説明

半導体製造装置用部品の洗浄方法及び洗浄液組成物

【課題】半導体製造装置を構成する部品の基材である石英、セラミックス、サファイア基材にダメージを与えることなく、堆積した付着物を除去する。
【解決手段】フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム及びフッ化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物及びクエン酸を含んでなる洗浄用組成物を用いて、構成部品の基材にダメージを与えることなく半導体製造装置用部品を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部品を洗浄するための洗浄液組成物及びそれを用いた洗浄方法に関するものであり、特に半導体製造装置に用いられる部品、具体的には窓材、シールドリング等の石英基材、セラミックドーム、フォーカスリング、キャプチャーリング等のセラミックス基材、窓材等のサファイア基材の表面に付着した汚染物質を除去する方法およびそれに用いる洗浄液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造では酸化・拡散工程、気相成長工程、エッチング・アッシング工程、CVD(Chemical Vapor Deposition)工程等、通常数多くの工程を経て製造が行われる。各工程には多数の半導体製造装置が必要であり、それらの半導体製造装置には、セラミックス、石英、サファイア等を基材とする各種の部品が用いられる。例えばセラミックドーム、フォーカスリング、キャプチャーリング、ガスノズル等はセラミックスからなり、シールドリング、サセプター等は石英、窓材等は石英またはサファイアからなる。
【0003】
半導体素子の製造過程の各工程では、各工程において用いられる各物質が、それぞれの装置において装置内部の部品に付着する。不純物物質の例としては、酸化・拡散工程では燐、ホウ素、砒素、タンタル、ルテニウム、亜鉛等が挙げられ、エッチング・アッシング工程では、ナトリウム、アルミニウム、銅、ポリマー等の付着が見られる。
【0004】
これら付着物を放置すると付着物層が成長堆積し、例えば石英基材からなる部品の場合、付着物層と石英との熱膨張率や比熱等の物性の違いから、異物の膜やこれに接する石英の表面にクラックを生じて強度が低下したり、剥離した場合パーティクルとなり被処理物を汚染し、半導体素子の製造歩留りを低下させることになる。特にCVD法で被膜を形成する場合、付着物層の剥離は増える傾向にある。
【0005】
同様にセラミックス基材やサファイア基材からなる部品においても、半導体素子の製造過程でアルミニウム、フッ素、塩素、珪素、炭素、酸素等を成分とするスケールが付着し、このスケールがシリコンウエーハ等の被処理物に付着し汚染の原因となる。
【0006】
そこで上記製造工程で使用された半導体製造装置は一定時間使用した後、もしくは製造歩留りの低下が見られた場合に、汚染された部品を交換する必要があるが、製造コストの低減を図ること、及び資源の有効利用、リサイクル型産業の構築の観点から汚染された部品を洗浄、再生処理し、再利用することが望ましい。
【0007】
従来、石英基材からなる部品を再生処理する方法の一つとして、付着物の種類に応じて、例えばフッ化水素酸単独、フッ化水素酸と硫酸、硝酸等の強酸との混合液や、有機系の場合はアンモニアと過酸化水素の混合液等を用いて除去する方法(例えば、特許文献1参照)が行われている。しかし、フッ化水素酸を用いる洗浄方法の場合、フッ化水素酸自体が石英基材表面を腐食するため、表面の粗れ、寸法の変化など問題点が多い。
【0008】
また、セラミック基材からなる部品の洗浄方法としては、アルカリ性の薬液を主体とした処理を行い、この後に高温処理を行って表面の反応性生成物など付着物の除去を行う方法、表面が炭化珪素材料もしくは窒化珪素材料で構成された基材を酸素雰囲気下で熱処理し、基材表面に酸化珪素膜を形成した後、酸化珪素膜を酸によって溶解除去する洗浄方法や、付着した金属を部品から除去する方法として、カルボン酸を含む有機酸或いは解離定数5以下の弱酸を洗浄液として用いる洗浄方法(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
【0009】
