説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】中空樹脂を含むインクを用いた印刷において、滑らかな階調表現を実現する。
【解決手段】印刷装置は、中空樹脂粒子を含む第1のインクと、中空樹脂粒子の内部に浸透させるための液体である浸透用液体と、中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有し、浸透用液体を定着させるための樹脂化合物である定着用樹脂化合物と、を含み、かつ、着色剤を含まない第2のインクを記録媒体に向けて噴射する第2のインクと、を記録媒体に向けて噴射する噴射機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空樹脂粒子を色材として含有するインクの階調制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シアン,マゼンタ,イエローといったカラーインクの他に、白色インクを用いて印刷を行う印刷装置が知られている(特許文献1)。また、白色インクとして、中空樹脂粒子を色材として含有するインクが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【特許文献2】米国特許第4880465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中空樹脂粒子を色材として含有する白色インクを用いた印刷において、階調を細かく設定して、滑らかな階調表現を行いたいという要請があった。しかしながら、このようなインクを用いた印刷において、滑らかな階調表現を行うための十分な工夫がなされていないのが実情であった。なお、このような問題は、白色インクに限らず、中空樹脂粒子を色材として含有するインクに共通の問題であった。
【0005】
本発明は、中空樹脂を含むインクを用いた印刷において、滑らかな階調表現を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷装置であって、中空樹脂粒子を含む第1のインクと、前記中空樹脂粒子の内部に浸透させるための液体である浸透用液体と、前記中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有し、前記浸透用液体を定着させるための樹脂化合物である定着用樹脂化合物と、を含み、かつ、着色剤を含まない第2のインクを前記記録媒体に向けて噴射する第2のインクと、を記録媒体に向けて噴射する噴射機構を備える印刷装置。
【0008】
適用例1の印刷装置では、第1のインクと第2のインクとを記録媒体に向けて噴射することにより、噴射後の記録媒体上において、中空樹脂粒子の周りに定着用樹脂化合物を配置することができるので、中空樹脂粒子の周りに浸透用液体を定着させることができる。それゆえ、この浸透用液体を中空樹脂粒子の内部(空洞)に浸透させて第1のインクの透明化を促進し、第1のインクの増加に対する色の濃度(例えば、白さ)の増加率を低く抑えることができる。したがって、第1のインクの色の階調を細かく設定することができ、滑らかな階調表現を実現できる。また、定着用樹脂化合物は、中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有するので、浸透用液体の定着力を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置において、前記噴射機構は、前記第1のインクを噴射した後に、前記第2のインクを噴射する、印刷装置。
【0010】
このような構成により、記録媒体上において、第1のインクを覆うように第2のインクが配置される傾向とすることができるので、定着用樹脂化合物が大気中の水分を定着可能である場合には、定着用樹脂化合物における大気との接触面積を大きくでき、より多くの水分を中空樹脂粒子の周りに定着させることができる。それゆえ、第1のインクの透明化をより促進することができ、第1のインクの増加に対する色の濃度(例えば、白さ)の増加率をより低く抑えることができる。したがって、第1のインクの色の階調をより細かく設定することができ、より滑らかな階調表現を実現できる。また、第1のインクを覆うように第2のインクを配置するので、記録媒体における第1のインクの耐擦性(擦られることによるインクの耐剥離性)を向上させることができる。
【0011】
[適用例3]適用例1に記載の印刷装置において、前記噴射機構は、前記第1のインクを噴射するのと同時に、前記第2のインクを噴射する、印刷装置。
【0012】
このような構成により、記録媒体上において、少なくとも一部の第2インクについては、第1のインクを覆うように配置することができるので、定着用樹脂化合物が大気中の水分を定着可能である場合には、定着用樹脂化合物における大気との接触面積を大きくでき、多くの水分を中空樹脂粒子の周りに定着させることができる。また、記録媒体における第1のインクの耐擦性(擦られることによるインクの耐剥離性)を向上させることができる。
【0013】
[適用例4]適用例1に記載の印刷装置において、前記噴射機構は、前記第2のインクを噴射した後に、前記第1のインクを噴射する、印刷装置。
【0014】
このような構成により、記録媒体上において、第2のインクを第1のインクの周辺に配置させることができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の印刷装置において、前記第2のインクにおける前記定着用樹脂化合物の含有率は、0.5重量%以上であり、かつ、20.0%以下である、印刷装置。
【0016】
このような構成により、印刷装置における噴射機構の目詰まりを抑制できると共に、第1のインクの透明化を促進させることができる。
【0017】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の印刷装置において、前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、0.2μm以上であり、かつ、1.0μm以下である、印刷装置。
【0018】
このような構成により、第1のインク内における中空樹脂粒子の沈降を抑制して分散安定性を向上させることができると共に、噴射機構の目詰まりを抑制できる。また、第1のインクの色の濃度不足を抑制できる。
【0019】
[適用例7]適用例6に記載の印刷装置において、前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)で測定した場合に、0.2μm以上であり、かつ、1.0μm以下である、印刷装置。
【0020】
このような構成により、中空樹脂粒子の平均粒子径を正確に計測することができる。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一項に記載の印刷装置において、前記定着用樹脂化合物は、少なくとも、アクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸系ポリマー,メタクリル酸系ポリマー,ゴム系ポリマー,天然高分子化合物,セルロース変性ポリマー,ポリビニルアルコール(PVA),変性PVA,ポリアクリルアミド,ポリエチレン,ポリアセタール樹脂,グアーガム,ポリエステル,ポリビニルピロリドン,エチレン−ポリビニルアルコール共重合体のうち、いずれか1つを含む、印刷装置。
【0022】
このような構成により、記録媒体上において、浸透用液体や大気中の水分の定着率を向上させることができる。
【0023】
[適用例9]適用例1ないし適用例8のいずれか一項に記載の印刷装置において、前記浸透用液体は、少なくとも、グリコエーテル系化合物,アルキルジオール系化合物,トリエタノールアミン,糖,糖類の誘導体,炭素数1〜4のアルキルアルコール類,グリコエーテル類,2−ピロリドン,N−メチル−2−ピロリドン,1−ジメチル−2−イミダゾリジノン,ホルムアミド,アセトアミド,ジメチルスルホキシド,ソルビット,ソルビタン,アセチン,ジアセチン,トリアセチン,スルホランのうち、いずれか1つを含む、印刷装置。
