説明

単結晶製造管理システム及び方法

【課題】再生利用インゴットに含有される不純物量を正確に推定し、所望の比抵抗の単結晶を成長させる単結晶製造管理システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の単結晶製造管理システムは、単結晶におけるスライスしてウェハとされない部分を再利用インゴットとし、他の単結晶の成長に用いる際の不純物量管理を行うものであり、再利用インゴットを採取した単結晶の他の部分の比抵抗プロファイルを記憶する比抵抗プロファイル記憶部と、再利用インゴットの結晶の成長軸方向両端の比抵抗,引き上げ開始時の不純物濃度,偏析係数,固化率及び補正係数から選択された1以上を含む変数からなる不純物濃度推定式と、比抵抗プロファイルとから再利用インゴット内の比抵抗プロファイル示すプロファイル式を求めるシミュレーション部と、比抵抗プロファイル式に基づいて、再利用インゴット内の不純物量を算出する不純物量算出部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比抵抗が所望の値に制御された単結晶を育成する製造管理システム及びその方法であり、特に、すでに育成された単結晶において製品として出荷できない品質の部分を再利用して、所望の比抵抗の単結晶を成長させる製造管理システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIは、大容量化が求められ、それを実現するための製造技術の発展も不可欠となっている。IC及びLSI等の半導体回路の製造技術にはシリコンウェハが多く用いられている。
このシリコンウェハは、原料のシリコンに不純物を所定の割合にて添加し、所望の比抵抗を有する単結晶と呼ばれる円柱状の結晶の塊を、結晶成長により作成させて、それをインゴットと呼ばれる所定の軸方向長さを有する柱状塊に切断した後、必要な厚さにスライスして作製される。
【0003】
上記単結晶の成長方法としては、チョクラルスキー法(以後、CZ法とする)があり、成長した単結晶をスライスして、ユーザの必要とする品質(厚みおよび径寸法,比抵抗,EPD等)を有するウェハとして、各ユーザに対して出荷する。
しかしながら、図8に示すように、作製した単結晶において、ユーザの要求する品質などを満たさない領域、すなわち品質ロス(比抵抗)やEPDロス(エッチピット密度が規定以上)などの電気的特性を十分に満たさない部分がある。また、この電気特性を満たしていても、目視によって単結晶化していない部分や転移の発生またはそれに伴う割れなどの存在する部分、さらに、単結晶において、引き上げて成長を開始した円錐台状のトップ部分(トップロス)や成長を終了させた円錐台状のテイル部分における、径が誤差範囲を超えて規定値を満たさない部分(テイルロス)がある。
【0004】
ユーザの要求する品質を満たさない上記品質ロス,EPDロス,トップロス及びテイルロス等の部分は、当然のことながら、スライス処理を行ってウェハに加工し、製品として出荷されることはない非出荷材料となる。
また、このウェーハ製造用の単結晶を成長させるとともに所定の不純物濃度を実現させるためには、高純度の不純物材料やシリコン材料を利用している。特に、不純物材料は高価であり、また、シリコン多結晶材料も高純度のため高価であるので、上記非出荷材料を破棄してしまうと、高価な不純物材料を捨てることとなり、単結晶を成長させる製造コスト、ひいてはウェーハの製造コストを増加させてしまう。
【0005】
このため、製造コストに占める不純物材料の比率を低下させるため、上記非出荷材料に含まれている不純物材料を再利用する循環サイクルの製造方法が取り入れられるようになってきている。
一般的には、ユーザの要求した品質を満足した部分を、インゴットからスライスしてウェハを作製し、上記非出荷材料の部分を再利用インゴットとして残し、再利用時に、ストックされている再利用インゴットの利用を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−112669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示す非出荷材料の再利用方法にあっては、再利用する時点において、この非出荷材料に含有される不純物を推定して、所望の比抵抗の値となるように、単数または複数の非出荷材料を用いて、新たな単結晶を成長させている。
ここで、特許文献1等の従来例においては、図8でも示すように、再利用インゴットの上部面及び下部面の比抵抗を測定し、これらの比抵抗から求めた1つの代表値(例えば、平均値)とし、再利用インゴットの重量とともにラベル等に表記されて保管されている。
