説明

印刷物の製造方法、有機電界発光素子およびその製造方法

【課題】
インキに高沸点溶媒を用いた場合であっても、インキはじきを最小に抑える印刷物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
ブランケットの有効面全面にインキを塗工するインキ供給工程と、凸部を被印刷基板に形成するパターンのネガパターンにした除去版に前記ブランケットを押圧して分離することで、ブランケットからネガパターンでインキを除去しブランケット上に所望のパターンを形成する転写除去工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケットから被印刷基板にパターンを転写する転写工程からなる凸版反転オフセット印刷法を用いて印刷物を繰り返し製造する際に、ブランケットを溶剤吸収体に押圧させることによりブランケット中に存在する溶剤を除去する工程を有することを特徴とする印刷物の製造方法等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランケットの有効面全面にインキを塗工するインキ供給工程と、凸部を被印刷基板に形成するパターンのネガパターンにした除去版に前記ブランケットを押圧して分離することで、ブランケットからネガパターンでインキを除去しブランケット上に所望のパターンを形成する転写除去工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケットから被印刷基板にパターンを転写する転写工程からなる凸版反転オフセット印刷法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷法には凹版オフセット印刷法や凸版反転オフセット印刷法と呼ばれるものがある。凹版オフセット印刷法と凸版反転オフセット印刷法はともに平滑なゴム層を印刷面に有するブランケットを用いてパターン化されたインキを被印刷基板上に転写するものであるが、インキをパターン化する工程が異なる。凹版オフセット印刷法はオフセット印刷法として広く知られているものであり、インキ供給手段から凹版にインキを供給し、凹版の凹部にインキを満たすことによりインキをパターン化する工程と、凹版の凹部にあるパターン化されたインキをブランケットに転写する工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケット上にあるインキパターンを被印刷基板に印刷する工程からなる。
【0003】
これに対して、凸版反転オフセット印刷法はインキ供給手段からブランケットの有効面全面にインキを塗工する工程と、凸部を被印刷基板に形成するパターンのネガパターンにした除去版にブランケットを押圧して分離することで、ブランケットからネガパターンでインキを除去しブランケット上に所望のパターンを形成する工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケット上にあるインキパターンを被印刷機板に印刷する工程からなる。この凸版反転オフセット印刷法は、インキの塗布状態とインキの転移状態とを独立して制御できるため、インキ膜厚の均一性がよいこと、糸引き現象が発生しない良好な転移を低印圧で実現できることから、高精細で歪みの少ない画像を形成する上で有利な方法である。なお、凸版反転オフセット印刷法に用いられるブランケットの印刷面の用いられるゴム材料は印刷適性等を考慮するとシリコーンゴムが好適である。
【0004】
しかし、ブランケット上にあるインキを除去版で除去、また、インキを被印刷基板に転写させるためには、ブランケット上にあるインキは湿潤している必要があるために、高沸点溶媒を用いる必要がある。
【0005】
この場合、高沸点溶媒を用いた場合、ブランケット上にあるインキ中の溶剤はブランケットに吸収・蓄積され、蒸発すること無く、徐々にブランケット内に蓄積されていく。
【0006】
もちろん、この方法場合に版に余分なインキを100%転写するとともに、ブランケット(胴)から基板へインキを100%転写すること、即ち、刷版へ転写した後もブランケット(胴)には必要なパターニング部分のインキが100%残り、それが100%基板へ転写される必要がある。
【0007】
しかし、前述したオフセット印刷法は転写胴表面(ブランケット)にコーティングされたインキ膜をウェット状態で刷版に転移させる必要があるため、コーティング速度(ブラン胴回転速度)を大きくする必要があるが、ブランケットへの溶剤吸収スピードがコーティング速度よりも小さい場合、ブランケット上でインキはじきが生じる。インキ膜の乾燥を回避するためには、インキ溶剤にシクロヘキシルベンゼン(CHB:b.p.240℃
)等の高沸点溶剤を用いる必要があるが、逆に転写胴表面(ブランケット)に繰り返しコーティングを行うにつれ、ブランケットが膨潤してしまう問題がある。
【0008】
その結果、印刷回数を重ねてブランケットの溶剤吸収能力が閾値を超えたとき、ブランケットが溶剤を吸収できないので、ブランケットの有効面にインキを形成することができずにインキハジキが発生する。
【0009】
また、ブランケットが膨潤してしまうと、パターン精度の低下と転写性能の低下という問題を生じる。
