説明

半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法および洗浄された成形品

【課題】クリーン化された半導体製造装置用のフッ素ゴム系シール材をうることのできる新規かつ有効な洗浄方法を提供する。
【解決手段】金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない洗浄温度で液状の特定の有機化合物または特定の無機化合物によりフッ素ゴム系シール材を1回または2回以上洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系シール材の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用のシール材などのフッ素ゴム系成形品の洗浄方法および洗浄された成形品、ならびに該成形品が組み込まれたエッチング装置などの半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体産業の分野においては、半導体製造装置用のシール材などの成形品には、一般に、シリコーン系材料、フルオロシリコーン系材料、エチレン/プロピレン/ジエン3元共重合体(EPDM)などからなるシール材が用いられているが、耐熱性、耐プラズマ性、耐腐触ガス性などに優れるという点から、特に厳しい使用条件下の成形品としては、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体ゴム、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体ゴム、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体ゴムなどのフッ素ゴム材料が用いられている。
【0003】
ところで、半導体の製造工程においては、フォトレジストの残渣、有機溶剤の残渣、合成ワックス、人体からの脂肪酸などの有機系の残渣や、ナトリウム、カリウム、金、鉄、銅などの無機系の汚染物質や、微細なパーティクルが発生する。そしてこれらを除去し、つづく高温熱処理工程に持ち込まないことが重要であるため、ウエハーの洗浄には特に神経が使われ、それに用いる薬品類の厳重な管理が要求されている。
【0004】
しかし、たとえば64MbitのDRAMの最小パターンは0.35μmであるため、0.02〜0.03μm程度の微粒子まで管理の対象にする必要があるが、ウエハーの洗浄に用いられる薬品類をかかるレベルにまで管理することが技術的に困難であるのが現状である。
【0005】
そこで、本発明者らは、エッチングや洗浄によるシリコンウエハーなどの半導体の製品(被加工物)面からのクリーン化だけでは不充分ではないかと考え、半導体製造装置を構成する成形部材、特にシール材についてのクリーン化に着目した。
【0006】
特に半導体製造装置に用いられるシール材などの成形品に着目したのはパーティクルや金属成分が半導体表面に付着して歩留りを低下させる原因となりうると考えられたからである。
【0007】
シール材などの成形品のクリーン化方法として、従来から、たとえば、イソプロピルアルコールなどの溶媒を脱脂綿などに含浸させて、その脱脂綿でふきとるという方法が一般的に行なわれてきたが、成形品のパーティクル付着量および金属成分含有量を依然として充分に低減させることはできず、さらに、ウエハーなどの洗浄に用いられる前述の薬品類を用いても、半導体の高集積化およびパターンの微細化に対応した充分なクリーン化は達成できていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の事実に鑑み、本発明の目的は、クリーン化された半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品をうることのできる新規かつ有効な洗浄方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、シール材などの成形品が原因となるパーティクルや金属成分を充分に低減化することのできる半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水によりフッ素ゴム系成形品を1回または2回以上、好ましくは80℃以上の温度で洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法に関する。
【0010】
本発明は、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない洗浄温度で液状の有機化合物または無機化合物によりフッ素ゴム系成形品を1回または2回以上洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法にも関する。
【0011】
また、本発明は、フッ素ゴム系成形品を乾式エッチング洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品に関する。
【0012】
また、本発明は、フッ素ゴム系成形品を抽出洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法に関する。
【0013】
また本発明は酸化力を有する有機化合物または無機化合物を用いる洗浄方法および金属溶解力の高い無機化合物を用いる洗浄方法を順不同で行なったのち、超純水を用いる洗浄法を行ない、ついで清浄な不活性ガスまたは空気雰囲気下で水分の除去を行なう半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法に関する。またさらに本発明は、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まないH2SO4とH22との混合水溶液で洗浄したのち、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まないHF水溶液で洗浄し、金属含有量が1.0ppm以下であり粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水により洗浄し、ついで粒径が0.2μm以上の微粒子を26個/リットルを超えて含まずかつ有機成分含量(TOC)が0.1ppm以下の不活性ガスまたは空気雰囲気下で水分の除去を行なう半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルが20万個/cm2以下である半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品に関する。