そして、この再利用インゴットを使用して単結晶を生成する時点において、上記比抵抗の代表値と再利用インゴットの重量値とにより、再利用インゴットに含有される不純物量を計算して、添加する不純物材料として用いている。
【0007】
しかしながら、従来例においては、代表値により1つの再利用インゴットに含有される不純物量を算出する際に、再利用インゴット全体が代表値で表される不純物濃度で平均的に不純物が含まれているとしていたため、実際には、再利用インゴットにおいて単結晶軸方向および径方向に分布を有する不純物濃度として含有される不純物量とずれてしまう問題がある。
すなわち、従来例においては、再利用インゴット内の比抵抗のプロファイル(単結晶の軸方向)が明確でないため、上述した代表値が実際の再利用インゴットの比抵抗を代表であるとは限らず、正確な不純物量を計算することができず、成長させた単結晶の比抵抗が所望の値にならない問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、再生利用インゴットに含有される不純物量を正確に推定し、再生利用のインゴットを有効に利用し、所望の比抵抗の単結晶を成長させることができる単結晶製造管理システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の単結晶製造管理システムは、引き上げ法により成長された単結晶において、スライスしてウェハとされない部分を再利用インゴットとして、他の単結晶の成長に用いる際の不純物量管理を行う単結晶製造管理システムであり、前記再利用インゴットを採取した単結晶の他の部分の比抵抗プロファイルを記憶する比抵抗プロファイル記憶部と、前記再利用インゴットの結晶の成長軸方向両端の比抵抗,引き上げ開始時の不純物濃度,偏析係数,固化率及び補正係数から選択された1以上を含む変数からなる不純物濃度推定式と、前記比抵抗プロファイルとから再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示すプロファイル式を求めるシミュレーション部と、前記比抵抗プロファイル式に基づいて、再利用インゴット内の不純物量を算出する不純物量算出部とを有することを特徴とする。
本発明の単結晶製造管理方法は、引き上げ法による単結晶の成長処理において、スライスしてウェハとされない部分を再利用材料として、他の単結晶の成長に用いる際の不純物量管理を行う単結晶製造管理システムを動作させる方法であり、前記単結晶におけるウェハとした部分の比抵抗プロファイルを比抵抗プロファイル記憶部へ記憶する比抵抗プロファイル記憶過程と、シミュレーション部が前記単結晶における再利用材料である再利用インゴットの結晶の成長軸方向両端の比抵抗,引き上げ開始時の不純物濃度,偏析係数,固化率及び補正係数から選択された1以上を含む変数からなる不純物濃度推定式と、前記比抵抗プロファイルとから再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示す比抵抗プロファイル式を求めるシミュレーション過程と、不純物量算出部が前記比抵抗プロファイル式に基づいて、再利用インゴット内の不純物量を算出する不純物量算出過程とを有することを特徴とする。
上述した構成によれば、両端の比抵抗値から推測することしかできなかった再利用インゴットのプロファイルを、一般的な不純物濃度推定式と、既知の他の比抵抗のプロファイルとから、従来例に比較して高い精度で推定することができる。
すなわち、本発明の単結晶製造管理システムは、従来例のように代表値を平均値として求めるのではなく、過去に作製した単結晶の比抵抗率分布のプロファイルに対して、インゴット上部及び下部の抵抗率をフィッティングして、対応したプロファイルから代表値を推定することができる。
また、既知の比抵抗プロファイルとしては、再利用インゴットを採取した単結晶において、製品としてスライスされたウェハから測定された比抵抗を成長軸方向に並べて生成されるプロファイルが考えられる。
【0010】
本発明の単結晶製造管理システムは、過去に成長させた同様の比抵抗率の単結晶の軸方向における参照比抵抗プロファイルを記憶している参照比抵抗プロファイル履歴記憶部をさらに有し、前記シミュレーション部が、前記不純物濃度推定式を、前記参照比抵抗プロファイルにより補正し、仮のプロファイル式を算出し、該仮のプロファイル式を、前記比抵抗プロファイルにフィッティングすることにより、再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示すプロファイル式を求めることを特徴とする。
