印刷システム、印刷装置のメンテナンス方法、メンテナンス制御プログラム
【課題】 ユーザーがメンテナンスの必要性を感じないようなときも例外なく毎回自動的にメンテナンスが実施されてしまい、ユーザーにとって使い勝手がよくなかった。
【解決手段】 ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定し、正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定し、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し、前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付け、前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施する。
【解決手段】 ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定し、正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定し、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し、前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付け、前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷装置のメンテナンス方法、メンテナンス制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからのインクの吐出状態を検出し、吐出状態に応じたメンテナンスを自動的に実施する機能を有する印刷装置が知られている。特許文献1には、各ノズルのインクの吐出状態(目詰まり状態や、吐出方向が異常である不安定吐出状態)を検出し、目詰まり状態の場合には例えばノズルからインクを吸引する動作を含むメンテナンスを実施し、不安定吐出状態の場合にはインクの消費量が吸引より少なくて済むその他の軽微なメンテナンス(例えば、フラッシングや小ドット吐出、ワイピング、低い周波数でのインク吐出など)を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−175849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目詰まり状態のノズルが存在する場合は、印刷結果として所謂ドット抜けが発生する。不安定吐出状態のノズルが存在する場合、印刷結果としては正常状態と比較して例えば色が薄くなったように見える。しかし、そのように本来印刷されるべき状態と比較して例えば印刷結果の色が薄いことは、ドット抜けの発生よりも目立たないので、ユーザーには認識されにくい。印刷装置が実施するノズルの検査によって不安定吐出状態のノズルが存在することが判明した場合であっても、ユーザーにとっては、画質の異常に気付かないことやあるいは画質に及ぼす影響が許容範囲内であること等もあり得るため、そのようにユーザーがメンテナンスの必要性を感じないようなときも例外なく毎回自動的にメンテナンスが実施されてしまうと、ユーザーにとって使い勝手がよくない。
本発明は、不安定吐出状態のノズルが検出されたとき、メンテナンスの実施の有無にユーザーの意思を反映させることができることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するための印刷装置は、ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定手段と、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷手段と、前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付手段と、前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス手段と、を備える。
【0006】
はじめに、本明細書において、目詰まり状態とは、ノズルからインク滴がほぼ吐出していない状態を意味しており、所謂ドット抜けが発生する状態である。不安定吐出状態は、ノズルからインク滴は吐出しているものの、インク滴の吐出方向が異常な状態を意味している。例えば印刷面に対してインク滴が垂直に飛行せずに曲がったり、一つのノズルから複数の方向にインク滴が飛び散ったりしている状態である。
【0007】
不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると毎回例外なく自動的にメンテナンスが実施される構成であると、ユーザーに不都合を感じさせてしまう可能性がある。例えば、吐出方向異常による多少の画質劣化は許容範囲内でありメンテナンスの必要性を感じないというユーザーも存在するであろうし、その後に印刷する印刷物の内容に応じてどの程度の画質劣化まで許容範囲とするかが変わることも考えられる。であるので、不安定吐出状態のノズルが存在することによる印刷結果の画質への影響がユーザーにとって許容範囲内である場合にも、常に例外なくメンテナンスが実施されると、メンテナンスに要する時間やインクがユーザーの意思に反して無用に消費されてしまう。この発明によると、不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合は、ノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し当該パターンをユーザーに目視確認させ、メンテナンスを実施するかどうかユーザーに判断させてその判断に従うことができる。その結果、不安定吐出状態のノズルが存在する場合に例外なく常に自動的にメンテナンスが実施されてしまう構成と比較すると、時間やインクの消費を抑えることができ、ユーザーの要望に添うことができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記判定手段によって前記目詰まり状態のノズルが存在すると判定されると、前記ユーザーの指示に関わらず自動的に吸引動作を含むメンテナンスを実施してもよい。
【0009】
目詰まり状態のノズルが存在する場合は、不安定吐出状態のノズルが存在する場合より、画質に与える影響が大きい。そのため、目詰まり状態を速やかに解消するために他のメンテナンス方法より効果的な吸引動作を含むメンテナンスを、ユーザーの判断にかかわらず自動的に実行することで、速やかに目詰まり状態を解消させることに貢献できる。
なお、メンテナンスの種類と特徴に関して次のA〜Cの前提がある。吸引動作を含むメンテナンスは吸引動作を含まないメンテナンスより所要時間やインクの消費量が多い(A)。一方、ノズルの異常(目詰まり、不安定吐出)を確実に回復する効果は、吸引動作を含むメンテナンスが吸引動作を含まないメンテナンスより高い(B)。不安定吐出状態は吸引動作を含まないメンテナンスで解消できることもある(C)。
【0010】
(3)上記目的を達成するための印刷装置において、前記測定手段による前記実測値の測定は、ノズルチェックシーケンスが開始されると実施され、以降、前記メンテナンス手段によるメンテナンスが実施される度に繰り返し実施され、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合であって、前記ノズルチェックシーケンスが開始されてから前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを予め決められたN回(Nは自然数)以上既に実施済みの場合に、エラーメッセージを前記ユーザーに案内する案内手段をさらに備え、前記チェック画像印刷手段は、前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを前記N回以上実施済みの場合、前記チェック画像を印刷しなくてもよい。
【0011】
この場合、ノズルチェックシーケンスの開始時から起算してN回以上メンテナンスを実施しても不安定吐出状態が回復しなければ、チェック画像の印刷および目視チェックの繰り返しを終えて、何度かメンテナンスを実施したけれど回復しない旨や、あるいは故障なので修理または部品交換等の旨をユーザーに伝えることができる。
【0012】
(4)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記メンテナンスの実施が必要であるとの前記ユーザーの指示が前記ノズルチェックパターンの印刷後に受け付けられると、まず前記吸引動作を含まないメンテナンスを実施し、前記吸引動作を含まないメンテナンスを予め決められたN1回(N1は前記N未満の自然数)実施してもなお前記不安定吐出状態のノズルが正常状態に回復しない場合に前記吸引動作を含むメンテナンスを実施してもよい。
【0013】
メンテナンスの種類と特徴に関して前述のA〜Cの前提がある。本発明によると、不安定吐出状態のノズルが存在する場合はまず吸引動作を含まないメンテナンスを実施することによって、なるべく少ないインクの消費量で回復を試みることができる。N1回吸引動作を含まないメンテナンスを実施しても回復しない場合は、インク消費量は多いが回復の可能性が高い吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって、不安定吐出状態の回復の可能性を高めることができる。
【0014】
(5)上記目的を達成するための印刷装置において、前記チェック画像に含まれる前記ノズルチェックパターンは、前記不安定吐出状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、当該ドット群と対比させるためのドット群であって前記正常状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、を少なくとも含んで構成されることを条件とし、前記不安定吐出状態のノズルの数、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数のうちの少なくともいずれか一つに応じて構成されてもよい。
【0015】
本発明によると、全てのノズル列やノズル列内の全てのノズルを毎回用いて毎回同じように構成されたノズルチェックパターンを含んだチェック画像が印刷されるわけではなく、前記条件を満たした上でノズルチェックパターンとして必要のないドット群は印刷されない。したがって、ノズルチェックパターンとして印刷されるドット数を少なくすることができるため、チェック画像の印刷に消費されるインクの消費量を抑制することができる。また、上記条件を満たした上でノズルチェックパターンとして必要のないドット群がチェック画像内に存在しないため、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果を目視しやすくすることができる。
【0016】
(6)上記目的を達成するための印刷装置において、前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定してもよい。
ノズルの配列面に設けられた平板電極とその電極と対向する平板電極との間の静電容量は、インク滴がノズルから吐出されていない状態のときと、インク滴がノズルから吐出されノズルから離れる直前までの状態とで変化する。静電容量が変化することによって電流が流れ平板電極の電位が変化する。本発明ではこの電位変化量を測定することによって、インクの吐出状態の判断材料とすることができる。
【0017】
なお、請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせにより実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに、本発明は上記の内容を実施する方法や、上記の機能を有するプログラムや、当該プログラムを記録する記録媒体としても成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態にかかるキャリッジの移動範囲を説明する模式図。
【図3】第一実施形態にかかるノズル面を示す模式図。
【図4】第一実施形態にかかるヘッドおよびキャップを示す模式図。
【図5】第一実施形態にかかるキャップを示す模式図。
【図6】第一実施形態にかかる吐出状態検査の構成を説明する図。
【図7】(7A)〜(7C)は第一実施形態にかかる吐出状態検出に使用する信号を示す図。
【図8】第一実施形態にかかる二つの閾値の関係を示す図。
【図9】第一実施形態にかかるノズルチェックシーケンスを示すフローチャート。
【図10】第一実施形態にかかる吐出状態検査処理を示すフローチャート。
