説明

半芳香族ポリアミド、及び、半芳香族ポリアミドの調製方法

【課題】 廃水排出量の少ない半芳香族ポリアミドの調製方法を提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、前回の予備重合中に発生した廃水をオートクレーブ内に加えて予備重合反応を行ない、さらにこのプレポリマーの増粘反応により半芳香族ポリアミドを調製する。この調製方法では、重合中に発生した廃水の再利用により、廃水の排出量が大いに削減される。且つ廃水中の原料の効果的回収利用により、原料の利用率が向上する。また、廃水中のジアミンは予備重合中に水の排出により流失したジアミンを補い、モノマージカルボン酸とジアミンのモル比バランスが確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂の技術分野に関連し、具体的には、廃水排出量の少ない半芳香族ポリアミドの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
PA6、PA66などの脂肪族ポリアミドは、機械的強度、耐熱性、耐化学薬品性、耐摩損性及び自己潤滑性に優れ、且つ摩擦係数が低く、電子・電気機器、自動車部品、家具、建材及び繊維などの分野に応用されており、最も重要な加工用プラスチックの一つとなっている。
【0003】
半芳香族ポリアミドは、芳香環を有するジアミン又はジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸又はジアミンとの重縮合により調製されたポリアミド樹脂であり、芳香族ポリアミドの一種である。ポリアミド分子主鎖中に芳香環が取り込まれているため、耐熱性及び力学的性能が上がり、吸水率が下がり、且つコストパフォーマンスが高く、汎用加工用プラスチックであるナイロンと耐高温加工用プラスチックであるPEEKとの間に位置する耐熱性が高い樹脂であり、主として自動車及び電気・電子業界で応用されている。ハイテクの急速な進歩につれ、その応用は新しい進展を見せ、市場需要も上昇傾向にある。現在、半芳香族ポリアミド製品としては、主にポリアミドMXD6、6T/66、6T/6I、6T/6I/66、6T/M−5T及び9Tが挙げられる。
【0004】
特許JP57200420(特許文献1)、JP58111829(特許文献2)、EP1074585A1(特許文献3)、CN1624021A(特許文献4)は、ポリアミドMXD6の調製方法を公開した。提起された方法で、回分式反応器中で芳香族ジアミンを溶融した脂肪族ジカルボン酸内に入れると同時に、システム温度を上昇させ、縮合生成した水を除去し、重合反応を行なう。CN1451677A(特許文献5)はポリアミドMXD6の固相増粘方法を説明した。特定条件でのポリアミドの保管では、最初のポリアミドの調製後から固相増粘までに20日間又はもっと長い時間をかけても、得られたポリアミドMXD6の黄色度は低い。
【0005】
ポリアミド6Tの融点がその分解温度より高いため、融点を下げるために第3モノマーを入れなければならない。ポリアミド6T共重合体は、主にp−フタル酸及びm−フタル酸又はアジピン酸からなるジカルボン酸成分と、主に1,6−ヘキサメチレンジアミンからなるジアミン成分との重縮合により得られる。ポリアミド6T共重合体のアミド濃度は比較的高く、重合物の耐化学薬品性、耐吸水性、溶融加工安定性を悪くする場合がある。大量の第3モノマーを入れて重合物の結晶化度を下げたとしても、重合物の耐熱性、耐化学薬品性、耐吸水性及び寸法安定性の低下になる場合もある。
【0006】
特許US5516882(特許文献6)、US5981692(特許文献7)及びUS962628(特許文献8)は、p−フタル酸、m−フタル酸、1,6−アジピン酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン及び2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミンを主原料として、300℃以上の高温での溶融重合によりポリアミド6T共重合体を合成する方法を説明した。また特許US6140459(特許文献9)は、p−フタル酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン及び他種の脂肪族長鎖ジカルボン酸を原料として、溶融重合によりポリアミド6T共重合体を合成することについて説明した。しかし、溶融重合を採用して半芳香族ポリアミドを調製するときは、後期重合反応温度が重合物の融点を超え、且つ高温で滞留時間が長すぎて、各種副反応及び重合物の分解反応が激しいため、重合物の色調劣化、機械的強度の低下及び成形性劣化の現象が生じやすい。
【0007】
特許US5663284(特許文献10)は、ポリアミド6T/66重合物の調製方法を公開した。先ず水が存在し、反応温度が重合物の融点より低いという条件で一次重合を行ない、排出時には、オートクレーブ内に水を補給することにより圧力を維持し、プレポリマーを排気式2軸スクリュー押し出し機で溶融増粘することにより高粘度重合物が得られる。ただし、溶融増粘要求を満たすことができるプレポリマーを得るためには、プレポリマーの固有粘度を上げるために、予備重合温度を重合物の融点に近づけた。
【0008】
既存の技術の中で、特許US6133406(特許文献11)は半芳香族ポリアミドの重合技術を提供した。先ず水が存在しているという条件で、比較的低い温度で固有粘度が低いプレポリマーを合成し、それから固相増粘反応により固有粘度が比較的高いプレポリマーを調製し、さらに2軸スクリュー溶融押し出し増粘により固有粘度が高い重合物が得られる。このステップは予備重合反応、固相増粘、溶融増粘の多段階反応を伴い、複雑な生産手順及び設備が要求される。
【0009】
