説明

印字装置

【課題】テープカセットの単価を抑制しつつ、より多数のテープカセットに関する情報を管理することができる印字装置を提供する。
【解決手段】テープカセットには、 種類情報を示す指標部と、個体情報を示す識別部とが設けられている。印字装置のメイン処理では、指標部および識別部が検出される。ディスプレイに表示された印字履歴が選択され(S31:YES)、または印字データが直接入力されると(S35:YES)、算出したテープ残量が印字に必要なテープの搬送量より少ないか否かが判断される(S33、S37)。テープ残量がテープの搬送量以上である場合(S37:NO)、印字処理が実行される(S39)。このとき、印字に関する情報である使用履歴が、検出された個体情報と対応付けて、個体情報データベースに記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカセットに収納されたテープに印字を行う印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープカセットに関する情報を、テープカセットまたは印字装置で管理することが知られている。例えば、テープカセットに備えられた記憶素子に、モデル名、駆動電源、印字制御パラメータ、テープ搬送量などを記憶させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、複数のカートリッジを装着可能な記録装置において、カートリッジごとの使用量を記憶する記憶手段を、その記録装置が装着可能なカートリッジの数量分設けることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/033431号
【特許文献2】特開平4−67968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テープカセットに記憶素子を設けた場合、テープカセットの単価が高くなるおそれがあった。また、記録装置に装着可能なカートリッジの数量分の記憶手段を設けた場合、記憶手段の数量分よりも多数のカートリッジについて情報を管理できないおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、テープカセットの単価を抑制しつつ、より多数のテープカセットに関する情報を管理することができる印字装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る印字装置は、テープを収納したカセットケースに、個体別の識別情報である個体情報を示す識別部が設けられたテープカセットが着脱されるカセット装着部と、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットから前記テープを引き出して搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記テープに印字を行う印字手段と、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部が示す前記個体情報を検出する個体情報検出手段と、前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された状態で、前記テープの印字に関する情報である使用履歴を取得する使用履歴取得手段と、前記使用履歴取得手段によって取得された前記使用履歴を、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けて、記憶装置に記憶させる記憶制御手段とを備えている。
【0007】
これによれば、カセット装着部に装着されるテープカセットの個体情報毎に、使用履歴が記憶装置に記憶される。テープカセットに、記憶素子を設ける必要がないため、テープカセットの単価を抑制することができる。また、印字装置は、テープカセット毎に異なる記憶装置を備える必要がないので、使用履歴を管理できるテープカセットの数が、記憶装置に限定されることがない。このため、多数のテープカセット毎の使用履歴を管理することができる。
【0008】
前記印字装置において、前記カセットケースに設けられた指標部から、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの種類情報を検出する種類情報検出手段と、前記種類情報検出手段によって検出された前記種類情報に基づいて、未使用状態の前記テープの長さであるテープ長を特定するテープ長特定手段と、前記搬送手段による前記テープの搬送量を取得する搬送量取得手段とを備え、前記使用履歴取得手段は、前記搬送量取得手段によって検出された前記搬送量と、前記テープ長特定手段によって特定された前記テープ長とに基づいて、前記使用履歴として前記テープの残量であるテープ残量を取得してもよい。
【0009】
これによれば、カセットケースに設けられた指標部から検出されたテープカセットの種類情報に基づいて、未使用状態のテープの長さであるテープ長が特定される。特定されたテープ長と、テープの搬送量とに基づいて使用履歴としてテープ残量が取得される。このため、ユーザがテープ長を設定する手間を省略しつつ、テープカセットのテープ残量を取得することができる。
【0010】
前記印字装置において、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記テープ残量が、前記記憶装置に記憶されているか否かを判断する残量記憶判断手段を備え、前記使用履歴取得手段は、前記残量記憶判断手段によって前記記憶装置に記憶されていると判断された場合に、前記記憶装置に記憶されている前記テープ残量から前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量を減算したものを、前記テープ残量として取得してもよい。
【0011】
これによれば、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されている場合、そのテープ残量から搬送量を減算したものが、テープ残量として取得される。よって、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されているか否かに応じて、より正確にテープ残量を取得することができる。
【0012】
前記印字装置において、前記記憶装置に記憶された前記テープ残量が前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量よりも少ない場合に、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記使用履歴を、前記記憶装置から削除可能な第一削除手段を備えてもよい。テープ残量が搬送量より少ない場合とは、印字を行うために必要なテープ残量が不足している状態である。テープ残量が不足しているテープカセットは、その後に使用されない場合が多い。よって、テープ残量が不足しているテープカセットの使用履歴を削除することで、記憶装置の空き容量を確保することができる。
【0013】
前記印字装置において、前記記憶装置に記憶された前記テープ残量が前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量よりも少ない場合に、ユーザによって前記使用履歴を削除するか否かの指示が入力されたか否かを判断する削除指示判断手段を備え、前記第一削除手段は、前記削除指示入力手段によって前記使用履歴を削除する指示が入力されたと判断された場合に、前記記憶装置から前記使用履歴を削除してもよい。テープ残量が不足している場合でも、ユーザが使用履歴を削除することを望まない場合があり得る。このため、ユーザに使用履歴を削除するか否かを選択できるようにすることで、印字装置の利便性を高めることができる。
【0014】
前記印字装置において、未使用状態の前記テープにおける搬送方向の下流端に設けられ、未使用状態であることを示すスタートマークを、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットを対象に検出するスタート検出手段と、前記スタート検出手段によって前記スタートマークが検出されたか否かを判断するスタート判断手段とを備え、前記使用履歴取得手段は、前記スタート判断手段によって前記スタートマークが検出されたと判断された場合に、前記テープ長特定手段によって特定された前記テープ長を前記テープ残量として取得してもよい。
【0015】
スタートマークが検出される場合、カセット装着部に装着されたテープカセットのテープは未使用状態である。このテープは、テープカセットが出荷された状態の予め設定されたテープ長を有している。よって、スタートマークが検出された場合には、検出された種類情報に対応するテープ長をテープ残量として取得することで、現在のテープ残量を正確に特定することができる。
【0016】
前記印字装置において、前記残量記憶判断手段は、前記スタート判断手段によって前記スタートマークが検出されなかったと判断された場合に、前記テープ残量が前記記憶装置に記憶されているか否かを判断し、前記残量記憶判断手段によって前記テープ残量が前記記憶装置に記憶されていないと判断された場合に、ユーザによって前記テープ残量が入力されたか否かを判断する残量入力判断手段を備え、前記使用履歴取得手段は、前記残量入力判断手段によって前記テープ残量が入力されたと判断された場合に、入力された前記テープ残量を前記使用履歴として取得してもよい。
【0017】
