説明

印刷システムおよび印刷装置

【課題】
プリンタのメーカーや機種に依存することなく、自由度の高い、かつ、それぞれのプリンタ本来の性能や付加機能を利用することの可能なロケーションフリー印刷システムを提供する。
【解決手段】
使用者からの印刷命令に基づいて、印刷対象ファイルと印刷設定情報がサーバに格納される。ユーザ認証により指定されたプリンタと印刷対象ファイルとの対応付けが行われ、サーバは指定されたプリンタに応じたドライバを選択して印刷対象ファイルからスプールデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報処理装置と画像形成装置を有する印刷システムに関する。より詳細には、情報処理装置において作成された文書データを、ユーザの任意の画像形成装置から印刷出力する印刷システム、および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報漏洩の危険性について認識が高まり、コピー機やプリンタなどの画像形成装置にて出力された文書を、機器上に放置することが問題視されるようなってきた。また、環境保護の視点から、余分な印刷を控えることが一般的になってきた。
【0003】
前者に対する対策として、以下のようなシステムが公知である(たとえば特許文献1)。すなわち、ユーザが自席でPCを操作して出力先となるプリンタを指定し、この指定されたプリンタに対して印刷命令を出す。ユーザはその後、自席から離れて指定したプリンタの設置場所まで出向き、その場で何らかの認証後に印刷が開始されるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2007‐310722号公報 このシステムでは、指定されたプリンタの設置場所までユーザが出向き、ユーザ認証がされるまでは印刷されない。したがって、文書が機器上に放置される可能性が低減される。このシステムはさらに、印刷命令が出された後に不要となった印刷データを削除する機能を加えることで、後者に対しても有効である。
【0005】
ただし、ユーザがプリンタを指定して印刷命令を出した後に、指定されたプリンタに何らかのエラー(障害)が発生しているとか、指定されたプリンタが先に大量の印刷ジョブを与えられている等の事態に気づく場合も考えられる。このような場合、ユーザは印刷指示をいったんキャンセルして別のプリンタを指定するか、あるいは先の印刷ジョブが終了して自己のジョブが処理されるまで待つ必要がある。
【0006】
そこで、PCに印刷命令を与えた後にプリンタを任意に選択し、ユーザ認証後に出力を開始するシステム(以下、ロケーションフリー印刷システムと称する)が、実際に提供されている。このシステムによれば、たとえば自席で印刷命令を出し、別フロアの会議室から出力するようなことが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、既存のロケーションフリー印刷システムは、同一メーカー、同一機種のシステムで実現されている。しかし、一般に、オフィスのフロアには多数のプリンタが設置されており、これらは購入年月、製造メーカー、機種(オプション構成含む)などが混在しているケースが大半である。このような環境で、フロアに存在する全てのプリンタについてロケーションフリー印刷システムを実現するためには、メーカー別、機種別に複数のシステムを導入しなければならない。または、フロアに設置されているプリンタを全て、同一メーカーかつ同一機種にリプレイスしなければならない。しかし、このような対応は現実的ではない。
【0008】
このように、ユーザが利用する全てのプリンタについてロケーションフリー印刷が実現できていないため、結局は別のプリンタに対して再度印刷命令を出すなど、かえって余分な手間がかかる事態もありえる。
【0009】
また、フロア内の全てのPC(Personal Computer)に対して、ロケーションフリー印刷システムに用いるプリンタドライバをインストールする作業あるいはバージョンアップする作業は、システム管理者にとって多大な手間である。
【0010】
このような手間を解決するため、共通ドライバを利用するという方法も考えられる。しかし共通ドライバは、多種類のプリンタに共通する一部の機能だけを実装しているものである。このため、プリンタがたとえばステープル機能を搭載していても、共通ドライバはステープル機能を有していないという場合も起こり得る。このような場合にはプリンタ固有の機能を使えないなど、プリンタの使い方が制限されるという問題がある。
