説明

半田による電子部品のリペア工法

【課題】回路基板に実装された欠陥等のある電子部品を入れ替える際、代替えの電子部品への交換作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】回路基板1に接続された電子部品2を交換する際、電子部品2のリード6と回路基板1のランド5を接続している固定半田を、半田槽7に浸漬して溶融し、ランド5から電子部品2のリード6を取り外す。取り外しに伴いスルーホール4内に残渣した半田を、リード6とランド5とを接続していた固定半田よりも低融点の半田に入れ替えた後、この低融点の半田を溶融してスルーホール4内から吸い出し除去し、入れ替え用の電子部品のリードをランド5に半田接続することで回路基板1に電子部品を実装する。これにより、半田の吸い取り作業を行う際、低融点の半田を吸い取ればよいので、その吸い取り作業を容易且つ安全に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥等のある電子部品を回路基板から取り外した際、代替えの電子部品を容易に搭載することが可能な半田による電子部品のリペア工法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機や電子機器等には、通常、電子部品の実装された回路基板が備えられている。こうした回路基板には、回路を構成する各種電子部品が半田により接続されているが、回路基板に対する電子部品の半田接続に欠陥があった場合や、回路基板に実装した電子部品が故障している場合には、回路基板に実装されている電子部品を交換するためにリペア作業が必要となる。
【0003】
ところで、従来から用いられている半田は、鉛を含有するものがほとんどであり、例えば、鉛を含みSnとPbが主成分であるSn−Pb系の合金たる半田は、その性質として、融点が比較的低く加工性に優れ、さらには、ぬれ性、耐熱疲労性もよく、コストも安価であることから、古くから多用されてきた。しかし、近年においては、Sn−Pb系などの鉛の添着された回路基板が土壌に廃棄されることが原因となり、酸性雨などによって回路基板から鉛が土壌へと溶け出し、河川などに流れだすことで環境汚染が広がり、ひいては、飲料水にも混入するなどして人体に害を及ぼす虞があり好適ではない。また、地球環境の保護への関心も高まってきており、諸外国(EUのおけるRoHS規制)や日本国内においても、半田に鉛を用いない鉛フリー化の法律規制が整備されてきている。
【0004】
図5の(a)〜(h)は、近年採用されている欠陥のあった電子部品を交換する際のリペア工程を示す説明図であり、同図に基づき説明すると、100は回路基板、101は回路基板に形成したスルーホール、102はスルーホールの周囲に設けた銅箔のランド、103はSn−Ag−Cu系の鉛フリー半田(無鉛半田)により半田接続された電子部品のリード(足)、104はSn−Ag−Cu系の溶融半田が投入されている半田槽、105は溶融された半田を取り除くための半田吸取り機であり、電子部品のリード(足)103は、スルーホール101に挿通され、Sn−Ag−Cu系の鉛フリー半田によりランド102に接続されている。そして、前述した欠陥等に伴い電子部品を交換する際においては、溶融したSn−Ag−Cu系の溶融半田が入れてある半田槽104にリード103の下端側を浸漬し(a)、その浸漬を維持することにより半田槽104の熱がスルーホール101内の固定半田に伝達されると、リード103を固定している固定半田は溶融されていき(b)、固定半田の溶融が完了した時に回路基板100から電子部品を取り外すために上方に持ち上げると(c)、スルーホール内のリード103を取り外した部位にも溶融半田が満たされ(d)、半田槽104から回路基板100を分離すると、スルーホール内に介在する溶融半田が冷却され凝固した際は(e)、凝固化した半田を加熱溶融した状態で半田吸取り機105にてスルーホール101内の溶融半田を吸引し(f)、このスルーホール101内における溶融半田を全て除去する(g)。こうした近年のリペア工程においては、半田としてSn−Ag−Cu系の半田を用いており、従来多く用いられていたSn−Pb系の半田の融点が183℃であるのに対し、Sn−Ag−Cu系の半田は、217〜219℃と高融点であることから、高温の熱がスルーホール101の周面に有するランド102に伝達すると、ランドが剥離する等、の回路基板100及びそのランド102に品質劣化が生じてしまう(g)。また、こうした品質の劣化した回路基板102などに対し、入れ替え用の電子部品のリードを半田付けするとなると、熱衝撃がランド102等に加わることになり、益々品質が悪いものとなってしまう(h)。