【0015】
さらに本発明は、前記の洗浄方法を単独または2種以上組み合わせて洗浄されたフッ素ゴム系成形品であって、表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルが20万個/cm2以下である半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品にも関する。
【0016】
本発明はまた、前記フッ素ゴム系成形品が組み込まれた半導体製造装置、たとえばエッチング装置、洗浄装置、露光装置、研磨装置、成膜装置、拡散・イオン注入装置などに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリーン化された半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品をうることのできる新規かつ有効な洗浄方法を提供することができる。
【0018】
そして、このフッ素ゴム系成形品を組み込んだ半導体製造装置は成形品から発生するパーティクルや金属成分、アウトガス、イオン成分を充分に低減化することができるので、半導体の歩留りのより高い半導体製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明における半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品を構成するフッ素ゴムについて説明する。
【0020】
本発明における半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品を構成するフッ素ゴムとしては、従来からシール材などの成形用材料に用いられているものであれば特に制限はなく、たとえば
式(1):
【化1】

【0021】
(式中、mは85〜60、nは15〜40)もしくは
式(2):
【化2】

【0022】
(式中、mは95〜50、nは5〜50、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で示される2元共重合体ゴム、
式(3):
【化3】

【0023】
(式中、lは85〜20、mは0〜40、nは15〜40)で示される3元共重合体ゴム、
式(4):
【化4】

【0024】
(式中、lは95〜45、mは0〜10、nは5〜45、X、YおよびZはそれぞれ独立してフッ素原子または水素原子、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で示される3元共重合体ゴム、
式(5):
【化5】

【0025】
(式中、lは95〜35、mは0〜30、nは5〜35、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で示される3元共重合体ゴムなどがあげられる。これらの中でも、耐薬品性、耐熱性、耐プラズマ性という点から、
式(1)もしくは式(2)で示される2元共重合体ゴム、または式(3)で示される3元共重合体ゴムを用いるのが好ましい。
【0026】
さらに、本発明におけるフッ素ゴム系シール材を構成するフッ素ゴムとしては、エラストマー性セグメントである共重合体と非エラストマー性セグメントである共重合体との共重合体もあげられる。
【0027】
エラストマー性セグメントとは、非晶性でかつガラス転移点が25℃以下であるセグメントを示し、具体的に好ましい組成としては、たとえばTFE/PAVE/硬化部位を与える単量体(45〜90/10〜50/0〜5。モル%、以下同様)、さらに好ましい組成は45〜80/20〜50/0〜5、特に53〜70/30〜45/0〜2である。
【0028】
硬化部位を与える単量体としては、たとえばフッ化ビニリデン、CX2=CX−Rf3CHRI(式中、XはH、FまたはCH3、Rf3はフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、RはHまたはCH3)で示されるヨウ素含有単量体、
【化6】

【0029】
(式中、mは0〜5、nは1〜3)で示されるニトリル基含有単量体、臭素含有単量体などがあげられ、通常、ヨウ素含有単量体などが好適である。
【0030】
また、非エラストマー性セグメントである共重合体としては、
(1)VdF/TFE(0〜100/100〜0)、特にVdF/TFE(70〜99/30〜1)、PTFEまたはPVdF;
(2)エチレン/TFE/HFP(6〜43/40〜81/10〜30)、3,3,3−トリフルオロプロピレン−1,2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピレン−1/PAVE(40〜60/60〜40);
(3)TFE/CF2=CF−Rf1(非エラストマー性を示す組成範囲、すなわち、CF2=CF−Rf1が15モル%以下。式中、Rf1はCF3またはORf2(Rf2は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基));
(4)VdF/TFE/CTFE(50〜99/30〜0/20〜1);
(5)VdF/TFE/HFP(60〜99/30〜0/10〜1);
(6)エチレン/TFE(30〜60/70〜40);
(7)ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);
(8)エチレン/CTFE(30〜60/70〜40)
などがあげられる。これらのうち、耐薬品性と耐熱性の点から、特にPTFEおよびTFE/CF2=CF−Rf1の非エラストマー性の共重合体が好ましい。
【0031】
前記フッ素系ゴムは、圧縮成型法、射出成型法などの成形法によって製造することができる。
【0032】
つぎに、本発明にもとづく半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の第1の洗浄方法について説明する。
【0033】
本発明の第1の洗浄方法は、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水によりフッ素ゴム系成形品を1回または2回以上洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法である。
【0034】
