に接続された電子部品(60)が、ポッティング剤(40)を介して筐体(20)に固定された構成が良い。これによれば、電子部品(60)が、接着剤などの固定部材を介して、筐体(20)に固定された構成と比べて、部品点数を減らすことができるとともに、半導体装置の製造が簡素化される。
【0019】
請求項12に記載のように、突出部位(31)と電気的に接続された電子部品(60)が、壁部(22)から収納空間内に突出した突出部(22a)に、ポッティング剤(40)を介して固定され、突出部位(31)と電子部品(60)との電気的な接続部位(31b)が、ポッティング剤(40)によって被覆されており、突出部(22a)と底部(21)との間に低応力部(50)が設けられた構成が好ましい。これによれば、線膨張係数差に起因する熱応力が、突出部(22a)を介して電子部品(60)に印加されることが抑制されるので、電子部品(60)と突出部位(31)との電気的な接続部位(31b)に、電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0020】
請求項13に記載のように、底部(21)と突出部位(31)における電子部品(60)との電気的な接続部位(31b)との間に低応力部(50)が設けられた構成が好適である。これによれば、突出部位(31)における電子部品(60)との電気的な接続部位(31b)と底部(21)との間以外に、低応力部(50)が設けられた構成と比べて、接続部位(31b)に印加される熱応力が小さくなる。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項3若しくは請求項6に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0022】
請求項15に記載のように、筐体(20)の底部(21)は、金属材料から成り、筐体(20)の壁部(22)は、樹脂材料から成る構成を採用することができる。これによれば、モールドIC(10)で生じた熱を、底部(21)を介して外部に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す上面図である。
【図2】半導体装置の概略構成を説明するための断面図である。
【図3】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図4】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図5】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図6】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図9】半導体装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す上面図である。図2は、半導体装置の概略構成を説明するための断面図である。なお、煩雑と成ることを避けるために、図1では、後述する蓋部23、ポッティング剤40、低応力部50を省略し、図2では、電子部品60を省略している。
【0025】
半導体装置100は、要部として、モールドIC10と、筐体20と、ターミナル30と、ポッティング剤40と、低応力部50と、電子部品60と、を有する。図1及び図2に示すように、筐体20によって構成される収納空間内に、モールドIC10と、電子部品60とが収納され、それぞれ、筐体20に固定されたターミナル30と電気的に接続されている。また、筐体20内は、ポッティング剤40によって満たされており、ターミナル30におけるモールドIC10との電気的な接続部位31a、及び、ターミナル30における電子部品60との電気的な接続部位31bそれぞれが、ポッティング剤40によって被覆保護され、電子部品60が、ポッティング剤40によって筐体20に固定されている。
【0026】
モールドIC10は、リード11の一部とチップ12の全てとがモールド樹脂13に被覆されて成る。図2に示すように、モールドIC10は、筐体20の底部21に接着剤(図示略)を介して固定されており、リード11におけるモールド樹脂13から露出した部位が、ターミナル30と電気的に接続されている。
【0027】
筐体20は、底部21と、底部21を囲む壁部22とによって収納空間を構成するものである。本実施形態に係る筐体20は、収納空間を閉塞する蓋部23を有している。底部21は、線膨張係数が17ppm/℃、ヤング率が129000MPa程度の金属材料から成り、壁部22及び蓋部23は、線膨張係数が30ppm/℃、ヤング率が5000MPa程度の樹脂材料から成る。
【0028】
ターミナル30は、筐体20の収納空間と外部とを電気的に接続するものであり、壁部22に一部が埋設されている。図1に示すように、ターミナル30における収納空間内に突出した部位(以下、突出部位31と示す)が、モールドIC10のリード11や、電子部品60のリード61と電気的に接続されている。そして、突出部位31におけるリード11,61との電気的な接続部位31a,31bは、ポッティング剤40によって被覆されている。
【0029】
