説明

危険回避システム、及びヘッドマウントディスプレイ

【課題】作業装置の操作者が危険領域を認識し易い危険回避システム、及びヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】ヘッドマウントディスプレイを装着した工作機械の操作者の視野方向を特定する為の初期化処理(S3)が実行される。次いで、カメラにより撮影された像情報のうち、工作機械における危険領域に相当する領域の像情報が抽出され(S17)、操作者の身体の一部が存在するか否かが判断される(S19)。存在すると判断された場合には、工作機械の稼働部が稼働することにより事故が発生する可能性が高いので、進入した身体の一部を安全な領域に誘導する為の画像を表示して操作者に視認させ(S21)、工作機械に対して稼働を緊急停止させる(S23)。安全領域に身体の一部が進入している場合には(S27:YES)、工作機械の稼働を許可する(S29、S31)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は危険回避システム、及びヘッドマウントディスプレイに関する。そしてより詳細には、作業装置の作業領域に操作者の身体の一部が進入した場合に、安全な領域に身体の一部を誘導するとともに、作業装置の駆動を停止させることが可能な危険回避システム、及びヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業装置の駆動時における危険防止のため、光電式の安全装置が取り付けられ使用されている(例えば特許文献1参照)。この装置では、発光素子と受光素子とが対向して配置される。そして操作者が危険領域に進入すると、操作者の身体の一部により発光素子からの光が遮られる。安全装置では、受光素子側で遮光を検知した場合に、作業装置の動作を緊急停止させる。これにより事故発生を防止している。
【特許文献1】特開2004−42101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述の安全装置では、危険領域を操作者が直接視認することができない。このため、操作者が危険領域内に身体の一部を進入させてしまって作業装置が緊急停止した場合、操作者は、どの位置に身体の一部を動かせば危険状態が解消されて緊急停止が解除されるかを認識し難いという問題点があった。
【0004】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、作業装置の操作者が危険領域を認識し易い危険回避システム、及びヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の問題点を解決するために、請求項1に係る発明の危険回避システムでは、作業装置と、前記作業装置を操作する操作者に装着されるヘッドマウントディスプレイとから構成される危険回避システムであって、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記作業装置の作業領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された前記作業領域の像情報を記憶する像情報記憶手段と、前記撮像手段にて撮像される方向を特定する特定手段と、前記特定手段にて特定された前記方向と、前記撮像手段にて撮像される領域のうち所定の領域である第一領域を特定するための情報であり、領域記憶手段に記憶されている情報である第一特定情報とに基づいて、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第一領域に相当する前記像情報である第一像情報を抽出する第一抽出手段と、前記第一抽出手段にて抽出された第一像情報に、前記操作者の身体の少なくとも一部に相当する像情報である身体像情報が含まれているか否かを判断する第一判断手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記操作者に対して前記第一領域外に身体の一部を移動させるように促すための情報を表示手段に表示させる表示制御手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第一通知を送信する第一送信手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていないと判断された場合に、前記作業装置に対して第二通知を送信する第二送信手段とを備え、前記作業装置は、所定の加工作業を行う作業手段と、前記第一通知又は第二通知を受信する第一二受信手段と、前記第一二受信手段にて前記第一通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を停止させる第一停止手段と、前記第一二受信手段にて前記第二通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を許可する第一許可手段とを備えている。
【0006】
また、請求項2に係る発明の危険回避システムは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記領域記憶手段には、前記撮像手段にて撮像可能な領域のうち前記第一領域以外の領域であって所定の領域である第二領域を特定する為の情報である第二特定情報が記憶されており、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第二特定情報にて特定される前記第二領域に相当する前記像情報である第二像情報を抽出する第二抽出手段と、前記第二抽出手段にて抽出された前記第二像情報に、前記身体像情報が含まれているか否かを判断する第二判断手段と、前記第二判断手段にて、前記第二像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第三通知を送信する第三送信手段とを備え、前記作業装置は、前記第三通知を受信する第三受信手段と、前記第三受信手段にて前記第三通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を許可する第二許可手段とを備えている。
【0007】
また、請求項3に係る発明の危険回避システムは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記領域記憶手段は、前記ヘッドマウントディスプレイに設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明の危険回避システムは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記領域記憶手段は、前記作業装置に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明のヘッドマウントディスプレイは、作業装置の作業領域を判断し、操作者の身体の少なくとも一部の前記作業領域内への侵入を監視するヘッドマウントディスプレイであって、前記作業装置の作業領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された前記作業領域の像情報を記憶する像情報記憶手段と、前記撮像手段にて撮像される方向を特定する特定手段と、前記特定手段にて特定された前記方向と、前記撮像手段にて撮像される領域のうち所定の領域である第一領域を特定するための情報であり、領域記憶手段に記憶されている情報である第一特定情報とに基づいて、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第一領域に相当する前記像情報である第一像情報を抽出する第一抽出手段と、前記第一抽出手段にて抽出された第一像情報に、前記操作者の身体の少なくとも一部に相当する像情報である身体像情報が含まれているか否かを判断する第一判断手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記操作者に対して前記第一領域外に身体の一部を移動させるように促すための情報を表示手段に表示させる表示制御手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第一通知を送信する第一送信手段と、前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていないと判断された場合に、前記作業装置に対して第二通知を送信する第二送信手段とを備えている。
【0010】