ここで、「超純水」とは、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない水をいうが、超純水の中でも、シール材への金属混入の低減、微粒子の成形品への付着量低減という点から、金属含有量が0.8ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子が250個/ml以下であるのが好ましく、さらに、金属含有量が0.5ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子が200個/ml以下であるのが特に好ましい。
【0035】
ここで、超純水の不純物金属とは、たとえばNa、Fe、Cr、As、Al、Baなどであり、微粒子とは、藻類、水中微生物の分泌物、死がい、空気中のダストなどの微粒子をいう。
【0036】
かかる超純水は、原水から脱塩素処理、逆浸透処理(Ro)をへて、カートリッジ式の純水器と限界濾過(UF)、精密濾過(MF)の膜処理、殺菌処理のための紫外線殺菌、脱気処理などにより、純度を上げ、微生物、微粒子、有機物を除去することによって製造することができる。
【0037】
第1の洗浄方法の具体的方法としては、特に制限はないが、シャワー、スプレー、ジェットスクラブ、ディップ、超音波またはメガソニック洗浄などにより行なうのが好ましい。また、効果的に効率よく微粒子を除去できるという点から、煮沸洗浄するのが好ましい。
【0038】
洗浄の回数としては、1回または2回以上であって、洗浄後の成形品表面での特定粒径のパーティクルの数が後述する範囲になれば特に制限はない。他の洗浄方法と組み合わせる場合は1回でもよいが、第1の洗浄方法のみを行なう場合は2回以上行なうことが好ましい。
【0039】
また、第1の洗浄方法においては、パーティクルの除去効率を上げるという点から、洗浄時の超純水の温度は、20〜100℃であるのが好ましく、さらに、40〜100℃であるのが特に好ましい。効果的に効率よく微粒子を除去できるという点から、煮沸洗浄するのが好ましい。煮沸温度は70〜100℃、好ましくは80〜100℃、特に90〜100℃であり、煮沸時間は0.5〜5時間である。また、煮沸洗浄の際、超純水を有効に使用するという点から超純水を還流させるのが好ましい。
【0040】
また、雰囲気は特に制限されないが、微粒子の混入を防止するという点から、クリーンルーム、クリーンベンチまたはクリーントンネルなどの雰囲気下で洗浄するのが好ましい。
【0041】
この超純水を用いる第1の洗浄方法は、他の汚染物質も除去できるが、フッ素ゴム系成形品に含まれる、または付着しているF-、SO42-、Cl-などのイオン分を除去する方法として特に好適である。
【0042】
洗浄後、通常、チッ素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなど清浄化された不活性ガス雰囲気下、または好ましくは不活性ガスを流しながら50〜300℃、好ましくは100〜250℃にて1〜72時間、好ましくは1〜24時間加熱処理することにより、水分含量を低減化できると共に成形品に付着した空気中に含まれる有機成分も除去することができる。
【0043】
通常、フッ素ゴム系成形品表面のパーティクルの粒径は0.2μm以上で、成形品表面に50万〜100万個/cm2存在する。これに対し、上述した第1の洗浄方法によって洗浄したフッ素ゴム系成形品は、表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルが10万個/cm2以下である。また、粒径が0.2μm以上のパーティクルが5万個/cm2以下であるのが好ましく、さらに、粒径が0.2μm以上のパーティクルが2万個/cm2以下であるのが特に好ましい。もちろん粒径が0.5μmを超える大きなパーティクルはできるだけ少ない方がよく、好ましくは1万個/cm2以下、特に0.5万個/cm2とする。
【0044】
ここで、パーティクルとは、成形品の各製造工程において入りこんだダスト、離型剤などの加工助剤、人体からの脂肪酸などの有機性残渣などからなるものをいう。この際、成形品は金属部と接触しないように、フッ素樹脂製フィルムまたはポリエチレン樹脂製フィルムをラミネートした容器、フッ素樹脂製容器およびポリエチレン製容器を用いることが好ましい。
【0045】
つぎに、洗浄後のフッ素ゴム系成形品の表面に存在するパーティクルの大きさおよび数の測定方法と評価方法について説明する。
【0046】
本発明においては、成形品を水中に浸漬させ、成形品から水中に出てきたパーティクルを以下に示す方法で測定する。この測定方法は、直接法と間接法の2種に大別され、直接法は水中のパーティクルの個数を粒径別にカウントする方法であり、間接法は特定のメンブレンフィルターの目詰まりの程度を指数として表示する方法である。
【0047】
ここでは、直接法に代表させてさらに詳しく説明する。この直接法としては、さらに(1)直接検鏡法、(2)電子顕微鏡法および(3)微粒子計測器法の3種類がある。
【0048】
(1)の方法においては、メンブレンフィルターに水を通過させ、メンブレンフィルター表面に捕捉されたパーティクルを光学顕微鏡で観察、測定する。(2)は(1)とほぼ同じ方法であり、光学顕微鏡のかわりに走査型電子顕微鏡により計測を行う。また(3)の方法においては、センサー部に流入させたパーティクルを含む水に光を当て、パーティクルカウンターによりその透過光や散乱光の量を電気的に測定することによってパーティクルの数および粒径を測定する。
【0049】
つぎに、本発明にもとづく半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の第2の洗浄方法について説明する。
【0050】
本発明の第2の洗浄方法は、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない洗浄温度で液状の有機化合物または無機化合物によりフッ素ゴム系成形品を1回または2回以上洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法である。
【0051】
本発明の第2の洗浄方法において用いる液状の有機化合物としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;ヘキサン、オクタン、キシレンなどの炭化水素;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、四塩化炭素などの塩素系炭化水素;パーフルオロベンゼン、パーフルオロヘキサン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンなどのフッ素系炭化水素;ジエチルエーテルなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルなどがあげられ、これらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、液状の無機化合物としては、たとえばH2SO4、HNO3、H22、HF、O3(オゾン溶解水)、NH4OH、HClなどがあげられ、これらを適宜組み合わせて用いることができる。特にH2SO4とH22の混合液、HClとH22の混合液、O3とHFの混合液、O3とH2SO4の混合液、O3とHClの混合液、HF水溶液などは半導体製造工程でよく使用されており、洗浄液としては好適である。
