説明

双極型二次電池

【課題】金属箔集電体に較べて軽量であるとともに、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができる集電体を用いた双極型電極を提供する。
【解決手段】導電性を有する樹脂層2a〜2cを含む集電体11と、前記集電体11の一方の面に電気的に結合した正極層13と、前記集電体11の他方の面に電気的に結合した負極層15とからなる双極型電極16であって、前記集電体11は、前記樹脂層2a〜2cより薄い金属層1a、1bを含み、前記金属層1aは、前記樹脂層2a、2bにより挟まれ、前記金属層1bは、前記樹脂層2b、2cにより挟まれた構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィラーが添加された樹脂や導電性高分子を用いて形成された導電性を有する樹脂層(以下、単に樹脂層ともいう)を集電体に用いてなる双極型電極および該電極を用いた双極型二次電池に関する。本発明の双極型電極を用いた双極型二次電池は、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の駆動用電源として用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池に注目が集まっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。また、双極型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質を塗布して負極層を有する双極型電極を構成している。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって導電性フィラーが添加された樹脂や導電性高分子を用いて形成された導電性を有する樹脂層で構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂集電体は、金属集電箔に較べて軽量であり、電池の出力向上が期待される。
【特許文献1】特開昭61−285684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の樹脂集電体を双極型のリチウムイオン二次電池に適用した場合には、双極型電極の樹脂集電体内を通じてイオン透過し、該双極型電極内の正極層と負極層との間で液絡が生じてしまう問題があることがわかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、金属箔集電体に較べて軽量であるとともに、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができる集電体を用いた双極型電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、集電体が、導電性を有する樹脂層と、該樹脂層より薄い金属層とからなり、該金属層が該樹脂層により挟まれた(挟持されている)構造を有することを特徴とする双極型電極である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、双極型電極の樹脂集電体を、導電性を有する樹脂層より薄い金属層が該樹脂層により挟まれた構造とすることで、金属層が樹脂層を透過するイオンの移動を遮断することで集電体内のイオン透過による双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができ、金属箔集電体に比べ軽量な双極型電極を提供できる。これにより、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型電極を用いた双極型二次電池を構築できる。更に、集電体の一部に導電性を有する樹脂層を用いているため、集電体全体でみた場合、金属箔集電体に較べて軽量であり、電池の出力が向上し得る双極型電極を用いた双極型二次電池を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
<I>本発明の双極型電極を用いた双極型二次電池の一般的な基本構成について
本発明の双極型電極を用いた双極型二次電池は、一般的な基本構成として、複数の双極型電極と、これらの双極型電極の間に配置される電解質層とを備えてなる、双極型電極と電解質層とが交互に積層された構造を有する。そして、前記双極型電極は、集電体と、前記集電体の一方の面に電気的に結合した正極層と、前記集電体の他方の面に電気的に結合した負極層と、からなる構成を有する。
【0011】
本発明の双極型二次電池の種類は、特に制限されず、例えば、非水電解質を用いた双極型二次電池が挙げられ、好ましくは双極型リチウムイオン二次電池である。双極型リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。また、電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0012】
双極型二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、双極型は、いわば内部直列接続タイプの二次電池であると言える。
【0013】
同様に双極型二次電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型の電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0014】
図1は、本発明の双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)の一般的な基本構成の概要を模式的に表した断面概略図である。なお、本明細書においては、双極型リチウムイオン二次電池を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