上述した構成によれば、過去に作製した単結晶の比抵抗率が異なった場合でも、異なる参照比抵抗プロファイルとして記憶しているため、従来のような代表値ではなく、参照インゴットにおける比抵抗プロファイルを正確に推定することができ、再利用インゴットの不純物量を正確に推定することができる。
【0011】
本発明の単結晶製造管理システムは、各再利用インゴット毎に、単結晶各々を識別する単結晶識別番号、成長させた引き上げ装置の装置識別番号、単結晶の軸方向における位置情報、原料仕込み量・単結晶成長長さ・単結晶直径情報を含む単結晶書誌情報のいずれかまたは組合せからなる順番情報を対応して記憶する再利用インゴット情報記憶部を有し、前記参照比抵抗プロファイル履歴記憶部が、前記参照比抵抗プロファイル毎に、前記装置識別番号、前記単結晶位置情報及び前記単結晶書誌情報のいずれかまたは組合せからなるプロファイル情報を有し、前記シミュレーション部が、不純物量を計算したい再利用インゴットに対して、前記参照比抵抗プロファイル履歴記憶部からプロファイル情報が等しい参照比抵抗プロファイルを選択して、仮のプロファイル式を求めることを特徴とする。
上述した構成によれば、過去に作製した単結晶の参照比抵抗プロファイルを、引き上げ装置,単結晶位置情報および単結晶書誌情報など、比抵抗が変化する要素の組合せ毎に準備しているため、単結晶から採取した再利用インゴットのプロファイルに対して、不純物量を正確に推定することができる。
また、参照比抵抗プロファイルが識別できれば良いので、単結晶各々を識別する単結晶識別番号、成長させた引き上げ装置の装置識別番号、単結晶の軸方向における位置情報、原料仕込み量・単結晶成長長さ・単結晶直径情報を含む単結晶書誌情報の全ての情報が必要でなく、複数の組合せまたはいずれか1つの情報、例えば、比抵抗の変化に大きく影響を及ぼす情報にて、参照比抵抗プロファイルを識別するようにしてもよい。
【0012】
本発明の単結晶製造管理システムは、前記再利用インゴット情報記憶部が、引き上げ処理に用い前記たルツボ内の残液固化塊を再生材料として前記順番情報に対応して記憶していることを特徴とする。
上述した構成によれば、単結晶成長後に必ずルツボに残る、シリコンと不純物とからなる多結晶の残液固化塊を、他の結晶成長に再利用することが可能であり、再利用材料として、単結晶の非製品部分である再利用インゴットに加えて、単結晶成長における非製品部分を有効に再利用することができる。
【0013】
本発明の単結晶製造管理システムは、前記不純物量算出部が、前記比抵抗プロファイル式から算出する再利用インゴットにおける不純物量と、前記比抵抗プロファイルから求めたウェハとなった部分の不純物量とを、成長開始時に用いた不純物量から減算することにより、前記残液固化塊の不純物量を算出することを特徴とする。
上述した構成によれば、再利用材料としての残液固化塊に含まれる不純物量を正確に計算することができ、残液固化塊さえも、他の単結晶成長において有効に再利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、過去に同一の引き上げ装置及び条件で成長させた単結晶の比抵抗のプロファイル曲線を、スライスされて正確に判明している比抵抗のフロファイルによりフィッティングさせて、再利用インゴットにおける比抵抗プロファイル曲線を求めることにより、任意の幅で採取された、測定出来ない再利用インゴットの比抵抗プロファイルを補完することができる。
この結果、本発明によれば、上記補完された比抵抗のプロファイル曲線により、再利用インゴットに含有されている不純物量を、従来の代表値を求めた場合に比較して正確に算出することが可能となり、再利用インゴットを利用して成長させた単結晶の比抵抗のバラツキを従来に比較して抑制することとなり、従来例に比較して高い精度で比抵抗を制御した単結晶成長を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による単結晶製造管理システムを図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成例を示すブロック図である。
本実施形態においては、各工場A,B毎に、複数の引き上げ装置12,13,…、32…が設けられ、所望の比抵抗の単結晶の成長を行っている。
上記引き上げ装置12,13,…,32,…各々には、端末(例えば、パーソナルコンピュータ)13,23,…,33,…が接続され、後に詳述するように、引き上げた単結晶の比抵抗などの管理を行っている。
【0016】
