説明

単一触媒低、中及び高密度ポリエチレン

【課題】工業的に魅力のある生産性で中及び高密度ポリエチレン(特に回転成形及び射出成形用途において有用なポリエチレン)を生産することができるようにすること。
【解決手段】連続重合反応器中で、少なくとも1300kPaの分圧のエチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.935〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含む、オレフィンの重合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物を取り替える必要のない低、中及び高密度ポリエチレンの単一触媒組成物生産に関し、より詳細には、低密度ポリエチレンをも生産できる触媒組成物を用いた中及び高密度ポリエチレンの生産に関し、さらにより詳細には、低圧反応器中でのコモノマー及び水素の条件を変化させた下における高い生産性での中及び高密度ポリエチレンの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに最も研究されてきたメタロセンは、チタン又はジルコニウムをベースとするモノ−及びビス−シクロペンタジエニルメタロセンである。これらの触媒(特にジルコノセン)は、低密度ポリエチレン(約0.930g/cm3未満の密度を有するもの)を多くのタイプの反応器条件下で有利なことに高い活性で生産することが知られている。しかしながら、これまでに最も研究されてきたメタロセンには、工業的に許容できる生産性でより高密度のポリエチレン(密度が約0.930g/cm3より高いもの)を生産するものはなかった。例えば1 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 12-14 (J. Scheirs and W. Kaminsky, eds., John Wiley and Sons 2000)を参照されたい。さらに、水素がほとんどのメタロセンの生産性を低下させることが知られている。例えばJ.B.P. Soares and A.E. Hamielec in 3(2) POLYMER REACTION ENGINEERING 131-200 (1995)を参照されたい。水素は生産されるポリエチレンのメルトインデックス(I2)を高めるのに有用であり(そして大抵の場合必要であり)、回転成形及び射出成形製品のような用途には高I2(例えば5〜50dg/分)樹脂が望ましいという点で、このことは不利である。また、単一の又は複数の反応器中で高、中及び低密度ポリエチレン製品の間で移行する時には同じ触媒組成物を用いるのが望ましいという点、並びに異なる樹脂製品を達成するために触媒組成物を取り替えなければならないという現在の必要性を回避するのが望ましいという点でも、不利である。
【0003】
背景文献には米国特許第6936675号明細書が包含される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6936675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メタロセンから誘導された樹脂は、工業的に魅力のある製品を提供する多くの有利な特性を有する。工業的に魅力のある生産性で中及び高密度ポリエチレン(特に回転成形及び射出成形用途において有用なポリエチレン)を生産することができるメタロセン触媒組成物が望まれる。さらに、工業的に魅力のある生産性で広いメルトインデックス及び広い密度範囲のポリエチレン樹脂を生産するのに用いることができるメタロセンを提供することが有用である。本発明者らはここに、これらの樹脂を生産するためのこのような触媒組成物及び方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面は、重合反応器(好ましくは連続重合反応器)中で、エチレン(1つの実施態様においては少なくとも1300kPaの分圧)及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.930〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含む、オレフィンの重合方法にある。
【0007】
本発明の別の局面は、ポリマー粒子を含む重合反応器中で、エチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンと触媒組成物とを、10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.910〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含むオレフィン重合方法であって、
0〜0.10の範囲のコモノマー対エチレンのモル比において前記ポリマー粒子の嵩密度が0.40g/cm3より高く;そして前記密度範囲内の樹脂を生産する時に触媒組成(物)を変化させない、前記オレフィン重合方法にある。
【0008】
本発明のさらに別の局面は、単一の反応器内で第1のポリエチレン製品から第2のポリエチレン製品に移行するための方法であって、
(a)第1の水素対エチレンのモル比及び第1のコモノマー対エチレンのモル比で10000kPaより低い圧力において反応器を運転し;
(b)第1のポリエチレン製品を取り出し;
(c)水素対エチレンのモル比及びコモノマー対エチレンのモル比の一方又は両方を変化させて第2の水素対エチレンのモル比及び第2のコモノマー対エチレンのモル比を達成し;そして
(d)第2のポリエチレン製品を取り出す:
ことを含み、前記の移行を同じ触媒組成物を用いて行い、前記の第1のポリエチレン製品の密度が0.920g/cm3以下であり且つ前記の第2のポリエチレン製品の密度が0.935g/cm3以上である、前記方法にある。
【0009】
本発明のさらに別の局面は、0.4〜0.8mmの範囲の平均粒子寸法を有するポリエチレン粒子であって、
粒子の少なくとも80%が35〜60メッシュ寸法であり、該粒子が0.40g/cm3より高い嵩密度及び0.930〜0.975g/cm3の勾配密度を有し且つ0.001〜4ppmのハフニウム金属を有する、前記ポリエチレン粒子にある。
【0010】
本発明のさらに別の局面は、単一の反応器中で2〜15の分子量分布及び2%未満のヘキサン抽出分値を有するポリエチレンを製造することができ、さらに0.91〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを製造することができる触媒成分を含む触媒組成物及び触媒系の使用にある。
【0011】
これらの局面は、本発明を説明するためにここに開示される様々な実施態様と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、表2〜4のデータから、反応器中の1−ヘキセン対エチレンモル比の関数としての本発明の実施例の触媒生産性の関係をプロットしたグラフである。
【図2】図2は、表2〜4のデータから、反応器中の1−ヘキセン濃度の関数としての、本発明の実施例における触媒生産性の関係をプロットしたグラフである。
