説明

半導体装置

【課題】半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合に、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体素子20の定常的な冷却を行うヒートシンク40を半導体素子20の下面20a側に配設するとともに、半導体素子20から受けた熱を固相から液相への変化に伴う潜熱として蓄熱可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50を、半導体素子20の上面20bに直接触れさせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を用いた半導体素子の冷却構造を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば下記特許文献1に開示された半導体素子の冷却構造を備えた半導体装置がある。この半導体装置は、半導体素子と、半導体素子が搭載されるヒートシンクと、半導体素子に対してヒートシンクの反対側に位置するように半導体素子に取付けられた潜熱蓄熱材を含む蓄熱部材とを備えており、蓄熱部材はケース内に潜熱蓄熱材を充填して構成されている。このような構成により、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、蓄熱部材の潜熱蓄熱材が吸熱して半導体素子の温度上昇を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の半導体装置では、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、半導体素子の発した熱はケースを介して潜熱蓄熱材に伝達され、潜熱蓄熱材が潜熱蓄熱の効果を発揮するまでの応答時間が長くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合に、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
半導体素子(20)と、
半導体素子を内部に収納するケーシング(10)と、
半導体素子の一方の面である第1面(20a)側に配設され、半導体素子が発する熱をケーシングの外部に放熱するヒートシンク(40)と、
半導体素子の第1面とは反対側の第2面(20b)に接するようにケーシング内に充填された潜熱蓄熱材からなる蓄熱体(50)と、を備え、
潜熱蓄熱材は、絶縁性を有するとともに、半導体素子から受けた熱を固相から液相への変化に伴う潜熱として蓄熱することを特徴としている。
【0007】
これによると、半導体素子(20)の定常的な冷却はヒートシンク(40)によって行い、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、蓄熱体(50)をなす潜熱蓄熱材が固相から液相へ相変化して吸熱し、半導体素子の温度上昇を抑制することができる。潜熱蓄熱材からなる蓄熱体は、絶縁性を有して半導体素子の第2面(20b)に直接触れているので、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、半導体素子から速やかに吸熱することができる。このようにして、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、蓄熱体には、更に、絶縁性を有し潜熱蓄熱材よりも熱伝導率が高い高熱伝導フィラー(50a)が添加されていることを特徴としている。これによると、半導体素子からの熱を受けた蓄熱体は、潜熱蓄熱材よりも熱伝導率が高い高熱伝導フィラー(50a)を介して蓄熱体の全体へ速やかに熱を伝えることができる。したがって、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を一層向上することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、蓄熱体の有する熱をケーシングの外部に放熱する放熱手段(60)を備えることを特徴としている。これによると、放熱手段(60)による放熱により、半導体素子から吸熱して固相から液相へ相変化した潜熱蓄熱材からなる蓄熱体を冷却して、潜熱蓄熱材を液相から固相へ相変化させ、吸熱能力を容易に回復することが可能である。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、半導体素子の第2面から蓄熱体の内部に突設され、半導体素子から蓄熱体への伝熱を促進する伝熱促進手段(70)を備えることを特徴としている。これによると、伝熱促進手段(70)により伝熱面積を増大して、半導体素子から蓄熱体をなす潜熱蓄熱材への伝熱を促進することができる。したがって、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性をより一層向上することができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明では、蓄熱体の半導体素子と接する側とは反対側の面を全域に亘って覆い、蓄熱体をケーシングの内部に封止するゲル状封止部材(51)を備えることを特徴としている。これによると、蓄熱体をなす潜熱蓄熱材が吸熱に伴い液相となったとしても、ゲル状封止部材(51)により、蓄熱体の相変化に伴う体積変化に対応しつつ蓄熱体をケーシング内に容易に保持することができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明では、ヒートシンクは第1ヒートシンク(40)であり、半導体素子の第2面側に配設され、半導体素子が発する熱を第2面からもケーシングの外部に放熱する第2ヒートシンク(41)を備えることを特徴としている。このように、半導体素子を第1、第2ヒートシンク(40、41)により両面側から冷却する半導体装置においても、絶縁性を有して半導体素子の第2面(20b)に直接触れている潜熱蓄熱材からなる蓄熱体によって、半導体素子の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、半導体素子から速やかに吸熱することができる。このようにして、半導体素子が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することができる。
