説明

印刷配線板

【課題】 電子機器の筐体内に高密度に収納可能な印刷配線板を提供すること。
【解決手段】 屈曲性を有する基材と、この基材の少なくとも一側に形成された導体と、を備える印刷配線板であって、屈曲される屈曲領域、及び、屈曲されない非屈曲領域を有し、屈曲領域に形成された導体の厚みは1〜30μmであり、非屈曲領域に形成された導体の厚みは30〜150μmであり、非屈曲領域に形成された導体の厚みは、屈曲領域に形成された前記導体の厚みよりも大きく、屈曲領域に形成された導体の厚みは、非屈曲領域に形成された導体の厚みの6〜60%である印刷配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用の積層板は、電気絶縁性を有する樹脂組成物をマトリックスとするプリプレグを所定の枚数重ね、加熱加圧して一体化することにより得られる。また、プリント配線板の作製において、プリント回路をサブトラクティブ法により形成する場合には、金属張積層板が用いられる。この金属張積層板は、プリプレグの表面(片面又は両面)に銅箔等の金属箔を重ねて加熱加圧することにより製造される。
【0003】
電気絶縁性を有する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等のような熱硬化性樹脂が広く用いられる。また、フッ素樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂等のような熱可塑性樹脂が用いられることもある。
【0004】
一方、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴って、これらに搭載される印刷配線板は小型化、高密度化が進んでいる。その実装形態はピン挿入型から表面実装型、さらにはプラスチック基板を使用したBGA(ボールグリッドアレイ)に代表されるエリアアレイ型へと進んでいる。
【0005】
このBGAのようなベアチップを直接実装する基板では、チップと基板の接続は、熱超音波圧着によるワイヤボンディングで行うのが一般的である。このため、ベアチップを実装する基板は150℃以上の高温にさらされることになり、電気絶縁性樹脂にはある程度の耐熱性が必要となる。
【0006】
さらに、このような基板では、一度実装したチップを外す、いわゆるリペア性も要求される場合がある。この場合には、チップ実装時と同程度の熱がかけられ、また、基板にはその後再度チップ実装が施されることになり、さらに熱処理が行われることになる。したがって、リペア性の要求される基板では、高温でのサイクル的な耐熱衝撃性も要求される。そして、従来の絶縁性樹脂では、繊維基材と樹脂の間で剥離が生じる場合があった。
【0007】
そこで、印刷配線板において、耐熱衝撃性、耐リフロー性、耐クラック性に加え、微細配線形成性を向上させるために、繊維基材にポリアミドイミドを必須成分とする樹脂組成物を含浸したプリプレグが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、シリコーン変性ポリイミド樹脂と熱硬化性樹脂からなる樹脂組成物を繊維基材に含浸させた耐熱性の基材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、電子機器の小型化、高性能化に伴い、より限られた空間内に部品実装を施された印刷配線板を収納することが必要となってきている。そのためには、複数の印刷配線板を多段に配し相互をワイヤーハーネスやフレキシブル配線板によって接続する方法がとられている(例えば、特許文献3参照)。また、ポリイミドをベースとするフレキシブル基板と従来のリジッド基板を多層化したリジッド−フレックス基板が用いられることもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−55486号公報
【特許文献2】特開平8−193139号公報
【特許文献3】特開2002−064271号公報
【特許文献4】特開平6−302962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の印刷配線板においては、印刷配線板をワイヤーハーネスやフレキシブル配線板で接続したり、フレキシブル基板とリジット基板とを多層化したりする分、余分なスペースが必要となるため、ある程度以上の高密度化を達成するのが困難である。
【0011】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電子機器の筐体内に高密度に収納可能な印刷配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の印刷配線板は、屈曲性を有する基材と、この基材の少なくとも一側に形成された導体とを備える印刷配線板であって、屈曲される屈曲領域、及び、屈曲されない非屈曲領域を有し、屈曲領域に形成された導体の厚みは1〜30μmであり、非屈曲領域に形成された導体の厚みは30〜150μmであることを特徴とする。
【0013】
ここで、屈曲される屈曲領域とは、印刷配線板を収納する際に折り曲げられる部分をいう。一方、屈曲されない非屈曲領域とは、印刷配線板を収納する際に折り曲げられない部分であり、例えば、意図しないで折り曲げ方向に応力が加わったような状態の領域は、実質的には屈曲されていないとみなし、非屈曲領域に該当する。
【0014】
このように、本発明の印刷配線板においては、屈曲部分の導体の厚みを1〜30μmとするとともに、非屈曲部分の導体の厚みを30〜150μmとすることで、一体の印刷配線板内にフレキシブルな部分とリジッドな部分との両方を含む構成となっている。かかる構成を有する印刷配線板は、フレキシブルな部分において容易に屈曲させることができるため、電子機器内等のスペース内に高密度で収納することができる。
【0015】