ポッティング剤40は、収納空間の一部を充填するものである。本実施形態に係るポッティング剤40は、線膨張係数が100ppm/℃より大きく、ヤング率が0.1MPaより大きい樹脂であり、筐体20の構成要素21〜23を成す材料よりも線膨張係数が大きくなっている。図2に示すように、リード11の一部、突出部位31、低応力部50それぞれがポッティング剤40によって被覆されており、図2には図示しないが、電子部品60の少なくとも一部、接続部位31bそれぞれがポッティング剤40によって被覆されている。これにより、接続部位31a,31bが、ポッティング剤40によって被覆保護され、電子部品60が、ポッティング剤40によって筐体20に被覆固定されている。
【0030】
低応力部50は、ポッティング剤40よりも線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が低い材料から成るものである。本実施形態に係る低応力部50は、ポッティング剤40よりもヤング率が低いシリコーンゲルから成る。図2に示すように、低応力部50は、ターミナル30の突出部位31と底部21との間に設けられており、底部21の内面に濡れ広がっている。そして、低応力部50によって、モールドIC10のモールド樹脂13の全てが被覆保護されている。
【0031】
電子部品60は、コイルや、電解コンデンサなどである。本実施形態に係る半導体装置100は、具体的には、インジェクタ駆動装置であって、コイルや電解コンデンサは、昇圧の機能を果たす。電子部品60は、リード61を介してターミナル30の突出部位31と電気的に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態に係る半導体装置100の作用効果を説明する。上記したように、突出部位31におけるリード11との電気的な接続部位31aが、ポッティング剤40によって被覆されている。この構成だけであれば、線膨張係数差に起因する熱応力が、接続部位31aに印加されることとなる。
【0033】
しかしながら、本実施形態では、上記構成に加えて、底部21と突出部位31との間に、ポッティング剤40よりもヤング率の低い材料から成る低応力部50が設けられている。これによれば、突出部位31と底部21との間に充填されるポッティング剤40の充填量が低減される。また、低応力部50はポッティング剤40よりもヤング率が低いので、接続部位31aに伝達される熱応力の値が小さくなる。これにより、熱応力によって、リード11(モールドIC10)とターミナル30(突出部位31)とに電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0034】
図2に示すように、底部21と接続部位31aとの間に、低応力部50が設けられている。これによれば、底部21と接続部位31aとの間以外に、低応力部50が設けられた構成と比べて、接続部位31aに印加される熱応力が小さくなる。
【0035】
低応力部50は、筐体20とは別体である。これによれば、低応力部50が筐体20の一部である構成とは異なり、低応力部50の構成材料を、筐体20の構成材料に依らずに決定することができる。
【0036】
電子部品60は、ポッティング剤40を介して筐体20に固定されている。これによれば、電子部品60が、接着剤などの固定部材を介して、筐体20に固定された構成と比べて、部品点数を減らすことができるとともに、半導体装置100の製造が簡素化される。
【0037】
筐体20の底部21は、金属材料から成る。これによれば、モールドIC10で生じた熱を、底部21を介して外部に逃がすことができる。
【0038】
本実施形態では、低応力部50が、ポッティング剤40よりもヤング率が低いシリコーンゲルから成る例を示した。しかしながら、低応力部50としては、上記例に限定されず、例えば図3に示すように、ゲルではなく固体を採用することもできる。図3に示す低応力部50は、底部21と同一材料から成り、表面が絶縁体でコーティングされている。この場合、低応力部50は、ポッティング剤40よりも線膨張係数が低いので、熱応力の値自体が小さくなり、接続部位31aに伝達される熱応力の値が小さくなる。これにより、熱応力によって、リード11(モールドIC10)とターミナル30(突出部位31)とに電気的な接続不良が生じることが抑制される。なお、上記例のように、低応力部50が固体である場合、モールドIC10は、ポッティング剤40によって被覆保護される。
【0039】
本実施形態では、図2に示すように、モールドIC10のモールド樹脂13の上方に、突出部位31が位置する例を示した。しかしながら、例えば図4に示すように、底部21の一部が上方に突出し、その突出した部位にモールドIC10が搭載されることで、モールド樹脂13の下方にターミナル30の突出部位31が位置する構成を採用することもできる。
【0040】
本実施形態では、低応力部50が、筐体20とは別体である例を示した。しかしながら、図5及び図6に示すように、低応力部50が、筐体20の一部であっても良い。これによれば、部品点数を低減することができる。図5に示す低応力部50は、底部21における、接続部位31aに向って突出する凸形状の部位であり、図6に示す低応力部50は、壁部22における、接続部位31aと底部21との間に突出する凸形状の部位である。図5及び図6に示す構成の場合、低応力部50は、ポッティング剤40よりも線膨張係数が低いので、熱応力の値自体が小さくなり、接続部位31aに伝達される熱応力の値が小さくなる。これにより、熱応力によって、リード11(モールドIC10)とターミナル30(突出部位31)とに電気的な接続不良が生じることが抑制される。図3〜図6は、半導体装置の変形例を示す断面図である。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図7に基づいて説明する。図7は、第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図であり、第1実施形態で示した図2に対応している。
