説明

印刷用コンビネーションマスク版

【課題】パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクのサイズを大きくすることにより、薄物のメタルマスクに掛かる張力を従来よりも大幅に減らし、パターン孔のピッチ寸法の伸びを少なくした印刷用コンビネーションマスク版を得る。
【解決手段】金属材料で構成された版枠1と、版枠の内側に外周を接着固定して張設された網状体からなるスクリーン紗2と、スクリーン紗の印刷面側中央部に接着固定され、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスク3とを備え、薄物のメタルマスクは、縦横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗の外周部を版枠に張った際に、メタルマスクの左右上下の全周に位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、版枠に所定の張力まで張られたスクリーン紗の中央部に薄物のメタルマスクを取り付けた印刷用コンビネーションマスク版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メタルマスクに張力を加えるためには、メタルマスク自身に面方向の弾力性がないため、メタルマスクの周囲を、スクリーン紗に重ねて接着部で接着させ、このスクリーン紗の弾力性で張力を加え、スクリーン紗の全周を枠に接着剤で固定させたコンビネーションマスク版が知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−38231号公報(図6、図7)
【特許文献2】特開2000−15777号公報(図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、印刷用コンビネーションマスク版として、板厚50μ〜30μ以下の薄物(箔物 )のメタルマスクをスクリーン紗に貼り付けたものが要求されるようになってきた。このようなコンビネーションマスク版の構造を図7及び図8に示す。図において、11はアルミニウム材料等で四角形の枠状に構成された版枠、12は版枠11の内側に張設されたスクリーン紗で、例えばステンレス等の網状体からなる金属製スクリーン紗又はテトロン、ポリエステル等の網状体からなる樹脂製スクリーン紗である。13はパターン孔14が設けられた板厚50μ〜30μ以下の薄物(箔物)のメタルマスクであり、スクリーン紗12の中央部に接着固定されている。この薄物のメタルマスク13が貼り付けられたスクリーン紗12を30〜39N/cmの張力で版枠11に張った場合、スクリーン紗12は1cm当り3〜3.9kgの張力を持つことになるので、スクリーン紗12の幅領域が例えば8cm程度と多い場合、その分の張力がメタルマスク13に掛かっていることになり、メタルマスク13が板厚50μ〜30μ以下の薄物であるため、メタルマスク13に伸びが発生し、パターン孔14のピッチ寸法が伸びて印刷不良が発生するという問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクのサイズを大きくすることにより、スクリーン紗の幅領域を0.2〜3.5cmの範囲と少なくすることが可能となり、例えば幅領域が1.0cmの場合には薄物のメタルマスクに掛かる張力を従来の約1/8と大幅に減らし、パターン孔のピッチ寸法の伸びを少なくした印刷用コンビネーションマスク版を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る印刷用コンビネーションマスク版においては、金属材料で構成された版枠と、版枠の内側に外周を接着固定して張設された網状体からなるスクリーン紗と、スクリーン紗の印刷面側中央部に接着固定され、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクとを備え、薄物のメタルマスクは、縦横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗の外周部を版枠に張った際に、メタルマスクの左右上下の全周に位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたものである。
【0007】
また、薄物のメタルマスクは、横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗の外周部を版枠に張った際に、メタルマスクの左右両側のみに位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたものである。
【0008】
また、薄物のメタルマスクは、縦方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗の外周部を版枠に張った際に、メタルマスクの上下両側のみに位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたものである。
【0009】
また、好ましくは、スクリーン紗の幅領域を0.5〜1.9cmの範囲にしたものである。
【0010】
また、薄物のメタルマスクは板厚が50μ〜30μ以下であり、スクリーン紗は1cm当り3〜3.9kgの張力を持って張られているものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクのサイズを大きくすることにより、スクリーン紗の幅領域を0.2〜3.5cmの範囲と少なくすることが可能となり、例えば幅領域が1.0cmの場合には薄物のメタルマスクに掛かる張力を従来の約1/8と大幅に減らし、パターン孔のピッチ寸法の伸びを少なくできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例1における印刷用コンビネーションマスク版をスキージ面側から見た平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】この発明の実施例1における印刷用コンビネーションマスク版のメタルマスクの伸び量の比較結果を示す表である。
【図4】従来の印刷用コンビネーションマスク版のメタルマスクの伸び量の比較結果を示す表である。
【図5】この発明による印刷用コンビネーションマスク版と従来の印刷用コンビネーションマスク版の日数経過後の伸び量の変化を比較して示す特性図である。
【図6】この発明の実施例2における印刷用コンビネーションマスク版をスキージ面側から見た平面図である。
【図7】従来の印刷用コンビネーションマスク版をスキージ面側から見た平面図である。
【図8】図7のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施例1.