【0005】
上述したリペア工程の技術に関連するものとして、特許文献1には、プリント基板に実装した電子部品や、プリント基板と電子部品との半田接続部に欠陥等がある場合において、欠陥を有する電子部品を新たな電子部品に交換するに際し、半田接続部をランドから容易に剥離できるようにする技術が提案されており、また、特許文献2には、半導体装置を基板から分離する際、その半田接続部に半田残渣が生じないようにするため、半導体装置と基板とを接続している半田接続部にホットエアーを噴射することで、溶融された半田を取り除く半導体装置のリペア方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−179556号公報
【特許文献2】特開2002−353610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したリペア作業を行う際には、回路基板に半田付けされている不具体のある電子部品を取り外すため、半田接続部を加熱溶融して取り外すことになるが、電子部品を取り外した回路基板においては、電子部品を接続していた半田が回路基板に半田残渣として残ってしまうことから、故障した電子部品を新たに取り付けるに際し、半田残渣が邪魔となり電子部品を所定位置に取り付けることに困難をきたすことがあることから、回路基板のスルーホール内に残渣した半田をきれいに除去する作業が必要となる。
【0008】
また、従来のように半田としてSn−Pb系の有鉛半田を用いてリペア作業を行っていた場合には、半田の融点は低かったことから、回路基板に取り付けられた電子部品の取り外しや取り付けを行う際、半田接続部の近傍に配置されている電子部品や回路基板等への熱影響を、多少なりとも抑えることは可能ではあったが、図5に基づき説明したリペア工法のように、鉛フリー半田として汎用性のあるSn−Ag−Cu系の半田を用いてリペア工法を行う際には、Sn−Pb系の有鉛半田よりも融点が高いので、電子部品の取り外しから取り付けまでを行うリペア作業に困難をきたし、さらに融点が高いので回路基板への熱印加量や熱衝撃等の熱影響が大きく、回路基板に破損や熱劣化の虞があり、また、前述した特許文献2等のように、半導体装置などの電子部品と基板とを接続している半田接続部にエアーを噴射し溶融された半田を除去する場合には、除去する半田の融点と同程度若しくはそれよりも温度が高めなホットエアーを噴射しなければならないことから、ホットエアーからの熱印加量が大きく、このホットエアーの熱で回路基板や周辺の電子部品が破損する懸念もある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、回路基板に実装された欠陥等のある電子部品を取り外して入れ替える際、回路基板等への熱影響を可及的に防止することができると共に、代替えの電子部品への交換作業を容易に行うことができる半田による電子部品のリペア工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る半田による電子部品のリペア工法は、回路基板に形成したスルーホール内に電子部品のリードを挿通し、該挿通したリードを前記スルーホールに設けたランドに対し半田を介して接続して取付けた後、前記電子部品を交換するために前記ランドに半田接続した電子部品を、前記半田を溶融した状態で取り外し入れ替えを行うリペア工法であって、前記リードと該リードを前記ランドに接続している固定半田とを、該固定半田より低融点の溶融された半田槽に浸漬し、前記ランドに前記リードを半田接続した固定半田を加熱溶融する浸漬加熱溶融工程と、該浸漬加熱溶融工程で前記固定半田を溶融し前記ランドに接続した前記リードを取り外す取り外し工程と、該取り外し工程の後、再度前記半田槽に前記スルーホール内の半田を浸漬させ、前記リードと該リードを前記ランドに接続していた残渣半田を溶融する再浸漬加熱溶融工程と、該再浸漬加熱溶融工程を行うことで前記半田槽の溶融された半田を前記スルーホール内に供給し、該供給に伴い前記スルーホール内に有している半田を低融点化する工程と、該低融点化する工程で低融点化された半田を溶融し、該溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程と、該半田吸い取り工程で溶融半田の吸い出されたスルーホール内に入れ替え用の電子部品のリードを挿通し、該リードを前記ランドに半田接続する部品交換工程と、を備える。