また、請求項6に係る発明のヘッドマウントディスプレイは、請求項5に記載の発明の構成に加えて、前記領域記憶手段には、前記撮像手段にて撮像可能な領域のうち前記第一領域以外の領域であって所定の領域である第二領域を特定する為の情報である第二特定情報が記憶されており、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第二特定情報にて特定される前記第二領域に相当する前記像情報である第二像情報を抽出する第二抽出手段と、前記第二抽出手段にて抽出された前記第二像情報に、前記身体像情報が含まれているか否かを判断する第二判断手段と、前記第二判断手段にて、前記第二像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第三通知を送信する第三送信手段とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の危険回避システムでは、作業装置において作業手段が駆動する危険領域(第一領域)に操作者の身体の一部が進入した場合には、ヘッドマウントディスプレイは、進入した身体の一部を危険領域の外に誘導する為の表示を行う。これにより、誤って操作者が作業中に作業装置の危険領域に身体の一部を進入させた場合、安全な領域に身体の一部を確実に誘導させることが可能となる。また作業装置では、作業装置の危険領域に身体の一部が進入した場合には、作業装置の作業を停止させ、危険領域外に移動した場合に、作業を許可するので、事故発生を防止することが可能となり、操作者は安全に作業を実行することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係る発明の危険回避システムでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、作業手段の駆動時であっても安全な領域(第二領域)に操作者の身体の一部が配置されていることを確認した場合に、作業装置の駆動を許可する。操作者は、第二領域に手や腕を進入させた状態でのみ作業装置の駆動を開始させることができる。これにより、作業装置の駆動に伴う事故発生を防止することが可能となる。
【0013】
また、請求項3に係る発明の危険回避システムでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、第一特定情報や第二特定情報が記憶される領域記憶手段はヘッドマウントディスプレイに設けられる。従って操作者は、異なる作業装置を操作する場合においても、共通の第一特定情報及び第二特定情報に基づいて操作を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項4に係る発明の危険回避システムでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、第一特定情報や第二特定情報が記憶される領域記憶手段は作業装置に設けられる。従って、ヘッドマウントディスプレイ2に必要となる記憶手段の記憶容量を抑制でき、ヘッドマウントディスプレイ2の小型化が可能となる。また、操作者は、異なる作業装置を操作する場合において、作業装置毎に固有の第一特定情報及び第二特定情報に基づいて操作を行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項5に係る発明のヘッドマウントディスプレイでは、作業装置において作業手段が駆動する危険領域(第一領域)に操作者の身体の一部が進入した場合には、ヘッドマウントディスプレイは、進入した身体の一部を危険領域の外に誘導する為の表示を行う。これにより、誤って操作者が作業中に作業装置の危険領域に身体の一部を進入させた場合、安全な領域に身体の一部を確実に誘導させることが可能となる。また、操作者の身体の一部が第一領域内に存在するか否かの情報を作業装置に通知することが可能となるので、作業装置にて、操作者の操作状況に応じた制御を行わせることが可能となる。
【0016】
また、請求項6に係る発明のヘッドマウントディスプレイでは、請求項5に記載の発明の効果に加えて、作業手段の駆動時であっても安全領域(第二領域)に操作者の身体の一部が配置されていることを作業装置に通知する。これにより、操作者が安全な状態であることを確認した場合にのみ、作業装置の駆動を開始させることができる。これにより、作業装置の駆動に伴う事故発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の危険回避システム及びヘッドマウントディスプレイの実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0018】
はじめに、図1を参照し、危険回避システム1の概要について説明する。図1は、危険回避システム1の概要を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、危険回避システム1は、作業装置である工作機械10、工作機械10を操作する操作者3、及び操作者3に装着されるヘッドマウントディスプレイ2にて構成される。工作機械10とヘッドマウントディスプレイ2とは通信ケーブル8にて接続されており、相互に通信を行うことが可能となっている。工作機械10は、略直方体形状の本体部6と、本体部6の側面に支持され上下方向に稼働可能な稼働部7と、稼働部7の下方に配置され、被加工物が上面に載置される台部9とを少なくとも備えた、所謂プレス加工機である。稼働部7は、本体部6に内蔵されたモータ111(図6参照)と接続されている。そして操作者3の操作に基づきモータ111が回転駆動することにより、上下方向に稼働する。これにより工作機械10は、所定のプレス加工作業を実行することが可能となっている。
【0020】
なお本実施の形態の作業装置である工作機械10は、本発明の作業装置を具現化した一例であり、上述のプレス加工機に限定されない。従って例えば、旋盤、歯切り盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、研削盤等などが使用可能である。
【0021】
操作者3には、予めヘッドマウントディスプレイ2が装着される。本実施の形態では、シースルータイプのヘッドマウントディスプレイを想定している。ヘッドマウントディスプレイ2には、工作機械10の作業領域のうち、操作者3の身体の一部が進入した場合にけがや事故等の発生につながる恐れのある危険な領域(例えば、稼働部7の近傍領域など。以下「危険領域」という。)を示す映像と、身体の一部が進入した場合でも事故等が発生する恐れのない安全な領域(例えば、稼働部7より離隔した領域など。「安全領域」という。)を示す映像とが、実際の視界に重ね合わせられ映し出される。この映像は正規の作業位置に操作者3が着いた時に実際の危険領域や安全領域と映像で示される危険領域や安全領域と一致するように映し出される。このため、後述する識別マーク21により重ね合わせるための基準を取得する。これにより操作者3は、ヘッドマウントディスプレイ2に映し出される危険領域及び安全領域の映像を確認しながら工作機械10の操作を行うことができる。従って操作者3は、工作機械10の稼働部7の稼働中には身体の一部を危険領域に進入させることなく、安全に作業を実行することが可能となる。
【0022】
ヘッドマウントディスプレイ2にはカメラ11(図2参照)が取り付けられる。カメラ11は、操作者3にヘッドマウントディスプレイ2が装着された状態で、操作者3の視界方向を撮影することが可能な位置に配置される。そのため、操作者3の作業中には、カメラ11では工作機械10の作業領域が撮影される。
【0023】
カメラ11により撮影された像の情報(以下「像情報」という。)は画像認識される。そして、操作者3の身体の一部(手や腕など)が像情報に含まれているか否かが認識される。そして、工作機械10の稼働部7が稼働している最中に、操作者3の身体の一部が危険領域内に進入していると判断された場合には、ヘッドマウントディスプレイ2は、工作機械10における稼働部7の稼働を緊急停止させる。これにより、稼働部7の稼働中に誤って操作者3が危険領域に手や腕などを進入させてしまった場合であっても、事故を未然に防止することが可能となる。
【0024】
加えて、工作機械10の稼働部7が停止中に、安全領域内に操作者3の身体の一部が進入していると判断された場合には、ヘッドマウントディスプレイ2は、工作機械10における稼働部7の稼働開始を許可する。一方、安全領域内に操作者3の身体の一部が進入していないと判断された場合には、ヘッドマウントディスプレイ2は、工作機械10における稼働部7の稼働開始を禁止する。これにより、操作者3の安全が確認された場合にのみ、工作機械10の稼働部7の稼働を開始させることが可能となる。
【0025】
