説明

印刷インキ組成物

【課題】ノントルエン溶剤系でも優れた印刷適性や低温安定性を示し、かつ耐ブロッキン
グ性やラミネート適性を確保できる、印刷インキを提供することにある。
【解決手段】高分子ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹
脂を含む印刷インキバインダーにおいて、高分子ポリオールが、高分子ポリオール全量に
対して、50重量%以上の、グリコールおよび二塩基酸からなるポリエステルポリオール
であり、かつ前記グリコールが、前記グリコール全量に対して、80重量%以上のネオペ
ンチルグリコールであることを特徴とする印刷インキバインダーを含有する印刷インキは
、優れた印刷適性、低温安定性を示し、かつ耐ブロッキング性やラミネート適性を確保で
きる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ組成物に関し、さらに詳しくは、各種プラスチックフィルム、プラスチックシートまたは合成樹脂成形品の被覆用として特に有用な印刷インキ用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷、フレキソ印刷は、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられているが、近年、包装物の多様性や包装技術の高度化、さらには法規制面からの環境課題に対する取組みなどに伴い、印刷インキへ要求される性能は年々多様化している。
特に、先年施行された大防法の影響で、ノントルエン化が急激に進み、トルエンを排除し
た系での印刷適性や皮膜物性の確保が課題となっており、業界全体で印刷効果の向上に努
めてきている。
【0003】
この中で、残留溶剤の低減や、エクストルージョンラミネート適性や、主にエステル溶
剤/アルコール溶剤であるトルエンフリーの溶剤系への溶解性などから、ラミネート用イ
ンキを初めとした多くのインキのバインダーとしてポリウレタン樹脂が使用されるケース
が増加している。このポリウレタン樹脂中のソフトセグメントには、耐ブロッキング性、
耐ボイル性、印刷適性の確保からポリエステルを主として用いられており、このポリエス
テルがポリウレタン樹脂、さらには印刷インキの性能を左右する。
【0004】
例えば、特開平6−128521「印刷インキ用バインダー」では、2−メチル−1,
3−プロパンジオールを含有するポリウレタン樹脂がノントルエン型のインキで良好な印
刷適性を得ているが、炭素数が多いことからかポリエーテルを使用したポリウレタンとの
相溶性が劣っている。
【0005】
また、特開平5−222333「印刷インキ用バインダーおよび印刷インキ組成物」で
は、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールを含有するポリウレタン樹脂が
トルエン型のインキで良好な耐ボイル適性を得ているが、低結晶性であることからか耐ブ
ロッキング性が劣っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−128521
【特許文献2】特開平5−222333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノントルエン溶剤系でも優れた印刷適性や低温安定性を示し、かつ耐ブロッキング性や
ラミネート適性を確保できる、印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の実状を鑑み鋭意検討を重ねた結果、ネオペンチルグリコールをグ
リコール成分として用いたポリエステルポリオールを含有するポリウレタン樹脂からなる
印刷インキは、優れた印刷適性、低温安定性を示し、かつ耐ブロッキング性やラミネート
適性を確保できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、第一の発明は、高分子ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる
ポリウレタン樹脂を含む印刷インキバインダーにおいて、
高分子ポリオールが、
グリコールおよび二塩基酸からなるポリエステルポリオールを、高分子ポリオー
ル全量に対して50重量%以上
含有し、かつ
前記グリコールが、
前記グリコール全量に対して、80重量%以上のネオペンチルグリコール
であることを特徴とする印刷インキバインダーに関するものである。
【0010】
また、第二の発明は、グリコールが、1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする
第一の発明記載の印刷インキバインダーに関するものである。
【0011】
さらに、第三の発明は、グリコールが、エチレングリコールを含むことを特徴とする第
一の発明記載の印刷インキバインダーに関するものである。
【0012】
また、第四の発明は、第一の発明〜第三の発明のいずれかに記載の印刷インキバインダ
ーを含有する印刷インキ組成物に関するものである。
【0013】
さらに、第五の発明は、基材上に、第四の発明記載の印刷インキ組成物を印刷してなる
皮覆物に関する。
【0014】
また、第六の発明は、第五の発明記載の皮覆物の印刷面にラミネートしてなるラミネー
ト積層物に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提供する印刷インキは、ノントルエン溶剤系でも優れた印刷適性や低温安定性
を示し、かつ耐ブロッキング性やラミネート適性を確保できる、印刷インキを提供するこ
とができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、前記の実状を鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定のグリコールを構成成分
とするポリエステルポリオールを含むポリウレタン樹脂を印刷インキバインダ−として用
いた場合に、かかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明は、高分子ポリオール、ジイソシアネ−ト化合物および鎖伸長剤を反応せしめて
得られるポリウレタン樹脂を主として含有してなる印刷インキ用バインダ−において、該
高分子ポリオールとして用いるポリエステルポリオールの構成成分として、ネオペンチル
グリコールを使用することを特徴とする印刷インキバインダ−に関する。更には該印刷イ
ンキバインダ−を含有してなる印刷インキ組成物に関する。
【0018】
本発明におけるポリエステルポリオールは、末端にヒドロキシル基を含有するポリエス
テルポリオールのことで、グリコールと二塩基酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合ま
たは重合させて得られる。
【0019】
本発明におけるポリエステルポリオールに用いるグリコールとして、ネオペンチルグリ