【0053】
本発明の第2の洗浄方法において用いる前記液状の有機化合物または無機化合物は、金属含有量が1.0ppm以下である。また、成形品への金属混入の低減という点から、金属含有量は0.8ppm以下であるのが好ましく、さらに、金属含有量は0.5ppm以下であるのが特に好ましい。
【0054】
ここで、前記液状の有機化合物または無機化合物が含有しうる金属とは、Na、Fe、Cr、As、Al、Baなどである。
【0055】
また、前記液状の有機化合物または無機化合物は、微粒子の成形品への付着量低減という点から、粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない。粒径が0.5μm以上の微粒子の数が150個/ml以下であるのが好ましく、さらに、粒径が0.5μm以上の微粒子の数が100個/ml以下であるのが特に好ましい。
【0056】
ここで、前記液状の有機化合物または無機化合物が含有しうる微粒子とは、空気中のダスト、製造時に混入する微粒子、保管用容器の内壁に付着している微粒子や保管用容器壁などに含まれる加工助剤などである。
【0057】
前記要件を満たすべく、洗浄時の前記液状の有機化合物または無機化合物の温度は、20℃以上で、沸点未満であるのが好ましい。
【0058】
かかる液状の有機化合物または無機化合物としては、電子工業用グレードとして一般に市販されているものを用いることができる。
【0059】
第2の洗浄方法の主な目的は大きく分けて2つある。1つは酸化力を有する無機化合物または有機化合物による不純物有機成分の除去にある。この目的にはH2SO4/H22混合液、O3水溶液などの無機化合物;アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどの有機化合物が好適である。もう1つは金属を溶解する力の強い無機化合物による不純物金属成分の除去にある。この目的にはHF、HCl、H2SO4、HNO3などの無機酸のほか、前記H2SO4/H22混合液が好適である。
【0060】
第2の洗浄方法の具体的方法としては、特に制限はないが、シャワー、スプレー、ジェットスクラブ、ディップ、超音波、メガソニック洗浄などにより行なうのが好ましい。効果的に効率よく微粒子を除去できるという点から、煮沸洗浄するのが好ましい。煮沸温度は70〜100℃、好ましくは80〜100℃であり、煮沸時間は0.5〜5時間である。また、煮沸洗浄の際、有機化合物または無機化合物を有効に使用するという点から液状の有機化合物または無機化合物を還流させるのが好ましい。
【0061】
また、第2の洗浄方法は、洗浄時の雰囲気は特に制限されないが、微粒子の混入を防止するという点から、クリーンルーム、クリーンベンチまたはクリーントンネルなどの雰囲気下で洗浄するのが好ましい。
【0062】
洗浄の回数は、洗浄後の成形品表面のパーティクルの数が後述する範囲になれば特に制限はなく、複数回行ってもよい。また、第2の洗浄方法の前および/または後に第1の洗浄方法で説明した超純水による洗浄を1回または2回以上行なってもよい。さらに第1の洗浄方法で説明した洗浄後の加熱処理を施すことが好ましい。
【0063】
本発明の第2の洗浄方法によって洗浄したフッ素ゴム系成形品は、表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルが10万個/cm2以下である。また、パーティクル発生の低減という点から、粒径が0.2μm以上のパーティクルが5万個/cm2以下であるのが好ましく、さらに、粒径が0.2μm以上のパーティクルが2万個/cm2以下であるのが特に好ましい。
【0064】
なお、洗浄後のフッ素ゴム系成形品の表面に存在するパーティクルの大きさおよび数の測定方法と評価方法については、前述した第1の洗浄方法についてのばあいと同様である。
【0065】
つぎに、本発明の第3の洗浄方法に用いる乾式エッチング洗浄について説明する。一般的に、乾式エッチング洗浄とは化学反応性の高いガス、励起ガスまたは光を被洗浄物に接触させることにより、被洗浄物の表面などに存在するパーティクルを化学的および/または物理的に分解させる方法をいう。
【0066】
かかる乾式エッチング洗浄方法としては、UV/O3照射、イオンビーム照射、レーザービーム照射、プラズマ照射またはガスエッチングがあげられる。
【0067】
すなわち、本発明の第3の洗浄方法は、フッ素ゴム系成形品をUV/O3照射、イオンビーム照射、レーザービーム照射、プラズマ照射またはガスエッチングにより乾式エッチング洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法である。
【0068】
この第3の洗浄方法は特に不純物有機成分の除去に好適である。
【0069】
以下にこれらの乾式エッチング洗浄方法について順に説明する。
【0070】
(1)UV/O3による洗浄方法。
UV/O3洗浄とは、被洗浄物に紫外線を照射し、表面に付着している有機物を直接分解、または活性化して酸化作用を起こしやすくし、かつ同時に紫外線の作用で発生したオゾンから分離した活性酸素の作用で、有機汚染物質を揮発性の物質に分解変化させて除去する方法である。たとえばアイグラフィックス株式会社、ウシオ電機株式会社などからUV/O3洗浄装置として一般に市販されている装置を好適に用いることができる。
【0071】
(2)イオンビームによる洗浄方法。
イオンビーム洗浄とは、アルゴンイオンなどの荷電粒子を低圧チャンバ内で加速してビームとしてとり出し、被洗浄物に衝突させてパーティクルを除去する物理的エッチング方法である。この装置もイオンテック社などから一般に市販されており、本発明においてはこれらの市販の装置を好適に用いることができる。
【0072】
(3)レーザービームによる洗浄方法。
レーザービーム洗浄とは、被洗浄物に、高出力ルビーレーザのパルスを照射することにより洗浄する方法である。この装置も一般に市販されており、本発明においてはこれら市販の装置を好適に用いることができる。
【0073】
(4)プラズマによる洗浄方法。
