原子炉振動監視方法および原子炉振動監視システム
【課題】原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位の予測において、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等に高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる原子炉振動監視技術を提供する。
【解決手段】原子炉圧力容器の外側から、その内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、構造体の振動変位を検出する超音波式変位センサと、原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、超音波式変位センサにより検出された構造体の振動変位と振動変位センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、振動変位が制限値を超える場合に異常信号を生成し、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置とを備える。
【解決手段】原子炉圧力容器の外側から、その内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、構造体の振動変位を検出する超音波式変位センサと、原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、超音波式変位センサにより検出された構造体の振動変位と振動変位センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、振動変位が制限値を超える場合に異常信号を生成し、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉振動監視方法および原子炉振動監視システムに係り、特に、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉構造体の振動挙動を監視する技術として、監視の対象構造体に音響センサや加速度センサを直接取り付けて構造体の振動周波数や振幅を検出し、構造体の振動変位を予測するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の原子炉振動監視技術は、構造体の音響振幅や振動加速度など構造体の振動変位に関わる間接量に基づいてその振動変位を予測する。このため、構造体の振動変位を直接予測するものに比べて予測精度は劣る。また、原子炉圧力容器の内に設けられる構造体の振動挙動を監視する場合にあっては、従来の原子炉振動監視技術の適用は困難である。たとえば、音響センサや加速度センサを監視の対象物に取り付けられず或いは原子炉出力制御の不安定性を伴うなど種々の弊害を伴う。
【0004】
そこで、原子炉圧力容器外側に超音波式変位センサを設けて、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を直接検出するようにした原子炉振動監視技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−53383号公報
【特許文献2】特開平11−125688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波式変位センサを用いた原子炉振動監視技術では、原子炉圧力容器の内に設けられる構造体の振動挙動を監視できることに加え、振動変位を直接検出することからその振動変位の予測精度も高い。しかしながら、超音波式変位センサを用いる場合は、構造体の振動変位の予測精度が構造体への発信波および反射波の進行方向に依存する。このため、超音波式変位センサの位置や超音波の進行方向の経時変化に伴い、振動変位の予測信頼性が損なわれやすい。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等に高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる原子炉振動監視方法および原子炉振動監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係る原子炉振動監視方法では、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視方法において、前記構造体の振動変位と原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けた相関を用意しておき、取得した原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、この振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に、原子炉圧力容器の異常報知を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る原子炉振動監視システムでは、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、前記構造体の振動変位を検出する変位感応センサと、原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、前記変位感応センサにより検出された構造体の振動変位と前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する異常検出装置と、前記異常検出装置から生成される異常信号の入力を受けて、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等に高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】原子炉振動監視システムの第1実施形態を示す図。
【図2】原子炉振動監視システムのセンサ群の配置を示す図であり、(a)は図1のX−X断面図であり、(b)は図1のY−Y断面図。
【図3】原子炉圧力容器内に設けられる構造体の変位と原子炉圧力容器における音響振幅との相関を示す図。
【図4】原子炉振動監視システムにおける異常信号の生成タイミングを示す図。
【図5】原子炉振動監視システムの異常検出装置にて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【図6】原子炉振動監視システムの第2実施形態を示すもので、固有周波数データベースに記録される構造体要素の固有周波数を示す図。
【図7】原子炉振動監視システムの異常検出装置にて行われる構造体要素の固有音響周波数の算出処理の説明図であり、(a)は原子炉圧力容器の音響周波数を示す図、(b)は構造体要素の固有音響周波数を示す図。
【図8】構造体要素の振動変位の差分判断による異常信号の生成タイミングを示す図。
【図9】構造体要素の卓越振動変位による異常信号の生成タイミングを示す図。