【図3】図3は、実施例に記載したものと同様の条件下で運転した気相重合反応器中における、1−ヘキセン対エチレンモル比の関数としての、比較例(ビス(アルキル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハライド)触媒組成物生産性及びポリエチレンコポリマー密度のグラフである。
【図4】図4は、表2〜4のデータから、メルトインデックス(MI、I2)の関数としてのポリエチレン密度の関係をプロットしたグラフであり、各データの点についての数値は触媒組成物生産性を表わし、破線は0.05〜200g/10分のMI範囲にわたるホモポリマー密度の見積もりである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の局面は、低密度(0.910〜0.930g/cm3未満)ポリエチレンを生産する時に工業的に許容できる生産性を有する触媒組成物を用いて、重合反応器中で中密度(0.930〜0.940g/cm3)〜高密度(0.940g/cm3超)ポリエチレンを製造する方法に向けられる。本発明の別の局面は、低密度ポリエチレンの生産から中及び/又は高密度ポリエチレンの生産への移行方法にある。この移行は、重合プロセスを停止させることなく且つ/又は重合反応器内のポリマー粒子床を取り替えることなく、行うことができる。1つの実施態様における「触媒成分」は、ポリエチレンを製造するためのエチレンモノマー(及び随意としてのコモノマー)の重合を触媒することができる当技術分野において周知の任意の化学種である。好ましい実施態様において、触媒組成物はハフノセンを含み;特に好ましい実施態様において、触媒組成物はハフノセンから成る触媒成分を含む。従って、本発明の様々な局面は、本明細書中の実施態様の組合せによって説明することができる。
【0014】
本発明の1つの局面は、触媒生産性を維持しながら0.930又は0.935〜0.965又は0.970又は0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを製造するために、重合反応器中で10000kPaより低い圧力においてエチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンと触媒組成物とを一緒にすることを含むオレフィン重合方法にある。望まれる密度範囲は、ここに記載した任意の下限と任意の上限との任意の組合せを含むことができる。好ましくは、触媒組成物はハフノセンを含むものである。別途示さない限り、本明細書を通じて言及される「密度」は、いわゆる「勾配」密度である(サンプル調製法ASTM D4703-03;密度試験方法、ASTM D1505-03に従う勾配カラム)。
【0015】
「ハフノセン」とは、ハフニウムのモノ−、ビス−又はトリス−シクロペンタジエニルタイプの錯体を含む触媒成分である。1つの実施態様において、シクロペンタジエニルタイプのリガンドは、シクロペンタジエニル又はシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド又はそれらの置換体から成る。シクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンドの代表的な例には、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンゾインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントルインデニル、3,4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタ[a]アセナフチレニル、7H−ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2−9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化物(例えば4,5,6,7−テトラヒドロインデニル、又は「H4Ind」)、及びそれらの置換体が包含される。1つの実施態様において、ハフノセンは非架橋ビス−シクロペンタジエニルハフノセン及びその置換体である。別の実施態様において、ハフノセンは非置換架橋及び非架橋ビス−シクロペンタジエニルハフノセン並びに非置換架橋及び非架橋ビス−インデニルハフノセンを除外する。「非置換」とは、環に結合した基としてはヒドリド基のみが存在し、他の基は存在しないことを意味する。
【0016】
好ましくは、本発明において有用なハフノセンは、次式(ここで、「Hf」はハフニウムである):
CpnHfXp (1)
(ここで、nは1又は2であり、
pは1、2又は3であり、
各Cpは独立的にハフニウムに結合したシクロペンタジエニルリガンド又はシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド又はそれらの置換体を表わし;
Xはヒドリド、ハライド、C1〜C10アルキル及びC2〜C12アルケニルより成る群から選択され;
nが2である場合、各Cpは、C1〜C5アルキレン、酸素、アルキルアミン、シリル−炭化水素及びシロキシル−炭化水素より成る群から選択される架橋基Aを介して互いに結合していることができる)
によって表わすことができる。C1〜C5アルキレンの例には、エチレン(−CH2CH2−)架橋基が包含され;アルキルアミン架橋基の例にはメチルアミド(−(CH3)N−)が包含され;シリル−炭化水素架橋基の例にはジメチルシリル(−(CH3)2Si−)が包含され;シロキシル−炭化水素架橋基の例には(−O−(CH3)2Si−O−)が包含される。式(1)で表わされるハフノセンの特定的な具体例において、nは2であり、pは1又は2である。
【0017】
本明細書において、用語「置換」とは、言及する基が、任意の位置において1個以上の水素の代わりに少なくとも1つの部分を有することを意味する。その部分とは、ハロゲン基(特にF、Cl、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基、及びそれらの組合せのような基から選択される。置換アルキル及びアリールの非限定的な例には、アシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基並びにそれらの組合せ物が包含される。
【0018】
より好ましくは、本発明において有用なハフノセンは、次式:
(CpR5)2HfX2 (2)
(ここで、各Cpはシクロペンタジエニルリガンドであり、それぞれハフニウムに結合し;
各Rは独立的にヒドリド及びC1〜C10アルキルから、特に好ましくはヒドリド及びC1〜C5アルキルから選択され;
Xはヒドリド、ハライド、C1〜C10アルキル及びC2〜C12アルケニルから選択され、より一層好ましくはXはハライド、C2〜C6アルキレン及びC1〜C6アルキルより成る群、特に好ましくはXはクロリド、フルオリド、C1〜C5アルキル及びC2〜C6アルキレンより成る群から選択される)