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、インキハジキを解決するために、本発明のようにブランケットの溶剤を吐き出させる必要がある。通常はブランケットを乾燥することにより溶剤を除去するが、高沸点溶媒であるために除去するのに時間がかかるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み考案されたもので、インキに高沸点溶媒を用いた場合であっても、インキはじきを最小に抑える印刷物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の請求項に係る本発明は、ブランケットの有効面全面にインキを塗工するインキ供給工程と、凸部を被印刷基板に形成するパターンのネガパターンにした除去版に前記ブランケットを押圧して分離することで、ブランケットからネガパターンでインキを除去しブランケット上に所望のパターンを形成する転写除去工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケットから被印刷基板にパターンを転写する転写工程からなる凸版反転オフセット印刷法を用いて印刷物を繰り返し製造する際に、
ブランケットを溶剤吸収体に押圧させることによりブランケット中に存在する溶剤を除去する工程を有することを特徴とする印刷物の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、第2の請求項に係る本発明は、請求項1に記載の方法により有機発光層を製造した有機電界発光素子を提供するものである。
【0014】
さらに、第3の請求項に係る本発明は、請求項2に記載の有機電界発光素子の有機発光層が赤、緑、青の各画素に対応する発光色を持つことを特徴とする有機電界発光素子を提供するものである。
【0015】
加えて、第4の請求項に係る本発明は、請求項1に記載の方法により有機発光層を製造する有機電界発光素子の製造方法を提供するものである。
【0016】
最後に、第5の請求項に係る本発明は、請求項4に記載の有機電界発光素子の有機発光層が赤、緑、青の各画素に対応する発光色を持つ有機発光層であり、各色毎に印刷を行うことにより製造されたものであることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インキに高沸点溶媒を用いた場合であっても、インキはじきがなく、連続印刷による印刷物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のシリコーンブランケットの印刷面に用いられるシリコーンゴム層はベース基材の上に設けられる。ベース基材としては、印刷時にブランケット胴に取り付けられることから可とう性のあるシートであれば構わないが、コスト及び寸法安定性からポリエチレンテレフタレートフィルムといったポリエステルフィルムが好適である。また、ベース基材とシリコーンゴム層の間には必要に応じてプライマー層が設けられる。また、ベース基材の下には必要に応じてクッション層が設けられる。
【0019】
クッション層としてはスポンジ状の材料を用いることができる。なお、シリコーンゴム層は、ベース基材上でシリコーンゴム材料を硬化させることも、シリコーンゴム材料を型で硬化させた後にベース基材と貼りあわせることも可能である。シリコーンゴム層とベース基材およびクッション層を合わせた形でシリコーンブランケットとなる。なお、シリコーンゴム層のみでシリコーンブランケットとし、ブランケット胴に取り付けることも可能である。
【0020】
本発明のシリコーンゴム層に用いられるシリコーンゴム材料は主剤と硬化剤を混合し、ベース基材上で硬化し用いられる。シリコーンゴム材料は印刷適性のあるものであれば構わないが、RTV(室温硬化)型で付加型のシリコーンゴム材料が副生成物を発生せず、寸法安定が良いため好適である。なお、硬化前の段階でシリコーンオイル成分(シロキサン成分)が除去された、いわゆるシロキサン除去グレードのシリコーンゴム材料が市販されているのでそれらを用いても良い。
【0021】
とくに本発明においては、後述の溶剤を除去する工程でブランケット内部に浸透した溶剤をブランケットに高印圧を負荷し、布等に吸収させることで、ブランケットを未使用に近い状態で復元でき、ブランケットの膨潤やそれに伴うはじきを抑制することができる。なお、この場合における使用ブランケットの材質はポリジメチルシロキサンに代表されるシリコン樹脂であることが望ましい。
【0022】
インキの耐熱性によってシリコーンオイルは適宜選択される。耐熱性の悪いインクや被印刷基板を使用する場合には、沸点の低いすなわち分子量が小さいシリコーンオイルを用いればよい。ただし、沸点の低いシリコーンオイルは、オフセット印刷においてシリコーンブランケットの使用時間が長時間になった場合にシリコーンオイル成分が揮発し、その効果が十分にあらわれない可能性がある。
【0023】
図2に、本発明に係る有機EL素子を示す模式断面図を示す。この有機EL素子10は、透光性基板11と透明導電層12と正孔注入層13と有機発光媒体層14と陰極層15とを具備するものである。
【0024】
この有機EL素子10において、透光性基板11としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより有機EL素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、透明導電層12を成膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