上記本発明の印刷配線板においては、非屈曲領域に形成された導体の厚みは、屈曲領域に形成された導体の厚みよりも大きくされていると好ましい。このような本発明の印刷配線板は、通常剛性の高い金属等からなる導体の厚みを変えることだけで、屈曲性の印刷配線板において容易に非屈曲性の部位を有することができる。このため、リジッド配線板とフレキシブル配線板を組み合わせる従来のリジッド−フレキシブル配線板に比べて構造が簡単になる。また剛性の高い金属によりリジッド性を発現するため、従来のリジッド−フレキシブル配線板に比べて薄型化が可能となる。その結果、電子機器等の内部に収納する際に、限られた空間内に効率よく収納することができる。
【0016】
つまり、上記本発明の印刷配線板は、屈曲性を有する基材と、この基材上に形成された導体とを備える印刷配線板であって、屈曲される屈曲領域、及び、実質的に屈曲されない非屈曲領域を有し、屈曲領域に形成された導体の厚みは、非屈曲領域に形成された導体の厚みよりも小さいことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の印刷配線板において、屈曲領域に形成された導体の厚みは、非屈曲領域に形成された前記導体の厚みの6〜60%であると好ましい。こうすれば、屈曲領域が良好な屈曲性を有しながら非屈曲領域が良好な剛性を維持することができるようになる。その結果、印刷配線板の信頼性が向上する。
【0018】
より具体的には、屈曲領域に形成された導体は、エッチングにより厚みを1〜30μmとされたものであると好適である。また、非屈曲領域に形成された導体は、めっきにより厚みを30〜150μmとされたものであると好適である。これらにより、屈曲領域及び非屈曲領域の導体がそれぞれ好適な厚みに良好に調製されたものとなり、これらの領域がそれぞれ所望の屈曲性及び剛性を有し易くなる。
【0019】
また、上記本発明の印刷配線板において、基材は繊維基材を含み、且つ、繊維基材が厚み50μm以下のガラスクロスであると好ましい。このような繊維基材を含む基材は、薄型であるにもかかわらず屈曲部分で十分な強度を維持できるほか、優れた寸法安定性をも有するものとなる。したがって、かかる基材を備える印刷配線板は、薄型であり、しかも屈曲領域での折り曲げが容易であることから、高密度で収納することが一層容易なものとなる。
【0020】
また、基材は、熱硬化性樹脂組成物をマトリックスとして含むものであるとより好ましい。特に、熱硬化性樹脂組成物を硬化した状態で含むと好ましい。このような基材は、優れた電気絶縁性に加え、優れた耐熱性を有するものとなる。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物としては、具体的には、グリシジル基を有する樹脂、アミド基を有する樹脂及びアクリル樹脂のうちの少なくとも一種を含むものが好ましい。かかる熱硬化性樹脂組成物を含む基材は、耐熱性、電気絶縁性のほか、機械的強度や可とう性が良好なものとなり、印刷配線板の強度や柔軟性を向上させ得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明による印刷配線板は、屈曲領域と非屈曲領域において所定の厚みを有する導体をそれぞれ有することで、リジッドな部分とフレキシブルな部分を一体の構造中に含むことから、従来のリジッド−フレックス基板等に比して大幅な薄型化が可能であるほか、余分なスペースが必要とされない。したがって、電子機器の限られた空間内であっても高密度で収納することができる。また、基材も一体であることから、この基材を構成する樹脂成分を単一にすることができ、優れた耐熱性、機械的強度及び耐衝撃性を有するものとなり得る。さらに、基材中に繊維基材を含む場合は、屈曲領域にも繊維基材が含まれることとなり、折り曲げ部分の強度も十分に維持されるほか、寸法安定性にも優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】屈曲領域に形成された導体をエッチングする工程を模式的に示す工程断面図である。
【図2】非屈曲領域に形成された導体にめっきする工程を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明の印刷配線板を得るための好適な製造方法について説明する。印刷配線板は、繊維基材、及び、柔軟性を有する熱硬化性樹脂組成物を含む基材と、この基材の両面に積層された所定の厚みを有する銅箔からなる導体とを備える銅張り積層板を用いて製造することが好ましい。そして、この銅張り積層板を加工して印刷配線板を得るには、導体から回路を形成する工程において、印刷配線板の屈曲される領域(屈曲領域)に形成された導体をエッチングする方法や、印刷配線板の屈曲されない領域(非屈曲領域)に形成された導体にめっきを施す方法により、両領域に形成された導体をそれぞれ所望の厚みとなるようにする。以下、これらのエッチング及びめっきの方法をそれぞれ図1及び図2を参照して説明する。
【0026】
(屈曲領域に形成された導体をエッチングする方法)
図1は、屈曲領域に形成された導体をエッチングする工程を模式的に示す工程断面図である。まず、図1(a)に示すように、繊維基材、及び、柔軟性を有する熱硬化性樹脂組成物を含む基材1と、この基材1の片面に積層された厚み18μmの銅箔2と、基材1のもう一方の面に積層された厚み70μmの銅箔3とを備える銅張り積層板30を準備する。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、銅張り積層板30における銅箔2及び銅箔3の表面上にエッチングレジストをラミネートした後、公知のフォトリソ工程等により所定の形状を有するエッチングレジストパターン4を形成する。この際、エッチングレジストパターン4は、銅箔2及び3のエッチング後に所望の回路パターンが得られるような形状とする。
【0028】
それから、公知の銅エッチング方法により、エッチングレジストパターン4が形成されていない領域の銅箔2及び3をエッチングして、図1(c)に示すように銅箔2及び3を所定のパターンに加工する。かかるエッチングは、エッチングレジストパターン4が形成されていない領域の銅箔2(厚み18μm)が完全に除去される程度に行う。この場合、厚み70μmの銅箔3における上記領域は、完全にエッチングされずに残ることとなる。
