説明

印刷装置

【課題】カートリッジ交換による印刷装置のダウンタイムをより短くするトナーセーブ
技術を提供する。
【解決手段】印刷装置は、ブラック及びブラック以外の3色の着色剤カートリッジを有
し、全色のうち特定の色について着色剤のセーブ処理を行う着色剤セーブモードを実行可
能である。当該モードでは、印刷装置は、全色のうち1色の消費が相対的に早い場合に、
当該1色について着色剤をセーブする第1の処理、ブラック以外の3色のうち2色の消費
が相対的に早い場合に、当該2色のうち残量が少ない1色について着色剤をセーブする第
2の処理、ブラック以外の3色の消費が相対的に均等である場合に、当該3色のうち最も
残量が多い色以外の2色について着色剤をセーブする第3の処理、のいずれか一つを選択
的に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複合機、コピー機等の印刷装置に関し、特に、トナーセーブ技
術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複合機、コピー機等の印刷装置には、通常モードよりもトナーの消費量を
低減するトナーセーブモードを有するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−251102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数色(例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック))
のトナーカートリッジを備える印刷装置では、特定の色のトナーの消費が他の色のトナー
の消費よりも多いことにより、全色のトナーが均等に減らない場合がある。このような場
合、各色のトナーカートリッジの交換時期は、それぞれ異なる時期にやって来ることとな
る。その結果、各カートリッジについてそれぞれ異なる時期に交換を行う必要があり、メ
ンテナンス作業により印刷装置を使用できない期間(例えば、「ダウンタイム」と呼ぶこ
とができる。)が長くなってしまう。
【0005】
従来のトナーセーブモードでは、全色のトナーについてトナーセーブ処理が実行される
。しかし、全色のトナーについてトナーセーブ処理が実行されても、全色のトナーが均等
に減るとは限らない。そのため、カートリッジ交換による印刷装置のダウンタイムが長く
なる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、カートリッジ交換による印刷装置のダウンタイムをより短くするト
ナーセーブ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一態様は、ブラック及びブラック以外の3色の着
色剤カートリッジを有し、全色について着色剤のセーブ処理を行う第1の着色剤セーブモ
ードを実行可能な印刷装置であって、さらに、全色のうち特定の色について着色剤のセー
ブ処理を行う第2の着色剤セーブモードを実行可能であり、前記第2の着色剤セーブモー
ドにおいて、全色のうち1色の消費が相対的に早い場合に、当該1色について着色剤をセ
ーブする第1の処理、ブラック以外の3色のうち2色の消費が相対的に早い場合に、当該
2色のうち残量が少ない1色について着色剤をセーブする第2の処理、ブラック以外の3
色の消費が相対的に均等である場合に、当該3色のうち最も残量が多い色以外の2色につ
いて着色剤をセーブする第3の処理、のいずれか一つを選択的に実行する、ことを特徴と
する。
【0008】
ここで、上記の印刷装置であって、各色の着色剤カートリッジの着色剤の残量を取得し
、各色の着色剤の残量に応じて前記第1、第2及び第3の処理のいずれか一つを選択する
、ことを特徴としていてもよい。
【0009】
また、上記のいずれかの印刷装置であって、前記第1の処理では、ブラックについて着
色剤をセーブする場合、印刷対象の画像データ中にエッジで囲まれた部分を抽出して当該
部分を中抜きする処理を、着色剤の印刷濃度の低下に加え又は替わりに行う、ことを特徴
としていてもよい。
【0010】
また、上記のいずれかの印刷装置であって、前記第2の処理では、ブラック以外の3色
のうち消費が相対的に早い2色の残量の差が大きいほど、着色剤の印刷濃度の低下を大き
くする、ことを特徴としていてもよい。
【0011】
また、上記のいずれかの印刷装置であって、前記第3の処理では、ブラック以外の3色