【図10】構造体要素の固有音響周波数と異常現象の対応関係の一例を示す図。
【図11】異常報知の一例を示す図。
【図12】原子炉振動監視システムにて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態を、添付図面に示す原子炉振動監視システムに基づいて説明する。なお。この原子炉振動監視システムは、本発明に係る原子炉振動監視方法の適用例である。
【0013】
[第1実施形態]
図1は原子炉振動監視システムの第1実施形態を示す図である。
【0014】
原子炉振動監視システム10は、センサ群(11、12、13)と、異常検出装置14と、警告装置15と、を備える。この原子炉振動監視システム10は、原子炉圧力容器21の外側に設けられ、原子炉圧力容器21の内に設けられる燃料集合体22や制御棒案内管23などから成る構造体の振動挙動を監視するものである。
【0015】
原子炉振動監視システム10のセンサ群は、変位感応センサとしての超音波式変位センサ11と、振動感応センサとしての音響センサ12と、同じく振動感応センサとしての加速度センサ13とにより構成される。超音波式変位センサ11は、原子炉圧力容器21内に設けられた構造体に向けて超音波を発信して反射波を受信し、その発信から受信までに要する時間から構造体の距離ないし振動変位を直接を検出する。音響センサ12は、構造体から発せられる音波が伝播して振動する原子炉圧力容器21の音響振幅や音響周波数を検出する。加速度センサ13は、構造体の振動が伝播して振動する原子炉圧力容器21の振動加速度や振動加速度周波数を検出する。
【0016】
図2は原子炉振動監視システムのセンサ群の配置例を示す図であり、(a)は図1のX−X断面図、(b)は図1のY−Y断面図である。
【0017】
原子炉振動監視システム10は、図2(a)に示すように、超音波式変位センサ11を1つ有し、原子炉圧力容器21の周方向に沿って音響センサ12および加速度センサ13を複数有する。また、図2(b)に示すように、原子炉圧力容器21の軸方向から見て少なくとも音響センサ12と加速度センサ13がオーバーラップするように設けられる。ただし、各センサの配置は特に制限されず、構造体の振動変位の予測精度を考慮して設定することになる。
【0018】
原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、第一に、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位と音響センサ12により検出された原子炉圧力容器21の振動特性すなわち音響振幅とを相関付け、内部の変位制限値データベースにその相関を記録する。この相関付けに用いる振動変位および音響振幅は、地震などの大きな振動が生じない平常時に検出しておくのが好ましい。振動変位は超音波式変位センサ11により計測されるところ、超音波式変位センサ11は振動による位置ずれなどで振動変位の検出精度が低下しやすいためである。
【0019】
図3は原子炉圧力容器21内に設けられる構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関の一例を示したものである。図3に示す相関は、超音波式変位センサ11により構造体の振動変位σ1が検出されたとき、原子炉圧力容器21における音響振幅S1が検出されたことを示す。構造体の変位σ2〜σnと原子炉圧力容器21の音響振幅S2〜Snとの相関も同様の意味を持つ。
【0020】
原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、第二に、音響センサ12により検出された原子炉圧力容器21の音響振幅を上述した相関と照合することにより構造体の振動変位を予測する。そして、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。なお、この制限値は、構造体の振動変位の予測精度を考慮して設定され、異常検出装置14の内部に設けられる変位制限値データベースに記録される。また、異常信号は、構造体の振動変位があらかじめ設定された制限値を超えたタイミングで生成される。図4は原子炉振動監視システム10の異常検出装置14における異常信号の生成タイミングの一例を示したものである。
【0021】
同様にして、原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位と加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の振動特性すなわち振動加速度とを相関付けて記録する。次いで、加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の振動加速度をその相関と照合することにより構造体の振動変位を予測する。そして、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。また、構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の振動加速度との相関付けも、構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関付けと同様にして行われる。
【0022】
原子炉振動監視システム10の警告装置15は、異常検出装置14から生成される異常信号の入力を受けて、その異常を表示装置に表示して報知する。
【0023】
次に、原子炉振動監視システム10の動作を説明する。
【0024】
図5は原子炉振動監視システム10にて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。以下、この異常検出処理の各ステップについて説明する。
【0025】
ステップS101では、原子力発電プラント20の運転中に地震などにより原子炉圧力容器21に異常な振動が発生したとき、原子炉圧力容器の振動特性が検出される。すなわち、音響センサ12により原子炉圧力容器21の音響振幅が検出され、同時に加速度センサ13により原子炉圧力容器21の振動加速度が検出される。
【0026】
ステップS102では、ステップS101で検出された音響振幅および振動加速度が内部記録部に一時的に記録される。そして、一時記録された音響振幅と、すでに内部記録部に記録されている構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関とが照合されて、ステップS101で検出された音響振幅から構造体の振動変位が予測される。同時に、一次記録された振動加速度と、すでに記録済みの構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の振動加速度とが照合され、ステップS101で検出された振動加速度から構造体の振動変位が予測される。
【0027】
ステップS103では、構造体変位の制限値データベースが参照されて構造体の振動変位がプラント保全上許容される制限値以下であるかどうか(Yes/No)が判断される。