【0015】
図1に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材29であるラミネートシートの内部に封止された構造を有する。
【0016】
ここで、電池要素21は、集電体11の一方の面に正極層13が形成され、他方の面に負極層15が形成された複数の双極型電極16を有する。各双極型電極16は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。この際、一の双極型電極16aの正極層13と前記一の双極型電極16aに隣接する他の双極型電極16bの負極層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極16および電解質層17が交互に積層されている。即ち、一の双極型電極16aの正極層13と前記一の双極型電極16aに隣接する他の双極型電極16bの負極層15の間に電解質層17が挟まれている。
【0017】
一の双極型電極16aの正極層13、電解質層17、および隣接する他の双極型電極16bの負極層15は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)19を構成する。従って、双極型二次電池10は、単電池層19が複数積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17の漏れを防止するために単電池層19の周辺部にはシール部31が配置されている。該シール部31を設けることで隣接する集電体11間を絶縁することもできる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極層側の最外層集電体11aには、片面のみに正極層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極層側の最外層集電体11bには、片面のみに負極層15が形成されている。
【0018】
さらに、双極型二次電池10では、正極層側の最外層集電体11aが延長されて正極タブ25とされ、電池外装材29であるラミネートシートから導出している。一方、負極層側の最外層集電体11bが延長されて負極タブ27とされ、同様に電池外装材29であるラミネートシートから導出している。
【0019】
双極型二次電池は、上記の構成により、厚さ方向(積層方向)に電流が流れるため、電子伝導のパスが非双極型の積層電池と比べて格段に短くなり、その分、高出力となる。
【0020】
ただし、本発明では、最外層に位置する正極層側の最外層集電体11aにも、一方の面に正極層13が形成され、他方の面に負極層15が形成された双極型電極16を用いてもよい。同様に、最外層に位置する負極層側の最外層集電体11bにも、一方の面に正極層13が形成され、他方の面に負極層15が形成された双極型電極16を用いてもよい。
【0021】
<II>本発明の双極型二次電池の双極型電極の特徴部分である集電体の構成について
本発明に係る双極型二次電池の特徴は、上記した一般的な基本構成を有する双極型二次電池において、双極型電極の集電体が、導電性を有する樹脂層と、該樹脂層より薄い金属層を含み、該金属層が該樹脂層により挟まれた構造を有することにある。かかる構成とすることで、該樹脂層内のイオン透過による双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができ、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築できる。更に、集電体の一部に導電性を有する樹脂層を用いているため、集電体全体でみた場合、金属箔集電体に較べて軽量であり、電池の出力が向上し得る双極型電極を用いた双極型二次電池を構築できる。加えて、金属層が前記樹脂層により挟まれた構造(金属層と前記樹脂層の積層構造)を、3層以上の多層構造にすることで、双極型電極を用いた双極型二次電池の耐振動性能を向上することができる。この点は、比較例2の2層構造と、実施例1の3層構造と、実施例6〜8の5〜6層構造の充放電特性を対比参照のこと。また、正極層及び負極層側表面層に、正極電位及び負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる前記樹脂層や金属層を選択的に配置した集電体を形成することが可能である。かかる構成とすることで、より一層寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型電極を用いた双極型二次電池を構築できる。
【0022】
(1)集電体内の金属層と導電性を有する樹脂層との積層配置の構成について
本発明の双極型電極の特徴部分である集電体について、図面を用いて説明する。図2A〜2Hは、いずれも本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の金属層と導電性を有する樹脂層との積層配置の例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。
【0023】
(a)3層積層配置された一構成例
図2Aに示す双極型電極16では、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2bと、樹脂層2a、2bより薄い金属層1から構成されている。そして、前記金属層1が、前記樹脂層2a、2bにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、集電体11が、前記金属層1を中間層とし、該金属層1を介して前記樹脂層2a、2bが接合された樹脂層2a−金属層1−樹脂層2bの3層積層構造を有する。即ち、本構成例では、樹脂集電体の軽量化、微小短絡に対する安全性確保等の観点から、導電性を有する樹脂層を厚くし、かつ軽量化、イオン透過防止付与の観点から、該樹脂層より薄い金属層を中間層(樹脂層により挟まれた構造)に形成する構成となっている。