特許US6156869(特許文献12)では、プレポリマーが得られた後、長時間の固相増粘によりポリアミド9T樹脂を得ることができる。この技術は、プレポリマーが比較的高い固有粘度を持つことを要求している。ポリアミド9Tは、比較的高い結晶化度、寸法安定性及び比較的低い吸水率を有する。
【0010】
既存の技術で、固有粘度が比較的高い半芳香族ポリアミドプレポリマーを得るためには、予備重合温度を上げるか又は予備重合反応系中の水を排出することにより実現することができる。予備重合温度を上げることにより、副反応が発生する場合があり、反応圧力が上がる場合もあり、設備に対する要求も相応に厳しくなる。反応系中の水を排出することにより、未反応のジアミンが揮発し、その結果、プレポリマーのモノマー単位比と反応器に入れた最初のモノマー比とが大きく異なり、モノマージカルボン酸とジアミンとのモル比バランスを確保することはできない。
【0011】
先ずモノマーを塩に調製し、それから塩から半芳香族ポリアミドを重縮合で合成することにより、ジアミンの流失を避けることができる。特許US5663284(特許文献10)は、PH値の測定により、化学反応の終点を判断し、塩を利用して半芳香族ポリアミドを調製する。しかし、既存の技術では、水又はアルコールを溶剤として半芳香族ポリアミド塩を調製する時には、芳香族ジカルボン酸及び半芳香族ポリアミド塩のこれら溶剤中における溶解度が非常に小さいため、半芳香族ポリアミド塩の精製は困難となり、純粋な半芳香族ポリアミド塩を得にくく、それによりジカルボン酸とジアミンのモル比を正確に管理することができず、最終産物である半芳香族ポリアミドの品質に影響を与える。またその他の有機溶剤で半芳香族ポリアミド塩を調製する時には、高純度の半芳香族ポリアミド塩が得られるが、溶剤回収のコストがアップするという課題がある。
【0012】
以上の全ての特許でも、半芳香族ポリアミド合成中に発生した廃水の処理方法は触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許57200420号公報
【特許文献2】特許58111829号公報
【特許文献3】欧州特許1074585A1号公報
【特許文献4】中国特許1624021A号公報
【特許文献5】中国特許1451677A号公報
【特許文献6】米国特許5516882号公報
【特許文献7】米国特許5981692号公報
【特許文献8】米国特許962628号公報
【特許文献9】米国特許6140459号公報
【特許文献10】米国特許5663284号公報
【特許文献11】米国特許6133406号公報
【特許文献12】米国特許6156869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、既存の技術に存在している課題に対して、廃水排出量の少ない半芳香族ポリアミドの調製方法を提供することにある。この調製方法は、重合中に発生した廃水を再利用することにより、廃水の排出量を大いに低減する。また廃水中の原料を効率よく回収利用することにより、原料の利用率が向上する。そして廃水中のジアミンは予備重合中に水の排出により流失したジアミンを補い、モノマージカルボン酸とジアミンとのモル比バランスを確保している。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、上述の調製方法により調製された半芳香族ポリアミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上述の目的は、次の解決手段により解決した。
【0017】
半芳香族ポリアミドの調製方法は、次の手順を含む。
手順(1):芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、及び水をオートクレーブ内に加えて予備重合反応を行なう。
手順(2):手順(1)により得られたプレポリマーの固相増粘反応又は溶融増粘反応により、半芳香族ポリアミドを得る。
【0018】
前記手順(1)中の炭素原子数4〜14の脂肪族ジアミンは、直鎖脂肪族ジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミンや脂環式ジアミンを含んでいる。
そのうち、直鎖脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−デカンジアミン、1,11−ジアミノウンデカン又は1,12−ドデシルジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミンは、2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン又は5−メチル−1,9−ジアミノノナン、脂環式ジアミンは、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン又は4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンを含んでいる。
【0019】
半芳香族ポリアミドは1種又は複数種類のこれら脂肪族ジアミンを含有することができ、好適な脂肪族ジアミンは1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−デカンジアミン、2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン又は5−メチル−1,9−ジアミノノナンである。特に好ましい脂肪族ジアミンは1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,9−ジアミノノナン又は1,10−デカンジアミンである。
【0020】