【0024】
このような構成により、浸透用液体を中空樹脂粒子の空洞内に浸透させることができる。
【0025】
[適用例10]印刷方法であって、中空樹脂粒子を含む第1のインクと、前記中空樹脂粒子の内部に浸透させるための液体である浸透用液体と、前記中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有し、前記浸透用液体を定着させるための樹脂化合物である定着用樹脂化合物と、を含み、かつ、着色剤を含まない第2のインクと、を前記記録媒体に向けて噴射する工程を備える印刷方法。
【0026】
適用例10の印刷方法では、第1のインクと第2のインクとを記録媒体に向けて噴射することにより、噴射後の記録媒体上において、中空樹脂粒子の周りに定着用樹脂化合物を配置することができるので、中空樹脂粒子の周りに浸透用液体を定着させることができる。それゆえ、この浸透用液体を中空樹脂粒子の内部(空洞)に浸透させて第1のインクの透明化を促進し、第1のインクの増加に対する色の濃度(例えば、白さ)の増加率を低く抑えることができる。したがって、第1のインクの色の階調を細かく設定することができ、滑らかな階調表現を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態としての印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ヘッド31のノズル形成面を模式的に表わす説明図である。
【図3】白色インクのduty値と明度との関係を模式的に示すグラフである。
【図4】第1の実施例における白色度の評価結果を示す説明図である。
【図5】第2の実施例における白色度の評価結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態及び実施例を以下の順序で説明する。
A.実施形態:
A1.白色インク:
A2.クリアインク:
A3.保湿液:
A4.印刷装置:
B.実施例:
B1.第1の実施例:
B2.第2の実施例:
C.変形例:
【0029】
A.実施形態:
A1.白色インク:
A1−1.中空樹脂粒子:
本実施形態で用いられる中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂により形成されていることが好ましい。このような構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより白色インクの貯蔵安定性や噴射安定性を高めることができる。
【0030】
以下の説明では、中空樹脂粒子を白色色材として用いるものとして説明するが、本発明における中空樹脂粒子は、白色を除く他の色の色材として用いることもできる。例えば、中空樹脂粒子を構成する樹脂を、白色を除く他の色に着色することにより、中空樹脂粒子を着色された色の色材として用いることもできる。
【0031】
本実施形態の白色インクを、記録用紙やその他の記録媒体上に噴射させると、粒子内部の水性媒質が乾燥により抜けて、中空樹脂粒子の内部は空洞となる。この粒子の内部空洞に空気が入り込むことにより、粒子において屈折率の異なる樹脂層及び空気層が形成されるため、粒子への入射光が散乱されて、水性インク組成物は白色を呈することとなる。
【0032】
このような中空樹脂粒子として、公知の中空樹脂粒子を採用することができる。例えば、米国特許第4880465号や特許第3562754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を採用することができる。
【0033】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2μm以上、かつ、1.0μm以下であり、より好ましくは、0.4μm以上、かつ、0.8μm以下である。経験則として、外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、また、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度が不足する傾向にある。なお、内径は、0.1μm以上、かつ、0.8μm以下が適当である。
【0034】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)や、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定することができる。電界放射型透過電子顕微鏡としては、例えば、FEI社製の「TecnaiG2F30」を用いることができる。また、電界放射型走査電子顕微鏡としては、例えば、日立製作所製の「S−4700」を用いることができる。
【0035】
中空樹脂粒子の含有量は、白色インクの全質量に対して、好ましくは、5重量%以上、かつ、20重量%以下であり、より好ましくは、8重量%以上、かつ、15重量%以下である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20重量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5重量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0036】
中空樹脂粒子の調製方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、及び水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら攪拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0037】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アクリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンージオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0039】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0041】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0042】
A1−2.浸透性有機溶剤:
本実施形態で用いられる白色インクは、アルカンジオール及びグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0043】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0044】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0045】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白色インクの全質量に対して、好ましくは1重量%以上、かつ、20重量%以下であり、より好ましくは、1重量%以上、かつ、10重量%以下である。
【0046】
A1−3.界面活性剤:
本実施形態で用いられる白色インクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0047】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0048】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る白色インクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0050】
界面活性剤の含有量は、白色インクの全重量に対して、好ましくは0.01重量%以上、かつ、5重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上、かつ、0.5重量%以下である。
【0051】