スタートマークが検出されない場合、カセット装着部に装着されたテープカセットのテープの一部は既に使用されている。この場合に、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されていなければ、ユーザによって入力されたテープ残量が使用履歴として取得される。よって、スタートマークが検出されず、且つ検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されていない場合には、ユーザが入力したテープ残量を取得することで、現在のテープ残量を特定することができる。
【0018】
前記印字装置において、前記テープにおける搬送方向の上流端に設けられ、使用済み状態であることを示すエンドマークを、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットを対象に検出するエンド検出手段と、前記エンド検出手段によって前記エンドマークが検出されたか否かを判断するエンド判断手段と、前記エンド判断手段によって前記エンドマークが検出されたと判断された場合に、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記使用履歴を、前記記憶装置から削除する第二削除手段とを備えてもよい。
【0019】
エンドマークが検出された場合、テープカセットはテープ残量が全くない状態(つまり、使用済み状態)であるので、印字を行うことができない。テープ残量が全くないテープカセットはその後に使用されないので、その使用履歴を削除することで記憶装置の空き容量を確保することができる。
【0020】
本発明の第2態様に係る印字装置は、テープを収納したカセットケースと、前記カセットケースに設けられ、個体別の識別情報である個体情報を示す識別部とを備えたテープカセットと、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットから前記テープを引き出して搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された前記テープに印字を行う印字手段と、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部が示す前記個体情報を検出する個体情報検出手段と、前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された状態で、前記テープの印字に関する情報である使用履歴を取得する使用履歴取得手段と、前記使用履歴取得手段によって取得された前記使用履歴を、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けて、記憶装置に記憶させる記憶制御手段とを備えてもよい。
【0021】
これによれば、カセット装着部に装着されるテープカセットの個体情報毎に、使用履歴が記憶装置に記憶される。テープカセットに、記憶素子を設ける必要がないため、テープカセットの単価を抑制することができる。また、印字装置は、テープカセット毎に異なる記憶装置を備える必要がないので、使用履歴を管理できるテープカセットの数が、記憶装置に限定されることがない。このため、多数のテープカセット毎の使用履歴を管理することができる。
【0022】
前記印字装置において、進出および退入が可能な複数のスイッチ端子を有し、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部を判別する機械式センサを備え、前記個体情報検出手段は、前記機械式センサの判別結果に基づいて前記個体情報を検出し、前記識別部は、前記複数のスイッチ端子にそれぞれ対向する位置に設けられ、且つ前記個体情報に応じたパターンを有する、前記スイッチ端子を挿入可能な孔部、および前記スイッチ端子に当接可能な面部の組合せであってもよい。この場合、機械式センサを孔部または面部である識別部に接近させることで、テープの種類を特定することができる。
【0023】
前記印字装置において、前記識別部には、前記面部を前記孔部に変更するためのミシン目が形成されていてもよい。この場合、ユーザはミシン目に沿って孔を開けることで面部を孔部に変更することができる。ひいては、所望のパターンの識別部(つまり、面部と孔部の組合せ)を、正確に形成することができる。
【0024】
前記印字装置において、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部を光学的に判別する非接触センサを備え、前記個体情報検出手段は、前記非接触センサの判別結果に基づいて前記個体情報を検出し、前記識別部は、前記個体情報に応じて表示された二次元パターンであってもよい。この場合、非接触センサに二次元パターンを読み取らせることで、テープの種類を特定することができる。
【0025】
前記印字装置において、前記識別部には、前記二次元パターンを変更するための目印が形成されていてもよい。この場合、ユーザは目印に沿って二次元パターンを変更することができる。ひいては、所望のパターンの識別部(つまり、二次元パターン)を、正確に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】カバー6が閉じられた状態にある印字装置1の斜視図である。
【図2】カバー6が開かれた状態にある印字装置1及びテープカセット30の斜視図である。
【図3】テープカセット30の斜視図である。
【図4】上ケース31Aが取り外された状態にあるテープカセット30の平面図である。
【図5】テープカセット30のアーム前面35を拡大した正面図である。
【図6】フィルムテープ59のスタートマーク591とエンドマーク592とを示す図である。
【図7】可動機構100を斜め前方からみた斜視図である。
【図8】ローラホルダ18及びセンサホルダ19の背面図である。
【図9】カバー6が開かれた状態にある可動搬送機構の横断面、及び、テープカセット30とテープ駆動軸11とサーマルヘッド10とを表した図である。
【図10】カバー6が閉じられた状態にある可動搬送機構の横断面、及び、テープカセット30とテープ駆動軸11とサーマルヘッド10とを表した図である。
【図11】センサホルダ19の縦断面図である。
【図12】テープカセット30にセンサホルダ19が圧接された状態を示す、図5におけるI−I線矢視方向断面図である。
【図13】テープカセット30にセンサホルダ19が圧接された状態を示す、図5におけるII−II線矢視方向断面図である。
【図14】テープカセット30にセンサホルダ19が圧接された状態を示す、図5におけるIII−III線矢視方向断面図である。
【図15】印字装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図16】種類情報データテーブル81を示す模式図である。
【図17】個体情報データテーブル82を示す模式図である。
【図18】メイン処理を示すフローチャートである。
【図19】メイン処理を示すフローチャートである。
【図20】個体情報データテーブル82を示す模式図である。
【図21】個体情報データテーブル82を示す模式図である。
【図22】印字処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0028】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る印字装置1の概略構成について説明する。本実施形態の説明では、図1及び図2の右上側、左下側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれ、印字装置1の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
【0029】
図1に示すように、印字装置1の上面には、キャラクタ(文字、記号及び数字等)を入力するためのキーボード3が設けられている。キーボード3の後側(紙面右上側)には、電源スイッチ、印字キー等の機能キー群4が設けられている。以下の説明では、キーボード3と機能キー群4とを総称する場合、入力部2という。機能キー群4の後側には、入力した文字や記号等を表示するためのディスプレイ5が設けられている。印字装置1の上面の後部には、開閉可能なカバー6が設けられている。印字装置1の左後角には、カットされた印字済テープ50(図3参照)を受けるテープトレイ7が設けられている。
【0030】
図2に示すように、ディスプレイ5の後側には、カセット装着部8が形成されている。カセット装着部8には、テープカセット30が上下方向に着脱される。カセット装着部8には、リボン巻取軸9が立設されている。リボン巻取軸9は、リボンスプール42(図4参照)から引き出されて文字等の印字に使用された後のインクリボン60(図4参照)を巻取る。リボン巻取軸9の左前方には、正面視で略矩形状のヘッドホルダ74(図9参照)が立設されている。ヘッドホルダ74の前面には、フィルムテープ59(図4参照)に文字等を印字するサーマルヘッド10(図9参照)が取り付けられている。ヘッドホルダ74の左方には、印字済テープ50を送り駆動するためのテープ駆動軸11(図9参照)が立設されている。
【0031】
カセット装着部8の前側には、後述のローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等が配設されている(図7参照)。ローラホルダ18、センサホルダ19、リリースロッド17等は、板部13によって被覆されている。板部13の右側には、リリースロッド17と連結されたレバー16が設けられている。