【0029】
続いて、図1(d)に示すように、基材1における銅箔2が形成された側に、その全面が覆われるようにエッチングレジスト5をラミネートする。この際、銅箔2及び3の表面上には、エッチングレジストパターン4が形成されたままとする。これによって、銅箔3におけるエッチングレジストパターン4が形成されていない領域が開口された状態となる。この領域が、後述するように印刷配線板40とした場合の屈曲領域36となる。
【0030】
その後、図1(e)に示すように、上記のように開口された部分の銅箔3を更にエッチングして、屈曲領域となるべき部分6(フレキシブル性付与部分)の銅箔を完全に除去する。そして、すべてのエッチングレジスト(エッチングレジストパターン4及びエッチングレジスト5)を、公知のレジスト剥離工程により除去する。これにより、基材1の両表面上に、屈曲領域36に形成された導体7、並びに、非屈曲領域46に形成された導体8及び導体9を備える図1(f)に示す印刷配線板40を得る。
【0031】
このようにして得られた印刷配線板40は、導体の総厚みが1〜30μmである屈曲領域36、及び、導体の総厚みが、30〜150μmである非屈曲領域46を有するようになる。なお、導体の総厚みとは、厚さ方向に複数の導体を有する場合はその合計の厚みを意味し、厚さ方向に一つの導体のみを有する場合はその導体のみの厚みを意味するものとする。したがって、上記の例では、屈曲領域36に形成された導体の厚みは、導体7の厚みである18μmであり、非屈曲領域46に形成された導体の厚みは、導体9の厚みである70μm、又は、導体8及び9の合計厚みである88μmとなる。
【0032】
以上のように、本方法では、基材上に形成された30μmを超える総厚みを有する導体を、所定の形状にパターニングした後、このパターン化された導体のうちの屈曲領域となるべき領域に形成された部分をエッチングすることによって、屈曲領域及び非屈曲領域に形成された導体がそれぞれ所定の厚みである印刷配線板が得られる。
【0033】
なお、上記の方法においては、導箔2,3をパターン加工した後にエッチングを行ったが、これに限定されず、銅箔2,3のエッチング後にパターン加工を行うようにしてもよい。また、上記の方法では、基材1の両面に形成された銅箔2,3のうち銅箔3をエッチングにより完全に除去し、所望の厚みを有する片側の銅箔2だけを残すことによって、屈曲領域における導体の厚みを調整したが、例えば、銅箔2,3の両方を適度にエッチングすることによって、屈曲領域部分の導体の総厚みが所望の範囲内となるように調整してもよい。
【0034】
(非屈曲領域に形成された導体にめっきする方法)
図2は、非屈曲領域に形成された導体にめっきする工程を模式的に示す工程断面図である。まず、図2(a)に示すように、繊維基材、及び、柔軟性を有する熱硬化性樹脂組成物を含む基材1と、この基材1の両面に積層された厚み3μmの銅箔10とを備える銅張り積層板50を準備する。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、銅張り積層板50における一対の銅箔10の両表面上にめっきレジストを形成した後、公知のフォトリソ工程等により所定の形状を有するめっきレジストパターン20を形成する。この際、めっきレジストパターン20は、銅箔10にめっきを施すことにより所望の回路パターンが得られるような形状とする。
【0036】
それから、図2(c)に示すように、めっきレジストパターン20が形成された銅箔10に、電気めっきにより所定の厚みとなるようにめっきを施し、これにより銅箔10の露出面上にめっき銅21を形成する。
【0037】
続いて、図2(d)に示すように、めっき銅21が形成され、且つ、めっきレジストパターン20が形成された状態の銅張り積層板50の両面に、めっきレジストを更にラミネートした後、後述の非屈曲領域66となるべき部分22(リジッド性付与部分)のみが開口されるような形状にパターニングを行い、めっきレジストパターン24を形成する。
【0038】
その後、図2(e)に示すように、めっきレジストパターン24が形成されていないめっき銅21の表面上に、電気めっきによりめっき後の導体の厚みが30〜150μmとなるようにめっきを行い、めっき銅23を更に形成する。それから、図2(f)に示すように、すべてのめっきレジスト(めっきレジストパターン20及びめっきレジストパターン24)を、公知のレジスト剥離工程により除去する。
【0039】
そして、めっき銅21及びめっき銅23が形成されていない部分の銅箔10を、エッチングにより除去する。これにより、基材1の両表面上に、屈曲領域に形成された導体17、並びに、非屈曲領域に形成された導体18及び導体19を備える図2(f)に示す印刷配線板60を得る。
【0040】
このようにして得られた印刷配線板60は、導体の総厚み(ここでは、導体17の厚み)が1〜30μmである屈曲領域56、及び、導体の総厚み(導体19のみの厚み、又は、導体18及び19の合計厚み)が30〜150μmである非屈曲領域66を有するようになる。
【0041】
以上のように、本方法では、基材上に形成された導体上に、所定のパターンのめっき銅を、銅の総厚み30mm以下を有するように形成した後、このパターン化されためっき銅のうちの非屈曲領域となるべき領域に形成された部分にさらにめっきを施すことによって、屈曲領域及び非屈曲領域に形成された導体がそれぞれ所定の厚みである印刷配線板が得られる。
【0042】
なお、上記の方法においては、基材1に対して一方の側の導体(銅箔10及びめっき銅21)の上だけに、非屈曲領域における導体の総厚みを30〜150μmとするためのめっきを施したが、これに限られず、非屈曲領域に形成された基材1に対して両側の導体上にめっきを施すようにしてもよい。また、上記方法では、パターン形成用のめっき(めっき銅21)後に、非屈曲領域の導体の厚みを調整するためのめっき(めっき銅23)を施したが、例えば、先に非屈曲領域の厚み調整用のめっきを行い、その後、めっき後の銅箔10をエッチングすること等によって導体のパターン化を行ってもよい。