前記手順(1)中の芳香族ジカルボン酸は、p−フタル酸、m−フタル酸、2−メチルp−フタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸又は2,2’−ビフェニルジカルボン酸を含んでいる。半芳香族ポリアミドは1種又は複数種類のこれら芳香族ジカルボン酸を含有することができる。好適な芳香族ジカルボン酸はp−フタル酸、m−フタル酸又は4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。最も好適な芳香族ジカルボン酸はp−フタル酸である。
【0021】
前記手順(1)における水は、前回の予備重合中に発生した廃水でも良い。廃水中には0.1〜5重量%の4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミンが含有されている。
【0022】
前記手順(1)中の予備重合は、芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、水、末端封止剤、触媒をオートクレーブ内に入れて反応させ、予備重合の反応温度200〜280℃、反応系圧力1〜5MPa、反応時間1〜6時間とする。そのうち、反応温度220〜250℃、反応系圧力1.5〜3Mpa、反応時間2〜4時間が好ましい。反応後期には、システム内の水を排出することにより圧力の安定性を維持する。反応終了後、プレポリマーを乾燥し、反応後期にシステムから排出された廃水及び反応終了後のプレポリマー乾燥時に分離した廃水を収集し、次回の重合時に使用する。予備重合反応により、25℃の96%硫酸中で測定された固有粘度[η]0.06〜0.3dl/g、好適な0.08〜0.2dl/g範囲内のプレポリマーが得られる。
【0023】
そのうち触媒は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸又はその塩又はそのエステルを含み、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムが好ましい。触媒の量は原材料の0.01〜2重量%(原材料とは、芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、末端封止剤及び触媒の総重量)とし、0.05〜1重量%が好ましい。
【0024】
末端封止剤は、モノカルボン酸又はモノアミン又はその混合物を含む。そのうちモノカルボン酸が好ましい。モノアミンに比べ、モノカルボン酸は毒性が小さく、揮発しにくく、処理に便利なためである。
【0025】
モノカルボン酸には酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ピバル酸、イソ酪酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロプロパンカルボン酸、1,1−シクロペンタン二酢酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、p−トルイル酸、o−トルイル酸、p−tert−ブチル安息香酸、サリチル酸、p−アニス酸、フェニル酢酸、桂皮酸等の芳香族モノカルボン酸が含まれる。末端封止剤はこれらの中の1種又は複数種とするのが良い。そのうち好ましいモノカルボン酸は酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸又はフェニル酢酸である。
【0026】
モノアミンは、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、p−トルイジン、o−トルイジン、2,6−ジメチルアニリン、3,4−ジメチルアニリン、o‐エチルアニリン等の芳香族モノアミンを含んでいる。末端封止剤はこれらの中の1種又は複数種とするのが良い。好ましいモノアミンはエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、アニリン又はp−トルイジンである。
【0027】
末端封止剤のモル量は芳香族ジカルボン酸の0.2〜10%とし、0.5〜5%が好ましい。末端封止剤の量が高すぎると、重合物の分子量が小さくなるからであり、また末端封止剤の量が低すぎると、重合物の分子量が大きくなり又は重合物の活性末端基含量が大きくなるからである。
【0028】
前記手順(1)の中で、予備重合初期に加える水の量は15〜35重量%とする。加える水の量が少なすぎると、重合中に材料が固化し、反応が進まず、且つ産物を反応釜内から排出することはできない。また、加える水の量が大きすぎると、重合反応の速度が落ち、得られたプレポリマーの固有粘度も低下し、増粘反応がスムーズに進まない。そして反応速度及びプレポリマーの固有粘度を上げるためには、重合中に大量の水を排出しなければならない。それにより必然的に相当量のジアミンが流失し、モノマーのモル比が破壊されるからである。
【0029】
前記手順(1)で加えた水が予備重合反応に用いられず、且つ予備重合反応中に少量の水が生成し、予備重合終了後、加えた量よりやや多い廃水が収集され、これら廃水はまた次回の予備重合反応中に加えることもできる。このように繰り返すことにより、予備重合反応では新しい水を使用する必要はなく、且つ廃水の排出もほとんど無い。予備重合中に発生した廃水中に少量のジアミンを含有しているため、排出すれば、ジアミンのロスになる。廃水の再利用により、原料であるジアミンの利用率も向上する。また、予備重合初期に廃水中に加えたジアミンは、予備重合中に水の排出により流失したジアミンを補い、モノマージカルボン酸とジアミンのモル比バランスを確保し、重合反応のスムーズな進行に有利で、固有粘度が高い半芳香族ポリアミドが得られる。
【0030】
