説明

印刷装置

【課題】小型化を図るとともに印刷媒体の大量供給に対する大量排出に対応可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置1は筐体2を備えており、筐体2の上側にはカードスタッカ3が配置されている。カードスタッカ3にはカードが並置されるように積層して収容される。筐体2内には、カードスタッカ3の下方に配置されたカード回動部4と直線状のカード搬送パスCP、カード搬送パスCPより下方に設けられた印刷部PR、各種センサ、制御部が収容されている。カード搬送パスCPの最下流外側にはカード収容部29が配置されている。カード収容部29内では処理後のカードが重畳するように積層して収容される。カードスタッカ3によりカードの供給数量を大きくすることができ、カード搬送パスCPが筐体2内の上部に位置することでカード収容部29の高さを大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に係り、特に、カード状の印刷媒体に印刷可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカード、キャッシュカード、ライセンスカード、IDカード等のカード状の印刷媒体を作成するには、インクリボンを介してサーマルヘッドとプラテンローラとを圧接してフィルム状の中間転写媒体に画像を形成し、形成された画像を印刷媒体に転写する印刷装置が用いられている。
【0003】
このような印刷装置は、通常、カード状の印刷媒体を供給するための供給部、画像形成部と転写部とを有する印刷部および印刷処理済みの印刷媒体を収容する収容部を備えている。供給部から供給された印刷媒体は印刷部に搬送され、印刷部では画像形成部により形成された画像が転写部により印刷媒体に転写される。また、印刷媒体に磁気情報等を記録させる場合や印刷媒体に内蔵されたICに電子情報を記憶させる場合は、印刷部の上流側または下流側に磁気書込部やIC書込部が設けられ、種々の情報が印刷媒体に記録される。画像の転写による印刷処理や情報の書込による記録処理が終了した印刷媒体は最下流側に設けられた収容部に収容される。
【0004】
ところが、大量の印刷媒体に印刷処理や記録処理を施す場合は、供給部を大容量化することが必要となり、搬送経路も長くなるため、印刷装置全体が大型化する傾向にある。これを回避するために、印刷部を供給部より上方に配置し、供給部の下流側かつ印刷部の上流側に印刷媒体の搬送方向を変更する変更部を配置し、印刷部の下方で供給部の上方を印刷媒体の搬送経路とした印刷装置の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、印刷部の下方に供給部が配置されたことで、印刷装置の小型化を図ることができ、搬送経路の長さ分で印刷媒体の供給数量を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3625206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、印刷部の下方で供給部の上方を印刷媒体の搬送経路とするため、搬送経路が印刷装置内の下部に位置することとなる。すなわち、印刷媒体がカード状のため、供給部の高さが小さくなり、搬送経路の高さ位置が低くなる。印刷処理が施された印刷媒体は、搬送経路の高さ位置で排出されるため、収容部を搬送経路の高さ位置より高くすることが難しくなる。この結果、収容部の容量が小さくなるため、供給部での供給数量を大きくすることができたとしても、印刷処理等が終了した印刷媒体の全てを収容部で収容することができなくなってしまう。収容部を横方向に大きくすれば、供給された印刷媒体の全てを収容することも可能となるが、収容部を含めた印刷装置の全体が大型化することとなる。さらには、収容部を横方向に大きくすると、印刷媒体を整列状態で収容することが難しくなり、収容部内で印刷媒体がバラバラになってしまう、という問題も派生する。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、小型化を図るとともに印刷媒体の大量供給に対する大量排出に対応可能な印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、カード状の印刷媒体に印刷可能な印刷装置において、前記印刷媒体を搬送するための直線状の搬送パスと、前記搬送パスの一端に設けられ、前記印刷媒体の搬送方向を転換する転換部と、前記搬送パスおよび前記転換部の上方に設けられ、処理前の印刷媒体を並置されるように積層して収容する供給スタッカと、前記搬送パスの下方に設けられ、前記印刷媒体に対して前記搬送パスの下側から印刷処理を施す印刷部と、前記搬送パスの他端に設けられ、前記印刷部で印刷処理された印刷媒体を重畳するように積層して収容する排出スタッカと、を備えた印刷装置である。
【0009】
本発明において、搬送パスを覆う開閉可能な上蓋を装置筐体の一部として有し、供給スタッカは上蓋に対して着脱可能に構成されており、供給スタッカが上蓋に対して未着状態で上蓋が開閉可能に構成されていてもよい。また、印刷部は、中間転写媒体に画像を形成する画像形成部と、画像形成部の上方に設けられ中間転写媒体に形成された画像を印刷媒体に転写する転写部とを有しており、転写部と転換部との間でかつ搬送パスと供給スタッカとの間に、印刷媒体に情報を記録する第1の記録部をさらに備えていてもよい。このとき、第1の記録部は、印刷媒体が転換部により一端を保持された状態で、印刷媒体に対して記録処理を行うことができる。また、供給スタッカから転換部に向けて印刷媒体を供給するための供給パスの延長線上で、転換部における供給スタッカの反対側に印刷媒体に情報を記録する第2の記録部をさらに備えていてもよい。第1または第2の記録部での記録処理が失敗した場合の印刷媒体を排出するためのエラー排出口をさらに備え、エラー排出口は転換部における第1の記録部の反対側に設けられるとともに、第1の記録部、転換部およびエラー排出口は直線上に配置されており、転換部からエラー排出口に向けて記録処理が失敗した印刷媒体が排出されるようにすることができる。また、転換部の搬送パスの延長線上に印刷媒体に情報を記録する第3の記録部をさらに備え、第3の記録部は、印刷媒体が転換部により一端を保持された状態で、印刷媒体に対して記録処理を行うことができる。印刷部が排出スタッカと第2の記録部との間に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷媒体の搬送パスの上方に設けられた供給スタッカに印刷媒体を並置されるように積層して収容することで、印刷媒体の供給数量を大きくすることができ、搬送パスを印刷部の上方に配置したことで、装置全体の小型化を図ることができるとともに、搬送パスが印刷装置内の上部に位置するので、排出スタッカの高さを大きくすることが可能なため、供給スタッカから供給された印刷媒体の全てを排出スタッカで収容することができ大量供給に対する大量排出に対応することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の印刷装置の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】実施形態の印刷装置の制御部の詳細を示すブロック図である。
