単極モータを用いた内蔵型流体混合装置
本発明は単極モータ(110)を有する流体置換装置(100)に関する。単極モータは、少なくとも1つの流体置換構造(120)が配置された回転可能な円板(115)を含んでいる。この流体置換構造は翼板とし得る。回転可能な円板は、例えばセラミック基板、液晶高分子基板、又は半導体基板などの基板(105)に形作られた空洞(145)内に配置されている。回転可能な円板の回転速度を制御するために閉ループ制御回路(235)が含められ得る。例えば、この制御回路は、回転可能な円板に電圧を印加する電圧源又は電流源を制御する。この制御回路はまた、回転可能な円板の回転軸(155)に実質的に整合された磁場(205)を印加する磁石(210)の強度を制御し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単極モータを用いた内蔵型流体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術が進歩するにつれ、最近の電子機器のクロック速度は増大し続け、機器部品によってますます多くの熱量が発生されるに至っている。さらに、現在、マイクロセルと呼ばれる非常に小型の燃料電池を可搬式電子機器に適応する努力が払われている。例えば、マイクロセルはまもなくノート型コンピュータ及び携帯電話に電力供給するために使用されるようになると予想されている。しかし、マイクロセルは熱を発生するため、このような電子機器で生成される熱の全体量を更に増すものである。その一方で、回路配置と機器のパッケージとは縮小を続けている。故に、最新の回路設計は熱管理に関する数多くの設計課題に直面している。
【0003】
ファンは、熱を電子機器内に放散するために頻繁に使用される方策である。しかしながら、このようなファンはむしろ大きくなる傾向にあり、機器内の貴重な空間を占有してしまう。さらに、ファンはしばしば信頼性が低く、時にして、その他の如何なる機器部品より早く故障してしまうことが判明している。ある一部の例では、実際に、ファンの故障に起因する熱放散の喪失によって他の機器部品が過熱して故障してしまう。従って、最新の電子機器において熱を放散させるために、小型で信頼性のある熱管理の方策が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小型で信頼性のある、単極モータを有する流体置換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は単極モータを有する流体置換装置に関する。単極モータは、少なくとも1つの例えば翼板などの流体置換構造が配置された回転可能な円板を含んでいる。回転可能な円板は、例えばセラミック基板、液晶高分子基板、又は半導体基板などの基板に形作られた空洞内に少なくとも部分的に配置されている。回転可能な円板の回転速度を制御するために閉ループ制御回路が含められ得る。例えば、この制御回路は、回転可能な円板に電圧を印加する電圧源又は電流源を制御する。この制御回路はまた、回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場を印加する磁石の強度を制御し得る。
【0006】
回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場の存在下で、回転可能な円板の中心部と径方向端部との間に電圧が印加される。回転可能な円板は、その上に配置された少なくとも1つの、例えば翼板などの、流体置換部材を有する。流体置換速度を変えるために、回転可能な円板の回転速度が選択的に制御される。例えば、制御回路が、回転可能な円板に電圧を印加する電圧源又は電流源を制御する。制御回路はまた磁場の強度を制御し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、基板に内蔵された流体置換装置(流体混合機)に関する。従って、流体混合機は微小電気機械システム(MEMS)装置として製造され得る。この流体混合機は熱発生装置に近接して組み込まれ、その装置の周りの対流電流の流れを高めるために使用されることが可能であり、それにより、機器の熱放散を改善する薄型の方策が提供される。従って、さもなければ必要とされる大きい冷却ファンの使用が回避される。他の一構成においては、流体混合機は流体を混合するためにマイクロ流体系の基板に内蔵されることができる。故に、外部混合装置の使用が回避され得る。
【0008】
流体混合機は独立型の装置としてもよいし、一層と大きいシステムに効果的に統合されてもよい。このような一層と大きいシステムには、電子機器、燃料電池、流体系、又は基板を有する他の如何なる装置も含まれ得る。重要なことには、本発明は如何なる特定種類の装置にも限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明に従った流体混合機100の透視図を示している。流体混合機100は様々な基板の何れともし得る基板105上に製造可能である。例えば、流体混合機100は液晶高分子(LCP)、セラミック、シリコン、ガリウム砒素、ガリウムナイトライド、ゲルマニウム又はインジウム燐から成る基板上に製造可能である。なお、本発明はそのように限定されるものではなく、微小電気機械製造プロセスに適した如何なる基板材料も使用され得る。
【0010】
流体混合機100は、導電性の回転可能な円板115(以下、円板)を具備する微小電気機械単極モータ(以下、単極モータ)110を有している。円板115には、少なくとも1つの流体置換構造が配置される。この流体置換構造は、円板115によって移動可能であり流体を置換するのに適した如何なる構造ともし得る。例えば、流体置換構造(翼板)200が、円板115が回転するときにこの翼板120が流体を混合するように、回転可能な円板115に配置される。例えば、翼板120は円板115の上表面125から上方に延在し得る。翼板120は円板115と一体に形成されてもよいし、接着剤、ファスナー、溶接、又は他の如何なる好適な取付け手段を介して円板に取り付けられてもよい。翼板120は円板115の中心部130から円板115の外側の周辺領域135まで延在し得る。一構成において、翼板120は円板115の中心部130から放射状に直線的に延在し得る。しかしながら、本発明はそのように限定されるものではない。例えば、翼板120は湾曲し、角を為し、あるいは他の如何なる所望形状を有してもよい。さらに、複雑な機械構成を有する流体置換構造が設けられ得る。例えば、翼板120は、流体混合機100が使用される用途において流体置換を最適化するように構成された複数の湾曲した、且つ/或いは角を為した部分を含み得る。
【0011】
翼板120に加え、あるいは翼板120に代えて、その他の種類の流体置換構造が設けられてもよい。例えば、流体置換構造は円板115の上表面125に配置された複数の波状部、及び/又は隆起部を有してもよい。なお、この他にも使用可能な多くの流体置換構造が存在し、本発明はこのように限定されるものではない。
【0012】
円板115は、例えば基板105内に形作られた空洞145内など、基板105の表面140に近接して配置され得る。重要なことには、空洞145は実質的に円形、正方形、長方形、又はその他任意の所望形状である形状を有し得る。とは言うものの、本発明を実施する上で空洞は必ずしも必要ではない。例えば、円板115は基板105の表面140上に配置されてもよい。
【0013】
一構成において、円板115は、円板115の中心軸155の周りの回転を容易にし、円板115を適切な動作位置に維持する駆動軸(axle)150を具備し得る。とは言うものの、同様に他の構成が設けられてもよい。例えば、他の一構成においては、円板115を空洞145内に維持する低摩擦の周囲表面を用いて構築され得る。更に他の一構成においては、円板115の中心軸155の位置に孔が設けられ得る。この孔は、円板115の動作位置を維持するように、例えば軸受などの円筒形の構造に適合し得る。
【0014】
動作時、円板115の回転により、例えば翼板120などの流体置換構造が中心軸155の周りを回転させられ、流体媒質中を翼板120が動かされる。従って、翼板120によって流体が置換され得る。例えば、翼板120の動作によって、2つ以上の流体の混合が促進され得る。翼板120の動作はまた、流体が表面を流れる境界層を分断し、対流熱伝達を促進することができる。
【0015】
図2は、図1の流体混合機100の、破線2−2に沿ってとられた断面を示している。回転可能な円板115は、磁力線205によって例示された磁場内に置かれている。磁場は典型的には円板115の表面125に垂直であり、円板の回転軸155に整合されている。磁場205を生成するために、1つ又は複数の磁石210が円板115の上、及び/又は下に設けられ得る。磁石210は永久磁石及び/又は電磁石を含み得る。