A1−4.多価アルコール:
本実施形態で用いられる白色インクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0052】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0053】
多価アルコールの含有量は、白色インクの全重量に対して、好ましくは0.1〜3.0重量%であり、より好ましくは0.5〜20重量%である。
【0054】
A1−5.第三級アミン:
本実施形態で用いられる白色インクは、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調製剤としての機能を有し、白色インクのpHを容易に調製することができる。第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。第三級アミンの含有量は、白色インクの全重量に対して、好ましくは0.01重量%以上、かつ、10重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上、かつ、2重量%以下である。
【0055】
A1−6.その他の成分:
本実施形態で用いられる白色インクは、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0056】
本実施形態で用いられる白色インクは、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0057】
本実施形態で用いられる白色インクは、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0058】
A2.クリアインク:
本実施形態で用いられるクリアインクは、上記白色インクに含まれる中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有する樹脂化合物を含有し、かつ、着色剤を含まないものである。したがって、本実施形態のクリアインクは、無色透明または無色半透明の液体である。
【0059】
A2−1.定着用樹脂化合物:
本実施形態で用いられるクリアインクは、上記中空樹脂粒子の空洞に浸透し得る液体を印刷後の記録媒体上において定着させるための樹脂化合物(以下、「定着用樹脂化合物」と呼ぶ)を含有する。
【0060】
このような定着用樹脂化合物としては、例えば、アクリル酸(又はメタクリル酸)、アクリル酸(又はメタクリル酸)の誘導体の重合体若しくは共重合体であるアクリル酸系ポリマー(又はメタクリル酸系ポリマー)、ゴム系ポリマー、天然高分子化合物、セルロース変性ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリアセタール樹脂、グアーガム、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0061】
アクリル酸(又はメタクリル酸)の誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸、又はメタアクリル酸メチル等が挙げられる。
【0062】
ゴム系ポリマーとしては、例えば、ウレタン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、若しくはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0063】
天然高分子化合物としては、例えば、でんぷん、変性でんぷん、ゼラチン、カゼイン、若しくは大豆蛋白等が挙げられる。
【0064】
セルロース変性ポリマーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。
【0065】
定着用樹脂化合物の具体例としては、アロンA−104(東亜合成株式会社社製)、NW−7060(東亜合成(株)社製)、ネオタンUE−1100(東亜合成株式会社社製)、タケラックW−6010(三井化学ポリウレタン株式会社社製)、UC−3900(東亜合成株式会社社製)等を挙げることができる。なお、上記定着用樹脂化合物の含有量は、クリアインクの全質量に対して、好ましくは、0.5重量%以上、かつ20.0重量%以下である。
【0066】
A2−2.浸透性有機溶剤:
本実施形態で用いられるクリアインクは、アルカンジオール及びグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0067】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0068】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0069】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、クリアインクの全質量に対して、好ましくは1重量%以上、かつ、20重量%以下であり、より好ましくは、1重量%以上、かつ、10重量%以下である。
【0070】
A2−3.界面活性剤:
本実施形態で用いられるクリアインクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0071】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0072】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0073】
さらに、本実施形態に係るクリアインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0074】
界面活性剤の含有量は、クリアインクの全重量に対して、好ましくは0.01重量%以上、かつ、5重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上、かつ、0.5重量%以下である。
【0075】
A2−4.多価アルコール:
本実施形態で用いられるクリアインクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0076】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0077】
多価アルコールの含有量は、クリアインクの全重量に対して、好ましくは0.1〜3.0重量%であり、より好ましくは0.5〜20重量%である。
【0078】
A2−5.第三級アミン:
本実施形態で用いられるクリアインクは、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調製剤としての機能を有し、クリアインクのpHを容易に調製することができる。第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。第三級アミンの含有量は、クリアインクの全重量に対して、好ましくは0.01重量%以上、かつ、10重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上、かつ、2重量%以下である。
【0079】
A2−6.その他の成分:
本実施形態で用いられるクリアインクは、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0080】
本実施形態で用いられるクリアインクは、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0081】
A3.保湿液:
本実施形態で用いられる保湿液は、上記中空樹脂粒子の空洞に浸透し得る液体組成物を、印刷後の記録媒体上において中空樹脂粒子の周りに引き寄せて保持するための保湿剤を含有し、かつ、着色剤及び乾燥により増粘する増粘剤を含まない液体である。したがって、本実施形態の保湿液は、無色透明または無色半透明の液体である。
【0082】
A3−1.保湿剤:
本実施形態で用いられる保湿剤としては、多価アルコール系化合物や、糖類や、糖アルコール類や、ヒアルロン酸類や、固体湿潤剤を用いることが好ましい。