前記手順(2)で、プレポリマーの増粘は、固相増粘反応又は溶融増粘反応により実現することができ、そのうち固相増粘法が好ましい。固相増粘は重合物の融点以下で行ない、好適な反応温度220〜280℃、固相増粘反応時間3〜20時間とし、5〜15時間が好ましい。重合物の酸化を防止するため、固相増粘反応は窒素ガス雰囲気下又は真空条件下で行ない、窒素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。固相増粘の利点としては、反応温度が低く、分解反応が少なく、得られたポリアミドの色調、寸法安定性、耐熱性が比較的良い。溶融増粘は空気吹き出し口付き押し出し設備で行ない、溶融増粘の温度は予備重合物の融点より高く、好適な反応温度290〜350℃、溶融増粘反応時間1〜8分間とし、2〜6分間が好ましい。溶融増粘の利点としては、反応時間が比較的短い。増粘反応後、最終産物である半芳香族ポリアミドが得られる。
【0031】
本発明において得られた半芳香族ポリアミドは、その固有粘度[η]を0.8〜2.5dl/gとし、1.0〜2.0dl/gが好ましい。末端カルボキシル基含量を15〜80mol/tとし、15〜50mol/tが好ましい。アミン末端基含量を15〜80mol/tとし、15〜60mol/tが好ましい。融点を270〜330℃とし、290〜330℃が好ましい。この範囲が好ましい理由は、融点が低すぎる時には、ポリアミドの耐熱性が本発明の要求に達することはできず、また融点が高すぎる時には、熱加工時に分解反応が発生するということにある。
【0032】
既存の技術と比べ、本発明は次のような効果を有する。
1.本発明の半芳香族ポリアミドの調製方法では、重合中に発生した廃水を再利用することにより、廃水の排出量が大いに削減される。且つ廃水中の原料の効果的回収利用により、原料ジアミンの利用率が向上する。また、予備重合初期に廃水中に加えたジアミンは予備重合中に水の排出により流失したジアミンを補い、モノマージカルボン酸とジアミンのモル比バランスを確保している。
2.本発明において調製された半芳香族ポリアミドは、結晶化度、固有粘度及び耐熱温度が比較的高く、色相がよく、活性末端基含量が低く、加工安定性がよく、金型への腐食はない。必要に応じて、酸化防止剤、潤滑剤、核形成剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤を添加することができる。また、ガラス繊維、炭素繊維、無機充填剤を加えることにより補強することもできる。そしてその他の重合物と混合することにより重合物の混合物を調製することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例の形態で本発明を説明するが、本発明を制限するものではない。
実施例及び比較例中の諸特性は、すべて次の方法で測定した。
【0034】
1.固有粘度[η]
25℃の濃硫酸中で濃度0.05、0.1、0.3及び1g/dlのポリアミドの対数粘度ηinhを測定する。
ηinh = [ln(t1/t0)]/C
式中、ηinhは対数粘度(dl/g)、t0は溶剤の経過時間(sec)、t1は試料溶液の経過時間(sec)、Cは試料溶液の濃度(g/dl)を示す。
試料の固有粘度[η]を得るため、ηinhのデータを濃度が0となるまで外挿する。
【0035】
2.末端アミノ基含量
全自動電位差滴定装置を用いて試料末端アミノ基含量を滴定する。重合物0.5gを取り、フェノール45ml及び無水メタノール3mlを入れ、加熱逆流し、試料を観察し、完全溶解後、室温まで冷却し、標定済み塩酸標準溶液を用いて末端アミノ基含量を滴定する。
【0036】
3.末端カルボキシル基含量
全自動電位差滴定装置を用いて試料末端カルボキシル基含量を滴定する。重合物0.5gを取り、o−クレゾール50mlを加え、逆流溶解し、冷却後、速やかにホルムアルデヒド溶液400μLを入れ、標定済みKOH−エタノール溶液を用いて末端カルボキシル基含量を滴定する。
【0037】
4.廃水中のジアミン含量
全自動電位差滴定装置を用いて予備重合において発生した廃水中のジアミン含量を滴定する。廃水100mlを取り、標定済み塩酸標準溶液を用いてジアミン含量を滴定する。
【0038】
5.融点及び融解熱量
熱分析装置を用いて試料の融点及び融解熱量を窒素ガス雰囲気で、流速40mL/分で測定する。測定時、先ず10℃/分で340℃まで温度上昇し、340℃で2分間保持し、それから10℃/分で50℃まで冷却し、さらに10℃/分で340℃まで温度上昇し、この時の吸熱ピーク温度を融点Tmに設定し、この時の吸熱ピーク面積から融解熱量ΔHmを算出する。
【0039】
6.結晶化度
X線回折法を用いて重合物の結晶化度を測定する。溶融した重合物を液体窒素を用いて急冷することにより非結晶試料を調製し、非結晶試料及び重合物試料のX線回折ピーク面積をそれぞれS1、S2とし、次の式から結晶化度を算出する。
Xc=(S2−S1)/S2×100(%)
式中、Xcは結晶化度(%)、S1は非結晶試料のX線回折ピーク面積、S2は重合物試料のX線回折ピーク面積を示す。
【0040】
<比較例1>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,10−デカンジアミン3446g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、脱イオン水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.14dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2361gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.7重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、PA10T樹脂が得られた。融点319℃、融解熱量67.5J/g、固有粘度[η]1.02dl/g、末端アミノ基含量14mol/t、末端カルボキシル基含量107mol/tであった。結果は、表1に示す。
【0041】