【0032】
カバー6は、カバー6の後端部の左右方向を支点として開閉自在である。カセット装着部8は、カバー6が閉位置にあるときにテープカセット30を着脱不能に閉鎖され(図1参照)、カバー6が開位置にあるときにテープカセット30を着脱自在に開放される(図2参照)。
【0033】
次に、図3〜図5を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構造について説明する。本実施形態のテープカセット30は、感熱タイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類に実装可能な汎用カセットを、ラミネートタイプに実装している。本実施形態の説明では、図3の左上側、右下側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれ、テープカセット30の後側、前側、右側、左側、上側、下側とする。
【0034】
図3に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30Bを含む下ケース31Bと、カセットケース31の上面30Aを含む上ケース31Aとを有する。上ケース31Aは、下ケース31Bの上部に固定される。
【0035】
カセットケース31は、テープカセット30の種類(例えば、テープ幅や印字態様など)にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aでは、テープ排出口49が角に設けられているために、直角はなしていない。
【0036】
図3に示すように、上ケース31A及び下ケース31Bには、それぞれ後述のスプール類を回転可能に支持する支持孔65、66、67が設けられている。図3には、上ケース31Aに形成された各支持孔65,66,67のみしか図示されていないが、下ケース31Bについても同様に、支持孔65、66、67が形成されている。
【0037】
カセットケース31の上面30Aの支持孔66と支持孔67との間には、左右方向に長い平面視略長方形の開口69が設けられている。ユーザは、開口69を介して、カセットケース31の内部に設けられたフィルムテープ59と両面粘着テープ58とを確認することができる。これによって、ユーザは、フィルムテープ59のおおよその残量を把握することができる。
【0038】
図4に示すように、カセットケース31内には、第一テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第二テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、及び、リボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は、一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。
【0039】
両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第一テープスプール40は、カセットケース31内の左側後部において、先述の支持孔65を介して回転可能に配置されている。フィルムテープ59が巻回された第二テープスプール41は、カセットケース31内の右側後部において、先述の支持孔66を介して回転可能に配置されている。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60は、カセットケース31内の右側前部において回転可能に配置されている。
【0040】
カセットケース31内における第一テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボン巻取スプール44が先述の支持孔67を介して回転可能に配置されている。リボン巻取スプール44は、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取る。
【0041】
図3に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で断面半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(上面30Aから底面30Bまで)に亘って設けられている。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37(図4参照)とで規定される、テープカセット30右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
【0042】
図4に示すように、アーム部34内には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム前面35の先端部は、後方へ向かって屈曲している。アーム前面35とアーム背面37の先端により、開口34Aが形成されている。フィルムテープ59とインクリボン60とは、開口34Aで重ね合わされて、後述する露出部77に向けて排出される。
【0043】
アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、カセットケース31を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面側に設けられた露出部77を介して、テープカセット30の前面側で外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、印字装置1のサーマルヘッド10(図9参照)を支持するヘッドホルダ74が挿入される。露出部77では、開口34Aから排出されたフィルムテープ59の一面が前方に露出され、且つその他面が後方のサーマルヘッド10に対向する。本実施形態では、フィルムテープ59の他面がインクリボン60を挟んでサーマルヘッド10に対向している。露出部77では、サーマルヘッド10によるフィルムテープ59への印字が、インクリボン60を使用して行われる。
【0044】
図3及び図4に示すように、開口34Aからテープ排出口49までのフィルムテープ59及びインクリボン60の搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側にはテープ駆動ローラ46が回転可能に軸支されている。テープ駆動ローラ46は、その内部に挿嵌されるテープ駆動軸11(図9参照)によって回転駆動される。テープ駆動ローラ46は、対向する可動搬送ローラ14(図10参照)と協働して、第二テープスプール41からフィルムテープ59を引き出し、第一テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面に両面粘着テープ58をガイドして接着させる。接着されたフィルムテープ59と両面粘着テープ58は、テープ排出口49から排出され、印字済テープ50となる。
【0045】
図3及び図5に示すように、アーム前面35には、テープカセット30の種類ごとに異なるパターンを有する種類情報を示す指標部801と、テープカセット30の個体ごとに異なるパターンを有する個体情報を示す識別部802とが設けられている。本実施形態の指標部801は、それぞれ面部および孔部のいずれかで構成された、2つの指標部801A、801Bを含んでいる。指標部801A、801Bにおける面部および孔部の組合せが、種類情報に応じた規定のパターンを示す。指標部801A、801Bは、それぞれ、後述する指標部検出センサ21A、21Bの各スイッチ端子231(図8参照)に対応する位置に設けられている。
【0046】
指標部801に含まれる面部(図5の例では、指標部801B)は、スイッチ端子231と接触可能な、アーム前面35の一部である(図12〜図14参照)。指標部801に含まれる孔部(図5の例では、指標部801A)は、スイッチ端子231(図8参照)を挿脱可能な正面視矩形状の孔であって、アーム前面35を前後方向に貫通している(図12参照)。指標部801の検出態様については、別途後述する。
【0047】
本実施形態の識別部802は、それぞれ面部および孔部のいずれかで構成された、3つの識別部802A、802B、802Cを含んでいる。識別部802A、802B、802Cにおける面部および孔部の組合せが、個体情報に応じた規定のパターンを示す。識別部802A、802B、802Cは、それぞれ、後述する識別部検出センサ22A、22B、22Cの各スイッチ端子231(図8参照)に対応する位置に設けられている。
【0048】
各識別部802A、802B、802Cには、指標部801に含まれる孔部と同様に、アーム前面35を貫通する正面視矩形状の孔95が形成されている。図12〜図14に示すように、これらの孔95の背後には、それぞれプッシュスイッチ90の本体部92が配置されている。各プッシュスイッチ90は、その断面形状が孔95と同形をなす角柱体である可動部91をそれぞれ有する。
【0049】
プッシュスイッチ90の初期状態では、各可動部91は本体部92から前方(図12〜図14では右方向)に向けて進出している。このとき、進出した可動部91が孔95を塞ぎ、且つ可動部91の先端面がアーム前面35と面一となる(図13参照)。このとき、可動部91の先端面は、スイッチ端子231と接触可能な、識別部802に含まれる面部(図5の例では、識別部802A、802B)として機能する。
【0050】