のうち最も残量が多い色と、他の2色それぞれの残量との差が大きいほど、当該2色それ
ぞれの着色剤の印刷濃度の低下を大きくする、ことを特徴としていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンター2のハードウェア構成の概略を示すブロック図。
【図2】プリンター2の機能構成を示すブロック図。
【図3】トナーセーブの処理方法1を説明する図。
【図4】トナーセーブの処理方法2を説明する図。
【図5】トナーセーブの処理方法3を説明する図。
【図6】プリンター2における印刷処理を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンター2のハードウェア構成の概略を示すブロ
ック図である。
【0015】
プリンター2は、例えばLANなどのネットワークを介して接続されたホストコンピュ
ーター1から送信される印刷コマンドに従って印刷を行う。ホストコンピューター1は、
例えばプリンタードライバープログラムがインストールされ、当該プリンタードライバー
プログラムによりプリンター2を制御する。
【0016】
もちろん、印刷装置はプリンターに限られず、プリンター機能を有する複合機やコピー
機等であってもよい。また、プリンター2はネットワークを介して複数のホストコンピュ
ーター1と通信するようにしてもよい。
【0017】
ホストコンピューター1は、例えば、各種演算を行うCPUと、各種プログラムやデー
タを格納するHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置と、LANなどのネットワー
クを介して外部装置と通信を行うネットワークインターフェイス(I/F)と、USB(
Universal Serial Bus)ポートやUSBコントローラーを備えUSBにより外部装置と通
信を行うUSBインターフェイス(I/F)と、起動に必要なプログラムやデータを予め
格納するROMと、CPUが実行するプログラムやデータを格納するRAMと、キーボー
ドやマウス等の入力装置と、ユーザーインターフェイス画面などを表示するLCDなどの
ディスプレイとを備える、一般的なコンピューターである。
【0018】
プリンター2は、例えば、コントローラー20と、印刷エンジン30と、操作パネル4
0とを備える、一般的なレーザー方式のページプリンターである。
【0019】
詳細は後述するが、プリンター2は、印刷のモードとして、トナーセーブを行わない通
常モードと、各色トナーに均等にトナーセーブを行うことにより、通常モードよりトナー
消費量を削減する第1トナーセーブモードと、各色トナーの残量に応じて所定の色のトナ
ーにトナーセーブを行うことにより、通常モードよりトナー消費量を削減する第2トナー
セーブモードとを有する。
【0020】
コントローラー20は、例えば、CPU21と、ROM22と、RAM23と、メモリ
ー制御ASIC(Application Specific Integrated Circuit)24と、印刷制御ASI
C25と、入出力(I/O)制御ASIC26と、ネットワークインターフェイス(I/
F)27と、USBインターフェイス(I/F)28とを備える。
【0021】
CPU21は、所定のプログラムを実行して、プリンター2を統合的に制御する。RO
M22は、データやプログラム等を格納している不揮発性メモリーであり、例えば、フラ
ッシュメモリーである。ROM22は、メモリー制御ASIC24ではなく、I/O制御
ASIC26に接続されていてもよい。RAM23は、データおよびプログラム等を一時
的に記憶する揮発性メモリーであり、例えば、DDR−SDRAMである。
【0022】
メモリー制御ASIC24は、ROM22およびRAM23へのアクセスを制御するユ
ニットである。メモリー制御ASIC24は、例えば、ネットワークI/F27およびI
/O制御ASIC26、もしくはUSB I/F28およびI/O制御ASIC26を介
して外部装置から送られてきた、印刷対象の画像データをRAM23に格納する。また、
例えば、RAM23に格納された画像データを、印刷制御ASIC25に出力する。
【0023】
印刷制御ASIC25は、印刷エンジン30において処理可能な印刷データを生成し、
印刷エンジン30による印刷を制御するユニットである。印刷制御ASIC25は、例え