【0083】
多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0084】
糖類としては、例えば、グルコース,マンノース,フルクトース,リボース,キシロース,アラビノース,ガラクトース,アルドン酸,グルシトール,ソルビット,マルトース,セロビオース,ラクトース,スクロース,トレハロース,マルトトリオース等が挙げられる。
【0085】
固定湿潤剤としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、尿素、尿素誘導体(ジメチル尿素等)等が挙げられる。
【0086】
なお、上記保湿剤のうち、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの一部の多価アルコール系化合物については、水溶性溶剤としても用いられる。
【0087】
A3−2.界面活性剤:
本実施形態で用いられる保湿液は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めて保湿液の浸透性を高めることができる。
【0088】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0089】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0090】
A3−3.第三級アミン:
本実施形態で用いられる白色インクは、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調製剤としての機能を有し、保湿剤のpHを容易に調製することができる。
【0091】
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0092】
A3−4.その他の成分:
本実施形態で用いられる保湿剤は、通常溶媒として水を含有する。また、この水は、中空樹脂粒子の空洞に浸透させるためにも用いられる。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0093】
A3−5.増粘剤:
本実施例で用いられる保湿液は、増粘剤を含まないことが好ましい。増粘剤を含まないことにより、保湿液を、白色インクによる印刷において滑らかな階調表現を実現するために用いるのに加えて、印刷装置内(例えば、キャップ装置内や廃インクタンク内)に付着した各色のインクを洗い落とすために用いることができる。
【0094】
このような増粘剤としては、例えば、水酸化アルカリ、アルカノールアミン、アクリル酸(又はメタクリル酸)、アクリル酸(又はメタクリル酸)の誘導体の重合体若しくは共重合体であるアクリル酸系ポリマー(又はメタクリル酸系ポリマー)、ゴム系ポリマー、天然高分子化合物、セルロース変性ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリアセタール樹脂、グアーガム、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0095】
水酸化アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0096】
アルカノールアミンとしては、例えば、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。
【0097】
アクリル酸の誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸、又はメタアクリル酸メチル等が挙げられる。
【0098】
ゴム系ポリマーとしては、例えば、ウレタン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、若しくはアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0099】
天然高分子化合物としては、例えば、でんぷん、変性でんぷん、ゼラチン、カゼイン、若しくは大豆蛋白等が挙げられる。
【0100】
セルロース変性ポリマーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。
【0101】
A4.印刷装置:
本実施形態で用いられる印刷装置では、中空樹脂粒子を含有するインク,クリアインク,保湿液を噴射して、紙等の記録媒体に画像記録を行うインクジェット記録方式を採用する。インクジェット記録方式としては、公知の方法を採用することができ、例えば、サーマルジェット式インクジェット記録方式や、ピエゾ式インクジェット記録方式等を採用することができる。
【0102】
図1は、本発明の一実施形態としての印刷装置の概略構成を示す説明図である。この印刷装置10は、インクジェット式プリンターであり、紙送りモーター22と、プラテン25と、駆動ベルト23と、プーリー26と、キャリッジモーター21と、摺動軸24と、キャリッジ30と、主制御部40と、操作部50と、キャップ装置71と、吸引ポンプ72と、廃インクタンク73と、コネクター80とを備えている。
【0103】
紙送りモーター22は、プラテン25を回転させ、記録用紙Pを副走査方向に搬送する。駆動ベルト23は、いわゆる無端ベルトであり、キャリッジモーター21とプーリー26との間に張り亘されている。キャリッジモーター21は、駆動ベルト23を駆動させる。摺動軸24は、駆動ベルト23に固定されたキャリッジ30を摺動可能に保持している。
【0104】
キャリッジ30は、印刷ヘッド31を備え、8つのインクカートリッジ32〜39を着脱自在に搭載している。第1インクカートリッジ32は、イエローインク(Y)用のインクカートリッジである。また、第2インクカートリッジ33はマゼンタインク(M)用の、第3インクカートリッジ34はシアンインク(C)用の、第4インクカートリッジ35はブラックインク(K)用の、第5インクカートリッジ36は白インク(W)用の、第6インクカートリッジ37はレッドインク(R)用の、第7インクカートリッジ38はブルーインク(B)用の、第8インクカートリッジ39は、クリアインク(CL)又は保湿液(H)用の、それぞれインクカートリッジである。
【0105】
図2は、印刷ヘッド31のノズル形成面を模式的に表わす説明図である。印刷ヘッド31は、記録用紙Pと対向する位置にノズル形成面Snを備えている。このノズル形成面Snには、各色に対応する複数のノズルからなるノズル列が形成されている。具体的には、イエローインクに対応するノズル列32nと、マゼンタインクに対応するノズル列33nと、シアンインクに対応するノズル列34nと、ブラックインクに対応するノズル列35nと、白色インクに対応するノズル列36nと、レッドインクに対応するノズル列37nと、ブルーインクに対応するノズル列38nと、クリアインク又は保湿液に対応するノズル列39nとが形成されている。印刷ヘッド31は、各インクカートリッジ32〜39から供給されるインクを、対応する各ノズル列32n〜39nから記録用紙Pに向けて噴射する。キャリッジ30は、キャリッジモーター21により駆動ベルト23が駆動されると、摺動軸24に沿ってプラテン25の軸方向(主走査方向)に往復動する。
【0106】
キャップ装置71は、印刷ヘッド31による印刷が行われない領域に設けられたホームポジションHに配置されており、キャリッジ30がホームポジションHに配置されている際に、印刷ヘッド31のノズル形成面Snを封止できるように構成されている。吸引ポンプ72は、チューブを介してキャップ装置71に接続されており、キャップ装置71の内部空間に負圧を供給し、印刷ヘッド31のノズルに残留するインクを吸引する、いわゆるクリーニング動作を行う。廃インクタンク73は、チューブを介して吸引ポンプ72に接続されており、吸引ポンプ72により吸引されたインク(廃インク)を貯留する。なお、廃インクタンク73の内部には、図示しない廃インク吸収材が配置されており、吸引ポンプ72により吸引された廃インクはこの吸収材により吸収される。
【0107】