【0024】
また、本構成例では、導電性を有する樹脂層2aが正極層13側に、導電性を有する樹脂層2bが負極層15側に配置された構造を有する。また負極層15側表面層の前記樹脂層2bと接する前記金属層1が、集電体11の中央に配置されている。
【0025】
ここで、負極層15側表面層の導電性を有する樹脂層2bと接する前記金属層1が集電体11の中央に配置されているとは、図2Aに示すように、該金属層1の厚さDの中央(中心)Mが、集電体11の厚さDの中央(中心)Mと一致する位置に配置されていることをいう。
【0026】
このように、導電性を有する樹脂層を複数積層配置する場合には、各導電性を有する樹脂層は、導電性高分子のように1種類の成分(樹脂成分)で構成されていてもよいし、導電性フィラー(金属成分)と樹脂(樹脂成分)のように2種類以上の成分で構成されていてもよい。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0027】
本構成例では、双極型電極の樹脂集電体を、前記金属層が前記樹脂層により挟まれた構造例として、樹脂層2a−金属層1−樹脂層2bの3層積層構造を有する交互積層構造にすることで、該樹脂層内のイオン透過を、中間層である金属層1により防止することができる。これにより双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができ、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築できる。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0028】
更に本構成例では、集電体の一部に導電性を有する樹脂層を用いているため、集電体全体でみた場合、金属箔集電体に較べて軽量であり、電池の出力が向上し得る双極型電極を用いた双極型二次電池を構築できる。また、金属層1の厚さを、導電性を有する樹脂層2の厚さよりも薄くするのが軽量化、微小短絡に対する安全性確保、イオン透過防止付与の観点から特に優れている。但し、本発明では、後述する実施例9のように導電性を有する樹脂層のいずれか1層より薄い金属層を含めばよく、残る導電性を有する樹脂層は、金属層と同じ厚さ(実施例9)であってもよいし、金属層よりも薄くてもよい。好ましくは実施例1〜8のように全ての樹脂層より、全ての金属層が薄くなっているのが望ましい。このことは、以下に示す他の構成例(を含む本発明全般)について同様のことが言える。また、生産性および経済性の観点からも、本構成例を含む3層積層配置された構成例が望ましい。
【0029】
また、前記金属層が前記樹脂層により挟まれた構造例として、前記金属層と前記樹脂層の交互積層構造をより多層構造にすることで、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。特に本構成例のように正極層13と負極層15が前記樹脂層2a、2cと接する構成とした場合に顕著となる。これは、正極層13及び負極層15内の活物質材料が充放電に伴い膨張収縮したときに、該正極層と負極層に接する導電性を有する樹脂層が、該膨張収縮による応力を緩和するように伸縮することができる。また、外部からの振動、衝撃に対しても、当該導電性を有する樹脂層が振動、衝撃等の外部負荷を緩和するように伸縮することができ、双極型二次電池の耐振動性能が向上するためである。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0030】
また、本構成例のように正極層13と負極層15が導電性を有する樹脂層2a、2cと接する構成とした場合、金属集電箔のように内部短絡が生じた時に面方向に電流が流れ、局所的な発熱現象を引き起こすのを効果的に防止することができる点で優れている。
【0031】
また、双極型電池においては、導電性を有する樹脂層2a、2cは厚さ方向に極短い距離だけ電流を流す場合には、体積抵抗率にもよるが、後述する導電性を有する樹脂層の厚さ範囲程度であれば導電性を有する樹脂層の厚み方向の抵抗は電池の内部抵抗全体に対しほぼ無視できる領域である。そのため、双極型電極の導電性には何ら支障はない。一方、導電性を有する樹脂層の面方向に電流を流そうとした場合には、導電性を有する樹脂層の表面抵抗は非常に大きく、内部短絡が生じた時に面方向に電流が流れるのを効果的に抑制でき、局所的な発熱現象が生じるのを防止できるためである。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0032】
更に、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。すなわち、本構成例では、正極層側に配置する導電性を有する樹脂層2aには、正極電位に耐え得る導電性を有する樹脂を、負極層側に配置する導電性を有する樹脂層2bには、負極電位に耐え得る導電性を有する樹脂を選択可能となる。そのため、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体、更には双極型電極を形成することが可能になる。加えて、正極層13と負極層15が導電性を有する樹脂層2a、2cと接する構成では、正極層13と負極層15の近傍に金属層が存在しない。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0033】