【図11】(11A)は第一実施形態にかかる印刷予定のチェック画像を示す模式図、(11B)は(11A)の印刷結果例を示す拡大図、(11C)は(11B)の全体図
【図12】(12A)は第一実施形態にかかるチェック画像の印刷結果例を示す全体図、(12B)は他の実施形態にかかるチェック画像の印刷結果例を示す全体図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
1.第一実施形態
1−1.概要
図1は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以降、単にプリンターという)とパーソナルコンピューター(PC)100とを有する印刷システムを説明するブロック図である。本実施形態では、PC100とプリンター1とが協業することによって、プリンター1のノズルのインクの吐出状態を検査し、吐出状態に応じて自動的にメンテナンスを実施したり、あるいはユーザーの指示に従ってメンテナンスを実施したりする機能を実現する。
【0021】
1−2.構成
PC1は、プリンタードライバー、アプリケーションプログラム、OS等の各種のコンピュータープログラムが格納されているハードディスク装置(HDD)110、これらのコンピュータープログラムがロードされるRAM111、これらのコンピュータープログラムを実行するCPU112、起動プログラムが格納されているROM113、外部機器と接続するための外部インターフェイス(I/F)114、これらを接続するための内部I/F115等を備える。外部I/F114には、PC1をユーザーが操作するためのマウス150、キーボード151、ディスプレイ152や、プリンター1が接続される。
【0022】
プリンター1は、外部I/F10、用紙搬送部11、キャリッジ部12、ヘッド部13、吐出状態検出部15、キャップ部16、コントローラー18、それらを接続する内部I/F9等を備える。コントローラー18は、ファームウェアや各種のデータを記憶する不揮発性メモリー、ファームウェアがロードされるRAM、ファームウェアを実行するCPU等を備え、プリンター1における全体的な制御を行う。コントローラー18は、PC100から印刷データを取得すると、制御対象部を制御し、印刷媒体に画像を印刷させる。外部I/F10は、他の装置と接続し通信を行うためのインターフェイスであり、コントローラー18は外部I/F10を介してPC100との間でデータの受け渡しを行う。
【0023】
用紙搬送部11は、図示しない紙送りローラー、紙送りモーター、モーター駆動部等を備え、図2に示すように用紙を副走査方向(用紙搬送方向)に搬送させる。キャリッジ部12はヘッドHDが取り付けられたキャリッジCRと図示しないキャリッジモーターやモーター駆動部等を備え、キャリッジCRを図2に示すように主走査方向(用紙搬送方向に直交する方向)に移動させる。キャリッジCRには図示しないインクカートリッジを着脱可能に装着するためのカートリッジ装着部が設けられている。各インクカートリッジには異なる色のインクが収容される。
【0024】
ヘッド部14はヘッドHD等を有する。ヘッドHDは図示しない駆動信号生成回路から出力された駆動信号によって駆動され、インクカートリッジから供給されたインクを印刷媒体に向けて吐出させる。ヘッドHDの用紙対向面(図3および図4のノズルプレート222)には、インク滴を吐出するための多数のノズルNzが設けられている。ノズルプレート222は導電性を有する板状の部材(例えば薄手の金属板)によって作製され、グランド線に接続されてグランド電位に調整されており、平板電極として機能する。
【0025】
図3に例示したノズル群は、ノズルNzが1/180インチピッチで設けられたノズル列を複数有する。各ノズル列は、それぞれ吐出するインクの種類を定めることができる。本実施形態ではヘッドHDには6つのノズル列(NLk、NLy、NLc、NLm、NLlc、NLlm)が設けられている。各ノズル列は180個のノズルNzで構成される。
【0026】
キャップ部16は、ノズルNz群が望む空間を形成するキャップ31(図2・図4参照)、ワイパー33、ノズル面に対してキャップの位置を移動させる機構等を有する。キャップ31は、長方形状の底部と底部の周縁から起立する側壁部とを有し、ノズルプレート222と対向する上面が開放された薄手の箱状をしており、図2に示すように常に非印刷エリアに配置されている。キャリッジCRが非印刷エリアに移動したときキャップ31の上端をノズル面に密着させることによってノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制する。
【0027】
キャップ31の空間には、廃液チューブ314が接続され、廃液チューブ314には図示しない吸引ポンプが接続されている。キャップ31の上部の開口縁がノズルプレート222に密着した状態で吸引ポンプを動作させると、キャップ31側からノズルNzを通してヘッドHD内のインクや空気を吸引することができる(吸引動作)。キャップ31はプリンター1の状態に応じて非印刷エリア内でノズル面に対して移動する。ノズルNzの吐出能力を回復させるために各ノズルNzから連続的にインク滴を吐出させるフラッシング動作時や、後述する吐出状態検査時には、図4に示すようにノズル面とキャップ31との間に僅かな隙間を空けた状態となる。印刷動作時には図4よりもノズル面からさらに離れた待避状態となる。
【0028】
キャップ31の底部には、フェルトやスポンジ等の多孔質材で作製されたシート状の保湿部材312が配置される(図5参照)。フラッシング動作時や吐出状態検査時にはこの保湿部材312にインクが着弾する。また、保湿部材312の表面には、検出用電極313が配設されている。この検出用電極313は、後述するインクの吐出状態検査に用いられる。例示した検出用電極313は、二重の矩形枠部と、矩形枠部の対角同士を結ぶ対角線部と、矩形枠部の各辺の中点同士を結ぶ十字部とを有している。この構造によって、広い範囲に亘って一様に帯電される。インクは導電性を有する液体であり、保湿部材312が湿った状態で検出用電極313を高電位にすると、保湿部材312の表面も同じ電位になる。そのため、検出用電極313と保湿部材312とが平板電極として機能する。ワイパー33はキャップ31の傍に設けられており、ヘッドHDのノズル面(ノズルプレート222)を拭き取るワイピング動作を行う。
【0029】
なお、ノズルNzの吐出能力を回復させるためのメンテナンス手法に関しては、前述した吸引動作およびフラッシング動作の他に、微振動動作がある。微振動動作は、インク滴が吐出されない程度の圧力変化を与えることで、ノズルNzで露出しているインクの自由表面を吐出側と引き込み側とに移動させ、攪拌によってノズル付近の増粘インクを分散させる動作である。また、フラッシング動作の中にも、吐出させるインク滴の量を変えたり(ドットの大きさを変える)、駆動周波数を変えたり(単位時間当たりの吐出回数を変える)するなどが可能である。なお、これらの吸引動作、フラッシング動作及び微振動動作に関し、ノズルNzの吐出能力を回復させる度合いは、吸引動作が最も高く、微振動動作が最も低い。また、各動作におけるインクの消費量は、吸引動作が最も多く、微振動動作が最も少ない。各メンテナンス動作にはこのような特性の違いがあるため、プリンター1では、状態の違いに応じてこれらの動作を使い分けている。なお、本実施形態では吸引動作はノズル単位やノズル列単位ではなくノズルプレート222の全てのノズルに対して実施されるものとする。フラッシング動作や微振動動作はノズル単位で実施されてもよいしノズル列単位であってもよいし全てのノズル列のノズルに対して実施されてもよい。ワイピング動作はノズルプレート222全体に対してなされる。
【0030】
吐出状態検出部15は、図6に示すように、高圧電源ユニット41、抵抗42、コンデンサー44、増幅器45、検出制御部47を有し、各ノズルNzのインクの吐出状態を検出する。高圧電源ユニット41は、検出用電極313を所定電位にする電源であり、本実施形態では、500V〜600V程度の直流電源によって構成され、検出制御部47からの制御信号によって動作が制御される。抵抗42は、その一端が、高圧電源ユニット41の出力端子と接続され、その他端は検出用電極313に接続されている。コンデンサー44は、検出用電極313の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極313に接続され、他方の導体が増幅器45に接続されている。増幅器45は、コンデンサー44の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。検出制御部47は、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される記憶部、増幅器45から出力された増幅後のアナログ電圧信号をデジタル値に変換するAD変換部等を備え、吐出状態検出部15全体の制御を行う。
【0031】
(吐出状態検査の原理)
ノズルプレート222はグランドに接続してグランド電位に、キャップ31に配置された検出用電極313を500V〜600V程度の高い電位にされている。これらのノズルプレート222と検出用電極313とを、所定間隔d(図6を参照)を空けた状態で配置し、検出対象のノズルNzからインク滴を吐出させる。ノズルプレート222と検出用電極313とを所定間隔dを空けて配置したことにより、コンデンサーが形成される。図6に示すように、グランドに接続されたノズルプレート222に接することでノズルNzから柱状に延びたインクもグランド電位になる。このようなインクの存在は、コンデンサーの電極間隔を局部的に縮めることと同意であり、静電容量を増加させる。静電容量が増加すると、ノズルプレート222と検出用電極313との間で蓄えることのできる電荷の量が増加するため、電荷が高圧電源ユニット41から抵抗42等を通って検出用電極313側へ移動する(検出用電極313へ向けて電流Iが流れる)。電流Iが流れると、検出用電極313の電位が変化する。検出用電極313の電位の変化は、コンデンサー44における他方の導体(増幅器45側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴の吐出状況を判定することができる。
【0032】
図7Aは、インクがノズルNzから正常に吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。駆動信号生成回路が検査対象の一つのノズルNzからインクを吐出させるための駆動信号を生成すると、ノズルNzからインク滴が吐出される。これにより、増幅器45から電圧信号SGが出力される。検出制御部47は、この電圧信号SGの最高電圧VHと最低電圧VLとの差である電位差ΔVと、閾値との大小比較を行う。電位差ΔVは請求項に記載の実測値に相当する。
【0033】
本実施形態では、インクの吐出状態を次の3つの状態に区別する。正常状態と、ノズルからインク滴は吐出されているがインク滴の吐出方向が異常である不安定吐出状態と、ノズルが目詰まりしてインク滴が吐出されない目詰まり状態の3つである。図7Bは不安定吐出状態のノズルからインク滴が吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。インクが印刷媒体の面に対して垂直に着弾しないような不安定吐出状態の場合、ノズルから吐出される直前のインク滴の長さ(インク滴のキャップ31側に最も近い部分からノズルプレート222までの長さ)は正常状態の場合よりも短くなることが知られている。そのため、電位差ΔVも正常状態と比較すると小さくなる。不安定吐出状態のノズルの場合、そのノズルによるインクの着弾部分は、正常状態のノズルの着弾部分よりも例えば色が薄くなっているように見える。図7Cは目詰まり状態のノズルからインク滴を吐出させようとしたときの電圧信号SGを説明する図である。ドット抜けと呼ばれるような、ノズルが目詰まりしていてほとんどインク滴が吐出されないような状態では図7Cに示すように電位差ΔVは不安定吐出状態の場合と比較して小さな値となる。したがって本実施形態では上記の3つの状態を区別するために第一閾値TH1と第二閾値TH2の2つの閾値が用いられる。電位差ΔVが、第一閾値TH1(図8参照)以上であれば、インクが正常に吐出されている正常状態であると判断される。電位差ΔVが、第二閾値TH2より小さければ、インクが吐出されず目詰まり状態であると判断される。電位差ΔVが、第一閾値TH1より低く第二閾値TH2以上であれば、不安定吐出状態であると判断される。
【0034】
なお、このプリンター1で使用されるヘッドHDには、6つのノズル列NLk〜NLlmが設けられているため、1回の吐出状態検査では1080個(180個×6列)のノズルNzが検査対象になるが、このプリンター1では、15個のノズルNzが1つのブロックを構成しており(1つのノズル列が12個のブロックに分割されている)、吐出状態検査はブロック単位で行われる。