一方、各可動部91は、後方(図12〜図14では左方向)に向けて所定圧以上で押し込まれた場合、本体部92の内部に退入して固定される。このとき、孔95によってスイッチ端子231(図8参照)を挿脱可能な正面視矩形状の凹部が形成される(図14参照)。この凹部が、識別部802に含まれる孔部(図5の例では、識別部802C)として機能する。なお、テープカセット30の製造時点では、各プッシュスイッチ90は全て初期状態に設定されている。識別部802の検出態様については、別途後述する。
【0051】
指標部801の面部及び孔部は、テープカセット30の種類に応じて予め形成されているため、ユーザは指標部801のパターンを自由に設定できない。一方、ユーザは、例えばペン先で各プッシュスイッチ90の可動部91を選択的に押圧することで、識別部802のパターンを自由に設定できる。具体的には、テープカセット30の個体ごとに固有のパターンで、ユーザが識別部802のパターンを設定可能である。本実施形態のテープカセット30は、3つの識別部802A、802B、802Cが設けられているため、最大8つの個体に異なるパターンを設定可能である。
【0052】
アーム前面35には、指標部801および識別部802の右側上方に、係止孔820が設けられている。係止孔820は、後述のセンサホルダ19が識別位置(図10に示す位置)に移動した場合に、後述の係止片192(図8及び図11参照)が挿入される孔部である(図12参照)。
【0053】
図3に示すように、アーム前面35において、下ケース31Bの指標部801および識別部802の左側には、正面視で縦長長方形状の貫通孔850が設けられている。図4に示すように、貫通孔850の後方には、フィルムテープ59の搬送経路が位置している。
【0054】
図6を参照して、フィルムテープ59に設けられたスタートマーク591とエンドマーク592とについて説明する。スタートマーク591は、フィルムテープ59が未使用状態であることを示すマークである。エンドマーク592は、フィルムテープ59が使用済み状態であることを示すマークである。図6では、紙面左側が、未使用状態のフィルムテープ59の搬送方向の下流端であり、紙面右側が、フィルムテープ59の搬送方向の上流端を示している。図6に示すように、フィルムテープ59の搬送方向の下流端には、スタートマーク591が設けられている。スタートマーク591は、透明なフィルムテープ59において、黒色に形成された部分である。フィルムテープ59の搬送方向の上流端には、エンドマーク592が設けられている。エンドマーク592は、フィルムテープ59において、所定幅の黒色に形成された部分である。エンドマーク592は、所定の間隔で、複数個並んでいる。
【0055】
図7〜図10を参照して、印字装置1に備えられた可動機構100の概略構成について説明する。本実施形態の可動機構100は、レバー16、リリースロッド17、ローラホルダ18、及びセンサホルダ19を含み、外圧に応じて可動する一連の機構をいう。
【0056】
本実施形態では、図7の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、下側は、それぞれ、可動機構100の前側、後側、右側、左側、上側、下側と対応する。図7は、可動機構100の動作態様を理解容易にするために、リリースロッド17を左右方向に案内する壁部を取り除いて図示している。図7に示す可動機構100は、カバー6が開閉される途中の状態である。
【0057】
レバー16の下端には、正面視で左右方向を長手とする板状のリリースロッド17が係合されている。リリースロッド17の後側(図7の左上側)には、ローラホルダ18が設けられている。ローラホルダ18は、プラテンローラ15(図8参照)と可動搬送ローラ14とを備える。ローラホルダ18は、ホルダ軸181を中心に回動可能に軸支されている。ローラホルダ18の左端縁部には、可動搬送ローラ14がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14の右側には、プラテンローラ15がローラ面を後方に露出させつつ回転可能に軸支されている。可動搬送ローラ14及びプラテンローラ15は、それぞれテープ駆動ローラ46及びサーマルヘッド10に対向する位置に配置されている(図9参照)。ホルダ軸181の下部の周囲には、巻きバネ185(図8参照)が設けられている。ローラホルダ18は、巻きバネ185(図8参照)によって前方向に常に弾性付勢されている。
【0058】
ローラホルダ18におけるホルダ軸181とプラテンローラ15との間には、正面視で略矩形状の開口部を形成するホルダ開口部182が設けられている。リリースロッド17の後側、かつホルダ開口部182の内側には、センサホルダ19が設けられている。センサホルダ19は、ローラホルダ18には固定されていないため、ローラホルダ18とは独立して移動可能である。センサホルダ19には、光学式センサ28と複数の機械式センサ23とが設けられている。光学式センサ28は、発光部281と受光部282とを備えている。光学式センサ28は、貫通孔850に対向する位置に設けられている。複数の機械式センサ23は、後方(図7の左上方向)に突出するスイッチ端子231をそれぞれ備えている(図8参照)。
【0059】
複数の機械式センサ23のうち、指標部801を検出する機械式センサ23が指標部検出センサ21であり、識別部802を検出する機械式センサ23が識別部検出センサ22である。本実施形態の指標部検出センサ21は、指標部801A、801Bにそれぞれ対応する位置に配置されるスイッチ端子231を有する指標部検出センサ21A、21Bを含む。識別部検出センサ22は、識別部802A、802B、802Cにそれぞれ対応する位置に配置されるスイッチ端子231を有する識別部検出センサ22A、22B、22Cを含む。
【0060】
ユーザが、カセット装着部8に対してテープカセット30を着脱する場合、ユーザはカバー6を上方に開く。ユーザが、印字装置1にて印字を行う場合、ユーザはカバー6を下方に閉じる。カバー6が下方に閉じられる場合、レバー16が下方向に回動する。レバー16の下方向への回動に伴って、リリースロッド17は、左方向に移動する。左方向に移動したリリースロッド17は、ローラホルダ18を後方に押圧する。押圧されたローラホルダ18は、巻きバネ185の付勢力に抗って後方に回動する。後方に回動したローラホルダ18は、図10に示す印字位置に移動する。印字位置では、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に圧接され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46に圧接されている。
【0061】
また、リリースロッド17の左方向の移動に伴って、センサホルダ19は、後方に移動する。後方に移動したセンサホルダ19は、図10に示す識別位置に移動する。識別位置では、指標部検出センサ21のスイッチ端子231が指標部801に圧接され、且つ識別部検出センサ22のスイッチ端子231が識別部802に圧接される。ローラホルダ18が印字位置にあり、センサホルダ19が識別位置にある場合、印字装置1では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を用いた印字動作が可能となり、且つ、テープカセット30の種類および個体を特定可能となる。
【0062】
カバー6が上方に開かれる場合、レバー16が上方向に回動する。レバー16の上方向への移動に伴って、リリースロッド17は、右方向に移動する。リリースロッド17の右方向の移動に伴って、ローラホルダ18は、巻きバネ185の付勢力によって前方に回動する。前方に回動したローラホルダ18は、図9に示す待機位置に移動する。待機位置では、プラテンローラ15がサーマルヘッド10から離間され、且つ、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46から離間される。
【0063】
また、リリースロッド17の右方向の移動に伴って、センサホルダ19は、前方に移動する。前方に移動したセンサホルダ19は、図9に示す離間位置に移動する。離間位置では、指標部検出センサ21のスイッチ端子231が指標部801から離間され、且つ識別部検出センサ22のスイッチ端子231が識別部802から離間される。ローラホルダ18が待機位置にあり、センサホルダ19が離間位置にある場合、印字装置1では、カセット装着部8にテープカセット30を着脱自在となる。
【0064】
図7〜図8及び図11を参照して、センサホルダ19の物理的構造について説明する。図11では、5つの機械式センサ23のうちで、最も左上(図8では右上)に位置する機械式センサ(具体的には、識別部検出センサ22A)の可動態様を模式的に示している。センサホルダ19は、箱状のユニット本体191、機械式センサ23、光学式センサ28、係止片192、及び電気基板193を少なくとも備えている。ユニット本体191と係止片192とは、一体に形成されている。
【0065】
ユニット本体191において、カセット装着部8に装着されているテープカセット30に対向する面をカセット対向面191Aという。5つの機械式センサ23が各々有するスイッチ端子231は、カセット装着部8に装着されているテープカセット30のアーム前面35(図3参照)に対向するようにカセット対向面191Aから突出している。各スイッチ端子231は、先述した指標部801および識別部802のいずれかにそれぞれ対応する位置に設けられている。スイッチ端子231は、常にはバネ(図示外)によって後方向(図11では左方向)に回動した進出位置に移動している。このとき、機械式センサ23はオフ状態となる。スイッチ端子231の先端側に外圧が加えられると、スイッチ端子231は前方向に回動した退入位置に移動する。このとき、機械式センサ23はオン状態となる。