【0042】
第2実施形態に係る半導体装置100は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0043】
第1実施形態では、接続部位31aに伝達される熱応力が小さくなる構成例を示した。これに対し、本実施形態では、接続部位31aだけではなく、接続部位31bに伝達される熱応力が小さくなることを特徴とする。
【0044】
図7に示すように、ターミナル30の突出部位31がモールドIC10の上方に延設され、延設された突出部位31の一部が、壁部22から収納空間内に突出した突出部22aによって被覆されている。そして、突出部22aに電子部品60が搭載され、電子部品60が、リード61を介して突出部位31と電気的に接続されている。また、突出部位31の電気的な接続部位31a,31bそれぞれがポッティング剤40によって被覆保護されており、第1実施形態と同様にして、シリコーンゲルから成る低応力部50が、底部21の内面に濡れ広がっている。低応力部50は、突出部位31と底部21との間、及び、電子部品60と底部21との間に設けられている。
【0045】
このように、第2実施形態では、低応力部50が、底部21と突出部位31との間だけではなく、底部21と電子部品60との間に設けられている。これによれば、電子部品60と突出部位31に印加される熱応力が小さくなるので、接続部位31a,31bそれぞれに伝達される熱応力の値が小さくなる。したがって、熱応力によって、リード11(モールドIC10)とターミナル30(突出部位31)とに電気的な接続不良が生じることが抑制されるだけではなく、リード61(電子部品60)とターミナル30(突出部位31)とに電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0046】
図7に示すように、底部21と接続部位31aとの間だけではなく、底部21と接続部位31bとの間に、低応力部50が設けられている。これによれば、底部21と接続部位31bとの間以外に、低応力部50が設けられた構成と比べて、接続部位31bに印加される熱応力が小さくなる。
【0047】
以上が、第2実施形態の主たる効果である。第2実施形態に係る構成によって得られる、第1実施形態と同等の効果については、記載を省略する。
【0048】
本実施形態では、低応力部50が、シリコーンゲルから成る例を示した。しかしながら、低応力部50としては、上記例に限定されず、例えば図8に示すように、ゲルではなく固体を採用することもできる。図3に示す低応力部50は、壁部22と同一材料から成る。この場合、低応力部50は、ポッティング剤40よりも線膨張係数及が低いので、熱応力の値自体が小さくなり、突出部22aと突出部位31とを介して、接続部位31a,31bそれぞれに伝達される熱応力の値が小さくなる。これにより、熱応力によって、モールドIC10と突出部位31との電気的な接続、及び、電子部品60と突出部位31との電気的な接続に不良が生じることが抑制される。なお、上記例のように、低応力部50が固体の場合、モールドIC10が、ポッティング剤40によって被覆保護される。
【0049】
本実施形態では、低応力部50が、筐体20とは別体である例を示した。しかしながら、図9に示すように、低応力部50が、壁部22の一部でも良い。図9に示す例では、低応力部50は、壁部22における突出部位31とモールド樹脂13との間に突出する凸形状の部位である。この場合、低応力部50は、ポッティング剤40よりも線膨張係数及が低いので、熱応力の値自体が小さくなり、接続部位31aに伝達される熱応力の値が小さくなる。これにより、熱応力によって、モールドIC10と突出部位31との電気的な接続、及び、電子部品60と突出部位31との電気的な接続に不良が生じることが抑制される。図8及び図9は、半導体装置の変形例を示す断面図である。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0051】
各実施形態では、ポッティング剤40は、線膨張係数が100ppm/℃より大きく、ヤング率が0.1MPaより大きい樹脂である例を示した。しかしながら、ポッティング剤40としては、上記例に限定されず、筐体20の底部21と壁部22、及び、低応力部50それぞれを成す材料よりも、線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が高い材料から成るものであれば適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・モールドIC
20・・・筐体
30・・・ターミナル
31・・・突出部位
31a,31b・・・接続部位
40・・・ポッティング剤
50・・・低応力部
60・・・電子部品