【0016】
第1の接触ブラシ215は、円板の中心軸155に近接する中心部130近傍で円板115に接触することができる。第2の接触ブラシ220は、第1の接触ブラシ215から径方向に隔てられ、円板115の径方向端部225に接触することができる。第2の接触ブラシ220は単一の点で径方向端部225に接触してもよいし、径方向端部225全体の下又は周りの周辺にわたって延在してもよい。
【0017】
一構成において、接触ブラシ(図示せず)が駆動軸150に接触するように設けられ得る。更なる接触ブラシも設けられ得る。例えば、接触ブラシは径方向端部225の複数箇所に接触するように、間隔を空けて円形パターンに配置され得る。同様に、接触ブラシは、複数箇所で中心部130に接触して中心部130に連続した周辺接触表面を形成するように、あるいは駆動軸150に接触するように、円板115の中心部130近傍に間隔を空けて配置され得る。
【0018】
接触ブラシ215と220との間に電圧が印加されると、円板115に電流が流されることになり、磁力が移動電荷に作用する。そして、移動電荷が円板115に力を及ぼし、それにより円板115が回転することになる。回転方向は、例えば、円板115の中心部130から径方向端部225に向かって電流が流れるのか、その逆なのかなど、円板115を流れる電流の方向に依存する。従って、導電性円板115の回転方向を変えたいときには、印加電圧の極性を変えればよい。
【0019】
さらに、円板115の回転速度を監視するためにセンサー230が設けられ得る。例えば、センサー230は、回転速度を制御する閉ループ制御系235に動作可能に接続され得る。このようなセンサーは当業者には既知である。センサーは、例えば、円板115が回転するときに円板115上の1つ又は複数のマークを読み取る光センサーとし得る。他の一構成においては、センサーは円板が回転するときに翼板がセンサーを通る度に信号を生成する。連続したマーク読み取り間の(又は、翼板がセンサーを通る間の)時間が測定され、円板115の回転速度に関連付けられ得る。なお、当業者には円板の回転速度を測定したり、取得したりするのに使用可能なセンサーは、この他にも無数に知られており、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
回転速度をどのように決定するかに拘わらず、制御系235は円板115に電圧を印加する電圧源及び/又は電流源240を制御することによって円板115の回転速度を制御することが可能である。制御系235はまた磁石210の磁場強度205を制御することによって回転速度を制御することが可能である。例えば、磁石210が電磁石を有する場合、電磁石を流れる電流が調節され得る。
【0021】
図3A乃至3Cは、セラミック基板に流体混合機を製造するために使用可能な製造プロセスを表している。とは言うものの、図3A乃至3Cに表された構造は、例えばLCP基板などの他の種類の基板を用いて流体混合機を製造するためにも使用され得るものである。しかしながら、当業者に知られるように、ラミネート加工及びキュア処理は基板の種類毎に異なり得る。
【0022】
使用可能なLCP基板の1つは、ロジャース社から入手可能なR/flex(登録商標)3000シリーズのLCP回路材料である。R/flex(登録商標)3000のLCPは低損失正接性及び低吸湿性を有し、安定な電気的、機械的、及び寸法的な特性を維持する。R/flex(登録商標)3000のLCPは50μmの標準厚さで入手可能であるが、その他の厚さも同様に提供され得る。
【0023】
使用可能なセラミック基板の1つは、デュポン社からの低温951同時焼成グリーンテープ(登録商標)である。951同時焼成グリーンテープ(登録商標)はAu及びAgと相性が良く、熱膨張係数(TCE)及び相対的強弱度に関して許容可能な機械的特性を有している。114μmから254μmの範囲の厚さで入手可能である。その他の類似の系統には、W.C.Heraeus社からのCT2000、及びフェロ社からのA6S型LTCCとして知られる材料がある。これらの材料の何れも、様々な電気特性を有する他の多様なLTCC材料と同様に使用可能である。
【0024】
図3Aを参照するに、第1の基板層302が設けられる。基板層の各々で使用される基板材は、製造プロセスで使用される前に前処理される。例えば、基板がセラミックである場合、セラミック材は適当な温度で所定時間にわたってベークされ、あるいは所定時間にわたって窒素乾燥ボックス内に入れられる。一般的な前処理サイクルは160℃で20-30分、又は窒素乾燥ボックス内で24時間である。何れの前処理プロセスもセラミック基板の分野で周知である。
【0025】
第1の基板層302が前処理されると、基板層を貫通して導電性を提供するために、導電性ビア320が第1の基板層302に形成される。基板に導電性ビアを形成することには、多くの技術が利用可能である。例えば、ビアは基板への機械的な孔開け、又は孔のレーザカットによって形成され得る。そして、この孔は、例えば従来からの厚膜スクリーンプリンタ、又は押し出しビアフィラーによって、導電体で充たされる。ビアの充填を支援するため、多孔質の石材を介して第1の基板層302に真空が適用される。第1の基板層302に導電性ビア320が形成されると、この導電体はボックスオーブン内にて適当な温度で適当な時間にわたって乾燥される。例えば、一般的な乾燥プロセスは、導電体を具備するセラミック基板を160℃で5分間ベークすることである。
【0026】
ビア内の導電性フィラーが乾燥された後、第1の導電性回路配線325及び第2の導電性回路配線330が設けられる。回路配線325、330は第1の基板層302に、例えば標準乳剤厚膜スクリーン等の従来からの厚膜スクリーンプリンタを用いて堆積される。一構成において、回路配線325、330は第1の基板層302の反対側に堆積され、第1の回路配線325は導電性ビア320に電気的に接触する。第2の回路配線330は導電性ビア320の周りに同心で延在する。とは言うものの、当業者に知られるように、無数の他の回路配置が設けられ得る。ビア充填プロセスと同様に、回路配線が第1の基板層302に設けられると、これらの回路配線はボックスオーブン内にて適当な温度で適当な時間にわたって乾燥される。
【0027】
適当な前処理と回路配線及び/又はビアフィラーの乾燥との後、続く基板層が第1の基板層302に積層される。具体的には、第2の基板層304が第1の基板層302に積層される。第2の基板層304は第1の基板層302の頂部の回路配線を絶縁する。第2の基板層はまたビア335、340を有し、これらのビアは、それぞれ、軸接触ブラシ345及び少なくとも1つの径方向の接触ブラシ350を形成するように材料で充たされる。これらのビアは、接触ブラシがそれぞれの回路配線325、330と電気的に接続されるように配置される。一構成において、複数の径方向接触ブラシ350、又は連続的な径方向端部接触ブラシが同心に、且つ軸接触ブラシ345から一様な半径位置に配置され、導電体とブラシとの間の正味の接触抵抗を低減する。
【0028】
接触ブラシは、例えば導電性エポキシ、導電性高分子、カーボンナノ複合体又は導電性液体などの、接触ブラシでの使用に適した如何なる導電性材料をも含み得る。接触ブラシがカーボンナノ複合体などの固体材料である場合、接触ブラシは第2の基板層304内のビアに、従来からの厚膜スクリーンプリンタを用いてスクリーン印刷され得る。接触ブラシとして導電性液体が使用される場合、磁場がビア335、340内の導電性液体を包含するように、強磁性が導電性液体に組み込まれ得る。一構成において、軸接触ブラシ345はビア335の一部のみを充たし、接触ブラシ345の頂部表面は第2の基板層304の上表面より下に置かれている。従って、ビア335は軸受としても機能する。
【0029】
第3の基板層306が第2の基板層304上に積層される。第3の基板層306は、ビア350の外側の半径(各ビアの、ビア335から最も離れた部分)に整合された径方向端部365を有する開口360を組み込んでいる。第4の基板層308が第1の基板層302の下に積層され、第1の基板層302の下表面370の回路配線を絶縁する。さらに、第5の基板層310が第4の基板層308の下に積層される。第5の基板層310はまた外側半径380を有する開口375を含んでいる。
【0030】
ある場合には、基板層302、304、306、308、310の1つ又は複数の少なくとも一方の面に導電性の接地面(図示せず)を含むことも望ましい。例えば、ある基板層の表面にRF回路が形成される場合、接地面が使用される。導電性の接地面はまた、RFへの露出から部品を遮蔽するためや、その他広範な目的のためにも使用され得る。導電性金属の接地面が、基板と相性の良い導電性金属から形成され得る。なお、当業者に認識されるように、この接地面は本発明の目的では不要である。
【0031】