プラズマ洗浄とは、高周波電界中に酸素ガスを導入して発生させた活性な酸素プラズマを利用する方法である。本方法によれば、有機物は酸化され、最終的にCO2やH2Oに転化されて排気除去される。このプラズマ洗浄に用いるプラズマ灰化装置は一般に市販されており、本発明においてはこれら市販の装置を好適に用いることができる。
【0074】
(5)ガスエッチングによる洗浄方法。
ガスエッチング洗浄に好適に用いられるガスは無水フッ酸ガスである。圧力、温度を適量に調整することにより、目的物を除去洗浄すること、本方法においては、ガスとしてフッ素ガス、オゾンガス、無水フッ酸ガスなどが用いられるが、なかでも無水フッ酸ガス、無水フッ素ガスとオゾンガスの混合ガスが好適である。これらのガスを被洗浄体に接触させ、雰囲気の圧力、温度を適宜調節することによりパーティクルを除去することができる。
【0075】
つぎに、本発明の第4の洗浄方法は、フッ素ゴム系成形品を抽出洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系成形品の洗浄方法である。
【0076】
この第4の洗浄方法は特に不純物有機成分の除去に好適である。
【0077】
本発明における抽出洗浄には、ソックスレー抽出、高温高圧抽出、マイクロウェーブ抽出および超臨界抽出による洗浄方法がある。以下にこれらの抽出洗浄方法について説明する。
【0078】
(1)ソックスレー抽出による洗浄方法。
還流冷却器、抽出管および溶媒フラスコよりなる器具を用いて行なう。抽出管に試料を入れ、上方に冷却器を下部に溶媒を入れたフラスコを連結する。抽出管にはサイホンの役割をはたす側管が付いており、フラスコ内の溶媒を加熱するとその蒸気は側管を通って上昇し、冷却器で凝縮し、液体となって試料上に滴下し、滴下液がサイホンの頂点の高さになると側管から再びフラスコにもどり、抽出するしくみになっている。
【0079】
(2)高温高圧抽出による洗浄方法。
溶媒を用いた抽出方法で、その溶媒を高温高圧下で試料に接触させて抽出する方法である。
【0080】
(3)マイクロウェーブ抽出による洗浄方法。
溶媒にマイクロウェーブを照射して迅速に加熱し、その加熱された溶媒により抽出作業を行なう方法である。この装置も一般に市販されており本発明において好適に用いることができる。
【0081】
(4)超臨界抽出による洗浄方法。
超臨界抽出とは、分離対象物(ここではパーティクル)に超臨界液体(高密度ガス)を分離溶媒として接触させ、溶媒に対する成分ごとの溶解度の差を利用する平衡分離法である。一般に超臨界流体にはCO2ガスが用いられ、そのほかにはエタン、N2O、水などの流体ガスが用いられる。また、極性物質の抽出力を高めるため、しばしば数%のアルコールやケトンなどを加えた混合液体が利用される。この装置も一般に市販されており本発明において好適に用いることができる。
【0082】
なお、洗浄処理後、前記の加熱処理を施してもよい。
【0083】
これら乾式エッチング洗浄方法または抽出洗浄方法によって洗浄されたフッ素ゴム系成形品の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの数は、10万個/cm2以下である。また、5万個/cm2以下であるのが好ましく、さらに2万個/cm2であるのが特に好ましい。
【0084】
ここで、前記本発明の第1の洗浄方法、第2の洗浄方法、第3の洗浄方法および第4の洗浄方法は、それぞれ任意に組み合わせて用いることもできる。
【0085】
以上に各洗浄方法の特徴を説明したが、以下、除去対象(除去目的)別に本発明の洗浄方法を説明する。
【0086】
まず、有機ガスの発生源となる空気に含まれる有機物成分や成形時の離型剤などの不純物有機成分を除去する方法(A)として特に有効な方法としては、つぎの4つの洗浄方法があげられる。
(A−1)酸化力のある無機化合物を用いる第2の洗浄方法。
(A−2)酸化力のある有機化合物を用いる第2の洗浄方法。
(A−3)第3の乾式エッチング洗浄方法。
(A−4)第4の抽出洗浄方法。
【0087】
これらは1種または2種以上を組み合せて用いてもよい。組み合せる場合は順序は適宜選定すればよい。
【0088】
つぎに不純物金属成分を除去する方法(B)として特に有効な方法としては、金属成分の溶解力に優れた無機化合物を用いる第2の洗浄方法があげられる。
【0089】
また、不純物イオン(たとえばF-、SO42-、Cl-)を除去する方法(C)として特に有効な方法としては、超純水を用いる第1の洗浄方法があげられる。
【0090】
さらにこれらの洗浄方法を実施したのち水分を除去する乾燥工程を実施することにより、水分発生量を低減化できる。この乾燥工程に用いる方法(D)としては、たとえば清浄なチッ素ガスなどの不活性ガス雰囲気下またはガス流下あるいは真空下で乾燥する方法;有機物や微粒子を除いた清浄な乾燥空気を吹きつけて乾燥する方法などがあげられる。
【0091】
乾燥(水分除去)に用いる清浄な不活性ガスまたは空気とは、粒径が0.2μm以上の微粒子を26個/リットルを超えて含まず(これはいわゆるクラス100の環境である)、有機成分含量(TOC)が0.1ppm以下のものをいう。
【0092】
特に以上のすべての不純物を効果的に除去するには、前記の(A)〜(D)の方法を(A)→(B)→(C)→(D)の順で、または(B)→(A)→(C)→(D)の順で行なうことが望ましい。(A)洗浄では(A―1)〜(A―4)の方法の1つまたは2つ以上を組み合せてもよい。
【0093】
特に半導体シール材など、パーティクル数の減少、イオン量の減少、有機ガス発生量の減少および水分発生量の減少が強く求められる場合は、H2SO4とH22との混合液による洗浄とHF水溶液による洗浄を組合わせ、さらに超純水による煮沸洗浄を行なったのち、清浄な不活性ガス流下に加熱乾燥処理することが特に好ましい。
【0094】
かかる方法によって洗浄されたフッ素ゴム系成形品は、ますます微細化が進み、クリーン化が求められている半導体産業における製造装置用シール材などの成形品に好適に用いることができる。
【0095】
具体的には、シール材としては、O−リング、角−リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシールなどがあげられる。そのほか、各種のエラストマー製品、たとえばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロールなどとしても使用できる。また、コーティング用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0096】