工作機械10の本体部6側面であって、稼働部7の下方には、ヘッドマウントディスプレイ2において実行される初期化処理時において使用される識別マーク21が貼付されている。識別マーク21の使用方法等詳細は後述する。
【0026】
図2を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2の概略構成について説明する。図2は、ヘッドマウントディスプレイ2の外観構成を示した図である。
【0027】
図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、画像信号に応じて変調されたレーザ光(以下「画像光4」という。)を走査させて出射させ、操作者3の少なくとも一方の眼の網膜に画像を直接投影する。これにより、操作者3に画像を視認させる。図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、画像信号に応じて画像光4を出射する出射装置100と、その出射装置100から出射された画像光4を導くと共に、その画像光4を操作者3の眼に向かって反射させるプリズム150と、出射装置100及びプリズム150を支持する支持部材200とを少なくとも備えている。
【0028】
出射装置100は、画像光4をプリズム150に対し出射させる。プリズム150は、出射装置100に対して固定的な位置にあり、その出射装置100から出射された画像光4を導き、その画像光4を操作者3の眼に向かって反射させる。プリズム150は、図示しないビームスプリッタ部を備えており、外界からの外光5を透過させ、操作者3の眼に導く。プリズム150は、操作者3の側方から入射された画像光4を操作者3の眼に入射させると共に、外界からの外光5を操作者3の眼に入射させる。これにより、実際の視界はもちろん、出射装置100から出射された画像光4に基づく画像が視認可能となる。
【0029】
なお本実施形態においては、プリズム150によって外光5と画像光4とを同時に視認することができるような構成とした。しかしながら本発明はこの構成に限定されず、例えば、プリズム150に代えてハーフミラーを用いることもできる。これにより、出射装置100からの画像光4はハーフミラーに反射させて操作者3の眼に入射させると共に、外光5はハーフミラーを透過させて操作者3の眼に入射させることが可能となる。
【0030】
また本実施形態においては、ヘッドマウントディスプレイとして、網膜走査を用いたシースルーのヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、反射型LCDを利用したヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0031】
図3を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2の電気的構成について説明する。図3は、ヘッドマウントディスプレイ2の電気的構成を示す模式図である。
【0032】
図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、操作者3に画像(危険領域、安全領域等)を視認させる表示部40、各種操作やデータの入力を行うための入力部41、工作機械10との通信を行うための通信部43、カメラ11、カメラ11にて撮像された像情報のうち、危険領域及び安全領域を特定するための情報が記憶されるフラッシュメモリ49、操作者3の視覚方向を認識するための加速度センサ14、ヘッドマウントディスプレイ2全体を制御する制御部46、及び電源部47を備えている。
【0033】
表示部40は、操作者3に視認させるための映像の情報(以下「映像情報」という。)を制御部46より受信し、操作者3の網膜に直接投影させるために必要な各信号に変換する為の映像信号処理部70、レーザ光を出力するレーザ群72(青色出力レーザ(Bレーザ)721、緑色出力レーザ(Gレーザ)722、赤色出力レーザ(Rレーザ)723)、及び、レーザよりレーザ光を出力させるための制御を行うレーザドライバ群71を備えている。そして、映像信号処理部70の制御により、所望のレーザ光を所望のタイミングで出力させることが可能なように、映像信号処理部70はレーザドライバ群71と電気的に接続されている。またレーザドライバ群71は、Bレーザ721、Gレーザ722、及びRレーザ723と其々電気的に接続されている。また、映像信号処理部70が制御部46より映像信号を受信することが可能なように、映像信号処理部70と制御部46とはバスを介して電気的に接続されている。
【0034】
また表示部40は、レーザより出力されたレーザ光を垂直方向に反射させることによって走査を行うガルバノミラー812及びガルバノミラー812の駆動制御を行う垂直走査制御回路811、レーザより出力されたレーザ光を水平方向に反射させることによって走査を行うガルバノミラー792及びガルバノミラー792の駆動制御を行う水平走査制御回路791を備えている。そして、映像信号処理部70の制御により、所望の方向にレーザ光を反射させることが可能なように、映像信号処理部70と垂直走査制御回路811及び水平走査制御回路791とは其々電気的に接続されている。また、垂直走査制御回路811はガルバノミラー812と電気的に接続されている。また、水平走査制御回路791はガルバノミラー792と電気的に接続されている。
【0035】
入力部41は、各種機能キーなどからなる操作ボタン群50、操作ボタン群50のキーが操作されたことを検出し、制御部46に通知する入力制御回路51を備えている。そして、操作ボタン群50のキーに入力された情報を制御部46にて認識することが可能なように、操作ボタン群50は入力制御回路51と電気的に接続されている。また入力制御回路51は制御部46と電気的に接続されている。
【0036】
通信部43は、通信ケーブル8(図1参照)を介し、工作機械10との間で所定の通信プロトコルに基づき通信を行う通信モジュール57と、この通信モジュール57を制御し、工作機械10との間で実行される通信を制御する通信制御回路58とを備えている。そして、制御部46が通信部43を介して工作機械10と通信を行うことが可能なように、制御部46と通信制御回路58とはバスを介して電気的に接続されている。また、通信モジュール57と通信制御回路58とは電気的に接続されている。
【0037】
なお、ヘッドマウントディスプレイ2と工作機械10の間に接続される通信ケーブル8としては特に限定されず、従来周知の通信媒体が使用される。例えばイーサネット(登録商標)ケーブル、USB(登録商標)ケーブル、RS−232Cケーブル等が使用可能である。また、無線を使用した通信を行うこととしてもよい。
【0038】
カメラ11は、操作者3の視野方向を撮像することが可能な素子である。撮像された結果の像情報は、フラッシュメモリ49に記憶され、画像認識処理の元データとされる(詳細は後述する。)。そして、撮像された結果の像情報を制御部46にて認識することが可能なように、カメラ11と制御部46とは電気的に接続されている。
【0039】
加速度センサ14は、ヘッドマウントディスプレイ2が備えるカメラ11の撮影方向を特定するために使用される。ヘッドマウントディスプレイ2では、初期化時において、予め工作機械10の作業領域のうち特定の部位(本体部6側面、稼働部7の下方)に設けられた識別マーク21がカメラ11により撮影されて認識される。次いで、得られる像情報中における識別マーク21の位置が確定される。これにより、カメラ11の撮影方向、つまり操作者3の視覚方向が特定される。その後は、加速度センサ14により特定される移動角度に基づき、特定されたカメラ11の撮影方向が補正される。これによりヘッドマウントディスプレイ2では、操作者3が工作機械10の作業領域のうちどの部分を視覚しているかを詳細に特定することが可能となっている(詳細は後述する)。
【0040】
電源部47は、ヘッドマウントディスプレイ2を駆動させるための電源となる電池59、及び、電池59の電力をヘッドマウントディスプレイ2に供給すると共に、充電用アダプタ(図示せず)から供給される電力を電池59へ供給して電池59の充電を行う充電制御回路60を備えている。
【0041】
フラッシュメモリ49には、カメラ11により撮影された結果の像情報、操作者3に視認させる画像(危険領域や安全領域を特定するための表示画像など)の情報が記憶される。そして、フラッシュメモリ49に記憶されている情報を制御部46より参照することが可能なように、フラッシュメモリ49と制御部46とはバスを介して電気的に接続されている。
【0042】