【0011】
この発明は、上述した課題を解決し、プリンタのメーカーや機種に依存することなく、自由度の高い、かつ、それぞれのプリンタ本来の性能や付加機能を利用することの可能なロケーションフリー印刷システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、使用者による認証に基づき、印刷を制御する印刷システムである。このシステムは、使用者からの印刷命令に基づいて、この使用者に関連する印刷対象ファイルと印刷設定情報を格納する記憶装置を有する。
【0013】
システムはまた、使用者についての認証処理を行う認証手段を有し、この認証処理によりユーザが特定され、ユーザが指定する画像形成装置が特定された時点で、印刷対象ファイルと、使用者が指示した画像形成手段との対応付けが行われる。この対応付けの結果、画像形成手段に応じたドライバが選択され、このドライバを用いて、印刷対象ファイルからスプールデータが生成される。このスプールデータが、指示された画像形成手段に供給され印刷される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数種類のプリンタが配置されている場合でも、プリンタのメーカーや機種に依存することなく、それぞれのプリンタに応じた最適なスプールデータを生成することができる。また、印刷命令自体とプリンタの指定とを分離することができるため、自由度の高い印刷システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明のロケーションフリー印刷システムを説明する。図1は、この発明の実施形態にかかる印刷システムを示す概念図である。
【0016】
この実施形態にかかる印刷システムは、クライアントPC11と、印刷サーバ21とを有する。さらに、実際に印刷を行うプリンタ31aないし31cを有する。これらは、ネットワークで接続されている。
【0017】
以下、図2ないし図4を用いて、クライアントPC11、印刷サーバ21およびプリンタ31の構成および動作について説明する。図2は、クライアントPC11および印刷サーバ21の詳細な構成を示すブロック図である。図3は、クライアントPC11と印刷サーバ21との間で行われる動作を示すフローチャートである。そして図4は、印刷サーバ21とプリンタ31との間で行われる動作を示すフローチャートである。
【0018】
クライアントPC11は、CPU12、記憶手段13、およびキーボード14を有する。もちろんクライアントPC11には、これら以外にもPCとして必要な構成が備えられている。しかし、この実施形態の説明のためには本質的な部分ではないので、その余の記載は省略する。
【0019】
記憶手段13は、一般的なPCに装備されるハードディスク装置や半導体メモリなど(図示せず)を含む。記憶手段13は、一般的な文書作成ソフトウェア、表計算ソフトウェアなどのアプリケーションソフトウェアのプログラム(図示せず)を格納している。CPU12は、これらのアプリケーションプログラムを起動し、キーボード14よりPCのユーザが入力する情報に従って文書を作成する(S31)。
【0020】
記憶手段13には、さらに、ロケーションフリー印刷ドライバ15(以下、LF印刷ドライバと記載する)が格納されている。LF印刷ドライバ15は、具体的にプリンタを駆動する機能を有しているものではなく、ユーザが印刷命令をクライアントPC11に与える際のユーザ・インタフェースを提供するものである。このユーザ・インタフェースに関しては、後に詳しく説明する。
【0021】
ユーザは、クライアントPC11を用いて作成した文書について、LF印刷ドライバ15を用いて、印刷に関する詳細な設定を行う(S32)。この作業は、通常、一般的なPCにても行われているものである。すなわちユーザは、まずアプリケーションプログラムから印刷メニューを選択する。次いで印刷プロパティを設定する。ユーザは、こうして印刷プロパティの設定を行った後に「印刷OK」ボタンを押下する。このボタン押下が、ユーザからクライアントPC11に対する印刷命令としてCPU12に認識される(S33)。
【0022】
印刷プロパティとしては様々な項目が考えられるが、たとえば印刷部数、用紙サイズ、用紙種類、印刷倍率、印刷品質(文字印刷か写真印刷か)、カラー/モノクロの別、両面コピー/集約コピーなどの指定などである。
【0023】