操作部50は、ユーザが各種設定を行う際に用いる操作ボタンや、各種メニュー画面を表示するためのディスプレイを備えている。コネクター60は、印刷装置10とパーソナルコンピューター90とを接続するために用いられる。
【0108】
本発明の印刷装置は、中空樹脂粒子を含有するインクを噴射すると共に、クリアインク又は保湿液を噴射することによって、中空樹脂粒子を含有するインクの色の階調を細かく設定できるように構成されている。
【0109】
なお、前述の印刷ヘッド31及び2つのノズル列36n,39nは、請求項における噴射機構に相当する。
【0110】
B.実施例:
B1.第1の実施例:
第1の実施例では、白色インク(W)とクリアインク(CL)とを用いた印刷について例示する。
【0111】
B1−1.白色インク:
第1の実施例では、表1に示す組成の白色インクを用いた。なお、表1に記載されている数値の単位は、重量%である。表1に示す中空樹脂粒子として、JSR株式会社製の「SX8782(D)」を用いた。表1において「BYK−348」は、ビックケミー・ジャパン社製のポリシロキサン系界面活性剤である。なお、中空樹脂粒子の平均粒子径は、1.0μmであった。
【0112】
【表1】

【0113】
B1−2.クリアインク:
第1の実施例では、表2に示す組成のクリアインクを用いた。表2に記載されている数値の単位は、重量%である。表2に示す「W6010」は、定着用樹脂化合物であるタケラックW−6010(三井化学ポリウレタン株式会社社製)を示す。表2に示す「BYK−348」は、白色インクに用いた「BYK−348」と同じであるので、説明を省略する。
【0114】
【表2】

【0115】
なお、定着用樹脂化合物である「W6010」の平均粒子径は60nmであり、前述の白色インクに含まれる中空樹脂粒子の平均粒子径(1.0μm)よりも小さい。
【0116】
B1−3.印刷装置:
第1の実施例では、セイコーエプソン株式会社製インクジェット式プリンター「PX−G930」のフォトブラックインク用のインクカートリッジに、上記白色インクを充填し、グロスオプティマイザ用のインクカートリッジに、上記クリアインクを充填して印刷試験を行った。なお、上記プリンターの他色のインクカートリッジとして、それぞれ市販のインクカートリッジを搭載したが、これらのインクカートリッジはダミーとして用いるものであり、本実施例の評価には関与しない。
【0117】
B1−4.評価方法:
B1−4−1.白色度の評価:
第1の実施例では、上記プリンターを用いて、表1に記載の白色インクおよび表2に記載のクリアインクを噴射して印刷を行った。記録媒体はインクジェットプリンタ用専用記録用紙(KOKUYO社製OHPシート「VF−1101N」)を用いた。このとき、クリアインクのduty値を50%とし、白色インクのduty値を変えて印刷を行った。「duty値」とは、下記式(1)で算出される価である。
【0118】
duty値(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100・・・(1)
【0119】
上記式(1)において、「実印字ドット数」は、単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」は、それぞれ単位長さあたりの画素数である。duty値100%とは、画素に対する単色の最大インク重量を意味する。
【0120】
白色インクのduty値の範囲として、0%から10%までとした。この理由について、図3を用いて説明する。
【0121】
図3は、白色インクのduty値と明度との関係を模式的に示すグラフである。図3において、横軸は白色インクのduty値を示し、縦軸は印刷された画像の明度(L*a*b*表色系におけるL*)を示す。本実施例では、「明度(L*)」を、白色の濃度(白さ)の指標として用いている。なお、図3の例における白色インクは、白色色材として中空樹脂粒子を用いたインクである。
【0122】
図3に示すように、白色インクのduty値が低い領域(特に、0%〜10%の範囲)では、duty値が高い領域に比べて、duty値の増加に対する明度(白色度)の増加率(傾き)が大きい。したがって、duty値が低い範囲では、白色の階調を細かく設定することが困難であるため、滑らかな階調表現ができない。これに対し、duty値が高い範囲では、duty値の増加に対する明度(白色度)の増加率が比較的小さいため、白色の階調を細かく設定することが容易であり、滑らかな階調表現が容易に実現できる。そこで、本実施例では、滑らかな階調表現が困難である領域(白色インクのduty値が0%〜10%の範囲)について、白色インクのduty値の変化に伴う白色度の変化を評価した。
【0123】
前述のようにして印刷されたOHPシートを1時間、室温において乾燥させ、標準黒色色紙上に載せて、色(明度)を測定した。色の測定には、X−rite社製「938 Spectrodensitometer」を用いた。なお、光源はD50とした。
【0124】
本実施例では、白色インク及びクリアインクの噴射順序(印刷順序)が異なる3つのパターンで印刷試験を行った。具体的には、白色インク,クリアインクの順序で噴射(印刷)するパターン(W−CL印刷)と、白色インクとクリアインクとを同時に噴射するパターン(W,CL印刷)と、クリアインク,白色インクの順序で噴射するパターン(CL−W印刷)とで、印刷試験を行った。なお、比較例として、白色インクのみを噴射する印刷するパターン(W印刷)でも印刷試験を行った。W−CL印刷及びCL−W印刷では、一方のインクで記録用紙全体に印刷し、その後に、他方のインクで記録用紙全体に印刷を行った。
【0125】
B1−4−2.耐擦性評価:
第1の実施例では、印刷後の白色インクの耐擦性についても評価を行った。具体的には、上記3つの印刷パターンの印刷試験で得られた印刷物(OHPシート)に対して、試験担当者による布を用いた擦り試験を行った。ただし、本試験では、上記3つの印刷パターンにおいて、白色インクのduty値を10%〜50%に変化させ、また、クリアインクのduty値を、50%及び100%に変えて、印刷を行った。なお、耐擦性試験で用いた布は、小津産業株式会社製の不織布「ベンコット(登録商標)」であった。評価基準は以下のとおりである。
【0126】
<耐擦性評価基準>
A:印刷面に変化が認められない。
B:印刷面に擦った跡が認められるが、剥がれるには至らない。
C:印刷面の一部が剥がれる。
D:印刷面の全てが剥がれる。
【0127】
B1−5.評価結果:
B1−5−1.白色度評価結果:
図4は、第1の実施例における白色度の評価結果を示す説明図である。図4において、横軸は白色インクのduty値を示し、縦軸は白色度としてL*の値を示す。図4において、白色の三角形により描かれたグラフは、W−CL印刷における白色度を示す。また、白色の四角形により描かれたグラフは、W,CL印刷における白色度を示す。また、白色の円形により描かれたグラフは、CL−W印刷における白色度を示す。また、黒色の円形により描かれたグラフは、比較例としてのW印刷における白色度を示す。
【0128】
図4に示すように、本実施例の3つの印刷パターン(W−CL印刷、W,CL印刷,CL−W印刷)は、いずれも比較例のW印刷に比べて、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率が低い(すなわち、傾きが緩い)。これは、以下の理由によると考えられる。印刷後の記録用紙表面において、クリアインクに含まれる定着用樹脂化合物が中空樹脂粒子の周りに網目状に配置されるため、この定着用樹脂化合物の網目にクリアインクや白色インクに含まれる水(イオン交換水)や、大気中の水分や、浸透性溶剤(1,2−ヘキサンジオール等)がトラップされる。このトラップされた水分や浸透性溶剤が、中空樹脂粒子の空洞内に浸透して中空樹脂粒子の透明化(白色度の低下)が起こるため、クリアインクを用いない印刷に比べて、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率が低くなると考えられる。
【0129】
