説明

印刷環境情報管理システム、情報収集装置、及びプログラム

【課題】再生トナーカートリッジや再生紙の使用に伴う環境情報を数値化してユーザに提示することにより環境保護を図る。
【解決手段】プリンタ10は、搭載されたトナーカートリッジ21のメモリからカートリッジのリサイクル状態に関する情報を読み出して情報収集装置30に送信する。また、プリンタ10は、用紙のリサイクル状態と印刷枚数の情報を含む印刷関連情報を情報収集装置30に送信する。情報収集装置30は、新品とリサイクル品のカートリッジについてそれぞれを使用した場合の環境保護に関する数値を記憶する。情報収集装置30は、プリンタ10からリサイクル情報と印刷関連情報を受信し、プリンタ10に搭載されているトナーカートリッジ及び用紙のリサイクル状態を判別し、リサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得し、取得した数値と印刷関連情報に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生品を使用することによる環境問題への貢献度をユーザに提示することができる装置とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷装置のトナーカートリッジはメーカーによる再生センタやサードパーティのリサイクル業者等により回収され、リサイクル品として再生され、市場に供給されている。環境保護の観点からも再生トナーカートリッジが使用される傾向にある。また、印刷用紙も、古紙を含む再生紙が広く使用されている。
【0003】
このような傾向に対応して、リサイクル品のトナーカートリッジの品質を管理するためのシステムも考案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ユーザは、再生トナーカートリッジや再生紙を使用することで、どれだけ環境保護に寄与できたかを知ることはできない。このため、環境貢献の意欲がそがれるおそれがある。
【0005】
また、同じリサイクル品であっても、メーカーの再生センタによる純正リサイクル品とサードパーティのリサイクル業者によるリサイクル品とでは、その再生工程で生じるCO2等の温室効果ガス排出量や品質が異なる。このため、各々の使用に伴う温室効果ガス排出量は結果的に異なってしまい、ケースによっては、再生品を使用する方が環境負荷が大きくなる場合さえある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、再生品を使用することにより、環境負荷の低減に寄与した程度を報知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る印刷環境情報管理システムは、
印刷装置と、情報収集装置と、を備える印刷環境情報管理システムであって、
前記印刷装置は、
当該印刷装置に搭載されたトナーカートリッジに搭載されたメモリから当該トナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を読み出す手段と、
前記読み出したリサイクル情報を前記情報収集装置に送信する手段と、
少なくとも印刷枚数の情報を含む印刷関連情報を前記情報収集装置に送信する手段と、を備え、
前記情報収集装置は、
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段と、
前記印刷装置から前記リサイクル情報を受信して記憶する手段と、
前記印刷装置から前記印刷関連情報を受信して記憶する手段と、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段と、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段と、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
前記リサイクル情報は、再生回数と再生者の少なくとも一方の情報を含んでもよく、
前記カートリッジ環境情報は、新品のトナーカートリッジについての環境保護に関する数値と、リサイクル品のトナーカートリッジについての再生者毎の環境保護に関する数値と、を示してもよく、
前記情報収集装置の前記判別手段は、前記リサイクル情報における再生回数と再生者の少なくとも一方の情報に基づいて、カートリッジが、新品と、所定の再生者によるリサイクル品と、前記所定の再生者以外の再生者によるリサイクル品のいずれであるかを判別してもよい。
【0009】
前記印刷関連情報は、印刷に使用された用紙の種別情報をさらに含んでもよく、
前記情報収集装置の前記記憶手段は、環境保護に関する数値を印刷用紙種別毎に示す用紙環境情報をさらに記憶してもよく、