【0025】
透明導電層12の材料としては、インジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)が挙げられる。また、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものや、ポリ
アニリン等の有機半導体などが挙げられる。また、正孔注入層13の材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の導電性高分子材料が挙げられる。
【0026】
有機発光媒体層14は有機発光材料を含有する有機発光層を含有する層であり、電流が流れることにより発光する層である。高分子の有機発光材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子材料が挙げられる。
【0027】
また、有機発光媒体層14は必要に応じ、有機発光材料を含有する有機発光層以外に正孔注入層・正孔輸送層・電子ブロック層・正孔ブロック層・電子輸送層・電子注入層を含む積層構造をとることが可能である。なお、有機発光媒体層14に正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層・電子輸送層・電子注入層が設けられた場合、これらの層を形成する際にも本発明の製造方法を適用することが可能である。
【0028】
正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層とは、正孔輸送性及び/若しくは電子ブロック性を有する材料を有する層であり、それぞれ透明導電層12から有機発光媒体層14への正孔注入の障壁を下げる、透明導電層12から注入された正孔を陰極層15の方向へ進める、正孔を通しながらも電子が透明導電層12の方向へ進行するのを妨げる役割を担う層である。
【0029】
これらの層に用いられる材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子材料が挙げられる。また、ポリパラフェニレン(PPP)等のポリアリーレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)等のポリアリーレンビニレン系等の導電性高分子若しくはポリスチレン(PS)等の高分子に、アリールアミン類、カルバゾール誘導体、アリールスルフィド類、チオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体等の低分子の正孔輸送性、電子ブロック性を示す材料を混合したものを用いても良い。
【0030】
正孔ブロック層、電子輸送層とは電子輸送性及び/若しくは正孔ブロック性を有する材料を有する層であり、それぞれ陰極層15から注入された電子を透明導電層12の方向へ進める。電子を通しながらも正孔が陰極層15の方向へ進行するのを妨げる役割を担う層である。これらの層に用いられる材料としては、電子輸送性ポリシラン、ポリシロール、含ボロンポリマー等の電子輸送性を有するもの、ポリパラフェニレン(PPP)等のポリアリーレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)等のポリアリーレンビニレン系等の導電性高分子若しくはポリスチレン等の高分子に、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体の電荷移動錯体、シロール誘導体、アリールボロン誘導体、ビスフェナントロリン等のピリジン誘導体、パーフルオロ化されたオリゴフェニレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の電子輸送性若しくは正孔ブロック性を有する材料を混合したものを用いても良い。
【0031】
電子注入層とは電子注入性を有する材料を有する層であり、陰極層15から有機発光媒体層14への電子の注入障壁を下げる役割を担う層である。この層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられるのと同様な材料の他に、フッ化リチウムや酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩や酸化物をポリスチレン(PS)等の高分
子材料に混合したものを用いても良い。
【0032】
陰極層15の材料としては、有機発光媒体層14の発光特性に応じたものを使用でき、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体やこれらと金、銀などの安定な金属との合金などが挙げられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。
【0033】
正孔注入層13の形成は、前記導電性高分子材料を含有するインキを用いる。先ず、透明導電層付き透光性基板を用意し、その透明導電層を所定のパターンにエッチングし、次いで、パターン状に透明導電層が形成された透光性基板上に、導電性高分子材料を含有するインキを印刷して正孔注入層を設ける。このようにして、透光性基板と透明導電層と正孔注入層とを有する被印刷基板を得る。
【0034】
インキは、各種のものを用いることが可能で、例えば有機EL用途の場合で説明すれば、。有機発光インキは、有機発光材料が溶媒に溶解または分散したものである。