ば、RAM23から画像データを読み出し、所定の画像処理(例えば、色変換、圧縮、伸
張、2値化)を施して印刷データを生成する。そして、生成した印刷データを印刷エンジ
ン30に送信して印刷を実行させる。
【0024】
I/O制御ASIC26は、I/O装置やI/F装置を制御するユニットである。本実
施形態では、I/O制御ASIC26は、I/O装置としての操作パネル40と、I/F
装置としてのネットワークI/F27およびUSB I/F28と接続されている。もち
ろん、ハードディスクドライブ、パラレルI/F等が接続されていてもよい。I/O制御
ASIC26は、例えば、ネットワークI/F27もしくはUS BI/F28を介して
、外部装置から送信されたデータをCPU21に転送したり、CPU21から送信された
データを外部装置に転送したりする。また、例えば、操作パネル40から出力される信号
をCPU21に転送したり、CPU21から送られた描画データを操作パネル40に転送
したりする。
【0025】
ネットワークI/F27は、ホストコンピューター1などのネットワーク上の外部装置
と通信を行うユニットである。ネットワークI/F27は、例えば、ネットワークコント
ローラー、ネットワークコネクタ等を含む。
【0026】
USB I/F28は、ホストコンピューター1などの外部装置と通信を行うユニット
である。USB I/F28は、例えば、USBコントローラー、USBコネクタ等を含
む。
【0027】
印刷エンジン30は、印刷制御ASIC25から供給されたデータを、印刷媒体に印刷
するユニットである。印刷エンジン30は、例えば、トナーカートリッジ、感光体ドラム
、レーザー光照射機構、転写機構、紙送り機構、給紙機構、排紙機構などを有するレーザ
ー方式のエンジンである。
【0028】
本実施形態では、印刷エンジン30は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー
)、K(ブラック)のトナーをそれぞれ収納した4つのカートリッジを着脱可能な構成で
ある。また、CMYの各色カートリッジは同量のトナーを収納する。Kのカートリッジは
、CMYと同量のトナーを収納してもよいし、より多い量のトナーを収納してもよい。
【0029】
もちろん、K以外のカラーカートリッジの数は、上記にCMY3色に限られず、例えば
、4色以上であってもよい。また、各色カートリッジの容量は同量でなくてもよい。また
、印刷エンジン30は、レーザー方式に限られず、インクジェット方式であってもよい。
この場合も、インクカートリッジの数・組み合わせ・容量は、トナーの場合と同様である

【0030】
操作パネル40は、ユーザーとプリンター2との間の入出力インターフェイスとして、
プリンター2の筐体に設けられているユニットである。操作パネル40は、例えば、液晶
ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(Electro-Luminescen
ce Display)などのディスプレイと、タッチパネルと、ハードスイッチ等を有する。
【0031】
もちろん、上記のホストコンピューター1およびプリンター2の構成は、本願発明の特
徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記に限られない。また、一般
的なコンピューターおよびプリンターが備える他の構成を排除するものではない。
【0032】
図2は、プリンター2の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
プリンター2は、印刷制御部200を有する。印刷制御部200は、設定受付部210
と、トナー残量算出部220と、印刷データ生成部230とを有する。
【0034】
印刷制御部200は、例えば、主に、CPU21がROM22からRAM23にロード
した所定のプログラムを実行することにより実現される。一部の処理は印刷制御ASIC
25により実現されてもよい。所定のプログラムは、例えば、ネットワーク上のサーバー
からダウンロードされて、更新されてもよい。
【0035】
印刷制御部200は、例えば、印刷に関する設定を受け付けるためのインターフェイス
画面の表示制御処理、当該インターフェイス画面を介したユーザーの操作の入力制御処理
、ホストコンピューター1から受信した印刷コマンドに従って印刷データを生成する処理
などを行う。また、印刷制御部200は、生成した印刷データに基づいて印刷エンジン3