CPU12は、この印刷命令を受けて、ユーザが作成した文書から印刷対象ファイルを作成する。印刷対象ファイルは、ユーザが作成した文書そのままの形式(すなわちアプリケーションプログラムが作成するファイル形式)でもよい。あるいは、ユーザが作成した文書に対して暗号化と圧縮とを行い、中間スプールデータとしたものでもよい。CPU12は、さらに、印刷設定情報を生成する。印刷設定情報は、ユーザがS32で設定した印刷プロパティを含む。
【0024】
CPU12は、この文書を作成したユーザを識別するためのユーザ識別情報、作成された印刷対象ファイル、および印刷設定情報とをあわせて印刷データとして(S34)、印刷サーバ21に与える(S35)。印刷サーバ21は、クライアントPC11から送信された印刷データを受信する。そして、この印刷データを格納する(S36)。
【0025】
印刷サーバ21は、制御部22、印刷データ格納部23、スプールデータ格納部24、およびドライバ格納部25を有する。制御部22は、クライアントPC11から与えられた印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を、いったん印刷データ格納部23に格納する。この印刷対象ファイルは、ユーザ識別情報と関連付けて印刷ジョブに加えられる。この後、印刷サーバ21は、いずれかのプリンタから印刷要求を受けるまで待機する。
【0026】
ユーザは、自席でクライアントPC11に対して印刷命令を与えた後は、自席を離れて任意のプリンタ31の設置場所まで移動する。そして、そのプリンタ31に対してユーザ認証を行う(S41)。ユーザ認証にあたっては、周知の認証方法を用いればよい。たとえば、ユーザが携帯しているICカードによる認証、ユーザがIDとパスワードを入力することによる認証、虹彩データ、指紋データあるいは掌紋データなどの生体情報による認証など、様々な方法が考えられる。認証の方法それ自体は、この発明の要点ではないので、詳細な説明は省略する。
【0027】
ロケーションフリー印刷システムに利用されるプリンタ31は、ユーザを認証するために、ユーザ情報を入力する入力装置を有している。前述したように、認証の方法としては様々なものが考えられる。たとえばICカードによる認証を行うのであれば、それぞれのプリンタ31は、入力装置としてICカードリーダーを有している。IDとパスワードを入力することによる認証を行うのであれば、それぞれのプリンタ31は、キーボードやタッチパネル等の入力装置を有している。生体情報による認証を行うのであれば、それぞれのプリンタ31は、カメラ、赤外線カメラなどの入力装置を有している。ここでは、ICカードによる認証を行うことを例として説明を継続する。
【0028】
ユーザは、プリンタ31に備えられているICカードリーダ(図示せず)にて、自らが携帯するICカードを読み取らせる。プリンタ31は、ユーザの認証情報を受け取ると、これを印刷サーバ21に送信する。印刷サーバ21は、この内容を確認してユーザ認証が完了する。なお、以降、ユーザが認証を行ったプリンタをターゲットプリンタと称する。
【0029】
このように、プリンタ31のいずれかにおいてユーザの認証が行われることで、フロアに配置されているプリンタのいずれかがターゲットプリンタとして特定され、この時点で印刷データとプリンタとの対応関係が固定される。この後は、ターゲットプリンタと印刷サーバ21とが連携して印刷処理が進められる。以下、プリンタ31bがターゲットプリンタとなった場合を例に、説明を継続する。
【0030】
ターゲットプリンタ31bは、ユーザ認証が完了すると、印刷サーバ21に対して印刷要求を送信する(S42)。この印刷要求は、少なくともターゲットプリンタ31bの識別情報と、先に認証されたユーザに関するユーザ識別情報とを含む。ターゲットプリンタ31bの識別情報とは、ターゲットプリンタ31bのIDや、あるいはIPアドレスなどであってよい。
【0031】
印刷サーバ21は、この実施形態のロケーションフリー印刷システムに利用される全てのプリンタ31について、プリンタIDおよび/またはIPアドレスと、そのプリンタ31を制御するためのドライバとを対比させたドライバ対応テーブルを有している。このテーブル(図示せず)は、前述したプリンタドライバと同様に、ドライバ格納部25に格納されている。
【0032】
ドライバ格納部25には、この実施形態のロケーションフリー印刷システムに利用される全てのプリンタ31に対応するよう、複数のプリンタドライバが格納されている。すなわちドライバ格納部25には、プリンタ31aを駆動するドライバ26a、プリンタ31bを駆動するドライバ26b、およびプリンタ31cを駆動するドライバ26cが格納されている。もちろん、一つのプリンタドライバで複数種類のプリンタを駆動できるものであれば、プリンタの種類数と、プリンタドライバの種類数とは、1対1に対応するものでなくても構わない。