【0035】
なお、溶解または分散する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0036】
次に、印刷物の製造方法および凸版反転オフセット印刷法について、有機発光層を印刷する場合で代表させて以下に示す。図3に有機発光層を形成する際の凸版反転オフセット印刷装置の模式図を示した。まず、透光性基板と透明導電層と正孔注入層とを有する被印刷基板に、図示しないインキ供給手段からブランケット胴20に設置したシリコーンブランケット21の有効面に有機発光インキ22を塗布、乾燥させ塗膜を形成する。
【0037】
なお、有機発光(EL)素子及び有機発光層を形成する場合は、透明導電層付き透光性基板を用意し、その透明導電層を所定のパターンにエッチングし、次いで、パターン状に透明導電層が形成された透光性基板上に、導電性高分子材料を含有するインキを印刷して正孔注入層を設ける。このようにして、透光性基板と透明導電層と正孔注入層とを有する被印刷基板25を得る。
【0038】
次いで、ブランケット胴20を回転させ、インキのネガパターンが形成された除去版23とシリコーンブランケット21を圧着させ、除去版23を固定したステージ24をブランケット胴の回転に合わせ移動させる。このとき除去版の凸部に圧着した有機発光インキ22はブランケットから除去され除去版23の凸部に転移し、ブランケット上には所望の有機発光インキ22のパターンが形成される(図3(a)、(b))。次に、ブランケット胴20を回転させ、被印刷基板とシリコーンブランケット21を圧着させ、被印刷基板25を固定したステージ24をブランケット胴20の回転に合わせて移動させる。このとき、シリコーンブランケット上にある有機発光インキ22のパターンは被印刷基板25に印刷される(図3(c)、(d))。
【0039】
なお、図3ではブランケット胴の回転に合わせ除去版および被印刷基板のあるステージが移動する機構だが、ブランケット胴の回転に合わせブランケット胴が移動する機構であっても良い。以上より、被印刷基板上に有機発光層は形成され、印刷時に転移したシリコーンオイル成分及び余分な溶剤を減圧乾燥により除去し、その上に陰極層を設け有機EL素子を得る。
【0040】
この場合のインキは、インキ溶剤としてシクロヘキシルベンゼン(CHB:b.p.240℃)等の高沸点溶剤を用いることが可能である。他に用いることができる溶剤としては、アミルベンゼン(b.p.205℃)、テトラリン(b.p.207℃)、メシチレン(b.p.163℃)n−プロピルベンゼン(b.p.159℃)などである。溶剤と有機発光材料以外のインキ成分として、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0041】
このインキのうち溶剤を用いた場合、ブランケット上にあるインキ中の溶剤はブランケットに吸収・蓄積され、蒸発すること無く、徐々にブランケット内に蓄積されていく。
【0042】
その結果、印刷回数を重ねてブランケットの溶剤吸収能力が閾値を超えたとき、ブランケットが溶剤を吸収できないので、ブランケットの有効面にインキを形成することができずにインキハジキが発生するとともに、ブランケットの膨潤によるパターン精度の低下と転写性能の低下した場合、以下の溶剤を除去する工程を行う。
【0043】
溶剤を除去する工程は、例えば、シリコーンブランケットの膜厚が0.6〜2mmであり、コーティング速度が3〜10mm/secでコーティングを行った場合、連続印刷回数10〜15回につき1回の割合で行う。
【0044】
具体的には、ブランケットを溶剤吸収体に押圧させることによりブランケット中に存在する溶剤を除去する。この場合の溶剤吸収体は例えば厚さ0.5〜1mmで材質がナイロン等のポリアミド系繊維からなる溶剤吸収布があるが、アクリル等のポリビニル系繊維などの合成繊維で構わない。綿等の天然繊維の場合、くず等が発生し、ブランケットに付着するので合成繊維が望ましい。
【0045】
具体的には、通常の印刷において、被印刷物であるガラスに代わり、ガラス表面に前記溶剤吸収布を積層した上で印刷工程に流すことで、新たな装置や機構を設けずとも構わない。
【実施例】
【0046】
ポリジメチルシロキサンからなる、厚さ2mmのシリコーンブランケット1を得た。これを、デカメチルシクロペンタシロキサンを溶解したトルエン溶液に48時間浸漬し、シリコーンブランケット中の溶出シリコーンオイルの量が1000ppmとなるようなシリコーンブランケットを得た。
【0047】
次に、上述したシリコーンブランケット3の表面に、ポリアリーレンビニレン系高分子発光体であるポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン)をシクロヘキシルベンゼンに溶解し、有機発光インキを得た。この有機発光インキをバーコーターにて塗布、乾燥して100nmの層を形成した。有機発光インキはブランケット上に均一に塗布されており、インキはじきによるメロンパターンなどの塗布ムラは一切見られなかった。次いで、有機発光インキが外側に位置するようにブランケットをブランケット胴に巻き付けた。また、ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物をグラビア印刷法によりパターン上に印刷して厚さ50nmの正孔注入層を設けた。このようにして、透光性基板と透明導電層と正孔注入層とを有する被印刷基板を得た。