0を制御し、印刷媒体への印刷を実行する。このような処理を行うため、印刷制御部20
0は、設定受付部210、トナー残量算出部220、および印刷データ生成部230を有
する。
【0036】
設定受付部210は、印刷に関する設定を記憶及び管理する。また、印刷に関する設定
の変更、印刷開始の指示、印刷コマンドを受け付ける。
【0037】
例えば、設定受付部210は、各種の印刷設定を受け付けるためのインターフェイス画
面(不図示)を操作パネル40に表示させる。そして、操作パネル40を介して、インタ
ーフェイス画面上の印刷設定の変更等を受け付ける。また、設定受付部210は、ホスト
コンピューター1から印刷コマンドを受け付け、当該印刷コマンドに従って印刷データを
生成するように印刷データ生成部230に要求する。
【0038】
本実施形態では、印刷コマンドには、印刷モード(通常モード、第1トナーセーブモー
ド、第2トナーセーブモード)を特定する情報が含まれる。設定受付部210は、ホスト
コンピューター1から印刷コマンドを受信した場合、印刷モードを判定する。
【0039】
印刷モードが通常モードである場合、設定受付部210は、通常モードにより印刷デー
タを生成するように印刷データ生成部230に要求する。印刷モードが第1トナーセーブ
モードである場合、設定受付部210は、第1トナーセーブモードによる所定のトナーセ
ーブ処理を行って印刷データを生成するように印刷データ生成部230に要求する。印刷
モードが第2トナーセーブモードである場合、設定受付部210は、第2トナーセーブモ
ードによる所定のトナーセーブ処理を行って印刷データを生成するように印刷データ生成
部230に要求する。
【0040】
もちろん、設定受付部210は、操作パネル40を介して、印刷モードの設定を受け付
けるようにしてもよい。この場合、設定受付部210は、印刷コマンドを受信した場合、
操作パネル40を介して設定された印刷モードにより印刷データを生成するように印刷デ
ータ生成部230に要求すればよい。従って、印刷コマンドには印刷モードが含まれなく
てもよい。なお、本実施形態では、ユーザーにより設定された印刷モードが、ユーザーが
その設定を変更するまでその設定のまま継続的に保持されるようにしてもよいし、デフォ
ルト設定として「通常モード」が設定され、印刷の際にユーザーが変更できるようにして
もよい。
【0041】
トナー残量算出部220は、設定受付部210もしくは印刷データ生成部230の要求
に応じて、各カートリッジのトナー残量を算出する。トナー残量算出部220は、印刷毎
にその印刷データに基づいて各色の印字ドット数を算出し、各色の印字ドット数の積算値
を消費量(ドットカウント値)としてROM22等のメモリーに記録する。トナー残量を
取得する要求を受け付けた場合、トナー残量算出部220は、各色のカートリッジが備え
るメモリー等に予め記録されている、当初のトナー量(例えば、カートリッジに最初に収
容されているトナーのドット数)を読み出す。また、各色のトナーの消費量をROM22
等のメモリーから読み出す。そして、各色カートリッジについて、当初のトナー量と消費
量との差分に基づいて、残量を算出する。もちろん、トナー残量の算出方法は上記に限ら
れない。
【0042】
印刷データ生成部230は、設定受付部210から印刷要求を受け付けると、印刷コマ
ンドに含まれる各種の印刷設定と印刷対象データとに基づいて印刷データを生成する。ま
た、生成した印刷データに基づいて印刷エンジン30を制御し、印刷媒体への印刷を実行
する。
【0043】
本実施形態では、印刷データ生成部230は、印刷コマンドに含まれる印刷モード(通
常モード、第1トナーセーブモード、第2トナーセーブモード)に基づいて、印刷データ
を生成する。
【0044】
なお、本実施形態では、第1又は第2のトナーセーブモードが選択されている場合、K
についてのトナーセーブ処理は、CMYとは独立して、トナー残量に応じて所定の削減率
で実行されるものとする。また、Kについては、画像データの中にエッジで囲まれた部分
を抽出し、当該部分を中抜きするような処理を、濃度の低下に加えてもしくは替わりに行
ってもよい。
【0045】
通常モードの場合、印刷データ生成部230は、通常の所定の処理を行って、印刷デー
タを生成する。
【0046】
第1トナーセーブモードの場合、印刷データ生成部230は、消費されるトナーを削減