【0033】
これらのプリンタドライバは、従来技術で用いられているような、複数種類のプリンタを駆動するために機能が制限された共通ドライバではなく、あくまで、当該プリンタそのものを駆動するために作成されたドライバである。このように、印刷サーバ21がそれぞれのプリンタに対応した複数のプリンタドライバを格納しているため、それぞれのプリンタに応じた最適なスプールデータを生成することができる。
【0034】
印刷サーバ21の制御部22は、ターゲットプリンタ31bから印刷要求を受信した時点で、この印刷要求に含まれるユーザ識別情報をキーとして、印刷ジョブを検索する。この結果、当該ユーザのクライアントPC11から発した印刷対象ファイルがジョブリストの形式で抽出される(S43)。制御部22は、このジョブリストをユーザに対して提示する。このときの提示データの作成方法や、印刷サーバとプリンタとの間でのデータ通信の方法などについては、種々の方法が考えられるが、これ自体はこの発明の本質ではないので詳細は省略する。
【0035】
印刷サーバ21がユーザにジョブリストを提示する際には、ユーザはターゲットプリンタ31bの近傍にいると考えられる。よって、ジョブリストの提示は、印刷サーバ21からターゲットプリンタ31bに対して行われる。ユーザは、このジョブリストを参照して、印刷したい印刷対象ファイルを指定する。
【0036】
制御部22はまた、ターゲットプリンタ31bから受信した印刷要求に含まれるプリンタ識別情報により、ターゲットプリンタ31bの機種を判定する。制御部22は、このプリンタ識別情報をキーとしてドライバ対応テーブルを検索する。この検索の結果、そのプリンタに対応したプリンタドライバが特定される。よって制御部22は、その特定されたターゲットプリンタ31bに対するプリンタドライバであるドライバ26bを選択する(S44)。
【0037】
次いで制御部22は、ユーザがジョブリストから指定した印刷対象ファイルと、この印刷対象ファイルについての印刷設定情報を、印刷データ格納部23から読み出す。こうして制御部22は、指定された印刷対象ファイルについて、選択したドライバ26bを用いて、スプールデータを生成する(S45)。最後に制御部22は、生成されたスプールデータを、ターゲットプリンタ31bに送信する(S46)。このとき、生成されたスプールデータは、ターゲットプリンタ31bに直接送信されてもよいし、いったんスプールデータ格納部24に格納してから送信されるものでもよい。
【0038】
ターゲットプリンタであるプリンタ31bは、印刷サーバ21からスプールデータを受信すると、印刷を開始する(S47)。このスプールデータは、前述したように、プリンタ31bに対応したドライバ26bで作成されている。したがって、プリンタ31bの機能、たとえば両面、集約、ステープルなどの機能をすべて用いた印刷を行うことができる。
【0039】
プリンタ31bでの印刷が終了すると、プリンタ31bは印刷終了レポートを印刷サーバ21に送信する(S48)。印刷サーバ21は、これを受けて後処理を開始する(S49)。この後処理は、印刷対象ファイルや印刷設定情報、スプールデータを削除する処理や、印刷ログの作成処理などである。さらに、印刷完了、あるいは印刷エラーなどのレポートをクライアントPC11に送信する処理(S50)を含んでいてもよい。
【0040】
以上説明したように、この実施形態のロケーションフリー印刷システムによれば、ユーザは自席で印刷命令を出した後、任意のプリンタにて認証を行い、そのプリンタで印刷出力を得ることができる。すなわち、印刷命令自体とプリンタの指定とを分離することができるため、自由度の高い印刷システムが得られる。
【0041】
また、印刷サーバ21に格納されるドライバは、それぞれのプリンタに対応したものである。したがってユーザは、それぞれのプリンタの本来の機能を利用することができる。
【0042】
以下、クライアントPCに格納されるLF印刷ドライバ15を用いて印刷設定(図3のS32を参照)する際の動作について、詳細に説明する。
【0043】
図5は、ユーザがアプリケーションプログラムのメニューから印刷を指示した場合、クライアントPC11の表示装置(図示せず)に表示される画面表示の一例である。この画面表示は、OS(オペレーティングシステム)が提供する印刷設定画面をそのまま用いればよい。
【0044】