【0028】
ステップS104は、ステップS3で<Yes>と判断された場合に行われるステップである。このステップS4では、異常検出装置15の内部記録部にステップS2で予想した構造体の振動変位が記録される。
【0029】
ステップS5は、ステップS3で<No>と判断された場合に行われるステップである。このステップS5では、原子炉圧力容器21の異常が報知される。
【0030】
次に、原子炉振動監視システム10の作用を説明する。
【0031】
原子炉振動監視システム10では、たとえば、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位がσ1のときに原子炉圧力容器21の音響振幅がS1であるといった相関付けが行われ記録される。そして、音響センサ12および加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の音響振幅および振動加速度の入力を受けたとき、この入力を受けた音響振幅および振動加速度が、記録済みの相関と照合されて構造体の振動変位が予測される。つまり、超音波式変位センサ11に比べて精密な位置決めが不要な音響センサ12や加速度センサ13により検出された音響振幅や振動加速度をもとにして、構造体の振動変位が予測される。このため、原子炉振動監視システム10では、地震など大きな揺れが生じても構造体の振動変位の予測精度が低下しにくいものとなる。また、音響振幅や振動加速度は、あらかじめ超音波式変位センサ11により検出された予測精度の高い振動変位と対応付けられている。このため、原子炉振動監視システム10では、音響振幅や振動加速度による構造体の振動変位の予測精度が、超音波式変位センサ11を用いて予測されたものと同等に高いものとなる。
【0032】
よって、原子炉振動監視システム10によれば、
(1) 原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等の高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の原子炉振動監視システム10における異常検出装置14の機能を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、対応する構成に同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「A」を付して説明する。
【0034】
原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、その内部に固有音響周波数データベースおよび固有振動加速度データベースから成る固有周波数データベースを備える。図6は原子炉振動監視システムの第2実施形態を示すもので、固有周波数データベースに記録される構造体要素の固有周波数を示す図である。固有周波数として記録されるものは、音響センサ12により検出される構造体要素ごとの固有音響周波数、加速度センサ13により検出される構造体要素ごとの固有振動加速度周波数である。
【0035】
原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、音響センサ12により音響振幅が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器21の音響周波数を周波数分析(FFT)により成分分解する。
【0036】
図7は原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aにて行われる構造体要素の固有音響周波数の算出処理の説明図であり、(a)は原子炉圧力容器21の音響周波数を示す図、(b)構造体要素の固有音響周波数を示す図である。
【0037】
音響センサ12により検出される原子炉圧力容器21の音響周波数は、図7(a)に示すように時間と共に変化する。各時刻における原子炉圧力容器21の音響周波数は、原子炉圧力容器21の内に設けられた構造体要素の固有音響周波数の重ね合わせである。原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aでは、周波数分析(FFT)処理を行い、図7(b)に示すように、ある特定の構造体要素の固有音響周波数を算出する。
【0038】
また、異常検出装置14Aは、周波数分析で得られた構造体要素ごとの固有音響周波数を、上述した固有周波数データベースに記録した固有音響周波数と照合することにより構造体要素を識別する。そして、識別した構造体要素ごとに第1実施形態と同様の振動変位の予測を行う。
【0039】
同様に、原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、加速度センサ13により振動加速度が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器21の振動加速度周波数を周波数分析(FFT)により成分分解する。また、周波数分析で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を固有周波数データベースに記録した固有振動加速度周波数と照合することにより構造体要素を識別する。そして、識別した構造体要素ごとに第1実施形態と同様の振動変位の予測を行う。
【0040】
そして、異常検出装置14Aは、第1実施形態と同様に、予測した構造体要素の振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。なお、この場合、異なる時点たとえば地震時と平常時に予測した構造体要素の両振動変位の差分を求めて、図8に示すように、この差分が所定値以上となった場合に異常信号を生成するようにしても良い。図8は構造体要素の振動変位が平常時に比べてσ1だけずれたときに異常信号が生成される例を示したものである。
【0041】
異常検出装置14Aは、もう1つの異常信号生成タイミングを有している。すなわち、音響周波数或いは振動加速度周波数の周波数分析で得られる各成分について卓越振動変位が抽出された場合に異常信号を生成する。図9構造体要素の卓越振動変位による異常信号の生成タイミングを示したものである。
【0042】
加えて、原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、その内部記録部に構造体要素ごとの固有音響周波数と異常現象との対応関係を記録可能に設けられる。図10は構造体要素ごとの固有音響周波数と異常現象の対応関係の一例を示したものである。異常検出装置14Aは、構造体要素の固有音響周波数を検出した際、この対応関係に基づいて異常が検出された構造体要素とその異常現象を特定する。原子炉振動監視システム10Aの警告装置15Aは、異常検出部14Aから異常信号の入力を受け、異常が検出された構造体要素とその異常現象の内容を報知する。図11は異常報知の一例を示したものである。
【0043】
次に、原子炉振動監視システム10Aの動作を説明する。
【0044】