このように、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率を低く抑えることができるので、本実施例の印刷装置では、低階調領域において階調を細かく設定することができ、滑らかな階調表現が実現できる。
【0130】
ここで、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率について、3つの印刷パターン同士を比較すると、W−CL印刷が最も低く、以下、W,CL印刷、CL−W印刷の順に高くなっている。これは、印刷後のクリアインクと大気との接触面積が大きい印刷パターンほど、大気中の水分をより多くトラップすることができるため、中空樹脂粒子の透明化をより大きく促進するからであると考えられる。例えば、W−CL印刷では、記録用紙上において、白色インクを覆うようにクリアインクが配置される傾向にあるので、クリアインクと大気との接触面積が大きく、中空樹脂粒子の透明化を大きく促進すると考えられる。これに対し、CL−W印刷では、記録用紙上において、クリアインクを覆うように白色インクが配置される傾向にあるので、クリアインクと大気との接触面積が小さく、中空樹脂粒子の透明化を小さく促進すると考えられる。なお、W,CL印刷では、クリアインクと大気との接触面積が中程度であり、中空樹脂粒子の透明化を中程度に促進すると考えられる。
【0131】
B1−5−2.耐擦性評価結果:
表3に、本実施例における耐擦性の評価結果を示す。また、比較例として、W印刷における耐擦性の評価結果を表4に示す。
【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
表3に示すように、クリアインクのduty値が50%であり、かつ、白色インクのduty値が40%又は50%である場合におけるCL−W印刷を除き、本実施例のいずれの印刷パターンにおいても、白色インクのduty値が同一のW印刷に比べて、より高い耐擦性を示した。また、3つの印刷パターンのいずれにおいても、同じ印刷パターンにおいて白色インクのduty値が同じであれば、クリアインクのduty値が大きい場合(100%の場合)の方が、より高い耐擦性を示している。これらの結果は、いずれも、印刷後の記録用紙上において、クリアインクによって白色インクが保護されるからであると考えられる。
【0135】
ここで、クリアインクのduty値及び白色インクのduty値が同一の場合における耐擦性について、3つの印刷パターン同士を比較すると、W−CL印刷が最も高く、以下、W,CL印刷、CL−W印刷の順に低くなる傾向が認められた。これは、以下の理由によると考えられる。W−CL印刷では、記録用紙上において、白色インクを覆うようにクリアインクが配置される傾向にあるので、白色インクはクリアインクにより保護され、耐擦性が高くなると考えられる。これに対し、CL−W印刷では、記録用紙上において、クリアインクを覆うように白色インクが配置される傾向にあるので、白色インクはクリアインクにより保護され難く、耐擦性が低くなると考えられる。なお、W,CL印刷では、クリアインクと白色インクとは、同程度に他方のインクを覆うように配置されるので、耐擦性は中程度であると考えられる。
【0136】
以上説明したように、第1の実施例の印刷装置では、定着用樹脂化合物を含むクリアインクを、白色インクと共に噴射するので、記録用紙上において、定着用樹脂化合物により大気中の水分や、インクに含まれる水及び浸透性溶剤をトラップして、中空樹脂粒子の空洞に浸透させることができる。したがって、白色インクの透明化を促進して、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率を低く抑えることができるため、階調を細かく設定することができ、滑らかな階調表現を実現できる。また、W−CL印刷を行うことにより、白色の階調をより細かく設定することができると共に、印刷後の耐擦性を高めることができる。また、定着用樹脂化合物は、中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有するので、水分や浸透用溶剤の定着力を向上させることができる。
【0137】
なお、仮に、白色インクを水等の液体により希釈して噴射する構成を採用した場合、印刷後の記録用紙上において、乾燥により中空樹脂粒子の空洞から水等の液体が抜け出ることから、従来と同様に、滑らかな階調表現は実現できない。これに対して、本実施例の印刷装置では、インク噴射後においても、定着用樹脂化合物により浸透用溶剤や水分等を中空樹脂粒子の周りに定着させておけるので、白色インクを継続して透明化でき、滑らかな階調表現を継続して実現できる。
【0138】
B2.第2の実施例:
第2の実施例では、白色インク(W)と保湿液(H)とを用いた印刷について例示する。
【0139】
B2−1.白色インク:
第2の実施例では、上記表1に示す第1の実施例の白色インクと同じ組成のインクを、白色インクとして用いた。
【0140】
B2−2.保湿液:
第2の実施例では、表5に示す組成の保湿液を用いた。表5に記載されている数値の単位は、重量%である。表5に示すグリセリンは、保湿剤に相当する。表5に示す「BYK−348」は、白色インクに用いた「BYK−348」と同じであるので、説明を省略する。なお、表5に示すように、第2の実施例において用いた保湿液には増粘剤となり得る成分は含まれていない。
【0141】
【表5】

【0142】
B2−3.印刷装置:
第2の実施例では、セイコーエプソン株式会社製インクジェット式プリンター「PX−G930」のフォトブラックインク用のインクカートリッジに、上記白色インクを充填し、グロスオプティマイザ用のインクカートリッジに、上記保湿液を充填して印刷試験を行った。なお、上記プリンターの他色のインクカートリッジとして、それぞれ市販のインクカートリッジを搭載したが、これらのインクカートリッジはダミーとして用いるものであり、本実施例の評価には関与しない。
【0143】
B2−4.評価方法:
第2の実施例における評価方法は、第1の実施例における評価方法と同様である。第2の実施例では、白色インク及び保湿液の噴射順序(印刷順序)が異なる3つのパターンで印刷試験を行った。具体的には、白色インク,保湿液の順序で噴射(印刷)するパターン(W−H印刷)と、白色インクと保湿液とを同時に噴射するパターン(W,H印刷)と、保湿液,白色インクの順序で噴射するパターン(H−W印刷)とで、印刷試験を行った。なお、比較例として、白色インクのみを噴射して印刷するパターン(W印刷)でも印刷試験を行った。W−H印刷及びH−W印刷では、一方の液体(インク)で記録用紙全体に印刷し、その後に、他方の液体(インク)で記録用紙全体に印刷を行った。なお、第2の実施例では、耐擦性評価は行わなかった。
【0144】
B2−5.評価結果:
図5は、第2の実施例における白色度の評価結果を示す説明図である。図5における横軸及び縦軸は図4と同じである。図5において、白色の三角形により描かれたグラフは、W−H印刷における白色度を示す。また、白色の四角形により描かれたグラフは、W,H印刷における白色度を示す。また、白色の円形により描かれたグラフは、H−W印刷における白色度を示す。また、黒色の円形により描かれたグラフは、比較例としてのW印刷における白色度を示す。
【0145】
図5に示すように、第1の実施例と同様に、本実施例の3つの印刷パターン(W−H印刷、W,H印刷,H−W印刷)は、いずれも比較例のW印刷に比べて、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率が低い(すなわち、傾きが緩い)。これは、以下の理由によると考えられる。印刷後の記録用紙表面において、保湿液に含まれる保湿剤(グリセリン)が中空樹脂粒子の周りに配置される。保湿剤は、水に対する親和性が高いため、クリアインクや白色インクに含まれる水(イオン交換水)や大気中の水分を引き寄せる。この保湿剤に引き寄せられた水分が中空樹脂粒子の空洞内に浸透して中空樹脂粒子の透明化(白色度の低下)が起こるため、クリアインクを用いない印刷に比べて、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率が低くなると考えられる。