コールを用いることが必要である。ネオペンチルグリコールは分岐した2つのメチル基の
影響で、ノントルエン溶剤系でも溶解性を有し、かつポリオレフィンフィルムへの接着が
優れるポリウレタン樹脂用ポリエステルポリオールを得ることができる。また、分岐が2
つあるため回転しにくいからか強靭な皮膜を形成し、さらに炭素数が5つであるため耐加
水分解性も比較的優れている。ネオペンチルグリコールはグリコールの80重量%以上使
用することが必要である。また、グリコール成分のうち、ネオペンチルグリコールが80
重量%より少ないと、低温安定性やポリオレフィンフィルムへの接着性が確保できないた
め。80重量%以上の使用が必要である。
【0020】
また、ネオペンチルグリコールと併用するグリコールとして、1,4−ブタンジオール
が好ましい。1,4−ブタンジオールから得られるポリエステルは優れた皮膜物性を有す
る反面、結晶性が高いことから低温安定性やノントルエン系溶剤での溶解性が劣るが、ネ
オペンチルグリコールと併用することで、皮膜物性と溶解性を両立することができる。ま
た常温常圧において固体のネオペンチルグリコールと異なり液状であるため、ポリエステ
ル製造時に初期の熱伝導効率を上げることや、ネオペンチルグリコールの昇華析出を防ぐ
から点も併用グリコールとして好ましい。
【0021】
さらに、ネオペンチルグリコールと併用するグリコールとして、エチレングリコールも
好ましい。エチレングリコールも、1,4−ブタンジオールと同様の理由で併用モノマー
として好ましい。また、ネオペンチルグリコールのポリエステルは、比較的高粘度に仕上
がるため、これらのモノマーを併用することでポリエステルの粘度を若干下げることは、
ポリウレタン製造時のハンドリングという点でも好ましい。
【0022】
本発明におけるポリエステルに用いるその他の併用できるグリコールとしては、1,2
−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プ
ロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プ
ロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタン
ジオール、1,9−ノナンンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4
−ブチンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シク
ロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピ
レングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリ
メチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、
ソルビトール、ペンタエスリトール、各種アミノアルコールなどの飽和または不飽和の低
分子ポリオール類(1)等が挙げられる。耐ブロッキング性やノントルエン系溶剤への溶
解性などから、併用グリコールの量は、グリコール成分中の10重量%未満が好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエステルに用いるニ塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソ
フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グル
タル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメ
リット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物(3)が挙げられる。この中で、
ノントルエン系溶剤への溶解性などからアジピン酸を用いることが好ましく、多価カルボ
ン酸モノマー中50重量%以上使用することがさらに好ましい。
【0024】
なお、本発明に使用するポリエステルポリオールのグリコールと二塩基酸における重量
%は、仕込み時のモノマーの比率とする。実際には、モノマーの性質や形成されるオリゴ
マーの揮発しやすさにより、製造時の減圧工程で失われる度合いがモノマー種で異なるた
め、仕込み比率と仕上がり組成は若干異なると考えられる。
【0025】
本発明に使用するポリエステルポリオールの数平均分子量は、得られるポリウレタン樹
脂の溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定され、通常は700〜10
0000、好ましくは1000〜6000の範囲内とするのがよい。該数平均分子量が7
00未満であればハードセグメントの量が多くなることによる溶解性の低下に伴い印刷適
性が劣る傾向があり、他方10000を越えるとハードセグメントの割合が少なくなり、
乾燥性及び耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明のポリエステルポリオールの酸価は1.0mgKOH/g以下であることが好ま
しく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が1.0mgKOH/
gより大きいと、ポリウレタン樹脂ワニスや印刷インキの経時増粘の傾向が大きくなるた
めである。
【0027】
ポリエステルポリオールは、高分子ポリオール中の50重量%以上用いることが好まし
い。50重量%より少ないと、耐ブロッキング性やボイル適性と、印刷適性に影響を与え
る溶解性を両立することができない。
【0028】
さらに、本発明に使用できるポリエステルポリオール以外の高分子ポリオールとしては
、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の
オキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチ
ロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポ
リエーテルポリオール(2)、環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバ
レロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して
得られるポリエステルポリオール類(3)、前記低分子ポリオール類などと、例えばジメ
チルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反
応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4)、ポリブタジエングリコール類
(5)、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリ
コール類(6)、1分子中に1個以上の(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロプル、(メタ
)アクリルヒドロキシブチル等、(メタ)アクリル酸の誘導体とを共重合することによっ
て得られるアクリルポリオール(7)などが挙げられる。
【0029】
ポリエーテルポリオール類(2)は多くのポリウレタンに使用されており、特にポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールは、水やアルコールへの溶解性が優れるため、ポリエステル系ポリウレタンに別の溶剤溶解性を付与することができるため、多くの用途の場合、併用することが好ましい。これらの特性を発現させ、かつ耐水性などを低下させないために、ポリエーテルポリオールの分子量は700〜3000、高分子ポリオール中の50重量%以下とすることが好ましい。
【0030】
本発明のポリウレタン樹脂は、高分子ポリオールをポリイソシアネート反応せしめイソ
シアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後に、これを鎖延長剤と反応させこと
が好ましい。
【0031】
前記ポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の
製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート
、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネ
ート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニル
ジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジ
フェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、
1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン
ジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメ
チルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,
4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジ
メリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1
,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシア
ネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート
、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロ
ロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジル
クロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソ
シアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上
を混合して用いることができる。
【0032】
また、前記ポリウレタン樹脂に使用される鎖延長剤とはポリエステルポリオールの合成
に用いた低分子ポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレン
ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシ
クロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジア
ミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミ
ン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン
、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジア
ミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチ
レンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖延
長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
また、反応停止を目的とした末端停止剤として、一価の活性水素化合物を用いることも
できる。かかる化合物としては例えば、1級、2級のアミノ基を有する化合物、ジ−n−
ブチルアミン等のジアルキルアミン類や水酸基を有するアミノアルコール類、エタノール
、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂
中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応
停止剤として用いることができる。この中で、1級、2級のアミノ基を有するアミノアル
コール類は、末端停止剤として用いる場合、高温での反応を避けて、アミノ基のみ反応す
るよう制御する必要がある。これらの末端停止剤は単独で、または2種以上を混合して用
いることができる。ここで、鎖延長剤にアミノ基を用いる場合、イソシアネート基と反応
してウレア結合を形成するため、得られる樹脂はポリウレタン/ウレア樹脂になるが、本
発明においては、これらの樹脂もポリウレタン樹脂とする。
【0034】
前記ポリウレタン樹脂は、高分子ポリオールとポリイソシアネートを必要に応じイソシ
アネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であればウレタン化触媒を用いて10
〜150℃の温度で反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、
次いで、このプレポリマーに鎖延長剤、末端停止剤を反応させてポリウレタン樹脂を得る
プレポリマー法、あるいは、有機ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物と鎖延長
剤を一段で反応させてポリウレタン樹脂を得るワンショット法など公知の方法により製造
することが出来る。また、鎖延長剤は、高分子ポリオールとともにポリイソシアネートと
ウレタン化反応で使用することもできる。
【0035】
ウレタンプレポリマーを製造するに当たり、高分子ポリオールとポリイソシアネートと
の量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数と高分子ポリオールの水酸基