【0066】
カセット対向面191Aの右上部(図8の左上部)には、左右方向を長手とする板状突起である係止片192が設けられている。カセット対向面191Aにおいて、最も左側(図8の右側)のスイッチ端子231の左方には、開口199が設けられている。開口199は、光学式センサ28の発光部281と受光部282とを、後方に露出させるために設けられている。光学式センサ28は、貫通孔850(図4参照)に対向する位置に設けられている。各機械式センサ23と、光学式センサ28は、ユニット本体191に配設された電気基板193に実装され、電気基板193と電気的に接続されている。
【0067】
電気基板193は、ユニット本体191の前側に設けられている。図示しないが、電気基板193の前面には電気配線が接続されている。電気基板193は、この電気配線を介して、印字装置1の内部に備えられた制御回路部400(図15参照)に電気的に接続されている。機械式センサ23のオン・オフの信号は、電気基板193に接続された電気配線を介してCPU401(図15参照)に伝達される。
【0068】
CPU401は、光学式センサ28を使用して、スタートマーク591とエンドマーク592を検出する。より詳細には、光学式センサ28の発光部281から発せられた光は、貫通孔850を通過して、貫通孔850の後方に搬送経路が位置するフィルムテープ59(図4参照)に照射される。受光部282は、フィルムテープ59に反射した光を受光する。スタートマーク591とエンドマーク592は、黒色であるため、フィルムテープ59の透明な部分に比べて光の反射量が少ない。CPU401は、この反射量を、受光部282を介して検出することで、スタートマーク591とエンドマーク592とを検出する。
【0069】
図5及び図12〜図14を参照して、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の種類および個体の検出態様について説明する。図12〜図14に示すように、テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されている場合は、カバー6(図2参照)が閉じられてセンサホルダ19が識別位置に移動すると、カセット対向面191Aに設けられた係止片192がテープカセット30の係止孔820に挿入される。カセット対向面191Aに設けられた機械式センサ23(指標部検出センサ21および識別部検出センサ22)のスイッチ端子231が、テープカセット30の指標部801および識別部802に対向する。
【0070】
このとき、指標部801または識別部802の各面部に対向したスイッチ端子231が押圧されて、機械式センサ23がオン状態となる。指標部801または識別部802の各孔部に対向したスイッチ端子231は押圧されないため、機械式センサ23がオフ状態となる。CPU401は、後述の種類情報データテーブル81(図16)を参照し、指標部検出センサ21のオン・オフの組合せに基づいて、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の種類を特定できる。CPU401は、後述の個体情報データテーブル82(図17)を参照し、識別部検出センサ22のオン・オフの組合せに基づいて、カセット装着部8に装着されているテープカセット30の個体を特定できる。
【0071】
図15を参照して、印字装置1の電気的構成について説明する。図15に示すように、印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、各機器を制御するCPU401、CPU401にデータバス410を介して接続されたROM402、CGROM403、RAM404、及び入出力インターフェース411等から構成されている。
【0072】
ROM402は、プログラム記憶領域4021及び種類情報データテーブル記憶領域4022を少なくとも備えている。プログラム記憶領域4021には、CPU401が印字装置1を制御するために実行する各種プログラムが記憶されている。種類情報データテーブル記憶領域4022には、後述する種類情報データテーブル81が記憶されている。RAM404は、個体情報データテーブル記憶領域4041を少なくとも備えている。また、RAM404には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶領域が設けられている(図示外)。個体情報データテーブル記憶領域4041には、後述する個体情報データテーブル82が記憶されている。CGROM403には、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータが記憶されている。
【0073】
入出力インターフェース411には、機械式センサ23(指標部検出センサ21および識別部検出センサ22)、入力部2、液晶駆動回路(LCDC)405、駆動回路406、407、408、409等が接続されている。駆動回路406は、サーマルヘッド10を駆動するための電子回路である。駆動回路407は、リボン巻取軸9及びテープ駆動軸11を回転させるテープ送りモータ24を駆動するための電子回路である。駆動回路408は、印字済テープ50を切断する移動刃(図示外)を動作させるカッターモータ25を駆動するための電子回路である。駆動回路409は、光学式センサ28を制御するための電子回路である。液晶駆動回路(LCDC)405は、ディスプレイ5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する。
【0074】
図16を参照して、種類情報データテーブル81について説明する。種類情報データテーブル81には、種類情報、テープ幅、及びテープ長が対応付けられている。種類情報は、テープカセット30の種類毎に割り振られている、指標部検出センサ21のオン・オフの組合せである検出パターン(言い換えると、指標部801における面部と孔部との組合せ)を示す。テープ幅およびテープ長は、種類情報が示すテープカセット30の種類に対応するテープ幅およびテープ長を示す。
【0075】
図16に示す例では、指標部検出センサ21A、21Bの全ての検出パターンに対応して、4つの種類情報等があらかじめ設定されている。具体的には、種類情報「第一パターン」に対応して、テープ幅「32mm」及びテープ長「800cm」が対応付けられている。同様に、種類情報「第二パターン」に対応して、テープ幅「24mm」及びテープ長「800cm」が対応付けられている。種類情報「第三パターン」に対応して、テープ幅「12mm」及びテープ長「800cm」が対応付けられている。種類情報「第四パターン」に対応して、テープ幅「12mm」及びテープ長「300cm」が対応付けられている。
【0076】
図17を参照して、個体情報データテーブル82について説明する。個体情報データテーブル82には、個体情報と使用履歴とが対応付けられている。個体情報は、テープカセット30の個体毎に割り振られている、識別部検出センサ22のオン・オフの組合せである検出パターン(言い換えると、識別部802における面部と孔部との組合せ)を示す。使用履歴は、テープの印字に関する情報であり、テープ残量と印字履歴とを含む。テープ残量は、個体情報が示すテープカセット30のフィルムテープ59の残量である。印字履歴は、個体情報が示すテープカセット30を使用して、印字装置1が過去に印字を行った印字データを示す。
【0077】
図17に示す例では、ユーザが印字装置1で2つの異なる個体のテープカセット30を使用した結果、2つの個体情報等が既に設定されている。具体的には、個体情報「パターンA」の使用履歴として、テープ残量「790cm」及び印字履歴「File No.1」、「会議用資料」が対応付けられている。同様に、個体情報「パターンB」の使用履歴として、テープ残量「794cm」及び印字履歴「極秘資料」が対応付けられている。
【0078】
次に、図18及び図19のフローチャートを参照して、印字装置1のメイン処理について説明する。メイン処理は、ユーザによって入力部2を介して、印字を行う旨の指示が入力されたことを契機に、CPU401によって実行される。
【0079】
印字装置1のメイン処理では、まず指標部検出センサ21によって指標部801が検出される(S1)。指標部検出センサ21の検出パターンが、種類情報としてRAM404に設定される(S3)。図5に示す例では、指標部801Aに対向する指標部検出センサ21Aがオフ、指標部801Bに対向する指標部検出センサ21Bがオンとなる「第四パターン」が、テープカセット30の種類情報として設定される。
【0080】
識別部検出センサ22によって識別部802が検出される(S5)。識別部検出センサ22の検出パターンが、テープカセット30の個体情報としてRAM404に設定される(S7)。図5に示す例では、識別部802Aに対向する識別部検出センサ22Aがオン、識別部802Bに対向する識別部検出センサ22Bがオン、識別部802Cに対向する識別部検出センサ22Cがオフとなる「パターンC」が、テープカセット30の個体情報として設定される。
【0081】