図12は原子炉振動監視システム10Aにて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。以下、この異常検出処理の各ステップについて説明する。なお、ステップS101、ステップS102、ステップS104およびステップS105は、図5のステップS101、ステップS102、ステップS104およびステップS105と同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
【0045】
ステップS201では、原子炉圧力容器21の音響周波数および振動加速度周波数が成分分解され、構造体要素の固有音響周波数および固有振動加速周波数が抽出される。ステップS202では、固有音響周波数或いは固有振動加速度周波数について、卓越振動変位が抽出される。ステップS203では、固有周波数データベースが参照され、それぞれの固有音響周波数或いは固有振動加速度周波数に対応する構造体要素が識別される。
【0046】
ステップS204では、構造体変位の制限値データベースが参照され、ステップS203で識別された構造体要素ごとに、その振動変位がプラント保全上許容される制限値以下であるかどうか(Yes/No)が判断される。構造体要素の振動変位が、いずれも制限値以下である場合はステップS104に移行し、1つ以上の構造体要素の振動変位が、制限値を超える場合はステップS105に移行する。また、ステップS204では、ステップS202で卓越振動変位が抽出されたかどうか(Yes/No)が判断される。卓越振動変位が抽出されない場合はステップS104に移行し、卓越振動変位が抽出された場合はステップS5に移行する。
【0047】
よって、原子炉振動監視システム10Aによれば、
(2) 原子炉圧力容器21内に設けられる構造体要素ごとに振動変位を予測でき且つ各構造要素の振動変位の予測にあっても(1)の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10,10A…原子炉振動監視システム,11…超音波式センサ,12…音響センサ,13…加速度センサ,14,14A…異常検出装置,15…警告装置,20…原子力発電プラント,21…原子炉圧力容器,22…燃料集合体,23…制御棒案内管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉振動監視方法および原子炉振動監視システムに係り、特に、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉構造体の振動挙動を監視する技術として、監視の対象構造体に音響センサや加速度センサを直接取り付けて構造体の振動周波数や振幅を検出し、構造体の振動変位を予測するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の原子炉振動監視技術は、構造体の音響振幅や振動加速度など構造体の振動変位に関わる間接量に基づいてその振動変位を予測する。このため、構造体の振動変位を直接予測するものに比べて予測精度は劣る。また、原子炉圧力容器の内に設けられる構造体の振動挙動を監視する場合にあっては、従来の原子炉振動監視技術の適用は困難である。たとえば、音響センサや加速度センサを監視の対象物に取り付けられず或いは原子炉出力制御の不安定性を伴うなど種々の弊害を伴う。
【0004】
そこで、原子炉圧力容器外側に超音波式変位センサを設けて、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を直接検出するようにした原子炉振動監視技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−53383号公報
【特許文献2】特開平11−125688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波式変位センサを用いた原子炉振動監視技術では、原子炉圧力容器の内に設けられる構造体の振動挙動を監視できることに加え、振動変位を直接検出することからその振動変位の予測精度も高い。しかしながら、超音波式変位センサを用いる場合は、構造体の振動変位の予測精度が構造体への発信波および反射波の進行方向に依存する。このため、超音波式変位センサの位置や超音波の進行方向の経時変化に伴い、振動変位の予測信頼性が損なわれやすい。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等に高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる原子炉振動監視方法および原子炉振動監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係る原子炉振動監視方法では、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視方法において、前記構造体の振動変位と原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けた相関を用意しておき、取得した原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、この振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に、原子炉圧力容器の異常報知を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る原子炉振動監視システムでは、原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、前記構造体の振動変位を検出する変位感応センサと、原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、前記変位感応センサにより検出された構造体の振動変位と前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する異常検出装置と、前記異常検出装置から生成される異常信号の入力を受けて、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等に高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】原子炉振動監視システムの第1実施形態を示す図。
【図2】原子炉振動監視システムのセンサ群の配置を示す図であり、(a)は図1のX−X断面図であり、(b)は図1のY−Y断面図。
【図3】原子炉圧力容器内に設けられる構造体の変位と原子炉圧力容器における音響振幅との相関を示す図。
【図4】原子炉振動監視システムにおける異常信号の生成タイミングを示す図。
【図5】原子炉振動監視システムの異常検出装置にて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【図6】原子炉振動監視システムの第2実施形態を示すもので、固有周波数データベースに記録される構造体要素の固有周波数を示す図。