一方、フッ化物とクエン酸とを含有する組成物は、半導体基板上のCuOを溶解除去するための洗浄液(例えば、特許文献3参照)、IC基板上の不純物を除去するための洗浄液(例えば、特許文献4参照)、pH6〜12である半導体基板の洗浄液(例えば、特許文献5参照)、ZrおよびHf並びにそれら合金の表面酸化被膜除去剤(例えば、特許文献6参照)、ガラスのエッチング液(例えば、特許文献7、特許文献8参照)等の用途に用いられることが知られている。
【0010】
【特許文献1】特開2004−137109号公報
【特許文献2】特開2003−136027号公報
【特許文献3】米国特許第6927198号明細書
【特許文献4】米国特許第6399552号明細書
【特許文献5】米国公開特許第2004/142835号明細書
【特許文献6】特開昭53−28579号公報
【特許文献7】特開平7−286172号公報
【特許文献8】特開2002−68778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように石英基材からなる部品を洗浄する場合、付着物の除去には一般的に、フッ化水素酸を含む強酸溶液が洗浄液として用いられているが、フッ化水素酸が石英自体を腐食するため、石英基材の表面も同時に腐食されて表面が粗れ、表面積等の表面状態の変化が起こる。このような部品を再利用した場合、部品への付着する物質の量が変動し、例えば気相反応ガスの消費量の変動を引き起こし、被膜の成長量の制御が困難となるなどの問題がある。
【0012】
また、フッ化水素酸が毒劇物であり大量に使用する場合、その取扱いに細心の注意を要し、安全性や作業性に欠けるとともに、洗浄処理装置類に耐酸性等の特別の配慮を必要とするため、洗浄装置類の原価が高くなってしまい洗浄コストが上がるという問題点を有していた。
【0013】
一方、セラミックス基材からなる部品の洗浄では、アルカリ性の薬液を用いた場合、例えばシリコンウエーハにおけるプロセス等で、洗浄工程で生成した金属水酸化物に由来する金属イオンが金属原子として半導体製造装置内に残留すると、シリコンウエーハを汚染するといった問題を引き起こす恐れがある。
【0014】
また、アルカリ性の薬液と酸性の薬液を併用すると、塩が発生し基材表面へ残留するといった問題も懸念される。一方、強酸を含む薬液を用いた場合、セラミックスの粒界腐食が発生し、パーティクル発生量が増大するといった問題を引き起こす恐れがあり、加熱処理を伴う洗浄、再生方法では、加熱温度が例えば1000℃以上のような高温でないと充分な洗浄効果が得られない場合が多く、ガスあるいは電力の消費量が増え、処理コストが高くなるという問題点を有していた。 さらに、その他の洗浄方法においても操作が煩雑で工程数も多く処理コストが増大するといった問題点があった。
【0015】
さらには従来法では、上述のように石英基材からなる部品とセラミックス基材からなる部品ではそれぞれ処理方法および処理薬液が異なるため、それぞれの洗浄に専用の装置が必要となり、複数の処理槽及び排気装置の設置、廃液設備の複雑化などを生じ、コストの増大を招いていた。
【0016】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、同一成分、同一組成からなる洗浄液組成物により、石英、セラミック、サファイア等の半導体製造装置用部品の基材表面にダメージを与えず、堆積した付着物を選択的に除去する洗浄方法及びそれに用いる洗浄液組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、半導体製造装置用部品の基材表面に堆積した付着物除去について鋭意検討した結果、フッ化物及びクエン酸を含んでなる組成物が、石英、セラミック、サファイア等の半導体製造装置の基材表面にダメージを与えることなく、堆積した付着物を選択的に除去できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明の洗浄方法及び洗浄液組成物は、半導体素子の製造工程で半導体製造装置の部品に付着した、無機物、有機物又はその双方からなる付着物もしくは付着物の洗浄に用いることができ、当該部品としては、例えば、セラミックドーム、フォーカスリング、キャプチャーリング、ガスノズル等のセラミックスを基材とする部品、シールドリング、サセプター、窓材等の石英を基材とする部品または窓材等のサファイアを基材とするサファイア部品等を例示することができる。なお、セラミックス基材としては、アルミナ、イットリア、ジルコニア等を例示することができる。
【0020】