【0013】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した第2の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明を適用した第3の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明を適用した第4の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明を適用した第5の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【図6】本発明を適用した他の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における半導体装置1の概略構成を示す断面図である。本実施形態の半導体装置1は、例えば車両に搭載される制御機器の制御回路を構成するものであって、例えばスイッチング回路を構成するIGBT素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ素子)やダイオード素子等の半導体素子20を備えるものである。図1に示す半導体装置1は、2つのIGBT素子を並列接続、もしくは、IGBT素子とダイオードとを並列接続した装置を例示している。
【0017】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体素子20を内部に収容するケーシングである例えば樹脂製のケース10を備えている。ケース10は、比較的高さが低い(図示上下方向の寸法が比較的小さい)略角筒形状をなしており、ケース10の図示下方開口部を塞ぐように、金属製で(例えば銅材もしくはアルミニウム材からなる)平板状のヒートシンク40が配設されている。
【0018】
半導体素子20は回路基板30に実装されている。回路基板30は、例えば絶縁体(例えばセラミック)からなる絶縁基板31と、絶縁基板31の図示上面に形成された例えば銅箔もしくは導電ペースト焼成体からなる導体パターン32とにより構成されている。半導体素子20は、下面20a(本発明の第1面に相当)が導体パターン32に半田付け等により電気的に接続されている。
【0019】
このように半導体素子20を実装した回路基板30は、回路基板30の非実装面が全域に亘ってヒートシンク40に接触するようにケース10内に配設されている。すなわち、ヒートシンク40は、半導体素子20の一方の面である下面20a側に配設されており、半導体素子20が発する熱を回路基板30を介して受熱し、ケース10の外部へ放熱するようになっている。
【0020】
ケース10には、電極端子を有する金属製の(例えば銅材もしくはアルミニウム材からなる)リードフレーム11がインサート成形されている。リードフレーム11のケース10内方側の端子部と半導体素子20の上面20bとの間、および、リードフレーム11のケース10内方側の端子部と回路基板30の導体パターン32との間等は、ボンディングワイヤ12で電気的に接続されて、半導体装置1内の回路が構成されている。リードフレーム11の一部はケース10の外方に突出して外部接続端子11aとなっている。
【0021】
ケース10の内部には、蓄熱体50が充填されている。図1から明らかなように、蓄熱体50は、半導体素子20が実装された回路基板30の上面を全域に亘って覆い、半導体素子20の下面20aとは反対側の上面20b(本発明の第2面に相当)に直接接するようにケース10内に充填されている。
【0022】
蓄熱体50は、絶縁性を有するとともに半導体素子20から受けた熱を固相から液相への変化に伴う潜熱として蓄熱することが可能な潜熱蓄熱材からなっている。潜熱蓄熱材としては、例えば、エリスリトール、キシリトール、パラフィン等を採用することができる。なお、蓄熱体50は、ボンディングワイヤ12を含むケース10内の回路構成部を全て埋没するように充填されている。
【0023】
ケース10の内部には、蓄熱体50の上面、すなわち、蓄熱体50の半導体素子20と接する側とは反対側の面を全域に亘って覆い、蓄熱体50をケース10の内部に封止する可撓性を有するゲル状の封止部材51(本発明のゲル状封止部材に相当)が層状に設けられている。封止部材51には、例えばシリコーンゲルを用いることができる。
【0024】
上述の構成において、半導体素子20が作動に伴って定常的な発熱をしているときには、半導体素子20が発した熱は主にヒートシンク40によりケース10外部に放熱され、半導体素子20が冷却される。半導体素子20の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材が固相から液相へ相変化して吸熱し、半導体素子20の温度上昇を抑制する。
【0025】
上述の構成の半導体装置1によれば、半導体素子20から受けた熱を固相から液相への変化に伴う潜熱として蓄熱可能な潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50が、半導体素子20の上面20bに直接触れている。したがって、半導体素子20の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、蓄熱体50が半導体素子20から速やかに吸熱することができる。このようにして、半導体素子20が発した熱を蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することができる。
【0026】
また、蓄熱体50の上面の全域をゲル状の封止部材51で覆って、蓄熱体50をケース10内に封止している。したがって、蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材が吸熱に伴い液相となったとしても、封止部材51によりケース10内に保持することができる。また、封止部材51はゲル状であるので、蓄熱体50の固相と液相との相変化に伴う体積変化があっても撓んで体積変化に対応することが可能であり、蓄熱体50をケース10内に安定して保持することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図2に基づいて説明する。