前記情報収集装置の前記取得手段は、前記用紙環境情報を参照して、前記受信した印刷関連情報が示す用紙種別に対応する環境保護に関する数値を取得する手段をさらに備えてもよい。
【0010】
また、本発明の第2の観点に係る情報収集装置は、
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段と、
印刷装置に搭載されたトナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を当該印刷装置から受信して記憶する手段と、
前記印刷装置から印刷関連情報を受信して記憶する手段と、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段と、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段と、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段、
印刷装置に搭載されたトナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を当該印刷装置から受信して記憶する手段、
前記印刷装置から印刷関連情報を受信して記憶する手段、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生トナーカートリッジの使用に伴う環境情報を数値化してユーザに提示することにより、ユーザの再生トナーカートリッジの使用に関する環境意識を高め、環境保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷環境情報管理システムの構成を示す図である。
【図2】(a)は、図1に示すプリンタに使用されるトナーカートリッジの構成を示す図、(b)は、トナーカートリッジに装着されているICチップに格納されるカートリッジ情報の構成を示す図である。
【図3】一冊分の用紙の構成例を示す図である。
【図4】図1に示すプリンタの構成を示す図である。
【図5】プリンタ内に蓄積される印刷ログの構成を示す図である。
【図6】図1に示す情報収集装置の構成を示す図である。
【図7】図1に示す環境情報サーバの構成を示す図である。
【図8】図1に示す環境情報サーバ内の記憶部に格納されるカートリッジ環境指数情報の構成を示す図である。
【図9】図1に示す環境情報サーバ内の記憶部に格納される用紙環境指数情報の構成を示す図である。
【図10】用紙セット時にプリンタが実行する用紙ID読み取り処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】プリンタが実行する印刷処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】情報収集装置が実行する環境保護指数取得処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る印刷環境情報管理システムについて図面を参照して説明する。
本実施形態に係る印刷環境情報管理システム100は、図1に示すように、プリンタ10と、情報収集装置30と、端末装置40と、環境情報サーバ50と、を備える。複数台のプリンタ10と1台の情報収集装置30と複数台の端末装置40が各事業体に設置され、LAN等のネットワークにより接続されている。また、情報収集装置30は、インターネット等のネットワークにより環境情報サーバ50と接続される。
【0015】
プリンタ10には、消耗品として、トナーカートリッジ21と用紙23とがセットされる。
【0016】
トナーカートリッジ21には、図2(a)に示すように、ICチップ22が設置されている。ICチップ22は、CPU、メモリ、入出力インタフェース等を備え、カートリッジ情報が格納されている。図2(b)に示すように、カートリッジ情報は、カートリッジID(識別情報)とリサイクル情報を含む。さらに、リサイクル情報は、再生回数、再生者情報、累積印刷枚数、等の情報を含む。新品のトナーカートリッジ21は生産工場においてICチップ22のメモリに、カートリッジID、再生回数「0」、再生者情報「空白」、累積印刷枚数「0」、等の情報が格納される。そして、使用済みとなったトナーカートリッジ21は回収され、メーカーの再生センタ又はサードパーティの再生業者により、感光体交換、トナー充填、カートリッジ環境指数情報の書き換え等の処理が施され、リサイクル品として再生される。この際、ICチップ22に格納されているカートリッジIDはそのまま維持され、再生回数が+1され、再生者として、その再生業者の名前又は再生者コードが登録される。また、累積印刷枚数は、印刷が実行される度に+1される。