以上、吐出状態検査について説明した。
【0035】
以上の構成において、プリンター1の各ノズルのインクの吐出状態を検査し、吐出状態に応じて自動的にメンテナンスを実施したり、あるいはユーザーの指示に従ってメンテナンスを実施したりする機能を実現するために、プリンター1において実行されるファームウェアとPC100において実行されるプリンタードライバーとにそれらの機能を実現するためのプログラムが備えられる。なお、プリンタードライバーが実現する機能とファームウェアが実現する機能とは相互に補完的であるため、以降のノズルチェックシーケンスで説明するプリンタードライバーとファームウェアとの機能分担は単なる例示に過ぎない。本実施形態において、請求項に記載の測定手段は吐出状態検出部15に相当し、判定手段は吐出状態検出部15やコントローラー18に相当する。メンテナンス手段は、キャップ部16、ヘッド部13、コントローラー18に相当する。チェック画像印刷手段は、用紙搬送部11、キャリッジ部12、ヘッド部13、コントローラー18、CPU112,RAM113等に相当する。受付手段はマウス150やキーボード151、CPU112,RAM113等に相当し、案内手段はディスプレイ152、CPU112,RAM113等に相当する。
【0036】
1−3.動作
次に、以上の構成を有する印刷システムで実施されるノズルチェックシーケンスについて説明する。本実施形態の印刷システムでは、PC100から印刷指示を受けてプリンター1において印刷が実行される際、複数回に1回の割合でその印刷ジョブに対応する印刷動作の直前に図9に示すノズルチェックシーケンスが実施される。ノズルチェックシーケンスは、各ノズルのインクの吐出状態が目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態のいずれであるかを判定し、正常状態以外の2つの状態であればそれぞれの状態に対応する手順でメンテナンスを実施する処理である。なお、ノズルチェックシーケンスは、印刷動作に関連して実行される構成に限らず、PC100からメンテナンスを実施することを指示されたときに実行される構成であってもよい。
【0037】
1−3−1.ノズルチェックシーケンス
図9を参照しながらノズルチェックシーケンスについて具体的に説明する。はじめに、プリンター1のコントローラー18は、メンテナンス実施回数を初期化する(S100)。具体的には、吸引動作を含むメンテナンスを実行した回数を保持する変数と、吸引動作を含まないメンテナンスを実施した回数を保持する変数とを、「0」に初期化する。続いてコントローラー18は、吐出状態検査処理を実行する(S100、判定工程、測定工程)。吐出状態検査処理の詳細な流れについては図10を用いて後述するが、動作原理や処理内容は前述した通りである。
【0038】
続いて、コントローラー18は、図10に示す吐出状態検査処理を実行した結果、目詰まり状態のノズルの数が所定数以上か否かを判定する(S105)。具体的には、6つのノズル列の全てのノズルを検査した結果、目詰まり状態のノズルが所定数より多く存在しているか否かが判定される。所定数とは、吸引動作を含むメンテナンスを実施する条件とする数値であり、印刷結果の画質に及ぼす影響とコスト(メンテナンスに要する時間やインク消費量)とのバランスを考慮して予め決められている。本実施形態では、目詰まり状態のノズルが所定数未満の場合は、吸引動作を含むメンテナンスは実行されない。
【0039】
続いて、S110で目詰まり状態のノズル数が所定数以上でないと判定された場合、コントローラー18は不安定吐出状態のノズル数が所定数以上か否かを判定する(S115)。目詰まり状態のノズルも不安定状態のノズルも所定数未満の場合は、ノズルチェックシーケンスを終了する。S110で説明した内容と同様の理由で、本実施形態では不安定吐出状態のノズル数が所定数未満の場合はS135以降の処理を実施しない。なお、S110における所定数とS115は同じ値であることに限定されず、現状のままで画質に与える影響とメンテナンスした場合のコストとのバランスを考慮して適宜設定される。
【0040】
S110で、目詰まり状態のノズルが所定数を超えると判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスが予め決められたM回以上(Mは自然数)実施済みであるか否かを判定する(S120)。M回以上実施済みでないと判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを実施する(S125、メンテナンス工程)。吸引動作を含むメンテナンスは、吸引動作を少なくとも含むメンテナンスであり、本実施形態では吸引動作とフラッシング動作とワイピング動作とを実施する。目詰まり状態のノズルが所定数以上存在する場合は、不安定吐出状態のノズルが存在する場合より、画質に与える影響が大きいので、目詰まり状態を速やかに解消するために他のメンテナンス方法より効果的な吸引動作を含むメンテナンスを自動的に実行することで、速やかに目詰まり状態の解消させることに貢献できる。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスの実施回数を保持する変数をインクリメントしてS105に戻る。なお、S120で、吸引動作を含むメンテナンスをM回以上実施済みであると判定された場合、コントローラー18は、目詰まり状態のノズルが回復しなかった旨の情報をPC100に通知し、PC100はディスプレイ152にエラーメッセージを表示させる(S130)。S130の後ノズルチェックシーケンスは終了する。
【0041】
S115で、不安定吐出状態のノズルが所定数以上存在すると判定された場合、コントローラー18は、ユーザーの指示に従って実施されたメンテナンスがN回以上実施済みであるか否かを判定する(S135)。N回以上実施済みでない場合、チェック画像が印刷される(S140、チェック画像印刷工程)。具体的には、コントローラー18が、不安定吐出状態のノズルおよびそのノズルを有するノズル列を示す情報をPC100に通知し、通知された情報を用いてプリンタードライバーがチェック画像を生成しチェック画像を印刷するための印刷データをプリンター1に送信し、プリンター1のコントローラー18が用紙搬送部11・キャリッジ部12・ヘッド部13等を制御してチェック画像の印刷を行う。
【0042】
チェック画像には、不安定吐出状態の発生状況をユーザーに確認させるためのノズルチェックパターン(以降、単にパターンという)が含まれている。パターンは、不安定吐出状態の発生状況を視認しやすいように、不安定吐出状態のノズルによって用紙に形成されるドット群とともに正常状態のノズルによって用紙に形成されるドット群とを含んで構成される。例えば、S105で6つのノズル列のうちノズル列NLk(ブラックノズル列)においていくつかの不安定吐出状態のノズルが検出されていた場合、ノズル列NLkに属する正常状態のノズルからインクを吐出させることによって形成されるドット群と、ノズル列NLkに属する不安定吐出状態のノズルからインクを吐出させることによって形成されるドット群とで構成されたパターンを含んだチェック画像がPC100で生成される。
【0043】
図11Aは、PC100で生成されるチェック画像に含まれるパターンの一例を示す図である。PC100でプリンタードライバーの処理が実行されることにより、ノズル列NLkに属する全てのノズルのみを用いて用紙上に副走査方向に伸びる黒色の直線として印刷されるように構成されたパターン50aと、ノズル列NLkに属する全てのノズル列のみを用いて用紙上に主走査方向が副走査方向より長い矩形のパッチとして印刷されるように構成されたパターン50bとを含んだチェック画像50が生成される。そして、プリンタードライバーの処理により、パターン50a、50bを含むチェック画像50に解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、並べ替え処理などが施されることによって印刷データが生成され、プリンター1に送信される。プリンター1は受信した印刷データに基づいてノズル列NLkのみを用いたパターン50aと50bを含むチェック画像50を用紙に印刷する。
【0044】
図11Bは用紙に印刷されたチェック画像50に含まれるパターン50a、50bの拡大図の例を示している。50a1はパターン50aに対応し、50b1はパターン50bに対応する。図11Bにおいて、主走査方向に並ぶドットは同じノズルから吐出されたインク滴によって形成されたドットである。例えばノズル列NLkに、インクの吐出方向が副走査方向に曲がるノズルNz(#X)が存在する場合、そのノズルNz(#X)によって形成されたドット群DsXは、隣接する正常状態のノズル(Nz(#X-1)、Nz(#X+1))によって形成された一方のドット群DsX−1と一部重なり、他方のドット群DsX+1と離れて形成される。そのため、チェック画像50の印刷結果は、図11Cに示すように、直線が一部途切れたり(e1)、パッチ内に主走査方向に伸びる印刷媒体色の筋(e2)があるように印刷される。また、例えばノズル列NLkに、インクの吐出方向が主走査方向に曲がるノズルNz(#Y)が存在する場合、そのノズルNz(#Y)によって形成されたドット群DsYはそのドット群DsY全体が正常状態のノズルによって形成されたドット群より主走査方向にずれて印刷される。そのため、チェック画像50の印刷結果は、図11Cに示すように、直線が一部歪み(e3)パッチの副走査方向に伸びる辺の一部も歪んで(e4)印刷される。
【0045】
なお、副走査方向に吐出方向が曲がっているノズルがある場合は、パターン50aのような副走査方向に伸びる直線よりも、主走査方向にある程度長い領域にインクを着弾させるようなパターン50bの方が、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果をユーザーに認識させやすい。また、主走査方向に吐出方向が曲がっているノズルがある場合は、副走査方向に伸びる直線のパターン50aの方が、パターン50bより、主走査方向の曲がりをユーザーに認識させやすい。
【0046】
このように、本実施形態では、不安定吐出状態のノズルとそのノズルを有するノズル列の正常状態のノズルとのみを用いて構成されたパターンを印刷する。すなわち、常に全てのノズル列を用いて全てのノズル列のインク色のパターンを印刷するわけではなく、不安定吐出状態を視認させるための不要なノズル列のノズルによるパターンは印刷しない。そのため、チェック画像の印刷に消費されるインクの消費量を抑えることができるし、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果をユーザーに視認させやすくすることができる。なお、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の全てのノズル列を用いてパターンを形成することに限らず、例えば不安定吐出状態のノズルとその前後に隣接する所定個のノズルのみを用いてパターンを印刷するようにしてもよい(図12A参照)。そうするとさらにインクの消費量を抑えることができるし、パターンの副走査方向の中央部に不安定吐出状態のノズルによるドット群が印刷されることになるので不安定吐出発生箇所をさらに見つけやすくすることができる。以上の例の他にも、不安定吐出状態のノズルによって形成されたドット群と、不安定吐出状態のノズルの印刷結果と対比させるための正常状態のノズルによって形成されたドット群と、を少なくとも含むようにチェック画像が印刷されるならば、不安定吐出状態のノズルの数や、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置や、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数等に応じて様々な構成のチェック画像がS140において印刷されてよい。
【0047】
S140でチェック画像が印刷された後、PC100ではプリンタードライバーの処理によりメンテナンスを実施するか否かの選択を促すメッセージがディスプレイ152に表示させ、マウス150やキーボード151を用いてユーザーが選択操作を行うとプリンタードライバーはその操作を示す情報を取得する(S145、受付工程)。続いて、S145で取得した情報に基づいて、ユーザーがメンテナンスを実施するように指示したか否かがプリンタードライバーの処理により判定され(S150)、ユーザーがメンテナンスの実施を指示していないと判定された場合は、ノズルチェックシーケンスを終了し、その後印刷ジョブが実行される。
【0048】