<実施例1>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,10−デカンジアミン3446g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、比較例1中の廃水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2339gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.8重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、PA10T樹脂得られた。融点320℃、融解熱量73.5J/g、固有粘度[η] 1.38dl/g、末端アミノ基含量35mol/t、末端カルボキシル基含量43mol/tであった。結果は、表1に示す。
【0042】
<実施例2>
実施例1の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例1重合中に収集された廃水である。結果は、表1に示す。
【0043】
<実施例3>
実施例1の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例2重合中に収集された廃水である。結果は、表1に示す。
【0044】
<実施例4>
実施例1の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例3重合中に収集された廃水である。結果は、表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
<比較例2>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸2824g(17mol)、m−フタル酸498g(3mol)、1,10−デカンジアミン3446g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、脱イオン水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.13dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2356gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.5重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点291℃、融解熱量38.7J/g、固有粘度[η]0.97dl/g、末端アミノ基含量19mol/t、末端カルボキシル基含量112mol/tであった。結果は、表2に示す。
【0047】
<実施例5>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸2824g(17mol)、m−フタル酸498g(3mol)、1,10−デカンジアミン3446g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、比較例2中の廃水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2386gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.8重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点292℃、融解熱量45.3J/g、固有粘度[η]1.27dl/g、末端アミノ基含量43mol/t、末端カルボキシル基含量51mol/tであった。結果は、表2に示す。
【0048】
<実施例6>
実施例5の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例5重合中に収集された廃水である。結果は、表2に示す。
【0049】
<実施例7>
実施例5の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例6重合中に収集された廃水である。結果は、表2に示す。
【0050】
<実施例8>
実施例5の調製手順を繰り返す。相違点として、加える廃水は実施例7重合中に収集された廃水である。結果は、表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
<比較例3>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,10−デカンジアミン2929g(17mol)、5−メチル−1,9−ジアミノノナン517g(3mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、脱イオン水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.13dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2317gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.6重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点294℃、融解熱量41.2J/g、固有粘度[η]1.07dl/g、末端アミノ基含量16mol/t、末端カルボキシル基含量96mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0053】
