印刷装置
【課題】他面印刷エラーが発生した場合に対応することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置30は、制御部31が、他面印刷エラーが発生しないとの否定判断をした場合には、片面印刷済シートを反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、他面印刷エラーが発生するとの肯定判断をした場合には、配置部41,72から供給されたシートWを印刷経路P1にて搬送させて、他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する。
【解決手段】印刷装置30は、制御部31が、他面印刷エラーが発生しないとの否定判断をした場合には、片面印刷済シートを反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、他面印刷エラーが発生するとの肯定判断をした場合には、配置部41,72から供給されたシートWを印刷経路P1にて搬送させて、他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転機構を利用して両面印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反転機構(スイッチバック部)を利用して両面印刷を行う印刷装置がある(特許文献1)。具体的には、この印刷装置は、未印刷シートを所定の印刷位置に搬送し、その片面に印刷部により画像を印刷した後、その片面印刷済シートを上記反転機構により反転させて印刷位置に再び搬送し、その他面に印刷部により画像を印刷する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−167526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記印刷装置では、反転機構を利用して両面印刷を行う場合において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない、他面印刷エラーが発生することがある。しかし、従来は、このような他面印刷エラーが発生した場合の対応について十分に検討されていなかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、他面印刷エラーが発生した場合に対応することが可能な印刷装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1発明に係る印刷装置は、シートが配置される配置部と、シートに画像を印刷する印刷部と、前記配置部に配置されたシートを前記印刷部の印刷位置に搬送する印刷経路、及び、前記印刷位置を経由したシートを反転させて再び前記印刷位置へと搬送する反転経路を有する搬送機構と、前記反転経路を利用する両面印刷を実行するよう、前記印刷部及び前記搬送機構を制御する制御部と、前記反転経路を利用する両面印刷において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない他面印刷エラーが発生するかどうかを判断する判断部と、を備え、前記制御部は、前記判断部が否定判断した場合には、前記片面印刷済シートを前記反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、前記判断部が肯定判断した場合には、前記配置部から供給されたシートを前記印刷経路にて搬送させて、前記他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する。
【0007】
この発明によれば、他面印刷エラーが発生する場合(判断部が肯定判断した場合)には、配置部から供給されたシート(例えば、他面印刷エラーが発生した後、配置部に改めて配置された片面印刷済シート、或いは、当該片面印刷済シートとは異なるシート)に、他面に印刷すべき画像を印刷する。これにより、他面印刷エラーが発生した場合であっても、上記他面に印刷すべき画像を、シートに印刷することができる。
【0008】
第2発明は、第1発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記判断部が肯定判断した場合に、前記印刷部及び前記搬送機構の動作を停止させる。
【0009】
この発明によれば、他面印刷エラーが発生した場合、印刷部及び搬送機構の動作が停止するので、ユーザは、その停止中に他面印刷エラーの解消作業を行うことができる。
【0010】
第3発明は、第1または第2の発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する。
【0011】
この発明によれば、他面印刷エラーの発生後、反転経路を利用しないから、再び他面印刷エラーが発生することを抑制することができる。
【0012】
第4発明は、第3発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用せずに両面印刷を実行するマニュアル両面印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する。
【0013】
この発明によれば、他面印刷エラーを回避しつつ、両面印刷済シートを完成することができる。
【0014】
第5発明は、第3または第4の発明の印刷装置であって、前記判断部が肯定判断した肯定回数をカウントするカウント部を備え、前記制御部は、前記肯定回数が規定回数に達した場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える。
【0015】
この発明によれば、他面印刷エラーの発生頻度が低い場合には、反転経路を利用する両面印刷を続行し、発生頻度が高い場合に限り、反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0016】
第6発明は、第5発明の印刷装置であって、前記他面印刷エラーは、前記片面印刷済シートが前記印刷位置に搬送されるまでに、前記他面に印刷すべき画像のデータ展開処理が完了していない展開遅延エラーである。
【0017】
この発明によれば、例えばデータ量が重く展開処理に時間を要する画像データがある程度続く場合に限り、反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0018】
第7発明は、第3から第6のいずれか一つの発明の印刷装置であって、ユーザの切替指示を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記受付部が前記切替指示を受け付けた場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える。
【0019】
この発明によれば、ユーザの意思によって反転経路を利用する両面印刷から反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0020】
第8発明は、第3から第7のいずれか一つの発明の印刷装置であって、外部機器から印刷データを受信する受信部を備え、前記印刷部は前記受信部で受信した印刷データに基づく画像を印刷し、前記受信部は、前記反転経路を利用しない印刷に切り替える際には、当該反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従った印刷データを新たに受信し、前記印刷部は、その新たに受信した印刷データに基づき印刷を行う。
【0021】
この発明によれば、印刷装置において、反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従うように印刷データの並び順を変更する処理が不要になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、他面印刷エラーが発生した場合に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの電気的構成を示すブロック図
【図2】プリンタの内部構成を示した概略図
【図3A】21方式を説明するための模式図
【図3B】21方式の印刷順序を説明するための図
【図4A】2413方式を説明するための模式図
【図4B】2413方式の印刷順序を説明するための図
【図5A】241635方式を説明するための模式図
【図5B】241635方式の印刷順序を説明するための図
【図6】両面印刷処理のフローチャートを示す図
【図7】反転エラー処理のフローチャートを示す図
【図8】シートサイズエラー処理のフローチャートを示す図
【図9】展開遅延エラー処理のフローチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
1.印刷システムの電気的構成
図1は、本実施形態の印刷システム1の電気的構成を示すブロック図である。印刷システム1は、端末装置10(例えばパーソナルコンピュータ 外部機器の一例)とプリンタ30(印刷装置の一例)とを備える。
【0025】
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、ハードディスクドライブ14、キーボードやポインティングデバイス等を有する操作部15、液晶ディスプレイ等を有する表示部16、通信回線20に接続されるネットワークインターフェイス17等を備えている。ハードディスクドライブ14には、OSや、印刷用のデータを作成可能なアプリケーションソフト、プリンタ30を制御するためのプリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されている。
【0026】
プリンタ30は、CPU31(判断部、制御部、カウント部の一例)、ROM32、RAM33、ハードディスクドライブ34、操作部35、表示部36、印刷部37、搬送機構38、シート検知部39、ネットワークインターフェイス21等を備えている。ROM32には、プリンタ30の動作を制御するための各種プログラムや、後述する両面印刷処理を実行するための両面印刷制御プログラム等が記録されており、CPU31は、ROM32から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM33に記憶させながら、プリンタ30の動作を制御する。
【0027】
操作部35は、複数のボタンを備え、ユーザによって印刷開始の指示などの各種の入力操作が可能である。表示部36は、液晶ディスプレイやランプ等を備えており、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。印刷部37は、画像データに基づく画像をシートW(用紙、OHPシートなど)に印刷する。ネットワークインターフェイス21は、通信回線20を介して外部の端末装置10等に接続されており、相互にデータ通信が可能となっている。なお、搬送機構38およびシート検知部39については後述する。
【0028】
2.プリンタの内部構成
図2はプリンタ30の内部構成を示した概略図である。以下の説明では、各構成要素について、色毎に区別する場合は各部の符号にY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),B(ブラック)の添え字を付し、区別しない場合は添え字を省略する。
【0029】
プリンタ30は、供給トレイ41(配置部の一例)、上述の印刷部37、搬送機構38、及び、排出トレイ42等を備えている。供給トレイ41は、プリンタ30の底部に設けられており、複数枚のシートWが収納可能とされている。
【0030】
印刷部37は、プロセス部44、および、定着器45等を有し、搬送機構38は、ピックアップローラ46、レジストレーションローラ47,47、シート搬送用のベルト48、及び、反転機構49等を有する。ピックアップローラ46は、供給トレイ41に収納されたシートWを1枚ずつ取り出してレジストレーションローラ47,47へと搬送する。レジストレーションローラ47,47は、搬送されてきたシートWの姿勢を整えて、所定のタイミングでベルト48上に送り出す。