【0017】
用紙23は、例えば、一冊(例えば、500枚)単位で、プリンタ10にセットされる。一冊の用紙23の側面には、図3に示すように、用紙IDを含むバーコード24が印刷されている。
【0018】
プリンタ10は、図4に示すように、制御部11と、記憶部12と、入力操作部13と、カートリッジR/W部14と、印刷部15と、用紙トレー16、イメージセンサ17、通信部18と、を備える。
【0019】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、プリンタ10全体を制御する。制御部11は、記憶部12に予め記憶された動作プログラムを読み込むことにより、端末装置40からの印刷要求を受信して印刷を行う処理、トナーカートリッジ21に搭載されたICチップ22からデータを読み込む処理及びICチップ22にデータを書き込む処理、印刷に関する情報を情報収集装置30に送信する処理等を行う。
【0020】
具体的には、制御部11は、端末装置40からの印刷要求を受信し、印刷部15を制御して、トナーカートリッジ21に充填されたトナーを用いて用紙トレー16から取り出した用紙23に印刷を行う。さらに、制御部11は、実行した印刷処理のログ(印刷ログ)を生成し、記憶部12に図5に示すように格納する。この際、制御部11は、カートリッジR/W部14を介して、トナーカートリッジ21に装着されているICチップ22に記憶されているカートリッジIDとリサイクル情報を読み取り、これを印刷ログに含める。また、制御部11は、トナーカートリッジ21のICチップ22に記憶される累積印刷枚数の値を更新する。また、制御部11は、用紙23からイメージセンサ17を介して予め読み取って、記憶部12に格納しておいた用紙IDを印刷ログに含める。この結果、記憶部12には、図5に示すような印刷ログが格納される。
【0021】
なお、制御部11は、トナーカートリッジ21から読み取った再生回数等の情報を入力操作部13の表示パネルに表示してもよい。
【0022】
また、制御部11は、情報収集装置30からの要求に応答して、記憶部12に格納したログ情報等をそのプリンタ10のプリンタID、機種名等の情報とともに情報収集装置30に送信する。
【0023】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等から構成され、制御部11が実行する動作プログラム及び処理に必要な各種データを記憶する。
【0024】
入力操作部13は、例えば、タッチパネル式の入力部を備える。入力操作部13は、制御部11からの指示に従って、各種データを表示パネルに表示し、また、入力部から入力されたデータを制御部11に供給する。
【0025】
カートリッジR/W部14は、制御部11からの指示に従って、プリンタ10にセットされたトナーカートリッジ21に搭載されているICチップ22に対して、上述の環境指数情報の読み取り/書き込みを行う。
【0026】
印刷部15は、制御部11からの指示に従って、用紙トレー16から搬送される用紙上に画像を印刷する。
【0027】
用紙トレー16は、用紙23を収容する。用紙トレー16は、用紙23を一冊単位で収容する容量を有する。
【0028】
イメージセンサ17は、CCD撮像素子、CMOS撮像素子、レーザー読み取り装置などから構成され、制御部11の制御に従って、用紙トレー16にセットされた用紙23の側面に印刷されたバーコード24を撮像して、制御部11に供給する。
【0029】
通信部18は、LAN等のネットワークを介して情報収集装置30と通信を行う。
【0030】
図1に示す情報収集装置30は、図6に示すように、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、を備えるコンピュータから構成される。
【0031】
記憶部32は、ハードディスク装置等から構成され制御部31が実行するための動作プログラム及び処理に必要な各種データ等を記憶する。
【0032】
通信部33は、NIC(Network Interface Card)やルータ、モデム等の通信装置から構成され、外部装置と通信を行う。
【0033】
制御部31は、CPU、ROM、RAM等から構成され、記憶部32に予め記憶された動作プログラム等を読み出して実行することにより、印刷関連情報収集部311、環境指数受信部312、環境保護指数取得部313、を論理的に実現する。
【0034】
印刷関連情報収集部311は、事業体に設置されている各プリンタ10から、印刷ログ情報、残トナー情報、プリンタID等の情報を受信して記憶部32に記憶する。
【0035】