半導体素子の製造過程の各工程では、各工程において用いられる各物質が、それぞれの装置において上述した部品の基材表面に付着する。石英部品に付着する不純物物質の例としては、酸化・拡散工程では燐、ホウ素、砒素、タンタル、ルテニウム、亜鉛等をあげることができ、エッチング・アッシング工程では、ナトリウム、アルミニウム、銅、ポリマー等をあげることができる。
【0021】
同様にセラミックス部品やサファイア部品に付着する不純物物質の例としては、半導体素子の製造過程でアルミニウム、フッ素、塩素、珪素、炭素、酸素等をあげることができる。
【0022】
上述したような付着物を取り除くために、本発明の洗浄方法に用いられる洗浄液組成物は、特定のフッ化物及びクエン酸を含んでなるものである。
【0023】
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄液組成物において、特定のフッ化物とはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である。それ以外のフッ化物を使用しても差し支えないが、水への溶解度が低かったり、高価であったりするため、工業的には有利ではない。フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アンモニウムの中では、金属の混入がないフッ化アンモニウムが好ましい。フッ化アンモニウムとしては、電子材料用に市販されている高純度のものを使用することができるが、工業的に流通しているものを使用しても良い。フッ化物は付着物に含まれるSi成分を除去するのに有効であるが、その他、レジストポリマー除去等を容易にする。
【0024】
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄液組成物において、クエン酸を使用することができる。クエン酸を添加することで付着物除去を促進する作用がある。クエン酸としては電子材料用に市販されている高純度のものを使用することができるが、工業的に流通しているものを使用しても良い。
【0025】
本発明の洗浄方法に用いられる洗浄液組成物において、フッ化物及びクエン酸の比率(組成比)は特に制限はないが、基材表面へダメージ及びコスト面を考慮し、洗浄用組成物全量に対し、フッ化物を0.01〜5重量%、クエン酸を0.1〜20重量%含有することが好ましく、フッ化物が0.1〜1.0重量%、クエン酸は1〜10重量%含有することがさらに好ましい。また、残部としては水とするのがよい。
【0026】
フッ化物含有量が0.01重量%未満では付着物の除去速度が工業的でないほど遅く、フッ化物が5重量%を超えると石英、セラミックス等の基材に対するダメージが大きくなるため好ましくない。また、クエン酸含有量が0.1重量%未満であると付着物の除去速度が工業的でないほど遅く、20重量%を超えて使用しても、入れただけの効果は得られない。
【0027】
本発明の洗浄方法におけるリンス処理は行わなくても良いが、洗浄後の基材表面に付着したパーティクルを除去するために行った方が好ましい。リンス処理に用いる薬液としては、特に限定するものではないが、例えば、水、アンモニア水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の溶剤、無機酸の希薄水溶液、アルカリ金属塩の希薄水溶液等を用いることが出来るが、設備の簡素化、コスト低減の観点から、本洗浄に用いた洗浄液組成物を水により希釈した溶液を薬液として用いるのが好ましい。洗浄液組成物の希釈率としては、20〜200倍が好ましく、特に90〜110倍が好ましい。
【0028】
本発明の洗浄方法における洗浄液組成物の使用にあたっては、被洗浄物である半導体製造装置用部品に接触させることで洗浄することができるが、被洗浄物と洗浄液組成物とを接触させる方法自体は特に制限はなく、公知のいずれの方法も使用できる。例えば、洗浄液組成物を含浸したスポンジなどによる拭き取り、洗浄液組成物への浸漬及び/又はスプレーなどにより実施することができるが、特に作業性の向上、設備の簡素化の面から浸漬による洗浄が好ましい。
【0029】
浸漬の方法としては、被洗浄物を1構成単位ごと、又は複数の構成単位をまとめて洗浄液組成物中に浸漬し、洗浄処理する方法が挙げられ、洗浄効果を高めるために、同時に攪拌、揺動、超音波またはエアバブリングなどを組み合わせることができる。なお、これら洗浄方法に使用する洗浄装置としては、通常公知のものを用いることができる。また、洗浄対象物を洗浄した後の乾燥方法にも特に制限はなく、温風乾燥や減圧乾燥など公知のいずれの方法も使用できる。