制御部46は、ヘッドマウントディスプレイ2にて実行される各種処理(画像認識処理、画像表示処理など)を制御する機能を有している。制御部46は、CPU61、プログラムを格納したROM62、各種データが一時的に記憶されるRAM48などから構成される。制御部46では、CPU61がROM62に格納されたプログラムを読み出すことにより、各処理が実行される。RAM48には、CPU61が各処理を実行する場合に必要な各種フラグやデータが記憶される。
【0043】
表示部40にて画像光4が形成される過程の概要について、図4を参照して詳説する。図4は、表示部40の光学的及び電気的構成を示す模式図である。表示部40は、図4に示すように、光源ユニット部65、コリメート光学系77、水平走査系79、第一リレー光学系80、垂直走査系81、第二リレー光学系82を備えている。光源ユニット部65は、映像信号処理部70、レーザドライバ群71、レーザ群72、コリメート光学系73、ダイクロイックミラー群74、及び結合光学系75を備えている。水平走査系79は、水平走査制御回路791及びガルバノミラー792を備えている。垂直走査系81は、垂直走査制御回路811及びガルバノミラー812を備えている。
【0044】
光源ユニット部65の構成について詳説する。映像信号処理部70は、既述のように、制御部46と電気的に接続されている。そして、制御部46にて形成された映像情報が入力される。映像信号処理部70には、輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)、垂直同期信号67及び水平同期信号68が其々電気的に接続されている。映像信号処理部70では、入力された映像情報を網膜に投影させるための要素となる各信号(輝度信号、垂直同期信号、水平同期信号)が生成される。生成された各信号は、輝度信号66、垂直同期信号67、及び水平同期信号68に対して画素毎に出力される。
【0045】
輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)は、レーザドライバ群71(Bレーザドライバ711、Gレーザドライバ712、Rレーザドライバ713)に其々電気的に接続されている。水平同期信号68は、水平走査系79の水平走査制御回路791に接続されている。垂直同期信号67は、垂直走査系81の垂直走査制御回路811に接続されている。
【0046】
レーザドライバ群71は、レーザ群72(Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723)に其々電気的に接続されている。レーザドライバ群71は、輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)を介して伝達された各信号の各輝度信号に基づいて、強度変調されたレーザ光をレーザ群72より出射させるために、レーザ群72を駆動する。
【0047】
光源ユニット部65には、レーザドライバ群71の制御に基づきレーザ群72より出射された3色(青色、緑色、赤色)のレーザ光を平行光にコリメートさせることが可能なコリメート光学系73(731〜733)、コリメート光学系73にてコリメートされたレーザ光を合波させることが可能なダイクロイックミラー群74(741〜743)、合波されたレーザ光を光ファイバ76に導くための結合光学系75が其々設けられる。
【0048】
尚、レーザ群72(Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723)として、レーザダイオード等の半導体レーザや固体レーザを利用してもよい。
【0049】
表示部40のうち光源ユニット部65を除く部分の構成について詳説する。光源ユニット部65より光ファイバ76に対して導かれたレーザ光を水平走査系79のガルバノミラー792に導くためのコリメート光学系77が設けられる。ガルバノミラー792は、レーザ光を、水平方向に走査させる。ガルバノミラー792の偏向面793に入射されたレーザ光は、水平走査制御回路791の制御により、映像信号処理部70より受信される水平同期信号68に同期して水平方向に走査される。本実施の形態の水平走査系79は、表示すべき画像の1走査線毎に、レーザ光を水平方向に水平走査(1次走査の一例)させるための光学系である。
【0050】
また、水平走査されたレーザ光を垂直走査系81に導くための第一リレー光学系80と、第一リレー光学系80により導かれたレーザ光を垂直方向に走査させるためのガルバノミラー812が設けられる。ガルバノミラー812の偏向面813に入射されたレーザ光は、垂直走査制御回路811の制御により、映像信号処理部70より受信される垂直同期信号67に同期して垂直方向に走査される。本実施の形態の垂直走査系81は、表示すべき画像の1フレーム毎に、レーザ光を最初の走査線から最後の走査線に向かって垂直に垂直走査(2次走査の一例)する光学系である。
【0051】
また、垂直走査されたレーザ光(画像光4(図1参照))をプリズム150に導くための第二リレー光学系82が設けられる。第二リレー光学系82にて導かれた画像光4は、プリズム150に入射される。プリズム150は、第二リレー光学系82と操作者3の瞳孔90との間に配置される。プリズム150は、画像光4を全反射させるなどして、ユーザの瞳孔90に導く。
【0052】
上述の表示部40では、水平走査系79は、垂直走査系81より高速にすなわち高周波数でレーザ光を走査するように設計される。また、第一リレー光学系80は、水平走査系79のガルバノミラー792と、垂直走査系81のガルバノミラー812とが共役となるように設けられる。第二リレー光学系82は、ガルバノミラー812と、ユーザの瞳孔90とが共役となるように設けられる。
【0053】
本発明の一実施形態のヘッドマウントディスプレイ2が、外部からの映像信号を受けてから、ユーザの網膜上に映像を投影するまでの過程について、図4を参照して説明する。
【0054】
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ2では、光源ユニット部65に設けられた映像信号処理部70が映像信号を受信する。次いで映像信号処理部70より、赤、緑、青の各色のレーザ光を出力させるためのB輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663からなる輝度信号66と、水平同期信号68と、垂直同期信号67とが出力される。
【0055】
Bレーザドライバ711、Gレーザドライバ712、Rレーザドライバ713は、各々入力されたB輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663に基づき、Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723に対してそれぞれの駆動信号を出力する。
【0056】
上述の駆動信号に基づいて、Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723は、それぞれ強度変調されたレーザ光を発生させる。発生されたレーザ光は、コリメート光学系73に出力される。レーザ光は、コリメート光学系73によってそれぞれが平行光にコリメートされ、更に、ダイクロイックミラー群74に入射されて1つのレーザ光となるよう合成される。合成されたレーザ光は、結合光学系75によって光ファイバ76に入射されるよう導かれる。
【0057】
光ファイバ76を伝達したレーザ光は、光ファイバ76からコリメート光学系77に導かれる。そして水平走査系79に出射される。
【0058】
水平走査系79に入射されたレーザ光は、ガルバノミラー792の偏向面793にて、水平同期信号68に同期して水平方向に走査される。ガルバノミラー792は、水平同期信号68に同期して、その偏向面793が入射光を水平方向に反射するように往復振動をしている。このガルバノミラー792によってレーザ光は水平方向に走査される。水平走査されたレーザ光は、第一リレー光学系80を介し、垂直走査系81に出射される。
【0059】
第一リレー光学系80では、ガルバノミラー792の偏向面793とガルバノミラー812の偏向面813とが共役の関係となるように調整され、また、ガルバノミラー792の面倒れが補正される。
【0060】
垂直走査系81に入射されたレーザ光は、ガルバノミラー812の偏向面813にて、垂直同期信号67に同期して垂直方向に走査される。ガルバノミラー812は、ガルバノミラー792が水平同期信号68に同期することと同様に垂直同期信号67に同期して、その偏向面813が入射光を垂直方向に反射するように往復振動をしている。このガルバノミラー812によってレーザ光は垂直方向に走査される。