のmol数の比であるNCO/OH比を1.1〜3.0の範囲となるようにすることが好
ましい。この比が1.1より小さいときは十分な耐アルカリ性が得られない傾向があり、
また、3.0より大きい場合には得られるプレポリマーの溶解性が低下する傾向が認めら
れる。
【0036】
また、反応には溶剤を用いることが反応制御の面で好ましい。使用できる溶剤としては
、ポリウレタン樹脂を溶解するものが好ましく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロ
フランなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢
酸ブチルなどのエステル類;クロルベンゼン、パークレンなどのハロゲン系炭化水素など
が挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合し混合溶媒として用いることもでき
る。
【0037】
さらに、このウレタン化反応には触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては
、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛
などの金属系の触媒などが挙げられる。これらの触媒は通常ポリオール化合物に対して0
.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0038】
上記で得られた末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと鎖延長剤であ
るジオール、ジアミン、トリオールなどとを10〜80℃で反応させ、末端に活性水素基
を含有する高分子量のポリウレタン樹脂が得られる。
【0039】
末端停止剤を用いるときには、末端停止剤と鎖延長剤とを一緒に使用して鎖延長反応を
行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に末端停止剤を単独に
添加して末端停止反応を行ってもよい。一方、末端停止剤を用いなくても分子量のコント
ロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方
法が反応制御という点で好ましい。
【0040】
末端停止剤は分子量をコントロールするために用いられる。使用量が多くなると得られ
るポリウレタン樹脂の分子量は低くなる。これは鎖延長剤と末端停止剤のプレポリマーに
対する反応性により変化するが、一般的に、末端停止剤のアミノ基や水酸基のmol数に
対する鎖延長剤のアミノ基や水酸基のmol数の比は0.5〜5.0の範囲が好ましい。
この比が5.0を越える場合には高分子量化するためドライラミネート適性が悪くなる傾
向があり、0.5未満の場合には分子量ならびに初期接着力が低下する傾向が認められる

【0041】
また、プレポリマー中のイソシアネート基の当量に対する鎖延長剤および末端停止剤の
アミノ基と水酸基の合計mol数の比は1.1〜3.0、好ましくは1.5〜2.0の範
囲となるようにして反応させる。この比が大きく鎖延長剤または末端停止剤の使用量が多
い場合にはこれらが未反応のまま残存し、臭気が残りやすくなる傾向がある。
【0042】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が20000から100000で
あることが好ましい。20000より小さいと、印刷物における耐ブロッキング性と耐溶
剤性の確保が難しく、100000より大きいと、本発明におけるエステル溶剤/アルコ
ール溶剤系にへの溶解性が劣ることから印刷効果の確保が難しい。
【0043】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、アミン価が0.5から20.0mgKOH/gで
あることが好ましい。アミン価が0.5より低いと、ポリオレフィン系フィルムへの接着
性の確保が難しく、20.0より大きいと、イソシアネート系硬化剤を添加した際のイン
キ安定性の確保が難しい。
【0044】
本発明の印刷インキ組成物に使用される溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳
香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系溶剤、酢
酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコー
ルモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
などのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール
、n−ブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモ
ノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤など公知の溶剤を使用できる。近年、作業環境
の観点からトルエン、キシレンといった芳香族有機溶剤や、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトンといったケトン系溶剤を排除する要望があるが、本発明の印刷インキバ
インダーでは、これを排除しエステル系溶剤/アルコール系溶剤主体などでインキ設計す
ることも可能である。また、ポリウレタン樹脂ワニスの溶剤成分もこの中から適宜選択で
きる。
【0045】
本発明の印刷インキ組成物に用いられる樹脂は、用途や基材に応じて、様々な樹脂を選
択することができる。用いられる樹脂の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂
、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポ
リアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フ
ェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、
およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2
種以上を混合して用いることができ、その含有量は、インキの総重量に対して5〜25重
量%が好ましい。
【0046】
本発明の印刷インキ組成物に使用する着色剤の種類に応じて、プロセス基本色として白
の他に、黄、紅、藍、墨の合計5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(
緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほ
ぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。
【0047】