【0030】
なお、前記洗浄方法や条件は、洗浄する基材の種類に応じて、適宜選択することができる。又、リンス処理においても本発明の洗浄方法の場合と同様に、リンス処理に用いる薬液を被洗浄物に接触させることで行うことができるが、被洗浄物とリンス処理に用いる薬液とを接触させる方法自体は特に制限はなく、本発明の洗浄の場合と同様、公知のいずれの方法も使用できる。
【0031】
本発明の洗浄方法における洗浄温度は、特に制限は無いが、被洗浄物へのダメージ低減、良好な洗浄性、及びユーティリティコスト低減のいずれの条件をも満たすことが必要なことから、10〜50℃が好ましく、特に20〜30℃が好ましい。また、本発明の洗浄方法における洗浄時間は、被洗浄物への付着物の量、組成により適宜選択すればよいが、基材へのダメージ低減、作業効率向上の観点から、8時間を越えないことが好ましく、10分〜5時間が特に好ましい。
【0032】
本発明の洗浄方法に用いる洗浄液組成物に用いられる水は、被洗浄物が半導体素子の製造工程で使用されることを考慮して、イオン交換水、純水や超純水等のイオン性物質やパーティクル等を極力低減させたものが好ましい。
【0033】
本発明の洗浄方法に用いる洗浄液組成物は、被洗浄物である部品が半導体素子を製造する装置内で使用されるため、装置内に洗浄剤由来の不純物が残留することはできる限り避けなければならず、フッ化物およびクエン酸のみからなる水溶液で充分である。
【0034】
しかしながら、簡便な手法、例えば水洗浄により部品の基材表面上からきれいに洗い流すことができる成分であれば、pH調整剤、他の洗浄液、各種の添加剤等を配合することができる。
【0035】
pH調整剤としては塩基物を例示することができ、具体的にはアンモニア水や水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化テトラメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。これらのうち、金属の混入がなく安価で入手しやすいアンモニア水が好ましい。アンモニア水は電子材料用に市販されている高純度のアンモニア水を使用することができるが、工業的に流通しているアンモニア水を使用しても良い。pH調整剤としての使用量はクエン酸濃度に依存するため、一概に決められないが、一般的には洗浄液組成物の10重量%以下が好ましい。
【0036】
他の洗浄液成分としては、炭化水素、各種のアルコール、ケトン、エステル、ポリエーテル、ハイドロフルオロカーボン、シクロヘキサノンなどであり、添加剤としては、腐食防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0037】
腐食防止剤の例としては、特に限定するものではないが、リン酸系、カルボン酸系、アミン系、オキシム系、芳香族ヒドロキシ化合物、トリアゾール化合物、糖アルコール及びこれらの塩等が挙げられ、単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の例としては、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性およびフッ素系界面活性剤等が挙げられ、単独でも2種類以上適宜組み合わせても用いることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、半導体素子の製造工程で使用され汚染された、半導体製造装置用部品の洗浄方法が提供された。汚染原因である製造工程で生じた付着物は、半導体素子構成由来の金属・ケイ素等、レジスト剤に由来する炭素等、エッチングガスに由来するフッ素等の結合様式も不明な混合物であり、かつ、エッチングガスに由来するフッ素等は部品表面とも化学的に結合している場合がある。本発明では、フッ化物およびクエン酸からなる洗浄液組成物を用いることで、石英、セラミックス、サファイア基材などからなる半導体製造装置用部品にダメージを与えることなく上記した付着物を除去することができる。
【0039】
本発明の洗浄方法によれば同一成分、同一組成からなる洗浄液組成物で、石英、セラミックス、サファイア基材などからなる半導体製造装置用部品の洗浄処理を行うことができる。よって、通常、洗浄液の成分により仕様の異なる洗浄装置を設置する必要があるが、本発明によれば、同一の洗浄設備によって洗浄が可能であるため、洗浄装置の設置スペースや洗浄液の保管スペースを大幅に低減することができる。