図3Bを参照するに、最初の5層である302、304、306、308、310は積層されて、基板構造385を形成する。重要なことには、ここで提示された層体系は単に例示である。より多数又は少数の基板層が用いられてもよい。特に、基板層の各々は更に、各層を形成するように積層された複数のサブレイヤーを有してもよい。
【0032】
基板構造385を形成するように基板層が積層されると、基板構造385が多様なラミネーション法によってラミネート加工される。1つの方法では、基板層は積層され、加熱された圧盤を用いて油圧で押し当てられる。例えば、一軸ラミネーション法は70℃に加熱された圧盤を用いて3000psiで10分間、基板層を一緒に押し当てる。最初の5分経過後に基板層は165°回転させられる。等方(isotatic)ラミネーション法では、基板層はプラスチックバッグ内に真空封止された後、温水を用いて押し当てられる。この場合の時間、温度、及び圧力は一軸ラミネーション法で使用されるのと同一とし得るが、5分後の回転は不要である。ラミネーション加工されると、構造385は平坦なタイル上の窯の内部で焼成される。例えば、基板層は200℃から500℃の間で1時間ベークされ、850℃と875℃との間のピーク温度が15分より長く加えられる。焼成プロセスの後、基板層に焼成後処理が施される。
【0033】
図3Cを参照するに、開口360によって形成された空洞145内に円板115が設置される。円板115は、例えばアルミニウム、銅、黄銅、銀、金、鋼鉄、ステンレス鋼、又は他の任意の硬い導電性材料などの、導電体を有し得る。他の一構成においては、円板115は複数の材料、例えば、セラミック等の硬い材料にラミネート加工された半硬質の導電体、を有し得る。円板115は、下表面392に軸方向に配置された中心コンタクト390、及び同じく下表面392に配置された少なくとも1つの径方向のコンタクト395を有している。一構成において、径方向のコンタクト395は円板115の下側周辺領域397の周りに延在している。円板115は第2の基板層304の上に配置され、その結果、中心コンタクト390は軸接触ブラシ345と電気的に接触し、径方向コンタクト395は径方向端部の接触ブラシ350と電気的に接触している。従って、接触ブラシ345、350間に電圧が印加されると、中心部130と径方向端部225との間を電流が流れることができる。ビア335の径方向の壁398は円板115の中心コンタクト390に対する軸受面として機能し得る。他の例では、径方向の壁398と中心コンタクト390との間に軸受(図示せず)が組み込まれる。軸受は、例えば、電磁ベアリング又は静電ベアリングとし得る。
【0034】
上述のように、円板115の動作を制御する制御回路で使用するためにセンサー230が設けられ得る。センサー230は、円板115の回転速度を測定するのに適した如何なる位置に配置されてもよい。当業者に知られるように、センサーのデータを伝播するために、必要に応じて、回路配線が設けられる。
【0035】
1つ又は複数の磁石が円板115の上、及び/又は下に固定され、円板115の回転軸に整合された磁場を供給する。例えば、磁石210が、円板115の下表面392から間隔を空けて配置されるように、例えば開口375内など、基板構造385の底部に取り付けられる。とは言うものの、本発明はこの点に限定されるものではない。例えば、磁石210は円板115の上表面125から間隔を空けて配置されてもよい。磁石210は、例えば磁石材料から形成された磁石などの永久磁石とし得る。例えば、磁石210はフェライト、ネオジム、アルニコ、セラミック、及び/又は磁場を発生するために使用可能な他の如何なる材料からも作成され得る。
【0036】
磁石210はまた、例えば電磁石などの非永久磁石としてもよい。他の一構成においては、この磁石は1つ又は複数の永久磁石と1つ又は複数の非永久磁石との組み合わせ、例えば、1つ又は複数の磁石材料層に隣接する電磁石とし得る。上述のように、電磁石によって発生される磁場の強度は、この電磁石の導体を流れる電流を変化させることによって変えられることができ、このことは円板115の回転量を制御する更なる手段をもたらすものである。
【0037】
他の典型的な一実施形態においては、流体混合機100は、例えばポリシリコン微細加工プロセスを用いてシリコン基板などの半導体基板に製造される。ポリシリコンの微細加工はマイクロマシニング分野において周知である。このようなプロセスの1つがDavid A. Koester等の「MUMPs Design Handbook(Rev.7.0、2001年)」にて開示されている。典型的なポリシリコン微細加工プロセスが図4A乃至4Iに示されている。しかしながら、本発明はここで開示されるプロセスに限定されるものではなく、他の半導体微細加工プロセスも使用可能である。
【0038】
図4Aを参照するに、第1のシリコン基板層(以下、第1シリコン層)402が設けられて、流体混合機構造400の形成が開始される。第1シリコン層402は、例えばIC製造で一般的に使用されるシリコンウェハである。ある場合には、第1シリコン層402は電気的絶縁性を有することが望ましい。従って、第1シリコン層402はドーピングしないか、軽くドーピングするのみかで形成され得る。
【0039】
例えばドーピングされたポリシリコン又はアルミニウムの層といった導電層が第1シリコン層402上に堆積される。この導電層の堆積後、既知のリソグラフィ及びエッチング技術を用いて導電性の回路配線404が定められる。なお、導電性の配線404を形成するために使用される導電層を堆積するのに先立って、例えば窒化シリコン(SiN)等の絶縁層(図示せず)を第1シリコン層402上に堆積することが有利な場合がある。
【0040】
回路配線が形成された後、ポリ第1シリコン層402上に絶縁層406が低圧化学気相堆積(LPCVD)を用いて堆積される。そして、例えばエッチング技術を用いて、絶縁層406に内側ビア408、及び外側ビア410が形成される。この絶縁層が回路配線を覆うように設けられる場合、この絶縁層もまたビア408、410の位置でエッチングされるべきである。
【0041】
内側ビア408及び外側ビア410は導電性材料(例えば、アルミニウム)で充填され、所望の位置で回路配線404と電気的に接触する。そして、内側ビア408上に軸接触ブラシ412が堆積され、外側ビア410上に径方向端部接触ブラシ414が堆積され、その結果、接触ブラシ412及び414は、それぞれのビア408及び410と関連する回路配線404とに電気的に接続される。2つの軸接触ブラシ412及び2つの径方向端部接触ブラシ414が図示されているが、更なる軸接触ブラシ及び径方向端部接触ブラシが設けられてもよい。さらに、接触ブラシは接触ブラシでの使用に適した如何なる導電体、例えば、当業者に広く知られたサーモスプレー法を用いて塗布可能なカーボンナノ複合体を含んでもよい。他の一構成においては、接触ブラシは導電性液体とし得る。
【0042】
ポリシリコンの第1の構造層(以下、ポリ1層)416が、LPCVDを用いて絶縁層406上に堆積される。そして、ポリ1層416は、接触ブラシ412、414を露出させる径方向の開口418を形成するようにエッチングされる。他の一構成においては、開口418の領域はポリ1層416を設けることに先立ってマスクされ、それによって、この開口418の領域への堆積が回避される。
【0043】
図4Bを参照するに、例えば二酸化シリコン(SiO2)又はリンシリケートガラス(PSG)等の、第1の犠牲層420が基板の既設の層上に設けられる。第1の犠牲層420はプロセスの最後に除去され得る。この犠牲層はLPCVDによって堆積され、回路にアニールされ得る。図4Cを参照するに、その後、第1の犠牲層420は平坦化エッチバック処理を用いて開口418内で平坦化され、第1の犠牲層420の高位部424から凹まされた、開口418内の平坦な底面422が形成される。
【0044】
図4Dを参照するに、その後、開口418内に導体が堆積され、対向する上表面428と下表面430、軸部432、及び径方向端部434を有する円板426が形成される。さらに、円板426に接触する部材が第1の犠牲層420だけとなるように、円板426は開口418内に完全に格納される。円板426の厚さは第1の犠牲層420の厚さとエッチバック量とによって決定される。重要なことには、例えば剛性などの機械的特性は、円板426の厚さを選定するときに考慮されるべきである。
【0045】
図4Eを参照するに、第2の犠牲層436が基板の既設の層を覆うように設けられる。この場合も、第2の犠牲層436はLPCVDによって堆積され、回路にアニールされ得る。また、第2の犠牲層436はプロセスの最後に除去され得る。犠牲層436の翼板部438がエッチング除去され、円板426の軸部432から円板426の径方向端部434に放射状に延在する円板領域が露出される。そして、図4Fに示されるように、翼板部438内に導体が堆積され、円板426に付着された翼板440が形成される。