なお、金属層と導電性を有する樹脂層の2層積層構造を採用しなかったのは、以下の理由による。即ち、集電体内に前記樹脂層−金属層−樹脂層の3層積層構造以上の金属層が前記樹脂層により挟まれた構造を設けた本発明に比べて、容量維持率が十分ではなく、集電体内のイオン透過を十分に抑制しにくいことがわかったためである(表2の比較例2と実施例1〜9の容量維持率や比較例1に対する容量向上率を対比参照のこと)。これは、正極層や負極層のみに接するように金属層を配置しようとすると、金属集電箔のように内部短絡が生じた時に金属層の面方向に電流が流れ、局所的な発熱現象を引き起こすように考えられる。そのため、該金属層の厚さを薄くして内部短絡が生じた時に金属層の面方向の抵抗を高め、電流が流れにくくする必要がある。しかしながら、該正極層や負極層のみに接する金属層を非常に薄くしていくと、製造段階のプレス処理により正極層や負極層が収縮する過程や充放電時に正極層や負極層内の活物質が膨脹収縮する過程で、該正極層や負極層に接する金属層が破れたり、剥離することがわかった。こうして金属層が破れたり、剥離した部分(=ピンホール部分)を通じて、イオンが透過してしまい、該双極型電極内の正極層と負極層との間で液絡が生じてしまうことがわかった。そのため、表2の比較例2では、集電体内のイオン透過を十分に抑制しにくい結果に終わったものと考えられる。そこで、本発明では、正極層や負極層のみに接するように金属層を配置した、樹脂層と金属層からなる2層積層構造は含まない構成としたものである。
【0034】
(b)3層積層配置された他の構成例
図2Bに示す双極型電極16は、図2Aの双極型電極の変形例である。
【0035】
図2Bに示す双極型電極16でも、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2bと、少なくとも樹脂層2aより薄い金属層1から構成されている。そして、前記金属層1が、前記樹脂層2a、2bにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、集電体11が、前記金属層1を中間層とし、該金属層1を介して前記樹脂層2a、2bが接合された樹脂層2a−金属層1−樹脂層2bの3層積層構造を有する。また、前記樹脂層2aが正極層13側に、前記樹脂層2bが負極層15側に配置された構造を有する。本構成例では、樹脂層2bが金属層1よりも薄い構成例を示しているが、好ましくは樹脂層2a、2bより薄い金属層1(樹脂層2a、2bが金属層1より厚い構成)を用いるのがより好ましい(後述する実施例1〜8参照のこと)。
【0036】
ここで、負極層15側表面層の前記樹脂層2bと接する金属層1が集電体11の中央より負極層15側に配置されているとは、図2Bに示すように、該金属層1の厚さDの中央Mが、集電体11の厚さDの中央Mより負極層15側の位置に配置されていることをいう。
【0037】
本構成例でも、上記(a)の構成例で説明したと同様の作用効果を奏することができる。即ち、液絡低減による寿命特性向上や導電性を有する樹脂層による軽量化、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。また、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。
【0038】
更に本構成例では、集電体11の負極層15側の前記樹脂層2bと正極層側で接する金属層1が、集電体11の中央より負極層側に配置されている。詳しくは、本構成例では、集電体11の負極層15側(特に表面層)の導電性を有する樹脂層2bと接する金属層1が、集電体11の中央より負極層15側に配置されている。そのため、本構成例では、前記集電体11の負極層15側(特に表面層)の導電性を有する樹脂層2bの厚さDが、他の導電性を有する樹脂層2aの厚さDよりも薄い構成ともなっている。こうした構成においては、負極層15側の導電性を有する樹脂層2bを、高分子材料に導電性金属フィラーを分散させた層とすることによって、次の作用効果を奏することができる。なお、ここでいう高分子材料に導電性金属フィラーを分散させた層とは、高分子材料に導電性フィラーとして導電性金属フィラーのみを分散させた層のほか、導電性フィラーとして少なくとも導電性金属フィラーが分散された層を含むものとする。他の構成例でも同様とする。また、本発明でいう「導電性金属フィラー」とは、負極電位でリチウムと反応し容量ダウンにつながるような導電性フィラーを指すものとする。具体的には、導電性カーボンのほか、銀やAlなどの金属またはその合金からなる金属フィラー、樹脂等の非導電性フィラーの表面をこれら銀やAlなどの金属や合金で被覆したフィラー等が挙げられる。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例についても同様のことが言える。
【0039】
即ち、長期信頼性に優れ、充放電効率を向上させた電池を構築することができる。また、耐振動性能をより向上することもできる。詳しくは負極層15−樹脂層2b−金属層1間の該樹脂層2bを薄くすることによって、該樹脂層2b内に含有されている導電材である導電性金属フィラーを低減することができる。そのため該導電性金属フィラーの容量劣化を抑制でき長期信頼性を高めることができる。この導電性金属フィラーの容量劣化の原因としては、前記樹脂層2b内の導電性金属フィラーの1種である導電性カーボン材は活物質としても機能するが、充放電を繰り返すうちに該導電性カーボン材の膨脹収縮によるひび割れ等で微粉末化するなどして失活し、容量ロス(劣化)につながるものと考えられる。また、導電性金属フィラーの1種である金属フィラーや樹脂フィラー表面を該金属で被覆したフィラーも負極の還元電位に達した際、該金属表面での電気化学反応によってリチウムが消費され容量劣化の原因となるものと考えられる。そこで、本発明の双極型電極に用いられる集電体では、該樹脂層1内の導電性金属フィラーは、膨脹収縮した際に高分子材料により応力を吸収緩和されるため、より一層、当該導電性金属フィラーの劣化を抑制し、長期信頼性に優れた電池を構築でき、充放電効率を向上させることができる。また耐振動性能もより向上することができると考えられる。また前記樹脂層2b内の導電性金属フィラーを低減することによって、導電材である導電性金属フィラーとリチウムイオンの不可逆反応による容量ロス(=容量劣化)を抑制することもでき、長期信頼性に優れた電池を構築でき、充放電効率を向上させることができると考えられる。