【0031】
プロセス部44は、複数色(例えば4色)のトナー各々に対応する複数(例えば4個)のプロセスカートリッジ51Y,51M,51C,51B、及び、複数(例えば4個)の露光装置52を有する。各プロセスカートリッジ51は、感光体53、帯電器54、及び、トナー収容部55等を有する。なお、プロセス部44の直下であるベルト48上の位置が、本発明でいう「印刷位置」の一例である。
【0032】
帯電器54は、いわゆるスコロトロン型の帯電器であり、感光体53の表面を一様に帯電させる。露光装置52は、例えば、感光体53の回転軸方向に沿って一列状に並んだ複数の発光素子(例えばLED)を有し、これらの複数の発光素子を、各色ごとの画像データに基づき発光制御することにより、感光体53の表面に静電潜像を形成する。
【0033】
トナー収容部55は、各色のトナー(本実施形態では、例えば正帯電性の非磁性1成分トナー)を収納するとともに、現像ローラ56を有する。現像ローラ56が、トナーを「+」(正極性)に帯電させ、均一な薄層として感光体53上へ供給することにより上記静電潜像を現像してトナー像(モノクロ像、またはカラー像)を形成する。
【0034】
各転写ローラ57は、上記各感光体53との間でベルト48を挟む位置に配置されている。各転写ローラ57は、感光体53との間にトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加されて、感光体53上に形成された上記トナー像をシートWに転写する。
【0035】
その後、当該シートWは、搬送機構38により定着器45へと搬送され、この定着器45の加熱ローラ45Aと対向ローラ45Bとの間にてトナー像が熱定着され、排出トレイ42に向けて搬送される。なお、供給トレイ41からのシートWをベルト48上の印刷位置へ導くための経路(図2の実線矢印部分 「印刷経路」の一例)を、印刷搬送パスP1という。
【0036】
反転機構49は、排出ローラ60、反転搬送パスP2(図2の点線矢印部分 「反転経路」の一例)、フラッパ61、複数の反転搬送ローラ62等を有する。反転搬送パスP2を利用する両面印刷の方式(自動両面方式)を実行する場合には、シートWは、プロセス部44により裏面(供給トレイ41に収納されていたときの下面 片面の一例)に画像が印刷され、その後、一旦排出ローラ60まで搬送される。
【0037】
そして、当該排出ローラ60の逆回転により、シートWは、フラッパ61、反転搬送パスP2、複数の反転搬送ローラ62、レジストレーションローラ47を介して搬送され、表裏が反転された状態でベルト48上に送り出される。そして、そのシートWはプロセス部44により表面(供給トレイ41に収納されていたときの上面 他面の一例)に画像が印刷された後に排出トレイ42上へと排出される。
【0038】
シート検知部39は、複数のセンサ39Aを有し、各センサ39Aは、搬送機構38内の各搬送位置におけるシートWの有無に応じた検知信号を出力する。CPU31は、各センサ39Aから、シートW有りを示す検知信号を規定時間以上継続して受けた場合、あるいは、規定時間以上継続して受けない場合に、各搬送位置でジャム(シート詰まり)が発生したと判断する。本実施形態では、図2に示すように、印刷搬送パスP1及び反転搬送パスP2のそれぞれに、センサ39Aが1又は複数設けられているため、CPU31は、印刷搬送パスP1、反転搬送パスP2のどちらでジャムが発生したかも判断することができる。
【0039】
また、プリンタ30の前面には手差しトレイ70(配置部の一例)が開閉可能に設けられている。この手差しトレイ70を、図2に示すように開くと、レジストレーションローラ47,47の配置位置まで連通する挿入口71が露出する。手差しトレイ70にシートWをセットすると、そのセットされたシートWは、ピックアップローラ72によって1枚ずつ挿入口71内に搬送され、レジストレーションローラ47,47によって印刷搬送パスP1上に搬送される。
【0040】
3.両面印刷処理の方式
図3Aから図5Aは両面印刷処理の各方式を説明するための模式図であり、図3Bから図5Bは各方式の印刷順序を説明するための図である。各図には、数字を丸で囲んだマークがシートWに付されている。このマークは各頁画像を意味し、数字は頁番号を意味し、シートWに対するマークの位置は、各頁画像が形成されたシートWの面(表面または裏面)を意味する。また、各図B中の白抜き矢印及び符号は、印刷順序を示す。
【0041】
プリンタ30は、未印刷シート(両面とも印刷されていないシートW)、N枚(Nは1以上)の裏面に画像を印刷した後に、その裏面印刷済シート(裏面のみ印刷されたシートW 片面印刷済シートの一例)、M枚(MはN以下)の表面に画像を印刷する動作を含む両面印刷を実行可能である。
【0042】
以下、N枚を「裏面印刷枚数N」といい、M枚を「表面印刷枚数M」という。また、プリンタ30は、裏面印刷枚数N及び表面印刷枚数Mのうち少なくとも一方が互いに異なる複数の方式の両面印刷を選択的に実行することができる。これら複数の方式は、反転機構49を利用しない「マニュアル両面方式(非反転方式)」と、反転機構38を利用する「自動両面方式(反転方式)」とに分類される。
【0043】
3−1 マニュアル両面方式
「マニュアル両面方式」は、1または複数枚のシートWを、その裏面に偶数頁の画像のみを印刷して反転搬送パスP2を経由せずに排出トレイ42に排出し、ユーザに、その排出されたシートWを、裏面(印刷済み面)を上にして供給トレイ41に再セットさせ、その後、その再セットされたシートWを、表面に奇数頁の画像のみを印刷して反転搬送パスP2を経由せずに排出トレイ42に排出するものである。
なお、裏面印刷済シートを手差しトレイ70に再セットしてもよい。この場合、裏面印刷済シートを、裏面を下にしてセットする。
【0044】
3−2 自動両面方式
自動両面方式は、無限ループ系か有限ループ系か、及び、上記裏面印刷枚数Nの大小によって分類される。「有限ループ系」とは、裏面印刷枚数NのシートWの裏面に印刷した後、当該裏面印刷枚数NのシートWの表面に印刷する動作(有限ループ)を、繰り返す方式であり、1つの有限ループが終了するごとに裏面印刷済シートが存在しなくなる。
【0045】
一方、「無限ループ系」とは、裏面印刷枚数NのシートWの裏面に印刷した後、当該裏面印刷枚数NのシートWの表面を印刷する途中に、新たな未印刷シートの裏面への印刷を挿入する方式であり、両面印刷動作の最初及び最後を除いて、裏面印刷済シートが途切れなく存在する。従って、無限ループ系は、有限ループ系に比べて、印刷処理速度は速いが、裏面印刷済シートの表面への印刷ができない、表面印刷エラー(他面印刷エラーの一例)により裏面のみに印刷された不完全なシートが生成される可能性は高い。以下、方式の一例を説明する。
【0046】
裏面印刷枚数Nが1枚の方式:21方式(有限ループ系)
裏面印刷枚数Nが2枚の方式:2413方式(有限ループ系)、241635方式(無限ループ系)
裏面印刷枚数Nが3枚の方式:246135方式(有限ループ系)、246183579(無限ループ系)
【0047】
「21方式」は、裏面印刷枚数Nは「1」であり、表面印刷枚数Mは「1」である有限ループ系であり、印刷の開始から終了まで一貫してシートW1枚ごとに裏面の印刷と表面の印刷とを連続で行うもの(両面連続方式)である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図3B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図3Aに示すように、1枚目シートW1の裏面に2頁目画像を印刷した後、当該シートW1の表面に1頁目画像を印刷するまでの間に、2枚目以降のシートWの印刷を行わない。従って、21方式は、上記不完全なシートが生成される可能性は低いが、印刷処理速度が遅い。
【0048】
「2413方式」は、裏面印刷枚数Nは「2」であり、表面印刷枚数Mは「2」であり、2枚分のシートWの裏面に印刷した後、当該2枚分のシートWの表面に印刷する動作を、繰り返す有限ループ系である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図4B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図4Aに示すように、2枚目シートW2の表面に3頁目画像を印刷した後でなければ、3枚目シートW3の裏面に6頁目画像を印刷しない。従って、2413方式は、上記不完全なシートが生成される可能性は21方式よりも高いが、印刷処理速度は21印刷よりも速い。
【0049】
「241635方式」は、裏面印刷枚数Nは「2」であり、表面印刷枚数Mは「1」であり、2枚分のシートWの裏面に印刷した後、そのうち1枚のシートWの表面に印刷した時点で、新たな未印刷シートの裏面に印刷する無限ループ系である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図5B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図5Aに示すように、1枚目シートW1の表面に1頁目画像を印刷した後、2枚目シートW2の表面に3頁目画像を印刷する前に、3枚目シートW3の裏面に6頁目画像を印刷する。従って、241635方式は、上記不完全なシートWが生成される可能性は2413方式よりも高いが、印刷処理速度は2413印刷よりも速い。
【0050】
4.印刷制御処理
次に印刷システム1で実行される印刷制御処理について端末装置10側の処理とプリンタ30側の処理とに分けて説明する。
【0051】
4−1.端末装置側の処理
ユーザが、操作部15より、文書や画像などを扱うアプリケーションソフトを起動させて印刷要求を入力すると、CPU11は、ハードディスクドライブ14から上記プリンタドライバを読み出して、シートサイズの指定、画質の指定、モノクロ/カラーの指定、片面印刷/両面印刷の指定、両面印刷の方式の指定などの印刷条件を設定するための印刷設定画面(図示せず)を表示部16に表示させる。
【0052】
ユーザが、上記印刷設定画面にて印刷条件を設定し、所定の確定操作を行うと、端末装置10は、印刷データ(例えばPDLデータ)、及び、印刷設定画面にて設定された各種の印刷設定情報をプリンタ30に送信する。上記印刷設定画面にて両面印刷が指定された場合には、端末装置10は、印刷データに含まれる各頁の画像データを、上記印刷設定画面にて指定された両面印刷の方式に従った頁順でプリンタ30側に送信する。
【0053】
ここで、以下の説明では、次の点を前提にするものとする。但し、この前提を満たさないものでも本発明を適用可能である。
A.両面印刷の方式は、自動両面方式のいずれか1つが選択されたものとする。
B.プリンタ30のRAM33には、受信した印刷データを格納するためのメモリ領域が確保されているが、このメモリ領域には、例えば1頁分の画像データ(例えばビットマップデータ)しか格納できない。従って、プリンタ30は、端末装置10から1頁分の画像データを受信した後、当該1頁分の画像データについてシートWへの印刷処理が終了した後でなければ、次の頁の画像データを受信することができない。
【0054】
C.プリンタ30は、両面印刷中、搬送機構38は回転駆動し続けており、シートWは、ピックアップローラ46,72により供給トレイ41等から供給された後、両面印刷がされ、排出トレイ42に排出されるまでの間、停止せずに搬送される。その理由は次の通りである。両面印刷中において、定着器45による加熱温度を一定に保つには、加熱ローラ45Aおよび対向ローラ45Bを回転し続けるのが好ましい。しかし、プリンタ30は、搬送機構38と定着器45との回転駆動が例えば共通のモータ(図示せず)にて連動しているため、上記加熱ローラ45A等を回転し続けると、搬送機構38も回転駆動し続ける。従って、両面印刷中においてシートWは停止せずに搬送される。