光学式センサ28によってスタートマーク591が検出された否かが判断される(S9)。スタートマーク591が検出された場合(S9:YES)、カセット装着部8に装着されたテープカセット30は未使用状態である。この場合、個体情報データテーブル82に、ステップS7で設定された個体情報の記憶領域が設定される(S11)。ステップS3で設定された種類情報に対応したテープ長が、種類情報データテーブル81(図16参照)から取得される(S13)。図5および図16に示す例では、種類情報「第三パターン」に対応するテープ長「800cm」が、個体情報データテーブル82から取得される。
【0082】
ステップS13で取得されたテープ長が、ステップS11で設定された記憶領域にテープ残量として記憶される(S15)。ステップS15で記憶されたテープ残量が、ディスプレイ5に表示される(S17)。図20に示す例は、図17に示す個体情報データテーブル82に、個体情報「パターンC」およびテープ残量「800cm」が追加されている。この場合、ディスプレイ5にテープ残量「800cm」が表示される。
【0083】
スタートマーク591が検出されなかった場合(S9:NO)、カセット装着部8に装着されたテープカセット30は過去に使用されている。この場合、ステップS7で設定された個体情報の記憶領域が、個体情報データテーブル82に設定されているか否かが判断される(S19)。個体情報データテーブル82に設定されている場合(S19:YES)、ステップS7で設定された個体情報に対応する使用履歴が、個体情報データテーブル82から読み出される(S21)。ステップS21で読み出された使用履歴に含まれる印字履歴が、ディスプレイ5に表示される(S23)。さらに、ステップS21で読み出された使用履歴に含まれるテープ残量が、ディスプレイ5に表示される(S17)。
【0084】
図17に示す例では、過去に印字装置1で使用されたことのあるテープカセット30が装着され、且つ個体情報「パターンA」が検出された場合に、検出された個体情報が個体情報データテーブル82に設定されていると判断される(S19:YES)。この場合、テープ残量「790cm」および印字履歴「File No.1」、「会議用資料」が読み出されて、ディスプレイ5に表示される(S23、S17)。
【0085】
個体情報データテーブル82に設定されていない場合(S19:NO)、ステップS11と同様に、個体情報の記憶領域が設定される(S25)。入力部2を介してテープ残量が入力されたか否かが判断される(S27)。例えば、ユーザは開口69を介してフィルムテープ59を目で確認して、テープカセット30のテープ残量を入力部2から入力する。この場合、テープ残量が入力されたと判断されて(S27:YES)、入力されたテープ残量がステップS25で設定された記憶領域にテープ残量として記憶される(S29)。ステップS29で記憶されたテープ残量が、ディスプレイ5に表示される(S17)。なお、テープ残量が入力されていない場合(S27:NO)、処理はステップS27に戻り、テープ残量の入力が待ち受けられる。
【0086】
図17に示す例では、過去に使用されたことのあるテープカセット30が装着され、且つ個体情報「パターンD」が検出された場合に、検出された個体情報が個体情報データテーブル82に設定されていないと判断される(S19:NO)。この場合、図21に示す例のように、例えばユーザが直接入力したテープ残量「787cm」が個体情報データテーブル82に追加され、ディスプレイ5に表示される(S25〜S29、S17)。
【0087】
ステップS17の実行後、ステップS23で表示された印字履歴のいずれかが選択されたか否かが判断される(S31)。ユーザがディスプレイ5に表示された印字履歴を選択した場合(S31:YES)、選択された印字履歴を印字するのに必要なフィルムテープ59の搬送量が算出される(S33)。この搬送量は、ROM402又はCGROM403に記憶されている文字の大きさや、文字間の余白の長さを使用して算出される。
【0088】
一方、ユーザがディスプレイ5に表示された印字履歴を選択しなかった場合(S31:NO)、印字データが入力されたか否かが判断される(S35)。ステップS23が実行されていない場合も(つまり、ディスプレイ5に印字履歴が表示されていない場合も)、印字履歴が選択されなかったと判断されて、印字データが入力されたか否かが判断される(S31:NO、S35)。例えばユーザが入力部2を操作して印字データを直接入力した場合(S35:YES)、入力された印字データを印字するのに必要なフィルムテープ59の搬送量が算出される(S33)。
【0089】
ステップS7で設定された個体情報に対応するテープ残量が、ステップS33で算出された搬送量より少ないか否かが判断される(S37)。言い換えると、個体情報に対応するテープ残量が、印字を行うのに不足しているか否かが判断される。テープ残量が搬送量以上である場合(S37:YES)、後述の印字処理が実行される(S39)。一方、テープ残量が搬送量より少ない場合(S37:NO)、個体情報および使用履歴を個体情報データテーブル82から削除するか否かをユーザに問い合わせるための画面が、ディスプレイ5に表示される(S41)。ステップS41で表示される画面は、例えば「テープ残量が不足しています。個体情報と使用履歴を削除しますか?」というテキストである。
【0090】
個体情報および使用履歴を削除する指示が入力されたか否かが判断される(S43)。例えばユーザが入力部2で削除する指示を入力した場合(S43:YES)、ステップS7で設定された個体情報およびこれに対応する使用履歴が、個体情報データテーブル82から削除される(S45)。ステップS39またはステップS45の実行後、メイン処理が終了される。個体情報および使用履歴を削除する指示が入力されなかった場合も(S43:NO)、メイン処理が終了される。
【0091】
具体的には、先述のように個体情報「パターンA」が検出された場合に、ユーザがディスプレイ5に表示された印字履歴「File No.1」、「会議用資料」のうち、印字履歴「会議用資料」を選択したとする(S31:YES)。この場合、印字履歴「会議用資料」を印字するのに必要な搬送量(例えば、10cm)が算出される(S33)。図17に示す例では、個体情報「パターンA」に対応するテープ残量「790cm」は搬送量「10cm」以上であると判断されるため、後述の印字処理が実行される(S39)。
【0092】
また、先述のように個体情報「パターンC」が検出された場合に、ユーザが新たな印字データ「極秘資料」を直接入力したとする(S35:YES)。この場合、印字履歴「極秘資料」を印字するのに必要な搬送量(例えば、8cm)が算出される(S33)。図20に示す例では、個体情報「パターンC」に対応するテープ残量「800cm」は搬送量「8cm」以上であると判断されるため、後述の印字処理が実行される(S39)。
【0093】
また、先述のように個体情報「パターンD」が検出された場合に、ユーザが新たな印字データ「極秘資料」を直接入力したとする(S35:YES)。この場合、印字履歴「極秘資料」を印字するのに必要な搬送量(例えば、8cm)が算出される(S33)。図21に示す例では、個体情報「パターンD」に対応するテープ残量「787cm」は搬送量「8cm」以上であると判断されるため、後述の印字処理が実行される(S39)。
【0094】
図22を参照して、印字処理について説明する。まずステップS31で選択された印字履歴、または、ステップS35で入力された印字データが、フィルムテープ59に印字される(S101)。ステップS101で実行された印字が終了したか否かが判断される(S103)。印字が終了した場合(S103:YES)、現在のテープ残量からステップS33で算出された搬送量が減算されることで、最新のテープ残量が算出される(S105)。S101で印字された印字データと、ステップS105で算出されたテープ残量とが、個体情報データテーブル82に使用履歴として記憶される(S107)。ステップS105で算出されたテープ残量は、ディスプレイ5に表示される(S109)。
【0095】
一方、印字が終了していない場合(S103:NO)、光学式センサ28によってエンドマーク592が検出されたか否かが判断される(S111)。エンドマーク592が検出されていない場合(S111:NO)、処理はステップS101に戻り、印字が継続される。エンドマーク592が検出された場合(S111:YES)、印字が途中で終了される(S113)。印字に必要なテープ残量が不足しているため、印字データの最後まで印字を行えないからである。この場合、ステップS45と同様に、個体情報および使用履歴が個体情報データテーブル82から削除される(S115)。
【0096】
なお、先述のステップS27でユーザが入力したテープ残量が実際のテープ残量より少ないときに、上記のようにテープ残量が搬送量以上であると判断され、且つエンドマーク592が検出されるおそれがある(S37:NO、S111:YES)。ステップS109またはステップS115の実行後、処理はメイン処理に戻る。
【0097】
具体的には、先述のように個体情報「パターンA」が検出され、且つ印字履歴「会議用資料」が選択された場合、フィルムテープ59に「会議用資料」が印字される(S101)。この場合、図17に示す例では、個体情報「パターンA」に対応付けられたテープ残量「790cm」から、ステップS33で算出された搬送量「10cm」が減算される。新たなテープ残量「780cm」が算出および記憶され、ディスプレイ5に表示される(S105〜S109)。
【0098】