【0048】
次に、ブランケット上の有機発光インキを、被転写体の正孔注入層に押圧部材により圧着させた。続いて、ブランケットが巻き付けられたブランケット胴を回転させるとともにその回転に応じて被印刷基板を平行に移動させて、有機発光インキをを被印刷基板に順次
印刷した。その結果、有機発光インキは被印刷基板に完全に印刷された。被印刷基板を窒素雰囲気下で80℃、2時間減圧乾燥し印刷時に転移したシリコーンオイル成分及び余分な溶剤を除去し有機発光層を得た。次いで、陰極層としてフッ化リチウムおよびアルミニウムを真空蒸着によりそれぞれ0.5nm、200nm設けて、有機EL素子を得た。得られた高分子EL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/m2のパターン化された発光を示した。この有機EL素子の発光面を光学顕微鏡で100倍まで拡大して観察したところ発光ムラは一切見られなかった。
【0049】
このインキのうち高沸点溶剤を用いた場合、ブランケット上にあるインキ中の溶剤はブランケットに吸収・蓄積され、蒸発すること無く、徐々にブランケット内に蓄積されていく。
【0050】
その結果、印刷回数を重ねてブランケットの溶剤吸収能力が閾値を超えたとき、ブランケットが溶剤を吸収できないので、ブランケットの有効面にインキを形成することができずにインキハジキが発生するとともに、ブランケットの膨潤によるパターン精度の低下と転写性能の低下した場合、以下の溶剤を除去する工程を行う。
【0051】
溶剤を除去する工程は、10回の印刷に一度のタイミングに行う。
【0052】
具体的には、ブランケットを溶剤吸収体に押圧させることによりブランケット中に存在する溶剤を除去する。この場合の溶剤吸収体は例えば厚さ0.7で材質がナイロンからなる溶剤吸収布を用いた。
【0053】
具体的には、図3の様に、通常の印刷において、一次側ステージ(刷版)5の基材であるガラス4の上に溶剤吸収体である溶剤吸収布3を置いてブランケット胴1上のブランケット2を加圧回転することで、印刷装置をそのまま使え、新たな装置や機構を設けずとも構わない。
【0054】
この様な方法による溶剤除去工程により、従来のブランケットの乾燥除去の場合の、除去後20回でインキハジキが発生ていたのに対し、本発明では連続で印刷を続行することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、有機EL素子や各種ディスプレイの様な、ガラス基板の様な変形がなく、しかも加圧が困難な材質が被印刷物であり、しかも精細な印刷物が求められる各分野において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る印刷物の製造工程を示す模式断面図である
【図2】本発明に係る有機EL素子を示す模式断面図である
【図3】有機発光層を形成する際の凸版反転オフセット印刷装置の模式図である
【符号の説明】
【0057】
1. ブランケット胴
2. ブランケット
3. 溶剤吸収用布
4. 基材(ガラス)
5. 一次側ステージ(刷版)
6. 二次側ステージ(ガラス)
7. ワーク(ガラス)
8. 加圧方向
9. ステージ進行方向
10・・有機EL素子
11・・透光性基板
12・・透明導電層
13・・正孔注入層
14・・高分子発光媒体層
15・・陰極層
20・・ブランケット胴
21・・シリコーンブランケット
22・・有機発光インキ
23・・除去版
24・・ステージ
25・・被印刷基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケットの有効面全面にインキを塗工するインキ供給工程と、凸部を被印刷基板に形成するパターンのネガパターンにした除去版に前記ブランケットを押圧して分離することで、ブランケットからネガパターンでインキを除去しブランケット上に所望のパターンを形成する転写除去工程と、ブランケットを被印刷基板に押圧し分離してブランケットから被印刷基板にパターンを転写する転写工程からなる凸版反転オフセット印刷法を用いて印刷物を繰り返し製造する際に、
ブランケットを溶剤吸収体に押圧させることによりブランケット中に存在する溶剤を除去する工程を有することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により有機発光層を製造した有機電界発光素子。
【請求項3】
請求項2に記載の有機電界発光素子の有機発光層が赤、緑、青の各画素に対応する発光色を持つことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の方法により有機発光層を製造する有機電界発光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の有機電界発光素子の有機発光層が赤、緑、青の各画素に対応する発光色を持つ有機発光層であり、各色毎に印刷を行うことにより製造されたものであることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−90698(P2007−90698A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283981(P2005−283981)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】