【図3】インクリボンおよび中間転写フィルムの説明図であり、(A)はインクリボンを模式的に示す正面図、(B)は中間転写フィルムを模式的に示す断面図である。
【図4】実施形態の印刷装置の蓋体が開放された状態を模式的に示す正面図である。
【図5】実施形態の印刷装置でカードがカードスタッカから供給され供給パス上を搬送される状態を模式的に示す正面図である。
【図6】実施形態の印刷装置のIC書込部でカードに記録処理を行うときにカードがカード回動部により一端を保持された状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を、カード状の記録媒体(以下、カードCという。)に画像を転写することで印刷する印刷装置に適用した実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、ハウジングとなる筐体2を備えている。筐体2の上部には、開口が形成されており、該開口を覆うように上蓋としての蓋体2Aが配置されている。蓋体2Aの一端部は、蓋体2Aが開閉可能に筐体2の上部一側の縁部に軸支されている。すなわち、図4に示すように、蓋体2Aは、一端部を中心に他端部を回動させることで開閉することができる。図1に示すように、蓋体2Aの上側には、カードCの供給源となる供給スタッカとしてのカードスタッカ3が蓋体2Aに対して着脱可能に配されている。蓋体2Aは、カードスタッカ3が蓋体2Aに対して未着状態のときに開閉可能となる(図4も参照。)。
【0014】
筐体2内には、主として、カードスタッカ3の下方に配置されカードスタッカ3から供給されたカードCをニップ(挟持)した状態で所定角度回動させるためのカード回動部(転換部)4、カード回動部4からカードCを搬送するための略水平直線状のカード搬送パスCP、カード搬送パスCPの略中央部でカード搬送パスCPより下方に設けられカードCに印刷処理を施すための印刷部PR、位置情報を取得するための各種センサおよび印刷装置1の全体を制御する制御部が収容されている。また、カード搬送パスCPのカード回動部4と反対側には、筐体2の外側に印刷済みのカードCを収容する排出スタッカとしてのカード収容部29が配置されている。印刷部PRがカード搬送パスCPの下方に設けられたことで、カード搬送パスCPが蓋体2Aの直下近傍に位置することとなる。換言すれば、蓋体2Aはカード搬送パスCPとカード回動部4の一部とを覆う位置に配されており、カードスタッカ3はカード搬送パスCPおよびカード回動部4の上方に設けられている。
【0015】
カードスタッカ3には、複数のブランクのカードCが並置されるように積層して収容される。すなわち、カードCは、厚み方向が略水平方向に沿うようにカードスタッカ3内に収容される。カードスタッカ3における蓋体2Aの他端部近傍の位置には、1枚のみのカードCの通過を許容する開口スロットを有したスタッカ側板26が配置されている。スタッカ側板26のカードスタッカ3と反対側の下部には、回転することでカードスタッカ3に収容された複数のブランクのカードCのうち最外側に位置するカードCを1枚ずつカード回動部4に送り出すカード供給ローラ18が圧接配置されている。
【0016】
カード供給ローラ18の下方には、カードCをカード回動部4に向けて供給するための供給パスSPが形成されている。供給パスSPには、供給されるカードCの一側(図1の左側)に配置された駆動カード搬送ローラ19aと、他側(図1の右側)に配置された従動ローラとで構成された第1カード搬送ローラ対が配置されている。この第1カード搬送ローラ対は、カードCの表面を清浄するために表面に粘着性を有するクリーニングローラで構成されている。また、第1カード搬送ローラ対における従動ローラの駆動カード搬送ローラ19aと反対側には、この従動ローラ(延いては搬送されるカードC)の表面を清浄するために表面に第1カード搬送ローラ対よりも強い粘着性を有する物質が塗着されたクリーナローラ30が圧接配置されている。供給パスSPの第1カード搬送ローラ対よりも下流側のカード回動部4近傍には、カード位置出しセンサ15aが配置されている。このセンサは、例えば、透過一体型や反射一体型センサで構成することができ、供給パスSP上を搬送されるカードCのカード端を検出するものである。
【0017】
カード回動部4は、第1カード搬送ローラ対の下方に配置されており、カードCの両端部を挟持する2つのピンチローラ対およびこれら2つのピンチローラ対間でカードCをガイドするカードガイド(不図示)で構成されている。カード回動部4を構成するローラ対がカードCとともに共回りしてカードCを変位させてしまうことを防止するために、カード回動部4全体の回動とピンチローラ対の回転とは独立して駆動される。なお、図1では捨象しているが、ピンチローラ対の一方のローラが駆動ローラであり、他方のローラが従動ローラである。
【0018】
カード回動部4の回りには、カードCが磁気カードである場合に磁気ストライプに情報を磁気記録するとともに記録された磁気情報を読み取ってベリファイ(記録確認)する磁気書込部(第2の記録部)23、カードCがICカードである場合に内蔵された非接触型ICに電子情報を記憶させるとともに記憶された電子情報を読み取ってベリファイするIC書込部(第1の記録部)24、ベリファイによって磁気カードやICカードが不良と判明した際に、不良カードを廃棄収容するためのイジェクトボックス25(エラー排出口)がそれぞれ配設されている。また、筐体2のカード回動部4側の外側面には、カードCにバーコードが付される場合にバーコード情報を付すとともに付されたバーコード情報を読み取ってベリファイするバーコード書込部(第3の記録部)28が配置されている。
【0019】
磁気書込部23の受け入れ口は、カードスタッカ3からカード回動部4に向けてカードCが供給される供給パスSPの延長線上で、カード回動部4におけるカードスタッカ3の反対側に配置されている。すなわち、図5に示すように、スタッカ側板26の開口スロット、カード回動部4および磁気書込部23が直線上に配置されている。磁気書込部23の受け入れ口に向かう搬送経路におけるカード回動部4近傍には、カード位置出しセンサ15dが配置されている。IC書込部24は、カード搬送パスCPとカードスタッカ3との間、つまり、カード搬送パスCPの上方でカードスタッカ3の下方に配置されている。また、カード搬送パスCPの略中央部下方に印刷部PRが位置していることから、IC書込部24が印刷部PR(具体的には画像転写部。詳細後述。)とカード回動部4との間に配置されていることとなる。IC書込部24に向かう搬送経路におけるカード回動部4近傍には、カード位置出しセンサ15bが配置されている。イジェクトボックス25は、図6に示すように、カード回動部4におけるIC書込部24の反対側に配置されており、IC書込部24、カード回動部4およびイジェクトボックス25が直線上に配置されている。また、バーコード書込部28は、カード回動部4のカード搬送パスCPの延長線上に配置されている。なお、カード位置出しセンサ15b、15dとしては、上述したカード位置出しセンサ15aと同様に、透過一体型や反射一体型センサで構成することができる。