【0055】
4−2.プリンタ側の処理
プリンタ30のCPU31は、端末装置10から上記印刷データ及び印刷設定情報を受信すると、印刷設定情報を解析し、片面印刷と両面印刷のいずれが指定されているかを判断し、片面印刷が指定されていれば未印刷シートへの片面印刷を印刷部37に実行させる。一方、両面印刷が指定されていれば、CPU31は、端末装置10から順次受信する各頁の画像データを、上記印刷条件に従ってビットマップデータに展開する処理を開始すると共に、次に説明する両面印刷処理を実行する。
【0056】
図6は両面印刷処理のフローチャートを示す図である。プリンタ30は、この両面印刷処理を実行することにより、表面印刷エラーが発生した場合でも、適切な対応することができる。以下、具体的に説明する。
【0057】
CPU31は、今回実行すべき印刷が、シートWの裏面への印刷(以下、裏面印刷という)であるかどうかを判断する(S1)。具体的には、今回の印刷処理対象の画像データ(換言すれば上記メモリ領域に展開されている画像データ)が、シートWの裏面に印刷すべき画像データ(本実施形態の場合は偶数頁の画像データ)であるかどうかを判断する。
【0058】
4−2−1.裏面印刷の場合
今回実行すべき印刷が裏面印刷であれば(S1:YES)、その裏面に印刷すべき画像データの展開処理が完了しているかどうかを判断し、完了していなければ、完了するまで待機する(S3:NO)。一方、当該展開処理が完了していれば(S3:YES)、ピックアップローラ46,72により1枚の未印刷シートを供給トレイ41から取り出して印刷位置へと搬送し始める(S5)。
【0059】
その後、当該未印刷シートに対して裏面印刷を実行するよう印刷部37を制御し(S7)、そして、印刷していない頁の画像データがあれば(S9:NO)、S1に戻り、全頁分の画像データについて印刷が完了していれば(S9:YES)、本両面印刷処理を終了する。
【0060】
4−2−2.表面印刷の場合
今回実行すべき印刷が表面印刷であれば(S1:NO)、CPU31は、この表面印刷において上記表面印刷エラーが発生するかどうかを判断する(S11,S15,S19)。このときCPU31は「判断部」として機能する。本実施形態では、次述するように表面印刷エラーとして、反転エラー、シートサイズエラー、展開遅延エラーについて発生したかどうかを判断する。以下、各エラーごとに説明する。
【0061】
(1)反転エラー
CPU31は、反転エラーが発生するかどうかを判断する(S11)。この反転エラーとは、裏面印刷後のシートWが、反転搬送パスP2に正常に搬送されない場合をいう。例えば裏面印刷後のシートWが反転搬送パスP2等において詰まったり、裏面印刷後、排出ローラ60まで搬送されたシートWがユーザにより無理やり抜き取られたりしたときに、反転エラーとなる。
【0062】
CPU31は、センサ39Aからの検出信号の受信時間の長短や、受信の有無に基づき反転エラーが発生するかどうかを判断し、反転エラーが発生すると判断した場合には(S11:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、反転エラー処理を実行する(S13)。このように反転エラーの発生時に印刷部等の動作が停止するので、ユーザは、その停止中に反転エラーの解消作業を行うことができる。
【0063】
図7は反転エラー処理のフローチャートを示す図である。CPU31は、まず反転エラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S101)。これにより、ユーザは反転エラーが発生したことを知ることができ、当該反転エラーの解除作業を行う。
【0064】
そして、CPU31は、例えばセンサ39Aからの検出信号や、ユーザによる操作部35での入力指示に基づき反転エラーが解除されたと判断した場合には(S103:YES)、手差しトレイ70にシートWをセットすることを指示するためのメッセージ等を表示部36に表示させる(S105)。
【0065】
なお、ここでセットされるシートWは、新たな未印刷シートでもよいし、反転エラーが発生した裏面印刷済シートでもよい(これらのシートは「配置部から供給されたシート」の一例である)。当該裏面印刷済シートであれば、表面を上にして手差しトレイ70にセットする旨も表示部36に表示させる。また、シートWを、手差しトレイではなく、供給トレイ41にセットする構成でもよい。この場合、セットすべきシートWが裏面印刷済シートであれば、表面を下にして供給トレイ41にセットする旨を表示部36も表示させる。
【0066】
そして、手差しトレイ70にシートWがセットされたことを、例えば図示しないシート検知センサからの検出信号に基づき確認した場合には(S107:YES)、そのセットされたシートWを1枚、印刷搬送パスP1へと搬送し始めるよう搬送機構38を制御する。そして、当該シートWに対して表面印刷を実行する(S109)。これにより、反転エラーの発生により印刷不可であった表面画像を、上記未印刷シートまたは裏面印刷済シートに印刷することができる。しかも、反転搬送パスP2を利用しないから、反転エラーの再発を回避することができる。
【0067】
次にCPU31は、これ以降も自動両面方式を継続するか、それともマニュアル両面方式に切り替えるかをユーザに問い合わせるための選択画面(図示せず)を表示部36に表示させる(S111)。そして、ユーザが操作部35にて自動両面方式の継続を選択した場合には(S113:YES)、図6のS9に進み、全頁の印刷が完了していなければ(S9:NO)、次の頁の画像データについても自動両面方式で両面印刷を続行する。なお、なお、このとき、操作部35および表示部36は「受付部」として機能する。
【0068】
一方、ユーザがマニュアル両面方式を選択した場合には(S113:NO)、未印刷頁の画像データを、マニュアル両面方式に従った順序で改めて送信するよう、端末装置10に再送要求する(S115)。これにより、プリンタ30において、マニュアル両面方式に従った順序に従うよう画像データを並び替える処理が不要になる。尚、再送される前の画像データは全てプリンタ側でキャンセルをする(破棄する)。そして、図6のS25に進み、未印刷頁の画像データに基づきマニュアル両面方式を実行し、本両面印刷処理を終了する。
【0069】
なお、このマニュアル両面方式において、CPU31は、まず未印刷シートを手差しトレイ70にセットする指示を表示部36に表示させる。次に、裏面印刷後に、その裏面印刷済シートを、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする指示を表示部36に表示させる。なお、裏面印刷済シートを、その未印刷面を下にして供給トレイ41にセットする指示を表示部36に表示させてもよい。
【0070】
次に、図3Bに示すように、21方式の両面印刷において、例えば1枚目のシートW1に対して2頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、反転エラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。反転エラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、2頁目画像印刷済のシートW1を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW1の未印刷面に1頁面画像が印刷される。
【0071】
その後、ユーザがマニュアル両面方式を選択した場合には、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、4頁、6頁、3頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、2枚のシートWを手差しトレイ70にセットすれば、この2枚のシートWは、その裏面に、4頁目画像、6頁目画像が印刷されて排出トレイ42に排出される。
【0072】
次に、ユーザは、排出された2枚のシートWを、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、4頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、排出トレイ42上に順次排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0073】
(2)シートサイズエラー
CPU31は、反転エラーが発生しないと判断した場合には(S11:NO)、次に、シートサイズエラーが発生するかどうかを判断する(S15)。このシートサイズエラーとは、供給トレイ41や手差しトレイ70から供給されるシートWのサイズが、反転搬送パスP2にて反転不能なサイズである場合をいう。例えば、シートWのサイズが、隣り合う反転搬送ローラ62同士の距離よりも短いときに、シートサイズエラーとなる。
【0074】
CPU31は、例えば、センサ39Aからの検出信号の受信時間に基づき、シートWのサイズを測定し、その測定結果に基づきシートサイズエラーが発生するかどうかを判断する。シートサイズエラーが発生すると判断した場合には(S15:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、シートサイズエラー処理を実行する(S19)。このようにシートサイズエラーが発生すると判断した場合にも印刷部等の動作が停止するので、そのシートサイズエラーに起因して実際に反転搬送パスP2にてジャムが発生することを未然に防止することができる。
【0075】
図8はシートサイズエラー処理のフローチャートを示す図である。なお、図7の反転エラー処理とほぼ同じ処理については同一符号を付して説明を省略する。CPU31は、まずシートサイズエラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S201)。これにより、ユーザはシートサイズエラーが発生したことを知ることができ、当該シートサイズエラーの解除作業を行う。例えば、ユーザは、適正なサイズのシートWを供給トレイ41等にセットし直す。
【0076】
そして、CPU31は、例えばセンサ39Aからの検出信号に基づき、シートサイズエラーが解除されたと判断した場合には(S203:YES)、上述したS105,S107,S109の処理を実行する。次に、マニュアル両面方式に切り替えることを表示部36に表示させる(S204)。なお、端末装置10の表示部16に表示させてもよい。そして、端末装置10に再送要求し(S115)、図6のS25に進み、未印刷頁の画像データに基づきマニュアル両面方式を実行し、本両面印刷処理を終了する。
【0077】
次に、図5Bに示すように、241635方式の両面印刷において、例えば3枚目のシートW3に対して6頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、シートサイズエラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。シートサイズエラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、4頁目画像印刷済のシートW2を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW2の未印刷面に3頁面画像が印刷される。
【0078】
その後、マニュアル両面方式に切り替わり、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、6頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、6頁目画像印刷済シートW3を手差しトレイ70にセットすれば、シートW3は、6頁目画像が印刷されずに空送りされ排出トレイ42に排出される。
【0079】