なお、本発明でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置など、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものである。
【0097】
具体的には次のような半導体製造装置に組み込んで用いることができる。
【0098】
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
【0099】
(2)洗浄装置
乾式エッチング洗浄装置
UV/O3洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
【0100】
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
【0101】
(4)研磨装置
CMP装置
【0102】
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
【0103】
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
【0104】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0105】
実施例1(超純水を用いた本発明の第4の洗浄方法)
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水を、原水から脱塩素処理を行なったのち、逆浸透処理(Ro)、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)を複数回行ない、そののち紫外線殺菌、脱気処理を行なうという方法によりえた。
【0106】
また、このとき、金属含有量(ppm)を、原子吸光分析により測定し、粒径が0.2μm以上の微粒子の個数(個/ml)を、微粒子計測器法((株)リオン製の液中パーティクルカウンターKL−22を使用)により測定した。
【0107】
ついで、えられた超純水を用いて、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を、温度100℃でのソックスレー抽出洗浄をした。洗浄後のシール材を超純水100ml中に浸漬し、振とう機(大洋科学工業(株)製のTS−4)を用い振幅10cm、振動回数2回/秒で5分間振動させたのち20分間静置し、前記液中パーティクルカウンターによりシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数(個/cm2)を測定した。結果は、4万個/cm2であった。
【0108】
実施例2(有機化合物を用いた本発明の第4の洗浄方法)
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない液状のアセトン(電子工業用グレードとして一般に市販されているもの)を用いたほかは実施例1と同様にしてシール材の洗浄を行なった。なお、アセトンの金属含有量(ppm)および粒径が0.5μm以上の微粒子の個数(個/ml)は実施例1と同様にして測定した。
【0109】
ついで、前記液状のアセトンを用いて、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を、沸点でのソックスレー抽出洗浄をし、洗浄後のシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数(個/cm2)を、実施例1と同様にして測定した。結果は6.8万個/cm2であった。
【0110】
実施例3(無機化合物を用いた本発明の第2の洗浄方法)
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない96重量%のH2SO4水溶液(電子工業用グレードとして一般に市販されているもの)を用いて、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を、100℃で1時間浸漬洗浄し、洗浄後のシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数(個/cm2)を、実施例1と同様にして測定した。結果は0.8万個/cm2であった。なお、前記H2SO4水溶液中の金属含有量(ppm)および粒径が0.5μm以上のパーティクルの個数(個/ml)は実施例1と同様にして測定した。
【0111】
実施例4(乾式エッチング方法を用いた本発明の第3の洗浄方法)
UV/O3洗浄装置として、アイグラフィックス社製α−35003型を使用して照射距離65mmから5分間照射し、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を洗浄した。洗浄後のシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数(個/cm2)を、実施例1と同様にして測定した。結果は4万個/cm2であった。
【0112】
実施例5(超純水を用いた本発明の第1の洗浄方法)
実施例1で用いたものと同じ超純水を用いて、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を1時間煮沸(100℃)洗浄した。このようにして洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、8.8万個/cm2であった。
【0113】
実施例6(無機化合物を用いた本発明の第2の洗浄方法)
超純水のかわりに実施例3で用いたH2SO4水溶液を用いたほかは実施例5と同様にしてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材の洗浄をした。なお洗浄条件は100℃で1時間とした。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、2.9万個/cm2であった。
【0114】
実施例7(無機化合物を用いた本発明の第2の洗浄方法)
超純水のかわりに金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない液状のHCl(電子工業用グレードとして一般に市販されているもの)を用いたほかは実施例5と同様にしてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を洗浄をした。洗浄条件は100℃、1時間であった。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、3.9万個/cm2であった。