【0020】
図1に示すように、カード回動部4は、所定角度回動することで、2つのピンチローラ対で挟持したカードCの搬送方向を転換する。すなわち、カードCは、カード回動部4により、磁気書込部23、IC書込部24、バーコード書込部28、イジェクトボックス25の受け入れ口およびカード搬送パスCPに向けて位置付けられる。磁気書込部23、IC書込部24およびバーコード書込部28では、カードCがカード回動部4(一方のピンチローラ対)により一端部を保持された状態でそれぞれの情報のカードへの記録処理が行われる。なお、図1では捨象しているが、カード回動部4では、3つの回動用のポジションセンサが供給パスSP側、IC書込部24側およびカード搬送パスCP側に配されている。このうち、IC書込部24側およびカード搬送パスCP側のポジションセンサではカードCの回動位置が検出可能であり、供給パスSP側のポジションセンサではカードCの回動位置または2つのピンチローラ対のうちの一方のピンチローラ対における駆動ローラの回動位置を検出可能である。また、IC書込部24の下側には、IC書込部24で発生する電磁波による印刷部PRやカード搬送パスCPにおけるセンサへの影響を回避するために、図示しない遮蔽板がIC書込部24に沿うように配置されている。
【0021】
カード搬送パスCPでは、カードCをカード回動部4から略水平方向に搬送するために、カード回動部4の下流側に配置され、カード搬送パスCPの上側に配置された駆動カード搬送ローラ19bと下側に配置された従動ローラとで構成された第2カード搬送ローラ対を有している。第2カード搬送ローラ対の下流側には、駆動カード搬送ローラ19cと従動ローラとで構成された第3カード搬送ローラ対、第3カード搬送ローラ対の下流側にプラテンローラ27(後述する画像転写部をも構成する。)、プラテンローラ27の下流側に駆動カード搬送ローラ19dと従動ローラとで構成される第4カード搬送ローラ対、第4カード搬送ローラ対の下流側に駆動カード搬送ローラ19eと従動ローラとで構成される第5カード搬送ローラ対が配置されている。第2カード搬送ローラ対(駆動カード搬送ローラ19b)と、プラテンローラ27(画像転写部PT)との間には、カードCの1枚分の待機スペースが形成されている。
【0022】
第2カード搬送ローラ対のカード搬送方向上流側、つまりカード回動部4近傍にはカード位置出しセンサ15c、第3カード搬送ローラ対のカード搬送方向下流側近傍にはカード位置出しセンサ16、カード搬送パスCPの最下流の位置で第5カード搬送ローラ対のカード搬送方向下流側近傍にはカード位置出しセンサ17がそれぞれ配設されている。これらのセンサは、例えば、透過一体型や反射一体型センサで構成することができ、カード搬送パスCP上を搬送されるカードCのカード端を検出するものである。
【0023】
<印刷部>
印刷部PRは、カード搬送パスCPの略中央部でカード搬送パスCPより下方に設けられており、カード回動部4の下方に配置された磁気書込部23とカード収容部29との間に設けられている。この印刷部PRは、サーマルヘッド9とプラテンローラ12とを有して構成され中間転写フィルムFに画像を形成するための画像形成部PF、中間転写フィルムFを搬送する中間転写フィルム搬送部、インクリボンRを搬送するインクリボン搬送部、中間転写フィルムFに形成された画像をカードCに転写するための画像転写部PTで構成されている。画像転写部PTは、画像形成部PFの上方に設けられている。換言すれば、印刷部PRがカード搬送パスCPの下方で磁気書込部23とカード収容部29との間に設けられていることから、画像形成部PFの上方に設けられた画像転写部PTは、カード搬送パスの略中央部に位置することとなる。
【0024】
画像形成部PFでは、プラテンローラ12が固定位置で回転可能に軸支されている。サーマルヘッド9は、プラテンローラ12から離間した離間位置と、中間転写フィルムFおよびインクリボンRを介してプラテンローラ12の外周に圧接した印刷位置(図1に示す状態)との間を移動可能に構成されている。中間転写フィルムFへの画像形成時には、プラテンローラ12とサーマルヘッド9との間に、中間転写フィルムFとインクリボンRとが介在する。画像形成部PFは、制御部の命令(バッファメモリに格納された画像・文字等の画情報の印刷命令)に従い、印刷位置において、インクリボンRに対してサーマルヘッド9を構成する加熱素子を選択的に加熱することで、中間転写フィルムFに画像(鏡像)を形成する。
【0025】
中間転写フィルム搬送部は、中間転写フィルムFを供給するフィルム供給部5、中間転写フィルムFを巻き取るフィルム巻取部6、中間転写フィルムFを高精度で搬送するフィルム主搬送ローラ13を有して構成されている。フィルム供給部5のスプール軸では高速で正逆転可能なDCモータM1、フィルム巻取部6のスプール軸では高速で正逆転可能なDCモータM2、フィルム主搬送ローラ13では高速で正逆転可能なステッピングモータM3をそれぞれの回転駆動源としている。なお、フィルム巻取部6は、画像転写部PTにおける中間転写フィルムFに形成された画像をカードCに転写する際の中間転写フィルムFのバックテンションの管理にも使用される。その際、フィルム主搬送ローラ13に配設されているニップコロ21、22(詳細後述。)はフィルム主搬送ローラ13から離間している。
【0026】
また、中間転写フィルム搬送部では、フィルム供給部5およびフィルム巻取部6間の中間転写フィルムFの搬送時に搬送方向を変更するための複数のコロが配設されている。フィルム主搬送ローラ13には、中間転写フィルムFを介してフィルム主搬送ローラ13に圧接するニップ位置とフィルム主搬送ローラ13から離間した離間位置との間で移動可能な2つのニップコロ21、22が配設されている。ニップコロ21はフィルム主搬送ローラ13の上部側(カード搬送パスCP側)に位置しており、ニップコロ22は下部側に位置している。このようなニップコロ21、22のニップ位置と離間位置との間の移動駆動源には、例えば、磁気式のプランジャを用いることができる。
【0027】
フィルム巻取部6の近傍には、中間転写フィルムFに形成されたマーク(以下、このマークを第1のマークという。)を検出する第1マーク検出センサ10が配置されている。第1マーク検出センサ10と、フィルム主搬送ローラ13との間には、複数のコロを介して画像形成部PF、すなわち、サーマルヘッド9およびプラテンローラ12が対向するように配置されている。また、フィルム主搬送ローラ13の上方には、2つのコロがカード搬送パスCPの下側で略水平方向に並ぶように配設されている。これら2つのコロの間で中間転写フィルムFは略水平に搬送される(この中間転写フィルムFが略水平に搬送される箇所を便宜上水平搬送箇所という。)。これら2つのコロのうち、一方は駆動カード搬送ローラ19cを有する第3カード搬送ローラ対の近傍でカード搬送方向下流側に位置しており、他方は駆動カード搬送ローラ19dを有する第4カード搬送ローラ対の近傍でカード搬送方向上流側に位置している。第3カード搬送ローラ対の近傍に配置されたコロと、フィルム主搬送ローラ13に配されたニップコロ21との間には、中間転写フィルムFに形成された画像をカードに転写する際に中間転写フィルムFのマークを検出するための転写用位置出しセンサ14が配置されている。なお、第1マーク検出センサ10や転写用位置出しセンサ14も、上述した各種センサと同様に、例えば、透過一体型や反射一体型センサで構成することができる。