図1はこの発明の実施例1における印刷用コンビネーションマスク版をスキージ面側から見た平面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図である。
【0014】
図1及び図2において、1はアルミニウム材料等で四角形の枠状に構成された版枠、2は版枠1の内側に張設されたスクリーン紗である。このスクリーン紗2は、例えばステンレス等の網状体からなる金属製スクリーン紗でも良いし、テトロン、ポリエステル等の網状体からなる樹脂製スクリーン紗でも良く、版枠1に対し30〜39N/cmの張力となるように張られており、1cm当り3〜3.9kgの張力を持っている。3はパターン孔4が設けられた板厚50μ〜30μ以下で、かつ縦横の長さを通常のサイズよりも大きい構成とした薄物(箔物)のメタルマスクであり、スクリーン紗2の中央部に接着固定されている。この薄物のメタルマスク3は、縦横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗2の外周部を版枠1に張った際に、メタルマスク3の左右上下の全周に位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたので、従来に比較して大幅に少なくなっているものである。スクリーン紗2の幅領域が0.2cm未満であると、紗張りが困難であり、幅領域が3.5cmを超えると、メタルマスクに掛かる張力の減りが少ないからである。また、紗張りの容易性並びにメタルマスクに掛かる張力を大幅に減らすことを考慮すれば、好ましくは、メタルマスク3の左右上下の全周に位置するスクリーン紗2の幅領域を0.5〜1.9cmの範囲に設定するのが好適である。
【0015】
次に、この発明による改善後の印刷用コンビネーションマスク版と、従来の改善前の印刷用コンビネーションマスク版を作製し、メタルマスクの伸び量の比較試験を行った。
先ず、この発明による改善後の印刷用コンビネーションマスク版は、版枠1が枠サイズ:736mm×736mm、メタルマスク3がメタルサイズ:620mm×620mm、板厚:25μm、スクリーン紗2がテンション:39N/cm、紗部幅(メタルマスク3の左右にそれぞれ位置するスクリーン紗2の幅領域):1.8cm(片側)×2=3.6cm、張力:3.9kg×3.6=16kgである。そして、メタルマスク3の伸び量は、メタルの中央部の離れた2点間の距離を、初日、1日後、2日後、3日後、6日後について実測することにした。なお、初日の実測値は343.9180mm、1日後の実測値は、343.9180mm、2日後の実測値は343.9230mm、3日後の実測値は343.9270mm、6日後の実測値は343.9280mmである。これから明らかなように、1日後の伸び量は0であった。また、2日後の伸び量は0.0050mm、3日後の伸び量は0.0090mm、6日後の伸び量は0.0100mmであった。この測定結果を図3の表に示す。
一方、従来の改善前の印刷用コンビネーションマスク版は、版枠1が枠サイズ:736mm×736mm、メタルマスクがメタルサイズ:460mm×460mm、板厚:25μm、スクリーン紗がテンション:39N/cm、紗部幅(メタルマスクの左右にそれぞれ位置するスクリーン紗の幅領域):9.8cm(片側)×2=19.6cm、張力:3.9kg×19.6=76.44kgである。そして、メタルマスクの伸び量は、メタルの中央部の離れた2点間の距離を、初日、1日後、2日後、3日後、6日後について実測することにした。なお、初日の実測値は343.9460mm、1日後の実測値は、343.9580mm、2日後の実測値は343.9720mm、3日後の実測値は343.9730mm、6日後の実測値は343.9750mmである。これから明らかなように、1日後の伸び量は0.0120mm、2日後の伸び量は0.0260mm、3日後の伸び量は0.0270mm、6日後の伸び量は0.0290mmであった。この測定結果を図4の表に示す。
なお、図5はこの発明による改善後の印刷用コンビネーションマスク版(実線で示す)と、従来の改善前の印刷用コンビネーションマスク版(点線で示す)の日数経過後の伸び量の変化を比較して示す特性図である。
【0016】
この実施例1の発明によれば、薄物のメタルマスク3の左右上下の全周に位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲(好ましくは、0.5〜1.9cmの範囲)となるようにすると、例えば幅領域が1.0cmの場合には薄物のメタルマスク3に掛かる張力を従来の約1/8と大幅に減らすことができる。これにより、パターン孔4のピッチ寸法の伸びを少なくした印刷用コンビネーションマスク版を得ることができる。
【0017】
実施例2.