100・・・半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード(11)の一部とチップ(12)の全てとがモールド樹脂(13)に被覆されて成るモールドIC(10)と、
該モールドIC(10)の収納空間が、底部(21)と、該底部(21)を囲む壁部(22)とによって構成された筐体(20)と、
前記筐体(20)の収納空間と外部とを電気的に接続するターミナル(30)と、
前記収納空間の一部を充填するポッティング剤(40)と、を有し、
前記モールドIC(10)のモールド樹脂(13)が前記筐体(20)の底部(21)内面に固定され、前記リード(11)における前記モールド樹脂(13)から露出した部位と、前記ターミナル(30)における前記筐体(20)の壁部(22)から前記収納空間内に突出した突出部位(31)との電気的な接続部位(31a)が、前記ポッティング剤(40)によって被覆された半導体装置であって、
前記突出部位(31)は、前記底部(21)の上方に位置し、
前記底部(21)と前記突出部位(31)との間に、前記ポッティング剤(40)よりも線膨張係数及びヤング率の少なくとも一方が低い材料から成る低応力部(50)が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記底部(21)と前記突出部位(31)における前記リード(11)との電気的な接続部位(31a)との間に、前記低応力部(50)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低応力部(50)は、前記筐体(20)の一部であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記底部(21)の一部は、前記突出部位(31)における前記リード(11)との電気的な接続部位(31a)に向って突出する凸形状を成しており、
該凸形状を成す部位が、前記低応力部(50)であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記壁部(22)の一部は、前記突出部位(31)における前記リード(11)との電気的な接続部位(31a)と前記底部(21)との間に突出する凸形状を成しており、
該凸形状を成す部位が、前記低応力部(50)であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記低応力部(50)は、前記筐体(20)とは別体であり、前記筐体(20)に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記モールド樹脂(13)と前記突出部位(31)との間に、前記低応力部(50)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記筐体(20)の壁部(22)の一部は、前記モールド樹脂(13)と前記突出部位(31)との間に配置されており、
前記壁部(22)における、前記モールド樹脂(13)と前記突出部位(31)との間に配置された部位が、前記低応力部(50)であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記低応力部(50)は、前記筐体(20)とは別体であり、前記筐体(20)に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記底部(21)と前記ターミナル(30)における前記リード(11)との電気的な接続部位(31a)との間、及び、前記モールド樹脂(13)と前記ターミナル(30)との間に、前記低応力部(50)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記突出部位(31)と電気的に接続された電子部品(60)が、前記ポッティング剤(40)を介して前記筐体(20)に固定されていることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記突出部位(31)と電気的に接続された電子部品(60)が、前記壁部(22)から前記収納空間内に突出した突出部(22a)に、前記ポッティング剤(40)を介して固定され、
前記突出部位(31)と前記電子部品(60)との電気的な接続部位(31b)が、前記ポッティング剤(40)によって被覆されており、
前記突出部(22a)と前記底部(21)との間に前記低応力部(50)が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記底部(21)と前記突出部位(31)における前記電子部品(60)との電気的な接続部位(31b)との間に前記低応力部(50)が設けられていることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記低応力部(50)は、前記壁部(22)の一部、若しくは、前記筐体(20)とは別体であることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記筐体(20)の底部(21)は、金属材料から成り、
前記筐体(20)の壁部(22)は、樹脂材料から成ることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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