再利用インゴット情報記憶部14(または24,…,34,…)は、図2に示すように、引き上げ装置12(または13,…、32…)に設けられ、対応する個別の引き上げ装置で成長させた単結晶から採取した再利用インゴット毎に、インゴット識別番号に対応して、単結晶識別番号,装置番号,操作者識別番号,製造番号,単結晶書誌情報,再利用インゴットの比抵抗情報,位置情報及び不純物量などのいずれかまたは組合せからなる順番情報が記憶されている。同様に、再利用インゴット情報記憶部24は引き上げ装置22に対応し、再利用インゴット情報記憶部34は引き上げ装置24に対応し、各々再利用インゴット情報記憶部14と同様の構成のデータとして順番情報を記憶している。上記単結晶書誌情報は、原料仕込み量・単結晶成長長さ・単結晶直径情報を含む単結晶の成長情報を示す。
【0017】
ここで、上記インゴット識別番号は、各再利用インゴットを一意に識別する識別番号である。また、単結晶識別番号は、再利用インゴットが採取された元の単結晶を一意に識別する識別番号である。装置番号は、単結晶識別番号の示す単結晶を引き上げて成長させた引き上げ装置を、一意に識別する識別番号である。操作者識別番号は、単結晶識別番号の示す単結晶を成長させた際に、引き上げ装置を操作したオペレータを一意に識別する番号である。製造番号は、引き上げ装置のルツボを交換したあとに、成長させた単結晶の成長処理を行った順番を示す番号である。
【0018】
また、比抵抗情報は、図8に示すように、再利用インゴットの結晶軸方向(引き上げ方向、すなわち成長軸方向)上面で測定した比抵抗ρTopと、同下面で測定した比抵抗ρBotとの数値情報である。部位情報は、単結晶におけるトップ部分(単結晶の成長開始部位近傍)・ボディ部分(単結晶において円柱状となっている部分〜直胴部)・テイル部分(単結晶の成長停止部位近傍)のいずれの部位であるか(部位の種別)を示す情報である。位置情報は、単結晶の成長軸方向において、再利用インゴットが採取された位置範囲を示す情報である。上記比抵抗ρTop及び比抵抗ρBotは、再利用インゴット各々の上面,下面においてその面内方向複数箇所で採取した比抵抗を、過去の比抵抗の測定値から求められる実験式により、単結晶の位置情報を含めて算出される。不純物量は、各再利用インゴットに含有されている不純物の質量を示すものであり、算出方法については後に詳細に説明する。
【0019】
比抵抗プロファイル記憶部15(または25,…,35,…)は、単結晶識別番号に対応して、装置番号,操作者識別番号,製造番号,及び再利用インゴットを採取した単結晶において、スライスしてウェハとして製品化された部分の比抵抗のプロファイルが記憶されている。このプロファイルは、再利用インゴットを採取した部分のデータは記憶されていないが、スライスして製品化された部分のプロファイルを、各ウェハの比抵抗を測定することにより、各ウェハが単結晶の成長軸方向における位置情報とともに記憶している。各ウェハの比抵抗も、上記比抵抗ρTop及び比抵抗ρBotと同様に、面内で複数採取した比抵抗と同様に、過去の比抵抗の測定値から求められる実験式により、単結晶の位置情報を含めて算出される。また、比抵抗プロファイル記憶部15(または25,…,35,…)には、単結晶の重量である炉上重量,ルツボに仕込んだシリコン原料の重量及び不純物の重量を加算した仕込重量,添加物元素等の引上実績データも、単結晶識別番号に対応して記憶されている。
【0020】
管理サーバ41は、検索部411,シミュレーション部412,不純物算出部413及び登録部414を有している。
検索部411は、各引き上げ装置で成長させた単結晶から採取された再利用インゴットにおいて、含有された不純物量の計算がなされていない再利用インゴットのインゴット識別番号を抽出し、この再利用インゴットに関するインゴット情報(順番情報の一部である添加物元素,再利用インゴットの重量,仕込重量,炉上重量,直径サイズ,抵抗率情報,部位情報,位置情報等)を、再利用インゴット情報記憶部14から読み出して、シミュレーション部412へ出力する。
また、検索部411は、再利用インゴットに対応させ、比抵抗プロファイル記憶部15から、上記再利用インゴットと同一の単結晶識別番号に対応した比抵抗のプロファイルを読み出す。
【0021】
シミュレーション部412は、計算対象の再利用インゴットの添加物元素を検出し、n型またはp型の各添加物元素に対応したアービン曲線係数の変数セット(例えば、偏析係数,不純物濃度に乗算する補正係数,シリコン単結晶の比重等)を、プロファイル情報(装置番号,操作者識別番号,製造番号のいずれかまたは複数の組み合わせからなる)により検索し、この変数セットにより仮のプロファイル曲線を生成する。