S150において、ユーザーがメンテナンスの実施を指示したと判定された場合、コントローラー18は吸引動作を含まないメンテナンスをN1(N1はN未満の自然数)回以上実施済みであるか否かを判定する(S155)。吸引動作を含まないメンテナンスをN1回以上実施済みでない場合、吸引動作を含まないメンテナンスを実施する(S160、メンテナンス工程)。具体的には例えば、コントローラー18は、吸引動作を含まないメンテナンスとしてフラッシング動作とワイピング動作とを実施する。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含まないメンテナンスの実施回数を保持する変数の値をインクリメントしてS105に戻る。
【0049】
S155にて吸引動作を含まないメンテナンスをN1回以上実施済みあると判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを(N−N1)回以上実施済みか否かを判定する(S165)。吸引動作を含むメンテナンスを(N−N1)回以上実施済みでない場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを実施する(S170、メンテナンス工程)。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスの実施回数を保持する変数の値をインクリメントしてS105に戻る。すなわち本実施形態ではユーザーにメンテナンスを指示されるとまず吸引動作を含まないメンテナンスを実施することによって、なるべく少ないインクの消費量で回復を試み、N1回吸引動作を含まないメンテナンスを実施しても回復しない場合は、インク消費量は多いが回復の可能性が高い吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって、不安定吐出状態の回復の可能性を高めることができる。S165で(N−N1)回以上実施済みでない場合はノズルチェックシーケンスを終了する。
【0050】
S135にて、ユーザー指示によるメンテナンスをN回以上実施済みであると判定された場合、メンテナンスを試みたが不安定吐出状態が回復しない旨のエラーメッセージがディスプレイ152に表示され(S175、案内工程)、ノズルチェックシーケンスが終了する。したがって、予め決められた回数だけメンテナンスを繰り返し行っても不安定吐出状態が回復しなければ、チェック画像の印刷および目視チェックの繰り返しを終え、故障の旨をユーザーに伝えることができる。部品交換や修理の詳細な案内などがなされてもよい。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態では不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合は、ノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し当該パターンをユーザーに目視確認させ、メンテナンスを実施するかどうかユーザーに判断させてその判断に従うため、不安定吐出状態のノズルが存在する場合に例外なく常に自動的にメンテナンスが実施されてしまう構成と比較すると、時間やインクの消費を抑えることができ、ユーザーの要望に添うことができる。
【0052】
1−3−2.吐出状態検査処理
図9のS105の吐出状態検査処理の具体的手順を、図10を参照しながら説明する。吐出状態検査処理では、検出制御部47がまず検査対象となるノズル列を決定する(S200)。図3で説明したように、ヘッドHDにはノズル列が6つ設けられている。これら6つのノズル列のうち、1つのノズル列が検査対象となるノズル列として決定される。検査対象のノズル列が決定されると、検出制御部47は検査対象となるブロックを決定する(S205)。前述したように、1つのブロックは15個のノズルNzで構成されており、1つのノズル列には12個のブロックが含まれる。S205では、12個のブロックのうち、検査対象となる1つのブロックが決定される。
【0053】
検査対象のブロックが決定されると、検出制御部47はそのブロックについてインク滴の吐出および電圧信号SGの検出を行う(S210)。具体的には対象ブロックに属するノズルNzについてノズル一つ一つからインク滴を吐出させ、インク滴の吐出に起因して生じる電気的な変化、具体的には個々のノズルNzに対応付けて電位差ΔVを取得する。1ブロックに属する全てのノズルに対してS210の処理が終了すると、検出制御部47はインク滴の吐出と信号の検出が1ノズルあたり所定回数実行されたか否かを判定する(S215)。所定回数未満の場合は所定回数に達するまでS210を繰り返し実行する。複数回分のΔVの検出結果は上書きされて消えてしまうことなく複数回分それぞれ保持される。
【0054】
所定回数実行された後、検出制御部47はノズルごとに複数回分の電位差ΔVの代表値(中央値、最頻値、平均値など)を導出し、当該代表値を二つの閾値(第一閾値TH1と第二閾値TH2)と比較することによってノズル毎にインクの吐出状態を判定する(S220)。比較結果は、検出制御部47の記憶部に記憶される。例えば、比較結果として「第一閾値TH1以上」あるいは「第一閾値TH1未満で第二閾値TH2以上」あるいは「第二閾値TH2未満」を示す値が記憶される。なお、一つのノズルに対する複数回の検査結果の代表値を比較に用いることにより、インクの吐出状態の誤判定を防ぐことができる。
【0055】
続いて検出制御部47は検査対象のブロックが検査対象のノズル列における最終ブロックであるかを判定し(S225)、最終ブロックでなければS205に戻り、次のブロックについて前述の処理を行う。最終ブロックであれば、検出制御部47は検査対象ノズル列が複数のノズル列のうちの最終ノズル列であるか否かを判定する(S230)。最終ノズル列でなければコントローラー18はS200に戻り次のノズル列について前述の処理を行う。最終ノズル列であれば、これまでの判定結果を保持したままこの吐出状態検査処理を終了し、呼び出し元の処理に復帰する。
【0056】
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、測定手段は、レーザー光を照射してその光がノズルから吐出されるインク滴によって遮られるか否かによってインクの吐出状態を検出する構成であってもよい。また、インク滴の吐出方向まで検出できる構成を備えている場合(例えばノズル面から距離A離れた位置にノズル面と平行にレーザー光Laを照射し、ノズル面から距離B離れた位置にノズル面と平行であってLaと直交するレーザー光Lbを照射して吐出方向を検出する)であれば、曲がっている方向に応じてその印刷結果を視認しやすいパターンが含まれたチェック画像を印刷するようにしてもよい。例えばブラックノズル列NLkに吐出方向が主走査方向に曲がるノズルが存在し、シアンノズル列NLcに吐出方向が副走査方向に曲がるノズルが存在する場合、ノズル列NLkを用いて副走査方向に伸びる直線のパターンを印刷し(図12Bの50a1)、ノズル列NLcの不安定吐出状態のノズルとその近傍の正常状態のノズルを用いて主走査方向が副走査方向より長い矩形のパターンを印刷する(図12Bの50c1)ようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、PC100とプリンター1とで構成される印刷システムを説明したが、受付手段としてのキーや案内手段としての液晶パネルなどを備えたプリンターやスキャン機能やFAX機能などを備えたマルチファンクションプリンターに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:プリンター、9:内部I/F、10:外部I/F、11:用紙搬送部、12:キャリッジ部、13:ヘッド部、15:吐出状態検出部、16:キャップ部、18:コントローラー、31:キャップ、33:ワイパー、47:検出制御部、50:チェック画像、50a:パターン、50b:パターン、100:PC、110:HDD、111:RAM、112:CPU、113:ROM、114:外部I/F、115:内部I/F、150:マウス、151:キーボード、152:ディスプレイ、222:ノズルプレート、313:検出用電極、CR:キャリッジ、HD:ヘッド、Ds:ドット群、Nz:ノズル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、印刷装置のメンテナンス方法、メンテナンス制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからのインクの吐出状態を検出し、吐出状態に応じたメンテナンスを自動的に実施する機能を有する印刷装置が知られている。特許文献1には、各ノズルのインクの吐出状態(目詰まり状態や、吐出方向が異常である不安定吐出状態)を検出し、目詰まり状態の場合には例えばノズルからインクを吸引する動作を含むメンテナンスを実施し、不安定吐出状態の場合にはインクの消費量が吸引より少なくて済むその他の軽微なメンテナンス(例えば、フラッシングや小ドット吐出、ワイピング、低い周波数でのインク吐出など)を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−175849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目詰まり状態のノズルが存在する場合は、印刷結果として所謂ドット抜けが発生する。不安定吐出状態のノズルが存在する場合、印刷結果としては正常状態と比較して例えば色が薄くなったように見える。しかし、そのように本来印刷されるべき状態と比較して例えば印刷結果の色が薄いことは、ドット抜けの発生よりも目立たないので、ユーザーには認識されにくい。印刷装置が実施するノズルの検査によって不安定吐出状態のノズルが存在することが判明した場合であっても、ユーザーにとっては、画質の異常に気付かないことやあるいは画質に及ぼす影響が許容範囲内であること等もあり得るため、そのようにユーザーがメンテナンスの必要性を感じないようなときも例外なく毎回自動的にメンテナンスが実施されてしまうと、ユーザーにとって使い勝手がよくない。
本発明は、不安定吐出状態のノズルが検出されたとき、メンテナンスの実施の有無にユーザーの意思を反映させることができることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するための印刷装置は、ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定手段と、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷手段と、前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付手段と、前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス手段と、を備える。
【0006】
はじめに、本明細書において、目詰まり状態とは、ノズルからインク滴がほぼ吐出していない状態を意味しており、所謂ドット抜けが発生する状態である。不安定吐出状態は、ノズルからインク滴は吐出しているものの、インク滴の吐出方向が異常な状態を意味している。例えば印刷面に対してインク滴が垂直に飛行せずに曲がったり、一つのノズルから複数の方向にインク滴が飛び散ったりしている状態である。
【0007】
不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると毎回例外なく自動的にメンテナンスが実施される構成であると、ユーザーに不都合を感じさせてしまう可能性がある。例えば、吐出方向異常による多少の画質劣化は許容範囲内でありメンテナンスの必要性を感じないというユーザーも存在するであろうし、その後に印刷する印刷物の内容に応じてどの程度の画質劣化まで許容範囲とするかが変わることも考えられる。であるので、不安定吐出状態のノズルが存在することによる印刷結果の画質への影響がユーザーにとって許容範囲内である場合にも、常に例外なくメンテナンスが実施されると、メンテナンスに要する時間やインクがユーザーの意思に反して無用に消費されてしまう。この発明によると、不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合は、ノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し当該パターンをユーザーに目視確認させ、メンテナンスを実施するかどうかユーザーに判断させてその判断に従うことができる。その結果、不安定吐出状態のノズルが存在する場合に例外なく常に自動的にメンテナンスが実施されてしまう構成と比較すると、時間やインクの消費を抑えることができ、ユーザーの要望に添うことができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記判定手段によって前記目詰まり状態のノズルが存在すると判定されると、前記ユーザーの指示に関わらず自動的に吸引動作を含むメンテナンスを実施してもよい。