環境指数受信部312は、各プリンタ10から収集した印刷ログに基づいて、印刷に使用したトナーカートリッジ21について、カートリッジ環境指数情報を、環境情報サーバ50から受信して記憶部32に記憶する。カートリッジ環境指数情報は、図8に例示するように、そのトナーカートリッジ21を使用して単位枚数の印刷を行った際に発生する環境負荷(CO2等の温室効果ガスの排出量)の量を示す指標である。この環境負荷は、トナーカートリッジ21の製造、回収、再生、流通等、トナーカートリッジ21のライフサイクル全般を考慮した値である。
【0036】
さらに、環境指数受信部312は、各プリンタ10から収集した印刷ログ情報に基づいて、環境情報サーバ50から、印刷に使用した用紙23について、用紙環境指数情報を受信して記憶部32に記憶する。用紙環境指数情報は、図9に例示するように、その用紙23を使用して単位枚数の印刷を行った際に発生する環境負荷の量(温室効果ガスの排出量)を示す指標である。この環境負荷は、用紙23の製造、再生、流通等、用紙23のライフサイクル全般を考慮した値である。
【0037】
図6に示す環境保護指数取得部313は、各プリンタ10と環境情報サーバ50から収集した各種情報に基づいて、その事業体で実行された印刷処理について、どれだけ温室効果ガスを削減ができたかを示す指数(環境保護指数)を予め設定された計算式等に基づいて求める。
【0038】
具体的には、環境保護指数取得部313は、印刷ログと、環境情報サーバ50から取得したカートリッジ環境指数と用紙環境指数とに基づいて、印刷により発生した環境負荷(温室効果ガスの排出量)を求める。
【0039】
次に、環境保護指数取得部313は、同一枚数を所定の基準条件で印刷した場合に発生すると予想される参考環境負荷(温室効果ガスの排出量)を求める。
【0040】
続いて、環境保護指数取得部313は、実際の環境負荷と参考環境負荷との差異を求め、どれだけ環境負荷(温室効果ガスの排出量)を削減ができたかを示す環境保護指数(例えば、何%削減できたか等)を算出する。
【0041】
環境保護指数取得部313は、環境保護指数を、例えば、事業所単位、プリンタ10毎、機種毎、印刷者毎、日次、週次、月次、年次で求める。
また、環境保護指数取得部313は、算出した環境保護指数等の情報を端末装置40からの要求に応じて送信する。
【0042】
図1に示す端末装置40は、一般のパーソナルコンピュータ等から構成され、CPU、ROM、RAM等を含む制御部と、ハードディスク装置等を含む記憶部と、液晶ディスプレイ等を含む表示部と、キーボードやマウス等を含む入力部と、NIC、ルータ、モデム等を含む通信制御部と、を備える。端末装置40の制御部は、記憶部に記憶されるプログラム等を実行することにより、ユーザによる入力操作に応答して、その事業体における環境保護指数等の各種情報を情報収集装置30から受信して表示する処理等を行う。
【0043】
図1に示す環境情報サーバ50は、図7に示すように、制御部51と、ハードディスク装置等から構成され、制御部51が実行するための動作プログラム及び処理に必要な各種データ等が記憶される記憶部52と、NICやルータ、モデム等の通信装置から構成される通信部53と、環境指数データベース(DB)54と、を備える。
【0044】
制御部51は、CPU、ROM、RAM等から構成される記憶部52に予め記憶された動作プログラム等を読み出して実行することにより、情報収集装置30からの要求に応答して、環境指数DB54に格納されている環境指数情報を読み出して、情報収集装置30に提供する。
【0045】
記憶部52は、制御部51の動作プログラムを記憶する。
【0046】
通信部53は、プリンタ10及び情報収集装置30との間でネットワークを介して通信を行う。
【0047】
環境指数DB54は、カートリッジ環境指数情報、用紙環境指数情報を格納する。
【0048】
カートリッジ環境指数情報は、図8に示すように、トナーカートリッジ21のカートリッジIDとリサイクル情報別に、そのトナーカートリッジ21を用いて1枚の印刷を行った場合に、どの程度の環境負荷が発生するかを示す情報である。ここで、トナーカートリッジ21のカートリッジIDは、トナーカートリッジのメーカにより設定された識別符号である。一方、リサイクル情報は、そのトナーカートリッジのリサイクルに関する情報であり、再生回数、再生者、累積印刷枚数等の情報を含む。
【0049】
環境指数は、トナーカートリッジ21の製造、回収、再生、流通等、トナーカートリッジ21のライフサイクル全般を考慮した環境負荷の発生量を示す。
【0050】
用紙環境指数情報は、図9に示すように、用紙別に、その用紙を用いて印刷を行った場合の温室効果ガス排出量等を示す情報である。ここで、環境指数は、用紙22の製造、古紙回収、再生、流通等、用紙23のライフサイクル全般を考慮した環境負荷の発生量を示す。