【0028】
図3(B)に示すように、中間転写フィルムFは、ベースフィルムFa、ベースフィルムFaの背面側に形成された背面コート層Fb、インクを受容する受容層Fe、受容層Feの表面を保護するオーバーコート層Fd、および、ベースフィルムFaの表面側に形成され加熱によりオーバーコート層Fdと受容層Feとを一体としてベースフィルムFaからの剥離を促進する剥離層Fcを有して構成されている。中間転写フィルムFでは、下側から背面コート層Fb、ベースフィルムFa、剥離層Fc、オーバーコート層Fdおよび受容層Feがこの順で積層されている。中間転写フィルムFは、受容層Fe側がインクリボンRと対向し、背面コート層Fb側がプラテンローラ12に当接可能なように搬送される。なお、図3(B)では捨象しているが、上述した第1のマークは、カードCに対する一画面分の所定間隔毎に、中間転写フィルムFの長手方向と交差する方向に直線状に形成されている。
【0029】
図1に示すように、インクリボン搬送部は、インクリボンRを供給するリボン供給部7およびインクリボンRを巻き取るリボン巻取部8を有している。リボン供給部7およびリボン巻取部8のスプール軸では高速で正逆転可能なDCモータM4、M5をそれぞれの回転駆動源としている。
【0030】
リボン供給部7とサーマルヘッド9との間には、インクリボンRに形成されたマーク(以下、このマークを第2のマークという。本例ではこの第2のマークとしてインクリボンRのBKを用いている。)を検出する第2マーク検出センサ11が配置されている。この第2マーク検出センサ11も、上述した各種センサと同様に、例えば、透過一体型や反射一体型センサで構成することができる。第2マーク検出センサ11で第2のマークを検出することにより、インクリボンRの位置を管理している。なお、インクリボンRは、実際には、以下で説明するように複数色で構成されていることから、画像形成時の位置ずれを防止する(印刷品位を高める)ために、略垂直方向に搬送される。
【0031】
図3(A)に示すように、インクリボンRは、例えば、カードCの長手方向の長さより若干長い幅を有する帯状で、フィルム形状を有している。フィルム上には、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、及びBK(ブラック)のインクが塗着されており、これらが面順次に繰り返されている。
【0032】
図1に示すように、画像転写部PTは、上述した中間転写フィルムFの水平搬送箇所における略中央部に配置されている。画像転写部PTでは、中間転写フィルムFに形成された画像のカードCへの転写時にカードCを支持するプラテンローラ27がカード搬送パスCPの上側に配置されており、プラテンローラ27に対して進出位置と退避位置との間で進退可能に配置されたヒートローラ20がカード搬送パスCPの下側に配置されている。すなわち、画像転写部PTでは、カードCに対してカード搬送パスCPの下側から画像を転写することとなる。ヒートローラ20には、中間転写フィルムFを加熱する図示しない発熱ランプが内蔵されている。プラテンローラ27とヒートローラ20とがカード搬送パスCPを搬送されるカードCおよび中間転写フィルムFを挟むように配置されている。ヒートローラ20の進退には、例えば、カムを用いることができる。また、カード搬送パスCPの上側で、第4カード搬送ローラ対と第5カード搬送ローラ対との間には、画像転写後のカードCの反りを矯正するためのデカールローラDRが配置されている。このデカールローラDRは、カード搬送パスCPに対して進出位置と退避位置との間で進退可能に配置されており、内蔵された熱源の熱によりカードCの反りを矯正する。
【0033】
カード搬送パスCPのカード回動部4と反対側に配置されたカード収容部29は、筐体2の底面位置からカード搬送パスCPの高さ位置までの高さを有するボックス形状を有している。カード収容部29内には、排出されたカードCを載せる棚板が上下方向に移動可能に配されている。棚板の下面およびカード収容部29の内底面には、バネの両端部がそれぞれ固定されている。すなわち、棚板はバネにより付勢されている。カード収容部29内では、印刷処理等の終了したカードCが重畳するように積層して収容される。すなわち、カードCは、厚み方向が略垂直方向に沿うようにカード収容部29内に収容される。
【0034】
<制御部>
図2に示すように、制御部40は、印刷装置1の制御処理を行うマイコン40Aを有して構成されている。マイコン40Aは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1の制御動作が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性メモリおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0035】
マイコン40Aには外部バス40Bが接続されている。外部バス40Bには、図示しないタッチパネル(入力表示部)の表示や入力された命令を制御するタッチパネル表示操作制御部40C、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部40D、各モータの駆動を制御するモータ制御部40E、ホストコンピュータ等の外部装置と通信を行うための外部入出力インターフェース40F、カードCに印刷すべき画像情報等を一時的に格納するバッファメモリ40G、サーマルヘッド9の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部40Hがそれぞれ接続されている。また、図2では捨象したが、ニップコロ21、22のニップ位置と離間位置との間の移動やデカールローラDRの進出位置と退避位置との間の移動用のアクチュエータ等を制御するアクチュエータ制御部も接続されている。
【0036】
印刷装置1は、上述したタッチパネルからの命令で動作するが、外部入出力インターフェース40Fを介して上述した外部装置からの命令でも動作可能である。なお、印刷装置1は、上述した各部に作動電源を供給する電源供給部、電源供給部に接続されており商業用電力の供給が遮断された後不揮発性メモリに必要な情報を書き込むための動作時間を確保する電源となる蓄電デバイス(例えば、ボタン型リチウムイオン電池)を有している。
【0037】
(動作)