【0061】
水平走査系79及び垂直走査系81によって垂直方向及び水平方向に2次元に走査されたレーザ光(画像光4)は、ガルバノミラー812の偏向面813と、ユーザの瞳孔90とが共役の関係となるように設けられた第二リレー光学系82、プリズム150により操作者3の瞳孔90へ入射され、網膜上に投影される。
【0062】
以上説明した過程を経ることにより、操作者3は、2次元走査されて網膜上に投影されたレーザ光による画像を認識することが可能となる。なお、水平走査系79のガルバノミラー792と、垂直走査系81のガルバノミラー812とは、名称を同じように説明したが、光を走査するように其の反射面が揺動(回転)させられるものであれば、共振タイプ、非共振タイプ等、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよいことは言うまでもない。
【0063】
フラッシュメモリ49に設けられている記憶領域について、図5を参照して説明する。図5は、フラッシュメモリ49に設けられている記憶領域を示す模式図である。図5に示すように、フラッシュメモリ49には、第一記憶領域491、第二記憶領域492、第三記憶領域493、第四記憶領域494、及びその他の領域が設けられている。第一記憶領域491には、カメラ11にて撮影された結果の像情報が記憶される。第二記憶領域492には、得られる像情報のうち危険領域を特定するための情報(危険領域特定情報)が複数記憶される。第三記憶領域493には、得られる像情報のうち安全領域を特定するための情報(安全領域特定情報)が複数記憶される。第四記憶領域494には、ヘッドマウントディスプレイ2の操作ボタン群50を介して操作者3により入力された設定情報が記憶される。
【0064】
危険領域特定情報として、カメラ11にて撮影された結果の像情報のうち危険領域の像情報を特定するために使用される座標情報が第二記憶領域492に記憶される。CPU61は、危険領域特定情報を参照することにより、像情報より危険領域の像情報を抽出することが可能となる。また、安全領域特定情報として、カメラ11にて撮影された結果の像情報のうち安全領域の像情報を特定するために使用される座標情報が第三記憶領域493に記憶される。CPU61は、安全領域特定情報を参照することにより、像情報より安全領域の像情報を抽出することが可能となる。第四記憶領域に記憶される設定情報としては、第二記憶領域492及び第三記憶領域493に記憶されている複数の危険領域特定情報及び安全領域特定情報のうち、特定の危険領域特定情報及び安全領域特定情報を選択する為の設定情報等が記憶される。
【0065】
工作機械10の電気的構成について、図6を参照して説明する。図6は、工作機械10の電気的構成を示す模式図である。図6に示すように、工作機械10は、稼働部7の稼働制御やヘッドマウントディスプレイ2との通信制御を司るCPU101、CPU101において実行される各種処理プログラムが記憶されるROM102、CPU101が処理を行う場合において必要となる記憶領域を提供するRAM103をそれぞれ備えている。そして、CPU101がROM102、RAM103の記憶領域にアクセスすることが可能なように、CPU101とROM102、RAM103はそれぞれバスを介して電気的に接続されている。
【0066】
工作機械10は、入力信号全体を統括し、CPU101にて入力信号を認識可能なようにインピーダンス変換やタイミング調整を行うための入力インタフェース104、CP101からの出力信号全体を統括し、CPU101より出力される出力信号を各種出力デバイスにて認識することが可能なようにインピーダンス変換やタイミング調整を行うための出力インタフェース105を其々備えている。CPU101と入力インタフェース104及び出力インタフェース105とは、其々バスを介して電気的に接続されている。
【0067】
工作機械10は、ユーザによる工作機械10への入力操作を受け付ける操作パネル106を備えている。そしてユーザにより操作パネル106を介して実施された操作内容をCPU101にて検出することが可能なように、操作パネル106と入力インタフェース104とは電気的に接続されている。
【0068】
工作機械10は、上下動する稼働部7の駆動位置を検出する為の上昇センサ107及び下降センサ108をそれぞれ備えている。そして、稼働部7の駆動位置をCPU101にて認識することが可能なように、上昇センサ107及び下降センサ108と入力インタフェース104とは電気的に接続されている。
【0069】
工作機械10は、ユーザに対して工作機械10の稼働状況等の情報を視認させるための液晶パネル109を備えている。そして、CPU101より所望の画像を液晶パネル109に表示させることが可能なように、液晶パネル109と出力インタフェース105とは電気的に接続されている。
【0070】
工作機械10は、稼働部7を上下方向に稼働させるためのモータ111と、モータ111の回転制御を行うモータドライバ110とを備えている。そして、CPU101の制御に基づきモータ111を稼働させることが可能なように、モータ111とモータドライバ110とは電気的に接続されている。またモータドライバ110は出力インタフェース105と電気的に接続されている。
【0071】
通信制御部112は、工作機械10が通信ケーブル8を介してヘッドマウントディスプレイ2と通信を行うために設けられている。通信制御部112には通信ケーブル8が接続される。そして、所定の通信プロトコルに基づいてヘッドマウントディスプレイ2と通信を行うことが可能なように、通信制御部112はCPU101と電気的に接続されている。
【0072】
なお工作機械10は、上述の電気的構成のうちモータ111のみ別電源となっており、その他の部分とは独立に電源のON/OFF制御を行うことが可能となっている。操作者3が工作機械10を操作して加工作業を始める場合には、はじめに工作機械全体(モータ111以外)の電源をONし、次いでモータ111の電源をONする。これにより稼働部7が稼働可能となり、加工操作が実行可能となる。モータ111を別電源とすることにより、不用意に稼働部7が稼働して事故が発生してしまうことを防止している。また、モータ111の電源をOFFさせることにより稼働部7を緊急停止させることが可能となっている。
【0073】
ヘッドマウントディスプレイ2のCPU61にて実行される処理について、図7を参照して説明する。図7は、ヘッドマウントディスプレイ2にて実行される危険監視処理のフローチャートである。危険監視処理は、ヘッドマウントディスプレイ2の電源が投入された場合に、CPU61により起動され実行開始される。
【0074】
ヘッドマウントディスプレイ2より工作機械10に対して送信される通知について概説する。「OFF指示通知」は、工作機械10に対して稼働部7の稼働を緊急停止させる旨を通知する場合に送信される。「駆動許可通知」は、工作機械10に対して稼働部7の稼働を許可する旨を通知する場合に送信される。「ON許可通知」は、工作機械10に対してモータ111の電源ONを許可する旨を通知する場合に送信される。「ON禁止通知」は、工作機械10に対してモータ111の電源ONを禁止する旨を通知する場合に送信される。
【0075】
図7に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2の電源が投入されると、カメラ11による撮影が開始される(S1)。撮影された像情報は、フラッシュメモリ49の第一記憶領域491に記憶される。次いで初期化処理が実行される(S3)。初期化処理では、カメラ11の撮影方向が特定される。具体的には、はじめに第一記憶領域491に記憶された像情報が画像処理される。そして、像情報内に、工作機械10の作業領域に予め設けられている識別マーク21が存在するかどうかが判断される。存在しないと判断された場合(S3:NO)、カメラ11の撮影方向が特定できない状態であるので、初期化エラー通知を表示させ(S7)操作者3に視認させる。そしてS3に戻り、繰り返し初期化処理が実行される。
【0076】
初期化エラーを視認した操作者3は、この状態では工作機械10を稼働させることが不可能であるので、ヘッドマウントディスプレイ2を装着した状態で工作機械10の作業領域方向を視認する。これにより、視野内に識別マーク21が入る。この状態でカメラ11により撮影された結果の像情報内には識別マーク21が存在する状態となる。この状態で初期化処理が行われた場合、画像処理により識別マーク21が認識されるので(S3:YES)、初期化成功通知を表示させて操作者3に視認させ(S5)、S11に移行される。初期化処理により認識された識別マーク21の位置情報(座標情報)は、カメラ11の撮影方向を特定する場合における基準座標とされる。そして基準座標が像情報全体のどの部分に位置するかを認識することによって、カメラ11の撮影方向が特定される。以後、特定されたカメラ11の撮影方向は、加速度センサ14にて検出される移動角度に基づいて補正される。これにより、初期化処理以後、操作者3の視野方向が変化した場合であっても、カメラ11が工作機械10の作業領域のうちどの部分を撮影しているかを特定することが可能となる。