【0051】
次に、印刷環境情報管理システム100の動作について説明する。
まず、プリンタ10の動作について説明する。
プリンタ10にセットされている用紙23(シート)が無くなると、ユーザは、用紙トレー16に用紙を一冊単位でセットし、続いて、入力操作部13の「用紙セット」ボタンを操作する。
【0052】
「用紙セット」ボタンのこの操作に応答して、制御部11は、図10のフローチャートに示す用紙ID読み取り処理を開始し、まず、イメージセンサ17に電力の供給を開始すると共にこれを起動し(ステップS11)、用紙トレー16にセットされた用紙23の側面に印刷されたバーコード24を読み取る(ステップS12)。制御部11は、読み取った、バーコード24をデコードして用紙IDを再生し(ステップS13)、再生した用紙IDを記憶部12に格納し(ステップS14)、イメージセンサ17への電力の供給を停止し(ステップS15)、処理を終了する。
【0053】
「用紙セット」ボタンを明示的に操作するのでなく、用紙トレー16を閉めることを契機に用紙ID読み取り処理を走らせてもよい。この場合には、用紙トレー16の開閉を検出するセンサ、例えば、マイクロスイッチ、フォトセンサ等を配置し、このセンサの出力信号を制御部11に供給し、制御部11は、センサの出力信号に基づいて、用紙トレー16が閉められたことを検出すると、前述の用紙交換処理を開示する。
【0054】
次に、各プリンタ10の印刷処理について図11を参照して説明する。
プリンタ10の制御部11は、端末装置40からの印刷要求に応答して、図11の処理を開始し、印刷部15を制御して、用紙23に必要な印刷を行う(ステップS21)。
【0055】
続いて、制御部11は、カートリッジR/W部14を介してトナーカートリッジ21のICチップ22に記憶されているカートリッジID、記憶情報(再生回数、再生者、累積印刷枚数等)を読み出す(ステップS22)。
制御部11は、さらに、記憶部12に記憶されている用紙IDを読み出す(ステップS23)。
【0056】
制御部11は、印刷日時、印刷枚数、カートリッジID、用紙IDなどを含む印刷ログを生成し、図5に示すように、記憶部12に記憶させる(ステップS24)。さらに、制御部11は、カートリッジR/W部14を介して、ICチップ22に格納されている累積印刷枚数を+1する(ステップS25)。
【0057】
こうして、各プリンタ10の記憶部12には、印刷ログが順次蓄積される。
【0058】
次に、情報収集装置30が、自己の属す事業体について、プリンタ10の稼働に伴う環境保護指数を求める環境保護指数取得処理について図12のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
情報収集装置30の制御部31は、所定のタイミング、例えば、一定周期で、各プリンタ10にアクセスし、印刷ログの送信を要求する。プリンタ10の制御部11は、要求に応答して、記憶部12に格納されている印刷ログを読み出し、通信部18を介して情報収集装置30に送信する。情報収集装置30の制御部31は、通信部33を介して印刷ログを各プリンタ10から受信し、記憶部32に格納する。
【0060】
印刷ログの収集を完了すると、制御部31は、図12に示す処理を開始し、記憶部32に記憶された印刷ログのうちから、処理対象として、ログを一つ取り出し、その印刷関連情報から、「カートリッジ情報」と「用紙ID」を抽出し(ステップS31)、環境情報サーバ50に送信する(ステップS32)。
【0061】
環境情報サーバ50の制御部51は、これらの情報を通信部53を介して受信する。制御部51は、環境指数DB54から、通知されたトナーカートリッジ21に関する環境指数情報と、通知された用紙IDで特定される用紙の環境指数環境指数情報とを読み出して、通信部53を介して情報収集装置30に送信する。
【0062】
例えば、あるプリンタ10から収集した印刷ログ情報が、図5に示すようなものであり、この第1行の印刷関連情報を現在の処理対象とすると、制御部31は、トナーカートリッジ情報として、「A社−CR1234 純正再生品 再生回数1回」、「A社−CR2234 純正再生品 再生回数2回」、「A社−CR3234 純正再生品 再生回数1回」、「A社−BB4234 純正再生品 再生回数2回」を送信する。また、用紙情報として、「Q社−ABC667799」を送信する。
【0063】
