説明

印刷物の表面加工方法

【課題】印刷物の印刷面に上塗りワニスを塗布し、そのワニスが硬化する前に、ワニス面にフィルムを貼り合わせ、ワニスが硬化した後にフィルムを剥離して鏡面状の高光沢上塗り塗膜を形成する印刷物の表面加工方法において、シリコン系離型剤を使用することなく、上塗り塗膜からのフィルムの剥離が容易になり、印刷物の後加工性に優れる、印刷物の表面加工方法の提供。
【解決手段】印刷基材の表面に印刷インキで印刷し、該印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して紫外線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に前記フィルムを剥離して前記フィルムの表面形状に対応した表面形状を有する上塗り塗膜を形成する。好ましくは、ポリプロピレンフィルムを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の表面に鏡面状の高光沢上塗り層を形成する印刷物の表面加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍の表紙、包装材料、化粧紙、紙器等の印刷において、美粧性の付与と表面保護の必要から、印刷物の表面に高い光沢をもたせる表面加工方法が施されている。
【0003】
印刷物の表面加工法としては、(1)ポリプロピレンやポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムを接着剤で印刷物の表面に貼り合わせるフィルムラミネート加工方法、(2)印刷物の表面に上塗り用ワニスを塗布乾燥して上塗り塗膜を形成するコ−ティング加工方法、(3)印刷物の表面に上塗り用ワニスを塗布乾燥して上塗り塗膜を形成した後に印刷物を加圧プレスして上塗り塗膜を鏡面状にするプレス加工方法、(4)印刷物の表面に紫外線硬化型上塗り用ワニスを塗布し紫外線照射で硬化させて上塗り塗膜を形成するコ−ティング加工方法などがある。
【0004】
しかしながら、(1)の方法は、印刷物の所望の箇所だけを部分的に加工する部分加工ができない問題があり、(2)の方法は、印刷物の表面平滑性や光沢を高くできない問題があり、(3)の方法は、加圧プレスのために熱ドラムやプレス装置などの大掛かりの設備が必要となることからコスト高になる問題があり、(4)の方法は、(2)の方法と同様に印刷物の表面平滑性や光沢を高くできない問題がある。
【0005】
そこで、これらの問題点を解決するための方法として、印刷物の印刷面に上塗りワニスを塗布し、その塗膜が硬化する前に、塗膜面にフィルムを貼り合わせ、塗膜が硬化した後でフィルムを剥離するフィルム貼り合わせ方法が提案されている。
【0006】
このフィルム貼り合わせ方法としては、例えば、上塗りワニスとしてシリコン系離型剤を含有する加熱硬化型上塗りワニスを使用する方法(特許文献1)と、上塗りワニスとして紫外線硬化型上塗りワニスを使用し、且つ貼り合わせるフィルム材の表面にシリコン系離型剤を塗布する方法(特許文献2)が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2925656号公報
【特許文献2】特許第2521202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、上塗りワニスが加熱硬化型のものを用いることから、上塗り塗膜の硬化に40℃で15時間もの長時間の加熱乾燥工程を必要とし、そのために印刷物の生産性が低くならざるを得ず、また上塗り塗膜中にシリコン系離型剤が含まれることから、上塗り塗膜の光沢が低下する問題があるほか、印刷物の後加工工程において幾つかの問題点が生ずる。例えば、印刷紙を糊付けして紙器に組み立てる場合には、シリコン系離型剤の存在によって糊付け部の接着が阻害されるため、糊付け部分の接着が不良になる問題がある。また、美粧性をより一層高め高級感を出すために印刷紙の上塗り塗膜の上に金属箔を接着させることがあるが、上塗り塗膜中にシリコン系離型剤が含まれていると、金属箔の接着が不良になる問題がある。
【0009】
また特許文献2の方法では、貼り合わせるフィルム材の表面にシリコン系離型剤を塗布するから、そのシリコン系離型剤が印刷物の上塗り塗膜全面に付着し、特許文献1の方法と同様な問題が起こる。
【0010】
本発明は、印刷物の印刷面に上塗りワニスを塗布し、そのワニスが硬化する前に、ワニス面にフィルムを貼り合わせ、ワニスが硬化した後にフィルムを剥離する印刷物の表面加工方法において、シリコン系離型剤を使用することなく、上塗り塗膜からのフィルムの剥離が容易になる、印刷物の表面加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題の解決手段として、印刷基材の表面に印刷インキで印刷し、該印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して紫外線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に前記フィルムを剥離することを特徴とする印刷物の表面加工方法を提供する