【0043】
以上、好適な印刷配線板の製造方法として、屈曲領域の導体をエッチングする方法、及び、非屈曲領域の導体にめっきを施す方法をそれぞれ別に説明したが、これらの方法は、印刷配線板の製造において両者を行ってもよい。すなわち、一つの印刷配線板を製造する際に、屈曲領域の導体をエッチングするとともに、非屈曲領域の導体にめっきを施すようにしてもよい。こうすれば、銅張り積層板がはじめに有している銅箔等の厚みにかかわらず、屈曲領域及び非屈曲領域の導体を所望の厚みとすることができる。
【0044】
次に、印刷配線板の好適な構成について詳細に説明する。以下、図1(f)に示した印刷配線板40を例に挙げて説明を行うが、各構成は本発明の印刷配線板に制限無く適用できる。
【0045】
図示のように、印刷配線板40は、基材1の一方の面上に、屈曲領域36に形成された導体7及び非屈曲領域46に形成された導体8を有し、もう一方の面上に、非屈曲領域に形成された導体9を有する構成となっている。上述の如く、この印刷配線板40において、屈曲領域36に形成された導体の総厚み(導体7の厚み)は1〜30μmであり、非屈曲領域46に形成された導体の総厚み(導体9の厚み又は導体8及び9の合計厚み)は30〜150μmとなっている。
【0046】
このように、印刷配線板40においては、屈曲領域36及び非屈曲領域46に形成されている導体が、それぞれ上記の範囲の総厚みを有することによって、屈曲領域36での折り曲げが容易となるとともに、非屈曲領域46が十分な剛性を維持し得る。したがって、かかる印刷配線板40は、電子機器等の限られた空間内であっても、折り曲げにより高密度で収納することができる。特に、この印刷配線板40は一体のものであることから、従来のような基板間の接続や多層化が必要なく、そのぶん従来に比して大幅な高密度化が可能となるほか、優れた信頼性をも有するものとなる。
【0047】
上述したような効果をより良好に得る観点からは、印刷配線板40において、屈曲領域36に形成された導体の総厚みは、3〜25μmであると好ましく、8〜20μmであるとより好ましい。また、非屈曲領域46に形成された導体の総厚みは、60〜120μmであると好ましく、70〜100μmであるとより好ましい。このように、屈曲領域36に形成された導体の総厚みは、非屈曲領域46に形成された導体の総厚みよりも小さいことが好ましい。具体的には、前者が後者の6〜60%であると好ましく、10〜30%であるとより好ましい。
【0048】
印刷配線板40における基材1は、上述したような繊維基材、及び、柔軟性を有する熱硬化性樹脂組成物を含むものに限られず、屈曲性を有し、且つ、導体の積層が可能なものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、ポリイミドフィルムやアラミドフィルム等を適用してもよい。ただし、優れた柔軟性及び強度を得る観点からは、基材は、繊維基材を含むものが好ましい。
【0049】
繊維基材としては、金属箔張積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば、特に制限なく適用でき、例えば、織布や不織布等の繊維基材が好ましい。この繊維基材の材質としては、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維や、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等、或いは、これらの混抄系が挙げられる。なかでも、ガラス繊維の織布が好ましい。
【0050】
特に、基材1を形成するための材料としてプリプレグを用いる場合、このプリプレグに使用される基材としては、50μm以下の厚みを有するガラスクロスが特に好適である。このような厚みが50μm以下のガラスクロスを用いることで、屈曲性を有し、任意に折り曲げ可能な印刷配線板を得ることが容易となる。また、製造プロセスでの温度変化や吸湿等に伴う寸法変化を小さくすることも可能となる。
【0051】
基材1は、繊維基材に可とう性に富む絶縁性樹脂を含むものであるとより好ましい。すなわち、絶縁性樹脂中に繊維基材が配された構造を有すると好ましい。絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物を含むことが好ましく、具体的には、硬化状態の熱硬化性樹脂組成物を含むことがより好ましい。この熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0052】
なかでも、熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、グリシジル基を有する樹脂が好ましく、末端にグリシジル基を有する樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂が更に好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールと、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
このように熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含むと、基材1を形成する際に180℃以下の温度での硬化が可能となり、しかも、基材1の熱的、機械的及び電気的特性が良好となる傾向にある。
【0054】
特に、熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を更に含むとより好ましい。例えば、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂とその硬化剤、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と硬化促進剤、或いは、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤といった組み合わせとすることができる。エポキシ樹脂が有するグリシジル基の数は多いほどよく、3個以上であると更に好ましい。グリシジル基の数によって、エポキシ樹脂の好適な配合量は異なり、グリシジル基が多いほど配合量は少なくてもよい。