【図7】原子炉振動監視システムの異常検出装置にて行われる構造体要素の固有音響周波数の算出処理の説明図であり、(a)は原子炉圧力容器の音響周波数を示す図、(b)は構造体要素の固有音響周波数を示す図。
【図8】構造体要素の振動変位の差分判断による異常信号の生成タイミングを示す図。
【図9】構造体要素の卓越振動変位による異常信号の生成タイミングを示す図。
【図10】構造体要素の固有音響周波数と異常現象の対応関係の一例を示す図。
【図11】異常報知の一例を示す図。
【図12】原子炉振動監視システムにて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態を、添付図面に示す原子炉振動監視システムに基づいて説明する。なお。この原子炉振動監視システムは、本発明に係る原子炉振動監視方法の適用例である。
【0013】
[第1実施形態]
図1は原子炉振動監視システムの第1実施形態を示す図である。
【0014】
原子炉振動監視システム10は、センサ群(11、12、13)と、異常検出装置14と、警告装置15と、を備える。この原子炉振動監視システム10は、原子炉圧力容器21の外側に設けられ、原子炉圧力容器21の内に設けられる燃料集合体22や制御棒案内管23などから成る構造体の振動挙動を監視するものである。
【0015】
原子炉振動監視システム10のセンサ群は、変位感応センサとしての超音波式変位センサ11と、振動感応センサとしての音響センサ12と、同じく振動感応センサとしての加速度センサ13とにより構成される。超音波式変位センサ11は、原子炉圧力容器21内に設けられた構造体に向けて超音波を発信して反射波を受信し、その発信から受信までに要する時間から構造体の距離ないし振動変位を直接を検出する。音響センサ12は、構造体から発せられる音波が伝播して振動する原子炉圧力容器21の音響振幅や音響周波数を検出する。加速度センサ13は、構造体の振動が伝播して振動する原子炉圧力容器21の振動加速度や振動加速度周波数を検出する。
【0016】
図2は原子炉振動監視システムのセンサ群の配置例を示す図であり、(a)は図1のX−X断面図、(b)は図1のY−Y断面図である。
【0017】
原子炉振動監視システム10は、図2(a)に示すように、超音波式変位センサ11を1つ有し、原子炉圧力容器21の周方向に沿って音響センサ12および加速度センサ13を複数有する。また、図2(b)に示すように、原子炉圧力容器21の軸方向から見て少なくとも音響センサ12と加速度センサ13がオーバーラップするように設けられる。ただし、各センサの配置は特に制限されず、構造体の振動変位の予測精度を考慮して設定することになる。
【0018】
原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、第一に、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位と音響センサ12により検出された原子炉圧力容器21の振動特性すなわち音響振幅とを相関付け、内部の変位制限値データベースにその相関を記録する。この相関付けに用いる振動変位および音響振幅は、地震などの大きな振動が生じない平常時に検出しておくのが好ましい。振動変位は超音波式変位センサ11により計測されるところ、超音波式変位センサ11は振動による位置ずれなどで振動変位の検出精度が低下しやすいためである。
【0019】
図3は原子炉圧力容器21内に設けられる構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関の一例を示したものである。図3に示す相関は、超音波式変位センサ11により構造体の振動変位σ1が検出されたとき、原子炉圧力容器21における音響振幅S1が検出されたことを示す。構造体の変位σ2〜σnと原子炉圧力容器21の音響振幅S2〜Snとの相関も同様の意味を持つ。
【0020】
原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、第二に、音響センサ12により検出された原子炉圧力容器21の音響振幅を上述した相関と照合することにより構造体の振動変位を予測する。そして、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。なお、この制限値は、構造体の振動変位の予測精度を考慮して設定され、異常検出装置14の内部に設けられる変位制限値データベースに記録される。また、異常信号は、構造体の振動変位があらかじめ設定された制限値を超えたタイミングで生成される。図4は原子炉振動監視システム10の異常検出装置14における異常信号の生成タイミングの一例を示したものである。
【0021】
同様にして、原子炉振動監視システム10の異常検出装置14は、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位と加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の振動特性すなわち振動加速度とを相関付けて記録する。次いで、加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の振動加速度をその相関と照合することにより構造体の振動変位を予測する。そして、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。また、構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の振動加速度との相関付けも、構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関付けと同様にして行われる。
【0022】
原子炉振動監視システム10の警告装置15は、異常検出装置14から生成される異常信号の入力を受けて、その異常を表示装置に表示して報知する。
【0023】
次に、原子炉振動監視システム10の動作を説明する。
【0024】
図5は原子炉振動監視システム10にて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。以下、この異常検出処理の各ステップについて説明する。
【0025】
ステップS101では、原子力発電プラント20の運転中に地震などにより原子炉圧力容器21に異常な振動が発生したとき、原子炉圧力容器の振動特性が検出される。すなわち、音響センサ12により原子炉圧力容器21の音響振幅が検出され、同時に加速度センサ13により原子炉圧力容器21の振動加速度が検出される。
【0026】
ステップS102では、ステップS101で検出された音響振幅および振動加速度が内部記録部に一時的に記録される。そして、一時記録された音響振幅と、すでに内部記録部に記録されている構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の音響振幅との相関とが照合されて、ステップS101で検出された音響振幅から構造体の振動変位が予測される。同時に、一次記録された振動加速度と、すでに記録済みの構造体の振動変位と原子炉圧力容器21の振動加速度とが照合され、ステップS101で検出された振動加速度から構造体の振動変位が予測される。