印刷インキでは、特色として複数の色相を混合して目的の色相を得る手法があり、特に
白インキにはトーニングという所作、例えば少量の藍インキを混合する場合がある。本発
明における白インキも、他のインキと混合することができる。さらにインキを混合する以
外に、本発明における白インキに、必要に応じて有機顔料、無機顔料、染料を混合するこ
とができる。
【0048】
本発明の印刷インキ組成物に用いることができる白色系無機顔料としては、酸化チタン
、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカなどが挙げ
られる。白インキの顔料には酸化チタンを用いることが着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐
候性の点から好ましい。
【0049】
白色系以外の無機顔料としては、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)な
どの顔料が挙げられる。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および
安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィン
グを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0050】
本発明の印刷インキ組成物に有色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録
剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。併用できる有機顔
料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、
キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン
系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げら
れる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.
I. Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0051】
着色剤は、印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの
総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤
は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
本発明の印刷インキ組成物は、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分
散することにより製造することができる。具体的には、顔料を前記併用樹脂、および前記
分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に
応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0053】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに
顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性
、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散
剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、かつ
、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましい。さらに
、0.1〜2重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0054】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディア
の充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節する
ことにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラー
ミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0055】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させる
ため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用すること
ができる。
【0056】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から1
0mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以
下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃に
おいて測定された粘度である。
【0057】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば樹脂、着色剤、有機溶剤などを
適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度
分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0058】
本発明の印刷インキ組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で用
いることができる。例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈さ
れ、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0059】
本発明の被覆物は、本発明の印刷インキ組成物を、ポリエチレン、ポリプロピレンなど
のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポ
リエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン
、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もし
くはこれらの複合材料からなるフィルム状もしくはシート状の基材に、上記の印刷方式を
用いて塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで、得ることができ
る。
【0060】