【0055】
エポキシ樹脂の硬化剤及び硬化促進剤は、それぞれエポキシ樹脂と反応して硬化させ得るもの及び硬化を促進させるものであれば特に制限なく適用可能である。例えば、アミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物類等が挙げられる。アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA又はこれらのハロゲン化合物、或いは、ホルムアルデヒドとの縮合物であるノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が例示できる。酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が挙げられる。また、硬化促進剤としては、イミダゾール類としてアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が使用できる。
【0056】
熱硬化性樹脂組成物における、硬化剤又は硬化促進剤の好適な含有量は、以下の通りである。例えば、アミン類の場合、アミンの活性水素の当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量がほぼ等しくなる量が好ましい。なお、硬化促進剤であるイミダゾールの場合は、単純に活性水素との当量比とならず、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部程度が好ましい。また、多官能フェノール類や酸無水物類の場合、エポキシ樹脂1当量に対して、フェノール性水酸基やカルボキシル基が0.6〜1.2当量となる量が好ましい。
【0057】
硬化剤や硬化促進剤の量が好適量よりも少ないと、硬化後に未硬化のエポキシ樹脂が残り、硬化後の熱硬化性樹脂組成物のTg(ガラス転移温度)が低くなる場合がある。一方、多すぎると、硬化後に未反応の硬化剤や硬化促進剤が残り、熱硬化性樹脂組成物の絶縁性が低下するおそれがある。
【0058】
また、基材1における熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、可とう性や耐熱性の向上を目的として、高分子量の樹脂成分が含まれていてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、アミド基を有する樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。
【0059】
まず、アミド基を有する樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂が好ましく、シロキサン構造を含む構造を有するシロキサン変性ポリアミドイミドが特に好適である。このシロキサン変性ポリアミドイミドは、芳香族環を2個以上有するジアミン(以下、「芳香族ジアミン」という)及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物と、芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られたものであると特に好ましい。
【0060】
また、ポリアミドイミド樹脂は、一分子中にアミド基を10個以上含むポリアミドイミド分子を70モル%以上含むものであると好ましい。このポリアミドイミド分子の含有量の範囲は、例えば、ポリアミドイミドのGPCから得られるクロマトグラムと、別に求めたポリアミドイミドの単位重量中のアミド基のmol数(A)とから得ることができる。具体的には、まず、ポリアミドイミド(a)g中に含まれるアミド基のモル数(A)から、10×a/Aを一分子中にアミド基を10個含むポリアミドイミドの分子量(C)であるとする。そして、GPCで得られるクロマトグラムの数平均分子量がC以上となる領域が70%以上となった場合を、「一分子中にアミド基を10個以上含むポリアミドイミド分子を70モル%以上含む」と判断する。アミド基の定量方法としては、NMR、IR、ヒドロキサム酸−鉄呈色反応法、N−ブロモアミド法などを利用することができる。
【0061】
シロキサン構造を含む構造を有するシロキサン変性ポリアミドイミドは、芳香族ジアミンaとシロキサンジアミンbとの混合比率を、好ましくはa/b=99.9/0.1〜0/100(モル比)、より好ましくはa/b=95/5〜30/70、更に好ましくはa/b=90/10〜40/60として得られたものであると好ましい。シロキサンジアミンbの混合比率が多くなると、Tgが低下する傾向にある。一方、少なくなると、プリプレグを作製する場合に樹脂中に残存するワニス溶剤量が多くなる傾向がある。
【0062】
芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4´−ジアミン、2,6,2´,6´−テトラメチル−4,4´−ジアミン、5,5´−ジメチル−2,2´−スルフォニル−ビフェニル−4,4´−ジアミン、3,3´−ジヒドロキシビフェニル−4,4´−ジアミン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3´―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3´―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が例示できる。
【0063】
また、シロキサンジアミンとしては、下記一般式(3)〜(6)で表されるものが挙げられる。下記式中、n及びmは、それぞれ1〜40の整数を示す。