環境情報サーバ50の制御部51は、環境情報DB54から、対応する情報、即ち、トナーカートリッジ「A社−CR1234 純正再生品 再生回数1回」を使用したときに、印刷1枚あたりに発生する温室効果ガスの量(0.4g)、「A社−CR2234 純正再生品 再生回数1回」を使用したときに、印刷1枚あたりに発生する温室効果ガスの量、「A社−CR3234 純正再生品 再生回数1回」を使用したときに、印刷1枚あたりに発生する温室効果ガスの量、「A社−BB4234 純正再生品 再生回数1回」を使用したときに、印刷1枚あたりに発生する温室効果ガスの量をそれぞれ示す環境指数情報と、用紙「ABC667799」を使用したときに、印刷1枚あたりに発生する温室効果ガスの量(0.02g)を示す環境指数情報と、環境指数DB54から読み出して送信する。
【0064】
情報収集装置30の制御部31は、通信部33を介して、環境情報サーバ50から送信された環境指数を受信し、記憶部32に格納する(ステップS33)。
【0065】
次に、制御部31は、ステップS32で取得した各環境指数情報が示す温室効果ガスの排出量を加算して、印刷1枚での温室効果ガス排出量を算出する(ステップS34)。例えば、図5に示す印刷ログ情報の第1行の例で、トナーカートリッジ「A社−CR1234 純正再生品 再生回数1回」、「A社−CR2234 純正再生品 再生回数2回」、「A社−CR3234 純正再生品 再生回数1回」、「A社−BB4234 純正再生品 再生回数2回」のカートリッジ環境指数(温室効果ガス排出量)が0.4gで、用紙「ABC667799」の用紙環境指数(温室効果ガス排出量)が0.02gとすれば、印刷1枚あたりの温室効果ガス排出量は、0.4×6+0.02=2.42となる。
【0066】
次に、印刷ログの処理対象行の印刷枚数をステップS33で計算した排出量に乗算して、1回の印刷に伴う温室効果ガス排出量を求める(ステップS35)。例えば、図5に示す印刷ログ情報の第1行の例では、11枚印刷しているので、1.62g×11=17.82gとなる。
【0067】
続いて、制御部31は、上記ステップS31〜S35を全ての印刷について行ったかを判別する(ステップS36)。制御部31は、全印刷について上記処理を行ったと判別した場合(ステップS36:YES)、ステップS35で算出した印刷処理毎の各温室効果ガス排出量を合算して、その事業体における印刷に伴う温室効果ガス排出量を算出する(ステップS37)。なお、ステップS36で、未処理の印刷ログが残っていると判別した場合(ステップS36;NO)、処理はステップS31に戻る。
【0068】
次に、制御部31は、印刷ログに記録されている全印刷枚数について、一定の基準条件(例えば、サードパーティによるリサイクル品のトナーカートリッジや新品の用紙を使用した条件)で印刷を行ったときの温室効果ガス排出量を算出する(ステップS38)。
【0069】
制御部31は、ステップS37で算出した値を「実際の温室効果ガス排出量」、ステップS38で算出した値を「サードパーティによる再生トナーカートリッジや用紙を使用した場合の温室効果ガス排出量」とし、これらを環境保護指数として表示する表示画面を生成して要求元の端末装置40に送信して本処理を終了する(ステップS39)。ここで、環境保護指数の表示形態は任意であり、数値やグラフ表示してもよく、また、サードパーティによる再生トナーカートリッジを使用した場合と比較してどれだけ温室効果ガス排出量が削減されたかを、絶対値やパーセント表示等してもよい。また、カートリッジ環境指数情報に基づいて、純正リサイクル品のトナーカートリッジでの印刷1枚当たり温室効果ガス排出量とサードパーティによるリサイクル品のトナーカートリッジでの印刷1枚当たり温室効果ガス排出量を併せて表示してもよい。
【0070】
以上説明したように本発明によれば、使用カートリッジのリサイクル種別及び用紙種別等に基づいて印刷に伴う温室効果ガス排出量等の環境情報を数値化して提示することにより、ユーザの印刷に関する環境意識を高め、環境保護を図ることができる。また、例えば、実際の温室効果ガス排出量とサードパーティによるリサイクル品のトナーカートリッジを使用した場合の温室効果ガス排出量と比較して、どれだけ温室効果ガス排出量が削減されたかを示すこともできる。
【0071】
なお、本発明は種々の変形及び応用が可能である。
例えば、プリンタ10の制御部11は、印刷関連情報を蓄積して、所定のタイミングでまとめて送信するようにしているがこれに限定されず、印刷関連情報を取得する毎に情報収集装置30に送信するようにしてもよい。
【0072】