する所定の処理をCMY各色に対して行って、印刷データを生成する。例えば、所定の処
理としては、印刷対象の画像データのCMY各色の濃度値を、所定の削減率(例えば、濃
度値×70%)で削減した濃度値に変換する。
【0047】
第2トナーセーブモードの場合、印刷データ生成部230は、CMY各色についてトナ
ー残量を算出するように、トナー残量算出部220に要求する。また、算出された各色ト
ナーの残量に応じて、トナーセーブの処理方法(後述する処理方法1〜3)を選択する。
【0048】
本実施形態では、印刷データ生成部230は、CMYのうち、トナー残量が最大の色の
トナー残量と、他の2色のトナー残量との差に応じて、トナーセーブの処理方法を選択す
る。
【0049】
例えば、印刷データ生成部230は、トナー残量が最大の色のトナー残量を基準値とし
て、当該基準値からその基準値よりも小さい所定の閾値までの範囲内に、他の2色のトナ
ー残量が属するか否かを判定する。図3〜5の例では、トナー残量が最大のCの残量(基
準値)より小さく、基準値よりも小さい所定の閾値(判定閾値)以上の範囲内に、M及び
Yの残量が属するか否かが判定される。
【0050】
他の2色のうちいずれかの一方のトナー残量が上述の所定範囲内に属する場合(すなわ
ち、3色のうち1色が相対的に消費が早い場合)、印刷データ生成部230は、処理方法
1によりトナーセーブ処理を行う。図3の例では、Yのトナー残量が所定範囲内に属する
ため、処理方法1が選択される。
【0051】
他の2色の両方のトナー残量が上述の所定範囲内に属さない場合(すなわち、3色のう
ち2色が相対的に消費が早い場合)、印刷データ生成部230は、処理方法2によりトナ
ーセーブ処理を行う。図4の例では、M及びYのトナー残量が所定範囲内に属さないため
、処理方法2が選択される。
【0052】
他の2色の両方のトナー残量が上述の所定範囲内に属する場合(すなわち、3色が相対
的に均等に消費されている場合)、印刷データ生成部230は、処理方法3によりトナー
セーブ処理を行う。図5の例では、M及びYのトナー残量が所定範囲内に属するため、処
理方法3が選択される。
【0053】
<処理方法1>
印刷データ生成部230は、トナー残量が最大の色以外の他の2色のうちトナー残量が
上述の所定範囲内に属さないと判定された色について、消費されるトナーを削減する所定
の処理を行って、印刷データを生成する。図3の例では、Mに対してトナーセーブ処理が
実行される(トナーセーブON)。所定の処理としては、例えば、印刷対象の画像データ
の選択された1色の濃度値を、所定の削減率(例えば、濃度値×70%)で削減した濃度
値に変換する。なお、画像データ中にエッジで囲まれた部分を抽出し、当該部分を中抜き
するような処理は行わないものとする。
【0054】
なお、処理方法1において、Kについてのトナーセーブ処理は、例えば、Kのトナー残
量が判定閾値よりも小さい場合に、実行されるようにすればよい。
【0055】
<処理方法2>
印刷データ生成部230は、トナー残量が最大の色以外の他の2色のうちトナー残量が
少ない色について、消費されるトナーを削減する所定の処理を行って、印刷データを生成
する。図4の例では、Mに対してトナーセーブ処理が実行される(トナーセーブON)。
所定の処理としては、例えば、印刷対象の画像データの選択された1色の濃度値を、所定
の削減率(例えば、濃度値×70%)で削減した濃度値に変換する。ここで、他の2色の
トナー残量の差が大きいほど、所定の削減率を大きくする(例えば、70%を60%にす
る)。なお、画像データ中にエッジで囲まれた部分を抽出し、当該部分を中抜きするよう
な処理は行わないものとする。
【0056】
なお、処理方法2において、Kについてのトナーセーブ処理は、例えば、トナー残量が
最大の色以外の他の2色のうちトナー残量が多い色よりも、Kのトナー残量が小さい場合
に、実行されるようにすればよい。
【0057】
<処理方法3>
印刷データ生成部230は、トナー残量が最大の色以外の他の2色について、消費され
るトナーを削減する所定の処理を行って、印刷データを生成する。図5の例では、M及び
Yに対してトナーセーブ処理が実行される(トナーセーブON)。所定の処理としては、
例えば、印刷対象の画像データの選択された2色の濃度値を、所定の削減率(例えば、濃
度値×70%)で削減した濃度値に変換する。ここで、トナー残量が最大の色のトナー残