画面表示50には、プリンタ選択部51と、印刷内容設定部52が含まれる。さらに、印刷プレビューを表示するためのプレビューボタン55、印刷命令を入力するためのOKボタン56、および印刷設定動作をキャンセルして画面表示50を消すためのキャンセルボタン57が含まれる。
【0045】
プリンタ選択部51は、プリンタ選択用のプルダウン表示51aと、情報表示51bとを含む。このプルダウン表示51aには、LF印刷ドライバ15を含め、クライアントPC11にインストールされている複数のプリンタドライバが表示される。すなわちLF印刷ドライバ15は、ユーザからは他の複数のプリンタドライバと並存するものであり、ユーザはLF印刷ドライバ15でも、あるいは他のプリンタドライバでも、任意に選択することができる。ユーザが任意のプリンタを選択すると、情報表示51bに、そのプリンタについての詳細情報が表示される。プリンタ選択部51は、さらに、詳細設定を行う画面に遷移するためのプロパティ設定ボタン51cを含む。
【0046】
印刷内容設定部52は、印刷範囲を設定する範囲設定部52aと、印刷部数を設定する部数設定部52bを含む。範囲設定部52a、部数設定部52bについては、この画面表示50に対して直接に所望の入力を行う。なお画面表示50は、これら以外にも、用紙サイズ、用紙種類、印刷倍率、印刷品質(文字印刷か写真印刷か)、カラー/モノクロの別、両面コピー/集約コピーなどの印刷プロパティを指定する部分を含んでいるが、ここでは詳細な説明および図示は省略する。
【0047】
ユーザは、LF印刷ドライバ15を選択すると、次は印刷形態と、LF印刷ドライバ15に固有の設定を行う必要がある。この設定を行うためには、ユーザは、プロパティ設定ボタン51cを押下する。この結果、画面表示50は、図6に示すオプション設定画面60に遷移する。オプション設定画面60は、LF印刷ドライバ15に対応する画面であり、印刷有効期限入力部61、印刷許可指定入力部62、および印刷不整合時処理指定部63を含む。
【0048】
印刷有効期限入力部62は、ユーザがクライアントPC11で印刷命令を出してから、一定時間が経過してもプリンタにおけるユーザ認証が行われず、いずれのプリンタからも印刷要求が出されない場合に、該当の印刷データを印刷サーバ21から削除する期限を指定するものである。
【0049】
前述したように、この実施形態におけるロケーションフリー印刷システムでは、印刷サーバ21は、クライアントPC11から印刷データを受けると、それをいったん印刷データ格納部23に格納する。その後、ユーザが何れかのプリンタ31に対して認証を行い、当該プリンタから印刷要求を受けるまで、印刷サーバ21に印刷データが保存されることになる。
【0050】
ここで、いったん印刷命令を出したユーザが、何らかの理由でプリンタへの認証を行わない場合、該当する印刷データが印刷されぬままにいつまでも残存してしまうことになる。よって、このような印刷期限を設定し、期限を過ぎた印刷データを削除することが有効である。
【0051】
印刷許可指定入力部62は、文書を作成したユーザ以外にも、印刷を許可するメンバーを指示しておくものである。たとえば文書を作成したユーザが外出などでオフィスに不在の場合でも、他の者が代理で印刷を行うことができる。文書を作成したユーザが、この印刷許可指定入力部62で代理印刷を行う者を指示すると、この情報は当該ユーザに関連する印刷データとともに記憶される。その後、代理印刷者がいずれかのプリンタ、たとえばプリンタ31aにてICカード認証を行うと、この代理印刷者の認証情報が印刷サーバ21に送信される。
【0052】
印刷サーバ21は、この代理印刷者をキーとして印刷データ格納部23を検索する。その結果、あるユーザにより代理印刷が許可されていることが判明する。印刷サーバ21は、以降はこの代理印刷者を、文書を作成したユーザと同様に扱い、処理を続行する。すなわち、代理印刷者が認証を行ったプリンタ31aがターゲットプリンタとして特定され、その後の処理が続行される。
【0053】
印刷不整合時処理指定部63は、ユーザが画面表示50から入力した印刷プロパティと、ユーザが実際に認証を行ったターゲットプリンタとの間で機能の不整合が生じた場合の処理を指定するためのものである。
【0054】
前述したように、LF印刷ドライバ15は、具体的にプリンタを駆動する機能を有しているものではなく、ユーザが印刷命令をクライアントPC11に与える際のユーザ・インタフェースを提供するものである。この印刷命令は、印刷対象ファイルおよび印刷設定情報とともに印刷サーバ21に送られる。これらの印刷データに基づいて実際にプリンタを駆動するのは、印刷サーバ21に存在するドライバ26である。したがってLF印刷ドライバ15は、ターゲットプリンタとなり得るプリンタ31aないし31cの機能を全て指定できるようなユーザ・インタフェースとして作成される。