なお、環境保護指数取得処理の実行タイミングは端末装置40からの要求受信時に限定されず、例えば、所定時間毎に実行して実行結果を記憶しておき、端末装置40から要求があったときに、最新の実行結果の表示画面を生成して送信してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、環境保護指数取得処理のステップS38で全印刷枚数についてサードパーティによる再生トナーカートリッジを使用した場合の温室効果ガス排出量を算出するとき、用紙種別を新品用紙として計算しているがこれに限定されず、用紙種別を再生紙としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、プリンタ10が印刷関連情報取得処理で取得された印刷関連情報を所定期間毎にまとめて送信するようにしているがこれに限定されず、印刷関連情報を取得する度に送信するようにしてもよい。
【0075】
また、情報収集装置30の環境保護指数取得部313の機能をプリンタ10も備えるようにしてもよい。この場合、プリンタ10の制御部11は、環境保護指数を算出するために必要な各種情報(カートリッジ環境指数情報、用紙環境指数情報等)を情報収集装置30から受信し、そのプリンタ10で行った印刷について環境保護指数を算出し、表示パネル等に表示してもよい。
【0076】
上記実施の形態において、事業所単位で、環境負荷の低減に貢献した程度を求めたが、例えば、印刷者IDをキーに、印刷者別に環境貢献度を求めるようにしてもよい。
【0077】
また、情報収集装置30は、印刷による環境負荷を求める段階で、環境指数情報を環境情報サーバ50から取得したが、事前に環境指数情報を環境情報サーバ50からダウンロードしておき、ダウンロード済の情報を用いて、環境貢献度を計算するようにしてもよい。
【0078】
上記実施の形態においては、カートリッジ情報と用紙IDとをプリンタ10の制御部11が自動的に読み取る手法を採用したが、例えば、ユーザが入力操作部13を操作して入力するように構成してもよい。
【0079】
上記実施の形態においては、リサイクルトナー、リサイクル用紙を使用することによる環境貢献度を求めて表示する例を説明したが、リサイクル品或いはリユース品を使用するシステムや装置の環境貢献度を求める場合に広く適用可能である。
【0080】
また、環境情報サーバ50の環境指数DB54は、純正メーカー以外の再生業者が公開された指標に基づき、製造、回収、再生、流通等、トナーカートリッジ21のライフサイクル全般に基づく指数を登録することで、実効性の高い運用もできる。
【0081】
上述の実施形態では、用紙23の側面にバーコード24を印刷したが、読み取り可能で、用紙の種類を特定できるならば、コードの種類は任意であり、二次元バーコード、文字コードなどでもよい。環境負荷の例として、CO2等の温室効果ガスの排出量を例示したが、他の指標でもよい。
【0082】
なお、この発明のシステムは、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、情報収集装置30、環境情報サーバ50等を構成してもよい。
【0083】
また、インターネット上のサーバに情報収集装置30、環境情報サーバ50等のサービスを行わせてもよい。このことにより、小規模の事業体や個人、グループの参加が容易になり、温室効果ガス削減の意識向上と実効性を高めることができる。
【0084】
また、この発明のシステムで、事業体ネットワークに接続されたPC、サーバ、ルータやコピー(複合)機などSNMP(Simple Network Management Protocol)に対応した機器の管理情報から電力消費量を集計し、さらなる温室効果ガス削減指数を得られるようにしてもよい。
【0085】
また、この発明のシステムにおいて、レーザプリンタだけでなく、コピー(複合)機やインクジェットプリンタでも、同様の方式で消耗品のリサイクル度合いを計測し、温室効果ガス削減指数を得られるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 プリンタ
11 制御部
12 記憶部
13 入力操作部
14 カートリッジR/W部
15 印刷部
16 用紙トレー
17 イメージセンサ
18 通信部
21 トナーカートリッジ
22 ICチップ
23 用紙
24 バーコード
30 情報収集装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
40 端末装置
50 環境情報サーバ
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 環境指数DB
311 印刷関連情報収集部
312 環境指数受信部
313 環境保護指数取得部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2003−91218号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置と、情報収集装置と、を備える印刷環境情報管理システムであって、