【0040】
さらに、本発明の洗浄方法では、浸漬するだけで洗浄が行えるため超音波洗浄漕等の設置が必要なく、さらに、洗浄温度が20〜30℃と室温と同程度の温度であるため、設備投資及び、ユーティリティコスト低減が図れる。
【0041】
また、本発明の洗浄液組成物では、低下価格で入手可能なクエン酸とフッ化アンモニウム等のフッ化物及び水から構成されているにもかかわらず、十分な洗浄能力を有するため、コスト性に優れるということに加え、人体に非常に有害なフッ化水素酸や、取り扱いに注意を要する過酸化水素水、硝酸、硫酸などの強酸類を使用しないため、安全性や作業性に優れた半導体製造装置用部品の洗浄方法である。加えて、リンス処理に用いる薬液もこの洗浄液組成物を希釈したものを用いることが出来るためコスト性に優れる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の洗浄方法を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表記を簡潔にするため、クエン酸を「CA」と表記した。
【0043】
実施例1〜3、比較例1〜2
半導体素子の製造工程であるエッチング工程で使用する半導体製造装置から取り外した、表面が付着物に由来する元素としてAlで汚染された石英からなる部品を長さ30mm、幅14mm、厚さ12mmに裁断し、試験片とした。この試験片を表1に示す液組成に調製した各洗浄液組成物に浸漬し、25℃で1時間保持した後、試験片を取り出し、これを水洗いし、乾燥した。表面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察及び、EPMA(X線マイクロアナライザー)による定量分析にて付着物の除去状態を調べた。
【0044】
なお、SEMは日本電子社製、商品名「JSM T220A」、EPMAは堀場製作所社製、商品名「EMAX5770W」を用いた。尚、洗浄前のEPMAによる定量分析でのAlの含有量は0.3重量%であり、付着物の除去状態は以下の様に評価した。
○ : SEM観察により付着物の存在が確認できず、さらにEPMAによりAlが0.01重量%未満検出された、もしくは検出されなかった。
× : SEM観察により付着物の残存が確認され、さらにEPMAによりAlが0.01重量%以上、0.3重量%未満検出された。
【0045】
また、基材表面のダメージについてはSEM観察で以下の様に評価した。
○ : 未使用品と比較し変化なし。
× : 粗れ、欠損、粒界腐食等が発生。
【0046】
【表1】

実施例4〜6、比較例3〜5
半導体素子の製造工程であるエッチング工程で使用する半導体製造装置から取り外した、表面が付着物に由来する元素としてAl、Si及びFで汚染されたアルミナセラミックスからなる部品を長さ18mm、幅16mm、厚さ10mmに裁断し、試験片とした。この試験片を表2に示す液組成に調製した各洗浄液組成物に浸漬し、25℃で1時間保持した後、試験片を取り出し、これを水洗いし、乾燥した。表面のSEM観察及び、EPMAによる定量分析にて付着物の除去状態を調べた。
【0047】
尚、洗浄前のEPMAによる定量分析でのFの含有量は43.6重量%であった。また付着物の除去状態は以下の様に評価した。
○ : SEM観察により付着物の存在が確認できず、さらにEPMAによりFが1.5重量%未満検出された、もしくは検出されなかった。
× : SEM観察により付着物の残存が確認され、さらにEPMAによりFが1.5重量%以上、43.6重量%未満検出された。
【0048】
また、基材表面のダメージについてはSEM観察で以下の様に評価した。
○ : 未使用品と比較し変化なし。
× : 粗れ、欠損、粒界腐食等が発生。
【0049】
【表2】

実施例7
半導体素子の製造工程であるエッチング工程で使用する半導体製造装置から取り外した、表面が付着物に由来する元素としてAl及びFで汚染されたサファイア基材からなる部品を長さ20mm、幅15mm、厚さ12mmに裁断し、試験片とした。この試験片をクエン酸が5重量%、NHFが0.3重量%(残部:水)含まれる洗浄液組成物に浸漬した。25℃で1時間保持した後、試験片を取り出し、これを水洗いし、乾燥した。表面を目視で観察した結果、付着物が完全に除去された。また、表面のSEM観察においても付着物の存在が確認できず、、EPMAによる分析では、洗浄前の含有量が4.6重量%であったFの含有量が、洗浄後では0.2重量%へと低減された。
【0050】
実施例8