【0055】
一方、ユーザが実際に認証を行うターゲットプリンタは、必ずしも、LF印刷ドライバ15が提供する全ての機能を実装していない場合が考えられる。たとえば、ユーザがクライアントPC11で作業を行っている時には、文書について両面印刷を行いたいと考え、LF印刷ドライバ15にて両面印刷を指示したとする。しかし、その後にユーザが認証を行ったプリンタ31cが両面印刷機能を搭載していないものであった場合、印刷サーバ21がプリンタ31cに対応するドライバ26cを用いたとしても、両面印刷は行えない。このように、ユーザが指定した機能をターゲットプリンタが果たせない場合の処理を印刷不整合時処理指定部63で指定しておくものである。
【0056】
この実施形態では、印刷不整合時処理指定部63には(a)強制印刷、および(b)選択という2種類の選択肢が表示されている。
【0057】
「強制印刷」は、ユーザが指定する機能とターゲットプリンタが搭載する機能との間に不整合がある場合、ユーザ指定によらず、ターゲットプリンタが搭載する機能で行える形態で印刷を行う旨を指示するものである。たとえば前述の両面印刷の例では、ユーザが両面印刷を指示しているにも関わらず、プリンタ31cが両面印刷機能を搭載していないため、印刷サーバ21は単純な片面印刷としてプリンタ31cでの画像形成を行わせる。
【0058】
「選択」では、ユーザが指定する機能とターゲットプリンタが搭載する機能との間に不整合がある場合、印刷サーバはその印刷指示を実行せず、ユーザに対して不整合が生じている旨を通知する。この通知は、ターゲットプリンタ31cや認証のための入力装置が何らかの警告を出すようなものでよい。この警告はビープ音などの警告音あるいは画面上に警告メッセージを出すなどの警告表示でよい。
【0059】
ユーザは、不整合があると通知された場合に、いったんターゲットプリンタとして指定したプリンタでの印刷を継続するか、別のプリンタの設置場所に移動して改めて認証処理からやりなおすかを選択する。前者であれば、印刷サーバ21における処理は、上述した強制印刷と同様である。後者であれば、印刷サーバ21における処理は、上述したS41からやり直される。
【0060】
以下、図7のフローチャートを用いて、ユーザが指示した機能とターゲットプリンタが搭載する機能との間に不整合がある場合の印刷サーバ21の動作を説明する。図4に示す、プリンタにおける認証S41、印刷要求送信S42に続き、印刷サーバ21におけるジョブリスト取得S43までの処理は共通である。
【0061】
制御部22がジョブリストを取得して、これに基づきユーザが印刷対象ファイルを指定する。制御部22は、その印刷対象ファイルについての印刷設定情報を、印刷データ格納部23から読み出す。制御部22は、その一方で、ターゲットプリンタから受信した印刷要求に含まれるプリンタ識別情報により、ターゲットプリンタ31cの機種を判定する。次いで制御部22は、印刷設定情報と、ターゲットプリンタ31cの機能とを比較することにより、ユーザが指示した機能とターゲットプリンタが搭載する機能とが整合しているか否かをチェックする(S71)。
【0062】
この整合チェックの結果、整合OKすなわちユーザが指示した機能とターゲットプリンタ31cが搭載する機能とが整合している場合は、制御部22はスプールデータを作成し(S45)、生成されたスプールデータをターゲットプリンタ31cに送信する(S46)。この後の動作は前述したと同様である。
【0063】
一方、整合チェック(S71)にての判断がNOである場合には、制御部22は、当該印刷命令については処理を一時的に停止するとともに、ユーザに対して不整合が生じている旨を通知する(S72)。次いで制御部22は、印刷不整合時処理指定部63での指定が何れであるかを参照する(S73)。この指定が強制印刷であった場合には、制御部22は、ターゲットプリンタ31bが搭載する機能で行える形態でスプールデータを作成し(S45)、生成されたスプールデータをターゲットプリンタ31cに送信する(S46)。この後の動作は前述したと同様である。この場合は、ユーザがあらかじめ強制印刷を指示しているにも関わらず、確認的に不整合の通知を行うことになる。
【0064】