次に、ユーザは、排出されたシートW3を、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷されて排出トレイ42上に排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0080】
(3)展開遅延エラー
CPU31は、反転エラー、シートサイズエラーが発生しないと判断した場合には(S11:NO且つS15:NO)、次に、展開遅延エラーが発生するかどうかを判断する(S19)。この展開遅延エラーとは、裏面印刷済シートが、反転搬送パスP2を介して印刷位置に搬送されてくるまでに、表面画像データの展開処理が完了しない場合をいう。例えば、通信回線20の混雑により端末装置10からの印刷データの送信が遅延したり、印刷データのデータ量が重く展開処理に時間がかかったりしたときに、展開遅延エラーとなる。
【0081】
前述したように本実施形態のプリンタ30は、メモリ領域が小さいため、裏面画像データについてシートWへの印刷処理が終了した後でなければ、次の表面画像データの展開処理が開始できない(上記前提B)。しかも、プリンタ30は、両面印刷中において、シートWを、ピックアップローラ46,72により供給トレイ41等から供給後、停止せずに搬送し続ける(上記前提C)。従って、裏面印刷済シートは、表面画像データの展開処理が完了しているかどうかにかかわらず、印刷位置まで搬送される。従って、特に展開遅延エラーが生じるおそれがある。
【0082】
なお、供給トレイ41や手差しトレイ70から供給されたシートWへの最初の印刷(上記裏面印刷、片面印刷、マニュアル両面方式の印刷など)では、展開遅延エラーは生じない。その理由は次の通りである。ピックアップローラ46,72は、両面印刷中、搬送機構38の回転駆動に伴って回転し続けているが、通常は、供給トレイ41等内のシートWが離間している。そして、ピックアップローラ46,72は、画像データの展開処理が完了した時点で上記シートWに接触する位置に移動し、1枚のシートWを取り出した後、再びシートWから離間した位置に戻る。このため、供給トレイ41等から供給されたシートWへの最初の印刷では、展開遅延エラーは生じない。
【0083】
CPU31は、例えば、センサ39Aからの検出信号に基づき、裏面印刷済シートがレジストレーションローラ47,47付近に達したことを認識した時点で、展開処理の進捗度合いを確認する。そして、この進捗度合いに基づき展開遅延エラーが発生するかどうかを判断する。
【0084】
展開遅延エラーが発生すると判断した場合には(S19:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、展開遅延エラー処理を実行する(S21)。このように展開遅延エラーの発生時にも印刷部等の動作が停止するので、その後、両面印刷処理等が無駄に続行されることを抑制することができる。
【0085】
図9は展開遅延エラー処理のフローチャートを示す図である。なお、図7の反転エラー処理、及び、図8のシートサイズエラー処理とほぼ同じ処理については同一符号を付して説明を省略する。CPU31は、まず展開遅延エラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S301)。これにより、ユーザは展開遅延エラーが発生したことを知ることができる。
【0086】
そして、CPU31は、例えば現時点での展開処理の進捗度合いに基づき展開遅延エラーが解除されたと判断した場合には(S303:YES)、上述したS105,S107,S109の処理を実行する。
【0087】
次にCPU31は、これまでの展開遅延エラーの発生回数(本発明でいう肯定回数の一例)をカウントしており、この発生回数が規定回数(複数回)に達したかどうかを判断する(S305)。規定回数に達していなければ(S305:NO)、図6のS9に進み、全頁の印刷が完了していなければ(S9:NO)、次の頁の画像データについても自動両面方式で両面印刷を続行する。このときCPU31は「カウント部」として機能する。
【0088】
一方、発生回数が規定回数に達していれば(S305:YES)、マニュアル両面方式に切り替えることを表示部36に表示させ(S204)、S115に進む。
【0089】
次に、図4Bに示すように、2413方式の両面印刷において、例えば2枚目のシートW2に対して4頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、展開遅延エラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。展開遅延エラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、2頁目画像印刷済のシートW1を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW1の未印刷面に1頁面画像が印刷される。
【0090】
その後、マニュアル両面方式を実行する場合には、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、4頁、6頁、3頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、4頁目画像印刷済シートW2と未印刷シートW3を手差しトレイ70にセットすれば、シートW2は、4頁目画像が印刷されずに空送りされ、シートW3は、その裏面に6頁目画像が印刷されて、排出トレイ42に排出される。
【0091】
次に、ユーザは、排出された2枚のシートWを、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、4頁目画像印刷済シートの表面に3頁目画像が印刷され、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、排出トレイ42上に順次排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0092】
5.本実施形態の効果
本実施形態によれば、表面印刷エラーが発生する場合には、供給トレイ41等から供給されたシート(例えば、表面印刷エラーが発生した後、改めてためて供給トレイ41等に再セットされた片面印刷済シート、或いは、新たな未印刷シート)に、表面印刷を実行する。これにより、表面印刷エラーが発生した場合であっても、上記表面に印刷すべき画像を、シートWに印刷することができる。
【0093】
また、表面印刷エラーが発生した場合、反転搬送パスP2を利用する両面印刷方式から反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式に切り替えることができる。このため、反転搬送パスP2を利用することに起因する表面印刷エラーの再発を回避することができる。しかも、ユーザの意思によって切り替えることも可能である。
【0094】
また、展開遅延エラーの発生頻度が低い場合には、自動両面印刷方式を続行し、発生頻度が高い場合に限り、マニュアル両面方式に切り替えることができる。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
(1)上記実施形態では、画像形成装置として、LED方式のプリンタ30を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。ボリゴンミラー方式など、他の電子写真方式の画像形成装置であってもよく、更に、インクジェット方式の画像形成装置であってもよい。4色以外のカラープリンタでも、単色(例えばモノクロ)プリンタであってもよい。
【0096】
(2)上記実施形態では、他面印刷エラーとして、反転エラー、展開遅延エラー、シートサイズエラーを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、プロセスカートリッジ51のトナー収容部55内のトナーが不足するトナーエラーなどであってもよい。要するに、片面印刷済シートの他面への印刷ができないエラーであればよい。
【0097】
(3)上記実施形態では、ユーザが印刷要求や印刷条件の設定等を端末装置10側で行う例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えばプリンタ30のハードディスクドライブ34や、外付けメモリに印刷データを記憶しておき、ユーザが、操作部35にて上記印刷データに基づく両面印刷の実行要求等をすることにより、両面印刷処理を実行してもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では、展開遅延エラーについて、そのエラー発生回数が規定回数に達した場合に限り、マニュアル両面方式への切り替えを行ったが、本発明はこれに限られず、反転エラーやシートサイズエラーなど、他のエラーについて行ってもよい。
【0099】
(5)上記実施形態では、表面印刷エラーが発生した場合にマニュアル両面方式に切り替えたが、本発明はこれに限られない。例えば片面印刷に切り換えてもよい。要するに、反転搬送パスP2を利用しない印刷であれば、表面印刷エラーの再発を回避することができる。
【符号の説明】
【0100】
10...端末装置
30...プリンタ
31...CPU
35...操作部
36...表示部
37...印刷部
41...供給トレイ
43...搬送機構
55...トナー収容部
70...手差しトレイ
W...シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転機構を利用して両面印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反転機構(スイッチバック部)を利用して両面印刷を行う印刷装置がある(特許文献1)。具体的には、この印刷装置は、未印刷シートを所定の印刷位置に搬送し、その片面に印刷部により画像を印刷した後、その片面印刷済シートを上記反転機構により反転させて印刷位置に再び搬送し、その他面に印刷部により画像を印刷する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−167526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記印刷装置では、反転機構を利用して両面印刷を行う場合において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない、他面印刷エラーが発生することがある。しかし、従来は、このような他面印刷エラーが発生した場合の対応について十分に検討されていなかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、他面印刷エラーが発生した場合に対応することが可能な印刷装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1発明に係る印刷装置は、シートが配置される配置部と、シートに画像を印刷する印刷部と、前記配置部に配置されたシートを前記印刷部の印刷位置に搬送する印刷経路、及び、前記印刷位置を経由したシートを反転させて再び前記印刷位置へと搬送する反転経路を有する搬送機構と、前記反転経路を利用する両面印刷を実行するよう、前記印刷部及び前記搬送機構を制御する制御部と、前記反転経路を利用する両面印刷において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない他面印刷エラーが発生するかどうかを判断する判断部と、を備え、前記制御部は、前記判断部が否定判断した場合には、前記片面印刷済シートを前記反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、前記判断部が肯定判断した場合には、前記配置部から供給されたシートを前記印刷経路にて搬送させて、前記他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する。
【0007】