そして、シミュレーション部412は、上記仮のプロファイル曲線(アービン曲線)を、対象とする単結晶の比抵抗のプロファイルとフィッティングさせ、欠落している再利用インゴット部分のプロファイルを補完し、再利用インゴットが採取された単結晶の比抵抗のプロファイル曲線を算出する。ここで、シミュレーション部412は、仮のプロファイル曲線上に、上記単結晶の比抵抗のプロファイルの各数値が乗るように、数値演算により仮のプロファイル曲線の係数を変化させ、仮のプロファイル曲線が単結晶の比抵抗のプロファイル値を表す曲線へと変更する処理を行っている。また、上記プロファイル曲線は、比抵抗から求められる不純物濃度を示すものである。
【0022】
また、シミュレーション部412は、上記プロファイル曲線の算出において、再利用インゴットの比抵抗ρTop及び比抵抗ρBotを、上記対象とする単結晶の比抵抗のデータとして含めて、各比抵抗から不純物濃度を算出し、上記単結晶の不純物濃度のプロファイルを示すプロファイル曲線を求める。
このプロファイル曲線は、以下の式で示される。
Cs=K0×C0(1−g)K0−1 …(1)
プロファイル曲線を示す上記(1)式で示される不純物濃度推定式において、Csは結晶中の不純物濃度(atoms/cc)を示し、C0は初期メルト中の不純物濃度(atoms/cc)を示し、K0は偏析係数を示し、gは固化率を示している。
【0023】
不純物算出部413は、上記式により再利用インゴットに含有された不純物量の算出を行う。すなわち、シミュレーション部412は、この不純物量の算出に際し、再利用インゴットの位置情報の範囲において、単位体積当たりの不純物量(比抵抗から求めた不純物濃度及び単結晶の径から算出される)を、上記式を用いて積分することによって算出する。すなわち、以下に示す積分式により、上記プロファイル曲線を積分して、再利用インゴットに含有される不純物量を算出する。
【0024】
不純物量=K0×C0×∫(1−(V×ρ)/W)dV
上記積分式において、Vは体積を示し、ρは比重を示し、Wはルツボ内のシリコンに対して混入した不純物量である初期不純物チャージ量を示しており、V(top)からV(bot)の範囲で、上記式を積分する。
登録部414は、不純物算出部413において算出された不純物量を、再利用インゴット情報記憶部の上記再利用インゴットのインゴット識別番号に対応して記憶させ、再利用インゴットを再利用するための管理情報を更新を行う。
また、登録部414は、図示しないプリンタから、上記再利用インゴットの管理情報をラベルに印刷する。このラベルを再利用インゴットへ貼着する。
【0025】
次に、図1,図4,図6を参照して、本実施形態による単結晶製造管理システムが行う再利用インゴットの管理における再利用インゴットの管理情報の生成処理について説明する。図6は、本実施形態における単結晶製造管理システムの動作例を示すフローチャートである。
検索部411は、再利用インゴット情報記憶部14,24,34,…検索し、含有されている不純物量が計算されていない再利用インゴットの抽出を行い、抽出された再利用インゴットのインゴット識別番号を読み取る。
そして、検索部411は、上記インゴット識別番号に対応する再利用インゴットのプロファイル情報,比抵抗情報,部位情報等を読み込み、内部メモリに一時に記憶する。
次に、検索部411は、プロファイル情報に含まれる単結晶識別番号により、比抵抗プロファイル情報及び引上実績データを読み出し、内部メモリに一時的に記憶する(ステップS1)。
【0026】
次に、シミュレーション部412は、プロファイル情報の添加物の種類、すなわち再利用インゴットに含有されている不純物の種類を抽出し、n型(リン)またはp型(ボロン)のいずれかであるかの検出を行う。ここで、シミュレーション部412は、含有されている不純物がn型であることを検出した場合、ステップS3へ処理を進め、一方、p型であることを検出した場合、ステップS4へ処理を進める(ステップS2)。
【0027】
次に、シミュレーション部412は、n型不純物用であり、かつ再利用インゴットのプロファイル情報と一致するアービン曲線係数の変数セットを、参照比抵抗プロファイル履歴記憶部42から検索し、この変数セットを読み込み、内部メモリに一時的に記憶し、処理をステップS5へ進める(ステップS3)。
また、シミュレーション部412は、p型不純物用であり、かつ再利用インゴットのプロファイル情報と一致するアービン曲線係数の変数セットを、参照比抵抗プロファイル履歴記憶部42から検索し、この変数セットを読み込み、内部メモリに一時的に記憶し、処理をステップS5へ進める(ステップS4)。