次に、本実施形態の印刷装置1の動作について制御部40のマイコン40AのCPU(以下、CPUと略称する。)を主体として説明する。なお、制御部40に電源が投入されると、CPUはROMからRAMにプログラムおよびプログラムデータを展開し、上述した各部をホームポジションに位置付ける初期設定処理や、図示しないエンプティセンサからの出力情報を監視することでカードスタッカ3にカードCが収容されているかを確認するとともに、上述した各種センサからの出力情報を監視することで中間転写フィルムFやインクリボンRが装填されているかを確認し、いずれかが収容ないし装填されていない場合には警告音を発生させ、上述したタッチパネルにその旨を表示するとともに、外部装置からの命令で動作する場合には、外部装置にその旨を通知し、いずれもが収容ないし装填されたかを確認するための確認処理、不揮発性メモリを参照して中間転写フィルムFおよびインクリボンRを使用可能な初期位置に搬送する。また、説明を簡単にするために制御部40のバッファメモリ40G内には、外部装置から外部入出力インターフェース40Fを介して受信したY、M、C三色分解済みの画情報や制御情報が格納されており、サーマルヘッド9は退避位置にあり、印刷命令は外部装置から行われるものとして説明する。
【0038】
印刷時には、印刷命令(転写要求)があるまで待機し、印刷命令があると、モータM2を駆動させ中間転写フィルムFをフィルム巻取部6で巻き取るように搬送を開始させるとともに、モータM5を駆動させインクリボンRをリボン巻取部8で巻き取るように搬送を開始させる。このとき中間転写フィルムFの第1マークが第1マーク検出センサ10を通過し、第1マークが画像形成時の中間転写フィルム搬送方向における上流側に位置づけられる(この位置を中間転写フィルムFの初期位置という。)。この状態では、サーマルヘッド9は退避位置に位置しており、第1のマークは第1マーク検出センサ10よりも画像形成時の搬送方向における上流側にあり第1マーク検出センサ10は第1のマークを(画像形成時の中間転写フィルムFの頭出し動作において)未検出である。またインクリボンRは第2マーク検出センサ11によってインクリボンRの位置が管理されているので、インクリボンRのY色の先端部が中間転写フィルムFの印刷開始位置に対応するように位置づけられる(この位置をインクリボンRの初期位置という。)。つまり、サーマルヘッド9とプラテン12とが圧接する位置から、中間転写フィルムFの初期位置における画像形成位置までの距離と、インクリボンRのY色の先端部までの距離とが同じになるように中間転写フィルムFおよびインクリボンRの初期位置が設定される。
【0039】
次に、サーマルヘッド9を印刷位置に移動させる。この状態でも、第1のマークは第1マーク検出センサ10よりも画像形成時の搬送方向における上流側にあり第1マーク検出センサ10は第1のマークを未検出である。
【0040】
次いで、中間転写フィルムF、インクリボンRを(画像形成時における搬送方向に)搬送させつつ、第1マーク検出センサ10の出力情報(出力信号)を監視することで、第1マーク検出センサ10が第1のマークを検出したか否かを判断し、否定判断のときは監視を継続し、肯定判断のときはさらに中間転写フィルムF、インクリボンRをそれぞれ所定距離搬送させる頭出しを行う。なお、インクリボンRと中間転写フィルムFとは同時に同じ距離だけ搬送される。この状態では、中間転写フィルムF(厳密には、画像形成の対象となる一画面分の中間転写フィルムFの位置)は印刷開始位置(インクリボンRに対してサーマルヘッド9を構成する加熱素子を選択的に加熱することで、中間転写フィルムFに画像の形成を開始する位置)よりも上流側にあり、サーマルヘッド9には予備通電が開始される。なお、予備通電ではサーマルヘッド9に対しインクリボンRのインクを中間転写フィルムFに転写できない、すなわち、発色不能な温度の上限近傍まで各加熱素子が加熱される。このような予備通電は、中間転写フィルムFが印刷開始位置に至って直ちにサーマルヘッド9を構成する加熱素子を選択的に加熱しても、加熱素子が追随できないことで印刷品位が低下することを防止するために行われる。
【0041】
また、なおも中間転写フィルムF、インクリボンRを継続して搬送させつつ、中間転写フィルムFおよびインクリボンRがともに印刷開始位置に到ると(モータ制御部40EはDCモータについては時間管理、ステッピングモータについてはパルス管理を行うことで印刷開始位置に中間転写フィルムFが到ったことを把握可能である。)、サーマルヘッド9を構成する加熱素子を選択的に加熱させて中間転写フィルムFへの画像形成を開始させる。このとき、上述したように、インクリボンRは、Y、M、C、BKの順に配置されているので、厳密には、一画面分の中間転写フィルムFの頭出し位置とインクリボンRのYの頭出し位置とが印刷開始位置に到った状態を示している。なお、このような位置合わせ処理については後述する。
【0042】
さらに、中間転写フィルムF、インクリボンRは継続して搬送され、一画面分の中間転写フィルムFへの画像転写が終了する。ここではBK一色による印刷例を示すが、Y、M、C三色によるカラー印刷を行う際は、サーマルヘッド9を退避位置に移動させ、第1マーク検出センサ10および第2マーク検出センサ11の出力情報を監視することで、第1のマークが第1マーク検出センサ10の配置位置よりも中間転写フィルムFへの画像形成時の搬送方向における上流側に到るまで中間転写フィルムFを逆搬送させるとともに、インクリボンRの次色のインク(M色)の先端が中間転写フィルムFの初期位置に対応するようにインクリボンRを逆搬送させる。
【0043】
このとき、一画面分の中間転写フィルムFの位置と、インクリボンRの次色のインク(M)の位置が、初期位置に到るまで逆搬送するが、その際、一画面分の中間転写フィルムFの位置と、インクリボンRの次色のインク(M)の位置が印刷開始位置に重なるように、中間転写フィルムFの初期位置から印刷開始位置までの距離を計算して、それに応じて逆搬送する。
【0044】
この距離計算の内容を説明すると、Yを印刷するときは、中間転写フィルムFおよびインクリボンRが印刷開始位置に到達した状態で中間転写フィルムFの印刷開始位置とYの印刷開始位置とが重なるように、第1のマークが第1マーク検出センサ10よりも画像形成時の搬送方向上流側にあり第1マーク検出センサ10による第1のマークが未検出の初期位置でインクリボンRのYの位置を合わせる。その際、中間転写フィルムFの初期位置から印刷開始位置までの距離を計算しておいて、それに合わせてインクリボンRの初期位置を決定する。Yの印刷が終了したら、次はMの印刷位置と中間転写フィルムFの印刷開始位置が重なるようにM印刷時のインクリボンRの初期位置を決定する。次のCについても同じである。なお、インクリボンRは第2マーク検出センサ11でBKを検出することで、インクリボンRの絶対位置を管理しているため、中間転写フィルムFの位置出しがずれていなければ印刷品位の低下は招かない。
【0045】
以上のように、Y、M、C三色による中間転写フィルムFへの画像形成が終了すると、CPUは、中間転写フィルムFに形成された画像を画像転写部PTまで搬送させ、画像形成部PTにおいてカードCに画像を転写させる転写処理を実行する。
【0046】