【0115】
実施例8(無機化合物を用いた本発明の第2の洗浄方法)
超純水のかわりに金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない液状のH2SO4/H22混合液(96重量%濃度のH2SO4水溶液と30重量%濃度のH22水溶液を1/1(重量比)で混合。各水溶液は電子工業用グレードとして一般に市販されているものである)を用いたほかは実施例5と同様にしてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を洗浄した。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、1.0万個/cm2であった。
【0116】
実施例9(無機化合物を用いた本発明の第2の洗浄方法)
超純水のかわりに金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない液状のHCl/H22混合液(35重量%濃度のHCl水溶液と30重量%濃度のH22水溶液を1/1(重量比)で混合。各水溶液は電子工業用グレードとして一般に市販されているものである)を用いたほかは実施例5と同様にしてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を洗浄した。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、1.9万個/cm2であった。
【0117】
実施例10
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない液状のHF/O3水溶液(住友精機工業(株)製のオゾン水発生装置SGX−A11MNで製造。O3含有量10ppm)の混合液(HFとしては50重量%濃度のHF水溶液(電子工業用グレードとして一般に市販されているもの)を用いO3水溶液と1/1(重量比)で混合したもの)を用いてテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなるフッ素ゴム系シール材を25℃で1時間浸漬洗浄した。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、6.8万個/cm2であった。
【0118】
実施例11(超臨界抽出を用いた本発明の第4の洗浄方法)
圧力300kg/cm2、温度45℃の超臨界流体CO2により2時間かけて実施例1と同じシール材の抽出洗浄をした。洗浄されたシール材の表面に存在する粒径が0.2μm以上のパーティクルの個数を実施例1と同様に測定した結果、4.9万個/cm2であった。
【0119】
比較例
実施例1で用いたシール材について未洗浄で粒径が0.2μm以上のパーティクルの数を調べたところ50万個/cm2であった。
【0120】
実施例12
(1)乳化重合工程
内容量6000mlのステンレススチール製の耐圧反応槽にえられた超純水2リットル、乳化剤(C715COONH4)20g、pH調節剤(炭酸アンモニウム)18gを入れ、内部空間を窒素ガスで充分置換したのち、600rpmで撹拌下、50℃に昇温し、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の混合物(TFE/PMVE=20/80、モル比)を内圧が12.0kgf/cm2Gまで圧入した。重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)の186mg/ml水溶液2ml窒素圧で圧入すると、直ちに重合反応が始まって圧力降下が起こった。11.0kgf/cm2Gまで圧力が降下したとき、ジヨウ素化合物であるI(CF24Iを4.0g圧入し、ついでTFEを自圧にて19.0g、PMVEを23.0gプランジャーポンプにて圧入し、昇圧昇温を繰り返した。TFEおよびPMVEの合計仕込量が430g、511g、596gに達した時点でヨウ素化合物であるICH2CF2CF2OCF=CF2(IM)を各1.5g圧入した。なお、重合中には、反応開始後、12時間毎に35mg/mlのAPS水溶液2mlを窒素ガスで圧入した。
【0121】
重合反応開始から34時間後、TFEとPMVEの合計仕込み量が860gになった時点でオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出して固形分濃度30.0重量%の水性分散液を得た。
【0122】
(2)凝析工程
(1)でえられた水性分散液4.0gを超純水15.7gで希釈し、PFA製ビーカーに入れた凝析剤(MERCK社製 Suprapur:半導体グレードHClの3.5%水溶液)12gに滴下し凝析を行なって、含水エラストマーをえた。
【0123】
(3)乾燥工程
えられた溶剤を含むエラストマーをフッ素樹脂(PFA)製フィルム上に置いて耐熱性HEPAフィルターを用いて庫内をクラス100(パーティクルの個数:26個/リットル以下)でTOC:0.01ppm以下の環境にしているオーブン中150℃で12時間乾燥を行ない、クリーン化されたフッ素系エラストマーを得た。
【0124】
得られたクリーン化されたフッ素系エラストマーを用い、表1に示す組成で4種類の架橋性エラストマー組成物を調製した。このエラストマー組成物を160℃10分間プレス架橋(一次架橋)し、ついで180℃4時間オーブン架橋(二次架橋)してO−リング(AS−568A−214)を作製した。この洗浄前のO−リングのパーティクル数を前記の方法で、有機ガス発生量および水分発生量を後述の方法で調べた。結果を表1に示す。
【0125】
ついで、このO−リング(AS−568A−214)を実施例8で用いたものと同じH2SO4/H22(1/1)混合液を用いて100℃にて15分間洗浄したのち、50%HF水溶液を用いて25℃にて15分間洗浄した。その後、超純水を用いて100℃にて2時間煮沸し、さらに20ml/分の高純度窒素ガス気流下(容積40×40×40cm)に180℃で24時間加熱して水分を除去した。得られた最終製品およびプラズマ照射後のパーティクル数を前記の方法で、有機ガス発生量、イオン濃度および水分発生量をつぎの方法で調べた。結果を表1に示す。
【0126】
(有機ガス発生量)
密閉管にO−リング(AS−568A−214)を入れ、200℃で15分間加熱し、発生したガスを液体窒素で−40℃に冷却したトラップ管に採取し、ついで急加熱してガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製のGC−14A。カラム:(株)島津製作所製のUA−5)にかけることにより行なう。