【0027】
ステップS103では、構造体変位の制限値データベースが参照されて構造体の振動変位がプラント保全上許容される制限値以下であるかどうか(Yes/No)が判断される。
【0028】
ステップS104は、ステップS3で<Yes>と判断された場合に行われるステップである。このステップS4では、異常検出装置15の内部記録部にステップS2で予想した構造体の振動変位が記録される。
【0029】
ステップS5は、ステップS3で<No>と判断された場合に行われるステップである。このステップS5では、原子炉圧力容器21の異常が報知される。
【0030】
次に、原子炉振動監視システム10の作用を説明する。
【0031】
原子炉振動監視システム10では、たとえば、超音波式変位センサ11により検出された構造体の振動変位がσ1のときに原子炉圧力容器21の音響振幅がS1であるといった相関付けが行われ記録される。そして、音響センサ12および加速度センサ13により検出された原子炉圧力容器21の音響振幅および振動加速度の入力を受けたとき、この入力を受けた音響振幅および振動加速度が、記録済みの相関と照合されて構造体の振動変位が予測される。つまり、超音波式変位センサ11に比べて精密な位置決めが不要な音響センサ12や加速度センサ13により検出された音響振幅や振動加速度をもとにして、構造体の振動変位が予測される。このため、原子炉振動監視システム10では、地震など大きな揺れが生じても構造体の振動変位の予測精度が低下しにくいものとなる。また、音響振幅や振動加速度は、あらかじめ超音波式変位センサ11により検出された予測精度の高い振動変位と対応付けられている。このため、原子炉振動監視システム10では、音響振幅や振動加速度による構造体の振動変位の予測精度が、超音波式変位センサ11を用いて予測されたものと同等に高いものとなる。
【0032】
よって、原子炉振動監視システム10によれば、
(1) 原子炉圧力容器内に設けられる構造体の振動変位を予測するにあたって、構造体の振動変位を直接検出する場合と同等の高い予測精度を有すると共にその予測精度の経時的低下を低減できる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の原子炉振動監視システム10における異常検出装置14の機能を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は、対応する構成に同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は、符号末尾に「A」を付して説明する。
【0034】
原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、その内部に固有音響周波数データベースおよび固有振動加速度データベースから成る固有周波数データベースを備える。図6は原子炉振動監視システムの第2実施形態を示すもので、固有周波数データベースに記録される構造体要素の固有周波数を示す図である。固有周波数として記録されるものは、音響センサ12により検出される構造体要素ごとの固有音響周波数、加速度センサ13により検出される構造体要素ごとの固有振動加速度周波数である。
【0035】
原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、音響センサ12により音響振幅が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器21の音響周波数を周波数分析(FFT)により成分分解する。
【0036】
図7は原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aにて行われる構造体要素の固有音響周波数の算出処理の説明図であり、(a)は原子炉圧力容器21の音響周波数を示す図、(b)構造体要素の固有音響周波数を示す図である。
【0037】
音響センサ12により検出される原子炉圧力容器21の音響周波数は、図7(a)に示すように時間と共に変化する。各時刻における原子炉圧力容器21の音響周波数は、原子炉圧力容器21の内に設けられた構造体要素の固有音響周波数の重ね合わせである。原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aでは、周波数分析(FFT)処理を行い、図7(b)に示すように、ある特定の構造体要素の固有音響周波数を算出する。
【0038】
また、異常検出装置14Aは、周波数分析で得られた構造体要素ごとの固有音響周波数を、上述した固有周波数データベースに記録した固有音響周波数と照合することにより構造体要素を識別する。そして、識別した構造体要素ごとに第1実施形態と同様の振動変位の予測を行う。
【0039】
同様に、原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、加速度センサ13により振動加速度が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器21の振動加速度周波数を周波数分析(FFT)により成分分解する。また、周波数分析で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を固有周波数データベースに記録した固有振動加速度周波数と照合することにより構造体要素を識別する。そして、識別した構造体要素ごとに第1実施形態と同様の振動変位の予測を行う。
【0040】
そして、異常検出装置14Aは、第1実施形態と同様に、予測した構造体要素の振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する。なお、この場合、異なる時点たとえば地震時と平常時に予測した構造体要素の両振動変位の差分を求めて、図8に示すように、この差分が所定値以上となった場合に異常信号を生成するようにしても良い。図8は構造体要素の振動変位が平常時に比べてσ1だけずれたときに異常信号が生成される例を示したものである。
【0041】
異常検出装置14Aは、もう1つの異常信号生成タイミングを有している。すなわち、音響周波数或いは振動加速度周波数の周波数分析で得られる各成分について卓越振動変位が抽出された場合に異常信号を生成する。図9構造体要素の卓越振動変位による異常信号の生成タイミングを示したものである。
【0042】
加えて、原子炉振動監視システム10Aの異常検出装置14Aは、その内部記録部に構造体要素ごとの固有音響周波数と異常現象との対応関係を記録可能に設けられる。図10は構造体要素ごとの固有音響周波数と異常現象の対応関係の一例を示したものである。異常検出装置14Aは、構造体要素の固有音響周波数を検出した際、この対応関係に基づいて異常が検出された構造体要素とその異常現象を特定する。原子炉振動監視システム10Aの警告装置15Aは、異常検出部14Aから異常信号の入力を受け、異常が検出された構造体要素とその異常現象の内容を報知する。図11は異常報知の一例を示したものである。