転写処理では、まず、カード供給ローラ18を回転駆動させ、カードスタッカ3からブランクのカードCを供給パスSPへ送り出す。供給パスSP上に配置された第1カード搬送ローラ対は、カード供給ローラ18の駆動と同時に回転駆動し、カードCの印刷面側を清浄するとともに、供給パスSPでのカード回動部4への搬送を促進させる。また、図5に示すように、第1カード搬送ローラ対の回転駆動と同時に、CPUは、カード回動部4を回動させ、2つのピンチローラ対が供給パスSPの延長線上に位置するように位置付ける(この位置をカード回動部4の初期位置という。)。カード回動部4の供給パスSP側に配されたポジションセンサが2つのピンチローラ対のうちの一方のピンチローラ対における駆動ローラを検出したときにカード回動部4の回動駆動を停止させる。カードCの搬送方向先端がカード回動部4近傍に配置されたカード位置出しセンサ15aで検出されると、CPUは、カード供給ローラ18の回転駆動を停止させるとともに、カード回動部4の2つのピンチローラ対を回転駆動させる。ブランクカードが所定距離搬送された時点で、第1カード搬送ローラ対およびカード回動部4の2つのピンチローラ対の回転駆動を停止させる。これにより、カードCはカード回動部4の2つのピンチローラ対で挟持された状態となる。
【0047】
次いで、CPUは、バッファメモリ40内に格納されている制御情報を参照して、カードCが磁気カードかICカードかを判断し、その判断結果に応じてカード回動部4を所定角度回動させ、カードCを磁気書込部23またはIC書込部24へ向けて送り出す。カードCが磁気カードの場合は、カード回動部4の回動によりカード搬送方向を磁気書込部23に向けた時点、すなわち、カード回動部4の供給パスSP側に配されたポジションセンサによりカードCが検出されてカード搬送方向が供給パスSPの方向と一致した時点で、カード回動部4の2つのピンチローラ対を駆動させる。カードCの搬送方向後端がカード回動部4近傍に配置されたカード位置出しセンサ15dで検出されたときに、ピンチローラ対の回転駆動を停止させる。カードCが一端をカード回動部4のピンチローラ対の1つに保持された状態で、磁気書込部23により磁気情報が記録されベリファイが実行される。また、カードCがICカードの場合は、図6に示すように、カード回動部4の回動によりカード搬送方向をIC書込部24に向けた時点、すなわち、カード回動部4のIC書込部24側に配されたポジションセンサによりカードCが検出された時点で、カード回動部4の2つのピンチローラ対を駆動させる。カードCの搬送方向後端がカード回動部4近傍に配置されたカード位置出しセンサ15bで検出されたときに、ピンチローラ対の回転駆動を停止させる。カードブランクが一端をカード回動部4のピンチローラ対の1つに保持された状態で、IC書込部23によりカードCに電子情報が記録されベリファイが実行される。
【0048】
また、CPUは、バッファメモリ40内に格納されている制御情報を参照して、カードCにバーコード情報の記録を要するか否かを判断し、その判断結果に応じてカード回動部4を所定角度回動させ、カードCをバーコード書込部28へ向けて送り出す。このとき、カード回動部4の回動によりカード搬送方向がカード搬送パスCPの方向と一致した時点、すなわち、カード回動部4のカード搬送パスCP側に配されたポジションセンサによりカードCが検出された時点で、カード回動部4の2つのピンチローラ対を駆動させる。カードCがバーコード書込部28に向けて所定距離搬送されたときに、ピンチローラ対の回転駆動を停止させる。カードCが一端をカード回動部4のピンチローラ対の1つに保持された状態で、バーコード書込部28によりバーコード情報が付されベリファイが実行される。
【0049】
カードCへの情報記録後のカードCを磁気書込部23、IC書込部24またはバーコード書込部28から受け取り、ベリファイ結果に応じて、イジェクトボックス25へ向けて搬送するか、カード搬送パスCP上を第2カード搬送ローラ対側に搬送するかを決定する。イジェクトボックス25へ向けて搬送すると決定したときは、カード回動部4のIC書込部24側に配されたポジションセンサによりカードCが検出されてカード搬送方向がIC書込部24の方向と一致した時点で、カード回動部4の2つのピンチローラ対を駆動させてイジェクトボックス25へ搬送した後、上述したカード供給ローラ18によるブランクのカードCの供給からやり直す。
【0050】
一方、カード搬送パスCP上を第2カード搬送ローラ対側に搬送すると決定したときは、カード回動部4のカード搬送パスCP側に配されたポジションセンサによりカードCが検出されてカード搬送方向がカード搬送パスCPの方向と一致した時点で、カード回動部4の2つのピンチローラ対を駆動させ、カード搬送パスCPへカードCを搬送する。カードCの搬送方向先端がカード回動部4近傍に配置されたカード位置出しセンサ15cで検出されたときに、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラを回転駆動させる。カード位置出しセンサ16がカードCの搬送方向先端を検出すると、カード回動部4のピンチローラ対の回転駆動を停止させ、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラを停止させる。これにより、カードCは一旦第2および第3カード搬送ローラ対に挟持された状態となる。
【0051】
カードCが第2および第3カード搬送ローラ対に挟持された後(画像が形成された中間転写フィルムFの搬送を一旦停止すると、搬送を再開したときにニップコロ21、22による局部的な加圧より中間転写フィルムF上の画像の品位低下を避けるためである。)、CPUは、ニップコロ21、22をニップ位置へ移動させ、画像形成部PFで一画面分の画像が形成された中間転写フィルムFを画像転写部PTへ向けて搬送させる。この搬送は、モータM1およびステッピングモータM3を駆動させ、転写用位置出しセンサ14で第1のマークの検出を確認しながら行う。この搬送処理に先立て、CPUはヒートローラ20の発熱ランプを発熱させて進出位置へ進出させる。
【0052】
転写用位置出しセンサ14が第1のマークを検出すると、CPUは、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラを回転駆動させ、第2および第3カード搬送ローラ対に挟持されたカードCを、画像転写部PTに向けて搬送する。これにより、中間転写フィルムFおよびカードCは同一のスピードで画像転写部PTに向けて搬送され、カードCは上側(裏面側)を回転するプラテンローラ27に支持され、その下側(表面側)が中間転写フィルムFの一画面分の画像形成位置を介してヒートランプ20により加熱されることで、中間転写フィルムFの一画面分の画像がカードCに転写される。
【0053】
画像転写終了後、カードCはなおもカード搬送パスCP上を下流側に搬送され、カード位置出しセンサ17がカードCの搬送方向先端を検出すると、CPUは、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラを回転駆動を停止させる。これにより、カードCは、一旦第4および第5カード搬送ローラ対に挟持された状態となる。この状態で、デカールローラDRを進出位置に位置付け、カードCの反りを矯正する。デカールローラDRを退避位置に位置付けた後、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラを逆回転方向に駆動させ、カード搬送パスCP上をカード回動部4側に向けてカードCを逆搬送させる。カードCの搬送方向先端がカード位置出しセンサ15cにより検出された時点で、カード回動部4のピンチローラ対を回転駆動させる。カードCの搬送方向後端がカード位置出しセンサ15cにより検出された時点で、カード搬送パスCPに配設された駆動カード搬送ローラおよびカード回動部4のピンチローラ対の回転駆動を停止させる。これにより、カードCは再度カード回動部4の2つのピンチローラ対に挟持された状態となる。