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、回路基板に半田を介して実装された電子部品を交換する際、リードとランドとを接続している固定半田を、これよりも低融点で溶融する半田槽に浸漬し溶融することによって電子部品のリードをランドから取り外し、リードとランドとを接続していた固定半田よりも低融点な半田槽に有する半田を、スルーホールに供給するので、スルーホール内に有する半田の融点を低融点化することができ、スルーホール内の半田を低融点で溶融した状態でスルーホール内から吸い出して除去することができることから、半田の吸い取り作業を容易且つ安全に行うことができる。さらに、半田を除去するための半田の吸い取り作業において、吸い取りを行なう半田が低融点なため、その半田が溶融するまでの加熱時間を短縮できその作業をも短時間で効率良く行うことができ、しかも、回路基板やこの回路基板に実装されている各種電子部品への熱の伝達を可及的に低く抑えることができるから、回路基板及び回路基板に実装された各種電子部品の高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができる。
【0012】
請求項2に係る半田による電子部品のリペア工法は、回路基板に形成したスルーホール内に電子部品のリードを挿通し、該挿通したリードを前記スルーホールに設けたランドに対しSn−Ag−Cu系半田を介して接続して取付けた後、前記電子部品を交換するために前記ランドに半田接続した電子部品を、前記Sn−Ag−Cu系半田を溶融した状態で取り外し入れ替えを行うリペア工法であって、前記リードと該リードを前記ランドに接続しているSn−Ag−Cu系固定半田とを、該Sn−Ag−Cu系固定半田より低融点のSn−Bi系半田が溶融している半田槽に浸漬し、前記ランドに前記リードを半田接続したSn−Ag−Cu系固定半田を加熱溶融する浸漬加熱溶融工程と、該浸漬加熱溶融工程で前記Sn−Ag−Cu系固定半田を溶融し前記ランドに接続した前記リードを取り外す取り外し工程と、該取り外し工程の後、再度前記半田槽に前記スルーホール内の半田を浸漬させ、前記リードと該リードを前記ランドに接続していた残渣半田を溶融する再浸漬加熱溶融工程と、該再浸漬加熱溶融工程を行うことで前記半田槽の溶融されたSn−Bi系半田を前記スルーホール内に供給し、該供給に伴い前記スルーホール内に有している半田を低融点化する工程と、該低融点化する工程で低融点化された前記Sn−Bi系半田を溶融し、該溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程と、該半田吸い取り工程で溶融半田の吸い出されたスルーホール内に入れ替え用の電子部品のリードを挿通し、該リードを前記ランドにSn−Ag−Cu系半田により半田接続する部品交換工程と、を備える。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、回路基板にSn−Ag−Cu系固定半田を介して実装された電子部品を交換する際、リードとランドとを接続しているSn−Ag−Cu系の固定半田を、これよりも低融点で溶融するSn−Bi系半田の半田槽に浸漬し溶融することによって電子部品のリードをランドから取り外し、リードとランドとを接続していたSn−Ag−Cu系固定半田よりも低融点な半田槽に有するSn−Bi系半田をスルーホールに供給するので、スルーホール内に有するSn−Ag−Cu系の半田の濃度は希釈化され、スルーホール内に有する半田の融点を低下させることができる。よって、スルーホール内の半田を低融点で溶融した状態でスルーホール内から吸い出して除去することができることから、半田の吸い取り作業を容易且つ安全に行うことができる。さらに、Sn−Bi系半田を除去するための半田の吸い取り作業において、吸い取りを行なう半田が低融点なため、その半田が溶融するまでの加熱時間を短縮できその作業をも短時間で効率良く行うことができ、しかも、回路基板やこの回路基板に実装されている各種電子部品への熱の伝達を可及的に低く抑えることができるから、回路基板及び回路基板に実装された各種電子部品の高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができる。また、Sn−Bi系半田を除去する際、スルーホール内から半田を吸い出しながら取り除くので、吸い取り作業中にSn−Bi系半田が飛散することなく除去することが可能であり、また、回路基板に電子部品を接続する際や電子部品をリペアする際に用いられる半田に、有鉛半田ではなくSn−Ag−Cu系半田やSn−Bi系半田の鉛フリー半田を用いているので、鉛をフリー化することができる。
【0014】