印刷不整合時処理指定部63での指定が選択であった場合には、制御部22は当該印刷命令については処理の停止を継続し、ユーザからのアクションを待つ(S74)。この場合ユーザは、不整合の通知を受けて、ターゲットプリンタの操作部(図示せず)から強制印刷の指示を入力することができる。この指示を受けると制御部22は、印刷不整合時処理指定部63での指定が強制印刷であった場合と同様に、ターゲットプリンタ31bが搭載する機能で行える形態でスプールデータを作成し(S45)、生成されたスプールデータをターゲットプリンタ31cに送信する(S46)。ユーザは、これ以外にも、たとえば別のプリンタに移動してあらためて認証を行こともできる。この場合の処理は図7には示されていないが、図4に示すS41からやり直すことになる。
【0065】
印刷サーバ21は、このようなユーザからのアクションが一定時間経過しても行われない場合は、当該印刷データについてはタイムアウトとして処理を終了する(S75)。このタイムアウトに次いで、S49と同様の後処理が行われてもよい。
【0066】
このような動作により、仮にユーザが指示した機能とターゲットプリンタが搭載する機能との間に不整合がある場合でも、この実施形態のロケーションフリー印刷システムを利用することができる。
【0067】
ところで、図4に示すS43において、ターゲットプリンタが特定され、印刷サーバ21が、そのユーザについての印刷ジョブをユーザに提示することを説明した。しかし、ターゲットプリンタ31bに対してジョブリストの提示を行わず、印刷サーバ21に格納されている当該ユーザのジョブを全て印刷してしまうという動作も考えられる。
【0068】
たとえばターゲットプリンタ31が小型プリンタであり、小型の表示装置しか搭載していないような場合などに有効である。ターゲットプリンタ31bの表示装置が小型であると、その表示装置を用いてすべてのジョブを表示することが難しく、ユーザの選択作業も難しいものとなる。よって、ユーザの選択動作を不要とするものである。
【0069】
なお上記では、ロケーションフリー印刷システムでは、認証作業を印刷サーバ21が行うことを例に説明した。しかし、印刷サーバ21とは別に認証専用のサーバがあってもよい。
【0070】
また上記では、入力装置が全てのプリンタに設けられている構成を説明した。このような構成では、ユーザが認証を行ったプリンタとは、ユーザが印刷を行うために指定したプリンタということになる。
【0071】
しかし、ユーザ認証を行うための入力装置は、必ずしも全てのプリンタに配置されている必要はない。要するに、入力装置とプリンタとが1対1に対応付けられていなくとも、ユーザの認証が行えて、印刷を行うターゲットプリンタが特定できる構成であればよい。たとえば「OAコーナー」と称されるような、オフィスの一角に複数台のプリンタが集中配置された場所を考える。このような場所にあっては、入力装置を備えるプリンタは1台だけでもよい。ただし入力装置は、ユーザ認証情報の入力機能に加えて、複数のプリンタから任意の1台を指定できる機能を有している必要がある。これによりユーザは、認証の際、任意の1台を指定することができる。この指定のためには、ボタンやタッチパネルによりプリンタを指定する構成が考えられる。さらに、入力装置はプリンタに設けられていなくともよい。たとえばネットワークに直接、入力装置のみが接続されており、その入力装置において認証およびプリンタの指定が行えればよい。このような構成であれば、ユーザが認証を行ったプリンタと、ユーザが印刷を行うために指定したプリンタとは異なるということになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の印刷システムを示す概念図
【図2】クライアントPCと印刷サーバの詳細な構成を示すブロック図
【図3】クライアントPCと印刷サーバとの間で行われる動作を示すフローチャート
【図4】印刷サーバとプリンタとの間で行われる動作を示すフローチャート
【図5】印刷設定を行う画面表示の一例を示す図
【図6】ロケーションフリー印刷ドライバのオプション設定画面の一例を示す図
【図7】不整合がある場合の印刷サーバの動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0073】
11 クライアントPC
12 CPU
13 記憶手段
14 キーボード
15 ロケーションフリー印刷ドライバ
21 印刷サーバ
22 制御部
23 印刷データ格納部
24、スプールデータ格納部
25 ドライバ格納部