【0040】
なお、負極層15側(特に表面層)の前記樹脂層2bの導電性金属フィラーを低減する手法としては、該樹脂層を薄くする方法が挙げられる。また本構成例のように負極層15側の前記樹脂層2bと接する金属層1が、集電体11の中央より負極層15側に配置する方法が適用可能である。この他にも、例えば、負極層15側(特に表面層)の前記樹脂層の導電性フィラーのうち、導電性金属フィラーの含有量を少なくし、活物質として機能しない他の導電性フィラーの含有量を多くする方法も考えられる。また、例えば、負極層15側(特に表面層)の前記樹脂層2bの導電材(導電性フィラー)全体の含有量を双極型電極の導電性を損なわない範囲で少なくして、導電性金属フィラーの含有量を低減してもよい。また、導電性金属フィラーの平均粒子径や材質(表面処理等により改質したものを含む)を容量ロス(=容量劣化)の少ないものに変更してもよい。さらに、これらの方法を適当に組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(c)3層積層配置された更に他の構成例
図2Cに示す双極型電極16も、図2Aの双極型電極の変形例である。
【0042】
図2Cに示す双極型電極16でも、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2bと、少なくとも樹脂層2bより薄い金属層1から構成されている。そして、前記金属層1が、前記樹脂層2a、2bにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、前記集電体11が、金属層1を中間層とし、該金属層1を介して導電性を有する樹脂層2a、2bが接合された樹脂層2a−金属層1−樹脂層2bの3層積層構造を有する。また、導電性を有する樹脂層2aが正極層13側に、導電性を有する樹脂層2bが負極層15側に配置された構造を有する。本構成例では、集電体11の負極層15側表面層の導電性を有する樹脂層2bと接する金属層1が、集電体11の中央より正極層15側に配置されている。本構成例では、樹脂層2aが金属層1よりも薄い構成例を示しているが、好ましくは樹脂層2a、2bより薄い金属層1(樹脂層2a、2bが金属層1より厚い構成)を用いるのがより好ましい(後述する実施例1〜8参照のこと)。
【0043】
負極層15側表面層の導電性を有する樹脂層2bと接する金属層1が集電体11の中央より正極層15側に配置されているとは、該金属層1の厚さDの中央Mが、集電体11の厚さDの中央Mより正極層13側の位置に配置されていることをいう。
【0044】
本構成例でも、上記(a)の構成例で説明したと同様の作用効果を奏することができる。即ち、液絡低減による寿命特性向上や導電性を有する樹脂層による軽量化、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。また、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる(表2の実施例9と実施例1の容量維持率や比較例1に対する容量向上率を対比参照のこと)。
【0045】
(d)5層積層配置された構成例
図2Dに示す双極型電極16では、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2b、2cと、これら樹脂層2a、2b、2cより薄い金属層1a、1bから構成されている。そして、前記金属層1aが、前記樹脂層2a、2bにより挟まれ、前記金属層1bが、前記樹脂層2b、2cにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、前記集電体11が、金属層1と導電性を有する樹脂層2とが交互に複数積層された、樹脂層2a−金属層1a−樹脂層2b−金属層1b−樹脂層2cの5層積層構造を有する。本構成例では、該集電体11の正極層13側および負極層15側の表面層が、共に導電性を有する樹脂層2a、2cで構成されている。
【0046】
なお、本構成例でも、集電体11の負極層15側(特に表面層)の導電性を有する樹脂層2cと接する金属層1bが、集電体11の中央より負極層15側に配置されている。
【0047】
本構成例でも、液絡低減による寿命特性向上、導電性を有する樹脂層による軽量化が図れる。更に本構成例では、正極層と負極層が共に導電性を有する樹脂層を接する構成となっている。そのため、上記(a)の構成例で説明したように、双極型二次電池の耐振動性能が向上でき、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。加えて、集電体11を5層積層という多層積層構造にすることで、双極型二次電池の耐振動性能がより一層向上する。詳しくは、正極層及び負極層に接する2つの表面層のほか、該表面層に挟持される内層にも導電性を有する樹脂層が配置される。集電体の内層に導電性を有する樹脂層2bが存在することによって、集電体と正極層や負極層との剥離強度がより一層向上する。これは、表面層による密着性並びに緩衝的役割(応力緩和機能)に加えて、内層の導電性を有する樹脂層2bも緩衝的役割(応力緩和機能)を果たし、表面層と正極層や負極層との密着性及び耐振動性能をより一層増強させているためであると推測される。
【0048】
また、本構成例でも、上記(b)で説明したと同様に、前記集電体11の負極層15側の前記樹脂層2cと正極層側で接する金属層1bが、集電体11の中央より負極層15側に配置されている構成となっている。即ち、負極層15側(特に表面層)の前記樹脂層2cの厚さが、他の導電性を有する樹脂層2a、2bの厚さよりも薄い構成ともなっている。こうした構成においては、負極層15側(表面層)の導電性を有する樹脂層2cを、高分子材料に導電性金属フィラーを分散させた層とすることによって、次の作用効果を奏することができる。