請求項3に係る半田による電子部品のリペア工法は、請求項1又は2において、前記取り外し工程と前記再浸漬加熱溶融工程との間において、前記取り外し工程で前記リードを取り外した際に前記スルーホール内に残存する残渣半田の少なくとも上部に前記半田槽で用いた半田と同じ材料の半田材を塗布する塗布工程を行う。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、取り外し工程の後に、塗布工程として半田槽で用いた半田と同じ材料のSn−Bi系等の半田材を残渣半田に塗布するので、スルーホール内の半田を、リードとランドとを接続していたSn−Ag−Cu系等の固定半田よりも低融点の半田に入れ替えるに際し、半田槽に有するSn−Bi系等の半田に加え、上部に塗布されている半田材もスルーホール内に供給されることから、Sn−Ag−Cu系等の半田からSn−Bi系等の半田への入れ替えを速やかに行うことができる。
【0016】
請求項4に係る半田による電子部品のリペア工法は、請求項1〜3の何れか1項において、前記溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程に代えて、前記溶融した半田をエアーブローにより吹き飛ばして除去するエアー噴出工程を備える。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、溶融した半田を吹き飛ばすためのエアーブロー工程において、吹き飛ばしを行う対象の半田がSn−Bi系半田で低融点なものであることから、それに対応してエアーブロー温度の低温化が可能なことから、エアーブローによる回路基板及びこの回路基板に実装されている各種電子部品への高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子部品を取り外した際、スルーホール内に残渣する半田を、この半田よりも低融点で除去し易い低融点の半田に入れ替えることで、半田の吸い取り作業性を向上することができる。また、半田が低融点なため回路基板及びこの回路基板に実装されている各種電子部品への高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができ、回路基板や各種電子部品を破棄する必要も無くなる。さらに、回路基板に電子部品を接続する際や電子部品をリペアする際に用いられる半田に、有鉛半田ではなくSn−Ag−Cu系半田やSn−Bi系半田の鉛フリー半田を用い、鉛のフリー化によって鉛が溶出し人体や自然環境へ悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態としての実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1における電子部品が実装された回路基板を示す斜視図である。回路基板1は、民生機器や産業機器などの装置に具備される合成樹脂製のものであり、回路基板1の上部には、図1に示すように複数の電子部品2が実装されており、これらは回路パターン3等を介して接続されている。
【0021】
図2は電子部品が回路基板に実装された状態を示す断面図である。水平に配置された回路基板1には、この回路基板1に対して垂直方向にスルーホール4が穿設されており、その周縁には、半田付け用の銅箔からなるランド5が設けられ、電子部品2の下部に一体に構成されたリード(足)6が、スルーホール4に挿通された状態で融点が217〜219℃程のSn−Ag−Cu系半田を用いてランド5に接続されている。なお、本実施例では、鉛フリー半田としてSn−Ag−Cu系半田を採用しているが、これに代えて、融点を227℃にすることが可能なSn−Cu系半田や、融点を221℃にすることが可能なSn−Ag系半田を用いてもよく、また、図2で符号2として示した電子部品はコネクタであるが、電子部品としては、コンデンサ、抵抗、トランス等の受動部品、IC、トランジスタ、LSI、ダイオード等の能動部品、スイッチ、コネクタ等の配線部品(補助部品)等であっても良いことは言うまでもない。
【0022】
次に、回路基板に実装された電子部品を入れ替える際のリペア工法を、図3等を参照しながら以下に説明する。先ず、電子部品2のリード(足)6が、スルーホール4に挿通され、Sn−Ag−Cu系固定半田によりランド5に接続されている状態(図2の状態)において、故障・欠陥等に伴い電子部品2を交換するに際し、浸漬加熱溶融工程として、217℃程度で溶融されたSn−Bi系の溶融半田(融点は139℃)が投入された半田槽7に電子部品2のリード6の下端側を浸漬する(a)。そして、その浸漬を維持することにより半田槽7の熱がSn−Ag−Cu系固定半田に伝達されていくと、リード6を固定しているSn−Ag−Cu系固定半田は下方から上方に向かって溶融されていき(b)、半田槽7のSn−Bi系の溶融半田は、スルーホール内でリード6を固定していたSn−Ag−Cu系の溶融半田と融合されていく。