で表わすことができる。特に好ましい実施態様において、ハフノセンは、上記の式(2)において少なくとも1個のR基が上で規定したアルキル、好ましくはC1〜C5アルキルであり、それ以外がヒドリドであるものによって表される。特に好ましい実施態様において、各Cpは独立的にメチル、エチル、プロピル、ブチル及びそれらの異性体より成る群から選択される1、2又は3個の基で置換されたものである。
【0019】
1つの実施態様においては、触媒組成物が不均質であるように重合プロセスを実施する。従って、触媒組成物は1つの実施態様においては担体材料を含む。担体材料は、触媒組成物を担持するための当技術分野において周知の任意の材料、特に好ましくは無機酸化物、特に好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、塩化マグネシウム、グラファイト、マグネシア、チタニア、ジルコニア及びモンモリロナイトであることができ、それらはいずれも、例えばフッ化物化プロセス、焼成又はその他の当技術分野において周知の方法によって、化学的に/物理的に変性したものであることができる。特に好ましい実施態様において、担体材料は、Malvern分析によって測定して1〜60μm、特に好ましくは10〜40μmの平均粒子寸法を有するシリカ材料である。
【0020】
触媒組成物は、活性剤を含む。オレフィン重合に対して触媒成分を活性化することが知られている任意の好適な活性剤が好適であり得る。好ましい実施態様において、活性剤はアルモキサンであり、特に好ましくはJ.B.P. Soares及びA.E. Hamielecにより3(2) POLYMER REACTION ENGINEERING 131-200 (1995)に記載されたようなメタアルモキサンである。アルモキサンは、80:1〜200:1の範囲、特に好ましくは90:1〜140:1の範囲のアルミニウム対ハフニウム(Al:Hf)のモル比で担体材料上に一緒に担持させるのが好ましい。
【0021】
「重合反応器」は、ポリオレフィンを生産するのに有用であり且つ10000kPa未満、より一層好ましくは8000kPa未満、さらにより一層好ましくは6000KPa未満、さらにより一層好ましくは4000KPa未満、特に好ましくは3000kPa未満の全圧で運転することができるものであれば、当技術分野において周知の任意のタイプの反応器であることができる。1つの実施態様において、反応器は「連続」反応器であり、これは、モノマー及び触媒組成物を連続的に又は定期的に反応器に供給しながら、ポリエチレンを連続的に又は定期的に反応器から取り出すことを意味する。かかる重合反応器には、いわゆる「スラリー」反応器、「溶液」反応器及び「流動床気相」反応器が包含される。かかる反応器は、A.E. Hamielec及びJ.B.P. SoaresによりPolymerization Reaction Engineering-Metallocene Catalysts, 21 PROG. POLYM. SCI. 651-706 (1996)に概説されている。特に好ましくは、本発明において有用な重合反応器は、連続流動床気相反応器である。かかる反応器は当技術分野においてよく知られており、米国特許第5352749号及び同第5462999号の両明細書並びに国際公開WO03/044061号パンフレットに詳細に記載されている。
【0022】
1つの実施態様において、「重合反応器」は、2つ以上の直列の反応器を含み、これらの反応器は、任意の組合せ反応器であり;好ましくは重合反応器は1つの反応器である。別の実施態様において、重合反応器は連続重合反応器であり、その供給流又は「循環気体」がエチレン及び存在させる場合のコモノマーを含み、それらが共に任意の好適な手段によって重合反応器に連続的に流入せしめられるものである。反応器中に存在させる場合のコモノマーの量は、反応器中のエチレンの量に対するモル比として表わすことができる。好ましくは、モノマー及び随意としてのコモノマーの連続流を維持するために供給流又は「循環気体」を反応器に供給する。記述される比は所定のタイプのポリエチレンを生産するための所望の定常状態レベルである。
【0023】
流動床反応器のある実施態様においては、モノマー流を重合区画に通す。重合区画の例としては、1つ以上の排出タンク、サージタンク、パージタンク及び再循環コンプレッサーと流体流通状態にある反応器が包含され得る。1つ以上の実施態様において、反応器は減速帯域と流体流通状態にある反応帯域を含む。反応帯域には、成長中のポリマー粒子、生成したポリマー粒子及び触媒組成物粒子が、反応帯域への補給供給流及び再循環流体の形の重合性気体状成分及び変性用気体状成分の連続流によって流動化された床が含まれる。好ましくは補給供給流は重合性モノマー(特に好ましくはエチレン及び少なくとも1種の別のα−オレフィン)を含み、また、当技術分野において周知のようにそして例えば米国特許第4543399号、同第5405922号及び同第5462999号の各明細書に開示されたように、「凝縮剤」をも含むことができる。
【0024】
流動床は、床を気体が通り抜けることによって作り出されるような、個別に動く粒子(好ましくはポリエチレン粒子)の密集塊の一般的な外観を有する。床通過の圧力低下は、床の重量を断面積で割ったものと同じ又はそれより僅かに大きく、従って反応器の形状寸法に依存する。反応帯域中で生きた流動床を維持するためには、床を通る表面気体速度が流動化に必要な最小流速を超えていなければならない。好ましくは、表面気体速度は、前記最小流速の少なくとも2倍である。通常は、この表面気体速度は1.5m/秒を超えず、大抵の場合0.76フィート/秒以下で充分である。
【0025】
一般的に、反応器の高さ対直径の比は、約2:1〜約5:1の範囲で変えることができる。この範囲はもちろんもっと大きい比であってももっと小さい比であってもよく、望まれる生産能力に依存する。減速帯域の断面積は典型的には反応帯域の断面積の約2倍〜約3倍の範囲内である。
【0026】
減速帯域は反応帯域より大きい内径を有し、円錐状の先細形状であることができる。その名前が示すように、減速帯域は断面積の増大によって気体の速度を遅くする。この気体速度の低下は同伴してきた粒子を床中に落とし、反応器から流出する同伴粒子の量を減らす。反応器の塔頂から出て行く気体は、再循環気体流となる。
【0027】
再循環流は、コンプレッサーにおいて圧縮され、次いで熱交換帯域に通されて、そこで熱を取り除かれてから床に戻される。熱交換帯域は典型的には熱交換器であり、これは横型タイプのものであっても縦型タイプのものであってもよい。所望ならば、いくつかの熱交換器を用いて循環気体流の温度を段階的に下げることもできる。また、コンプレッサーは、熱交換器の下流に又はいくつかの熱交換器の間の中間点に配置させることもできる。冷却後に、再循環流は、再循環入口ラインを経て反応器に戻される。冷却された再循環流は、重合反応によって発生する反応熱を吸収する。
【0028】
好ましくは、再循環流は気体分配板を通して反応器及び流動床に戻される。含有されているポリマー粒子が沈降したり凝集して固体塊になったりするのを防止し、反応器の底に液体が蓄積するのを防止し、そしてさらに循環気体流中に液体を含有するプロセスと循環気体流中に液体を含有しないプロセスとの間の容易な移行を促進するために、反応器への入口に気体逸らせ板を設置するのが好ましい。この目的に好適な例示的な逸らせ板は、米国特許第4933149号及び同第6627713号の両明細書に記載されている。