【0046】
図4Gを参照するに、その後、円板426の内側領域、及び第1及び第2の犠牲層420、436を貫通して開口部442がエッチングされ、それにより、円板426の中心の下の絶縁層406の領域448が露出される。例えば反応性イオンエッチング(RIE)、プラズマエッチング等の、既知のエッチング技術が使用され得る。ここで、第1の開口部442は、対向する軸接触ブラシ412間の半径距離以下の半径を有する孔を円板426に形成するような大きさにされる。
【0047】
そして、第3の犠牲層444が、円板426、翼板440、及び開口部442によって形成された径方向の壁446を覆うように設けられる。絶縁層406の領域448は、第3の犠牲層444を設ける際にマスクされ、領域448で第3の犠牲層444が絶縁層406に付着することが回避されるべきである。他の例では、領域448から第3の犠牲層を除去するように、続いてエッチング処理が実行される。
【0048】
図4Hを参照するに、LPCVDを用いてポリシリコンの第2の層(以下、ポリ2層)450が既設の層、例えば、第3の犠牲層444、を覆うように堆積され、それにより、更なるシリコン構造が追加される。ここで、ポリ2層450はまた開口部442を充填する。また、ポリ2層450は円板426の内側半径454より大きい外側半径452を有するように形成される。従って、ポリ2層450は絶縁層406の領域448から上方に延在する“T”字状断面を有するように形成され、それにより、犠牲層が除去されたときに円板426の縦方向の動きを制限する。さらに、ポリ2層は、その周りを円板426が回転する軸受として機能する。他の例では、第1の開口部442内に電磁ベアリング又は静電ベアリングが設けられてもよい。
【0049】
そして、第1、第2及び第3の犠牲層420、436、444が、例えばフッ化水素(HF)溶液を用いて、流体混合機構造400から放出される。このようなプロセスは当業者に既知である。例えば、流体混合機構造400はHF溶液に軽く浸される。HFはシリコン又はポリシリコンには攻撃しないが、SiO2を素早くエッチングする。ここで、HFは堆積されたSiO2をSiNより約100倍速くエッチングすることができる。
【0050】
図4Iを参照するに、犠牲層の放出により、円板426の下部430が軸接触ブラシ412及び径方向端部接触ブラシ414の上に置かれ、それらと電気的に接触することが可能になる。そして、円板426は翼板440とともに自身の軸の周りを自由に回転することができる。一構成において、T字状のポリ2層450と円板426との間にガスケット456が配置され、接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置が維持される。例えば、ガスケット456は例えばベンゾシクロブテンに基づく高分子、ポリイミド、又はSU-8等の、感光性高分子を有し得る。このような高分子は商業的に入手可能である。例えば、SU-8はマイクロケム社から商業的に入手可能である。デュポン社から入手可能なテフロン(登録商標)及びヴェスペルもまたガスケット456に使用可能な材料である。
【0051】
他の一構成においては、平衡部材(standoff)を具備するフレームワークが絶縁層406、及び/又はポリ1層416に取り付けられ得る。平衡部材は接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置を維持することができる。平衡部材は感光性高分子、テフロン(登録商標)又はヴェスペルを有し得る。さらに、フレームワークは流体が流れ得るように孔を開けられ得る。他の例では、円板426及び翼板440の回転によって発生される空気力により、接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置が維持され得る。
【0052】
磁石460が円板426の上方、及び/又は下方に固定され、円板426の回転軸に整合された磁場を供給する。例えば、磁石460は円板426の下方の第1の基板層に取り付けられ得る。上述のように、磁石は永久磁石、非永久磁石、又は永久磁石と非永久磁石との組み合わせとし得る。これまた上述のように、円板の回転速度を監視するためにセンサー458も設けられ得る。
【0053】
図5は、本発明に係る方法を理解するのに有用なフローチャート500を示している。工程505にて始まり、基板に空洞が形成される。工程510へと進み、空洞内の基板に接触ブラシが形成される。少なくとも1つの接触ブラシが空洞の中心部に近接して配置され、且つ少なくとも1つの接触ブラシが空洞の径方向端部に近接して配置される。工程515へと続き、軸部及び径方向端部を有する導電性の円板が空洞内に配置される。導電性円板上には流体置換構造が配置される。導電性円板は接触ブラシと電気的に接触するように配置される。工程520を参照するに、基板に磁石が配置され、導電性円板の回転軸に整合された磁場が規定される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の理解のために有用な、流体混合機を示す透視図である。
【図2】破線2−2に沿って取られた、図1の流体混合機の断面図である。
【図3A】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図3B】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図3C】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4A】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4B】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4C】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4D】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4E】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4F】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4G】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4H】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4I】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図5】本発明の理解のために有用なフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単極モータを用いた内蔵型流体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術が進歩するにつれ、最近の電子機器のクロック速度は増大し続け、機器部品によってますます多くの熱量が発生されるに至っている。さらに、現在、マイクロセルと呼ばれる非常に小型の燃料電池を可搬式電子機器に適応する努力が払われている。例えば、マイクロセルはまもなくノート型コンピュータ及び携帯電話に電力供給するために使用されるようになると予想されている。しかし、マイクロセルは熱を発生するため、このような電子機器で生成される熱の全体量を更に増すものである。その一方で、回路配置と機器のパッケージとは縮小を続けている。故に、最新の回路設計は熱管理に関する数多くの設計課題に直面している。
【0003】
ファンは、熱を電子機器内に放散するために頻繁に使用される方策である。しかしながら、このようなファンはむしろ大きくなる傾向にあり、機器内の貴重な空間を占有してしまう。さらに、ファンはしばしば信頼性が低く、時にして、その他の如何なる機器部品より早く故障してしまうことが判明している。ある一部の例では、実際に、ファンの故障に起因する熱放散の喪失によって他の機器部品が過熱して故障してしまう。従って、最新の電子機器において熱を放散させるために、小型で信頼性のある熱管理の方策が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小型で信頼性のある、単極モータを有する流体置換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は単極モータを有する流体置換装置に関する。単極モータは、少なくとも1つの例えば翼板などの流体置換構造が配置された回転可能な円板を含んでいる。回転可能な円板は、例えばセラミック基板、液晶高分子基板、又は半導体基板などの基板に形作られた空洞内に少なくとも部分的に配置されている。回転可能な円板の回転速度を制御するために閉ループ制御回路が含められ得る。例えば、この制御回路は、回転可能な円板に電圧を印加する電圧源又は電流源を制御する。この制御回路はまた、回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場を印加する磁石の強度を制御し得る。