この発明によれば、他面印刷エラーが発生する場合(判断部が肯定判断した場合)には、配置部から供給されたシート(例えば、他面印刷エラーが発生した後、配置部に改めて配置された片面印刷済シート、或いは、当該片面印刷済シートとは異なるシート)に、他面に印刷すべき画像を印刷する。これにより、他面印刷エラーが発生した場合であっても、上記他面に印刷すべき画像を、シートに印刷することができる。
【0008】
第2発明は、第1発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記判断部が肯定判断した場合に、前記印刷部及び前記搬送機構の動作を停止させる。
【0009】
この発明によれば、他面印刷エラーが発生した場合、印刷部及び搬送機構の動作が停止するので、ユーザは、その停止中に他面印刷エラーの解消作業を行うことができる。
【0010】
第3発明は、第1または第2の発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する。
【0011】
この発明によれば、他面印刷エラーの発生後、反転経路を利用しないから、再び他面印刷エラーが発生することを抑制することができる。
【0012】
第4発明は、第3発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用せずに両面印刷を実行するマニュアル両面印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する。
【0013】
この発明によれば、他面印刷エラーを回避しつつ、両面印刷済シートを完成することができる。
【0014】
第5発明は、第3または第4の発明の印刷装置であって、前記判断部が肯定判断した肯定回数をカウントするカウント部を備え、前記制御部は、前記肯定回数が規定回数に達した場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える。
【0015】
この発明によれば、他面印刷エラーの発生頻度が低い場合には、反転経路を利用する両面印刷を続行し、発生頻度が高い場合に限り、反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0016】
第6発明は、第5発明の印刷装置であって、前記他面印刷エラーは、前記片面印刷済シートが前記印刷位置に搬送されるまでに、前記他面に印刷すべき画像のデータ展開処理が完了していない展開遅延エラーである。
【0017】
この発明によれば、例えばデータ量が重く展開処理に時間を要する画像データがある程度続く場合に限り、反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0018】
第7発明は、第3から第6のいずれか一つの発明の印刷装置であって、ユーザの切替指示を受け付ける受付部を備え、前記制御部は、前記受付部が前記切替指示を受け付けた場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える。
【0019】
この発明によれば、ユーザの意思によって反転経路を利用する両面印刷から反転経路を利用しない印刷に切り替えることができる。
【0020】
第8発明は、第3から第7のいずれか一つの発明の印刷装置であって、外部機器から印刷データを受信する受信部を備え、前記印刷部は前記受信部で受信した印刷データに基づく画像を印刷し、前記受信部は、前記反転経路を利用しない印刷に切り替える際には、当該反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従った印刷データを新たに受信し、前記印刷部は、その新たに受信した印刷データに基づき印刷を行う。
【0021】
この発明によれば、印刷装置において、反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従うように印刷データの並び順を変更する処理が不要になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、他面印刷エラーが発生した場合に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの電気的構成を示すブロック図
【図2】プリンタの内部構成を示した概略図
【図3A】21方式を説明するための模式図
【図3B】21方式の印刷順序を説明するための図
【図4A】2413方式を説明するための模式図
【図4B】2413方式の印刷順序を説明するための図
【図5A】241635方式を説明するための模式図
【図5B】241635方式の印刷順序を説明するための図
【図6】両面印刷処理のフローチャートを示す図
【図7】反転エラー処理のフローチャートを示す図
【図8】シートサイズエラー処理のフローチャートを示す図
【図9】展開遅延エラー処理のフローチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
1.印刷システムの電気的構成
図1は、本実施形態の印刷システム1の電気的構成を示すブロック図である。印刷システム1は、端末装置10(例えばパーソナルコンピュータ 外部機器の一例)とプリンタ30(印刷装置の一例)とを備える。
【0025】
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、ハードディスクドライブ14、キーボードやポインティングデバイス等を有する操作部15、液晶ディスプレイ等を有する表示部16、通信回線20に接続されるネットワークインターフェイス17等を備えている。ハードディスクドライブ14には、OSや、印刷用のデータを作成可能なアプリケーションソフト、プリンタ30を制御するためのプリンタドライバなどの各種プログラムが記憶されている。
【0026】
プリンタ30は、CPU31(判断部、制御部、カウント部の一例)、ROM32、RAM33、ハードディスクドライブ34、操作部35、表示部36、印刷部37、搬送機構38、シート検知部39、ネットワークインターフェイス21等を備えている。ROM32には、プリンタ30の動作を制御するための各種プログラムや、後述する両面印刷処理を実行するための両面印刷制御プログラム等が記録されており、CPU31は、ROM32から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM33に記憶させながら、プリンタ30の動作を制御する。
【0027】
操作部35は、複数のボタンを備え、ユーザによって印刷開始の指示などの各種の入力操作が可能である。表示部36は、液晶ディスプレイやランプ等を備えており、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。印刷部37は、画像データに基づく画像をシートW(用紙、OHPシートなど)に印刷する。ネットワークインターフェイス21は、通信回線20を介して外部の端末装置10等に接続されており、相互にデータ通信が可能となっている。なお、搬送機構38およびシート検知部39については後述する。
【0028】
2.プリンタの内部構成
図2はプリンタ30の内部構成を示した概略図である。以下の説明では、各構成要素について、色毎に区別する場合は各部の符号にY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),B(ブラック)の添え字を付し、区別しない場合は添え字を省略する。
【0029】
プリンタ30は、供給トレイ41(配置部の一例)、上述の印刷部37、搬送機構38、及び、排出トレイ42等を備えている。供給トレイ41は、プリンタ30の底部に設けられており、複数枚のシートWが収納可能とされている。
【0030】
印刷部37は、プロセス部44、および、定着器45等を有し、搬送機構38は、ピックアップローラ46、レジストレーションローラ47,47、シート搬送用のベルト48、及び、反転機構49等を有する。ピックアップローラ46は、供給トレイ41に収納されたシートWを1枚ずつ取り出してレジストレーションローラ47,47へと搬送する。レジストレーションローラ47,47は、搬送されてきたシートWの姿勢を整えて、所定のタイミングでベルト48上に送り出す。
【0031】
プロセス部44は、複数色(例えば4色)のトナー各々に対応する複数(例えば4個)のプロセスカートリッジ51Y,51M,51C,51B、及び、複数(例えば4個)の露光装置52を有する。各プロセスカートリッジ51は、感光体53、帯電器54、及び、トナー収容部55等を有する。なお、プロセス部44の直下であるベルト48上の位置が、本発明でいう「印刷位置」の一例である。
【0032】
帯電器54は、いわゆるスコロトロン型の帯電器であり、感光体53の表面を一様に帯電させる。露光装置52は、例えば、感光体53の回転軸方向に沿って一列状に並んだ複数の発光素子(例えばLED)を有し、これらの複数の発光素子を、各色ごとの画像データに基づき発光制御することにより、感光体53の表面に静電潜像を形成する。
【0033】
トナー収容部55は、各色のトナー(本実施形態では、例えば正帯電性の非磁性1成分トナー)を収納するとともに、現像ローラ56を有する。現像ローラ56が、トナーを「+」(正極性)に帯電させ、均一な薄層として感光体53上へ供給することにより上記静電潜像を現像してトナー像(モノクロ像、またはカラー像)を形成する。
【0034】
各転写ローラ57は、上記各感光体53との間でベルト48を挟む位置に配置されている。各転写ローラ57は、感光体53との間にトナーの帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加されて、感光体53上に形成された上記トナー像をシートWに転写する。
【0035】
その後、当該シートWは、搬送機構38により定着器45へと搬送され、この定着器45の加熱ローラ45Aと対向ローラ45Bとの間にてトナー像が熱定着され、排出トレイ42に向けて搬送される。なお、供給トレイ41からのシートWをベルト48上の印刷位置へ導くための経路(図2の実線矢印部分 「印刷経路」の一例)を、印刷搬送パスP1という。
【0036】
反転機構49は、排出ローラ60、反転搬送パスP2(図2の点線矢印部分 「反転経路」の一例)、フラッパ61、複数の反転搬送ローラ62等を有する。反転搬送パスP2を利用する両面印刷の方式(自動両面方式)を実行する場合には、シートWは、プロセス部44により裏面(供給トレイ41に収納されていたときの下面 片面の一例)に画像が印刷され、その後、一旦排出ローラ60まで搬送される。
【0037】
そして、当該排出ローラ60の逆回転により、シートWは、フラッパ61、反転搬送パスP2、複数の反転搬送ローラ62、レジストレーションローラ47を介して搬送され、表裏が反転された状態でベルト48上に送り出される。そして、そのシートWはプロセス部44により表面(供給トレイ41に収納されていたときの上面 他面の一例)に画像が印刷された後に排出トレイ42上へと排出される。
【0038】
シート検知部39は、複数のセンサ39Aを有し、各センサ39Aは、搬送機構38内の各搬送位置におけるシートWの有無に応じた検知信号を出力する。CPU31は、各センサ39Aから、シートW有りを示す検知信号を規定時間以上継続して受けた場合、あるいは、規定時間以上継続して受けない場合に、各搬送位置でジャム(シート詰まり)が発生したと判断する。本実施形態では、図2に示すように、印刷搬送パスP1及び反転搬送パスP2のそれぞれに、センサ39Aが1又は複数設けられているため、CPU31は、印刷搬送パスP1、反転搬送パスP2のどちらでジャムが発生したかも判断することができる。
【0039】
また、プリンタ30の前面には手差しトレイ70(配置部の一例)が開閉可能に設けられている。この手差しトレイ70を、図2に示すように開くと、レジストレーションローラ47,47の配置位置まで連通する挿入口71が露出する。手差しトレイ70にシートWをセットすると、そのセットされたシートWは、ピックアップローラ72によって1枚ずつ挿入口71内に搬送され、レジストレーションローラ47,47によって印刷搬送パスP1上に搬送される。