【0009】
目詰まり状態のノズルが存在する場合は、不安定吐出状態のノズルが存在する場合より、画質に与える影響が大きい。そのため、目詰まり状態を速やかに解消するために他のメンテナンス方法より効果的な吸引動作を含むメンテナンスを、ユーザーの判断にかかわらず自動的に実行することで、速やかに目詰まり状態を解消させることに貢献できる。
なお、メンテナンスの種類と特徴に関して次のA〜Cの前提がある。吸引動作を含むメンテナンスは吸引動作を含まないメンテナンスより所要時間やインクの消費量が多い(A)。一方、ノズルの異常(目詰まり、不安定吐出)を確実に回復する効果は、吸引動作を含むメンテナンスが吸引動作を含まないメンテナンスより高い(B)。不安定吐出状態は吸引動作を含まないメンテナンスで解消できることもある(C)。
【0010】
(3)上記目的を達成するための印刷装置において、前記測定手段による前記実測値の測定は、ノズルチェックシーケンスが開始されると実施され、以降、前記メンテナンス手段によるメンテナンスが実施される度に繰り返し実施され、前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合であって、前記ノズルチェックシーケンスが開始されてから前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを予め決められたN回(Nは自然数)以上既に実施済みの場合に、エラーメッセージを前記ユーザーに案内する案内手段をさらに備え、前記チェック画像印刷手段は、前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを前記N回以上実施済みの場合、前記チェック画像を印刷しなくてもよい。
【0011】
この場合、ノズルチェックシーケンスの開始時から起算してN回以上メンテナンスを実施しても不安定吐出状態が回復しなければ、チェック画像の印刷および目視チェックの繰り返しを終えて、何度かメンテナンスを実施したけれど回復しない旨や、あるいは故障なので修理または部品交換等の旨をユーザーに伝えることができる。
【0012】
(4)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記メンテナンスの実施が必要であるとの前記ユーザーの指示が前記ノズルチェックパターンの印刷後に受け付けられると、まず前記吸引動作を含まないメンテナンスを実施し、前記吸引動作を含まないメンテナンスを予め決められたN1回(N1は前記N未満の自然数)実施してもなお前記不安定吐出状態のノズルが正常状態に回復しない場合に前記吸引動作を含むメンテナンスを実施してもよい。
【0013】
メンテナンスの種類と特徴に関して前述のA〜Cの前提がある。本発明によると、不安定吐出状態のノズルが存在する場合はまず吸引動作を含まないメンテナンスを実施することによって、なるべく少ないインクの消費量で回復を試みることができる。N1回吸引動作を含まないメンテナンスを実施しても回復しない場合は、インク消費量は多いが回復の可能性が高い吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって、不安定吐出状態の回復の可能性を高めることができる。
【0014】
(5)上記目的を達成するための印刷装置において、前記チェック画像に含まれる前記ノズルチェックパターンは、前記不安定吐出状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、当該ドット群と対比させるためのドット群であって前記正常状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、を少なくとも含んで構成されることを条件とし、前記不安定吐出状態のノズルの数、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数のうちの少なくともいずれか一つに応じて構成されてもよい。
【0015】
本発明によると、全てのノズル列やノズル列内の全てのノズルを毎回用いて毎回同じように構成されたノズルチェックパターンを含んだチェック画像が印刷されるわけではなく、前記条件を満たした上でノズルチェックパターンとして必要のないドット群は印刷されない。したがって、ノズルチェックパターンとして印刷されるドット数を少なくすることができるため、チェック画像の印刷に消費されるインクの消費量を抑制することができる。また、上記条件を満たした上でノズルチェックパターンとして必要のないドット群がチェック画像内に存在しないため、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果を目視しやすくすることができる。
【0016】
(6)上記目的を達成するための印刷装置において、前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定してもよい。
ノズルの配列面に設けられた平板電極とその電極と対向する平板電極との間の静電容量は、インク滴がノズルから吐出されていない状態のときと、インク滴がノズルから吐出されノズルから離れる直前までの状態とで変化する。静電容量が変化することによって電流が流れ平板電極の電位が変化する。本発明ではこの電位変化量を測定することによって、インクの吐出状態の判断材料とすることができる。
【0017】
なお、請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせにより実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに、本発明は上記の内容を実施する方法や、上記の機能を有するプログラムや、当該プログラムを記録する記録媒体としても成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態にかかるキャリッジの移動範囲を説明する模式図。
【図3】第一実施形態にかかるノズル面を示す模式図。
【図4】第一実施形態にかかるヘッドおよびキャップを示す模式図。
【図5】第一実施形態にかかるキャップを示す模式図。
【図6】第一実施形態にかかる吐出状態検査の構成を説明する図。
【図7】(7A)〜(7C)は第一実施形態にかかる吐出状態検出に使用する信号を示す図。
【図8】第一実施形態にかかる二つの閾値の関係を示す図。
【図9】第一実施形態にかかるノズルチェックシーケンスを示すフローチャート。
【図10】第一実施形態にかかる吐出状態検査処理を示すフローチャート。
【図11】(11A)は第一実施形態にかかる印刷予定のチェック画像を示す模式図、(11B)は(11A)の印刷結果例を示す拡大図、(11C)は(11B)の全体図
【図12】(12A)は第一実施形態にかかるチェック画像の印刷結果例を示す全体図、(12B)は他の実施形態にかかるチェック画像の印刷結果例を示す全体図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
1.第一実施形態
1−1.概要
図1は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以降、単にプリンターという)とパーソナルコンピューター(PC)100とを有する印刷システムを説明するブロック図である。本実施形態では、PC100とプリンター1とが協業することによって、プリンター1のノズルのインクの吐出状態を検査し、吐出状態に応じて自動的にメンテナンスを実施したり、あるいはユーザーの指示に従ってメンテナンスを実施したりする機能を実現する。
【0021】
1−2.構成
PC1は、プリンタードライバー、アプリケーションプログラム、OS等の各種のコンピュータープログラムが格納されているハードディスク装置(HDD)110、これらのコンピュータープログラムがロードされるRAM111、これらのコンピュータープログラムを実行するCPU112、起動プログラムが格納されているROM113、外部機器と接続するための外部インターフェイス(I/F)114、これらを接続するための内部I/F115等を備える。外部I/F114には、PC1をユーザーが操作するためのマウス150、キーボード151、ディスプレイ152や、プリンター1が接続される。
【0022】
プリンター1は、外部I/F10、用紙搬送部11、キャリッジ部12、ヘッド部13、吐出状態検出部15、キャップ部16、コントローラー18、それらを接続する内部I/F9等を備える。コントローラー18は、ファームウェアや各種のデータを記憶する不揮発性メモリー、ファームウェアがロードされるRAM、ファームウェアを実行するCPU等を備え、プリンター1における全体的な制御を行う。コントローラー18は、PC100から印刷データを取得すると、制御対象部を制御し、印刷媒体に画像を印刷させる。外部I/F10は、他の装置と接続し通信を行うためのインターフェイスであり、コントローラー18は外部I/F10を介してPC100との間でデータの受け渡しを行う。
【0023】
用紙搬送部11は、図示しない紙送りローラー、紙送りモーター、モーター駆動部等を備え、図2に示すように用紙を副走査方向(用紙搬送方向)に搬送させる。キャリッジ部12はヘッドHDが取り付けられたキャリッジCRと図示しないキャリッジモーターやモーター駆動部等を備え、キャリッジCRを図2に示すように主走査方向(用紙搬送方向に直交する方向)に移動させる。キャリッジCRには図示しないインクカートリッジを着脱可能に装着するためのカートリッジ装着部が設けられている。各インクカートリッジには異なる色のインクが収容される。
【0024】
ヘッド部14はヘッドHD等を有する。ヘッドHDは図示しない駆動信号生成回路から出力された駆動信号によって駆動され、インクカートリッジから供給されたインクを印刷媒体に向けて吐出させる。ヘッドHDの用紙対向面(図3および図4のノズルプレート222)には、インク滴を吐出するための多数のノズルNzが設けられている。ノズルプレート222は導電性を有する板状の部材(例えば薄手の金属板)によって作製され、グランド線に接続されてグランド電位に調整されており、平板電極として機能する。
【0025】
図3に例示したノズル群は、ノズルNzが1/180インチピッチで設けられたノズル列を複数有する。各ノズル列は、それぞれ吐出するインクの種類を定めることができる。本実施形態ではヘッドHDには6つのノズル列(NLk、NLy、NLc、NLm、NLlc、NLlm)が設けられている。各ノズル列は180個のノズルNzで構成される。
【0026】
キャップ部16は、ノズルNz群が望む空間を形成するキャップ31(図2・図4参照)、ワイパー33、ノズル面に対してキャップの位置を移動させる機構等を有する。キャップ31は、長方形状の底部と底部の周縁から起立する側壁部とを有し、ノズルプレート222と対向する上面が開放された薄手の箱状をしており、図2に示すように常に非印刷エリアに配置されている。キャリッジCRが非印刷エリアに移動したときキャップ31の上端をノズル面に密着させることによってノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制する。
【0027】
キャップ31の空間には、廃液チューブ314が接続され、廃液チューブ314には図示しない吸引ポンプが接続されている。キャップ31の上部の開口縁がノズルプレート222に密着した状態で吸引ポンプを動作させると、キャップ31側からノズルNzを通してヘッドHD内のインクや空気を吸引することができる(吸引動作)。キャップ31はプリンター1の状態に応じて非印刷エリア内でノズル面に対して移動する。ノズルNzの吐出能力を回復させるために各ノズルNzから連続的にインク滴を吐出させるフラッシング動作時や、後述する吐出状態検査時には、図4に示すようにノズル面とキャップ31との間に僅かな隙間を空けた状態となる。印刷動作時には図4よりもノズル面からさらに離れた待避状態となる。
【0028】
キャップ31の底部には、フェルトやスポンジ等の多孔質材で作製されたシート状の保湿部材312が配置される(図5参照)。フラッシング動作時や吐出状態検査時にはこの保湿部材312にインクが着弾する。また、保湿部材312の表面には、検出用電極313が配設されている。この検出用電極313は、後述するインクの吐出状態検査に用いられる。例示した検出用電極313は、二重の矩形枠部と、矩形枠部の対角同士を結ぶ対角線部と、矩形枠部の各辺の中点同士を結ぶ十字部とを有している。この構造によって、広い範囲に亘って一様に帯電される。インクは導電性を有する液体であり、保湿部材312が湿った状態で検出用電極313を高電位にすると、保湿部材312の表面も同じ電位になる。そのため、検出用電極313と保湿部材312とが平板電極として機能する。ワイパー33はキャップ31の傍に設けられており、ヘッドHDのノズル面(ノズルプレート222)を拭き取るワイピング動作を行う。