【0029】
流動床中に用いられる触媒組成物は、貯蔵槽中に、窒素やアルゴンのような貯蔵される材料に対して不活性な気体でシールされた下で、供給のために貯蔵しておくのが好ましい。触媒組成物は、任意の地点において任意の好適な手段によって反応系又は反応器に添加することができ、流動床中に直接、又は再循環ライン中の最後の熱交換器(流れに対して最も下流の交換器)の下流で、反応系に添加するのが好ましく、その場合には、ディスペンサーから床中に又は再循環ライン中に活性剤を供給する。触媒組成物は、分配板の上の地点において床中に注入される。好ましくは、触媒組成物は、床中のポリマー粒子の良好な混合が行われる地点において注入される。分配板より上の地点において触媒を注入すると、流動床重合反応器の満足できる運転がもたらされる。
【0030】
モノマーは、ノズルからの床又は循環気体ライン中への直接注入を含めて、様々な方法で重合帯域中に導入することができる。モノマーはまた、床の上に位置するノズルから床の頂部に噴霧することもでき、これは循環気体流による微粉のキャリーオーバーをなくす助けをすることができる。
【0031】
補給流体は、別のラインを通して反応器の床に供給することができる。補給流の組成は、気体分析器によって決定される。気体分析器が再循環流の組成を測定し、それに応じて、反応帯域内で本質的に定常状態の気体状組成物が維持されるように、補給流の組成が調節される。気体分析器は、供給流成分の比を維持するために再循環流組成を測定するものであれば、慣用の気体分析器であることができる。かかる装置は広範な供給元から商品として入手できる。気体分析器は典型的には減速帯域と熱交換器との間に位置するサンプリング地点から気体を受け取るために位置決めされる。
【0032】
ポリオレフィン生産速度は、触媒組成物注入速度、活性剤注入速度又はそれら両方を調節することによって、うまい具合に制御することができる。触媒組成物注入速度が変化すると反応速度が変化し、従って床中での熱発生速度が変化するので、反応器に入る再循環流の温度を調節することによって、熱発生速度の変化に対応することができる。これにより、床中の温度を本質的に一定に保つことができるようになる。もちろん、流動床及び再循環流冷却システムの両方の完全な計装は、作業者や慣用の自動制御システムが再循環流の温度を適切に調節できるように床中の温度変化を検出するのに有用である。
【0033】
所定の組合せ運転条件下において、粒状ポリマー製品の生成速度で床の一部を製品として取り出すことによって、流動床を本質的に一定の高さに保つ。熱発生速度は製品生成に直接関係するので、もしも入口流体中に蒸発性液体が何ら又は無視できる程度しか存在しなければ、反応器を通る流体の温度上昇(入口流体温度と出口流体温度との差)の測定が一定流体速度における粒状ポリマーの生成速度の指標となる。
【0034】
粒状ポリマー製品を反応器から排出する際には、製品から流体を分離してこの流体を再循環ラインに戻すのが望ましく、好ましい。この分離を達成するために、当技術分野において周知の多くの技術がある。代わりに用いることができる製品排出システムは、米国特許第4621952号明細書に開示されて特許請求されたものである。かかるシステムは、典型的には、直列に配置された沈降タンク及び移送タンクを含む少なくとも一対(平行)のタンクを用いるものであり、分離された気相は沈降タンクの頂部から反応器中の流動床の頂部付近の地点に戻される。
【0035】
流動床反応器実施態様において、ここでの流動床プロセスの反応器温度は、70℃又は75℃又は80℃〜90℃又は95℃又は100℃又は110℃の範囲であり、望ましい温度範囲は、ここに記載した任意の上限温度と任意の下限温度との任意の組合せを含む。一般的に反応器は、反応器内のポリオレフィン製品の焼結温度及び反応器又は再循環ライン中で起こりうる汚染を考慮に入れて、実現可能な最も高い温度において運転される。
【0036】
本発明の方法は、エチレンから誘導された単位を含むホモポリマー、又はエチレンから誘導された単位と少なくとも1種の他のオレフィンから誘導された単位とを含むコポリマーの生産に好適である。最終的なポリエチレン製品は、コモノマーから誘導された単位を0〜15又は20重量%含むことができる。好ましくは、エチレンを単独重合させるか又は1つの具体例においては3〜12個の炭素原子、別の実施態様においては4〜10個の炭素原子、好ましい実施態様においては4〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンと共重合させる。さらにより一層好ましくは、エチレンと1−ブテン又は1−ヘキセンとを共重合させて本発明のポリエチレンを生成させる。
【0037】
本発明において適切な触媒生産性を保つためには、反応器中にエチレンを190psia(1300kPa)以上、又は200psia(1380kPa)以上、又は210psia(1450kPa)以上、又は220psia(1515kPa)以上;であって好ましい実施態様においては10000kPa未満の分圧で存在させるのが好ましい。
【0038】
重合反応器中に存在させる場合のコモノマーは、最終ポリエチレン中への所望の重量%でのコモノマーの組み込みを達成する任意の割合で存在させる。これは、本明細書に記載されたようなコモノマー対エチレンのモル比として表わされ、これは循環気体中のコモノマーの気体モル濃度対循環気体中のエチレンの気体モル濃度の比である。ポリエチレン生産の1つの実施態様においては、循環気体中にコモノマーとエチレンとを0又は0.0001(コモノマー:エチレン)〜0.20又は0.10、別の実施態様においては0.001〜0.080、さらに別の実施態様においては0.001〜0.050、さらに別の実施態様においては0.002〜0.030のモル比範囲で存在させる。ここで、望ましい範囲は、ここに記載した任意の上限と任意の下限との任意の組合せを含むことができる。本発明の方法は、反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が上に示した範囲内にある時又はその範囲内で変化する時には、触媒生産性が30%以上又は20%以上又は10%以上変化しないことを特に特徴とすることができる。
【0039】
また、ポリエチレン組成物の最終特性(例えばI21及び/又はI2、嵩密度)を調節するために、重合器に水素ガスを添加することもできる。1つの実施態様において、循環気体流中の水素対全エチレンモノマーの比(ppmH2:モル%C2)は、1つの実施態様においては0〜60:1、別の実施態様においては0.10:1(0.10)〜50:1(50)、さらに別の実施態様においては0.12〜40、さらに別の実施態様においては0.15〜35であり、ここで、望ましい範囲は、ここに記載した任意の上限モル比と任意の下限モル比と任意の組合せを含むことができる。本発明の方法はまた、反応器中に存在する水素対エチレンのモル比が上に示した範囲内にある時又はその範囲内で変化する時には、触媒生産性が30%以上又は20%以上又は10%以上変化しないことを特に特徴とすることもできる。
【0040】