【0077】
次いで、予め第四記憶領域494に記憶されている設定情報が参照され、特定の危険領域特定情報及び安全領域特定情報(テンプレート情報)がフラッシュメモリ49の第二記憶領域492及び第三記憶領域493より読み出される(S11)。読み出されたテンプレート情報は、初期化処理にて特定された基準座標と、加速度センサ14にて検出される移動角度に基づいて補正される。そして、補正された結果の座標情報に基づき、操作者3の視界のうち危険領域と安全領域とを区別するための画像を表示させ、操作者3に視認させる(S13)。
【0078】
図8を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2を介し操作者3にて視認される像の概略を示す。図8は、ヘッドマウントディスプレイ2を介し操作者3にて視認される像の一例を示す模式図である。図8に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2には、危険領域と安全領域との境界線22が表示される。境界線は、S11にて読み出され、補正された結果のテンプレート情報に基づいて表示される。また本実施の形態のヘッドマウントディスプレイ2はシースルータイプであるので、表示された境界線22は視界中の稼働部7や自身の腕19、20に重ね合わされた状態となる。ここで、危険領域16内は赤色で、安全領域17、18内は緑色で表示される。これにより操作者3は、視界のうち危険領域16と安全領域17、18とを認識することが可能となる。
【0079】
次いで図7に示すように、第二記憶領域492に記憶されている危険領域特定情報に基づいて、像情報のうち危険領域に相当する像情報(図8中16にて示される領域の像情報)が抽出される(S17)。そして抽出された像情報の画像認識が実行され、操作者3の身体の少なくとも一部が危険領域の像情報内に存在するかが判断される(S19)。
【0080】
身体の少なくとも一部を認識する為の画像認識処理の一例としては、例えば、像情報について歪みやノイズが除去された後、拡大、縮小、回転など補正処理が施される。次いで、特徴抽出を行って、特徴パラメータあるいは特徴ベクトルが求められる。こうして得られた特徴量の中から手や腕の標準パターンに合致した特徴量、あるいは近い特徴量が決定された場合に、身体の少なくとも一部が存在すると判断される。
【0081】
危険領域は、工作機械10の稼働部7の稼働領域であるため、この領域に操作者3の身体の一部が進入している状態では、事故が発生してしまう可能性が高い。そこで危険領域の像情報に身体の少なくとも一部が検出された場合(S19:YES)、操作者3に対して危険回避のための情報を通知する為の画像を表示させる(S21)。具体的には、危険領域内に身体の一部が進入してしまっている状態である旨の通知と、身体をどの方向にどの位移動させれば、危険な状態を回避することができるかという情報とが表示される。
【0082】
次いで、稼働部7の稼働を緊急停止させるための指示の通知であるOFF指示通知が、通信ケーブル8を介し工作機械10に対して送信される(S23)。そしてS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0083】
一方、危険領域の像情報に操作者3の身体の一部が検出されなかった場合には(S19:NO)、次いで、第三記憶領域493に記憶されている安全領域特定情報に基づいて、像情報のうち安全領域に相当する像情報(図8中17、18にて示される領域の像情報)が抽出される(S25)。そして抽出された像情報の画像認識が実行され、操作者3の身体の少なくとも一部が安全領域の像情報に存在するかが判断される(S27)。
【0084】
安全領域は、工作機械10の稼働部7の稼働領域外であるので、この領域に操作者3の身体の一部が進入している状態では、安全に作業が進められる状態であると判断される。そこで安全領域の像情報に身体の少なくとも一部が検出された場合には(S27:YES)、工作機械10に対して稼働部7の稼働を許可する通知である駆動許可通知が送信される(S29)。次いで、工作機械10に対してモータ111の電源ONを許可する通知であるON許可通知が送信される(S31)。そしてS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0085】
一方、安全領域の像情報に身体の少なくとも一部が検出されなかった場合には(S27:NO)、操作者3が工作機械10から離れていたり、正規の作業位置に着いていなかったりする可能性があるので工作機械10に対してモータ111の電源ONを禁止する通知であるON禁止通知が送信される(S33)。そしてS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0086】
以上説明したように、ヘッドマウントディスプレイ2では、作業領域のうち危険領域に操作者3の身体の一部が進入してしまっている状態であると判断された場合には、進入した身体の一部を危険領域の外に誘導させるための画像を表示させる。これにより、誤って操作者3が作業中に工作機械10の危険領域に身体の一部を進入させてしまった場合であっても、安全な領域に身体の一部を確実に誘導させることが可能となる。
【0087】
また、工作機械10に対して稼働部7の稼働停止を指示する為のOFF指示通知を送信するので、工作機械10の稼働部7の稼働を速やかに停止させることが可能となり、事故発生を防止することが可能となる。
【0088】
さらに、操作者3の身体の一部が安全領域に配置されていることを確認した場合に、工作機械10に対して稼働部7の稼働を許可する為の駆動許可通知を送信することが可能となるので、操作者3はより安全に作業を実行することが可能となる。
【0089】
工作機械10のCPU101にて実行される各処理について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、通信処理を示すフローチャートである。図10は、駆動制御処理を示すフローチャートである。通信処理は、ヘッドマウントディスプレイ2よりなんらかのデータを受信した場合において、CPU101により起動され実行開始される。駆動制御処理は、操作パネル106に対して何らかの入力操作がなされた場合において、CPU101により起動され実行開始される。
【0090】
CPU101にて実行される処理において使用されるフラグについて説明する。駆動許可フラグは、ヘッドマウントディスプレイ2より稼働部7の稼働が許可されている状態であるかを示すために使用される。そして、稼働が許可されている状態にて「1」が記憶され、稼働が禁止されている状態にて「0」が記憶される。ON許可フラグは、ヘッドマウントディスプレイ2よりモータ111の電源のONが許可されている状態であるかを示すために使用される。そして、電源ONが許可されている状態にて「1」が記憶され、電源ONが禁止されている状態にて「0」が記憶される。これらのフラグは、工作機械10の電源が投入され、CPU101が起動開始された場合において「0」が記憶され初期化される。以下フラグに「1」が記憶されることを「ONされる」といい、「0」が記憶されることを「OFFされる」という。
【0091】
図9を参照し、通信処理について説明する。ヘッドマウントディスプレイ2よりなんらかのデータが受信された場合、はじめに、受信されたデータがOFF指示通知であるかが判断される(S41)。OFF指示通知である場合には(S41:YES)、ヘッドマウントディスプレイ2よりモータ111の電源をOFFし、稼働部7の稼働を緊急させる旨の指示がなされたものと判断される。この場合、速やかにモータ111の電源がOFFされる(S43)。稼働部7が稼働中である場合には稼働が緊急停止される。そして、稼働部7の稼働が許可されていないことを示すために駆動許可フラグがOFFされ(S45)、通信処理は終了される。
【0092】
ヘッドマウントディスプレイ2より受信したデータがOFF指示通知でない場合(S41:NO)、駆動許可通知であるかが判断される(S47)。駆動許可通知である場合には(S47:YES)、稼働部7の稼働が許可されたことを示すために駆動許可フラグがONされ(S49)、通信処理は終了される。