【0043】
次に、原子炉振動監視システム10Aの動作を説明する。
【0044】
図12は原子炉振動監視システム10Aにて実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。以下、この異常検出処理の各ステップについて説明する。なお、ステップS101、ステップS102、ステップS104およびステップS105は、図5のステップS101、ステップS102、ステップS104およびステップS105と同様の処理を行うステップであるので、説明を省略する。
【0045】
ステップS201では、原子炉圧力容器21の音響周波数および振動加速度周波数が成分分解され、構造体要素の固有音響周波数および固有振動加速周波数が抽出される。ステップS202では、固有音響周波数或いは固有振動加速度周波数について、卓越振動変位が抽出される。ステップS203では、固有周波数データベースが参照され、それぞれの固有音響周波数或いは固有振動加速度周波数に対応する構造体要素が識別される。
【0046】
ステップS204では、構造体変位の制限値データベースが参照され、ステップS203で識別された構造体要素ごとに、その振動変位がプラント保全上許容される制限値以下であるかどうか(Yes/No)が判断される。構造体要素の振動変位が、いずれも制限値以下である場合はステップS104に移行し、1つ以上の構造体要素の振動変位が、制限値を超える場合はステップS105に移行する。また、ステップS204では、ステップS202で卓越振動変位が抽出されたかどうか(Yes/No)が判断される。卓越振動変位が抽出されない場合はステップS104に移行し、卓越振動変位が抽出された場合はステップS5に移行する。
【0047】
よって、原子炉振動監視システム10Aによれば、
(2) 原子炉圧力容器21内に設けられる構造体要素ごとに振動変位を予測でき且つ各構造要素の振動変位の予測にあっても(1)の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
10,10A…原子炉振動監視システム,11…超音波式センサ,12…音響センサ,13…加速度センサ,14,14A…異常検出装置,15…警告装置,20…原子力発電プラント,21…原子炉圧力容器,22…燃料集合体,23…制御棒案内管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視方法において、
前記構造体の振動変位と原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けておき、取得した原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、この振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に、原子炉圧力容器の異常報知を行うことを特徴とする原子炉振動監視方法。
【請求項2】
原子炉圧力容器の振動特性として音響振幅を用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項3】
原子炉圧力容器の振動特性として振動加速度を用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項4】
原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有音響周波数データを用意しておき、
前記原子炉圧力容器の音響振幅の取得と共に原子炉圧力容器の音響周波数を取得し、この音響周波数の成分分解で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を前記固有周波数データと照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項2に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項5】
原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数データを用意しておき、
前記原子炉圧力容器の振動加速度の取得と共に原子炉圧力容器の振動加速度周波数を取得し、この振動加速度周波数の成分分解で得られる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を前記固有周波数データと照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項3に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項6】
原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、
前記構造体の振動変位を検出する変位感応センサと、
原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、
前記変位感応センサにより検出された構造体の振動変位と前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する異常検出装置と、
前記異常検出装置から生成される異常信号の入力を受けて、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置と、
を備えることを特徴とする原子炉振動監視システム。
【請求項7】
前記変位感応センサとして超音波式変位センサが用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項8】
前記振動感応センサとして音響センサが用いられ、前記振動特性としてこの音響センサにより検出される原子炉圧力容器の音響振幅が用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項9】
前記振動感応センサとして加速度センサが用いられ、前記振動特性としてこの加速度センサにより検出される原子炉圧力容器の振動加速度が用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項10】
前記原子炉振動監視システムは、原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有音響周波数を記録した固有音響周波数データベースを備え、
前記異常検出装置は、前記音響センサにより音響振幅が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器の音響周波数を成分分解し、この成分分解で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を前記固有周波数データベースに記録された固有音響周波数と照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項8に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項11】