「生産性」とは、別途示さない限り、用いた触媒組成物のグラム数に対する生産されたポリエチレンのグラム数を意味する。触媒組成物の生産性は、当技術分野において周知のように、多くの方法で、例えば触媒使用速度(「物質収支」)によって、又は供給装置情報(特にrpm、充填効率、ディスク中の穴の数、各穴の容量、触媒嵩密度)から計算された触媒供給速度で割った熱収支により計算された生産速度を調べることによって(「熱収支」)、又は樹脂組成物中の残留Hf若しくはAl(好ましくはHf)の量によって、計算することができる。この後者の方法は好ましいが、生産性が変化する量の水素、コモノマー、温度等の下で重合プロセスを通じて一定の態様で決定される限り、本発明において限定的なファクターではない。触媒中の残留金属の量は当技術分野において周知の任意の手段によって測定することができる。1つの方法は、Hf又はAl残留物のX線蛍光分析技術を用いることによるものである。触媒からポリマー中に残るハフニウム及びアルミニウム残留物は、参照用標準物質に対してキャリブレートしたX線蛍光(XRF)によって測定される。好ましい方法におけるX線測定については、ポリマー樹脂粒体を高い温度において圧縮成形して約3/8インチの厚さのプラックにする。0.1ppm以下のような非常に低い金属濃度においては、ICP−AESがポリエチレン中に存在する金属残留物を測定するための好適な方法である。
【0041】
かくして、本発明は、同じ反応器中で1つの製品(例えば低密度、低I2)から別の製品(例えば高密度、高I2)に触媒組成物を取り替える必要なく移行するのに特に有用である。かくして、本発明の例示的な局面は、エチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを重合反応器中で一緒にすることを含むオレフィン重合方法であり、ここで、(a)反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0〜0.010の範囲である時には触媒組成物生産性が30%以上又は20%以上又は10%以上変化せず;そして(b)反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0.010〜0.10の範囲である時には触媒組成物生産性が工程(a)における生産性と比較して30%以上又は20%以上又は10%以上変化せず、工程(a)及び(b)を任意の順序で行うことができる。
【0042】
別の局面において、本発明は、単一の反応器内で第1のポリエチレン製品から第2のポリエチレン製品に移行するための方法であって、
(a)第1の水素対エチレンのモル比及び第1のコモノマー対エチレンのモル比で3000kPa未満又は4000kPa未満又は6000kPa未満又は8000kPa未満又は10000kPa未満の圧力において反応器を運転し;
(b)第1のポリエチレン製品を取り出し;
(c)水素対エチレンのモル比及びコモノマー対エチレンのモル比の一方又は両方を変化させて第2の水素対エチレンのモル比及び第2のコモノマー対エチレンのモル比を達成し;そして
(d)第2のポリエチレン製品を取り出す:
ことを含み、ここで、前記の移行を同じ触媒組成物を用いて行い、前記の第1のポリエチレン製品の密度が0.920g/cm3以下又は0.918g/cm3以下又は0.916g/cm3以下又は0.912g/cm3以下であり且つ前記の第2のポリエチレン製品の密度が0.935g/cm3以上又は0.937g/cm3以上又は0.940g/cm3以上である、前記方法を提供する。水素対エチレンのモル比及びコモノマー対エチレンのモル比は、本明細書において述べられる通りである。この方法は、逆順でも同様にうまく実施することができる。好ましくは、触媒組成物はオレフィン重合に有用な当技術分野において周知の任意の望ましい触媒組成物、例えばバナジウムをベースとする触媒、チタンをベースとするチーグラー・ナッタ触媒(これはマグネシウム成分を含むことができる)、第4族メタロセン、クロム又は酸化クロムをベースとする触媒組成物、及び第3〜10族配位タイプの触媒系(例えば鉄、パラジウム、ニッケル又はジルコニウムについての二座又は三座アミン/イミン配位錯体)から選択される触媒成分を含むものであるが、これらに限定されない。特に好ましくは、触媒組成物はハフノセンから成る触媒成分を含むものである。
【0043】
さらに別の局面において、本発明は、単一の反応器内で第1のポリエチレン製品から第2のポリエチレン製品に移行するための方法であって、
(a)第1の水素対エチレンのモル比及び第1のコモノマー対エチレンのモル比で3000kPa未満又は4000kPa未満又は6000kPa未満又は8000kPa未満又は10000kPa未満の圧力において反応器を運転し;
(b)第1のポリエチレン製品を取り出し;
(c)水素対エチレンのモル比及びコモノマー対エチレンのモル比の一方又は両方を変化させて第2の水素対エチレンのモル比及び第2のコモノマー対エチレンのモル比を達成し;そして
(d)第2のポリエチレン製品を取り出す:
ことを含み、ここで、前記の移行を同じ触媒組成物を用いて行い、第1のポリエチレン製品のI2が12以下又は10以下又は8以下であり、第2のポリエチレン製品のI2が12以上又は14以上又は16以上である(ASTM-D-1238-Eにより190℃/2.16kgにおいて測定されるようなI2;ASTM-D-1238-Fにより190℃/21.6kgにおいて測定されるようなI21)、前記方法を提供する。
【0044】
0.910又は0.930〜0.975g/cm3の勾配密度及び本明細書に示した任意のレベルのコモノマー:エチレン比を有する任意のポリエチレンを生産する時に、反応器中のポリマーの嵩密度が少なくとも0.400g/cm3であるのが好ましい。嵩密度(BD)は、ポリマー製品を直径7/8インチの漏斗を介して400cm3の一定容量のシリンダー中に注ぐことによって測定した。嵩密度は、樹脂の重量を400cm3で割ったものとして測定されて、g/cm3での値を与える。
【0045】
かくして、本発明の別の局面は、ポリマー粒子を含む重合反応器中でエチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンと触媒組成物とを10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.910又は0.912又は0.915〜0.965又は0.970又は0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含むオレフィン重合方法であって、
0〜0.20の範囲のコモノマー対エチレンのモル比において前記ポリマー粒子の嵩密度が0.40又は0.41g/cm3より高く;そして前記密度範囲内の樹脂を生産する時に触媒組成の同一性を変化させない、前記オレフィン重合方法にある。「前記密度範囲内の樹脂を生産する時に触媒組成を変化させない」とは、重合反応器の運転者が最初にオレフィンと触媒組成物とを低密度ポリエチレン(例えば0.915g/cm3)又は中密度ポリエチレン(例えば0.935g/cm3)が生成するような水素及びコモノマー濃度条件下で一緒にし、次いで反応器中に同じ触媒組成物を注入しながら、反応器条件だけを高密度ポリエチレン(例えば0.945g/cm3)が生成するように変化させ、これらすべてが有利なことに高い触媒組成物生産性において行われることを意味する。本発明のこの局面における「触媒組成物」とは、ポリエチレンの生産において有用であることが知られている任意の触媒組成物;好ましくは第4族メタロセンを意味し、特に好ましくは触媒組成物はハフノセンを含む。この方法はもちろん逆順で実施することもできる。樹脂製品の移行の間を通じて嵩密度及び触媒組成物生産性が共に高いままであることが有用である。