【0029】
なお、ノズルNzの吐出能力を回復させるためのメンテナンス手法に関しては、前述した吸引動作およびフラッシング動作の他に、微振動動作がある。微振動動作は、インク滴が吐出されない程度の圧力変化を与えることで、ノズルNzで露出しているインクの自由表面を吐出側と引き込み側とに移動させ、攪拌によってノズル付近の増粘インクを分散させる動作である。また、フラッシング動作の中にも、吐出させるインク滴の量を変えたり(ドットの大きさを変える)、駆動周波数を変えたり(単位時間当たりの吐出回数を変える)するなどが可能である。なお、これらの吸引動作、フラッシング動作及び微振動動作に関し、ノズルNzの吐出能力を回復させる度合いは、吸引動作が最も高く、微振動動作が最も低い。また、各動作におけるインクの消費量は、吸引動作が最も多く、微振動動作が最も少ない。各メンテナンス動作にはこのような特性の違いがあるため、プリンター1では、状態の違いに応じてこれらの動作を使い分けている。なお、本実施形態では吸引動作はノズル単位やノズル列単位ではなくノズルプレート222の全てのノズルに対して実施されるものとする。フラッシング動作や微振動動作はノズル単位で実施されてもよいしノズル列単位であってもよいし全てのノズル列のノズルに対して実施されてもよい。ワイピング動作はノズルプレート222全体に対してなされる。
【0030】
吐出状態検出部15は、図6に示すように、高圧電源ユニット41、抵抗42、コンデンサー44、増幅器45、検出制御部47を有し、各ノズルNzのインクの吐出状態を検出する。高圧電源ユニット41は、検出用電極313を所定電位にする電源であり、本実施形態では、500V〜600V程度の直流電源によって構成され、検出制御部47からの制御信号によって動作が制御される。抵抗42は、その一端が、高圧電源ユニット41の出力端子と接続され、その他端は検出用電極313に接続されている。コンデンサー44は、検出用電極313の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極313に接続され、他方の導体が増幅器45に接続されている。増幅器45は、コンデンサー44の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。検出制御部47は、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される記憶部、増幅器45から出力された増幅後のアナログ電圧信号をデジタル値に変換するAD変換部等を備え、吐出状態検出部15全体の制御を行う。
【0031】
(吐出状態検査の原理)
ノズルプレート222はグランドに接続してグランド電位に、キャップ31に配置された検出用電極313を500V〜600V程度の高い電位にされている。これらのノズルプレート222と検出用電極313とを、所定間隔d(図6を参照)を空けた状態で配置し、検出対象のノズルNzからインク滴を吐出させる。ノズルプレート222と検出用電極313とを所定間隔dを空けて配置したことにより、コンデンサーが形成される。図6に示すように、グランドに接続されたノズルプレート222に接することでノズルNzから柱状に延びたインクもグランド電位になる。このようなインクの存在は、コンデンサーの電極間隔を局部的に縮めることと同意であり、静電容量を増加させる。静電容量が増加すると、ノズルプレート222と検出用電極313との間で蓄えることのできる電荷の量が増加するため、電荷が高圧電源ユニット41から抵抗42等を通って検出用電極313側へ移動する(検出用電極313へ向けて電流Iが流れる)。電流Iが流れると、検出用電極313の電位が変化する。検出用電極313の電位の変化は、コンデンサー44における他方の導体(増幅器45側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴の吐出状況を判定することができる。
【0032】
図7Aは、インクがノズルNzから正常に吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。駆動信号生成回路が検査対象の一つのノズルNzからインクを吐出させるための駆動信号を生成すると、ノズルNzからインク滴が吐出される。これにより、増幅器45から電圧信号SGが出力される。検出制御部47は、この電圧信号SGの最高電圧VHと最低電圧VLとの差である電位差ΔVと、閾値との大小比較を行う。電位差ΔVは請求項に記載の実測値に相当する。
【0033】
本実施形態では、インクの吐出状態を次の3つの状態に区別する。正常状態と、ノズルからインク滴は吐出されているがインク滴の吐出方向が異常である不安定吐出状態と、ノズルが目詰まりしてインク滴が吐出されない目詰まり状態の3つである。図7Bは不安定吐出状態のノズルからインク滴が吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。インクが印刷媒体の面に対して垂直に着弾しないような不安定吐出状態の場合、ノズルから吐出される直前のインク滴の長さ(インク滴のキャップ31側に最も近い部分からノズルプレート222までの長さ)は正常状態の場合よりも短くなることが知られている。そのため、電位差ΔVも正常状態と比較すると小さくなる。不安定吐出状態のノズルの場合、そのノズルによるインクの着弾部分は、正常状態のノズルの着弾部分よりも例えば色が薄くなっているように見える。図7Cは目詰まり状態のノズルからインク滴を吐出させようとしたときの電圧信号SGを説明する図である。ドット抜けと呼ばれるような、ノズルが目詰まりしていてほとんどインク滴が吐出されないような状態では図7Cに示すように電位差ΔVは不安定吐出状態の場合と比較して小さな値となる。したがって本実施形態では上記の3つの状態を区別するために第一閾値TH1と第二閾値TH2の2つの閾値が用いられる。電位差ΔVが、第一閾値TH1(図8参照)以上であれば、インクが正常に吐出されている正常状態であると判断される。電位差ΔVが、第二閾値TH2より小さければ、インクが吐出されず目詰まり状態であると判断される。電位差ΔVが、第一閾値TH1より低く第二閾値TH2以上であれば、不安定吐出状態であると判断される。
【0034】
なお、このプリンター1で使用されるヘッドHDには、6つのノズル列NLk〜NLlmが設けられているため、1回の吐出状態検査では1080個(180個×6列)のノズルNzが検査対象になるが、このプリンター1では、15個のノズルNzが1つのブロックを構成しており(1つのノズル列が12個のブロックに分割されている)、吐出状態検査はブロック単位で行われる。
以上、吐出状態検査について説明した。
【0035】
以上の構成において、プリンター1の各ノズルのインクの吐出状態を検査し、吐出状態に応じて自動的にメンテナンスを実施したり、あるいはユーザーの指示に従ってメンテナンスを実施したりする機能を実現するために、プリンター1において実行されるファームウェアとPC100において実行されるプリンタードライバーとにそれらの機能を実現するためのプログラムが備えられる。なお、プリンタードライバーが実現する機能とファームウェアが実現する機能とは相互に補完的であるため、以降のノズルチェックシーケンスで説明するプリンタードライバーとファームウェアとの機能分担は単なる例示に過ぎない。本実施形態において、請求項に記載の測定手段は吐出状態検出部15に相当し、判定手段は吐出状態検出部15やコントローラー18に相当する。メンテナンス手段は、キャップ部16、ヘッド部13、コントローラー18に相当する。チェック画像印刷手段は、用紙搬送部11、キャリッジ部12、ヘッド部13、コントローラー18、CPU112,RAM113等に相当する。受付手段はマウス150やキーボード151、CPU112,RAM113等に相当し、案内手段はディスプレイ152、CPU112,RAM113等に相当する。
【0036】
1−3.動作
次に、以上の構成を有する印刷システムで実施されるノズルチェックシーケンスについて説明する。本実施形態の印刷システムでは、PC100から印刷指示を受けてプリンター1において印刷が実行される際、複数回に1回の割合でその印刷ジョブに対応する印刷動作の直前に図9に示すノズルチェックシーケンスが実施される。ノズルチェックシーケンスは、各ノズルのインクの吐出状態が目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態のいずれであるかを判定し、正常状態以外の2つの状態であればそれぞれの状態に対応する手順でメンテナンスを実施する処理である。なお、ノズルチェックシーケンスは、印刷動作に関連して実行される構成に限らず、PC100からメンテナンスを実施することを指示されたときに実行される構成であってもよい。
【0037】
1−3−1.ノズルチェックシーケンス
図9を参照しながらノズルチェックシーケンスについて具体的に説明する。はじめに、プリンター1のコントローラー18は、メンテナンス実施回数を初期化する(S100)。具体的には、吸引動作を含むメンテナンスを実行した回数を保持する変数と、吸引動作を含まないメンテナンスを実施した回数を保持する変数とを、「0」に初期化する。続いてコントローラー18は、吐出状態検査処理を実行する(S100、判定工程、測定工程)。吐出状態検査処理の詳細な流れについては図10を用いて後述するが、動作原理や処理内容は前述した通りである。
【0038】
続いて、コントローラー18は、図10に示す吐出状態検査処理を実行した結果、目詰まり状態のノズルの数が所定数以上か否かを判定する(S105)。具体的には、6つのノズル列の全てのノズルを検査した結果、目詰まり状態のノズルが所定数より多く存在しているか否かが判定される。所定数とは、吸引動作を含むメンテナンスを実施する条件とする数値であり、印刷結果の画質に及ぼす影響とコスト(メンテナンスに要する時間やインク消費量)とのバランスを考慮して予め決められている。本実施形態では、目詰まり状態のノズルが所定数未満の場合は、吸引動作を含むメンテナンスは実行されない。
【0039】
続いて、S110で目詰まり状態のノズル数が所定数以上でないと判定された場合、コントローラー18は不安定吐出状態のノズル数が所定数以上か否かを判定する(S115)。目詰まり状態のノズルも不安定状態のノズルも所定数未満の場合は、ノズルチェックシーケンスを終了する。S110で説明した内容と同様の理由で、本実施形態では不安定吐出状態のノズル数が所定数未満の場合はS135以降の処理を実施しない。なお、S110における所定数とS115は同じ値であることに限定されず、現状のままで画質に与える影響とメンテナンスした場合のコストとのバランスを考慮して適宜設定される。
【0040】
S110で、目詰まり状態のノズルが所定数を超えると判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスが予め決められたM回以上(Mは自然数)実施済みであるか否かを判定する(S120)。M回以上実施済みでないと判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを実施する(S125、メンテナンス工程)。吸引動作を含むメンテナンスは、吸引動作を少なくとも含むメンテナンスであり、本実施形態では吸引動作とフラッシング動作とワイピング動作とを実施する。目詰まり状態のノズルが所定数以上存在する場合は、不安定吐出状態のノズルが存在する場合より、画質に与える影響が大きいので、目詰まり状態を速やかに解消するために他のメンテナンス方法より効果的な吸引動作を含むメンテナンスを自動的に実行することで、速やかに目詰まり状態の解消させることに貢献できる。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスの実施回数を保持する変数をインクリメントしてS105に戻る。なお、S120で、吸引動作を含むメンテナンスをM回以上実施済みであると判定された場合、コントローラー18は、目詰まり状態のノズルが回復しなかった旨の情報をPC100に通知し、PC100はディスプレイ152にエラーメッセージを表示させる(S130)。S130の後ノズルチェックシーケンスは終了する。
【0041】