【0054】
次いで、CPUは、カードCを挟持したカード回動部4を180°回動させる。これにより、カードCは下側(表面側)が裏面側に反転して位置することとなる。そして、第2カード搬送ローラ対側に搬送され第2および第3カード搬送ローラ対に挟持されることになるが、この後の制御については既に説明したので、省略する。
【0055】
一般に、カードCの裏面側にはカードCに関連する情報が印刷されている場合が多いため、本例でもその場合について説明すると、上述した印刷処理をBK一色で行うことで中間転写フィルムFには一画面分の画像が形成される。この点で、既に説明した印刷処理の内容とは異なっているが、それ以外の処理内容は同じであるので、説明を省略する。また、転写処理ではカードスタッカ3からブランクのカードCを供給しない点、カードCに磁気ないし電子情報やバーコード情報を記録しない点で異なっており、カードは既に第2および第3カード搬送ローラ対に挟持されているので、画像転写部PTで裏面側に中間転写フィルムFに形成された画像の転写を行えばよく、その説明は重複するので、省略する。
【0056】
裏面側への画像転写終了後、カードCはなおもカード搬送パスCP上を下流側に搬送され、筺体2の外側面に形成された排出口を介して筐体2の外に排出される。この位置には、印刷や情報記録の処理済みのカードCを収容するカード収容部29が配置されている。筐体2から排出されたカードCは、カード収容部29内の棚板に重畳するように積層される。これにより、カードCは、整列された状態でカード収容部29に収容される。カード収容部29内にカードCが未収容のときは棚板がバネの付勢によりカード収容部29内の上部に位置している。カードCがカード収容部29に収容され始めると、収容数量の増大に伴いその重さで棚板が下方に移動し上部の収容スペースが確保される。
【0057】
カード位置出しセンサ17がカード搬送方向後端を検出した後、所定時間経過すると、CPUは、カード搬送パスCP上に配設された駆動カード搬送ローラおよびカード回動部4の2つのピンチローラ対の回転駆動を停止せ、モータM1を駆動させて中間転写フィルムFを所定位置まで巻き戻し、中間転写フィルムFの未使用画面の位置情報を不揮発性メモリに記憶させる。これにより、一枚のカードCに対する印刷が終了する。
【0058】
(作用等)
次に、本実施形態の印刷装置1の作用等について説明する。
【0059】
本実施形態の印刷装置1では、筐体2の上部に配置された蓋体2Aの上側にカードスタッカ3が配されている。このため、カードスタッカ3を蓋体2Aの長さ分で大きくすることができ、カードスタッカ3内にカードCを並置されるように積層して収容することで、カードCの供給数量を大きくすることができる。筐体2の内部では、蓋体2Aの下方にカード搬送パスCPが配置されており、カード搬送パスCPの下方に印刷部PRが配置されている。このため、カード搬送パスCPが筐体2内の上部に位置するので、カード搬送パスCPの最下流側で筐体2の外側に配置されたカード収容部29の高さを大きくすることができる。従って、カードスタッカ3から供給され印刷や情報記録等の処理が終了したカードCの全てをカード収容部29で収容可能となるため、大量供給に対する大量排出に対応することができる。また、カード搬送パスCPの下方に印刷部PRが配置され、蓋体2Aの上側にカードスタッカ3が配されたことで、大量処理の可能な装置全体として小型化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態の印刷装置1では、カードスタッカ3が蓋体2Aに対して着脱可能に構成されている。このため、カードCの種類やサイズ毎にカードスタッカ3を準備しておくことで、供給するカードCの交換作業が容易となり、種々のカードCに対応しやすくすることができる。また、印刷部PRをカード搬送パスCPの下方に設けたことで、蓋体2Aの直下近傍にカード搬送パスCPが配置されている。このため、カードスタッカ3を蓋体2Aから取り外し、蓋体2Aを開放することで、筐体2の上部開口からカード搬送パスCPに容易にアクセスすることが可能となる(図4も参照。)。これにより、カード詰まり等のジャム(JAM)が発生した場合でも、JAM解除性能を向上させることができる。さらには、印刷部PRを磁気書込部23とカード収容部29との間に設けたことで、JAM発生が多くなりやすい画像転写部PTがカード搬送パスCPの略中央部に配置されているため、JAM解除の作業効率を向上させることができる。また、蓋体2Aの直下近傍にカード搬送パスCPが配置されているため、JAM解除の際にインクリボンRや中間転写フィルムFを取り外す必要がなくなり、インクリボンRや中間転写フィルムFに対するゴミの付着を回避することができる。
【0061】
更に、本実施形態の印刷装置1では、IC書込部24がカード搬送パスCPの上方でカードスタッカ3の下方に配置されており、画像転写部PTとカード回動部4との間に配置されている。このため、筐体2内のスペースを有効活用することができ、装置全体の小型化に寄与することができる。この配置では、画像転写部PTでJAMが発生した場合でも、IC書込部24がJAM解除作業の妨げとなることを回避することができる。
【0062】
また更に、本実施形態の印刷装置1では、磁気書込部23による磁気情報の記録処理、IC書込部24による電子情報の記録処理、バーコード書込部28によるバーコード情報の記録処理を行うときに、カードCがカード回動部4のピンチローラ対で一端を保持された状態で記録処理が行われる(図6も参照。)。このため、磁気書込部23、IC書込部24、バーコード書込部28に駆動機構を設けることが不要となる。これにより、装置全体の小型化に寄与することができ、駆動機構を不要とした分でエネルギー消費を低減することができる。また、印刷装置1では、バーコード書込部28がカード搬送パスCPの延長線上で、筐体2のカード回動部4側の外側に配置されている。このため、バーコード情報が不要のときは、バーコード書込部28を取り外すことができ、汎用性を向上させることができる。
【0063】
更にまた、本実施形態の印刷装置1では、磁気書込部23が、供給パスSPの延長線上でカード回動部4におけるカードスタッカ3の反対側、すなわち、カード回動部4の下方に配置されている。このため、カードCに対する磁気情報の記録に際し、カードCを磁気書込部23に向けて位置付けるときに、カード回動部4の供給パスSP側に配されたポジションセンサを兼用することができる(図5も参照。)。また、IC書込部24、カード回動部4およびイジェクトボックス25が直線上に配置されており、イジェクトボックス25がカード回動部4におけるIC書込部24の反対側に配置されている。このため、記録処理が失敗したカードCの排出に際し、カードCをイジェクトボックス25に向けて位置付けるときに、カード回動部4のIC書込部24側に配されたポジションセンサを兼用することができる(図6も参照。)。従って、磁気書込部23、イジェクトボックス25側のポジションセンサが不要なため、カード回動部4におけるセンサ数を減少させることができる。