【0012】
本発明は、上記課題の解決手段として、更に、印刷機と塗工機と表面加工機とから構成され、前記表面加工機が、カバーフィルムを印刷基材に圧着し搬送する圧着装置と、紫外線照射装置とを備え、前記カバーフィルムがポリオレフィンフィルムからなる、印刷物の表面加工装置を使用し、前記印刷機により印刷インキで印刷基材の表面に印刷し、前記塗工機により該印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、前記圧着装置により該上塗りワニスが塗布された印刷基材にカバーフィルムを圧着して搬送しながら前記紫外線照射装置から放射される紫外線を前記カバーフィルムを透して照射して前記上塗りワニスを硬化させ、該硬化した上塗り塗膜を有する印刷基材を前記表面加工機から排出することにより前記上塗り塗膜から前記カバーフィルムを剥離することを特徴とする印刷物の表面加工方法を提供する。
【0013】
本発明は、上記解決手段の好ましい実施形態として、前記印刷インキが酸化重合乾燥型印刷インキであり、前記紫外線硬化型上塗りワニスがアクリル樹脂又はスチレン樹脂を含有する、前記印刷物の表面加工方法を提供する。
【0014】
本発明は、上記解決手段の好ましい他の実施形態として、前記印刷インキが紫外線硬化型印刷インキであり、前記紫外線硬化型上塗りワニスがエポキシ樹脂を含有する、前記印刷物の表面加工方法を提供する。
【0015】
本発明は、上記解決手段の好ましい他の実施形態として、前記紫外線硬化型上塗りワニスがポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレートを含有する、前記印刷物の表面加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の印刷物の表面加工法では、上塗りワニスとして紫外線硬化型上塗りワニスを使用し、貼り合わせるフィルムとしてポリオレフィンフィルムを使用するから、上塗りワニスがシリコン系離型剤を含まなくとも、上塗りワニスの急激な紫外線硬化により発生する内部収縮歪みとポリオレフィンフィルムの不活性表面による低接着性との相乗効果により、ポリオレフィンフィルムが紫外線硬化した上塗りワニスの塗膜表面から容易に剥離し、ポリオレフィンフィルムの表面形状に対応する表面形状を有する上塗り塗膜を形成することができ、その上塗り塗膜はシリコン系離型剤を含まないから、シリコン系離型剤に起因する光沢の低下もなく、しかも後加工工程で印刷物を糊付けする際にもシリコン系離型剤に起因する接着阻害もないから強い接着力が得られ、金属箔付けによる美粧化に際しても強い接着力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用する印刷基材としては、特に限定はなく、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のフィルム又はシート;セロファン;アルミニウムフォイル;その他従来より印刷基材として使用されている各種基材を挙げることができる。
【0018】
本発明で使用する印刷インキとしては、特に限定はなく、例えば、酸化重合乾燥型印刷インキ、紫外線硬化型印刷インキ、ヒートセット型印刷インキ、グラビア印刷インキ、シルクスクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ等の市販されている各種のものを使用することができる。
【0019】
印刷方法としては、例えば、印刷インキのタイプに応じて、オフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷等の各種の印刷方式を採用できる。
【0020】
本発明で使用する紫外線硬化型上塗りワニスは、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーと光重合開始剤とからなるが、多官能(メタ)アクリレート及び/又は重合性オリゴマーを主成分として含み、更に必要に応じて単官能(メタ)アクリレートを副成分として含有するワニスが好ましい。
【0021】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレートが、上塗り塗膜からのポリオレフィンフィルムの剥離性を高める一方、インキ皮膜と上塗り塗膜との密着性を確保する点から好ましい。
【0022】