【0049】
即ち、長期信頼性に優れ、充放電効率を向上させた電池を構築することができる。また、耐振動性能をより向上することもできる。詳しくは負極層15−樹脂層2c−金属層1b間の該樹脂層2cを薄くすることによって、前記樹脂層2c内に含有されている導電材(導電性フィラー)の導電性金属フィラーを低減することができる。そのため該導電性金属フィラーの容量劣化を抑制でき長期信頼性を高めることができる。即ち、本構成例の集電体では、前記樹脂層2c内の導電性金属フィラーは、膨脹収縮した際に周囲の高分子材料により応力を吸収緩和されるため、より一層、当該導電性金属フィラーの劣化を抑制し、耐振動性能もより向上することができると考えられる。また前記樹脂層2c内の導電性金属フィラーを低減することによって、導電性フィラーである導電性金属フィラーとリチウムイオンの不可逆反応による容量ロス(=容量劣化)を抑制することもできると考えられるためである。
【0050】
(e)6層積層配置された一構成例
図2Eに示す双極型電極16では、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2b、2cと、これら樹脂層2a、2b、2cより薄い金属層1a、1b、1cから構成されている。そして、前記金属層1bが、前記樹脂層2a、2bにより挟まれ、前記金属層1cが、前記樹脂層2b、2cにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、集電体11が、前記金属層1と導電性を有する樹脂層2とが交互に複数積層された、金属層1a−樹脂層2a−金属層1b−樹脂層2b−金属層1c−樹脂層2cの6層積層構造を有する。本構成例では、該集電体11の正極層13側の表面層は、金属層1aで構成され、負極層15側の表面層は、前記樹脂層2cで構成されている。このように、本発明でいう「金属層が樹脂層により挟まれた構造」には、本構成例の双極型電極16に含まれる金属層の1つである金属層1aのように、該金属層1aが樹脂層2aと正極層13との間で挟まれた(挟持されている)構造も含まれるものとする。ただし、本発明の双極型電極では、本構成例のように集電体内部の少なくとも一部に「金属層が樹脂層により挟まれた構造」を有する必要があり、こうした構造を全く含まない、樹脂層と金属層からなる2層積層構造は含まないものとする。
【0051】
なお、本構成例でも、集電体11の負極層15側(特に表面層)の導電性を有する樹脂層2cと接する金属層1cが、集電体11の中央より負極層15側に配置されている。
【0052】
本構成例でも、液絡低減による寿命特性向上、導電性を有する樹脂層による軽量化が図れる。更に本構成例では、負極層が導電性を有する樹脂層を接する構成となっている。そのため、上記(a)の構成例で説明したように、双極型二次電池の耐振動性能が向上でき、負極電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。なお、正極電位に対しては、金属層1aを正極電位に長期間耐えうるものとすればよい。加えて、集電体11を6層積層という多層積層構造にすることで、上記(d)で説明したように、内層の導電性を有する樹脂層も緩衝的役割(応力緩和機能)を果たし、表面層と正極層や負極層との密着性及び耐振動性能をより一層増強させている。そのため、双極型二次電池の耐振動性能がより一層向上するものと考えられる。
【0053】
また、本構成例のように正極層13と金属層1aとが接する構成とした場合、金属集電箔のように内部短絡が生じた時に面方向に電流が流れ、局所的な発熱現象を引き起こすように考えられる。しかしながら、本構成例のように多層積層構造とすることで、両面を導電性を有する樹脂層2a、2bないし2cで保持された他の金属層1aないし1bを存在させることができる。そのため両面を導電性を有する樹脂層で保持された他の金属層によりイオン透過を効果的に防止することができる。そのため既存の金属集電箔に比べて当該金属層1aの厚さを非常に薄く抑えることができる(即ち、蒸着法等による非常に薄い蒸着金属薄膜で十分である)。そのため内部短絡が生じた時に面方向の局所に集中して電流が流れようとした場合、非常に短時間で電流の流れを遮断できる(焼切れる)機能を持たせることができる。その結果、内部短絡が生じた時に局所的な発熱現象を効果的に防止することができる点で優れている。また、非常に短時間で電流の流れを遮断できる為、他の集電体の積層構造部分で、集電性能を低下させることがない点で優れている。
【0054】
(f)6層積層配置された他の構成例
図2Fに示す双極型電極16は、図2Eの双極型電極の変形例である。
【0055】
図2Fに示す双極型電極16では、集電体11が、導電性を有する樹脂層2a、2b、2cと、これら樹脂層2a、2b、2cより薄い金属層1a、1b、1cから構成されている。そして、前記金属層1aが、前記樹脂層2a、2bにより挟まれ、前記金属層1bが、前記樹脂層2b、2cにより挟まれた(挟持されている)構造を有している。別言すれば、集電体11が、前記金属層1と導電性を有する樹脂層2とが交互に複数積層された、樹脂層2a−金属層1a−樹脂層2b−金属層1b−樹脂層2c−金属層1cの6層積層構造を有する。本構成例では、該集電体11の正極層13側の表面層は、導電性を有する樹脂層2aで構成され、負極層15側の表面層は、金属層1cで構成されている。このように、本発明でいう「金属層が樹脂層により挟まれた構造」には、本構成例の双極型電極16に含まれる金属層の1つである金属層1cのように、該金属層1cが樹脂層2cと負極層15との間で挟まれた(挟持されている)構造も含まれるものとする。ただし、本発明の双極型電極では、本構成例のように集電体内部の少なくとも一部に「金属層が樹脂層により挟まれた構造」を有する必要があり、こうした構造を全く含まない、樹脂層と金属層からなる2層積層構造は含まないものとする。