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

【0068】
なお、上記一般式(3)で表されるシロキサンジアミンとしては、X−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等が例示できる。また、上記一般式(6)で表されるシロキサンジアミンとしては、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製)等が例示できる。
【0069】
シロキサン変性ポリアミドイミドの製造においては、ジアミン成分として、上記芳香族ジアミンの一部を脂肪族ジアミンに置き換えてもよい。かかる脂肪族ジアミンとしては、下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化5】

【0071】
式中、Xは、メチレン基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、pは1〜50の整数である。なかでも、R及びRとしては、水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基が好ましい。置換フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等が例示できる。
【0072】
脂肪族ジアミンとしては、低弾性率及び高Tgを両立する観点から、上記一般式(7)におけるXがエーテル基であるものが特に好ましい。このような脂肪族ジアミンとしては、ジェファーミンD−400(アミン当量400)、ジェファーミンD−2000(アミン当量1000)等が例示できる。
【0073】
さらに、シロキサン変性ポリアミドイミドは、上述したシロキサンジアミン及び芳香族ジアミン(好ましくは一部が脂肪族ジアミン)を含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸と、ジイソシアネートとを反応させることによって得られる。このような反応に用いるジイソシアネートとしては、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化6】

【0075】
式中、Dは少なくとも一つの芳香環を有する2価の有機基又は2価の脂肪族炭化水素基である。例えば、−C−CH−C−で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基及びイソホロン基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。
【0076】
このようにジイソシアネートとしては、Dが芳香環を有する有機基である芳香族ジイソシアネートと、Dが脂肪族炭化水素基である脂肪族ジイソシアネートとの両方が挙げられる。これらのなかでは、ジイソシアネートとしては芳香族ジイソシアネートが好ましく、両者を併用することがより好ましい。
【0077】
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示できる。なかでも、MDIが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを用いることにより、得られるポリアミドイミドの可撓性を向上させることができる。
【0078】
また、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が例示できる。
【0079】
上記のように芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネートに対して5〜10モル%程度添加することが好ましい。このように併用することで、ポリアミドイミドの耐熱性が更に向上する傾向にある。
【0080】
基材1に用いる熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、上述したグリシジル基を有する樹脂及びアミド基を有する樹脂のほか、アクリル樹脂も適用できる。このアクリル樹脂としては、アクリル酸モノマ、メタクリル酸モノマ、アクリロニトリル、グリシジル基を有するアクリルモノマ等の重合物や、これらのモノマを複数共重合した共重合物が挙げられる。アクリル樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で、好ましくは30万〜100万、より好ましくは40万〜80万である。
【0081】
基材1の熱硬化性樹脂組成物中には、上述した樹脂成分に加えて、難燃剤が更に含まれていてもよい。難燃剤を含むことにより、基材1の難燃性が向上する。例えば、添加型の難燃剤として、リンを含有するフィラーが好ましい。リン含有フィラーとしては、OP930(クラリアント社製商品名、リン含有量23.5重量%)、HCA−HQ(三光株式会社製商品名、リン含有量9.6重量%)、ポリリン酸メラミンPMP−100(リン含有量13.8重量%)PMP−200(リン含有量9.3重量%)PMP−300(リン含有量9.8重量%、以上日産化学株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0082】
印刷配線板40において、導体7,8及び9は、この印刷配線板40の製造に用いた銅張り積層板30の銅箔2,3から形成されたものである。導体7,8及び9の材料としては、上記例で挙げた銅箔のほかアルミニウム箔が一般的に用いられるが、通常金属張積層板等に用いられる厚み5〜200μm程度の金属箔であれば特に制限されない。また、単独の金属箔のほか、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層及び10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔や、アルミニウムと銅箔を複合した2層構造の複合箔を用いてもよい。
【0083】