【0023】
次に、融合された半田が半田槽7からの熱の伝達により全て溶融された状態において、取り外し工程として、回路基板1から電子部品2を取り外すために上昇させ分離していくと(c)、スルーホール4内のリード6を取り外した部位にも融合された半田が満たされる。
【0024】
次に、回路基板1からリード6を分離した状態において、塗布工程として、スルーホール4内で凝固化されたSn−Ag−Cu系半田とSn−Bi系半田からなる合金(残渣半田)の上下に、半田材たるSn−Bi系の半田ペースト8を塗布する(d)。
【0025】
次に、再浸漬加熱溶融工程として、スルーホール4内に有する融合された合金としての固定半田の下部を再度半田槽7に浸漬し217℃程度で加熱溶融し、次に、スルーホール4内を低融点化する工程として、半田槽7の熱をスルーホール4内の溶融半田(合金)及び半田ペースト8に伝達させると共に、半田ペースト8を139℃(139℃以上)ほどの低融点で溶融させ、スルーホール4内に対し溶融された半田ペースト8及び半田槽7に有する溶融半田を供給し、この供給に伴ってスルーホール4内のSn−Ag−Cu系半田の濃度を希釈させ、スルーホール4内をほぼ完全なSn−Bi系半田(合金)に入れ替えられ(e)、スルーホール4内に有する半田(合金)は低融点で溶融することが可能なものとなる(f)。
【0026】
続いて、半田吸い取り工程として、加熱溶融したスルーホール4内のSn−Bi系半田を融点温度以上まで加熱溶融し、半田吸取り機9にてスルーホール4内から加熱溶融したSn−Bi系の溶融半田を吸い出す(g)。なお、この半田吸い取り工程を行う際には、スルーホール4内は、ほぼSn−Bi系の合金で満たされており、本実施例のSn−Bi系の合金の融点は139℃と低温であることから、前記Sn−Bi系の合金たる半田を溶融するための加熱には時間を多く要さず、スルーホール4内における溶融されたSn−Bi系半田(合金)を簡単に除去することができ(h)、さらには、回路基板1及び回路基板1に実装している各種電子部品の熱的な品質劣化や故障を回避することができる。そして、スルーホール4内の半田をきれいに除去(全て除去若しくほぼ全て除去)した後には、部品交換工程として、Sn−Ag−Cu系等の鉛フリー半田を用いて回路基板1のランド5に電子部品2のリード6を取り付けることが可能であり、取り付け後においても回路基板1及び回路基板1に実装している各種電子部品の熱的な品質劣化を抑制することができる。(i)。
【0027】
以上のように本発明におけるリペア工法によれば、回路基板1に形成したスルーホール4内に電子部品2のリード6を挿通し、挿通したリード6をスルーホール4に設けたランド5に対しSn−Ag−Cu系半田を介して接続して取付けた後、電子部品2を交換するためにランド5に半田接続した電子部品2を、Sn−Ag−Cu系半田を溶融した状態で取り外し入れ替えを行うリペア工法であって、リード6とこのリード6をランド5に接続しているSn−Ag−Cu系固定半田とを、このSn−Ag−Cu系固定半田より低融点で溶融するSn−Bi系半田の半田槽7に浸漬し、ランド5にリード6を半田接続したSn−Ag−Cu系固定半田を加熱溶融する浸漬加熱溶融工程と、該浸漬加熱溶融工程でSn−Ag−Cu系固定半田を溶融しランド5に接続したリード6を取り外す取り外し工程と、取り外し工程でリード6を取り外した際にスルーホール4に残存するSn−Ag−Cu系半田とSn−Bi系半田が融合した残渣半田(合金)の上下に半田槽7で用いた半田と同じ合金組成のSn−Bi系の半田材たる半田ペースト8を塗布する塗布工程と、塗布工程の後、再度半田槽7にスルーホール4内の半田を浸漬させ、リード6とこのリード6をランド5に接続していた残渣半田等を溶融する再浸漬加熱溶融工程と、再浸漬加熱溶融工程を行うことで溶融されたSn−Bi系半田ペースト8及び半田槽7に有するSn−Bi系半田を鉛直方向に配置されたスルーホール4内に供給し、この供給に伴いスルーホール4内に有しているSn−Ag−Cu系半田の濃度を希釈させ、スルーホール4内の半田をSn−Bi系半田になるよう入れ替える低融点化する工程と、低融点化する工程等で低融点化されたスルーホール4内の半田(Sn−Bi系半田又は、Sn−Bi系半田にSn−Ag−Cu系半田が融合された半田)を溶融し、この溶融したSn−Bi系半田等をスルーホール4内から吸い出す半田吸い取り工程と、半田吸い取り工程でSn−Bi系の溶融半田が吸い出されたスルーホール4内に、入れ替え用の電子部品のリードを挿通し、このリードをランド5にSn−Ag−Cu系半田により半田接続する部品交換工程とを備え、これらの工程を行うことにより、回路基板1にSn−Ag−Cu系半田を介して実装された電子部品2を交換する際、リード6とランド5とを接続しているSn−Ag−Cu系の固定半田を、これよりも低融点で溶融するSn−Bi系半田の半田槽7に浸漬し溶融することによって電子部品2のリード6をランド5から取り外し、リード6とランド5とを接続していたSn−Ag−Cu系固定半田よりも低融点な半田槽に有するSn−Bi系半田をスルーホール4内に供給するものである。