<実施例9>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,10−デカンジアミン2929g(17mol)、5−メチル−1,9−ジアミノノナン517g(3mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム6.85g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、比較例3中の廃水2283g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2395gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.7重量%とする。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点294℃、融解熱量48.3J/g、固有粘度[η]1.29dl/g、末端アミノ基含量34mol/t、末端カルボキシル基含量50mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0054】
<比較例4>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸1994g(12mol)、m−フタル酸1329g(8mol)、1,6−ヘキサメチレンジアミン2324g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム5.73g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、1909g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)脱イオン水,窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.14dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計1960gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.4重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点312℃、融解熱量34.8J/g、固有粘度[η]0.96dl/g、末端アミノ基含量17mol/t、末端カルボキシル基含量92mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0055】
<実施例10>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸1994g(12mol)、m−フタル酸1329g(8mol)、1,6−ヘキサメチレンジアミン2324g(20mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム5.73g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、比較例4中の廃水1909g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2053gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.4重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点312℃、融解熱量33.4J/g、固有粘度[η]1.32dl/g、末端アミノ基含量33mol/t、末端カルボキシル基含量39mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0056】
<比較例5>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,6−ヘキサメチレンジアミン1394g(12mol)、2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミン930g(8mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム5.73g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、脱イオン水1909g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計2023gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.3重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点316℃、融解熱量34.2J/g、固有粘度[η]1.11dl/g、末端アミノ基含量19mol/t、末端カルボキシル基含量87mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0057】
<実施例11>
磁力誘導攪拌機、凝縮管、気相口、試料注入口、内圧防爆口付き20Lのオートクレーブ内にp−フタル酸3323g(20mol)、1,6−ヘキサメチレンジアミン1394g(12mol)、2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミン930g(8mol)、安息香酸73.27g(0.6mol)、次亜リン酸ナトリウム5.73g(原材料に基づく総重量は0.1重量%とする)、比較例5中の廃水1909g(反応系に基づく総重量は25重量%とする)を加え、窒素ガスで吹き飛ばした後、温度を上昇させる。2時間以内の攪拌で、温度が220℃まで上昇したら、反応混合物を220℃で1時間攪拌し、さらに攪拌しながら、反応物の温度を230℃まで上昇させる。反応を230℃の恒温及び2Mpaの恒圧で2時間続け、生成された水を除去して一定の圧力を維持し、反応完了後排出し、プレポリマーを80℃の真空で24時間乾燥させ、固有粘度[η]0.15dl/gのプレポリマーが得られた。予備重合中に廃水計1987gが収集され、廃水中のジアミン含量は1.5重量%であった。プレポリマーを260℃窒素ガス雰囲気で10時間固相増粘し、半芳香族ポリアミド樹脂が得られた。融点317℃、融解熱量35.7J/g、固有粘度[η]1.43dl/g、末端アミノ基含量40mol/t、末端カルボキシル基含量49mol/tであった。結果は、表3に示す。