また、先述のように個体情報「パターンC」が検出され、且つ印字履歴「極秘資料」が入力された場合、フィルムテープ59に「極秘資料」が印字される(S101)。この場合、図20に示す例では、個体情報「パターンC」に対応付けられたテープ残量「800cm」から、ステップS33で算出された搬送量「8cm」が減算される。新たなテープ残量「792cm」が算出および記憶され、ディスプレイ5に表示される(S105〜S109)。なお、新たに入力された印字データ「極秘資料」が、個体情報「パターンC」の印字履歴として記憶される(S107)。
【0099】
また、先述のように個体情報「パターンD」が検出され、且つ印字履歴「極秘資料」が入力された場合、フィルムテープ59に「極秘資料」が印字される(S101)。図21に示す例では、個体情報「パターンD」に対応付けられたテープ残量「787cm」から、ステップS33で算出された搬送量「8cm」が減算される。新たなテープ残量「779cm」が算出および記憶され、ディスプレイ5に表示される(S105〜S109)。なお、新たに入力された印字データ「極秘資料」が、個体情報「パターンD」の印字履歴として記憶される(S107)。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る印字装置1によれば、カセット装着部8に装着されるテープカセット30の個体情報毎に、使用履歴が個体情報データテーブル82に記憶される。テープカセット30に記憶素子を設ける必要がないため、テープカセット30の単価を抑制することができる。また、印字装置1は、テープカセット30毎に異なる記憶装置を備える必要がないので、使用履歴を管理できるカセット数が記憶装置に限定されず、多数のテープカセット30毎の使用履歴を管理することができる。
【0101】
また、カセットケース31に設けられた指標部801から検出されたテープカセット30の種類情報に基づいて、未使用状態のテープの長さであるテープ長が特定される(S13)。特定されたテープ長と、テープの搬送量とに基づいて使用履歴としてテープ残量が取得される(S15)。このため、ユーザがテープ長を設定する手間を省略しつつ、テープカセット30のテープ残量を取得することができる。
【0102】
また、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されている場合、そのテープ残量から搬送量を減算したものが、テープ残量として取得される(S19:YES、S21)。よって、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されているか否かに応じて、より正確にテープ残量を取得することができる。
【0103】
また、テープ残量が搬送量よりも少ない場合に、検出された個体情報に対応付けられた使用履歴が、個体情報データテーブル82から削除される(S37:YES、S45)。テープ残量が不足しているテープカセットは、その後に使用されない場合が多い。よって、テープ残量が不足しているテープカセットの使用履歴を削除することで、RAM404の空き容量を確保することができる。
【0104】
また、テープ残量が搬送量よりも少ない場合に、ユーザによって使用履歴を削除する指示が入力されると、個体情報データテーブル82から使用履歴が削除される(S37:YES、S43:YES、S45)。テープ残量が不足している場合でも、ユーザが使用履歴を削除することを望まない場合があり得る。このため、ユーザに使用履歴を削除するか否かを選択できるようにすることで、印字装置1の利便性を高めることができる。
【0105】
また、スタートマークが検出された場合、テープ長がテープ残量として取得される(S9:YES、S13)。一方、スタートマークが検出されない場合、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されていなければ、ユーザによって入力されたテープ残量が取得される(S9:NO、S19:NO、S27)。これにより、検出された個体情報に対応するテープ残量が記憶されていない場合でも、現在のテープ残量を特定することができる。
【0106】
また、エンドマークが検出された場合、個体情報データテーブル82から使用履歴が削除される(S111:YES、S115)。テープ残量が全くないテープカセット30はその後に使用されないので、その使用履歴を削除することでRAM404の空き容量を確保することができる。
【0107】
上記実施形態において、テープ送りモータ24(図15参照)が、本発明の「搬送手段」に相当する。ステップS101を行うCPU401が、本発明の「印字手段」に相当する。RAM404の個体情報データテーブル記憶領域4041が、本発明の「記憶装置」に相当する。ステップS5を行うCPU401が、本発明の「個体情報検出手段」に相当する。ステップS13、S27、S105を行うCPU401が、本発明の「使用履歴取得手段」に相当する。ステップS15、S29、S107を行うCPU401が、本発明の「記憶制御手段」に相当する。
【0108】
ステップS13を行うCPU401が、本発明の「テープ長特定手段」に相当する。ステップS33を行うCPU401が、本発明の「搬送量取得手段」に相当する。ステップS19を行うCPU401が、本発明の「残量記憶判断手段」に相当する。ステップS45を行うCPU401が、本発明の「第一削除手段」に相当する。ステップS43を行うCPU401が、本発明の「削除指示判断手段」に相当する。光学式センサ28が、本発明の「スタート検出手段」および「エンド検出手段」に相当する。ステップS9を行うCPU401が、本発明の「スタート判断手段」に相当する。ステップS27を行うCPU401が、本発明の「残量入力判断手段」に相当する。ステップS111を行うCPU401が、本発明の「エンド判断手段」に相当する。ステップS115を行うCPU401が、本発明の「第二削除手段」に相当する。
【0109】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、指標部801および識別部802の位置は限定されない。例えば、指標部801および識別部802は、カセットケース31の前面の右部にあってもよい。また、テープカセット30の底面30Bにあってもよい。この場合、機械式センサ23の位置を、指標部801および識別部802の位置に合わせて変更することで、テープカセット30の種類情報および個体情報を検出できる。
【0110】
また、ステップS45及びステップS115では、個体情報と使用履歴との両方を削除するのに代えて、個体情報および使用履歴のいずれか一方を削除してもよい。
【0111】
また、種類情報データテーブル81(図16参照)には、種類情報にテープ幅とテープ長とが対応付けられていたが、種類情報に対応付けられるデータは限定されない。例えば、種類情報に、テープの色や、感熱タイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等の各種のテープ種類等を対応付けてもよい。この場合、指標部801が示す種類情報を検出することで、テープ幅、テープ長、テープの色、及びテープ種類等が特定できる。
【0112】
また、個体情報データテーブル82(図17参照)に記憶される使用履歴は、テープ残量及び印字履歴を含んでいるが、使用履歴に含まれるデータは限定されない。例えば、使用履歴に、購入年月日、テープの色、及びテープ種類等が含まれてもよい。この場合、印字装置1のCPU401は、個体情報から、テープ残量、印字履歴、購入年月日、テープの色、及びテープ種類等を特定できる。なお、個体情報データテーブル記憶領域4041は、RAM404以外の記憶装置に設けられてもよい。例えば、個体情報データテーブル記憶領域4041は、フラッシュメモリに設けられていてもよい。
【0113】
また、ステップS105では、テープ残量から搬送量を減算してテープ残量が算出されるが、テープ残量の算出方法は限定されない。例えば、印字で使用されたフィルムテープ59の搬送量の合計を、RAM404に記憶しておく。ステップS105では、テープ長の初期値からRAM404に記憶されている搬送量の合計を減算することで、テープ残量を算出してもよい。
【0114】
また、テープカセット30では、プッシュスイッチ90によって識別部802のパターンを変更可能にしているが、他の手法で識別部802のパターンを変更してもよい。例えばアーム前面35に、孔95に代えて、孔95の輪郭に沿ってミシン目が形成された面部を設けておく。ユーザは、ミシン目に沿って面部を切り離すことで、その面部を孔部に変更すればよい。これにより、ユーザが識別部のパターンを正確かつ容易に変更することができる。
【0115】
また、機械式センサ23に代えて、光学式センサを用いてもよい。この場合、例えば、指標部801および識別部802における面部を、光を反射する反射面に変更し、指標部801および識別部802における孔部を、光を反射しない非反射面に変更してもよい。つまり、面部および孔部を、反射面と非反射面との組み合わせで識別情報を示す二次元パターンに変更してもよい。この場合、光学式センサが発した光が、反射面によって反射された場合には、光学式センサの受光部で光が検出され、非反射面によって反射されなかった場合には、光学式センサの受光部で光が検出されない。印字装置1は、この光の有無によって種類情報を特定できる。また、指標部801および識別部802における面部および孔部のままであっても、反射率の違いにより、孔部の有無を検出できて種類情報を特定できる。
【0116】