これにより、スルーホール4内に有していたSn−Ag−Cu系の半田の濃度を希釈化することができ、スルーホール4内に有する半田の融点を低下させることができるので、スルーホール4内の半田を低融点で溶融した状態でスルーホール4内から吸い出して除去できることから、取り除きを必要とする半田の吸い取り作業性を高温の状態で行わずに済み、半田の吸い取り作業を容易且つ安全に行うことができる。
【0028】
さらに、Sn−Bi系半田を除去するための半田の吸い取り作業において半田が低融点なため、半田が溶融するまでの加熱時間を短縮できその作業を短時間で効率良く行うことができ、回路基板1やこの回路基板1に実装されている各種電子部品への熱伝達を可及的に低く抑えることができるから、回路基板1及び回路基板1に実装された各種電子部品の高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができる。また、Sn−Bi系半田を除去する際、スルーホール4内から半田を吸い出しながら取り除くので、吸い取り作業中にSn−Bi系半田が飛散することなく除去することが可能である。
【0029】
さらに、回路基板1に電子部品2を接続する際や電子部品2をリペアする際に用いられる半田に、有鉛半田ではなくSn−Ag−Cu系半田やSn−Bi系半田等の鉛フリー半田を用いているから、鉛のフリー化により自然環境へ悪影響を及ぼすことを抑止することが可能となる。
【0030】
以上、本発明の一例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、本実施例においては、Sn−Ag−Cu系半田は、Snは96.5重量%,Agは3.0重量%,Cuは0.5重量%であり、また、Sn−Bi系半田及びSn−Bi系半田ペースト8は、Snは42重量%,Biは58重量%であるが、本発明の要旨の範囲でその重量%比を適宜選定してもよい。また、前記Sn−Ag−Cu系半田とほぼ同等の融点若しくはそれより低融点であれば、前記Sn−Bi系半田やSn−Bi系半田ペーストに代えて、融点を約120℃にすることが可能なSn−In系半田、或いは、融点を約60℃にすることが可能なSn−Bi−In系半田等を適宜選定してもよい。また、半田を除去するに際し、溶融半田を吸い取る半田吸取り機9の代わりに、エアーブローにより溶融半田を吹き飛ばすエアー噴出装置を採用してよい。なお、その際には、溶融半田をエアーブローにより吹き飛ばして除去するため、エアー噴出工程を行う際は、溶融した半田を吹き飛ばすためのエアーブロー工程において、吹き飛ばしを行う対象の半田がSn−Bi系半田で低融点なものであることから、それに対応してエアーブロー温度は低温化が可能になり、エアーブローによる回路基板及びこの回路基板に実装されている各種電子部品への高温化に伴う故障や品質劣化を抑えることができる。
【実施例2】
【0031】
図4は実施例2における回路基板に実装された電子部品を入れ替える際のリペア工法を示す説明図であり、実施例2の(b)〜(j)工程は、前述した実施例1の(a)〜(i)の工程と同じであるので、それらの説明は省略し、実施例2の(a)の工程のみを以下に説明する。実施例2のおける(a)においては、図4に示すように、電子部品2のリード(足)6が、スルーホール4に挿通され、Sn−Ag−Cu系の無鉛半田によりランド5に接続されている状態において、故障・欠陥等に伴い電子部品2を交換するに際し、浸漬加熱溶融工程の前に、Sn−Bi系の半田ペースト8を、スルーホール4内で凝固化されたSn−Ag−Cu系の半田の下部に塗布する。これにより、スルーホール4内のSn−Ag−Cu系の半田をより早く希釈化でき低融点化することが可能なため、スルーホール4内から電子部品2のリード6を取り外す時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1における電子部品が実装された回路基板を示す斜視図である。
【図2】同上、電子部品が回路基板に実装された状態を示す断面図である。
【図3】同上、回路基板に実装された電子部品を入れ替える際のリペア工法の工程順を示す説明図である。
【図4】実施例2における回路基板に実装された電子部品を入れ替える際のリペア工法の工程順を示す説明図である。