【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、及び、前回の予備重合中に発生した廃水をオートクレーブ内に加えて予備重合反応を行なう手順(1)と、
前記手順(1)により得られたプレポリマーの固相増粘反応又は溶融増粘反応により、半芳香族ポリアミドを得る手順(2)と、
を含むことを特徴とする半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項2】
前記手順(1)における脂肪族ジアミンは直鎖脂肪族ジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミン又は脂環式ジアミン中の1種又は複数種類の混合物であることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項3】
前記直鎖脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−デカンジアミン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ドデシルジアミンのいずれかであり、
前記分岐鎖脂肪族ジアミンは、2‐メチル‐1,5‐ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、5−メチル−1,9−ジアミノノナンのいずれかであり、
前記脂環式ジアミンは、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンのいずれかであることを特徴とする請求項2記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項4】
前記手順(1)における芳香族ジカルボン酸は、p−フタル酸、m−フタル酸、2−メチルp−フタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項5】
前記廃水中には0.1〜5重量%の4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミンを含有していることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項6】
前記手順(1)における予備重合反応は、芳香族ジカルボン酸、4〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミン、水、末端封止剤、触媒をオートクレーブ内に加えて反応させ、反応温度200〜280℃、反応系圧力1〜5Mpa、反応時間1〜6時間とし、反応後期にシステム内の水を排出することにより圧力の安定性を維持し、反応終了後、プレポリマーを乾燥させることによって行われ、
水注入量は反応系全体の15〜35重量%であり、
触媒の量は原材料の0.01〜2重量%であり、
末端封止剤のモル量は芳香族ジカルボン酸の0.2〜10%であり、
前記触媒は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸のいずれか、又はその塩、又はそのエステルであり、
前記末端封止剤は、モノカルボン酸、又はモノアミン、又はその混合物であることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項7】
前記触媒は、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムのいずれかであり、
前記モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、フェニル酢酸のいずれかであり、
前記モノアミンは、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、アニリン、p−トルイジンのいずれかであることを特徴とする請求項6記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項8】
前記手順(2)における固相増粘反応は、窒素ガス雰囲気下又は真空条件下で行ない、反応温度220〜280℃、反応時間3〜20時間とし、
前記手順(2)における溶融増粘反応は、空気吹き出し口付き押し出し設備で行ない、反応温度290〜350℃、反応時間1〜8分間とすることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドの調製方法。
【請求項9】
請求項1記載の調製方法により得られた半芳香族ポリアミド。

【公表番号】特表2011−506646(P2011−506646A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537231(P2010−537231)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001306
【国際公開番号】WO2010/003277
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510164201)キンファ サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD
【出願人】(510164212)シャンハイ キンファ サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KINGFA SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD
【Fターム(参考)】