【0046】
所望の樹脂製品に応じて、本発明は広範なポリエチレンホモポリマー及びコポリマーを生成させるのに適している。好ましくは、本発明の方法から生産されるポリエチレンは、0.01〜200dg/分、別の実施態様においては0.01〜50dg/分、さらに別の実施態様においては0.1〜50dg/分のメルトインデックス(ASTM-D-1238-Eにより190℃/2.16kgにおいて測定した時のI2)を有し、ここで、望ましい範囲は、ここに記載した任意の上限と任意の下限との任意の組合せを含むことができる。さらに、このポリエチレンは、1つの実施態様においては10〜100、さらに別の実施態様においては10〜50、さらに別の実施態様においては12〜30のI21/I2値(I21はASTM-D-1238-Fにより190 ℃/21.6kgにおいて測定した時のもの)を有することができ、ここで、望ましい範囲は、ここに記載した任意の上限と任意の下限との任意の組合せを含むことができる。
【0047】
前記ポリエチレンは、1つの実施態様においては2〜15、別の実施態様においおては2〜10、さらに別の実施態様においては2.5〜8、さらに別の実施態様においては2.5〜5の分子量分布を有し、ここで、望ましい範囲は、ここに記載した任意の上限と任意の下限との任意の組合せを含むことができる。前記ポリエチレンは、(21 CFR 177.1520(d)(3)(i)によって測定して)1つの実施態様において2%未満、別の実施態様において1%未満のヘキサン抽出分値を有する。
【0048】
本明細書を通じて述べたように、本明細書に記載されるポリエチレンの密度は、低密度、中密度及び高密度として特徴付けられるものにわたることができ、好ましくは0.910又は0.912又は0.915〜0.965又は0.970又は0.975g/cm3の密度の範囲及びそれらの間の様々な範囲であることができる。
【0049】
本発明の方法はさらに、生産されるポリエチレン粒子が狭い粒子寸法分布を有するという有利な特性によって特徴付けられる。好ましい実施態様においては、粒子の80%又は90%又は95%が35〜60メッシュの範囲の寸法である。前記ポリエチレンは、好ましくは0.1〜1.0mm、より一層好ましくは0.4〜0.8mmの範囲、特に好ましくは0.45〜0.76mmの範囲の平均粒子寸法を有する。樹脂平均粒子寸法は、例えば公称100gの樹脂を、10、18、35、60、120、200メッシュの篩及び平皿(パン)から成るRo-Tap(商品名)シェーカー中の標準シーブ篩スタックの最上部の篩の上に置くことによって測定され、それによって200メッシュ篩及び平皿上にたまったものを一緒にしたものを樹脂微粉とする。
【0050】
1つの実施態様において、前記ポリエチレンは好ましくはクロム、ジルコニウム又はチタン含有率を実質的に持たず、即ち、当業者には(ほとんど)考えられないことだが、これらの金属が痕跡量(例えば0.001ppm未満しか)存在しない。好ましくは、前記ポリエチレンは、本明細書に説明したXRF又はICP−AESによって測定して、0.001〜4ppmのハフニウム、より一層好ましくは0.001〜3ppmのハフニウムを含むだけである。
【0051】
本明細書に記載した方法によって生産されるポリエチレンは、いろんな実施態様(の組合せ)によって説明することができるユニークな特性を有する。1つの実施態様において、ポリエチレン粒子は0.4〜0.8mmの範囲の平均粒子寸法を有し、粒子の少なくとも80%が35〜60メッシュ寸法であり、これらの粒子は0.40g/cm3より高い嵩密度及び0.930〜0.975g/cm3の勾配密度を有し、そして0.001〜4ppmのハフニウム原子を有する。
【0052】
本発明のさらに別の局面は、単一の反応器中で2〜15の分子量分布を有し且つ2%未満のヘキサン抽出分値を有するこのようなポリエチレンを(1つの実施態様においては10000kPaより低い圧力において運転する連続気相反応器中で)作ることができる触媒成分(さらには0.91〜0.975g/cm3の密度範囲のポリエチレンを作ることができる触媒成分)を含む触媒組成物を使用することにある。1つの実施態様において、前記触媒成分は、本明細書に記載したようなハフノセンである。
【0053】
前記ポリエチレンは、任意の好適な手段によって任意の有用な製造物品に成形することができる。本発明のポリエチレンは、回転成形又は射出成形法によって物品に成形するのに特に適している。かかる方法は、当技術分野においてよく知られている。典型的な回転成形物品には、液体輸送用大型容器、ドラム、農業用タンク、及びカヌーや公園の玩具のような大型部品が包含される。典型的な射出成形物品には、家庭用品、薄壁容器、及び容器用の蓋が包含される。
【0054】
従って、本発明の組成物及び方法は、本明細書に開示した任意の実施態様のそれぞれによって又は本明細書に開示した任意の実施態様の組合せによって説明することができる。本発明の実施態様は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解できるが、本発明がこれらによって限定されることを意味するものではない。
【実施例】
【0055】
触媒成分調製
ハフノセンは、当技術分野において周知の技術によって調製することができる。例えば、HfCl4(1.00当量)をエーテルに−30℃〜−50℃において添加して撹拌することによって白色懸濁液を得ることができる。次いでこの懸濁液を再度−30℃〜−50℃に冷却し、次いでリチウムプロピルシクロペンタジエニド(2.00当量)を少しずつ添加することができる。反応物は薄茶色になり、リチウムプロピルシクロペンタジエニドを添加した際に懸濁した固体により濃厚になる。次いで反応物をゆっくり室温まで温め、10〜20時間撹拌することができる。得られた茶色の混合物を次いで濾過して、茶色の固体及び淡黄色溶液を得ることができる。次いで前記固体を当技術分野において周知のようにエーテルで洗浄し、一緒にしたエーテル溶液を真空下で濃縮して、冷えた白色懸濁液を得ることができる。オフホワイト色の固体生成物を次いで濾過によって単離し、真空下で乾燥させた。収率70〜95%。
【0056】
触媒組成物調製
次の一般手順を用いて、触媒組成物を約80:1〜130:1のAl/Hfモル比で作り、最終触媒へのハフニウム装填量はHf約0.6〜0.8重量%とした。汚れていない乾燥済容器にトルエン中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加し、60〜100°Fで50〜80rpmにおいて所定時間撹拌した。次いで撹拌しながら追加のトルエンを添加することができる。次いでハフノセンを所定量のトルエン中に溶解させ、MAOと共に容器に入れることができる。このメタロセン/MAO混合物を次いで30分〜2時間撹拌することができる。次に、所定量のシリカ(平均粒子寸法22〜28μm、600℃におて脱水したもの)を添加し、さらに1時間以上撹拌することができる。次いで液体をデカンテーションし、触媒組成物を撹拌しながら窒素流下で高温において撹拌することができる。