【0040】
3.両面印刷処理の方式
図3Aから図5Aは両面印刷処理の各方式を説明するための模式図であり、図3Bから図5Bは各方式の印刷順序を説明するための図である。各図には、数字を丸で囲んだマークがシートWに付されている。このマークは各頁画像を意味し、数字は頁番号を意味し、シートWに対するマークの位置は、各頁画像が形成されたシートWの面(表面または裏面)を意味する。また、各図B中の白抜き矢印及び符号は、印刷順序を示す。
【0041】
プリンタ30は、未印刷シート(両面とも印刷されていないシートW)、N枚(Nは1以上)の裏面に画像を印刷した後に、その裏面印刷済シート(裏面のみ印刷されたシートW 片面印刷済シートの一例)、M枚(MはN以下)の表面に画像を印刷する動作を含む両面印刷を実行可能である。
【0042】
以下、N枚を「裏面印刷枚数N」といい、M枚を「表面印刷枚数M」という。また、プリンタ30は、裏面印刷枚数N及び表面印刷枚数Mのうち少なくとも一方が互いに異なる複数の方式の両面印刷を選択的に実行することができる。これら複数の方式は、反転機構49を利用しない「マニュアル両面方式(非反転方式)」と、反転機構38を利用する「自動両面方式(反転方式)」とに分類される。
【0043】
3−1 マニュアル両面方式
「マニュアル両面方式」は、1または複数枚のシートWを、その裏面に偶数頁の画像のみを印刷して反転搬送パスP2を経由せずに排出トレイ42に排出し、ユーザに、その排出されたシートWを、裏面(印刷済み面)を上にして供給トレイ41に再セットさせ、その後、その再セットされたシートWを、表面に奇数頁の画像のみを印刷して反転搬送パスP2を経由せずに排出トレイ42に排出するものである。
なお、裏面印刷済シートを手差しトレイ70に再セットしてもよい。この場合、裏面印刷済シートを、裏面を下にしてセットする。
【0044】
3−2 自動両面方式
自動両面方式は、無限ループ系か有限ループ系か、及び、上記裏面印刷枚数Nの大小によって分類される。「有限ループ系」とは、裏面印刷枚数NのシートWの裏面に印刷した後、当該裏面印刷枚数NのシートWの表面に印刷する動作(有限ループ)を、繰り返す方式であり、1つの有限ループが終了するごとに裏面印刷済シートが存在しなくなる。
【0045】
一方、「無限ループ系」とは、裏面印刷枚数NのシートWの裏面に印刷した後、当該裏面印刷枚数NのシートWの表面を印刷する途中に、新たな未印刷シートの裏面への印刷を挿入する方式であり、両面印刷動作の最初及び最後を除いて、裏面印刷済シートが途切れなく存在する。従って、無限ループ系は、有限ループ系に比べて、印刷処理速度は速いが、裏面印刷済シートの表面への印刷ができない、表面印刷エラー(他面印刷エラーの一例)により裏面のみに印刷された不完全なシートが生成される可能性は高い。以下、方式の一例を説明する。
【0046】
裏面印刷枚数Nが1枚の方式:21方式(有限ループ系)
裏面印刷枚数Nが2枚の方式:2413方式(有限ループ系)、241635方式(無限ループ系)
裏面印刷枚数Nが3枚の方式:246135方式(有限ループ系)、246183579(無限ループ系)
【0047】
「21方式」は、裏面印刷枚数Nは「1」であり、表面印刷枚数Mは「1」である有限ループ系であり、印刷の開始から終了まで一貫してシートW1枚ごとに裏面の印刷と表面の印刷とを連続で行うもの(両面連続方式)である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図3B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図3Aに示すように、1枚目シートW1の裏面に2頁目画像を印刷した後、当該シートW1の表面に1頁目画像を印刷するまでの間に、2枚目以降のシートWの印刷を行わない。従って、21方式は、上記不完全なシートが生成される可能性は低いが、印刷処理速度が遅い。
【0048】
「2413方式」は、裏面印刷枚数Nは「2」であり、表面印刷枚数Mは「2」であり、2枚分のシートWの裏面に印刷した後、当該2枚分のシートWの表面に印刷する動作を、繰り返す有限ループ系である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図4B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図4Aに示すように、2枚目シートW2の表面に3頁目画像を印刷した後でなければ、3枚目シートW3の裏面に6頁目画像を印刷しない。従って、2413方式は、上記不完全なシートが生成される可能性は21方式よりも高いが、印刷処理速度は21印刷よりも速い。
【0049】
「241635方式」は、裏面印刷枚数Nは「2」であり、表面印刷枚数Mは「1」であり、2枚分のシートWの裏面に印刷した後、そのうち1枚のシートWの表面に印刷した時点で、新たな未印刷シートの裏面に印刷する無限ループ系である。例えば6頁分の画像を3枚分のシートWに両面印刷する場合、プリンタ30は、次の順序で印刷を行う(図5B参照)。
2頁目画像(1枚目シートW1の裏面)
4頁目画像(2枚目シートW2の裏面)
1頁目画像(1枚目シートW1の表面)
6頁目画像(3枚目シートW3の裏面)
3頁目画像(2枚目シートW2の表面)
5頁目画像(3枚目シートW3の表面)
図5Aに示すように、1枚目シートW1の表面に1頁目画像を印刷した後、2枚目シートW2の表面に3頁目画像を印刷する前に、3枚目シートW3の裏面に6頁目画像を印刷する。従って、241635方式は、上記不完全なシートWが生成される可能性は2413方式よりも高いが、印刷処理速度は2413印刷よりも速い。
【0050】
4.印刷制御処理
次に印刷システム1で実行される印刷制御処理について端末装置10側の処理とプリンタ30側の処理とに分けて説明する。
【0051】
4−1.端末装置側の処理
ユーザが、操作部15より、文書や画像などを扱うアプリケーションソフトを起動させて印刷要求を入力すると、CPU11は、ハードディスクドライブ14から上記プリンタドライバを読み出して、シートサイズの指定、画質の指定、モノクロ/カラーの指定、片面印刷/両面印刷の指定、両面印刷の方式の指定などの印刷条件を設定するための印刷設定画面(図示せず)を表示部16に表示させる。
【0052】
ユーザが、上記印刷設定画面にて印刷条件を設定し、所定の確定操作を行うと、端末装置10は、印刷データ(例えばPDLデータ)、及び、印刷設定画面にて設定された各種の印刷設定情報をプリンタ30に送信する。上記印刷設定画面にて両面印刷が指定された場合には、端末装置10は、印刷データに含まれる各頁の画像データを、上記印刷設定画面にて指定された両面印刷の方式に従った頁順でプリンタ30側に送信する。
【0053】
ここで、以下の説明では、次の点を前提にするものとする。但し、この前提を満たさないものでも本発明を適用可能である。
A.両面印刷の方式は、自動両面方式のいずれか1つが選択されたものとする。
B.プリンタ30のRAM33には、受信した印刷データを格納するためのメモリ領域が確保されているが、このメモリ領域には、例えば1頁分の画像データ(例えばビットマップデータ)しか格納できない。従って、プリンタ30は、端末装置10から1頁分の画像データを受信した後、当該1頁分の画像データについてシートWへの印刷処理が終了した後でなければ、次の頁の画像データを受信することができない。
【0054】
C.プリンタ30は、両面印刷中、搬送機構38は回転駆動し続けており、シートWは、ピックアップローラ46,72により供給トレイ41等から供給された後、両面印刷がされ、排出トレイ42に排出されるまでの間、停止せずに搬送される。その理由は次の通りである。両面印刷中において、定着器45による加熱温度を一定に保つには、加熱ローラ45Aおよび対向ローラ45Bを回転し続けるのが好ましい。しかし、プリンタ30は、搬送機構38と定着器45との回転駆動が例えば共通のモータ(図示せず)にて連動しているため、上記加熱ローラ45A等を回転し続けると、搬送機構38も回転駆動し続ける。従って、両面印刷中においてシートWは停止せずに搬送される。
【0055】
4−2.プリンタ側の処理
プリンタ30のCPU31は、端末装置10から上記印刷データ及び印刷設定情報を受信すると、印刷設定情報を解析し、片面印刷と両面印刷のいずれが指定されているかを判断し、片面印刷が指定されていれば未印刷シートへの片面印刷を印刷部37に実行させる。一方、両面印刷が指定されていれば、CPU31は、端末装置10から順次受信する各頁の画像データを、上記印刷条件に従ってビットマップデータに展開する処理を開始すると共に、次に説明する両面印刷処理を実行する。
【0056】
図6は両面印刷処理のフローチャートを示す図である。プリンタ30は、この両面印刷処理を実行することにより、表面印刷エラーが発生した場合でも、適切な対応することができる。以下、具体的に説明する。
【0057】
CPU31は、今回実行すべき印刷が、シートWの裏面への印刷(以下、裏面印刷という)であるかどうかを判断する(S1)。具体的には、今回の印刷処理対象の画像データ(換言すれば上記メモリ領域に展開されている画像データ)が、シートWの裏面に印刷すべき画像データ(本実施形態の場合は偶数頁の画像データ)であるかどうかを判断する。
【0058】
4−2−1.裏面印刷の場合
今回実行すべき印刷が裏面印刷であれば(S1:YES)、その裏面に印刷すべき画像データの展開処理が完了しているかどうかを判断し、完了していなければ、完了するまで待機する(S3:NO)。一方、当該展開処理が完了していれば(S3:YES)、ピックアップローラ46,72により1枚の未印刷シートを供給トレイ41から取り出して印刷位置へと搬送し始める(S5)。
【0059】
その後、当該未印刷シートに対して裏面印刷を実行するよう印刷部37を制御し(S7)、そして、印刷していない頁の画像データがあれば(S9:NO)、S1に戻り、全頁分の画像データについて印刷が完了していれば(S9:YES)、本両面印刷処理を終了する。
【0060】
4−2−2.表面印刷の場合
今回実行すべき印刷が表面印刷であれば(S1:NO)、CPU31は、この表面印刷において上記表面印刷エラーが発生するかどうかを判断する(S11,S15,S19)。このときCPU31は「判断部」として機能する。本実施形態では、次述するように表面印刷エラーとして、反転エラー、シートサイズエラー、展開遅延エラーについて発生したかどうかを判断する。以下、各エラーごとに説明する。
【0061】
(1)反転エラー
CPU31は、反転エラーが発生するかどうかを判断する(S11)。この反転エラーとは、裏面印刷後のシートWが、反転搬送パスP2に正常に搬送されない場合をいう。例えば裏面印刷後のシートWが反転搬送パスP2等において詰まったり、裏面印刷後、排出ローラ60まで搬送されたシートWがユーザにより無理やり抜き取られたりしたときに、反転エラーとなる。
【0062】
CPU31は、センサ39Aからの検出信号の受信時間の長短や、受信の有無に基づき反転エラーが発生するかどうかを判断し、反転エラーが発生すると判断した場合には(S11:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、反転エラー処理を実行する(S13)。このように反転エラーの発生時に印刷部等の動作が停止するので、ユーザは、その停止中に反転エラーの解消作業を行うことができる。
【0063】
図7は反転エラー処理のフローチャートを示す図である。CPU31は、まず反転エラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S101)。これにより、ユーザは反転エラーが発生したことを知ることができ、当該反転エラーの解除作業を行う。
【0064】