【0006】
回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場の存在下で、回転可能な円板の中心部と径方向端部との間に電圧が印加される。回転可能な円板は、その上に配置された少なくとも1つの、例えば翼板などの、流体置換部材を有する。流体置換速度を変えるために、回転可能な円板の回転速度が選択的に制御される。例えば、制御回路が、回転可能な円板に電圧を印加する電圧源又は電流源を制御する。制御回路はまた磁場の強度を制御し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、基板に内蔵された流体置換装置(流体混合機)に関する。従って、流体混合機は微小電気機械システム(MEMS)装置として製造され得る。この流体混合機は熱発生装置に近接して組み込まれ、その装置の周りの対流電流の流れを高めるために使用されることが可能であり、それにより、機器の熱放散を改善する薄型の方策が提供される。従って、さもなければ必要とされる大きい冷却ファンの使用が回避される。他の一構成においては、流体混合機は流体を混合するためにマイクロ流体系の基板に内蔵されることができる。故に、外部混合装置の使用が回避され得る。
【0008】
流体混合機は独立型の装置としてもよいし、一層と大きいシステムに効果的に統合されてもよい。このような一層と大きいシステムには、電子機器、燃料電池、流体系、又は基板を有する他の如何なる装置も含まれ得る。重要なことには、本発明は如何なる特定種類の装置にも限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明に従った流体混合機100の透視図を示している。流体混合機100は様々な基板の何れともし得る基板105上に製造可能である。例えば、流体混合機100は液晶高分子(LCP)、セラミック、シリコン、ガリウム砒素、ガリウムナイトライド、ゲルマニウム又はインジウム燐から成る基板上に製造可能である。なお、本発明はそのように限定されるものではなく、微小電気機械製造プロセスに適した如何なる基板材料も使用され得る。
【0010】
流体混合機100は、導電性の回転可能な円板115(以下、円板)を具備する微小電気機械単極モータ(以下、単極モータ)110を有している。円板115には、少なくとも1つの流体置換構造が配置される。この流体置換構造は、円板115によって移動可能であり流体を置換するのに適した如何なる構造ともし得る。例えば、流体置換構造(翼板)200が、円板115が回転するときにこの翼板120が流体を混合するように、回転可能な円板115に配置される。例えば、翼板120は円板115の上表面125から上方に延在し得る。翼板120は円板115と一体に形成されてもよいし、接着剤、ファスナー、溶接、又は他の如何なる好適な取付け手段を介して円板に取り付けられてもよい。翼板120は円板115の中心部130から円板115の外側の周辺領域135まで延在し得る。一構成において、翼板120は円板115の中心部130から放射状に直線的に延在し得る。しかしながら、本発明はそのように限定されるものではない。例えば、翼板120は湾曲し、角を為し、あるいは他の如何なる所望形状を有してもよい。さらに、複雑な機械構成を有する流体置換構造が設けられ得る。例えば、翼板120は、流体混合機100が使用される用途において流体置換を最適化するように構成された複数の湾曲した、且つ/或いは角を為した部分を含み得る。
【0011】
翼板120に加え、あるいは翼板120に代えて、その他の種類の流体置換構造が設けられてもよい。例えば、流体置換構造は円板115の上表面125に配置された複数の波状部、及び/又は隆起部を有してもよい。なお、この他にも使用可能な多くの流体置換構造が存在し、本発明はこのように限定されるものではない。
【0012】
円板115は、例えば基板105内に形作られた空洞145内など、基板105の表面140に近接して配置され得る。重要なことには、空洞145は実質的に円形、正方形、長方形、又はその他任意の所望形状である形状を有し得る。とは言うものの、本発明を実施する上で空洞は必ずしも必要ではない。例えば、円板115は基板105の表面140上に配置されてもよい。
【0013】
一構成において、円板115は、円板115の中心軸155の周りの回転を容易にし、円板115を適切な動作位置に維持する駆動軸(axle)150を具備し得る。とは言うものの、同様に他の構成が設けられてもよい。例えば、他の一構成においては、円板115を空洞145内に維持する低摩擦の周囲表面を用いて構築され得る。更に他の一構成においては、円板115の中心軸155の位置に孔が設けられ得る。この孔は、円板115の動作位置を維持するように、例えば軸受などの円筒形の構造に適合し得る。
【0014】
動作時、円板115の回転により、例えば翼板120などの流体置換構造が中心軸155の周りを回転させられ、流体媒質中を翼板120が動かされる。従って、翼板120によって流体が置換され得る。例えば、翼板120の動作によって、2つ以上の流体の混合が促進され得る。翼板120の動作はまた、流体が表面を流れる境界層を分断し、対流熱伝達を促進することができる。
【0015】
図2は、図1の流体混合機100の、破線2−2に沿ってとられた断面を示している。回転可能な円板115は、磁力線205によって例示された磁場内に置かれている。磁場は典型的には円板115の表面125に垂直であり、円板の回転軸155に整合されている。磁場205を生成するために、1つ又は複数の磁石210が円板115の上、及び/又は下に設けられ得る。磁石210は永久磁石及び/又は電磁石を含み得る。
【0016】
第1の接触ブラシ215は、円板の中心軸155に近接する中心部130近傍で円板115に接触することができる。第2の接触ブラシ220は、第1の接触ブラシ215から径方向に隔てられ、円板115の径方向端部225に接触することができる。第2の接触ブラシ220は単一の点で径方向端部225に接触してもよいし、径方向端部225全体の下又は周りの周辺にわたって延在してもよい。
【0017】
一構成において、接触ブラシ(図示せず)が駆動軸150に接触するように設けられ得る。更なる接触ブラシも設けられ得る。例えば、接触ブラシは径方向端部225の複数箇所に接触するように、間隔を空けて円形パターンに配置され得る。同様に、接触ブラシは、複数箇所で中心部130に接触して中心部130に連続した周辺接触表面を形成するように、あるいは駆動軸150に接触するように、円板115の中心部130近傍に間隔を空けて配置され得る。
【0018】
接触ブラシ215と220との間に電圧が印加されると、円板115に電流が流されることになり、磁力が移動電荷に作用する。そして、移動電荷が円板115に力を及ぼし、それにより円板115が回転することになる。回転方向は、例えば、円板115の中心部130から径方向端部225に向かって電流が流れるのか、その逆なのかなど、円板115を流れる電流の方向に依存する。従って、導電性円板115の回転方向を変えたいときには、印加電圧の極性を変えればよい。
【0019】
さらに、円板115の回転速度を監視するためにセンサー230が設けられ得る。例えば、センサー230は、回転速度を制御する閉ループ制御系235に動作可能に接続され得る。このようなセンサーは当業者には既知である。センサーは、例えば、円板115が回転するときに円板115上の1つ又は複数のマークを読み取る光センサーとし得る。他の一構成においては、センサーは円板が回転するときに翼板がセンサーを通る度に信号を生成する。連続したマーク読み取り間の(又は、翼板がセンサーを通る間の)時間が測定され、円板115の回転速度に関連付けられ得る。なお、当業者には円板の回転速度を測定したり、取得したりするのに使用可能なセンサーは、この他にも無数に知られており、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
回転速度をどのように決定するかに拘わらず、制御系235は円板115に電圧を印加する電圧源及び/又は電流源240を制御することによって円板115の回転速度を制御することが可能である。制御系235はまた磁石210の磁場強度205を制御することによって回転速度を制御することが可能である。例えば、磁石210が電磁石を有する場合、電磁石を流れる電流が調節され得る。