量と、他の2色それぞれのトナー残量との差が大きいほど、他の2色それぞれの所定の削
減率を大きくする(例えば、Mについて70%を60%に設定し、Yについて70%を6
5%に設定する)。なお、画像データの中にエッジで囲まれた部分を抽出し、当該部分を
中抜きするような処理は行わないものとする。
【0058】
なお、処理方法3において、Kについてのトナーセーブ処理は、例えば、Kのトナー残
量が、基準値よりも小さい場合に、実行されるようにすればよい。
【0059】
もちろん、上述のCMYにKを加えた4色について、印刷データ生成部230は、トナ
ー残量に基づく判定を行ってもよい。
【0060】
具体的には、印刷データ生成部230は、トナー残量が最大の色のトナー残量を基準値
として、当該基準値からその基準値よりも小さい所定の閾値までの範囲内に、他の3色の
トナー残量が属するか否かを判定する。
【0061】
そして、他の3色のうちいずれかの一つのトナー残量が上述の所定範囲内に属さない場
合(すなわち、4色のうち1色が相対的に消費が早い場合)、印刷データ生成部230は
、処理方法1のように、当該1色について、消費されるトナーを削減する所定の処理を行
って、印刷データを生成する。
【0062】
上記以外の場合、印刷データ生成部230は、CMYの3色について、上述と同様の判
定を行って処理方法1〜3のいずれかを選択するようにすればよい。
【0063】
もちろん、いずれの色のトナー残量が相対的に減っているか否かを判定する方法は、上
述のように最大のトナー残量を基準値とした方法に限られない。また、各色について消費
されるトナー量を削減するための方法は、上記に限られず、例えば、レーザー露光量や現
像バイアスを変更してトナーの消費量を低減する方法、CMYK画像を2値化したドット
データを所定の削減率に応じて間引く方法などであってもよい。
【0064】
図2に戻って、ホストコンピューター1は、プリンタードライバー(不図示)有する。
プリンタードライバーは、例えば、各種印刷設定をユーザーの操作により受け付けるため
のインターフェイス画面をディスプレイに表示し、入力装置を介して各種印刷設定を受け
付ける。また、入力装置を介して印刷開始の指示を受け付けて、設定された印刷設定に基
づいて印刷コマンドを生成し、プリンター2に送信する。
【0065】
本実施形態では、プリンタードライバーは、上述のインターフェイス画面において、印
刷モード(通常モード、第1トナーセーブモード、第2トナーセーブモード)の選択を受
け付ける。そして、印刷モードを特定する情報を印刷コマンドに含める。なお、本実施形
態では、ユーザーにより設定された印刷モードが、ユーザーがその設定を変更するまでそ
の設定のまま継続的に保持されるようにしてもよいし、デフォルト設定として「通常モー
ド」が設定され、印刷の際にユーザーが変更できるようにしてもよい。
【0066】
もちろん、上述した、第1及び第2トナーセーブモードに関する処理は、ホストコンピ
ューター1のプリンタードライバーで実行されるようにしてもよい。この場合、プリンタ
ー2は、第1及び第2トナーセーブモードに関する処理は行わなくてよい。また、この場
合、印刷コマンドに印刷モードを特定する情報を含めなくてもよい。
【0067】
以上の各構成要素は、プリンター2の、トナーセーブモードに関する構成を理解容易に
するために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称に
よって、本願発明が制限されることはない。プリンター2の構成は、処理内容に応じて、
さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処
理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウ
ェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0068】
図9は、プリンター2における印刷処理を示すフロー図である。本フローは、プリンタ
ー2が起動された後に開始される。
【0069】
S10では、設定受付部210は、印刷指示を受け付ける。具体的には、設定受付部2
10は、印刷モード(通常モード、第1トナーセーブモード、第2トナーセーブモード)
を特定する情報を含む印刷コマンドをホストコンピューター1から受け付ける。そして、
処理をS20に進める。
【0070】