そして、CPU31は、例えばセンサ39Aからの検出信号や、ユーザによる操作部35での入力指示に基づき反転エラーが解除されたと判断した場合には(S103:YES)、手差しトレイ70にシートWをセットすることを指示するためのメッセージ等を表示部36に表示させる(S105)。
【0065】
なお、ここでセットされるシートWは、新たな未印刷シートでもよいし、反転エラーが発生した裏面印刷済シートでもよい(これらのシートは「配置部から供給されたシート」の一例である)。当該裏面印刷済シートであれば、表面を上にして手差しトレイ70にセットする旨も表示部36に表示させる。また、シートWを、手差しトレイではなく、供給トレイ41にセットする構成でもよい。この場合、セットすべきシートWが裏面印刷済シートであれば、表面を下にして供給トレイ41にセットする旨を表示部36も表示させる。
【0066】
そして、手差しトレイ70にシートWがセットされたことを、例えば図示しないシート検知センサからの検出信号に基づき確認した場合には(S107:YES)、そのセットされたシートWを1枚、印刷搬送パスP1へと搬送し始めるよう搬送機構38を制御する。そして、当該シートWに対して表面印刷を実行する(S109)。これにより、反転エラーの発生により印刷不可であった表面画像を、上記未印刷シートまたは裏面印刷済シートに印刷することができる。しかも、反転搬送パスP2を利用しないから、反転エラーの再発を回避することができる。
【0067】
次にCPU31は、これ以降も自動両面方式を継続するか、それともマニュアル両面方式に切り替えるかをユーザに問い合わせるための選択画面(図示せず)を表示部36に表示させる(S111)。そして、ユーザが操作部35にて自動両面方式の継続を選択した場合には(S113:YES)、図6のS9に進み、全頁の印刷が完了していなければ(S9:NO)、次の頁の画像データについても自動両面方式で両面印刷を続行する。なお、なお、このとき、操作部35および表示部36は「受付部」として機能する。
【0068】
一方、ユーザがマニュアル両面方式を選択した場合には(S113:NO)、未印刷頁の画像データを、マニュアル両面方式に従った順序で改めて送信するよう、端末装置10に再送要求する(S115)。これにより、プリンタ30において、マニュアル両面方式に従った順序に従うよう画像データを並び替える処理が不要になる。尚、再送される前の画像データは全てプリンタ側でキャンセルをする(破棄する)。そして、図6のS25に進み、未印刷頁の画像データに基づきマニュアル両面方式を実行し、本両面印刷処理を終了する。
【0069】
なお、このマニュアル両面方式において、CPU31は、まず未印刷シートを手差しトレイ70にセットする指示を表示部36に表示させる。次に、裏面印刷後に、その裏面印刷済シートを、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする指示を表示部36に表示させる。なお、裏面印刷済シートを、その未印刷面を下にして供給トレイ41にセットする指示を表示部36に表示させてもよい。
【0070】
次に、図3Bに示すように、21方式の両面印刷において、例えば1枚目のシートW1に対して2頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、反転エラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。反転エラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、2頁目画像印刷済のシートW1を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW1の未印刷面に1頁面画像が印刷される。
【0071】
その後、ユーザがマニュアル両面方式を選択した場合には、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、4頁、6頁、3頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、2枚のシートWを手差しトレイ70にセットすれば、この2枚のシートWは、その裏面に、4頁目画像、6頁目画像が印刷されて排出トレイ42に排出される。
【0072】
次に、ユーザは、排出された2枚のシートWを、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、4頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、排出トレイ42上に順次排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0073】
(2)シートサイズエラー
CPU31は、反転エラーが発生しないと判断した場合には(S11:NO)、次に、シートサイズエラーが発生するかどうかを判断する(S15)。このシートサイズエラーとは、供給トレイ41や手差しトレイ70から供給されるシートWのサイズが、反転搬送パスP2にて反転不能なサイズである場合をいう。例えば、シートWのサイズが、隣り合う反転搬送ローラ62同士の距離よりも短いときに、シートサイズエラーとなる。
【0074】
CPU31は、例えば、センサ39Aからの検出信号の受信時間に基づき、シートWのサイズを測定し、その測定結果に基づきシートサイズエラーが発生するかどうかを判断する。シートサイズエラーが発生すると判断した場合には(S15:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、シートサイズエラー処理を実行する(S19)。このようにシートサイズエラーが発生すると判断した場合にも印刷部等の動作が停止するので、そのシートサイズエラーに起因して実際に反転搬送パスP2にてジャムが発生することを未然に防止することができる。
【0075】
図8はシートサイズエラー処理のフローチャートを示す図である。なお、図7の反転エラー処理とほぼ同じ処理については同一符号を付して説明を省略する。CPU31は、まずシートサイズエラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S201)。これにより、ユーザはシートサイズエラーが発生したことを知ることができ、当該シートサイズエラーの解除作業を行う。例えば、ユーザは、適正なサイズのシートWを供給トレイ41等にセットし直す。
【0076】
そして、CPU31は、例えばセンサ39Aからの検出信号に基づき、シートサイズエラーが解除されたと判断した場合には(S203:YES)、上述したS105,S107,S109の処理を実行する。次に、マニュアル両面方式に切り替えることを表示部36に表示させる(S204)。なお、端末装置10の表示部16に表示させてもよい。そして、端末装置10に再送要求し(S115)、図6のS25に進み、未印刷頁の画像データに基づきマニュアル両面方式を実行し、本両面印刷処理を終了する。
【0077】
次に、図5Bに示すように、241635方式の両面印刷において、例えば3枚目のシートW3に対して6頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、シートサイズエラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。シートサイズエラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、4頁目画像印刷済のシートW2を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW2の未印刷面に3頁面画像が印刷される。
【0078】
その後、マニュアル両面方式に切り替わり、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、6頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、6頁目画像印刷済シートW3を手差しトレイ70にセットすれば、シートW3は、6頁目画像が印刷されずに空送りされ排出トレイ42に排出される。
【0079】
次に、ユーザは、排出されたシートW3を、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷されて排出トレイ42上に排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0080】
(3)展開遅延エラー
CPU31は、反転エラー、シートサイズエラーが発生しないと判断した場合には(S11:NO且つS15:NO)、次に、展開遅延エラーが発生するかどうかを判断する(S19)。この展開遅延エラーとは、裏面印刷済シートが、反転搬送パスP2を介して印刷位置に搬送されてくるまでに、表面画像データの展開処理が完了しない場合をいう。例えば、通信回線20の混雑により端末装置10からの印刷データの送信が遅延したり、印刷データのデータ量が重く展開処理に時間がかかったりしたときに、展開遅延エラーとなる。
【0081】
前述したように本実施形態のプリンタ30は、メモリ領域が小さいため、裏面画像データについてシートWへの印刷処理が終了した後でなければ、次の表面画像データの展開処理が開始できない(上記前提B)。しかも、プリンタ30は、両面印刷中において、シートWを、ピックアップローラ46,72により供給トレイ41等から供給後、停止せずに搬送し続ける(上記前提C)。従って、裏面印刷済シートは、表面画像データの展開処理が完了しているかどうかにかかわらず、印刷位置まで搬送される。従って、特に展開遅延エラーが生じるおそれがある。
【0082】
なお、供給トレイ41や手差しトレイ70から供給されたシートWへの最初の印刷(上記裏面印刷、片面印刷、マニュアル両面方式の印刷など)では、展開遅延エラーは生じない。その理由は次の通りである。ピックアップローラ46,72は、両面印刷中、搬送機構38の回転駆動に伴って回転し続けているが、通常は、供給トレイ41等内のシートWが離間している。そして、ピックアップローラ46,72は、画像データの展開処理が完了した時点で上記シートWに接触する位置に移動し、1枚のシートWを取り出した後、再びシートWから離間した位置に戻る。このため、供給トレイ41等から供給されたシートWへの最初の印刷では、展開遅延エラーは生じない。
【0083】
CPU31は、例えば、センサ39Aからの検出信号に基づき、裏面印刷済シートがレジストレーションローラ47,47付近に達したことを認識した時点で、展開処理の進捗度合いを確認する。そして、この進捗度合いに基づき展開遅延エラーが発生するかどうかを判断する。
【0084】
展開遅延エラーが発生すると判断した場合には(S19:YES)、両面印刷処理および搬送機構38の搬送動作を停止させ、展開遅延エラー処理を実行する(S21)。このように展開遅延エラーの発生時にも印刷部等の動作が停止するので、その後、両面印刷処理等が無駄に続行されることを抑制することができる。
【0085】
図9は展開遅延エラー処理のフローチャートを示す図である。なお、図7の反転エラー処理、及び、図8のシートサイズエラー処理とほぼ同じ処理については同一符号を付して説明を省略する。CPU31は、まず展開遅延エラーが発生したことを示すメッセージや図形等を表示部36に表示させる(S301)。これにより、ユーザは展開遅延エラーが発生したことを知ることができる。
【0086】
そして、CPU31は、例えば現時点での展開処理の進捗度合いに基づき展開遅延エラーが解除されたと判断した場合には(S303:YES)、上述したS105,S107,S109の処理を実行する。
【0087】
次にCPU31は、これまでの展開遅延エラーの発生回数(本発明でいう肯定回数の一例)をカウントしており、この発生回数が規定回数(複数回)に達したかどうかを判断する(S305)。規定回数に達していなければ(S305:NO)、図6のS9に進み、全頁の印刷が完了していなければ(S9:NO)、次の頁の画像データについても自動両面方式で両面印刷を続行する。このときCPU31は「カウント部」として機能する。