【0021】
図3A乃至3Cは、セラミック基板に流体混合機を製造するために使用可能な製造プロセスを表している。とは言うものの、図3A乃至3Cに表された構造は、例えばLCP基板などの他の種類の基板を用いて流体混合機を製造するためにも使用され得るものである。しかしながら、当業者に知られるように、ラミネート加工及びキュア処理は基板の種類毎に異なり得る。
【0022】
使用可能なLCP基板の1つは、ロジャース社から入手可能なR/flex(登録商標)3000シリーズのLCP回路材料である。R/flex(登録商標)3000のLCPは低損失正接性及び低吸湿性を有し、安定な電気的、機械的、及び寸法的な特性を維持する。R/flex(登録商標)3000のLCPは50μmの標準厚さで入手可能であるが、その他の厚さも同様に提供され得る。
【0023】
使用可能なセラミック基板の1つは、デュポン社からの低温951同時焼成グリーンテープ(登録商標)である。951同時焼成グリーンテープ(登録商標)はAu及びAgと相性が良く、熱膨張係数(TCE)及び相対的強弱度に関して許容可能な機械的特性を有している。114μmから254μmの範囲の厚さで入手可能である。その他の類似の系統には、W.C.Heraeus社からのCT2000、及びフェロ社からのA6S型LTCCとして知られる材料がある。これらの材料の何れも、様々な電気特性を有する他の多様なLTCC材料と同様に使用可能である。
【0024】
図3Aを参照するに、第1の基板層302が設けられる。基板層の各々で使用される基板材は、製造プロセスで使用される前に前処理される。例えば、基板がセラミックである場合、セラミック材は適当な温度で所定時間にわたってベークされ、あるいは所定時間にわたって窒素乾燥ボックス内に入れられる。一般的な前処理サイクルは160℃で20-30分、又は窒素乾燥ボックス内で24時間である。何れの前処理プロセスもセラミック基板の分野で周知である。
【0025】
第1の基板層302が前処理されると、基板層を貫通して導電性を提供するために、導電性ビア320が第1の基板層302に形成される。基板に導電性ビアを形成することには、多くの技術が利用可能である。例えば、ビアは基板への機械的な孔開け、又は孔のレーザカットによって形成され得る。そして、この孔は、例えば従来からの厚膜スクリーンプリンタ、又は押し出しビアフィラーによって、導電体で充たされる。ビアの充填を支援するため、多孔質の石材を介して第1の基板層302に真空が適用される。第1の基板層302に導電性ビア320が形成されると、この導電体はボックスオーブン内にて適当な温度で適当な時間にわたって乾燥される。例えば、一般的な乾燥プロセスは、導電体を具備するセラミック基板を160℃で5分間ベークすることである。
【0026】
ビア内の導電性フィラーが乾燥された後、第1の導電性回路配線325及び第2の導電性回路配線330が設けられる。回路配線325、330は第1の基板層302に、例えば標準乳剤厚膜スクリーン等の従来からの厚膜スクリーンプリンタを用いて堆積される。一構成において、回路配線325、330は第1の基板層302の反対側に堆積され、第1の回路配線325は導電性ビア320に電気的に接触する。第2の回路配線330は導電性ビア320の周りに同心で延在する。とは言うものの、当業者に知られるように、無数の他の回路配置が設けられ得る。ビア充填プロセスと同様に、回路配線が第1の基板層302に設けられると、これらの回路配線はボックスオーブン内にて適当な温度で適当な時間にわたって乾燥される。
【0027】
適当な前処理と回路配線及び/又はビアフィラーの乾燥との後、続く基板層が第1の基板層302に積層される。具体的には、第2の基板層304が第1の基板層302に積層される。第2の基板層304は第1の基板層302の頂部の回路配線を絶縁する。第2の基板層はまたビア335、340を有し、これらのビアは、それぞれ、軸接触ブラシ345及び少なくとも1つの径方向の接触ブラシ350を形成するように材料で充たされる。これらのビアは、接触ブラシがそれぞれの回路配線325、330と電気的に接続されるように配置される。一構成において、複数の径方向接触ブラシ350、又は連続的な径方向端部接触ブラシが同心に、且つ軸接触ブラシ345から一様な半径位置に配置され、導電体とブラシとの間の正味の接触抵抗を低減する。
【0028】
接触ブラシは、例えば導電性エポキシ、導電性高分子、カーボンナノ複合体又は導電性液体などの、接触ブラシでの使用に適した如何なる導電性材料をも含み得る。接触ブラシがカーボンナノ複合体などの固体材料である場合、接触ブラシは第2の基板層304内のビアに、従来からの厚膜スクリーンプリンタを用いてスクリーン印刷され得る。接触ブラシとして導電性液体が使用される場合、磁場がビア335、340内の導電性液体を包含するように、強磁性が導電性液体に組み込まれ得る。一構成において、軸接触ブラシ345はビア335の一部のみを充たし、接触ブラシ345の頂部表面は第2の基板層304の上表面より下に置かれている。従って、ビア335は軸受としても機能する。
【0029】
第3の基板層306が第2の基板層304上に積層される。第3の基板層306は、ビア350の外側の半径(各ビアの、ビア335から最も離れた部分)に整合された径方向端部365を有する開口360を組み込んでいる。第4の基板層308が第1の基板層302の下に積層され、第1の基板層302の下表面370の回路配線を絶縁する。さらに、第5の基板層310が第4の基板層308の下に積層される。第5の基板層310はまた外側半径380を有する開口375を含んでいる。
【0030】
ある場合には、基板層302、304、306、308、310の1つ又は複数の少なくとも一方の面に導電性の接地面(図示せず)を含むことも望ましい。例えば、ある基板層の表面にRF回路が形成される場合、接地面が使用される。導電性の接地面はまた、RFへの露出から部品を遮蔽するためや、その他広範な目的のためにも使用され得る。導電性金属の接地面が、基板と相性の良い導電性金属から形成され得る。なお、当業者に認識されるように、この接地面は本発明の目的では不要である。
【0031】
図3Bを参照するに、最初の5層である302、304、306、308、310は積層されて、基板構造385を形成する。重要なことには、ここで提示された層体系は単に例示である。より多数又は少数の基板層が用いられてもよい。特に、基板層の各々は更に、各層を形成するように積層された複数のサブレイヤーを有してもよい。
【0032】
基板構造385を形成するように基板層が積層されると、基板構造385が多様なラミネーション法によってラミネート加工される。1つの方法では、基板層は積層され、加熱された圧盤を用いて油圧で押し当てられる。例えば、一軸ラミネーション法は70℃に加熱された圧盤を用いて3000psiで10分間、基板層を一緒に押し当てる。最初の5分経過後に基板層は165°回転させられる。等方(isotatic)ラミネーション法では、基板層はプラスチックバッグ内に真空封止された後、温水を用いて押し当てられる。この場合の時間、温度、及び圧力は一軸ラミネーション法で使用されるのと同一とし得るが、5分後の回転は不要である。ラミネーション加工されると、構造385は平坦なタイル上の窯の内部で焼成される。例えば、基板層は200℃から500℃の間で1時間ベークされ、850℃と875℃との間のピーク温度が15分より長く加えられる。焼成プロセスの後、基板層に焼成後処理が施される。
【0033】
図3Cを参照するに、開口360によって形成された空洞145内に円板115が設置される。円板115は、例えばアルミニウム、銅、黄銅、銀、金、鋼鉄、ステンレス鋼、又は他の任意の硬い導電性材料などの、導電体を有し得る。他の一構成においては、円板115は複数の材料、例えば、セラミック等の硬い材料にラミネート加工された半硬質の導電体、を有し得る。円板115は、下表面392に軸方向に配置された中心コンタクト390、及び同じく下表面392に配置された少なくとも1つの径方向のコンタクト395を有している。一構成において、径方向のコンタクト395は円板115の下側周辺領域397の周りに延在している。円板115は第2の基板層304の上に配置され、その結果、中心コンタクト390は軸接触ブラシ345と電気的に接触し、径方向コンタクト395は径方向端部の接触ブラシ350と電気的に接触している。従って、接触ブラシ345、350間に電圧が印加されると、中心部130と径方向端部225との間を電流が流れることができる。ビア335の径方向の壁398は円板115の中心コンタクト390に対する軸受面として機能し得る。他の例では、径方向の壁398と中心コンタクト390との間に軸受(図示せず)が組み込まれる。軸受は、例えば、電磁ベアリング又は静電ベアリングとし得る。
【0034】