重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
本発明で使用する光重合開始剤としては、公知慣用のものがいずれも使用でき、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。
【0025】
光重合開始剤の含有量は、通常、重合性モノマー及び重合性オリゴマーの総量に対し、1〜20重量%であるが、本発明においては上塗りワニス面と重合阻害を引き起こす酸素との接触をポリオレフィンフィルムが遮断するため、光重合開始剤の含有量を軽減することができ、例えば、1〜5%とすることもできる。
【0026】
本発明で使用する紫外線硬化型上塗りワニスとしては、市販されている各種のものを使用することができ、例えば、大日本インキ化学工業株式会社の製品である「ダイキュアクリヤー UV−1219R」、「ダイキュアクリヤー UV−1224HB」、「ダイキュアクリヤー UV−1400マット」、「ダイキュアクリヤー HP−454」、「ダイキュアクリヤー HP−462」、「ダイキュアクリヤー YW−3205」、「ダイキュアクリヤー YD−5205」、「ダイキュアクリヤー TL−103」等を使用することができる。
【0027】
本発明で使用する紫外線硬化型上塗りワニスには、既述の成分のほか、インキ皮膜と上塗り塗膜との層間密着性を高めるために、熱可塑性のアクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を添加することができる。
【0028】
例えば、印刷インキとして酸化重合乾燥型印刷インキを用いる場合、紫外線硬化型上塗りワニス中にアクリル樹脂又はスチレン樹脂を添加することが、上塗り塗膜からのポリオレフィンフィルムの剥離性を悪化させることなく、インキ皮膜と上塗り塗膜との層間密着性を高めることができる点で、好ましい。
【0029】
また、印刷インキとして紫外線硬化型印刷インキを用いる場合、紫外線硬化型上塗りワニス中にエポキシ樹脂を添加することが、上記と同様の点で、好ましい。
【0030】
これらの場合、アクリル樹脂、スチレン樹脂又はエポキシ樹脂の添加量は、これらの樹脂を含有する紫外線硬化型上塗りワニスの全重量に対して25〜50重量%が好ましい。
【0031】
これらのアクリル樹脂、スチレン樹脂又はエポキシ樹脂としては、塗料用途に市販されている各種のものを使用することができる。
【0032】
紫外線硬化型上塗りワニスの印刷面への塗布は、印刷面の印刷インキが乾燥する前に行ってもよいし、乾燥した後に行ってもよいが、印刷インキで印刷した後、続いて連続的に上塗りワニスを塗布する方が生産性が高まる点から好ましい。
【0033】
紫外線硬化型上塗りワニスを印刷基材の表面に塗布する装置としては、ロールコーターを使用することができ、特にアニロックスロールコーターが好ましい。
【0034】
紫外線硬化型上塗りワニスの塗布量は、特に限定されないが、一般的には固形分基準で0.5〜5g/mである。塗布は、印刷面の全面にしてもよいし、所望の一部分にしてもよい。
【0035】
印刷基材の表面に印刷インキで印刷した後、その印刷面の全部又は一部の面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、その塗布面に表面が平滑なポリオレフィンフィルムを貼り合わせる。この貼り合わせは貼り合わせロールを使って行うことができる。
【0036】
ワニス塗布面に貼り合わせるポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、ポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリオレフィンフィルムの表面形状としては、例えば、平滑面、マット面、エンボス面、ホログラフ面等の任意の表面形状でよく、得られる上塗り塗膜の表面形状はポリオレフィンフィルムの表面形状に対応したものになる。
【0037】
ワニス塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせた後、ポリオレフィンフィルムを透して紫外線を照射し、塗布面のワニスを硬化させる。その際、紫外線光源としては高圧水銀灯を使用でき、特にメタルハライド高圧水銀灯を使用することが、ワニスを高速で光硬化させて内部硬化歪みを発生させ、これによりポリオレフィンフィルムからの剥離を容易にできる点で、好ましい。
【0038】
ワニス塗膜を光硬化させた後、該塗膜面からポリオレフィンフィルムを剥離する。これによりポリオレフィンフィルムの表面形状に対応した表面形状をもった上塗り塗膜を有する印刷物が得られる。
【0039】