S115で、不安定吐出状態のノズルが所定数以上存在すると判定された場合、コントローラー18は、ユーザーの指示に従って実施されたメンテナンスがN回以上実施済みであるか否かを判定する(S135)。N回以上実施済みでない場合、チェック画像が印刷される(S140、チェック画像印刷工程)。具体的には、コントローラー18が、不安定吐出状態のノズルおよびそのノズルを有するノズル列を示す情報をPC100に通知し、通知された情報を用いてプリンタードライバーがチェック画像を生成しチェック画像を印刷するための印刷データをプリンター1に送信し、プリンター1のコントローラー18が用紙搬送部11・キャリッジ部12・ヘッド部13等を制御してチェック画像の印刷を行う。
【0042】
チェック画像には、不安定吐出状態の発生状況をユーザーに確認させるためのノズルチェックパターン(以降、単にパターンという)が含まれている。パターンは、不安定吐出状態の発生状況を視認しやすいように、不安定吐出状態のノズルによって用紙に形成されるドット群とともに正常状態のノズルによって用紙に形成されるドット群とを含んで構成される。例えば、S105で6つのノズル列のうちノズル列NLk(ブラックノズル列)においていくつかの不安定吐出状態のノズルが検出されていた場合、ノズル列NLkに属する正常状態のノズルからインクを吐出させることによって形成されるドット群と、ノズル列NLkに属する不安定吐出状態のノズルからインクを吐出させることによって形成されるドット群とで構成されたパターンを含んだチェック画像がPC100で生成される。
【0043】
図11Aは、PC100で生成されるチェック画像に含まれるパターンの一例を示す図である。PC100でプリンタードライバーの処理が実行されることにより、ノズル列NLkに属する全てのノズルのみを用いて用紙上に副走査方向に伸びる黒色の直線として印刷されるように構成されたパターン50aと、ノズル列NLkに属する全てのノズル列のみを用いて用紙上に主走査方向が副走査方向より長い矩形のパッチとして印刷されるように構成されたパターン50bとを含んだチェック画像50が生成される。そして、プリンタードライバーの処理により、パターン50a、50bを含むチェック画像50に解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、並べ替え処理などが施されることによって印刷データが生成され、プリンター1に送信される。プリンター1は受信した印刷データに基づいてノズル列NLkのみを用いたパターン50aと50bを含むチェック画像50を用紙に印刷する。
【0044】
図11Bは用紙に印刷されたチェック画像50に含まれるパターン50a、50bの拡大図の例を示している。50a1はパターン50aに対応し、50b1はパターン50bに対応する。図11Bにおいて、主走査方向に並ぶドットは同じノズルから吐出されたインク滴によって形成されたドットである。例えばノズル列NLkに、インクの吐出方向が副走査方向に曲がるノズルNz(#X)が存在する場合、そのノズルNz(#X)によって形成されたドット群DsXは、隣接する正常状態のノズル(Nz(#X-1)、Nz(#X+1))によって形成された一方のドット群DsX−1と一部重なり、他方のドット群DsX+1と離れて形成される。そのため、チェック画像50の印刷結果は、図11Cに示すように、直線が一部途切れたり(e1)、パッチ内に主走査方向に伸びる印刷媒体色の筋(e2)があるように印刷される。また、例えばノズル列NLkに、インクの吐出方向が主走査方向に曲がるノズルNz(#Y)が存在する場合、そのノズルNz(#Y)によって形成されたドット群DsYはそのドット群DsY全体が正常状態のノズルによって形成されたドット群より主走査方向にずれて印刷される。そのため、チェック画像50の印刷結果は、図11Cに示すように、直線が一部歪み(e3)パッチの副走査方向に伸びる辺の一部も歪んで(e4)印刷される。
【0045】
なお、副走査方向に吐出方向が曲がっているノズルがある場合は、パターン50aのような副走査方向に伸びる直線よりも、主走査方向にある程度長い領域にインクを着弾させるようなパターン50bの方が、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果をユーザーに認識させやすい。また、主走査方向に吐出方向が曲がっているノズルがある場合は、副走査方向に伸びる直線のパターン50aの方が、パターン50bより、主走査方向の曲がりをユーザーに認識させやすい。
【0046】
このように、本実施形態では、不安定吐出状態のノズルとそのノズルを有するノズル列の正常状態のノズルとのみを用いて構成されたパターンを印刷する。すなわち、常に全てのノズル列を用いて全てのノズル列のインク色のパターンを印刷するわけではなく、不安定吐出状態を視認させるための不要なノズル列のノズルによるパターンは印刷しない。そのため、チェック画像の印刷に消費されるインクの消費量を抑えることができるし、不安定吐出状態のノズルによる印刷結果をユーザーに視認させやすくすることができる。なお、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の全てのノズル列を用いてパターンを形成することに限らず、例えば不安定吐出状態のノズルとその前後に隣接する所定個のノズルのみを用いてパターンを印刷するようにしてもよい(図12A参照)。そうするとさらにインクの消費量を抑えることができるし、パターンの副走査方向の中央部に不安定吐出状態のノズルによるドット群が印刷されることになるので不安定吐出発生箇所をさらに見つけやすくすることができる。以上の例の他にも、不安定吐出状態のノズルによって形成されたドット群と、不安定吐出状態のノズルの印刷結果と対比させるための正常状態のノズルによって形成されたドット群と、を少なくとも含むようにチェック画像が印刷されるならば、不安定吐出状態のノズルの数や、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置や、不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数等に応じて様々な構成のチェック画像がS140において印刷されてよい。
【0047】
S140でチェック画像が印刷された後、PC100ではプリンタードライバーの処理によりメンテナンスを実施するか否かの選択を促すメッセージがディスプレイ152に表示させ、マウス150やキーボード151を用いてユーザーが選択操作を行うとプリンタードライバーはその操作を示す情報を取得する(S145、受付工程)。続いて、S145で取得した情報に基づいて、ユーザーがメンテナンスを実施するように指示したか否かがプリンタードライバーの処理により判定され(S150)、ユーザーがメンテナンスの実施を指示していないと判定された場合は、ノズルチェックシーケンスを終了し、その後印刷ジョブが実行される。
【0048】
S150において、ユーザーがメンテナンスの実施を指示したと判定された場合、コントローラー18は吸引動作を含まないメンテナンスをN1(N1はN未満の自然数)回以上実施済みであるか否かを判定する(S155)。吸引動作を含まないメンテナンスをN1回以上実施済みでない場合、吸引動作を含まないメンテナンスを実施する(S160、メンテナンス工程)。具体的には例えば、コントローラー18は、吸引動作を含まないメンテナンスとしてフラッシング動作とワイピング動作とを実施する。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含まないメンテナンスの実施回数を保持する変数の値をインクリメントしてS105に戻る。
【0049】
S155にて吸引動作を含まないメンテナンスをN1回以上実施済みあると判定された場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを(N−N1)回以上実施済みか否かを判定する(S165)。吸引動作を含むメンテナンスを(N−N1)回以上実施済みでない場合、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスを実施する(S170、メンテナンス工程)。メンテナンス終了後、コントローラー18は、吸引動作を含むメンテナンスの実施回数を保持する変数の値をインクリメントしてS105に戻る。すなわち本実施形態ではユーザーにメンテナンスを指示されるとまず吸引動作を含まないメンテナンスを実施することによって、なるべく少ないインクの消費量で回復を試み、N1回吸引動作を含まないメンテナンスを実施しても回復しない場合は、インク消費量は多いが回復の可能性が高い吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって、不安定吐出状態の回復の可能性を高めることができる。S165で(N−N1)回以上実施済みでない場合はノズルチェックシーケンスを終了する。
【0050】
S135にて、ユーザー指示によるメンテナンスをN回以上実施済みであると判定された場合、メンテナンスを試みたが不安定吐出状態が回復しない旨のエラーメッセージがディスプレイ152に表示され(S175、案内工程)、ノズルチェックシーケンスが終了する。したがって、予め決められた回数だけメンテナンスを繰り返し行っても不安定吐出状態が回復しなければ、チェック画像の印刷および目視チェックの繰り返しを終え、故障の旨をユーザーに伝えることができる。部品交換や修理の詳細な案内などがなされてもよい。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態では不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合は、ノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷し当該パターンをユーザーに目視確認させ、メンテナンスを実施するかどうかユーザーに判断させてその判断に従うため、不安定吐出状態のノズルが存在する場合に例外なく常に自動的にメンテナンスが実施されてしまう構成と比較すると、時間やインクの消費を抑えることができ、ユーザーの要望に添うことができる。
【0052】
1−3−2.吐出状態検査処理
図9のS105の吐出状態検査処理の具体的手順を、図10を参照しながら説明する。吐出状態検査処理では、検出制御部47がまず検査対象となるノズル列を決定する(S200)。図3で説明したように、ヘッドHDにはノズル列が6つ設けられている。これら6つのノズル列のうち、1つのノズル列が検査対象となるノズル列として決定される。検査対象のノズル列が決定されると、検出制御部47は検査対象となるブロックを決定する(S205)。前述したように、1つのブロックは15個のノズルNzで構成されており、1つのノズル列には12個のブロックが含まれる。S205では、12個のブロックのうち、検査対象となる1つのブロックが決定される。
【0053】
検査対象のブロックが決定されると、検出制御部47はそのブロックについてインク滴の吐出および電圧信号SGの検出を行う(S210)。具体的には対象ブロックに属するノズルNzについてノズル一つ一つからインク滴を吐出させ、インク滴の吐出に起因して生じる電気的な変化、具体的には個々のノズルNzに対応付けて電位差ΔVを取得する。1ブロックに属する全てのノズルに対してS210の処理が終了すると、検出制御部47はインク滴の吐出と信号の検出が1ノズルあたり所定回数実行されたか否かを判定する(S215)。所定回数未満の場合は所定回数に達するまでS210を繰り返し実行する。複数回分のΔVの検出結果は上書きされて消えてしまうことなく複数回分それぞれ保持される。
【0054】
所定回数実行された後、検出制御部47はノズルごとに複数回分の電位差ΔVの代表値(中央値、最頻値、平均値など)を導出し、当該代表値を二つの閾値(第一閾値TH1と第二閾値TH2)と比較することによってノズル毎にインクの吐出状態を判定する(S220)。比較結果は、検出制御部47の記憶部に記憶される。例えば、比較結果として「第一閾値TH1以上」あるいは「第一閾値TH1未満で第二閾値TH2以上」あるいは「第二閾値TH2未満」を示す値が記憶される。なお、一つのノズルに対する複数回の検査結果の代表値を比較に用いることにより、インクの吐出状態の誤判定を防ぐことができる。
【0055】
続いて検出制御部47は検査対象のブロックが検査対象のノズル列における最終ブロックであるかを判定し(S225)、最終ブロックでなければS205に戻り、次のブロックについて前述の処理を行う。最終ブロックであれば、検出制御部47は検査対象ノズル列が複数のノズル列のうちの最終ノズル列であるか否かを判定する(S230)。最終ノズル列でなければコントローラー18はS200に戻り次のノズル列について前述の処理を行う。最終ノズル列であれば、これまでの判定結果を保持したままこの吐出状態検査処理を終了し、呼び出し元の処理に復帰する。
【0056】