S20では、設定受付部210は、印刷コマンドに含まれる印刷モードを判定する。印
刷モードが第1トナーセーブモードである場合(S20:第1トナーセーブモード)、処
理をS30に進める。印刷モードが第2トナーセーブモードである場合(S20:第2ト
ナーセーブモード)、処理をS40に進める。印刷モードが通常モードである場合(S2
0:通常モード)、処理をS70に進める。なお、設定受付部210は、指定された印刷
モードにより印刷データを生成するように印刷データ生成部230に要求する。
【0071】
S30では、印刷データ生成部230は、第1トナーセーブモード用の印刷データ生成
処理を実行する。具体的には、印刷データ生成部230は、消費されるトナーを削減する
所定の処理をCMY各色に対して行って、印刷データを生成する。そして、処理をS80
に進める。
【0072】
S40では、印刷データ生成部230は、トナー残量を取得する。具体的には、印刷デ
ータ生成部230は、トナー残量算出部220に要求して、CMY各色についてトナー残
量を算出させる。そして、処理をS50に進める。
【0073】
S50では、印刷データ生成部230は、トナーセーブの処理方法を選択する。具体的
には、上述したように、印刷データ生成部230は、S40で取得したCMY各色につい
てのトナー残量を用いて、CMYのうち、トナー残量が最大の色のトナー残量と、他の2
色のトナー残量との差に応じて、トナーセーブの処理方法1〜3を選択する。すなわち、
3色のうち1色が相対的に消費が早い場合、処理方法1を選択する。3色のうち2色が相
対的に消費が早い場合、処理方法2を選択する。3色が相対的に均等に消費されている場
合、処理方法3を選択する。そして、処理をS60に進める。
【0074】
S60では、印刷データ生成部230は、第2トナーセーブモード用の印刷データ生成
処理を実行する。
【0075】
具体的には、S50で処理方法1が選択された場合、上述したように、印刷データ生成
部230は、トナー残量が最も少ない色に対して、消費されるトナーを削減する所定の処
理を行って、印刷データを生成する。S50で処理方法2が選択された場合、上述したよ
うに、印刷データ生成部230は、トナー残量が最も少ない色に対して、消費されるトナ
ーを削減する所定の処理を行って、印刷データを生成する。ここで、トナー残量が最大の
色以外の他の2色のトナー残量の差が大きいほど、所定の削減率を大きくする。S50で
処理方法3が選択された場合、上述したように、印刷データ生成部230は、トナー残量
が最も多い色以外の色に対して、消費されるトナーを削減する所定の処理を行って、印刷
データを生成する。ここで、トナー残量が最大の色のトナー残量と、他の2色それぞれの
トナー残量との差が大きいほど、他の2色それぞれの所定の削減率を大きくする。
【0076】
印刷データ生成部230は、上記のようなトナーセーブ処理を行って、処理をS80に
進める。
【0077】
S70では、印刷データ生成部230は、通常モード用の印刷データ生成処理を実行す
る。そして、処理をS80に進める。
【0078】
S80では、印刷データ生成部230は、印刷を実行する。具体的には、印刷データ生
成部230は、S30又はS60、S70で生成された印刷データに基づいて印刷エンジ
ン30を制御し、印刷媒体への印刷を実行する。そして、本フローを終了する。
【0079】
以上の図6の各処理単位は、プリンター2の処理を理解容易にするために、主な処理内
容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限
されることはない。プリンター2の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に
分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割する
こともできる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態によれば、カートリッジ交換
による印刷装置のダウンタイムをより短くするトナーセーブ技術を提供することができる

【0081】
すなわち、本実施形態によれば、残量が相対的に少ない色のトナーについてトナーセー
ブ処理が実行される。このような構成により、少なくとも2以上の複数色のトナーがより
均等に減少し易くなる。その結果、一度のメンテナンス作業により少なくとも2以上の複