【0064】
そして、本実施形態の印刷装置1では、駆動カード搬送ローラ19bを有する第2カード搬送ローラ対と、画像転写部PTを構成するプラテンローラ27との間のカード搬送パスCP上に、カードCの1枚分の待機スペースが形成されている。このため、画像転写部PTにより画像転写を実行しているときに、カード回動部4の回動により磁気書込部23やIC書込部24で磁気情報や電子情報の記録処理を行うことができるので、印刷処理と記録処理との並列処理を可能とすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、カード搬送パスCPの延長線上にバーコード書込部28を配置する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。バーコード情報の記録処理に代えて、例えば、カードCに内蔵されたICに電子情報を記録するように構成することも可能である。この場合、IC書込部24で非接触型ICに対する記録処理を行うことに対して、接触側ICに対する記録処理を行うようにすることで、使い分けをすることができる。また、種々の要望に対応可能な記録処理を行うように構成するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、磁気書込部23やIC書込部24による記録処理の後、印刷部PRによる印刷処理を行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、記録処理と印刷処理との順序を入れ替えて行うようにしてもよい。この場合は、カードスタッカ3からカード回動部4に搬送されたブランクのカードCをカード搬送パスCP上に送り出すように制御すれば、記録処理前に印刷処理を行うことができる。
【0067】
更に、本実施形態では、フィルム巻取部6をフィルム供給部5の下方に配置した例を示したが、本発明はこれに限定されず、フィルム供給部5とフィルム巻取部6との位置を入れ替えてもよい。また、リボン巻取部8をリボン供給部7の上方に配置した例を示したが、本発明はこれに限定されず、リボン巻取部8とリボン供給部7との位置を入れ替えてもよいことはもちろんである。さらに、本実施形態では、中間転写フィルムFやインクリボンRの供給部や巻取部にそれぞれDCモータを用いた例を示したが、ギア機構により供給部と巻取部とで共通のDCモータを用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は小型化を図るとともに印刷媒体の大量供給に対する大量排出に対応可能な印刷装置を提供するものであるため、印刷装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0069】
1 印刷装置
2 筐体(装置筐体)
2A 蓋体(上蓋)
3 カードスタッカ(供給スタッカ)
4 カード回動部(転換部)
23 磁気書込部(第2の記録部)
24 IC書込部(第1の記録部)
25 イジェクトボックス(エラー排出口)
28 バーコード書込部(第3の記録部)
29 カード収容部(排出スタッカ)
F 中間転写フィルム(中間転写媒体)
R インクリボン
C カード(印刷媒体)
CP カード搬送パス(搬送パス)
SP 供給パス
PR 印刷部
PT 画像転写部(転写部)
PF 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状の印刷媒体に印刷可能な印刷装置において、
前記印刷媒体を搬送するための直線状の搬送パスと、
前記搬送パスの一端に設けられ、前記印刷媒体の搬送方向を転換する転換部と、
前記搬送パスおよび前記転換部の上方に設けられ、処理前の印刷媒体を並置されるように積層して収容する供給スタッカと、
前記搬送パスの下方に設けられ、前記印刷媒体に対して前記搬送パスの下側から印刷処理を施す印刷部と、
前記搬送パスの他端に設けられ、前記印刷部で印刷処理された印刷媒体を重畳するように積層して収容する排出スタッカと、
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記搬送パスを覆う開閉可能な上蓋を装置筐体の一部として有し、前記供給スタッカは前記上蓋に対して着脱可能に構成されており、前記供給スタッカが前記上蓋に対して未着状態で前記上蓋が開閉可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は、中間転写媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部の上方に設けられ前記中間転写媒体に形成された画像を前記印刷媒体に転写する転写部とを有しており、前記転写部と前記転換部との間でかつ前記搬送パスと前記供給スタッカとの間に、前記印刷媒体に情報を記録する第1の記録部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1の記録部は、前記印刷媒体が前記転換部により一端を保持された状態で、前記印刷媒体に対して記録処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記供給スタッカから前記転換部に向けて前記印刷媒体を供給するための供給パスの延長線上で、前記転換部における前記供給スタッカの反対側に前記印刷媒体に情報を記録する第2の記録部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1または第2の記録部での記録処理が失敗した場合の印刷媒体を排出するためのエラー排出口をさらに備え、前記エラー排出口は前記転換部における前記第1の記録部の反対側に設けられるとともに、前記第1の記録部、転換部およびエラー排出口は直線上に配置されており、前記転換部から前記エラー排出口に向けて前記記録処理が失敗した印刷媒体が排出されることを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記転換部の前記搬送パスの延長線上に前記印刷媒体に情報を記録する第3の記録部をさらに備え、前記第3の記録部は、前記印刷媒体が前記転換部により一端を保持された状態で、前記印刷媒体に対して記録処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷部は、前記排出スタッカと前記第2の記録部との間に設けられたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136783(P2011−136783A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297109(P2009−297109)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】