上記実施例1では、薄物のメタルマスク3は、縦横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗2の外周部を版枠1に張った際に、メタルマスク3の左右上下の全周に位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲(好ましくは、0.5〜1.9cmの範囲)となるようにしたが、この実施例2においては、図6に示すように、薄物のメタルマスク3は、横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗2の外周部を版枠1に張った際に、メタルマスク3の左右両側のみに位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲(好ましくは、0.5〜1.9cmの範囲)となるようにしている。この場合、薄物のメタルマスク3に設けられるパターン孔4は、縦方向より横方向が長い横長の孔となる。なお、図6に示すものとは反対に、薄物のメタルマスク3は、縦方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、スクリーン紗2の外周部を版枠1に張った際に、メタルマスク3の上下両側のみに位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲(好ましくは、0.5〜1.9cmの範囲)となるようにしても良い。この場合、薄物のメタルマスク3に設けられるパターン孔4は、横方向より縦方向が長い縦長の孔となる。
【0018】
この実施例2の発明によれば、薄物のメタルマスク3の左右両側のみ又は上下両側のみに位置するスクリーン紗2の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲(好ましくは、0.5〜1.9cm)となるようにすると、例えば幅領域が1.0cmの場合には薄物のメタルマスク3に掛かる張力を従来の約1/8と大幅に減らすことができる。これにより、横長のパターン孔又は縦長のパターン孔4のピッチ寸法の伸びを少なくした印刷用コンビネーションマスク版を得ることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 版枠
2 スクリーン紗
3 薄物のメタルマスク
4 パターン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で構成された版枠と、
前記版枠の内側に外周を接着固定して張設された網状体からなるスクリーン紗と、
前記スクリーン紗の印刷面側中央部に接着固定され、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクとを備え、
前記薄物のメタルマスクは、縦横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、前記スクリーン紗の外周部を前記版枠に張った際に、前記メタルマスクの左右上下の全周に位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたことを特徴とする印刷用コンビネーションマスク版。
【請求項2】
金属材料で構成された版枠と、
前記版枠の内側に外周を接着固定して張設された網状体からなるスクリーン紗と、
前記スクリーン紗の印刷面側中央部に接着固定され、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクとを備え、
前記薄物のメタルマスクは、横方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、前記スクリーン紗の外周部を前記版枠に張った際に、前記メタルマスクの左右両側のみに位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたことを特徴とする印刷用コンビネーションマスク版。
【請求項3】
金属材料で構成された版枠と、
前記版枠の内側に外周を接着固定して張設された網状体からなるスクリーン紗と、
前記スクリーン紗の印刷面側中央部に接着固定され、パターン孔が設けられた薄物のメタルマスクとを備え、
前記薄物のメタルマスクは、縦方向の長さを通常のサイズよりも大きくすることにより、前記スクリーン紗の外周部を前記版枠に張った際に、前記メタルマスクの上下両側のみに位置するスクリーン紗の幅領域が0.2〜3.5cmの範囲となるようにしたことを特徴とする印刷用コンビネーションマスク版。
【請求項4】
スクリーン紗の幅領域を0.5〜1.9cmの範囲にしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷用コンビネーションマスク版。
【請求項5】
薄物のメタルマスクは板厚が50μ〜30μ以下であり、スクリーン紗は1cm当り3〜3.9kgの張力を持って張られていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷用コンビネーションマスク版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143649(P2011−143649A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7105(P2010−7105)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(300071823)株式会社ボンマーク (54)
【Fターム(参考)】