基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコール
などがコート処理が施されていても良く、さらにコロナ処理などの表面処理が施されてい
ても良い。
【0061】
更に、この印刷物の印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン
系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクスト
ルージョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工
し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート法、印刷面に直接溶融ポリプロピ
レンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により、本発
明のラミネート積層物が得られる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および
重量%を表わす。なお、水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰の無水酸でエステル化または
アセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水
酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。ア
ミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の
水酸化カリウムのmg数である。酸価は、樹脂1g中に含有する酸基を中和するのに必要
とする水酸化カリウムのmg数で、測定方法は既知の方法でよく、一般的にはJIS K
0070(1996年)に準じて行われる。アミン価の測定方法については、後述の通り
行なった。分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分
子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。アミン価の測定方法は、下記
の通りである。
【0063】
[アミン価の測定方法]
試料を0.5〜2g精秤する。(試料量:Sg)精秤した試料に中性エタノール(BD
G中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.2mol/lエタノール性塩酸
溶液(力価:f)で滴定を行なう。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時
の滴定量(AmL)を用い次の(式1)によりアミン価を求めた。
(式1) アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S
【0064】
[合成例1−1]
攪拌機、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、ネオペンチル
グリコール43.84部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール8.89部、アジピン
酸56.155.55部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃
で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が
15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。
これにより水酸基価22.4mgKOH/g(水酸基価から算出される数平均分子量50
00)、酸価0.3mgKOH/gのポリエステルジオ−ル(PES1)を得た。
【0065】
[合成例2−1〜26−1]
表1、表2の仕込み比にて、合成例1−1と同様の操作で、ポリエステルジオ−ル(P
ES2〜26)を得た。尚、数平均分子量については合成例1−1と同じく水酸基価から算出した。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
[合成例1−2]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエ
ステルジオ−ル(PES1)18.550部、数平均分子量2000のポリプロピレング
リコール(以下PPG2000と表記する)3.174部、イソホロンジイソシアネート
2.352部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸n−プロピル10
.000部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液34.076部を得た
。次いでイソホロンジアミン0.910部、ジn−ブチルアミン0.014部、酢酸n−
プロピル46.250部およびイソプロピルアルコール18.750部を混合したものへ
、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液34.076部を室温で徐々に添
加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分25%、重量平均分子量80000、アミン
価1.5 mgKOH/樹脂1gのポリウレタン樹脂溶液(PU1)を得た。
【0069】
[合成例2−2〜26−2]
表3〜6の仕込み比にて、合成例1−2と同様の操作で、ポリウレタン樹脂溶液(PU
2〜26)を得た。
【0070】
【表3】



【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
[実施例1]
チタニックスJR−805(テイカ社製)30部、ポリウレタン樹脂溶液(PU1)1
0部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)10.
0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU1)40部、酢
酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)10.0部を攪
拌混合し白色印刷インキ(W1)を得た。得られた白色印刷インキ(W1)100部に、
酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比75/25)50部を希釈
溶剤として添加混合し、白色希釈印刷インキ(WD1)を得た。
【0075】
[実施例2〜8][比較例1〜5]
実施例2〜8、比較例1〜5については対応するポリウレタン樹脂(PU2〜8、PU
9〜13)を用い実施例1と同様な方法で白色印刷インキW2〜8、W9〜13、及びそ
れらの希釈インキである白色希釈印刷インキ(WD2〜8、WD9〜13--)を得た。表