前記印刷装置は、
当該印刷装置に搭載されたトナーカートリッジに搭載されたメモリから当該トナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を読み出す手段と、
前記読み出したリサイクル情報を前記情報収集装置に送信する手段と、
少なくとも印刷枚数の情報を含む印刷関連情報を前記情報収集装置に送信する手段と、を備え、
前記情報収集装置は、
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段と、
前記印刷装置から前記リサイクル情報を受信して記憶する手段と、
前記印刷装置から前記印刷関連情報を受信して記憶する手段と、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段と、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段と、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段と、を備える、
ことを特徴とする印刷環境情報管理システム。
【請求項2】
前記リサイクル情報は、再生回数と再生者の少なくとも一方の情報を含み、
前記カートリッジ環境情報は、新品のトナーカートリッジについての環境保護に関する数値と、リサイクル品のトナーカートリッジについての再生者毎の環境保護に関する数値と、を示し、
前記情報収集装置の前記判別手段は、前記リサイクル情報における再生回数と再生者の少なくとも一方の情報に基づいて、カートリッジが、新品と、所定の再生者によるリサイクル品と、前記所定の再生者以外の再生者によるリサイクル品のいずれであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷環境情報管理システム。
【請求項3】
前記印刷関連情報は、印刷に使用された用紙の種別情報をさらに含み、
前記情報収集装置の前記記憶手段は、環境保護に関する数値を印刷用紙種別毎に示す用紙環境情報をさらに記憶し、
前記情報収集装置の前記取得手段は、前記用紙環境情報を参照して、前記受信した印刷関連情報が示す用紙種別に対応する環境保護に関する数値を取得する手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷環境情報管理システム。
【請求項4】
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段と、
印刷装置に搭載されたトナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を当該印刷装置から受信して記憶する手段と、
前記印刷装置から印刷関連情報を受信して記憶する手段と、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段と、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段と、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段と、
を備えることを特徴とする情報収集装置。
【請求項5】
コンピュータを、
新品とリサイクル品のトナーカートリッジについて、それぞれを使用して印刷した場合の環境保護に関する数値を示すカートリッジ環境情報を記憶する記憶手段、
印刷装置に搭載されたトナーカートリッジのリサイクル状態に関するリサイクル情報を当該印刷装置から受信して記憶する手段、
前記印刷装置から印刷関連情報を受信して記憶する手段、
前記受信したリサイクル情報に基づいて、前記印刷装置に搭載されているトナーカートリッジのリサイクル状態を判別する判別手段、
前記記憶手段に記憶されたカートリッジ環境情報を参照して、前記判別手段による判別されたリサイクル状態に対応する環境保護に関する数値を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された環境保護に関する数値と、前記受信した印刷関連情報と、に基づいて、印刷に伴う環境保護に関する数値を算出する算出手段、
前記算出された印刷に伴う環境保護に関する数値を出力する手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−197516(P2010−197516A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40040(P2009−40040)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】