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、測定手段は、レーザー光を照射してその光がノズルから吐出されるインク滴によって遮られるか否かによってインクの吐出状態を検出する構成であってもよい。また、インク滴の吐出方向まで検出できる構成を備えている場合(例えばノズル面から距離A離れた位置にノズル面と平行にレーザー光Laを照射し、ノズル面から距離B離れた位置にノズル面と平行であってLaと直交するレーザー光Lbを照射して吐出方向を検出する)であれば、曲がっている方向に応じてその印刷結果を視認しやすいパターンが含まれたチェック画像を印刷するようにしてもよい。例えばブラックノズル列NLkに吐出方向が主走査方向に曲がるノズルが存在し、シアンノズル列NLcに吐出方向が副走査方向に曲がるノズルが存在する場合、ノズル列NLkを用いて副走査方向に伸びる直線のパターンを印刷し(図12Bの50a1)、ノズル列NLcの不安定吐出状態のノズルとその近傍の正常状態のノズルを用いて主走査方向が副走査方向より長い矩形のパターンを印刷する(図12Bの50c1)ようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、PC100とプリンター1とで構成される印刷システムを説明したが、受付手段としてのキーや案内手段としての液晶パネルなどを備えたプリンターやスキャン機能やFAX機能などを備えたマルチファンクションプリンターに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:プリンター、9:内部I/F、10:外部I/F、11:用紙搬送部、12:キャリッジ部、13:ヘッド部、15:吐出状態検出部、16:キャップ部、18:コントローラー、31:キャップ、33:ワイパー、47:検出制御部、50:チェック画像、50a:パターン、50b:パターン、100:PC、110:HDD、111:RAM、112:CPU、113:ROM、114:外部I/F、115:内部I/F、150:マウス、151:キーボード、152:ディスプレイ、222:ノズルプレート、313:検出用電極、CR:キャリッジ、HD:ヘッド、Ds:ドット群、Nz:ノズル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定手段と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷手段と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付手段と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス手段と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記メンテナンス手段は、前記判定手段によって前記目詰まり状態のノズルが存在すると判定されると、前記ユーザーの指示に関わらず自動的に吸引動作を含むメンテナンスを実施する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記測定手段による前記実測値の測定は、ノズルチェックシーケンスが開始されると実施され、以降、前記メンテナンス手段によるメンテナンスが実施される度に繰り返し実施され、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合であって、前記ノズルチェックシーケンスが開始されてから前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを予め決められたN回(Nは自然数)以上既に実施済みの場合に、エラーメッセージを前記ユーザーに案内する案内手段をさらに備え、
前記チェック画像印刷手段は、前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを前記N回以上実施済みの場合、前記チェック画像を印刷しない、
請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記メンテナンス手段は、前記メンテナンスの実施が必要であるとの前記ユーザーの指示が前記ノズルチェックパターンの印刷後に受け付けられると、まず前記吸引動作を含まないメンテナンスを実施し、前記吸引動作を含まないメンテナンスを予め決められたN1回(N1は前記N未満の自然数)実施してもなお前記不安定吐出状態のノズルが正常状態に回復しない場合に前記吸引動作を含むメンテナンスを実施する、
請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記チェック画像に含まれる前記ノズルチェックパターンは、
前記不安定吐出状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、当該ドット群と対比させるためのドット群であって前記正常状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、を少なくとも含んで構成されることを条件とし、
前記不安定吐出状態のノズルの数、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数のうちの少なくともいずれか一つに応じて構成される、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項6】
前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定する、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項7】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定工程と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定工程と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷工程と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付工程と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス工程と、
を含む印刷装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定機能と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定機能と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷機能と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付機能と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス機能と、
をコンピューターに実現させる印刷装置のメンテナンス制御プログラム。
【請求項1】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定手段と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷手段と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付手段と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス手段と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記メンテナンス手段は、前記判定手段によって前記目詰まり状態のノズルが存在すると判定されると、前記ユーザーの指示に関わらず自動的に吸引動作を含むメンテナンスを実施する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記測定手段による前記実測値の測定は、ノズルチェックシーケンスが開始されると実施され、以降、前記メンテナンス手段によるメンテナンスが実施される度に繰り返し実施され、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定された場合であって、前記ノズルチェックシーケンスが開始されてから前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを予め決められたN回(Nは自然数)以上既に実施済みの場合に、エラーメッセージを前記ユーザーに案内する案内手段をさらに備え、
前記チェック画像印刷手段は、前記ユーザーの指示による前記メンテナンスを前記N回以上実施済みの場合、前記チェック画像を印刷しない、
請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記メンテナンス手段は、前記メンテナンスの実施が必要であるとの前記ユーザーの指示が前記ノズルチェックパターンの印刷後に受け付けられると、まず前記吸引動作を含まないメンテナンスを実施し、前記吸引動作を含まないメンテナンスを予め決められたN1回(N1は前記N未満の自然数)実施してもなお前記不安定吐出状態のノズルが正常状態に回復しない場合に前記吸引動作を含むメンテナンスを実施する、
請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記チェック画像に含まれる前記ノズルチェックパターンは、
前記不安定吐出状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、当該ドット群と対比させるためのドット群であって前記正常状態のノズルから吐出されたインク滴で形成されたドット群と、を少なくとも含んで構成されることを条件とし、
前記不安定吐出状態のノズルの数、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列における当該ノズルの位置、および、前記不安定吐出状態のノズルを含むノズル列の数のうちの少なくともいずれか一つに応じて構成される、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項6】
前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定する、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項7】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定工程と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定工程と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷工程と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付工程と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス工程と、
を含む印刷装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定機能と、
正常状態と不安定吐出状態と目詰まり状態との三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを前記実測値を用いて判定する判定機能と、
前記不安定吐出状態のノズルが存在すると判定されると、前記不安定吐出状態の発生状況の目視チェックに用いるノズルチェックパターンを含むチェック画像を印刷するチェック画像印刷機能と、
前記チェック画像を印刷した後、前記不安定吐出状態を解消するためのメンテナンスの実施の要否を示す前記ユーザーの指示を受け付ける受付機能と、
前記ユーザーの指示が前記メンテナンスの実施が必要とする旨の場合に、前記メンテナンスを実施するメンテナンス機能と、
をコンピューターに実現させる印刷装置のメンテナンス制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−161753(P2011−161753A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26261(P2010−26261)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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