【0088】
一方、発生回数が規定回数に達していれば(S305:YES)、マニュアル両面方式に切り替えることを表示部36に表示させ(S204)、S115に進む。
【0089】
次に、図4Bに示すように、2413方式の両面印刷において、例えば2枚目のシートW2に対して4頁目画像を裏面印刷した後(符号Xの時点)、展開遅延エラーが発生した場合を例に挙げて、より具体的に説明する。展開遅延エラーが発生すると、ユーザは表示部36に表示された指示に従って、2頁目画像印刷済のシートW1を、その未印刷面を上にして手差しトレイ70にセットする。これにより、反転搬送パスP2を利用することなく、当該シートW1の未印刷面に1頁面画像が印刷される。
【0090】
その後、マニュアル両面方式を実行する場合には、端末装置10は、プリンタ30からの再送要求に対して、未印刷頁画像データを、4頁、6頁、3頁、5頁の順に送信する。そして、ユーザは、4頁目画像印刷済シートW2と未印刷シートW3を手差しトレイ70にセットすれば、シートW2は、4頁目画像が印刷されずに空送りされ、シートW3は、その裏面に6頁目画像が印刷されて、排出トレイ42に排出される。
【0091】
次に、ユーザは、排出された2枚のシートWを、その未印刷面(表面)を上にして再び手差しトレイ70にセットする。これにより、4頁目画像印刷済シートの表面に3頁目画像が印刷され、6頁目画像印刷済シートの表面に5頁目画像が印刷され、排出トレイ42上に順次排出される。これにより、反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式により、未印刷頁画像について両面印刷を行うことができる。
【0092】
5.本実施形態の効果
本実施形態によれば、表面印刷エラーが発生する場合には、供給トレイ41等から供給されたシート(例えば、表面印刷エラーが発生した後、改めてためて供給トレイ41等に再セットされた片面印刷済シート、或いは、新たな未印刷シート)に、表面印刷を実行する。これにより、表面印刷エラーが発生した場合であっても、上記表面に印刷すべき画像を、シートWに印刷することができる。
【0093】
また、表面印刷エラーが発生した場合、反転搬送パスP2を利用する両面印刷方式から反転搬送パスP2を利用しないマニュアル両面方式に切り替えることができる。このため、反転搬送パスP2を利用することに起因する表面印刷エラーの再発を回避することができる。しかも、ユーザの意思によって切り替えることも可能である。
【0094】
また、展開遅延エラーの発生頻度が低い場合には、自動両面印刷方式を続行し、発生頻度が高い場合に限り、マニュアル両面方式に切り替えることができる。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
(1)上記実施形態では、画像形成装置として、LED方式のプリンタ30を例に挙げたが、本発明はこれに限られない。ボリゴンミラー方式など、他の電子写真方式の画像形成装置であってもよく、更に、インクジェット方式の画像形成装置であってもよい。4色以外のカラープリンタでも、単色(例えばモノクロ)プリンタであってもよい。
【0096】
(2)上記実施形態では、他面印刷エラーとして、反転エラー、展開遅延エラー、シートサイズエラーを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、プロセスカートリッジ51のトナー収容部55内のトナーが不足するトナーエラーなどであってもよい。要するに、片面印刷済シートの他面への印刷ができないエラーであればよい。
【0097】
(3)上記実施形態では、ユーザが印刷要求や印刷条件の設定等を端末装置10側で行う例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えばプリンタ30のハードディスクドライブ34や、外付けメモリに印刷データを記憶しておき、ユーザが、操作部35にて上記印刷データに基づく両面印刷の実行要求等をすることにより、両面印刷処理を実行してもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では、展開遅延エラーについて、そのエラー発生回数が規定回数に達した場合に限り、マニュアル両面方式への切り替えを行ったが、本発明はこれに限られず、反転エラーやシートサイズエラーなど、他のエラーについて行ってもよい。
【0099】
(5)上記実施形態では、表面印刷エラーが発生した場合にマニュアル両面方式に切り替えたが、本発明はこれに限られない。例えば片面印刷に切り換えてもよい。要するに、反転搬送パスP2を利用しない印刷であれば、表面印刷エラーの再発を回避することができる。
【符号の説明】
【0100】
10...端末装置
30...プリンタ
31...CPU
35...操作部
36...表示部
37...印刷部
41...供給トレイ
43...搬送機構
55...トナー収容部
70...手差しトレイ
W...シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが配置される配置部と、
シートに画像を印刷する印刷部と、
前記配置部に配置されたシートを前記印刷部の印刷位置に搬送する印刷経路、及び、前記印刷位置を経由したシートを反転させて再び前記印刷位置へと搬送する反転経路を有する搬送機構と、
前記反転経路を利用する両面印刷を実行するよう、前記印刷部及び前記搬送機構を制御する制御部と、
前記反転経路を利用する両面印刷において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない他面印刷エラーが発生するかどうかを判断する判断部と、を備え、
前記制御部は、前記判断部が否定判断した場合には、前記片面印刷済シートを前記反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、前記判断部が肯定判断した場合には、前記配置部から供給されたシートを前記印刷経路にて搬送させて、前記他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記判断部が肯定判断した場合に、前記印刷部及び前記搬送機構の動作を停止させる、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用せずに両面印刷を実行するマニュアル両面印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する、印刷装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の印刷装置であって、
前記判断部が肯定判断した肯定回数をカウントするカウント部を備え、
前記制御部は、前記肯定回数が規定回数に達した場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える、印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記他面印刷エラーは、前記片面印刷済シートが前記印刷位置に搬送されるまでに、前記他面に印刷すべき画像のデータ展開処理が完了していない展開遅延エラーである、印刷装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
ユーザの切替指示を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記受付部が前記切替指示を受け付けた場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える、印刷装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
外部機器から印刷データを受信する受信部を備え、
前記印刷部は前記受信部で受信した印刷データに基づく画像を印刷し、
前記受信部は、前記反転経路を利用しない印刷に切り替える際には、当該反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従った印刷データを新たに受信し、前記印刷部は、その新たに受信した印刷データに基づき印刷を行う、印刷装置。
【請求項1】
シートが配置される配置部と、
シートに画像を印刷する印刷部と、
前記配置部に配置されたシートを前記印刷部の印刷位置に搬送する印刷経路、及び、前記印刷位置を経由したシートを反転させて再び前記印刷位置へと搬送する反転経路を有する搬送機構と、
前記反転経路を利用する両面印刷を実行するよう、前記印刷部及び前記搬送機構を制御する制御部と、
前記反転経路を利用する両面印刷において、片面印刷済シートの他面への印刷ができない他面印刷エラーが発生するかどうかを判断する判断部と、を備え、
前記制御部は、前記判断部が否定判断した場合には、前記片面印刷済シートを前記反転経路にて搬送させて他面に印刷をし、前記判断部が肯定判断した場合には、前記配置部から供給されたシートを前記印刷経路にて搬送させて、前記他面に印刷すべき画像を印刷するよう制御する、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記判断部が肯定判断した場合に、前記印刷部及び前記搬送機構の動作を停止させる、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する、印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記他面に印刷すべき画像の印刷後、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用せずに両面印刷を実行するマニュアル両面印刷に切り替えるよう前記印刷部及び前記搬送機構を制御する、印刷装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の印刷装置であって、
前記判断部が肯定判断した肯定回数をカウントするカウント部を備え、
前記制御部は、前記肯定回数が規定回数に達した場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える、印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記他面印刷エラーは、前記片面印刷済シートが前記印刷位置に搬送されるまでに、前記他面に印刷すべき画像のデータ展開処理が完了していない展開遅延エラーである、印刷装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
ユーザの切替指示を受け付ける受付部を備え、
前記制御部は、前記受付部が前記切替指示を受け付けた場合に、前記反転経路を利用する両面印刷から前記反転経路を利用しない印刷に切り替える、印刷装置。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
外部機器から印刷データを受信する受信部を備え、
前記印刷部は前記受信部で受信した印刷データに基づく画像を印刷し、
前記受信部は、前記反転経路を利用しない印刷に切り替える際には、当該反転経路を利用しない印刷の印刷順序に従った印刷データを新たに受信し、前記印刷部は、その新たに受信した印刷データに基づき印刷を行う、印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−11905(P2011−11905A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159884(P2009−159884)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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