【0056】
なお、本構成例では、集電体11の負極層15側(特に表面層)の金属層1cが、集電体11の中央より負極層15側に配置されている。
【0057】
本構成例でも、液絡低減による寿命特性向上、導電性を有する樹脂層による軽量化が図れる。更に本構成例では、正極層が導電性を有する樹脂層を接する構成となっている。そのため、上記(a)の構成例で説明したように、双極型二次電池の耐振動性能が向上でき、正極電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。なお、負極電位に対しては、金属層1cを負極電位に長期間耐えうるものとすればよい。加えて、集電体11を6層積層という多層積層構造にすることで、上記(d)で説明したように、内層の導電性を有する樹脂層も緩衝的役割(応力緩和機能)を果たし、表面層と正極層や負極層との密着性及び耐振動性能をより一層増強させている。そのため、双極型二次電池の耐振動性能がより一層向上するものと考えられる。
【0058】
また、上記(e)で説明したように、本構成例のように負極層15と金属層1cとが接する構成とした場合でも、金属集電箔のように内部短絡が生じた時に面方向に電流が流れ、局所的な発熱現象を引き起こすように考えられる。しかしながら、本構成例のように多層積層構造とすることで、両面を導電性を有する樹脂層2a、2bないし2cで保持された他の金属層1aないし1bを存在させることができる。そのため両面を導電性を有する樹脂層で保持された他の金属層によりイオン透過を効果的に防止することができる。そのため既存の金属集電箔に比べて当該金属層1cの厚さを非常に薄く抑えることができる(即ち、蒸着法等による非常に薄い蒸着金属薄膜で十分である)。そのため内部短絡が生じた時に面方向の局所に集中して電流が流れようとした場合、非常に短時間で電流の流れを遮断できる(焼切れる)機能を持たせることができる。その結果、内部短絡が生じた時に局所的な発熱現象を効果的に防止することができる点で優れている。また、非常に短時間で電流の流れを遮断できる為、他の集電体の積層構造部分で、集電性能を低下させることがない点で優れている。
【0059】
以上の観点から、本構成例では、負極層側表面層の金属層と接する導電性を有する樹脂層が、導電性フィラーとして少なくともカーボン材や金属フィラー等の負極電位でフィラーがリチウムと反応し容量ダウンにつながり得るもの(導電性金属フィラー)が添加された樹脂を用いて形成された導電性を有する樹脂層であり、かつ該導電性を有する樹脂層の厚さが、10〜100μmとするのが望ましいと言える。
【0060】
なお、上記(a)〜(f)の各構成例は本発明に用いられる集電体の積層配置された集電体の構成例のあくまで1例に過ぎない。従って上記した構成例以外であっても、導電性を有する樹脂層より薄い金属層が該樹脂層により挟まれた構造(金属層と、前記樹脂層とが積層された構造)を有するものであれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0061】
例えば、樹脂層−金属層−(第1の樹脂層−第2の樹脂層)ように、特性の異なる第1の導電性を有する樹脂層と第2の導電性を有する樹脂層を連続積層する形態でも、導電性を有する樹脂層より薄い金属層が該樹脂層により挟まれた構造を有するものであれば、本発明の技術範囲に含まる。同様に、樹脂層−(第1金属層−第2金属層)−樹脂層のように、特性の異なる第1金属層と第2金属層を連続積層する形態でも、導電性を有する樹脂層より薄い金属層が該樹脂層により挟まれた構造を有するものであれば、本発明の技術範囲に含まる。更に、樹脂層−(第1金属層−第2金属層)−(第1の樹脂層−第2の樹脂層)ように特性の異なる第1金属層と第2金属層を連続積層し、特性の異なる第1の導電性を有する樹脂層と第2の導電性を有する樹脂層を連続積層する形態でも導電性を有する樹脂層より薄い金属層が該樹脂層により挟まれた構造を有するものであれば、本発明の技術範囲に含まる。なお、上記した(第1金属層−第2金属層)や(第1の樹脂層−第2の樹脂層)を、1層の金属層ないし1層の樹脂層内の金属材料や導電性フィラー材料の分布が段階的に変化しているとみなして、上記図2Aや図2Dの構成例に含めてもよい。
【0062】
(2)集電体内の金属層及び導電性を有する樹脂層の各構成要件
(2−1)金属層
(a)金属層の構成材料
集電体内の金属層としては、集電体内のイオン透過を防止し、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐ機能を奏し得るものであれば、特に制限されるものではなく、既存の金属集電箔と同様の材料を用いて形成することができる。具体的には、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレスあるいはこれらの金属(合金を含む)の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを金属層の形成材料として用いることが好ましい。また、図2E、2Fのように正極層側や負極層側表面層に配置される金属層においては、正極電位や負極電位に耐えうる点から、Feを主成分とし、Cr、Niを合金化したステンレスを金属層の形成材料として用いることが好ましい。また、負極層側表面層に配置される金属層においては、0Vに電圧をおとすことが可能になる点で、Mo成分を有するSUS316Lを金属層の形成材料として用いることが好ましい。
【0063】
(b)金属層の厚さ