次に、本発明に係る印刷物の表面加工方法を図面に基づいて更に具体的に説明する。図1は本発明に係る印刷物の表面加工方法を実施するための装置の全体概略図であり、図2は本発明に係る印刷物の表面加工方法を実施する工程を示す図である。図1において1は本発明に係る印刷物の表面加工方法を実施するための装置の一例である印刷物の表面加工装置を示し、該印刷物の表面加工装置1は、印刷機2、塗工機3及び表面加工機4から構成されている。
【0040】
印刷基材6(図2(a)参照)は基材ロール5から繰り出され印刷機2に供給される。印刷機2は、印刷ユニット7a、7b、7c、7dを備え、印刷機2に運ばれた印刷基材6は、通常、印刷ユニット7aにより墨色インキで印刷され、印刷ユニット7bにより藍色インキで印刷され、印刷ユニット7cにより紅色インキで印刷され、印刷ユニット7dにより黄色インキで印刷されて、表面にインキ皮膜20が形成される(図2(b)参照)。
【0041】
印刷機2で印刷された印刷基材6は、塗工機3に運ばれる。その際、印刷インキとしてヒートセットインキを使用する場合は、印刷された印刷基材6はドライヤー22でヒートセットされてから塗工機3に運ばれる。塗工機3は、チャンバー8、アニロックスロール9、ブランケット胴10及び圧胴11から構成されている。紫外線硬化型上塗りワニス12はチャンバー8に収容され、アニロックスロール9とブランケット胴10を介して印刷物の印刷面に塗布され、上塗り塗膜21が形成される(図2(c)参照)。
【0042】
印刷面に紫外線硬化型上塗りワニス12が塗布された印刷基材6は、塗工機3から表面加工機4に運ばれる。表面加工機4は、上下に配設され所定の接触圧で駆動回転する上部駆動ロール13a、13bと下部駆動ロール15a、15bから構成される圧着装置16を備えている。繰出しロール(図示せず)から繰出されたポリオレフィンフィルムからなるカバーフィルム14は上部駆動ロール13a、13b間に緊張状態で掛け渡され巻取りロール(図示せず)に巻き取られるようになっている。カバーフィルム14は、上部駆動ロール13aと下部駆動ロール15aとの間で印刷基材6に圧着され、上塗り塗膜21にカバーフィルム14が貼り合わされる(図2(d)参照)。
【0043】
カバーフィルム14の上方に紫外線照射装置17が配設されており、印刷基材6がカバーフィルム14と密着しながら紫外線照射装置17の下に運ばれるとき、上塗り塗膜21がカバーフィルム14を透して照射される紫外線によって硬化する(図2(e)参照)。その後、印刷基材6及びカバーフィルム14は、張合わされた状態で上部駆動ロール13bと下部駆動ロール15bの位置まで運ばれ、この位置を通過するとき、すなわち印刷基材6が表面加工機4から排出されるとき、光硬化した上塗り塗膜21はカバーフィルム14から容易に剥離して表面加工された印刷物19が形成され(図2(f)参照)、この印刷物19は印刷物ロール18として巻き取られる。
【実施例】
【0044】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中の「%」は「重量%」を表す。
【0045】
(実施例1)
カバーフィルム14としてポリプロピレンフィルムを使用した図1の印刷物の表面加工装置を使用し、印刷機2において、印刷インキとして大日本インキ化学工業株式会社製のヒートセットオフ輪インキ、商品名「ウェブワールド アドバン」のプロセス4色(墨、紅、藍及び黄)の印刷インキをそれぞれ使用して、コート紙に200m/分の印刷速度で所定の絵柄を印刷した。次いで、ドライヤー22でヒートセットした後、塗工機3において、この印刷面に、同社製の紫外線硬化型上塗りワニス「ダイキュアクリヤーHP462」を、4g/mの塗布量となるように塗布し、圧着装置16において、該上塗りワニスが塗布された印刷紙にカバーフィルム14を圧着し、その状態で搬送しながら、紫外線照射装置17の下を通過させ、該装置17から放射される紫外線をカバーフィルム14を透して上記上塗りワニスに照射し、該ワニスを光硬化させた。光硬化した上塗り塗膜21で表面加工された印刷物19がカバーフィルム14から綺麗に剥離して印刷物ロール18として巻き取られた。この方法で、最終印刷物の長さが70cmとして3000枚(印刷紙の長さで約2100m)に相当する分量の印刷物の表面加工を連続して行ったが、上塗り塗膜21とカバーフィルム14との間の剥離性に問題は生じなかった。
【0046】
(実施例2)
印刷インキ及び紫外線硬化型上塗りワニスとして、それぞれ下記のものを用い、ドライヤー22を用いない以外は実施例1と同様にして、連続して3000枚の印刷物の表面加工を行ったが、上塗り塗膜21とカバーフィルム14との間の剥離性に問題は生じなかった。また、得られた各印刷物は、インキ皮膜20と上塗り塗膜21との層間密着性も良好で、セロファン剥離テストにおいても層間密着性に問題はなかった。
(1)印刷インキ:
大日本インキ化学工業株式会社製、酸化重合乾燥型平版印刷インキ、商品名「スペースカラー・バリウスG」のプロセス4色(墨、紅、藍及び黄)
(2)紫外線硬化型上塗りワニス:
同社製の紫外線硬化型上塗りワニス「ダイキュアクリヤーHP454」
【0047】
(実施例3)
印刷インキ及び紫外線硬化型上塗りワニスとして、それぞれ下記のものを用い、ドライヤー22を用いない以外は実施例1と同様にして、連続して3000枚の印刷物の表面加工を行ったが、上塗り塗膜21とカバーフィルム14との間の剥離性に問題は生じなかった。また、得られた各印刷物は、インキ皮膜20と上塗り塗膜21との層間密着性も良好で、セロファン剥離テストにおいても層間密着性に問題はなかった。
(1)印刷インキ:
大日本インキ化学工業株式会社製、紫外線硬化型印刷インキ、商品名「ダイキュア セプターDT」のプロセス4色(墨、紅、藍及び黄)
(2)紫外線硬化型上塗りワニス:
同社製の紫外線硬化型上塗りワニス「ダイキュアクリヤーHP455」
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る印刷物の表面加工方法を実施するための装置の全体概略図である。
【図2】本発明に係る印刷物の表面加工方法を実施する工程を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 印刷物の表面加工装置
2 印刷機
3 塗工機
4 表面加工機
5 基材ロール
6 印刷基材
7a、7b、7c、7d 印刷ユニット
8 チャンバー
9 アニロックスロール
10 ブランケット胴
11 圧胴
12 紫外線硬化型上塗りワニス
13a、13b 上部駆動ロール
14 カバーフィルム
15a、15b 下部駆動ロール
16 圧着装置
17 紫外線照射装置
18 印刷物ロール
19 表面加工された印刷物
20 インキ皮膜
21 上塗り塗膜
22 ドライヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷基材の表面に印刷インキで印刷し、該印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、該塗布面にポリオレフィンフィルムを貼り合わせ、該ポリオレフィンフィルムを透して紫外線を照射して前記塗布面のワニスを硬化させ、その後に前記フィルムを剥離することを特徴とする印刷物の表面加工方法。
【請求項2】
印刷機と塗工機と表面加工機とから構成され、前記表面加工機が、カバーフィルムを印刷基材に圧着して搬送する圧着装置と、紫外線照射装置とを備え、前記カバーフィルムがポリオレフィンフィルムからなる、印刷物の表面加工装置を使用し、前記印刷機により印刷インキで印刷基材の表面に印刷し、前記塗工機により該印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布し、前記圧着装置により該上塗りワニスが塗布された印刷基材に前記カバーフィルムを圧着して搬送しながら前記紫外線照射装置から放射される紫外線を前記カバーフィルムを透して照射して前記上塗りワニスを硬化させ、該硬化した上塗り塗膜を有する印刷基材を前記表面加工機から排出することにより前記上塗り塗膜から前記カバーフィルムを剥離することを特徴とする印刷物の表面加工方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンフィルムがポリプロピレンフィルムである、請求項1又は2に記載の印刷物の表面加工方法。
【請求項4】
前記印刷インキが酸化重合乾燥型印刷インキであり、前記紫外線硬化型上塗りワニスがアクリル樹脂又はスチレン樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷物の表面加工方法。
【請求項5】
前記印刷インキが紫外線硬化型印刷インキであり、前記紫外線硬化型上塗りワニスがエポキシ樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷物の表面加工方法。
【請求項6】
前記紫外線硬化型上塗りワニスがポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレートを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷物の表面加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−90162(P2007−90162A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280085(P2005−280085)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】