【0127】
(水分発生量)
O−リング(AS−568A−214)を300℃で30分間加熱し、そのときの発生水分量をカール・フィッシャー式水分測定機(平沼(株)製のAQS−720)により行なう。
【0128】
(イオン濃度)
ポリプロピレン製の容器中に超純水50mlとO−リング(AS−568A−214)を入れ、この容器をオートクレーブ中で120℃にて1.1kgf/cm2の圧力下に1時間加熱処理し、処理後の超純水を(株)島津製作所製のイオンクロマトグラフィー(IC−7000)にかけることにより、イオン(F-、SO42-およびCl-)濃度を測定する。
【0129】
なお、表1中の配合物はつぎのとおりである。
フッ素系エラストマー:TFE/PMVE/IM共重合体
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
パーヘキサ2.5B:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製)
トーカブラック:東海カーボン(株)製の黒鉛化カーボンブラックフィラー、#3885
1−FX:(株)龍森製の超高純度合成球形石英シリカルブロンLSF:ダイキン工業(株)製の低分子量ポリテトラフルオロエチレンフィラー
【0130】
また、このO−リングにつぎの耐プラズマ性試験を行ない、パーティクル発生数を調べた。結果を表1に示す。
【0131】
(耐プラズマ性試験)
(株)サムコインタ−ナショナル研究所製のプラズマドライクリーナ モデルPX−1000を用い、真空圧50mTorr、酸素の流量200cc/分、電力400W、周波数13.56MHzの条件でプラズマを発生させ、この酸素プラズマを試料(O−リング)に対してアクティブイオンエッチング(RIE)条件で3時間照射する。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
得られた最終製品O−リング(プラズマ照射前)について、以下に示す方法にて金属抽出量を調べた。結果を表2および表3に示す。
(1)予め充分洗浄したPFA製容器(フタ付き)に抽出用薬液を所定量入れる。
(2)使用する抽出用薬液(H2SO4/H22(4/1)[表2]または50%HF[表3])は、半導体用グレードを用いる。
(3)試料O−リングをそれぞれの薬液中に浸漬(H2SO4/H22混合物では25℃14日間、50%HFでは25℃24時間)し、密封の後、所定の温度で保持する。その際試料を浸漬せず薬液のみで同様の保管をしたものを対照とする。
(4)任意の期間保管した後、薬液中の含有金属濃度をH2SO4/H22(表2)についてはICP−MS(セイコー電子(株)製のSPQ9000)で、50%HF(表3)では原子吸光測定装置((株)日立製作所製のZ−8000)で測定する。
(5)次式によりO−リングからの抽出金属を算出する。
【0136】
【数1】

【0137】
実施例13
実施例12と同様に重合し、凝析、乾燥して得たクリーン化されたフッ素系エラストマーを用い、実施例12の白系(表1のC)の組成割合で混練し架橋性エラストマー組成物を調製した。このエラストマー組成物を160℃で10分間プレス架橋してO−リング(AS−568A−214)を作製した。このO−リングの有機ガス発生量およびパーティクル数を前記の方法で調べた。
【0138】
さらにこのO−リングを実施例12と同様の方法で洗浄したのち、有機ガス発生量およびパーティクル数を調べた。結果を表4に示す。
【0139】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まない洗浄温度で液状の有機化合物または無機化合物によりフッ素ゴム系シール材を1回または2回以上洗浄する半導体製造装置用のフッ素ゴム系シール材の洗浄方法であって、該洗浄温度で液状の有機化合物がケトン、アルコール、炭化水素化合物、塩素系炭化水素化合物、フッ素系炭化水素化合物、エーテル、エステル、またはこれらの組合せであり、該洗浄温度で液状の無機化合物がH2SO4、HNO3、H22、HF、オゾン溶解水、NH4OH、HCl、またはこれらの組合せである洗浄方法。
【請求項2】
洗浄をH2SO4とH22の混合液、オゾン溶解水、アセトン、メチルエチルケトン、およびイソプロピルアルコールから選ばれる酸化力を有する化合物で行なう請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄をHF、HCl、H2SO4、HNO3、およびH2SO4とH22の混合液から選ばれる金属の溶解力の高い無機化合物で行なう請求項1記載の洗浄方法。
【請求項4】
請求項2記載の洗浄方法および請求項3記載の洗浄方法を順不同で行なったのち(ただし、H2SO4とH22の混合液を使用する場合はいずれかの洗浄方法でのみ使用する)、金属含有量が1.0ppm以下であり粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水により洗浄し、ついで清浄な不活性ガスまたは空気雰囲気下で水分の除去を行なう半導体製造装置用のフッ素ゴム系シール材の洗浄方法。
【請求項5】
水分除去に用いる清浄な不活性ガスが、粒径が0.2μm以上の微粒子を26個/リットルを超えて含まずかつ有機成分含量(TOC)が0.1ppm以下のものである請求項4記載の洗浄方法。
【請求項6】
金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まないH2SO4とH22との混合水溶液で洗浄したのち、金属含有量が1.0ppm以下でありかつ粒径が0.5μm以上の微粒子を200個/mlを超えて含まないHF水溶液で洗浄し、金属含有量が1.0ppm以下であり粒径が0.2μm以上の微粒子を300個/mlを超えて含まない超純水により洗浄し、ついで粒径が0.2μm以上の微粒子を26個/リットルを超えて含まずかつ有機成分含量(TOC)が0.1ppm以下の不活性ガスまたは空気雰囲気下で水分の除去を行なう請求項1記載の洗浄方法。

【公開番号】特開2007−208250(P2007−208250A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48(P2007−48)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【分割の表示】特願2000−540951(P2000−540951)の分割
【原出願日】平成11年3月24日(1999.3.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】