半導体素子の製造工程であるエッチング工程で使用する半導体製造装置から取り外した、表面が付着物に由来する元素としてAl、Si及びFで汚染されたアルミナセラミックスからなる部品を長さ18mm、幅16mm、厚さ10mmに裁断し、試験片とした。この試験片をクエン酸が5重量%、NHFが0.3重量%(残部:水)含まれる洗浄液組成物に浸漬した。25℃で1時間保持した後、試験片を取り出し、これを水洗いし、乾燥した。得られた試験片のパーティクル発生量の測定を行ったところ、7603counts/cm(サイズ>2μm)であった。
【0051】
尚、パーティクル発生量の測定は試験片を純水に浸漬し5分間超音波を印加した後の、純水中のパーティクル量を測定することで評価した。パーティクル量の測定にはパーティクルカウンタ:商品名「KL−22」、シリンジサンプラー:KZ−30W(いずれもリオン株式会社製)を用いた。
【0052】
実施例9
半導体素子の製造工程であるエッチング工程で使用する半導体製造装置から取り外した、表面が付着物に由来する元素としてAl、Si及びFで汚染されたアルミナセラミックスからなる部品を長さ18mm、幅16mm、厚さ10mmに裁断し、試験片とした。この試験片をクエン酸が5重量%、NHFが0.3重量%(残部:水)含まれる洗浄液組成物に浸漬した。25℃で5時間保持した後、取り出した試験片を、別途調製した、前記洗浄液組成物を水で100倍に希釈したリンス用薬液に素早く浸漬し、25℃で1時間保持した。試験片を取り出し、これを水洗いし、乾燥した後、パーティクル発生量の測定を行った結果、2646counts/cm(サイズ>2μm)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に用いられる部品を、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム及びフッ化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物及びクエン酸を含んでなる洗浄液組成物により洗浄することを特徴とする半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項2】
フッ化物がフッ化アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄液組成物の組成比が、フッ化物を0.01〜5重量%、クエン酸を0.1〜20重量%含有し残部が水からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項4】
半導体製造装置に用いられる部品の基材が石英からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項5】
半導体製造装置に用いられる部品の基材がセラミックスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項6】
半導体製造装置に用いられる部品の基材がサファイアからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項7】
半導体製造装置に用いられる部品が、窓材、シールドリング、サセプター、セラミックドーム、フォーカスリング、キャプチャーリングまたはガスノズルである、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項8】
組成比として、フッ化アンモニウムが0.01〜5重量%、クエン酸が0.1〜20重量%で残部が水からなることを特徴とする洗浄液組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7に記載の洗浄工程を第1工程とし、次いで第1工程で洗浄した基材を前工程で使用した洗浄液組成物の希釈液でリンス洗浄する第2工程を具備することを特徴とする半導体製造装置用部品の洗浄方法。
【請求項10】
希釈液が、第1工程で用いた洗浄液組成物を20〜200倍に希釈したものであることを特徴とする請求項9に記載の半導体製造装置用部品の洗浄方法。

【公開番号】特開2008−153272(P2008−153272A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336917(P2006−336917)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】