前記原子炉振動監視システムは、原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を記録した固有振動加速度周波数データベースを備え、
前記異常検出装置は、前記加速度センサにより振動加速度が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器の振動加速度周波数を成分分解し、この成分分解で得られる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を前記固有周波数データベースに記録された固有振動加速度周波数と照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項9に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項1】
原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視方法において、
前記構造体の振動変位と原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けておき、取得した原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、この振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に、原子炉圧力容器の異常報知を行うことを特徴とする原子炉振動監視方法。
【請求項2】
原子炉圧力容器の振動特性として音響振幅を用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項3】
原子炉圧力容器の振動特性として振動加速度を用いることを特徴とする請求項1に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項4】
原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有音響周波数データを用意しておき、
前記原子炉圧力容器の音響振幅の取得と共に原子炉圧力容器の音響周波数を取得し、この音響周波数の成分分解で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を前記固有周波数データと照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項2に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項5】
原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数データを用意しておき、
前記原子炉圧力容器の振動加速度の取得と共に原子炉圧力容器の振動加速度周波数を取得し、この振動加速度周波数の成分分解で得られる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を前記固有周波数データと照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項3に記載の原子炉振動監視方法。
【請求項6】
原子炉圧力容器外側から、原子炉圧力容器内に設けられる燃料集合体や制御棒案内管などの構造体の振動挙動を監視する原子炉振動監視システムにおいて、
前記構造体の振動変位を検出する変位感応センサと、
原子炉圧力容器の振動特性を検出する振動感応センサと、
前記変位感応センサにより検出された構造体の振動変位と前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性とを相関付けて記録し、前記振動感応センサにより検出された原子炉圧力容器の振動特性を前記相関と照合することにより構造体の振動変位を予測し、予測した振動変位がプラント保全上許容される制限値を超える場合に異常信号を生成する異常検出装置と、
前記異常検出装置から生成される異常信号の入力を受けて、原子炉圧力容器の異常を報知する警告装置と、
を備えることを特徴とする原子炉振動監視システム。
【請求項7】
前記変位感応センサとして超音波式変位センサが用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項8】
前記振動感応センサとして音響センサが用いられ、前記振動特性としてこの音響センサにより検出される原子炉圧力容器の音響振幅が用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項9】
前記振動感応センサとして加速度センサが用いられ、前記振動特性としてこの加速度センサにより検出される原子炉圧力容器の振動加速度が用いられることを特徴とする請求項6に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項10】
前記原子炉振動監視システムは、原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有音響周波数を記録した固有音響周波数データベースを備え、
前記異常検出装置は、前記音響センサにより音響振幅が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器の音響周波数を成分分解し、この成分分解で得られる構造体要素ごとの固有音響周波数を前記固有周波数データベースに記録された固有音響周波数と照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項8に記載の原子炉振動監視システム。
【請求項11】
前記原子炉振動監視システムは、原子炉圧力容器内に設けられる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を記録した固有振動加速度周波数データベースを備え、
前記異常検出装置は、前記加速度センサにより振動加速度が検出されたとき、同時に検出された原子炉圧力容器の振動加速度周波数を成分分解し、この成分分解で得られる構造体要素ごとの固有振動加速度周波数を前記固有周波数データベースに記録された固有振動加速度周波数と照合することにより各構造体要素を識別し、識別した構造体要素ごとに前記振動変位の予測を行うことを特徴とする請求項9に記載の原子炉振動監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−243254(P2010−243254A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90307(P2009−90307)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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