基材1を構成する絶縁板、積層板や、印刷配線板40の製造に用いる銅張り積層板30等の金属張り積層板は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、繊維基材に上述した熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、この熱硬化性樹脂組成物を半硬化したプリプレグを準備する。次いで、このプリプレグやこれを複数枚積層した積層体の片面又は両面に、銅箔2,3等の金属箔を重ねる。そして、得られた積層体を、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180℃〜250℃の範囲の温度、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの圧力で、加熱加圧成形する。これにより、上述したプリプレグやその積層体から基材1に該当する絶縁板又は積層体が得られ、また、この基材1の両面に銅箔2,3が積層された銅張り積層板30(金属張り積層板)が得られる。
【0084】
以上、好適な印刷配線板の構成について説明したが、本発明の印刷配線板は、上述したような単層のものに限られず、単層の印刷配線板を複数積層した多層配線板であってもよい。例えば、上述したようなプリプレグを、別途作製した印刷配線板と銅箔等との間に挟んで積層し、さらに銅箔を外層回路となるように加工した多層配線板が挙げられる。この多層配線板において、内層回路(印刷配線板における導体)と外層回路との層間接続は、特に制限されないが、例えば、プリプレグに層間接続用の穴をレーザー等により設け、これにめっきを施したり導電ペーストを充填したりする方法や、内層回路上にあらかじめ設けた接続用バンプを用いる方法等が挙げられる。
【0085】
また、多層配線板としては、上述したプリプレグを、別途作製した複数の印刷配線板の間に挟んで積層したものも挙げられる。この場合、各層の回路(印刷配線板の導体)同士を層間接続する方法としては、例えば、プリプレグにレーザー等によりあらかじめ設けられた層間接続用の穴に導電ペーストを充填する方法や、内層回路上にあらかじめ設けた接続用バンプを用いる方法等が挙げられる。
【0086】
これらの多層配線板においても、上述したような印刷配線板と同様に、屈曲領域に形成された導体の総厚みを1〜30μmとし、非屈曲領域に形成された導体の総厚みを30〜150μmとすることで、屈曲領域における折り曲げが容易となるとともに、非屈曲領域の剛性が良好に保たれるようになる。その結果、この多層配線板も、電子機器内に折り曲げにより高密度に収納することができる。なお、多層配線板としては、全ての領域にわたって同じ数の印刷配線板が積層されている必要はない。例えば、屈曲領域における導体の総厚みを確実に1〜30μmの範囲内とするために、屈曲領域を単一の層とし、非屈曲領域のみを多層化したような構成としてもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
まず、厚み0.019mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製1027)を含む厚み50μmのイミド系プリプレグ(日立化成工業株式会社製)を準備した。次いで、このプリプレグの片側の面に、厚み18μmの銅箔(F2−WS−18、古河サーキットフォイル株式会社製)を、これと反対側の面に、厚み70μmの銅箔(SLP−70日本電解株式会社製)を、それぞれ接着面がプリプレグと合わさるようにして重ねた。そして、これを230℃、90分、4.0MPaのプレス条件でプレスし、これにより両面銅張り積層板を得た。
【0089】
この両面銅張り積層板の両側に、エッチングレジストとしてMIT−225(日本合成モートン株式会社製、厚み25μm)をラミネートし、従来のフォトリソ工程により所定のパターンとなるように加工した。それから、塩化第二鉄系の銅エッチング液により銅箔のエッチングを行った。このエッチングは、18μmの銅箔側のエッチングによるパターン形成ができた時点で終了し、水洗、乾燥を行った。
【0090】
その後、さらに基材の両側にMIT−235をラミネートした後、片面(18μm銅箔側)は全面露光するとともに、他方の面(70μm銅箔側)は折り曲げを必要とする部分のみが開口されるように露光して、それぞれレジストパターンを形成した。それから、開口部分に露出した銅箔(残銅)部分のエッチングを行い、この部分(屈曲の必要な部分)の銅がなくなるまでエッチングを行った。
【0091】
そして、エッチングの完了後、全てのエッチングレジストを除去することにより両面印刷配線板を得た。こうして、屈曲領域(フレキシブル部分)に厚み18μmの導体(回路)を有し、非屈曲領域(リジッド部分)に上記回路、及び、その反対側の面に形成された厚み70μmの導体(ベタ銅)を有する印刷配線板を得た。
【0092】
(実施例2)
まず、厚み0.028mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製1037)を含む厚み50μmのアクリルエポキシ系プリプレグ(日立化成工業株式会社製)を準備した。次いで、このプリプレグの両側に厚み3μmの銅箔(マイクロシン、三井金属株式会社製)を接着面がプリプレグと合わさるようにして重ねた。そして、これを180℃、90分、4.0MPaのプレス条件でプレスし、これにより両面銅張り積層板を得た。
【0093】
この両面銅張り積層板の両側に、めっきレジストとしてMIT−235(日本合成モートン株式会社製、厚み35μm)をラミネートし、従来のフォトリソ工程により所定のパターンとなるように加工した。それから、硫酸銅電気めっきにより、両面に16μmの銅をめっきした。
【0094】
その後、めっき後の両面銅張り積層板の両側に、さらにMIT−235をラミネートした後、片面は全面露光するとともに、他方の面は、屈曲を必要としない部分(ベタパターン部分)が開口されるように露光して、それぞれレジストパターンを形成した。続いて、開口部分に露出しためっき銅に対し電気めっきを更に行い、この部分(屈曲が必要ない部分)の導体厚みが70μmとなるようにした。