【0057】
1回目の試験重合
次の一般手順に従って、エチレン/1−ヘキセンコポリマーを生産した。触媒組成物はビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリドをメタアルモキサンと共に担持させたシリカから成るものだった(Al:Hf比=約80:1〜130:1)。この触媒組成物を流動床気相重合反応器中に乾式で注入した。より特定的には、直径152.4mmの気相流動床反応器を約2068kPaの全圧において運転して重合を実施した。反応器の床重量は約2kgだった。流動化用気体を約0.6m/秒の速度で床中に通した。床から出てきた流動化用気体は、反応器の上部に配置される樹脂分離帯域に入れられた。流動化用気体は次いで再循環ループに入り、循環気体コンプレッサー及び水冷式熱交換器中を通された。反応温度を特定値に保つために、シェルサイド水温を調節した。コンプレッサーのすぐ上流において循環気体ループにエチレン、水素、1−ヘキセン及び窒素を所望の気体濃度を維持するのに充分な量で供給した。この試験は工業規模の大きい条件において運転されるものより低いエチレン分圧(約130psi)で行い、従って比較的低い全体生産性をもたらしたことに留意すべきである;下記の1〜15は、様々な水素及びコモノマー濃度を通じて生産性を維持する傾向を示す。気体濃度はオンラインの蒸気画分分析器によって測定した。生成物(ポリエチレン粒子)は、製品貯蔵所に移す前に、反応器からバッチモードでパージ用容器中に取り出した。樹脂中の残留触媒及び活性剤は、生成物ドラム中で湿った窒素によるパージによって奪活した。触媒は、ステンレス鋼製注入管を通して反応器床に、所望のポリマー生産速度を維持するのに充分な速度で供給した。この一般プロセスを用いて、表1〜3に示したように条件を変えながら15通りの重合実験を行った。表4に、各試験から得られたポリエチレンの特性をまとめる。
【0058】
「C6/C2流量比(「FR」)」は、反応器に供給した1−ヘキセンコモノマーの重量対供給したエチレンの重量の比であり、C6/C2比は循環気体中の1−ヘキセンのモル気体濃度対循環気体中のエチレンのモル気体濃度の比である。C6/C2比は循環気体蒸気画分分析器から得られ、C6/C2流量比は質量流量の測定から由来する。循環気体は反応器中の気体であり、反応器周辺の再循環ループのタップから測定される。表1に報告される比は、反応器中の気体濃度からのものである。サンプルを9分ごとに採取し、従って報告されたC6/C2比は運転平均である。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
第2の試験重合
この第2の一連の実験16〜20は、上記のものと同様だが直径が14インチ(355.6mm)である連続気相流動床反応器中で、表5及び6に示したように反応器条件を多少変化させて、実施した。また、この試験におけるハフノセンは、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジフルオリドだった。実験19においては、イソペンタンを凝縮剤として添加した。さらに、実験19においては、「連続性添加剤」を反応器に連続的に添加した。この添加剤は、エトキシル化アミンタイプの化合物及びジステアリン酸アルミニウム化合物を含む。同じ触媒組成物を用いた。
【0064】
「C6/C2FR」とは、反応器に供給した1−ヘキセンコモノマーの重量対供給したエチレンの重量の比であり、C6/C2比は循環気体中の1−ヘキセンのモル気体濃度対循環気体中のエチレンのモル気体濃度の比である。C6/C2比は循環気体蒸気画分分析器から得られ、C6/C2流量比は質量流量の測定から由来する。循環気体は反応器中の気体であり、反応器周辺の再循環ループのタップから測定される。
【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
図3中のMAO/シリカ担持ビス(アルキル−シクロペンタジエニル)ジルコノセンジハライドが触媒成分である比較データに示されたように、生産されるポリマーの密度が増大する(従ってコモノマーの量が減少する)につれて、触媒組成物の生産性が劇的に低下することがわかる。従って、普通のメタロセンを用いて工業的に許容できる態様で0.930〜0.975g/cm3の範囲のポリエチレンを生産するのは困難である。本発明はこれを解決し、高コモノマー(例えば0.10のC6:C2比)(従って、例えば0.915g/cm3の低密度ポリエチレンの製造)から低コモノマー(例えば0.001のC6:C2比)又はコモノマーなし(従って、例えば0.960g/cm3の高密度ポリエチレンの製造)まで、触媒組成物生産性が比較的一定にとどまる。しかも、1つの実施態様においては、有利なことに高い嵩密度も維持され、別の実施態様においては有利なことに狭い粒子寸法分布も維持し、反応器の汚染を引き起こしてしまう「微粉」(平皿中又は200メッシュ上の粒子)はほとんどない。
【0068】
また、データから、同じ「試験」の際に同じ触媒成分を用いて移行を行うことができることもわかる。「試験」とは、所定反応器中での何時間又は何日間もの期間にわたる所定の樹脂組成物の生産実験であると当業者が理解するものを意味する。即ち、反応器は、工業的に許容できる生産性並びにポリエチレンにおける許容できる有利な嵩密度及びその他の特徴(例えば低いヘキサン抽出分及び低い残留抽出分)を維持しながら、低密度ポリエチレンの製造から中又は高密度ポリエチレンの製造に、触媒成分に取り替えることなく移行することができる。これは、樹脂製品を素早く且つ効果的に変化させることができるという点で、有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続重合反応器中で、少なくとも1300kPaの分圧のエチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.935〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含む、オレフィンの重合方法。
【請求項2】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比を変化させること、及び反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0〜0.20の範囲である時に触媒生産性が30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンが0.940〜0.975g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