【0146】
このように、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率を低く抑えることができるので、第2の実施例の印刷装置では、第1の実施例の印刷装置と同様に、低階調領域において階調を細かく設定することができ、滑らかな階調表現が実現できる。
【0147】
ここで、白色インクのduty値の増加に対する白色度の増加率について、3つの印刷パターン同士を比較すると、W−H印刷が最も低く、以下、W,H印刷、H−W印刷の順に高くなっている。これは、印刷後の保湿液において、保湿剤と大気との接触面積が大きい印刷パターンほど、大気中の水分をより多く引き寄せることができるため、中空樹脂粒子の透明化をより大きく促進するからであると考えられる。例えば、W−H印刷では、記録用紙上において、白色インクを覆うように保湿剤が配置される傾向にあるので、保湿剤と大気との接触面積が大きく、中空樹脂粒子の透明化を大きく促進すると考えられる。これに対し、H−W印刷では、記録用紙上において、保湿剤を覆うように白色インクが配置される傾向にあるので、保湿剤と大気との接触面積が小さく、中空樹脂粒子の透明化を小さく促進すると考えられる。なお、W,H印刷では、保湿剤と大気との接触面積が中程度であり、中空樹脂粒子の透明化を中程度に促進すると考えられる。
【0148】
以上説明したように、第2の実施例の印刷装置も、第1の実施例の印刷装置と同様な効果を奏する。加えて、白色インクと共に保湿液を噴射可能に構成されているので、クリーニング時において、白色インクと共に保湿液も吸引され、キャップ装置71内及び廃インクタンク73内に白色インク及び保湿剤を存在させ得る。保湿液は、保湿剤を含むと共に、増粘剤を含まないので、白色インクの乾燥や増粘化を抑制でき、キャップ装置71及び廃インクタンク73内における中空樹脂粒子等のインク組成物の堆積を抑制できる。
【0149】
なお、仮に、白色インクを水等の液体により希釈して噴射する構成を採用した場合、記録用紙上において、乾燥により中空樹脂粒子の空洞から水等の液体が抜け出ることから、従来と同様に、滑らかな階調表現は実現できない。これに対して、本実施例の印刷装置では、液体噴射後においても、保湿剤により水分を中空樹脂粒子の周りに引き寄せておけるので、白色インクを継続して透明化でき、滑らかな階調表現を継続して実現できる。
【0150】
C.変形例:
なお、上記実施形態及び実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記実施形態や実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0151】
C1.変形例1:
各実施例において、白色インクと共に噴射する液体は、クリアインクと保湿液とのうち、いずれか一方のみであったが、これに代えて、クリアインクと保湿液とを両方噴射することもできる。また、印刷装置が搭載するインクカートリッジの数は、合計8つであったが、本発明はこれに限定されるものではない。少なくとも、白色インク用インクカートリッジと、クリアインク/保湿液用インクカートリッジとの合計2つ以上の任意の数を採用できる。
【0152】
C2.変形例2:
実施形態及び各実施例では、印刷装置(プリンター)は、インクカートリッジがキャリッジに搭載された、いわゆるオンキャリッジタイプであったが、これに代えて、インクカートリッジがキャリッジ以外の場所に配置された、いわゆるオフキャリッジタイプを採用することもできる。
【0153】
C3.変形例3:
第1の実施例では、W−CL印刷及びCL−W印刷では、一方のインクで記録用紙全体に印刷し、その後に、他方のインクで記録用紙全体に印刷を行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、各色のノズル列を、記録用紙の紙送り方向に沿って、上流側ノズル群と下流側ノズル群とに分けて、或るパスにおいて、白色インク用の上流側ノズル群で白色インクを噴射すると共にクリアインク用の下流側ノズル群でクリアインクを噴射し、ノズル群の距離だけ記録用紙を搬送した後、次のパスにおいて同様にインクを噴射することを繰り返すことにより、W−CL印刷を実現することもできる。なお、CL−W印刷についても同様である。また、第3の実施例におけるW−H印刷及びH−W印刷についても同様である。
【0154】
C4.変形例4:
各実施例では、印刷後の記録用紙上において、中空樹脂粒子の空洞に浸透する組成物として、クリアインク及び白色インクに含まれる水(イオン交換水)や、大気中の水分や、浸透性溶剤(1,2−ヘキサンジオール等)が挙げられたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
白色インクや、クリアインクや、保湿液に含まれ得る以下のような組成物を、中空樹脂粒子の空洞に浸透する組成物として用いることができる。具体的には、保湿剤として用いられ得る2−ピロリドン,トリエタノールアミン,糖,糖類の誘導体や、浸透剤として用いられ得るグリコールエーテル系化合物,アルキルジオール系化合物,炭素数1〜4のアルキルアルコール類,グリコールエーテル類,N−メチル−2−ピロリドン,1−ジメチル−2−イミダゾリジノン,ホルムアミド,アセトアミド,ジメチルスルホキシド,ソルビット,ソルビタン,アセチン,ジアセチン,トリアセチン,スルホランや、界面活性剤等を用いることができる。
【0156】
糖としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。ここで多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロース等自然界に広く存在する物質を意味する。
【0157】
糖類の誘導体としては、前述の糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(n=2〜5の整数)で表わされる)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸等)、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビット等が挙げられる。なお、市販品としては、林原商事の「HS−300、500」(登録商標)等を採用することができる。
【0158】
グリコールエーテル系化合物としては、例えば、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0159】
アルキルジオール系化合物としては、例えば、1,2−ペンタンジオールが挙げられる。
【0160】
炭素数1〜4のアルキルアルコール類しては、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0161】
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0162】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を採用することができる。なお、これらのうち、1種単独でも用いることもできるし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0163】
ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、エーテル系界面活性剤、エステル系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等のポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤、フッ素アルキルエステルやパーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤を採用することができる。
【0164】