【0093】
ヘッドマウントディスプレイ2より受信されたデータが駆動許可通知でない場合(S47:NO)、ON許可通知であるかが判断される(S51)。ON許可通知である場合には(S51:YES)、モータ111の電源ONが許可されたことを示すためにON許可フラグがONされる(S53)。そして通信処理は終了される。
【0094】
ヘッドマウントディスプレイ2より受信されたデータがON許可フラグでない場合(S51:NO)、ON禁止通知であるかが判断される(S55)。ON禁止通知であった場合には(S55:YES)、モータ111の電源ONが禁止されたことを示すためにON許可フラグがOFFされる(S57)。そして通信処理は終了される。一方、上述以外のデータが受信された場合には(S55:NO)、特段処理を行うことなく通信処理が終了される。
【0095】
図10を参照し、駆動制御処理について説明する。操作パネル106を介し操作者3よりなんらかの入力操作がなされた場合、はじめに、操作者3によりモータ111の電源をONする操作がされたかどうかが判断される(S61)。モータ111の電源をONする操作がされた場合には(S61:YES)、次いでON許可フラグがONされている状態であるかが判断される(S63)。ON許可フラグがONされている場合には(S63:YES)、モータ111の電源ONが許可された状態であると判断されるので、モータ111の電源がONされ(S65)、駆動制御処理は終了される。一方、ON許可フラグがOFFされている場合には(S63:NO)、モータ111の電源ONが禁止された状態であると判断されるので、モータ111の電源はONされることなく、駆動制御処理は終了される。
【0096】
操作者3よりモータ111の電源をONする操作がされていない場合には(S61:NO)、モータ111の電源をOFFする操作がされたかどうかが判断される(S67)。モータ111の電源をOFFする操作がされた場合には(S67:YES)、モータ111の電源がOFFされる(S69)。次いで、ON許可フラグがOFFされる(S71)。そして駆動制御処理は終了される。
【0097】
操作者3よりモータ111の電源をOFFする操作がされていない場合には(S67:NO)、次いで、操作者3により稼働部7を稼働させるための操作がなされたかが判断される(S73)。稼働指示がなされていない場合には(S73:NO)、以下特段処理を行うことなく駆動制御処理は終了される。
【0098】
稼働部7を稼働させるための操作がなされている場合には(S73:YES)、モータ111の電源がONされている状態であるかが判断される(S75)。モータ111の電源がOFFされている状態では(S75:NO)、稼働部7は稼働不可能な状態であるため、稼働部7を稼働させることなく駆動制御処理は終了される。
【0099】
モータ111の電源がONされている状態では(S75:YES)、次いで稼働部7の稼働が許可されている状態であるかどうかが判断される(S77)。駆動許可フラグがOFFされており、稼働部7の稼働が禁止されている場合には(S77:NO)、稼働部7の稼働が禁止されている状態であるので、モータ111を制御して稼働部7を稼働させることなく、駆動制御処理は終了される。駆動許可フラグがONされている場合には(S77:YES)、稼働部7の稼働は許可されているので、モータドライバ110が制御されてモータ111が回転し、稼働部7が稼働して作業が実行される(S79)。そして駆動制御処理は終了される。
【0100】
以上説明したように工作機械10では、ヘッドマウントディスプレイ2より稼働が許可されている場合にのみ、稼働部7の稼働を開始させることが可能となっている。ヘッドマウントディスプレイ2では、作業領域の安全領域に操作者3の身体の一部が存在していると判断された場合に、駆動許可が送信されるので、稼働部7の稼働により操作者3に危害が及んでしまうことを防止することが可能となる。
【0101】
工作機械10は、ヘッドマウントディスプレイ2よりOFF指示通知を受信した場合、モータ111の電源をOFFして稼働中の稼働部7を緊急停止させる。ヘッドマウントディスプレイ2では、作業領域の危険領域に操作者3の身体の一部が進入した場合にOFF指示通知を送信するので、稼働部7の稼働に伴い危険領域に進入した身体の一部に危害が及ぶ事故を未然に防止することが可能となる。
【0102】
また、工作機械10の電源は、ヘッドマウントディスプレイ2よりON許可通知を受信した状態である場合にのみ、モータ111の電源をONさせることが可能となっている。ヘッドマウントディスプレイ2では、作業領域の安全領域の操作者の身体の少なくとも一部が存在していると判断された場合に、工作機械10に対してON許可通知を送信する。従って工作機械10では、操作者3の身体の一部が安全領域に存在している場合にのみ、モータ111の電源をONさせることが可能となる。これにより、モータ111の電源が不用意にONしてしまい、工作機械10の稼働部7が稼働してしまって事故が発生してしまうことを防止することが可能となる。
【0103】
なお、図1に示す工作機械10が本発明の「作業装置」に相当する。図2のカメラ11が本発明の「撮像手段」に相当する。図5のフラッシュメモリ49の第一記憶領域が本発明の「第一記憶領域」に相当する。図7のS3にて実行される初期化処理を行うCPU61が本発明の「特定手段」に相当する。図8の16にて示される危険領域が本発明の「第一領域」に相当し、図5のフラッシュメモリ49の第二記憶領域492に記憶されている危険領域特定情報が本発明の「第一特定情報」に相当する。図7のS17にて抽出される像情報が本発明の「第一像情報」に相当し、S17の処理を行うCPU61が本発明の「第一抽出手段」に相当し、S19の処理を行うCPU61が本発明の「第一判断手段」に相当し、S21の処理を行うCPU61が本発明の「表示制御手段」に相当し、図4に示す各構成を経て操作者3の網膜に画像光4を出射させる処理を行う表示部40が本発明の「表示手段」に相当する。図7のS23の処理を行うCPU61が本発明の「第一送信手段」に相当し、S23にて送信されるOFF指示通知が本発明の「第一通知」に相当する。
【0104】
図1の稼働部7が本発明の「作業手段」に相当する。図9にてOFF指示通知を受信する制御を行うCPU101が本発明の「第一二受信手段」に相当する。図10のS69の処理を行うCPU101が本発明の「第一停止手段」に相当する。
【0105】
図8の17、18にて示される領域が本発明の「第二領域」に相当する。図5のフラッシュメモリ49の第三記憶領域493に記憶される安全領域特定情報が本発明の「第二特定情報」に相当する。図7のS25にて抽出される像情報が本発明の「第二像情報」に相当し、S25の処理を行うCPU61が本発明の「第二抽出手段」に相当し、S27の処理を行うCPU61が本発明の「第二判断手段」に相当し、S29及びS31にて送信される駆動許可通知及びON許可通知が本発明の「第三通知」に相当し、S29及びS31にて駆動許可通知及びON許可通知を送信する処理を行うCPU101が本発明の「第三送信手段」に相当する。
【0106】
図9にて、駆動許可通知及びON許可通知を受信する処理を行うCPU101が本発明の「第三受信手段」に相当し、S49にて稼働部7の稼働を許可する処理を行うCPU101が本発明の「第二許可手段」に相当する。
【0107】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上述の実施の形態では、作業領域の危険領域及び安全領域を特定する為の情報である危険領域特定情報及び安全領域特定情報は、ヘッドマウントディスプレイ2のフラッシュメモリ49に記憶されていた。しかしながら本発明はこの構成に限定されない。従って、これらの情報は工作機械10のRAM103やROM102に記憶される構成であってもよい。このような構成とした場合、ヘッドマウントディスプレイ2は、危険監視処理が実行される前に、あらかじめ工作機械10より通信ケーブル8を介して危険領域特定情報及び安全領域特定情報を受信しフラッシュメモリ49に記憶する。そして記憶された危険領域特定情報及び安全領域特定情報に基づき、上述の処理が実行される。本構成とすることにより、ヘッドマウントディスプレイ2に必要な記憶容量を削減でき、小型化が可能となる。また、操作者3が共通のヘッドマウントディスプレイ2を用いて複数の工作機械10を操作した場合に、工作機械10毎に共通の領域設定(危険領域、安全領域)が異なっても操作を行うことが可能となる。
【0108】