反応器中に存在する水素対エチレンの比(ppmH2対モル%C2)が0〜60の範囲である時に触媒生産性が30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0.01〜0.10の範囲である時の触媒生産性が該モル比が0〜0.010の範囲である時の触媒生産性と比較して30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
反応器中のポリマーの嵩密度が、生産されて単離されるポリエチレンの勾配密度の範囲全体を通じて、少なくとも0.400g/cm3である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリエチレンが0.01〜200dg/分のメルトインデックスI2を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリエチレンが10〜50のI21/I2値を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ポリエチレンが2〜15の分子量分布を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ハフノセンが次式:
CpnHfXp
(ここで、nは1又は2であり、
pは1、2又は3であり、
各Cpは独立的にハフニウムに結合したシクロペンタジエニルリガンド又はシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド又はそれらの置換体であり;
Xはヒドリド、ハライド、C1〜C10アルキル及びC2〜C12アルケニルより成る群から選択され;
nが2である場合、各Cpは、C1〜C5アルキレン、酸素、アルキルアミン、シリル−炭化水素及びシロキシル−炭化水素より成る群から選択される架橋基Aを介して互いに結合していることができる)
を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
Xがクロリド、フルオリド、C1〜C5アルキル及びC2〜C6アルキレンより成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一緒にする工程を1つ以上のスラリー反応器、1つ以上の気相反応器又はそれらの組合せの中で行う、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ポリエチレンが回転成形又は射出成形法によって物品に成形されるものである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ポリマー粒子を含む重合反応器中で、エチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを、10000kPaより低い圧力において一緒にし;0.935〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンポリマー粒子を単離することを含むオレフィン重合方法であって、
前記ポリマー粒子の嵩密度が0.40g/cm3より高く;前記密度範囲内の樹脂を生産する時に触媒組成物を変化させない、前記オレフィン重合方法。
【請求項15】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比を変化させること、及び反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0〜0.20の範囲である時に触媒生産性が30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエチレンポリマー粒子が0.940〜0.975g/cm3の範囲の密度を有する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0.01〜0.10の範囲である時の触媒生産性が該モル比が0〜0.010の範囲である時の触媒生産性と比較して30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
反応器中に存在する水素対エチレンの比(ppmH2対モル%C2)が0〜60の範囲である時に触媒生産性が30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
重合反応器が連続気相流動床反応器である、請求項14〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
連続重合反応器中でエチレン及び随意としての1種以上のα−オレフィンとハフノセンを含む触媒組成物とを10000kPaより低い圧力において一緒にし;そして0.935〜0.975g/cm3の範囲の密度を有するポリエチレンを単離することを含むオレフィン重合方法であって、
ハフノセンが次式:
(CpR5)2HfX2
(ここで、各Cpはシクロペンタジエニルリガンドであってそれぞれハフニウムに結合し;
各Rは独立的にヒドリド及びC1〜C10アルキル、特に好ましくはヒドリド及びC1〜C5アルキルから選択され;
Xはヒドリド、ハライド、C1〜C10アルキル及びC2〜C12アルケニルより成る群から選択され;
少なくとも1個のR基はアルキルである)
で表わされる、前記重合方法。
【請求項21】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比を変化させること、及び反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0〜0.20の範囲である時に触媒生産性が30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエチレンが0.940〜0.975g/cm3の範囲の密度を有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
反応器中に存在するα−オレフィン対エチレンのモル比が0.01〜0.10の範囲である時の触媒生産性が該モル比が0〜0.010の範囲である時の触媒生産性と比較して30%以上変化しないことをさらに特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
触媒生産性が質量収支法によって測定される、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
触媒生産性が熱収支法によって測定される、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
触媒生産性がX線蛍光分析(XRF)法によって測定される、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−251172(P2012−251172A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215196(P2012−215196)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−516881(P2008−516881)の分割
【原出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】