【0028】
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、蓄熱体50の有する熱をケース10の外部へ放熱する放熱手段を追加した点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の半導体装置1は、放熱手段である放熱器60を備えている。放熱器60は、図示上下方向に延びるヒートパイプ61とヒートパイプ61に熱的に接合されたフィン62とを有している。ヒートパイプ61は、例えば両端を閉塞された銅製のパイプ部材の内部に作動液としての水を封入して構成されている。
【0030】
ヒートパイプ61の図示下端部は蓄熱体50内に位置し、図示上端部は封止部材51の上面よりも上方に位置している。ヒートパイプ51の蓄熱体50内に位置する部分および封止部材51よりも上方に突出している部分には、例えば銅製でプレート状のフィン62が接合されている。
【0031】
本実施形態の半導体装置1によれば、蓄熱体50の有する熱をケース10の外部へ放熱する放熱器60を備えているので、半導体素子20から吸熱して固相から液相へ相変化した潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50を冷却して、潜熱蓄熱材を液相から固相へ相変化させ、吸熱能力を容易に回復することができる。
【0032】
また、放熱器60は、蓄熱体50内に位置する部分および封止部材51よりも上方に突出している部分のそれぞれにフィン62を有しているので、蓄熱体50からの吸熱および空気への放熱を効率よく行うことができる。
【0033】
また、潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50が一時的に全部が液相状態となる場合があったとしても、放熱器60は封止部材51に支持されているので、位置が大きく変位することはない。放熱器60は、封止部材51のみに支持されているものに限定されず、ケース10に取付けられて支持されるものであってもよい。また、放熱手段の構成は、ヒートパイプ61を有する放熱器60の構成に限定されず、蓄熱体50の有する熱をケース10の外部へ放熱可能なものであればよい。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図3に基づいて説明する。
【0035】
本第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、半導体素子20から蓄熱体50への伝熱を促進する伝熱促進手段を追加した点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態の半導体装置1は、伝熱促進手段である伝熱フィン70を備えている。伝熱フィン70は、例えば、銅材やアルミニウム材からなり、半導体素子20の上面20bに沿って延びる平板部から図示上方に向かって複数の壁部が立設され、断面形状が櫛歯状をなしている。伝熱フィン70は、上述の平板部が半導体素子20の上面20bの一部に、例えば半田付け等により接合されている。
【0037】
本実施形態の半導体装置1によれば、半導体素子20の上面20bから蓄熱体50の内部に突設された伝熱フィン70を備えており、伝熱フィン70と蓄熱体50との接触面積は、半導体素子20の上面20bと伝熱フィン70との接合面積よりも大きくなっている。すなわち、伝熱フィン70を設けることにより半導体素子20から蓄熱体50への伝熱面積を増大して、半導体素子20から蓄熱体50への伝熱を促進可能としている。したがって、半導体素子20が発した熱を蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を確実に向上することができる。
【0038】
伝熱促進手段は、上記構成の伝熱フィン70に限定されず、蓄熱体50よりも熱伝導率が高い高熱伝導材料で形成され、蓄熱体50との接触面積を増大できるものであればよい。例えば、複数の針状部が蓄熱体50の内部に突設された金属製の伝熱フィンであってもよい。
【0039】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図4に基づいて説明する。
【0040】
本第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、蓄熱体50に絶縁性の高熱伝導フィラーが添加されている点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態の半導体装置1は、蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材中に、絶縁性を有し潜熱蓄熱材よりも熱伝導率が高い高熱伝導フィラー50aが添加されている。高熱伝導フィラー50aは、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ等からなるセラミックフィラーであり、針状(細線状)や円盤状をなしているものが好ましい。
【0042】
図4では、高熱伝導フィラー50aを解り易い様に比較的大きく図示しているが、例えば、直径が約1μm、長さが約100μmの比較的高アスペクト比のセラミックフィラーを採用することができる。高熱伝導フィラー50aは、蓄熱体50をなす潜熱蓄熱材中にほぼ均一に分散していることが好ましい。
【0043】
本実施形態の半導体装置1によれば、半導体素子20から受熱した蓄熱体50は、潜熱蓄熱材よりも熱伝導率が高い高熱伝導フィラー50aを介して、蓄熱体50の全体へ速やかに伝熱することができる。したがって、半導体素子20が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を確実に向上することができる。また、高熱伝導フィラー50aは絶縁性を有しているので、高アスペクト比のフィラーを採用したとしても、半導体装置1の回路が短絡することはない。
【0044】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について図5に基づいて説明する。
【0045】