【0095】
かかるめっきの完了後、全てのめっきレジストを除去し、更に、硫酸/過酸価水素系エッチング液により厚み3μmの銅箔をエッチングして導体パターンを形成し、これにより両面印刷配線板を得た。こうして、屈曲領域(フレキシブル部分)に厚み18μmの導体(回路)を有し、非屈曲領域(リジッド部分)に、片側に18μmの導体(回路)を有するとともに、これと反対側の面にも70μmの導体(ベタ銅)を有する印刷配線板を得た。
【0096】
(比較例1)
まず、厚み0.019mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製1027)を含む、厚み50μmのイミド系プリプレグ(日立化成工業(株)製)を準備した。次いで、このプリプレグの両側に、厚み35μmの銅箔(GTS−35、古河サーキットフォイル(株)製)を、接着面がプリプレグと合わさるようにして重ねた。そして、これを230℃、90分、4.0MPaのプレス条件でプレスし、これにより両面銅張積層板を作製した。
【0097】
この両面銅張り積層板の両側に、エッチングレジストとしてMIT−225(日本合成モートン(株)製、厚み25μm)をラミネートし、従来のフォトリソ工程により片面が所定のパターンとなるとともに、もう一方の面が屈曲部分を除いて全面を覆うパターンとなるように加工した。
【0098】
それから塩化第二鉄系の銅エッチング液により銅箔のエッチングを行った。このエッチングは所定のパターンを形成したレジストを有する面と屈曲部分を露出させた反対面の35μm銅箔が除去できた時点で終了し、水洗、乾燥を行った。
【0099】
そして、エッチングの完了後、全てのエッチングレジストを除去することにより両面印刷配線板を得た。こうして屈曲領域(フレキシブル部分)に、35μmの導体(回路)を有し、非屈曲領域(リジッド部分)に、35μmの回路及びその反対の面に形成された厚み35μmの導体(ベタ銅)の総厚み70μmの導体を有する印刷配線板を得た。
【0100】
(折り曲げ試験)
実施例1及び2で得られた印刷配線板について、それぞれ折り曲げ試験を行った。その結果、どちらの印刷配線板も、フレキシブル部分で任意に折り曲げることができた。具体的には、曲率半径0.5mmのピンに沿って180度折り曲げることが可能であった。また折り曲げた配線板を再度開いてみたところ、折り曲げ部分にはクラックなどの外観異常は見られなかった。
【0101】
一方、比較例1の印刷配線板の屈曲部分を上記と同様にして曲率半径0.5mmのピンに沿って180度折り曲げた後、屈曲部を開いてみると、屈曲部分が白化し基材と銅箔の間にクラックが入っていることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
1…基材、2,3…銅箔、4…エッチングレジストパターン、5…エッチングレジスト、6…屈曲領域となるべき部分、7,8,9…導体、10…銅箔、17,18,19…導体、20…めっきレジストパターン、21…めっき銅、22…非屈曲領域となるべき部分、23…めっき銅、24…めっきレジストパターン、30…銅張り積層板、36…屈曲領域、40…印刷配線板、46…非屈曲領域、56…屈曲領域、60…印刷配線板、66…非屈曲領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲性を有する基材と、この基材の少なくとも一側に形成された導体と、を備える印刷配線板であって、
屈曲される屈曲領域、及び、屈曲されない非屈曲領域を有し、
前記屈曲領域に形成された前記導体の厚みは1〜30μmであり、前記非屈曲領域に形成された前記導体の厚みは30〜150μmであり、
前記非屈曲領域に形成された前記導体の厚みは、前記屈曲領域に形成された前記導体の厚みよりも大きく、
前記屈曲領域に形成された前記導体の厚みは、前記非屈曲領域に形成された前記導体の厚みの6〜60%である、印刷配線板。
【請求項2】
前記屈曲領域に形成された導体を、エッチングにより厚みを1〜30μmとした、請求項1記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記非屈曲領域に形成された導体を、めっきにより厚みを30〜150μmとした、請求項1又は2記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記基材は、繊維基材を含み、且つ、該繊維基材が厚み50μm以下のガラスクロスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記基材が、熱硬化性樹脂組成物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷配線板。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物は、グリシジル基を有する樹脂を含む、請求項5記載の印刷配線板。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物は、アミド基を有する樹脂を含む、請求項5又は6記載の印刷配線板。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の印刷配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−169680(P2012−169680A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134043(P2012−134043)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2006−139126(P2006−139126)の分割
【原出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】