【図5】従来における回路基板に実装された電子部品を入れ替える際のリペア工法の工程順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 回路基板
2 電子部品
4 スルーホール
5 ランド
6 リード
7 半田槽
8 半田材(半田ペースト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に形成したスルーホール内に電子部品のリードを挿通し、該挿通したリードを前記スルーホールに設けたランドに対し半田を介して接続して取付けた後、
前記電子部品を交換するために前記ランドに半田接続した電子部品を、前記半田を溶融した状態で取り外し入れ替えを行うリペア工法であって、
前記リードと該リードを前記ランドに接続している固定半田とを、該固定半田より低融点の溶融された半田槽に浸漬し、前記ランドに前記リードを半田接続した固定半田を加熱溶融する浸漬加熱溶融工程と、
該浸漬加熱溶融工程で前記固定半田を溶融し前記ランドに接続した前記リードを取り外す取り外し工程と、
該取り外し工程の後、再度前記半田槽に前記スルーホール内の半田を浸漬させ、前記リードと該リードを前記ランドに接続していた残渣半田を溶融する再浸漬加熱溶融工程と、
該再浸漬加熱溶融工程を行うことで前記半田槽の溶融された半田を前記スルーホール内に供給し、該供給に伴い前記スルーホール内に有している半田を低融点化する工程と、
該低融点化する工程で低融点化された半田を溶融し、該溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程と、
該半田吸い取り工程で溶融半田の吸い出されたスルーホール内に入れ替え用の電子部品のリードを挿通し、該リードを前記ランドに半田接続する部品交換工程と、を備えたことを特徴とする半田による電子部品のリペア工法。
【請求項2】
回路基板に形成したスルーホール内に電子部品のリードを挿通し、該挿通したリードを前記スルーホールに設けたランドに対しSn−Ag−Cu系半田を介して接続して取付けた後、
前記電子部品を交換するために前記ランドに半田接続した電子部品を、前記Sn−Ag−Cu系半田を溶融した状態で取り外し入れ替えを行うリペア工法であって、
前記リードと該リードを前記ランドに接続しているSn−Ag−Cu系固定半田とを、該Sn−Ag−Cu系固定半田より低融点のSn−Bi系半田が溶融している半田槽に浸漬し、前記ランドに前記リードを半田接続したSn−Ag−Cu系固定半田を加熱溶融する浸漬加熱溶融工程と、
該浸漬加熱溶融工程で前記Sn−Ag−Cu系固定半田を溶融し前記ランドに接続した前記リードを取り外す取り外し工程と、
該取り外し工程の後、再度前記半田槽に前記スルーホール内の半田を浸漬させ、前記リードと該リードを前記ランドに接続していた残渣半田を溶融する再浸漬加熱溶融工程と、
該再浸漬加熱溶融工程を行うことで前記半田槽の溶融されたSn−Bi系半田を前記スルーホール内に供給し、該供給に伴い前記スルーホール内に有している半田を低融点化する工程と、
該低融点化する工程で低融点化された前記Sn−Bi系半田を溶融し、該溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程と、
該半田吸い取り工程で溶融半田の吸い出されたスルーホール内に入れ替え用の電子部品のリードを挿通し、該リードを前記ランドにSn−Ag−Cu系半田により半田接続する部品交換工程と、を備えたことを特徴とする半田による電子部品のリペア工法。
【請求項3】
前記取り外し工程と前記再浸漬加熱溶融工程との間において、前記取り外し工程で前記リードを取り外した際に前記スルーホール内に残存する残渣半田の少なくとも上部に前記半田槽で用いた半田と同じ材料の半田材を塗布する塗布工程を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の半田による電子部品のリペア工法。
【請求項4】
前記溶融した半田を前記スルーホール内から吸い出す半田吸い取り工程に代えて、前記溶融した半田をエアーブローにより吹き飛ばして除去するエアー噴出工程を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半田による電子部品のリペア工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−21249(P2010−21249A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178915(P2008−178915)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】