上述のように、円板115の動作を制御する制御回路で使用するためにセンサー230が設けられ得る。センサー230は、円板115の回転速度を測定するのに適した如何なる位置に配置されてもよい。当業者に知られるように、センサーのデータを伝播するために、必要に応じて、回路配線が設けられる。
【0035】
1つ又は複数の磁石が円板115の上、及び/又は下に固定され、円板115の回転軸に整合された磁場を供給する。例えば、磁石210が、円板115の下表面392から間隔を空けて配置されるように、例えば開口375内など、基板構造385の底部に取り付けられる。とは言うものの、本発明はこの点に限定されるものではない。例えば、磁石210は円板115の上表面125から間隔を空けて配置されてもよい。磁石210は、例えば磁石材料から形成された磁石などの永久磁石とし得る。例えば、磁石210はフェライト、ネオジム、アルニコ、セラミック、及び/又は磁場を発生するために使用可能な他の如何なる材料からも作成され得る。
【0036】
磁石210はまた、例えば電磁石などの非永久磁石としてもよい。他の一構成においては、この磁石は1つ又は複数の永久磁石と1つ又は複数の非永久磁石との組み合わせ、例えば、1つ又は複数の磁石材料層に隣接する電磁石とし得る。上述のように、電磁石によって発生される磁場の強度は、この電磁石の導体を流れる電流を変化させることによって変えられることができ、このことは円板115の回転量を制御する更なる手段をもたらすものである。
【0037】
他の典型的な一実施形態においては、流体混合機100は、例えばポリシリコン微細加工プロセスを用いてシリコン基板などの半導体基板に製造される。ポリシリコンの微細加工はマイクロマシニング分野において周知である。このようなプロセスの1つがDavid A. Koester等の「MUMPs Design Handbook(Rev.7.0、2001年)」にて開示されている。典型的なポリシリコン微細加工プロセスが図4A乃至4Iに示されている。しかしながら、本発明はここで開示されるプロセスに限定されるものではなく、他の半導体微細加工プロセスも使用可能である。
【0038】
図4Aを参照するに、第1のシリコン基板層(以下、第1シリコン層)402が設けられて、流体混合機構造400の形成が開始される。第1シリコン層402は、例えばIC製造で一般的に使用されるシリコンウェハである。ある場合には、第1シリコン層402は電気的絶縁性を有することが望ましい。従って、第1シリコン層402はドーピングしないか、軽くドーピングするのみかで形成され得る。
【0039】
例えばドーピングされたポリシリコン又はアルミニウムの層といった導電層が第1シリコン層402上に堆積される。この導電層の堆積後、既知のリソグラフィ及びエッチング技術を用いて導電性の回路配線404が定められる。なお、導電性の配線404を形成するために使用される導電層を堆積するのに先立って、例えば窒化シリコン(SiN)等の絶縁層(図示せず)を第1シリコン層402上に堆積することが有利な場合がある。
【0040】
回路配線が形成された後、ポリ第1シリコン層402上に絶縁層406が低圧化学気相堆積(LPCVD)を用いて堆積される。そして、例えばエッチング技術を用いて、絶縁層406に内側ビア408、及び外側ビア410が形成される。この絶縁層が回路配線を覆うように設けられる場合、この絶縁層もまたビア408、410の位置でエッチングされるべきである。
【0041】
内側ビア408及び外側ビア410は導電性材料(例えば、アルミニウム)で充填され、所望の位置で回路配線404と電気的に接触する。そして、内側ビア408上に軸接触ブラシ412が堆積され、外側ビア410上に径方向端部接触ブラシ414が堆積され、その結果、接触ブラシ412及び414は、それぞれのビア408及び410と関連する回路配線404とに電気的に接続される。2つの軸接触ブラシ412及び2つの径方向端部接触ブラシ414が図示されているが、更なる軸接触ブラシ及び径方向端部接触ブラシが設けられてもよい。さらに、接触ブラシは接触ブラシでの使用に適した如何なる導電体、例えば、当業者に広く知られたサーモスプレー法を用いて塗布可能なカーボンナノ複合体を含んでもよい。他の一構成においては、接触ブラシは導電性液体とし得る。
【0042】
ポリシリコンの第1の構造層(以下、ポリ1層)416が、LPCVDを用いて絶縁層406上に堆積される。そして、ポリ1層416は、接触ブラシ412、414を露出させる径方向の開口418を形成するようにエッチングされる。他の一構成においては、開口418の領域はポリ1層416を設けることに先立ってマスクされ、それによって、この開口418の領域への堆積が回避される。
【0043】
図4Bを参照するに、例えば二酸化シリコン(SiO2)又はリンシリケートガラス(PSG)等の、第1の犠牲層420が基板の既設の層上に設けられる。第1の犠牲層420はプロセスの最後に除去され得る。この犠牲層はLPCVDによって堆積され、回路にアニールされ得る。図4Cを参照するに、その後、第1の犠牲層420は平坦化エッチバック処理を用いて開口418内で平坦化され、第1の犠牲層420の高位部424から凹まされた、開口418内の平坦な底面422が形成される。
【0044】
図4Dを参照するに、その後、開口418内に導体が堆積され、対向する上表面428と下表面430、軸部432、及び径方向端部434を有する円板426が形成される。さらに、円板426に接触する部材が第1の犠牲層420だけとなるように、円板426は開口418内に完全に格納される。円板426の厚さは第1の犠牲層420の厚さとエッチバック量とによって決定される。重要なことには、例えば剛性などの機械的特性は、円板426の厚さを選定するときに考慮されるべきである。
【0045】
図4Eを参照するに、第2の犠牲層436が基板の既設の層を覆うように設けられる。この場合も、第2の犠牲層436はLPCVDによって堆積され、回路にアニールされ得る。また、第2の犠牲層436はプロセスの最後に除去され得る。犠牲層436の翼板部438がエッチング除去され、円板426の軸部432から円板426の径方向端部434に放射状に延在する円板領域が露出される。そして、図4Fに示されるように、翼板部438内に導体が堆積され、円板426に付着された翼板440が形成される。
【0046】
図4Gを参照するに、その後、円板426の内側領域、及び第1及び第2の犠牲層420、436を貫通して開口部442がエッチングされ、それにより、円板426の中心の下の絶縁層406の領域448が露出される。例えば反応性イオンエッチング(RIE)、プラズマエッチング等の、既知のエッチング技術が使用され得る。ここで、第1の開口部442は、対向する軸接触ブラシ412間の半径距離以下の半径を有する孔を円板426に形成するような大きさにされる。
【0047】
そして、第3の犠牲層444が、円板426、翼板440、及び開口部442によって形成された径方向の壁446を覆うように設けられる。絶縁層406の領域448は、第3の犠牲層444を設ける際にマスクされ、領域448で第3の犠牲層444が絶縁層406に付着することが回避されるべきである。他の例では、領域448から第3の犠牲層を除去するように、続いてエッチング処理が実行される。
【0048】
図4Hを参照するに、LPCVDを用いてポリシリコンの第2の層(以下、ポリ2層)450が既設の層、例えば、第3の犠牲層444、を覆うように堆積され、それにより、更なるシリコン構造が追加される。ここで、ポリ2層450はまた開口部442を充填する。また、ポリ2層450は円板426の内側半径454より大きい外側半径452を有するように形成される。従って、ポリ2層450は絶縁層406の領域448から上方に延在する“T”字状断面を有するように形成され、それにより、犠牲層が除去されたときに円板426の縦方向の動きを制限する。さらに、ポリ2層は、その周りを円板426が回転する軸受として機能する。他の例では、第1の開口部442内に電磁ベアリング又は静電ベアリングが設けられてもよい。
【0049】
そして、第1、第2及び第3の犠牲層420、436、444が、例えばフッ化水素(HF)溶液を用いて、流体混合機構造400から放出される。このようなプロセスは当業者に既知である。例えば、流体混合機構造400はHF溶液に軽く浸される。HFはシリコン又はポリシリコンには攻撃しないが、SiO2を素早くエッチングする。ここで、HFは堆積されたSiO2をSiNより約100倍速くエッチングすることができる。
【0050】