【0028】
次に、シミュレーション部412は、この変数セットを用いて、(1)式を元とした仮のプロファイル曲線(ここで、変数セットに対応した曲線となるよう、例えば、多項式における係数の調整を行う)を求める。
そして、シミュレーション部412は、求めた仮のプロファイル曲線を、再利用インゴットを採取した単結晶の比抵抗のプロファイルと、比抵抗ρTop及び比抵抗ρBotとを用いて、フィッティング(例えば、非線形最小2乗フィッティング法を利用)し、仮のプロファイル曲線に対するあてはめを行い、再利用インゴットの成長軸方向の比抵抗のプロファイルを補完したプロファイル曲線を生成し、この比抵抗のプロファイル曲線を不純物濃度のプロファイル曲線に変換する(ステップS5)。
【0029】
次に、不純物算出部413は、上記不純物濃度のプロファイル曲線を、(2)式により、再利用インゴットの位置情報の示す範囲において積分することにより、再利用インゴットに含有されている不純物量を算出する。ここで、再利用インゴットの部位がトップ部分,ボディ部分及びテイル部分のいずれかであるにより、固化率,比抵抗から算出される不純物濃度等のパラメータが異なり、これらの数値も変数セットに含まれている(ステップS6)。
【0030】
不純物量が算出されると、登録部414は、再利用インゴット情報記憶部25から抽出した再利用インゴットの場合、再利用インゴット情報記憶部25において、インゴット識別番号に対応させて、順番情報の一つとしてこの不純物量を書き込むとともに(ステップS7)、プリンタにより再利用インゴットの管理情報を印刷する(ステップS8)。利用者は、このラベルを対応する再利用インゴットに貼付し、所定の場所にて管理する。
【0031】
次に、図1,図4,図7を参照して、本実施形態による単結晶製造管理システムが行う再利用インゴットの管理における再利用インゴットの管理情報の利用処理について説明する。図7は、本実施形態における単結晶製造管理システムの動作例を示すフローチャートである。
検索部411は、利用者が再生インゴットを利用する際、必要な不純物がp型またはn型のいずれかであるかを示す情報と、必要な不純物量と、を入力することにより、再利用インゴット情報記憶部14,24及び34から、対応する再利用インゴットを検出し、検出した複数の再利用インゴットのインゴット識別番号と、対応する管理情報(すなわち、不純物量を含んだ順番情報)とを一覧表として、図示しない表示部に表示する(ステップS11)。
【0032】
利用者は、上記表示部に表示された一覧表から、再利用インゴットを選択してクリックする。
これにより、検索部411は、利用者の選択したインゴット識別番号に対応した再利用インゴットの管理情報を、再利用インゴット情報記憶部24から検索し、再利用インゴットの重量及び不純物量を読み込む(ステップS12)。このとき、直接インゴットに貼付されている管理情報をスキャナで読み取り、管理情報を読み取るようにしてもよい。
次に、不純物算出部413は、検索部411から入力される再利用インゴットの重量と、含有されている不純物量とを各々積算し、利用者が選択した再利用インゴットの重量の合計と、不純物量の合計とを算出する(ステップS13)。
【0033】
次に、不純物算出部413は、合計された不純物量が、予め利用者が設定した、再利用に必要な値を満たしているか否かの検出を行い、合計した不純物量が設定された値を満たしている場合、処理をステップS15へ処理を進め、一方、満たしていない場合、処理をステップS11へ戻す。
【0034】
そして、不純物算出部413は、再利用インゴットが選択され、再生の使用に用いることが決定されたため、この選択された再生インゴットを一覧表にして表示部に表示させるとともに、再生インゴット各々の管理情報と、保管場所とが表示された使用指示書を印刷する(ステップS15)。こので、保管場所は、再生利用インゴット情報記憶部各々に、インゴット識別番号に対応して記憶されている。
利用者は、使用指示書に従い、管理場所から再利用インゴットをとり出して、いずれかの引き上げ装置にて使用して単結晶の成長を行う。実際に利用に際し、上述した不純物量の推定処理により、再生インゴットを利用し、不純物量を調整して成長させた単結晶と、従来の不純物量の推定による再成長させた単結晶との比抵抗の誤差を比較した結果、成長した単結晶の比抵抗の誤差は従来の手法が、期待した比抵抗に対して5%であるのに対して、本実施形態の推定方法を用いた場合、期待する比抵抗との誤差を1%以内に抑制できる効果が得られた。
【0035】