本第5の実施形態は、本発明を両面冷却タイプの半導体装置に適用した例である。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の半導体装置1は、半導体素子20の下面20a側に配置したヒートシンク40(第1ヒートシンクに相当)と、半導体素子20の上面20b側に配置したヒートシンク41(第2ヒートシンクに相当)とを備えている。
【0047】
ヒートシンク40、41は、いずれも例えば銅製の平板状の部材であり、ヒートシンク40は、半導体素子20の下面20aに直接接触している。また、ヒートシンク41は、例えば銅製のスペーサ42を介して半導体素子20の上面20bに接触している。スペーサ42は、半導体素子20の上面20bの一部に直接接触している。
【0048】
図5から明らかなように、本実施形態の半導体装置1は、第1の実施形態で説明した回路基板30を有しておらず、ヒートシンク40、41およびスペーサ42が、導体パターンと同等の機能を有している。したがって、ヒートシンク40、41には、外部接続端子11aが電気的に接続している。
【0049】
本実施形態では、ケース10は、半導体素子20を挟み込んだ一対のヒートシンク40、41の外周縁部の間を全周に亘ってシールするようにモールドされている。上述した外部接続端子11aは、このケース10にインサート成形されている。そして、一対のヒートシンク40、41、およびケース10によって取り囲まれた空間に、絶縁性を有する潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50が充填されている。
【0050】
潜熱蓄熱材を上記内部空間に充填するために、例えば、ケース10を形成する工程は、潜熱蓄熱材充填経路を有する状態に成形するステップと、充填経路を閉塞するステップとを含む、複数のステップを有している。
【0051】
なお、本実施形態の半導体装置1は、ヒートシンク40、41を電気導通回路の一部として利用しているので、ヒートシンク40、41を外部から絶縁する必要がある。そこで、両ヒートシンク40、41の積層方向における外側面の全域を覆うように、絶縁性を有し熱伝導性に優れる、例えばセラミック材からなる絶縁板43を配設している。
【0052】
本実施形態の半導体装置1によれば、半導体素子20の下面20aの全域に接触するヒートシンク40と、半導体素子20の上面20bの一部にスペーサ42を介して接触するヒートシンク41とで、半導体素子20の定常的な冷却を行い、半導体素子20の発熱量が短時間で急激に増大した場合には、絶縁性を有して半導体素子20の上面20bに直接触れている潜熱蓄熱材からなる蓄熱体50によって、半導体素子20から速やかに吸熱することができる。このようにして、両面冷却タイプの半導体装置1においても、半導体素子20が発した熱を潜熱蓄熱材が蓄熱する蓄熱応答性を向上することができる。
【0053】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0054】
上記第1〜第4の実施形態では、ゲル状の封止部材51で蓄熱体50を封止していたが、これに限らず、例えば、図6に示すように、封止部材51を廃止してもかまわない。半導体装置1が、車両に搭載して用いられる等、振動が加わったり搭載姿勢が傾斜したりするような場合にはゲル状の封止部材51で封止することが好ましいが、定置使用される場合には、封止部材51を用いないことも可能である。また、車両搭載等においても、封止部材51を用いず、ケース10の上端開口をカバー部材等で閉塞して用いることも可能である。
【0055】
また、図6に例示したゲル状の封止部材51を用いない半導体装置1に対して、第1の実施形態のゲル状封止部材、第2の実施形態の放熱手段、第3の実施形態の伝熱促進手段、第4の実施形態の高熱伝導フィラー、および、第5の実施形態の両面冷却構造の2つ以上を組み合わせて適用するものであってもかまわない。
【符号の説明】
【0056】
1 半導体装置
10 ケース(ケーシング)
20 半導体素子
20a 下面(半導体素子の第1面)
20b 上面(半導体素子の第2面)
40 ヒートシンク(第1ヒートシンク)
41 ヒートシンク(第2ヒートシンク)
50 蓄熱体
50a 高熱伝導フィラー
51 封止部材(ゲル状封止部材)
60 放熱器(放熱手段)
70 伝熱フィン(伝熱促進手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(20)と、
前記半導体素子を内部に収納するケーシング(10)と、
前記半導体素子の一方の面である第1面(20a)側に配設され、前記半導体素子が発する熱を前記ケーシングの外部に放熱するヒートシンク(40)と、
前記半導体素子の前記第1面とは反対側の第2面(20b)に接するように前記ケーシング内に充填された潜熱蓄熱材からなる蓄熱体(50)と、を備え、
前記潜熱蓄熱材は、絶縁性を有するとともに、前記半導体素子から受けた熱を固相から液相への変化に伴う潜熱として蓄熱することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記蓄熱体には、更に、絶縁性を有し前記潜熱蓄熱材よりも熱伝導率が高い高熱伝導フィラー(50a)が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記蓄熱体の有する熱を前記ケーシングの外部に放熱する放熱手段(60)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子の前記第2面から前記蓄熱体の内部に突設され、前記半導体素子から前記蓄熱体への伝熱を促進する伝熱促進手段(70)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記蓄熱体の前記半導体素子と接する側とは反対側の面を全域に亘って覆い、前記蓄熱体を前記ケーシングの内部に封止するゲル状封止部材(51)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクは第1ヒートシンク(40)であり、
前記半導体素子の前記第2面側に配設され、前記半導体素子が発する熱を前記第2面からも前記ケーシングの外部に放熱する第2ヒートシンク(41)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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