図4Iを参照するに、犠牲層の放出により、円板426の下部430が軸接触ブラシ412及び径方向端部接触ブラシ414の上に置かれ、それらと電気的に接触することが可能になる。そして、円板426は翼板440とともに自身の軸の周りを自由に回転することができる。一構成において、T字状のポリ2層450と円板426との間にガスケット456が配置され、接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置が維持される。例えば、ガスケット456は例えばベンゾシクロブテンに基づく高分子、ポリイミド、又はSU-8等の、感光性高分子を有し得る。このような高分子は商業的に入手可能である。例えば、SU-8はマイクロケム社から商業的に入手可能である。デュポン社から入手可能なテフロン(登録商標)及びヴェスペルもまたガスケット456に使用可能な材料である。
【0051】
他の一構成においては、平衡部材(standoff)を具備するフレームワークが絶縁層406、及び/又はポリ1層416に取り付けられ得る。平衡部材は接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置を維持することができる。平衡部材は感光性高分子、テフロン(登録商標)又はヴェスペルを有し得る。さらに、フレームワークは流体が流れ得るように孔を開けられ得る。他の例では、円板426及び翼板440の回転によって発生される空気力により、接触ブラシ412、414と接触するように円板426の位置が維持され得る。
【0052】
磁石460が円板426の上方、及び/又は下方に固定され、円板426の回転軸に整合された磁場を供給する。例えば、磁石460は円板426の下方の第1の基板層に取り付けられ得る。上述のように、磁石は永久磁石、非永久磁石、又は永久磁石と非永久磁石との組み合わせとし得る。これまた上述のように、円板の回転速度を監視するためにセンサー458も設けられ得る。
【0053】
図5は、本発明に係る方法を理解するのに有用なフローチャート500を示している。工程505にて始まり、基板に空洞が形成される。工程510へと進み、空洞内の基板に接触ブラシが形成される。少なくとも1つの接触ブラシが空洞の中心部に近接して配置され、且つ少なくとも1つの接触ブラシが空洞の径方向端部に近接して配置される。工程515へと続き、軸部及び径方向端部を有する導電性の円板が空洞内に配置される。導電性円板上には流体置換構造が配置される。導電性円板は接触ブラシと電気的に接触するように配置される。工程520を参照するに、基板に磁石が配置され、導電性円板の回転軸に整合された磁場が規定される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の理解のために有用な、流体混合機を示す透視図である。
【図2】破線2−2に沿って取られた、図1の流体混合機の断面図である。
【図3A】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図3B】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図3C】本発明の理解のために有用な、誘電体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4A】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4B】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4C】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4D】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4E】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4F】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4G】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4H】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図4I】本発明の理解のために有用な、半導体基板上への流体混合機の製造プロセスを示す図である。
【図5】本発明の理解のために有用なフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な円板を有する単極モータ;及び
前記回転可能な円板に設けられた少なくとも1つの流体置換構造;
を有する流体置換装置。
【請求項2】
前記回転可能な円板が基板に配置されている、請求項1に記載の流体置換装置。
【請求項3】
前記回転可能な円板が少なくとも部分的に、前記基板に形作られた空洞内に配置されている、請求項2に記載の流体置換装置。
【請求項4】
前記基板がセラミック基板、液晶高分子基板、及び半導体基板から成るグループから選択されている、請求項2に記載の流体置換装置。
【請求項5】
前記回転可能な円板の回転速度を制御する閉ループ制御回路を更に有する請求項1に記載の流体置換装置。
【請求項6】
前記閉ループ制御回路が、前記回転可能な円板に電圧を印加する電圧源及び電流源の少なくとも1つを制御する、請求項5に記載の流体置換装置。
【請求項7】
前記閉ループ制御回路が、前記回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場を印加する磁石の強さを制御する、請求項5に記載の流体置換装置。
【請求項8】
少なくとも1つの流体置換構造を具備する回転可能な円板を流体内に位置付けるステップ;及び
前記回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場の存在下で、前記回転可能な円板の中心部と径方向端部との間に電圧を印加するステップ;
を有する、流体を置換する方法。
【請求項9】
流体置換速度を変えるために前記回転可能な円板の回転速度を選択的に制御するステップを更に有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択的に制御する前記ステップが前記磁場の強度を制御することを更に有する、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
回転可能な円板を有する単極モータ;及び
前記回転可能な円板に設けられた少なくとも1つの流体置換構造;
を有する流体置換装置。
【請求項2】
前記回転可能な円板が基板に配置されている、請求項1に記載の流体置換装置。
【請求項3】
前記回転可能な円板が少なくとも部分的に、前記基板に形作られた空洞内に配置されている、請求項2に記載の流体置換装置。
【請求項4】
前記基板がセラミック基板、液晶高分子基板、及び半導体基板から成るグループから選択されている、請求項2に記載の流体置換装置。
【請求項5】
前記回転可能な円板の回転速度を制御する閉ループ制御回路を更に有する請求項1に記載の流体置換装置。
【請求項6】
前記閉ループ制御回路が、前記回転可能な円板に電圧を印加する電圧源及び電流源の少なくとも1つを制御する、請求項5に記載の流体置換装置。
【請求項7】
前記閉ループ制御回路が、前記回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場を印加する磁石の強さを制御する、請求項5に記載の流体置換装置。
【請求項8】
少なくとも1つの流体置換構造を具備する回転可能な円板を流体内に位置付けるステップ;及び
前記回転可能な円板の回転軸に実質的に整合された磁場の存在下で、前記回転可能な円板の中心部と径方向端部との間に電圧を印加するステップ;
を有する、流体を置換する方法。
【請求項9】
流体置換速度を変えるために前記回転可能な円板の回転速度を選択的に制御するステップを更に有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択的に制御する前記ステップが前記磁場の強度を制御することを更に有する、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図5】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図5】
【公表番号】特表2008−508995(P2008−508995A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525079(P2007−525079)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028470
【国際公開番号】WO2006/023351
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028470
【国際公開番号】WO2006/023351
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]