再利用インゴットを利用して単結晶の成長を行った単結晶についても、各比抵抗プロファイル記憶部にて各データを管理する。
また、登録部414は、再利用インゴットを利用して成長させた単結晶について、使用した再利用インゴットのインゴット識別番号を、単結晶識別番号に対応させて、使用履歴として、対応する再利用インゴット情報記憶部に記憶させておく。
【0036】
また、再生利用インゴットに、単結晶の成長を行った後、ルツボにある残部を回収しての使用も不純物の再利用という点で重要であり、上述してきた再利用インゴットと同様に登録し、使用することが考えられる。
すなわち、通常、単結晶成長を行う場合、ルツボ内の原料融液の全てが単結晶成長に使用される訳ではなく、成長中の単結晶にスリップ転位などが発生しないように、ルツボ内に少量の原料融液が残るようにして単結晶成長が行われるため、単結晶成長後のルツボ内には初期ドーパントとして添加した不純物を含んだ残液固化塊が発生することになる。
【0037】
上述したように、本実施形態にて、引き上げた単結晶に含有された不純物量が正確に算出することができるため、ルツボに仕込んだ初期不純物チャージ量から引き上げた単結晶(製品のウェハとなった部分と、再生インゴットの部分との双方)に含有された不純物量を減算することにより、単結晶を成長させた材料の、ルツボ内の残部である残液固化塊(再利用材料の一部)に含有されている不純物量を正確に算出することができる。引き上げ法による単結晶の成長処理において、再利用材料として、すでに述べた再生インゴットとこの残液固化塊とがある。
【0038】
石英ルツボ内で残液を冷却固化させた後、石英ルツボ(固化された残液の塊、すなわち残液固化塊がある)を、HF溶液にて浸漬処理(常温で、10〜20時間浸す)することにより、残液の固化した塊(残部)を、欠落した部分の無い完全な形状で回収することができるため、上述した減算により、正確な含有不純物量を算出することができる。
この演算は、不純物算出部413が、上記残液固化塊に含有される残液不純物量を、上記引上実績データから算出、すなわち、上述したように、単結晶全体の含有不純物量を算出した後、初期不純物チャージ量からこの含有不純物量を減算することにより求めることとなる。また、不純物算出部413は、残液固化塊の重量は、ルツボに成長開始時に投入した仕込重量から、成長後の単結晶全体の重量である炉上重量を減算して算出する。
【0039】
上記残液固化塊に対しても、再利用材料の1種類として、部位情報の種別を残液として、インゴット識別番号を付して、他の再利用インゴットと同様に、他の単結晶成長に用いる再利用材料として、残液固化塊毎に順番情報を再利用インゴット情報記憶部14に記憶させて管理することで、有効利用することができる。また、この残液固化塊の再利用インゴット情報記憶部14への管理情報の生成処理及び管理情報の利用処理は、それぞれ図6及び図7の再生インゴットに対する処理と同様に行う。
【0040】
なお、図4における管理サーバ31の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより再結晶インゴットの管理処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による単結晶製造管理システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の再利用インゴット情報記憶部に記憶されている再利用インゴットの各データを示すテーブルの構成例を示す概念図である。
【図3】図1の比抵抗プロファイル記憶部に記憶されている単結晶の各データを示すテーブルの構成例を示す概念図である。
【図4】図1の管理サーバ41の構成例を示すブロック図である。
【図5】図1の参照比抵抗プロファイル履歴記憶部に記憶されている過去に製造された単結晶の各データの比抵抗プロファイルのデータ構成例を示す概念図である。
【図6】本発明の実施形態による単結晶管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態による単結晶管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【図8】単結晶からの再利用インゴットの採取を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1…単結晶製造管理システム
12,22,32…引き上げ装置
13,23,33…端末装置
14,24,34…比抵抗プロファイル記憶部
15,25,35…再利用インゴット情報記憶部
41…管理サーバ