エーテル系界面活性剤としては,ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル,ポリオキシエチレンオレイルエーテル,ポリオキシエチレンラウリルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどを採用することができる。
【0165】
エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイン酸,ポリオキシエチレンオレイン酸エステル,ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル,ソルビタンラウレート,ソルビタンモノステアレート,ソルビタンモノオレエート,ソルビタンセスキオレート,ポリオキシエチレンモノオレエート,ポリオキシエチレンステアレートなどを採用することができる。
【0166】
C5.変形例5:
各実施例の白色度評価では、クリアインク及び保湿液のduty値を50%としたが、本発明は、この値に限定されるものではない。例えば、50%よりも高い値とすることにより、中空樹脂粒子の透明化(白色度の低下)をより促進し、低階調領域において、より滑らかな階調表現を実現できる。また、50%よりも低い値とした場合であっても、白色インクのみを噴射する場合に比べて、低階調領域において、より滑らかな階調表現を実現できる。なお、クリアインク及び保湿液のduty値を固定せずに、複数の値を設定することもできる。例えば、クリアインク及び保湿液のduty値を256段(0〜255)とすることもできる。この場合、白色インクのduty値も256段(0〜255)に設定すれば、白色を65536階調(256×256階調)にすることができ、滑らかな階調表現が可能となる。
【0167】
C6.変形例6:
各実施例では、1枚の記録媒体(OHPシート)に対して、いずれか1つの印刷パターンを適用していたが、これに代えて、複数の印刷パターンを適用して印刷することもできる。例えば、1枚の記録媒体に対して、W−CL印刷と、W,CL印刷と、CL−W印刷とを適用することもできる。例えば、或る画素については、1回目の印刷において白色インクとクリアインクとを同時に噴射し、別の画素については、1回目の印刷において白色インクのみ噴射し、2回目の印刷においてクリアインクのみを噴射することもできる。このように、複数の印刷パターンを組み合わせることにより、より細かな階調制御が可能となる。
【0168】
C7.変形例7:
各実施例では、図2に示すように、白色インクを噴射するノズル列36nと、クリアインク又は保湿液を噴射するノズル列39nとは、互いに異なるノズル列を用いていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、印刷ヘッド31内部又は印刷装置10の本体内部に、ノズル列に供給するインクを切り替えるための切替弁を設け、この切替弁を用いて、同一のノズル列から、白色インクとクリアインクとを切り替えて噴射させる構成を採用することができる。また、同様な構成により、同一のノズル列から、白色インクと保湿液とを切り替えて噴射させる構成を採用することができる。なお、これらの構成において、白色インクと、クリアインク又は保湿液とを噴射するノズル列を含む印刷ヘッドは、請求項における噴射機構に相当する。
【符号の説明】
【0169】
10…印刷装置、21…キャリッジモーター、22…紙送りモーター、23…駆動ベルト、24…摺動軸、25…プラテン、26…プーリー、30…キャリッジ、31…印刷ヘッド、32…第1インクカートリッジ、33…第2インクカートリッジ、34…第3インクカートリッジ、35…第4インクカートリッジ、36…第5インクカートリッジ、37…第6インクカートリッジ、38…第7インクカートリッジ、39…第8インクカートリッジ、40…主制御部、50…操作部、60…コネクター、71…キャップ装置、72…吸引ポンプ、73…廃インクタンク、80…コネクター、90…パーソナルコンピューター、P…記録用紙、H…ホームポジション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
中空樹脂粒子を含む第1のインクと、
前記中空樹脂粒子の内部に浸透させるための液体である浸透用液体と、前記中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有し、前記浸透用液体を定着させるための樹脂化合物である定着用樹脂化合物と、を含み、かつ、着色剤を含まない第2のインクを前記記録媒体に向けて噴射する第2のインクと、
を記録媒体に向けて噴射する噴射機構を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記噴射機構は、前記第1のインクを噴射した後に、前記第2のインクを噴射する、印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記噴射機構は、前記第1のインクを噴射するのと同時に、前記第2のインクを噴射する、印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記噴射機構は、前記第2のインクを噴射した後に、前記第1のインクを噴射する、印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記第2のインクにおける前記定着用樹脂化合物の含有率は、0.5重量%以上であり、かつ、20.0%以下である、印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、0.2μm以上であり、かつ、1.0μm以下である、印刷装置。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷装置において、
前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)で測定した場合に、0.2μm以上であり、かつ、1.0μm以下である、印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記定着用樹脂化合物は、少なくとも、アクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸系ポリマー,メタクリル酸系ポリマー,ゴム系ポリマー,天然高分子化合物,セルロース変性ポリマー,ポリビニルアルコール(PVA),変性PVA,ポリアクリルアミド,ポリエチレン,ポリアセタール樹脂,グアーガム,ポリエステル,ポリビニルピロリドン,エチレン−ポリビニルアルコール共重合体のうち、いずれか1つを含む、印刷装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記浸透用液体は、少なくとも、グリコエーテル系化合物,アルキルジオール系化合物,トリエタノールアミン,糖,糖類の誘導体,炭素数1〜4のアルキルアルコール類,グリコエーテル類,2−ピロリドン,N−メチル−2−ピロリドン,1−ジメチル−2−イミダゾリジノン,ホルムアミド,アセトアミド,ジメチルスルホキシド,ソルビット,ソルビタン,アセチン,ジアセチン,トリアセチン,スルホラン,水のうち、いずれか1つを含む、印刷装置。
【請求項10】
印刷方法であって、
中空樹脂粒子を含む第1のインクと、
前記中空樹脂粒子の内部に浸透させるための液体である浸透用液体と、前記中空樹脂粒子の平均粒子径以下の平均粒子径を有し、前記浸透用液体を定着させるための樹脂化合物である定着用樹脂化合物と、を含み、かつ、着色剤を含まない第2のインクと、
を前記記録媒体に向けて噴射する工程を備える印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−51187(P2011−51187A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201244(P2009−201244)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】