また、上述の実施の形態では、安全領域特定情報をフラッシュメモリ49の第三記憶領域493に記憶し、安全領域に操作者3の身体の一部が存在すると判断された場合に、工作機械10の駆動を許可していたが、本発明はこの方法に限定されない。例えば、危険領域特定情報にて特定される危険領域に操作者3の身体の一部が存在しないと判断された場合に、工作機械10の駆動を許可しても、上述の実施の形態と同様に、操作者3に危害が及ぶことを防止することができる。なおこの例において、像情報のうち危険領域に操作者3の身体の一部が存在しないと判断された場合に、工作機械10に駆動を許可する旨の通知を送信する処理を行うCPU61が本発明の「第二送信手段」に相当し、この通知を受信し、稼働部7の稼働を許可する処理を行うCPU101が本発明の「第一許可手段」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】危険回避システム1の概要を示す模式図である。
【図2】ヘッドマウントディスプレイ2の外観構成を示した図である。
【図3】ヘッドマウントディスプレイ2の電気的構成を示す模式図である。
【図4】表示部40の光学的及び電気的構成を示す模式図である。
【図5】フラッシュメモリ49に設けられている記憶領域を示す模式図である。
【図6】工作機械10の電気的構成を示す模式図である。
【図7】危険監視処理のフローチャートである。
【図8】ヘッドマウントディスプレイ2を介し操作者3にて視認される像の一例を示す模式図である。
【図9】通信処理を示すフローチャートである。
【図10】駆動制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1 危険回避システム
2 ヘッドマウントディスプレイ
3 操作者
7 稼働部
10 工作機械
11 カメラ
14 加速度センサ
16 危険領域
17 安全領域
40 表示部
43 通信部
46 制御部
49 フラッシュメモリ
57 通信モジュール
58 通信制御回路
61 CPU
101 CPU
111 モータ
491 第一記憶領域
492 第二記憶領域
493 第三記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、前記作業装置を操作する操作者に装着されるヘッドマウントディスプレイとから構成される危険回避システムであって、
前記ヘッドマウントディスプレイは、
前記作業装置の作業領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段にて撮像された前記作業領域の像情報を記憶する像情報記憶手段と、
前記撮像手段にて撮像される方向を特定する特定手段と、
前記特定手段にて特定された前記方向と、前記撮像手段にて撮像される領域のうち所定の領域である第一領域を特定するための情報であり、領域記憶手段に記憶されている情報である第一特定情報とに基づいて、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第一領域に相当する前記像情報である第一像情報を抽出する第一抽出手段と、
前記第一抽出手段にて抽出された第一像情報に、前記操作者の身体の少なくとも一部に相当する像情報である身体像情報が含まれているか否かを判断する第一判断手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記操作者に対して前記第一領域外に身体の一部を移動させるように促すための情報を表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第一通知を送信する第一送信手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていないと判断された場合に、前記作業装置に対して第二通知を送信する第二送信手段と
を備え、
前記作業装置は、
所定の加工作業を行う作業手段と、
前記第一通知又は第二通知を受信する第一二受信手段と、
前記第一二受信手段にて前記第一通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を停止させる第一停止手段と、
前記第一二受信手段にて前記第二通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を許可する第一許可手段と
を備えた危険回避システム。
【請求項2】
前記領域記憶手段には、
前記撮像手段にて撮像可能な領域のうち前記第一領域以外の領域であって所定の領域である第二領域を特定する為の情報である第二特定情報が記憶されており、
前記ヘッドマウントディスプレイは、
前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第二特定情報にて特定される前記第二領域に相当する前記像情報である第二像情報を抽出する第二抽出手段と、
前記第二抽出手段にて抽出された前記第二像情報に、前記身体像情報が含まれているか否かを判断する第二判断手段と、
前記第二判断手段にて、前記第二像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第三通知を送信する第三送信手段と
を備え、
前記作業装置は、
前記第三通知を受信する第三受信手段と、
前記第三受信手段にて前記第三通知が受信された場合に、前記作業手段による加工作業を許可する第二許可手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項3】
前記領域記憶手段は、前記ヘッドマウントディスプレイに設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の危険回避システム。
【請求項4】
前記領域記憶手段は、前記作業装置に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の危険回避システム。
【請求項5】
作業装置の作業領域を判断し、操作者の身体の少なくとも一部の前記作業領域内への侵入を監視するヘッドマウントディスプレイであって、
前記作業装置の作業領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段にて撮像された前記作業領域の像情報を記憶する像情報記憶手段と、
前記撮像手段にて撮像される方向を特定する特定手段と、
前記特定手段にて特定された前記方向と、前記撮像手段にて撮像される領域のうち所定の領域である第一領域を特定するための情報であり、領域記憶手段に記憶されている情報である第一特定情報とに基づいて、前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第一領域に相当する前記像情報である第一像情報を抽出する第一抽出手段と、
前記第一抽出手段にて抽出された第一像情報に、前記操作者の身体の少なくとも一部に相当する像情報である身体像情報が含まれているか否かを判断する第一判断手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記操作者に対して前記第一領域外に身体の一部を移動させるように促すための情報を表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第一通知を送信する第一送信手段と、
前記第一判断手段にて、前記第一像情報に前記身体像情報が含まれていないと判断された場合に、前記作業装置に対して第二通知を送信する第二送信手段と
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記領域記憶手段には、
前記撮像手段にて撮像可能な領域のうち前記第一領域以外の領域であって所定の領域である第二領域を特定する為の情報である第二特定情報が記憶されており、
前記像情報記憶手段に記憶された前記像情報から、前記第二特定情報にて特定される前記第二領域に相当する前記像情報である第二像情報を抽出する第二抽出手段と、
前記第二抽出手段にて抽出された前記第二像情報に、前記身体像情報が含まれているか否かを判断する第二判断手段と、
前記第二判断手段にて、前記第二像情報に前記身体像情報が含まれていると判断された場合に、前記作業装置に対して第三通知を送信する第三送信手段と
を備えたことを特徴とする請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−144773(P2010−144773A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320614(P2008−320614)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】