42…参照比抵抗プロファイル履歴記憶部
411…検索部
412…シミュレーション部
413…不純物算出部
414…登録部
I…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き上げ法による単結晶の成長処理において、スライスしてウェハとされない部分を再利用材料として、他の単結晶の成長に用いる際の不純物量管理を行う単結晶製造管理システムであり、
前記単結晶におけるウェハとした部分の比抵抗プロファイルを記憶する比抵抗プロファイル記憶部と、
前記単結晶における再利用材料である再利用インゴットの結晶の成長軸方向両端の比抵抗,引き上げ開始時の不純物濃度,偏析係数,固化率及び補正係数から選択された1以上を含む変数からなる不純物濃度推定式と、前記比抵抗プロファイルとから再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示す比抵抗プロファイル式を求めるシミュレーション部と、
前記比抵抗プロファイル式に基づいて、再利用インゴット内の不純物量を算出する不純物量算出部と
を有することを特徴とする単結晶製造管理システム。
【請求項2】
過去に成長させた同様の抵抗率の単結晶の軸方向における参照比抵抗プロファイルを記憶している参照比抵抗プロファイル履歴記憶部をさらに有し、
前記シミュレーション部が、前記不純物濃度推定式を、前記参照比抵抗プロファイルにより補正し、仮のプロファイル式を算出し、該仮のプロファイル式を、前記比抵抗プロファイルにフィッティングすることにより、再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示すプロファイル式を求めることを特徴とする請求項1記載の単結晶製造管理システム。
【請求項3】
各再利用インゴット毎に、単結晶各々を識別する単結晶識別番号、成長させた引き上げ装置の装置識別番号、単結晶の軸方向における位置情報、原料仕込み量・単結晶成長長さ・単結晶直径情報を含む単結晶書誌情報のいずれかまたは組合せからなる順番情報を対応して記憶する再利用インゴット情報記憶部を有し、
前記参照比抵抗プロファイル履歴記憶部が、前記参照比抵抗プロファイル毎に、前記装置識別番号、前記単結晶位置情報及び前記単結晶書誌情報のいずれかまたは組合せからなるプロファイル情報を有し、
前記シミュレーション部が、不純物量を計算したい再利用インゴットに対して、前記参照比抵抗プロファイル履歴記憶部からプロファイル情報が等しい参照比抵抗プロファイルを選択して、仮のプロファイル式を求めることを特徴とする請求項2記載の単結晶製造管理システム。
【請求項4】
前記再利用インゴット情報記憶部が、引き上げ処理に用いた前記ルツボ内の残液固化塊を再生材料として、残液固化塊毎に対応して前記順番情報を記憶していることを特徴とする請求項3記載の単結晶製造管理システム。
【請求項5】
前記不純物量算出部が、前記比抵抗プロファイル式から算出する再利用インゴットにおける不純物量と、前記比抵抗プロファイルから求めたウェハとなった部分の不純物量とを、成長開始時に用いた不純物量から減算することにより、前記残液固化塊の不純物量を算出することを特徴とする請求項4記載の単結晶製造管理システム。
【請求項6】
引き上げ法による単結晶の成長処理において、スライスしてウェハとされない部分を再利用材料として、他の単結晶の成長に用いる際の不純物量管理を行う単結晶製造管理システムを動作させる方法であり、
前記単結晶におけるウェハとした部分の比抵抗プロファイルを比抵抗プロファイル記憶部へ記憶する比抵抗プロファイル記憶過程と、
シミュレーション部が前記単結晶における再利用材料である再利用インゴットの結晶の成長軸方向両端の比抵抗,引き上げ開始時の不純物濃度,偏析係数,固化率及び補正係数から選択された1以上を含む変数からなる不純物濃度推定式と、前記比抵抗プロファイルとから再利用インゴット内の比抵抗プロファイルを示す比抵抗プロファイル式を求めるシミュレーション過程と、
不純物量算出部が前記比抵抗プロファイル式に基づいて、再利用インゴット内の不純物量を算出する不純物量算出過程と
を有することを特徴とする単結晶製造管理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−191357(P2007−191357A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11908(P2006−11908)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】