7,8に配合を示す。
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

【0078】
[実施例9]
銅フタロシアニン藍(リオノールブルーKLH 東洋インキ製造(株)社製)12部、ポ
リウレタン樹脂溶液(PU14)20部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混
合溶剤(重量比70/30)10部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン
樹脂溶液(PU14)20部、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶剤(重
量比70/30)38部を攪拌混合し、藍色印刷インキ(C1)を得た。得られた藍色印
刷インキ(C1)100部に、酢酸n−プロピル/イソプロピルアルコール混合溶液(重
量比70/30)50部を希釈溶剤として添加混合し、藍色希釈印刷インキ(CD1)を
得た。
【0079】
[実施例10〜16][比較例6〜10]
実施例10〜16、比較例6〜10については対応するポリウレタン樹脂(PU15〜
21)、PU22〜26)を用い実施例9と同様な方法で藍色印刷インキC2〜8、C9
〜C13、及びそれらの希釈インキである藍色希釈印刷インキ(CD2〜8、CD9〜1
3)を得た。表9,10に配合を示す。
【0080】
【表9】



【0081】
【表10】



【0082】
実施例1〜16、比較例1〜10で得られた印刷インキ組成物について低温安定性、耐
ブロッキング性、テープ接着性の試験を行なった。尚、低温安定性については、印刷イン
キ組成物は対応するポリウレタン樹脂と同様な傾向を示したが、その評価結果はポリウレ
タン樹脂の方が顕著に現れたため、評価対象はポリウレタン樹脂(PU1〜26)とした

評価方法と評価基準は下記の通りである。結果を表11、12に示す。
【0083】
【表11】

【0084】
【表12】

【0085】
[低温安定性]
ポリウレタン樹脂溶液を評価した。ポリウレタン樹脂溶液自身も、生産効率上、低温で
の流動性が必要とされる。得られたポリウレタン樹脂溶液(PU1〜26)を50gを7
0gガラス製サンプル瓶に入れ、−5℃の恒温槽にて12時間放置後、低温安定性を次の
基準に従って評価した。
○ :外観は透明のままで、流動性が有る。
○△:やや不透明になる
△ :白濁し、流動性が低下する。
△×:分離、沈殿する。
× :固化、及びゲル化する。
実用レベルは〇である。
【0086】
[印刷物の評価]
NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μ
m(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクタ
ーブレード、東洋プリプレス株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(スタイ
ラス角度120度、色インキ用:250線/inch、白インキ用:200線/inch
)、および実施例1〜16および比較例1〜10で得られた希釈印刷インキを富士機械工
業株式会社製グラビア印刷機にセットしドクター圧2kg/cm2、100m/分の回転
速度で版を60分間空転した後に、片面コロナ処理OPPフィルム「パイレンP2161
(東洋紡績株式会社製)」のコロナ処理面に、印刷速度100m/分で印圧2kg/cm
2で印刷、60℃の熱風で乾燥し、印刷物を得た。印刷中は、粘度コントローラーを用い
て、各々の希釈溶剤を適宜補充して一定の粘度を保っている。
【0087】
1.耐ブロッキング性
印刷物を4cm×4cmにサンプリングし、このサンプルの印刷面と同じ大きさの未印
刷フィルムの非処理面とを合わせて、40℃12時間、10kgfの加圧を行い、サンプ
ルを剥離した時の、インキ取られと抵抗感とを観察した。
◎ :印刷物からインキの転移が全く認められず、剥離時の抵抗感もなかった。
〇 :印刷物からインキの転移が全く認められず、剥離時の抵抗感も少なかった。
○△:印刷物からインキの転移が全く認められなかった。
△ :印刷物からインキの転移がわずかに認められた。
△×:印刷物からインキの転移が、面積にして50%程度認められた。
× :印刷物からインキの転移が、ほとんどの面積で認められた。
実用レベルは〇である。
2.接着性
印刷物皮膜にセロハンテープ(ニチバン製、幅12mm)を貼り付け親指で5回強く擦
った後、セロハンテープを徐々に引き離し途中から、急激に引き離してインキ皮膜の剥離
の程度を調べた。
○ :急激に引き離しても全くインキの剥離が認められない。
○△:急激に引き離すとインキの剥離が僅かに認められた。
△ :ゆっくり引き離しても全くインキの剥離が認められないが、急激に引き離すと
インキの剥離が認められた。
△×:ゆっくり引き離しても50%程度の面積のインキの剥離が認められた。
× :ゆっくり引き離してもほとんどのインキの剥離が認められた。
実用レベルは〇である。
【0088】
評価結果を表11、12にまとめる。実施例1〜8、9〜16のポリウレタン樹脂、印
刷インキは、比較例1〜5、6〜10の印刷インキと比較してノントルエン溶剤系でも優
れた印刷適性や低温安定性を示し、かつ耐ブロッキング性やラミネート適性を確保できる
、印刷インキを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるポリウレタン樹脂を含む印
刷インキバインダーにおいて、
高分子ポリオールが、
グリコールおよび二塩基酸からなるポリエステルポリオールを、高分子ポリオー
ル全量に対して50重量%以上
含有し、かつ
前記グリコールが、
前記グリコール全量に対して、80重量%以上のネオペンチルグリコール
であることを特徴とする印刷インキバインダー。
【請求項2】
グリコールが、1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする請求項1記載の印刷イ
ンキバインダー。
【請求項3】
グリコールが、エチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1記載の印刷インキ
バインダー。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の印刷インキバインダーを含有する印刷インキ組成物。
【請求項5】
基材上に、請求項4記載の印刷インキ組成物を印刷してなる皮覆物。
【請求項6】
請求項5記載の皮覆物の印刷面にラミネートしてなるラミネート積層物。


【公開番号】特開2012−12596(P2012−12596A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125162(P2011−125162)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】