数色のカートリッジを交換できる可能性が高くなり、メンテナンス作業による印刷装置の
ダウンタイムをより短くすることができる。また、カートリッジ交換作業の手間もより減
る。
【0082】
以上の本発明の実施形態は、本発明の要旨と範囲を例示することを意図し、限定するも
のではない。多くの代替物、修正および変形例が当業者にとって明らかである。
【0083】
上述の実施形態では、印刷装置は第2トナーセーブモードにおける処理方法を3つ又は
4つ有するが、例えば、これらのうち1つ又はいずれか複数の組み合わせを有するように
してもよい。また、処理方法を複数有する場合は、いずれか1つ又は複数が使用されるよ
うにユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0084】
また、例えば、印刷装置は第1トナーセーブモードを有さなくてもよい。また、第1ト
ナーセーブモードの使用又は不使用をユーザーが選択的に設定できるようにしてもよい。
【0085】
また、例えば、印刷装置は、トナー残量を百分率(%)で表して、第2トナーセーブモ
ードに関する処理を行ってよい。すなわち、トナー残量、基準値、判定閾値等が百分率で
扱われる。
【0086】
なお、本明細書中に記載した各種の修正や変形例は適宜組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0087】
1:ホストコンピューター、2:プリンター、20:コントローラー、21:CPU、2
2:ROM、23:RAM、24:メモリー制御ASIC、25:印刷制御ASIC、2
6:入出力(I/O)制御ASIC、27:ネットワークインターフェイス(I/F)、
28:USBインターフェイス(I/F)、30:印刷エンジン、40:操作パネル、2
00:印刷制御部、210:設定受付部、220:トナー残量算出部、230:印刷デー
タ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラック及びブラック以外の3色の着色剤カートリッジを有し、全色について着色剤の
セーブ処理を行う第1の着色剤セーブモードを実行可能な印刷装置であって、
さらに、全色のうち特定の色について着色剤のセーブ処理を行う第2の着色剤セーブモ
ードを実行可能であり、
前記第2の着色剤セーブモードにおいて、
全色のうち1色の消費が相対的に早い場合に、当該1色について着色剤をセーブする第
1の処理、
ブラック以外の3色のうち2色の消費が相対的に早い場合に、当該2色のうち残量が少
ない1色について着色剤をセーブする第2の処理、
ブラック以外の3色の消費が相対的に均等である場合に、当該3色のうち最も残量が多
い色以外の2色について着色剤をセーブする第3の処理、
のいずれか一つを選択的に実行する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
各色の着色剤カートリッジの着色剤の残量を取得し、各色の着色剤の残量に応じて前記
第1、第2及び第3の処理のいずれか一つを選択する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記第1の処理では、
ブラックについて着色剤をセーブする場合、印刷対象の画像データ中にエッジで囲まれ
た部分を抽出して当該部分を中抜きする処理を、着色剤の印刷濃度の低下に加え又は替わ
りに行う、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記第2の処理では、
ブラック以外の3色のうち消費が相対的に早い2色の残量の差が大きいほど、着色剤の
印刷濃度の低下を大きくする、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記第3の処理では、
ブラック以外の3色のうち最も残量が多い色と、他の2色それぞれの残量との差が大き
いほど、当該2色それぞれの着色剤の印刷濃度の低下を大きくする、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−128337(P2011−128337A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286054(P2009−286054)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】