31 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者による認証に基づき、印刷を制御する印刷システムであって、
使用者からの印刷命令に基づいて、この使用者に関連する印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を格納する記憶手段と、
前記使用者についての認証処理を行う認証手段と、
前記認証処理に応じて、前記印刷対象ファイルと、前記使用者が指示した画像形成手段との対応付けを行う制御手段と、
前記印刷対象ファイルに対応付けられた画像形成手段に応じたドライバを選択する選択手段と、
前記選択されたドライバを用いて、前記印刷対象ファイルからスプールデータを生成する生成手段と、
前記生成されたスプールデータを、前記指示された画像形成手段に供給する供給手段とを
有することを特徴とする、印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷システムであって、
前記印刷システムは、画像形成手段に応じて複数のドライバを有していることを特徴とする、印刷システム。
【請求項3】
請求項2記載の印刷システムであって、
前記認証手段による認証処理が行われるのに応じて前記使用者の認証情報を送信する認証情報送信手段と、
前記認証情報に基づいて前記記憶手段から前記使用者に関する前記印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を抽出する抽出手段とを有し、
前記生成手段は、前記抽出された印刷設定情報に応じて、前記印刷対象ファイルからスプールデータを生成するものであることを特徴とする、印刷システム。
【請求項4】
請求項3記載の印刷システムであって、
前記認証手段は、画像形成手段を指定する指定手段を有していることを特徴とする、印刷システム。
【請求項5】
複数のクライアント装置および複数の画像形成装置と接続され、使用者による認証に基づき、印刷を制御する印刷装置であって、
前記クライアント装置から受領した、前記使用者に関連する印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を格納する記憶手段と、
前記使用者の認証処理を行った認証装置から、この使用者の識別情報を受信する受信手段と、
前記複数の画像形成装置のうち、前記認証処理により指定された指定装置と前記使用者に関連する印刷対象ファイルとの対応付けを行う制御手段と、
前記使用者の識別情報に応じて、前記記憶手段から、前記使用者に関連する前記印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を読み出す読み出し手段と、
前記指定装置に応じたドライバを選択する選択手段と、
前記読み出された印刷設定情報に基づいて、前記選択手段により選択されたドライバを用いて、前記読み出された印刷対象ファイルからスプールデータを生成する生成手段と、
前記生成されたスプールデータを、前記指定装置に供給する供給手段とを
有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の印刷装置であって、
前記記憶手段は、画像形成手段に応じて複数のドライバを格納していることを特徴とする、印刷装置。
【請求項7】
請求項6記載の印刷装置であって、
前記使用者があらかじめ指定した代理者を登録する登録手段と、
前記代理者の認証処理を行った認証装置から、この代理者の識別情報を受信する第2の受信手段とを有し、
前記読み出し手段が、前記代理者の識別情報と、前記登録手段の登録内容とに応じて、前記使用者に関連する前記印刷対象ファイルおよび印刷設定情報を読み出す処理と、
前記制御手段が、前記複数の画像形成装置のうち、前記認証処理により指定された指定装置と前記使用者に関連する印刷対象ファイルとの対応付けを行う処理とを行うものであることを特徴とする、印刷装置。
【請求項8】
請求項6記載の印刷装置であって、
前記使用者が指定する印刷設定情報と、前記指定装置の印刷機能とに不整合がある場合の処理を、あらかじめ指定する事前指定手段を有することを特徴とする、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294889(P2009−294889A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147583(P2008−147583)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】