上記のように、面部および孔部をそれぞれ反射面および非反射面との二次元パターンに変更した場合、反射面の輪郭に沿って目印が形成されてもよい。この場合、ユーザは、目印に沿って反射面を塗りつぶすことで、その反射面を非反射面に変更することができる。ひいては、ユーザが識別部のパターンを正確かつ容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 印字装置
10 サーマルヘッド
19 センサホルダ
21 指標部検出センサ
22 識別部検出センサ
23 機械式センサ
24 テープ送りモータ
28 光学式センサ
30 テープカセット
31 カセットケース
81 種類情報データテーブル
82 個体情報データテーブル
90 プッシュスイッチ
231 スイッチ端子
401 CPU
591 スタートマーク
592 エンドマーク
801 指標部
802 識別部
4022 種類情報データテーブル記憶領域
4041 個体情報データテーブル記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープを収納したカセットケースに、個体別の識別情報である個体情報を示す識別部が設けられたテープカセットが着脱されるカセット装着部と、
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットから前記テープを引き出して搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記テープに印字を行う印字手段と、
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部が示す前記個体情報を検出する個体情報検出手段と、
前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された状態で、前記テープの印字に関する情報である使用履歴を取得する使用履歴取得手段と、
前記使用履歴取得手段によって取得された前記使用履歴を、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けて、記憶装置に記憶させる記憶制御手段と
を備えたことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記カセットケースに設けられた指標部から、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの種類情報を検出する種類情報検出手段と、
前記種類情報検出手段によって検出された前記種類情報に基づいて、未使用状態の前記テープの長さであるテープ長を特定するテープ長特定手段と、
前記搬送手段による前記テープの搬送量を取得する搬送量取得手段とを備え、
前記使用履歴取得手段は、前記搬送量取得手段によって検出された前記搬送量と、前記テープ長特定手段によって特定された前記テープ長とに基づいて、前記使用履歴として前記テープの残量であるテープ残量を取得することを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記テープ残量が、前記記憶装置に記憶されているか否かを判断する残量記憶判断手段を備え、
前記使用履歴取得手段は、前記残量記憶判断手段によって前記記憶装置に記憶されていると判断された場合に、前記記憶装置に記憶されている前記テープ残量から前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量を減算したものを、前記テープ残量として取得することを特徴とする請求項2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記記憶装置に記憶された前記テープ残量が前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量よりも少ない場合に、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記使用履歴を、前記記憶装置から削除可能な第一削除手段を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記記憶装置に記憶された前記テープ残量が前記搬送量取得手段によって取得された前記搬送量よりも少ない場合に、ユーザによって前記使用履歴を削除するか否かの指示が入力されたか否かを判断する削除指示判断手段を備え、
前記第一削除手段は、前記削除指示入力手段によって前記使用履歴を削除する指示が入力されたと判断された場合に、前記記憶装置から前記使用履歴を削除することを特徴とする請求項4に記載の印字装置。
【請求項6】
未使用状態の前記テープにおける搬送方向の下流端に設けられ、未使用状態であることを示すスタートマークを、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットを対象に検出するスタート検出手段と、
前記スタート検出手段によって前記スタートマークが検出されたか否かを判断するスタート判断手段とを備え、
前記使用履歴取得手段は、前記スタート判断手段によって前記スタートマークが検出されたと判断された場合に、前記テープ長特定手段によって特定された前記テープ長を前記テープ残量として取得することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の印字装置。
【請求項7】
前記残量記憶判断手段は、前記スタート判断手段によって前記スタートマークが検出されなかったと判断された場合に、前記テープ残量が前記記憶装置に記憶されているか否かを判断し、
前記残量記憶判断手段によって前記テープ残量が前記記憶装置に記憶されていないと判断された場合に、ユーザによって前記テープ残量が入力されたか否かを判断する残量入力判断手段を備え、
前記使用履歴取得手段は、前記残量入力判断手段によって前記テープ残量が入力されたと判断された場合に、入力された前記テープ残量を前記使用履歴として取得することを特徴とする請求項6に記載の印字装置。
【請求項8】
前記テープにおける搬送方向の上流端に設けられ、使用済み状態であることを示すエンドマークを、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットを対象に検出するエンド検出手段と、
前記エンド検出手段によって前記エンドマークが検出されたか否かを判断するエンド判断手段と、
前記エンド判断手段によって前記エンドマークが検出されたと判断された場合に、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けられた前記使用履歴を、前記記憶装置から削除する第二削除手段と
を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の印字装置。
【請求項9】
テープを収納したカセットケースと、前記カセットケースに設けられ、個体別の識別情報である個体情報を示す識別部とを備えたテープカセットと、
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットから前記テープを引き出して搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記テープに印字を行う印字手段と、
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部が示す前記個体情報を検出する個体情報検出手段と、
前記カセット装着部に前記テープカセットが装着された状態で、前記テープの印字に関する情報である使用履歴を取得する使用履歴取得手段と、
前記使用履歴取得手段によって取得された前記使用履歴を、前記個体情報検出手段によって検出された前記個体情報に対応付けて、記憶装置に記憶させる記憶制御手段と
を備えたことを特徴とする印字装置。
【請求項10】
進出および退入が可能な複数のスイッチ端子を有し、前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部を判別する機械式センサを備え、
前記個体情報検出手段は、前記機械式センサの判別結果に基づいて前記個体情報を検出し、
前記識別部は、前記複数のスイッチ端子にそれぞれ対向する位置に設けられ、且つ前記個体情報に応じたパターンを有する、前記スイッチ端子を挿入可能な孔部、および前記スイッチ端子に当接可能な面部の組合せであることを特徴とする請求項9に記載の印字装置。
【請求項11】
前記識別部には、前記面部を前記孔部に変更するためのミシン目が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の印字装置。
【請求項12】
前記カセット装着部に装着された前記テープカセットの前記識別部を光学的に判別する非接触センサを備え、
前記個体情報検出手段は、前記非接触センサの判別結果に基づいて前記個体情報を検出し、
前記識別部は、前記個体情報に応じて表示された二次元パターンであることを特徴とする請求項9に記載の印字装置。
【請求項13】
前記識別部には、前記二次元パターンを変更するための目印が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−116084(P2012−116084A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267636(P2010−267636)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】