集電体内の金属層の厚さとしては、集電体内のイオン透過を防止し、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐ機能を発現し得るものであればよいが、更に軽量化の観点からは、機能を発現し得る範囲で、導電性を有する樹脂層より薄くするのが望ましいといえる。但し、図2Fで説明したように、複数の金属層を有する場合には、そのうちの少なくとも1つの金属層が導電性を有する樹脂層より薄ければよい。好ましくは、複数の金属層を有する場合でも、すべての金属層が全ての導電性を有する樹脂層より薄くするのが望ましい。
【0064】
上記観点から、例えば、図2A〜2Cのように、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層を含む3層積層構造の集電体の場合、集電体内の金属層の厚さは、0.01〜20μm、好ましくは0.05〜10μm、更に好ましくは0.1〜5μmである。金属層の厚さが0.01μm以上であれば、ピンホールなどの発生を抑制し、高い液絡防止機能を有効に発現させることができる点で優れている。また、金属層の厚さが20μm以下であれば、上記液絡防止機能に加え、薄膜、軽量化できる点で優れている。また、相対的に導電性を有する樹脂層を厚くできるため、振動や衝撃等の外部負荷に対し十分な応力緩和機能(耐振動性)を発揮させることにも寄与し得る点で優れている。
【0065】
但し、図2D〜2Fのように複数の金属層を配置する場合には、これら金属層全体で上記した液絡防止機能を有効に発現し得るものであればよいことから、金属層の層数に応じて、各金属層の厚さを適宜調整すればよい。そのため、金属層を複数用いる場合、各金属層の厚さは、略同じ厚さであってもよいし(図2D〜2F参照)、それぞれ異なる厚さであってもよい。
【0066】
(2−2)導電性を有する樹脂層
(a)構成材料
集電体内の導電性を有する樹脂層としては、双極型電池用の集電体に求められる導電性を有し、集電体全体を既存の金属箔集電体に較べて軽量化できものであれば、特に制限されるものではなく、既存の樹脂集電体と同様の材料を用いて形成することができる。即ち、導電性フィラーが添加された樹脂や導電性高分子などの導電性を有する樹脂から構成することができる。
【0067】
具体的には、導電性を有する樹脂層は、導電性を有し、必須に高分子材料(樹脂)を含む。導電性を有する樹脂層が導電性を有するには、具体的な形態として、1)高分子材料(樹脂)が導電性高分子である形態、2)導電性を有する樹脂層が導電性フィラー(導電材)を含む形態、3)上記1)、2)の形態を組み合わせた形態などが挙げられる。
【0068】
ここで、導電性を有する樹脂層が、導電性を有するとは、一般には電気伝導率(導電率)がグラファイト(電気伝導率:10S/m)と同等以上のものが導体、10−6S/m以下のものを不導体(絶縁体)、その中間の値をとるものを半導体と分類するが、本発明では、絶縁体でなければよく、電気伝導率(導電率)が10−6S/m以上であればよい。本発明では導電性を有する樹脂層を含む集電体が、双極型電極に用いられることから、導電性を有する樹脂層の厚み方向の体積抵抗率が10Ω・cm以下のものであれば、導電性を有する樹脂層が導電性を有するものといえる。後述する実施例のエポキシ樹脂にカーボン材や金属フィラー等の導電性金属フィラーを分散させた導電性を有する樹脂層では、厚さ10〜100μmの範囲であれば、概ね10−2〜10−1Ω・cmの範囲であり、10Ω・cm以下の要件を満足する。そのため、実験結果までは載せていないが、いずれも問題なく導電性を有する樹脂層が導電性を有するものである。
【0069】
また、集電体の厚み方向の体積抵抗率は、10〜10−5Ω・cmの範囲が望ましい。集電体の厚み方向の体積抵抗率がかような範囲にあれば、双極型電極の集電体として適切である。該体積抵抗率の測定方法は、JIS規格に適合した市販の測定機器を用いて行うことができる。
【0070】
(i)導電性高分子
上記1)の形態に用いられる導電性高分子は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し導電性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。導電性(電子伝導性)および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンがより好ましい。
【0071】
なお、正極層や負極層に接する表面層の導電性を有する樹脂層に該導電性高分子を用いる場合には、単独では、印加される正極電位や負極電位に耐えうる良好な材料となるものが現段階では開発されていない為、更に後述する導電性フィラー(導電材)を添加して、印加される正極電位や負極電位に耐えうるようにするのが望ましい。
【0072】
(ii)導電性フィラー(導電材)
上記2)の形態に用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。また、導電性フィラーは、積層配置される位置にもよるが、正極層側や負極層側の表面層に配置される場合には、印加される正極電位や負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。
【0073】
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0074】
(ii−1)導電性フィラー(導電材)の形状
また、導電性フィラー(導電材)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
【0075】
(ii−2)導電性フィラーの分布
導電性を有する樹脂層における導電性フィラーの分布は、均一でなくてもよく、導電性を有する樹脂層内部で導電性フィラー粒子の分布が変化していてもよい。また、集電体に複数の導電性を有する樹脂層が用いられることから、複数の導電性フィラーが用いられ、各導電性を有する樹脂層間でも、導電性フィラー粒子の分布、含有量、材料の種類等が変化していてもよい。例えば、正極層に接する表面層の導電性を有する樹脂層や正極層寄りの導電性を有する樹脂層と、負極層に接する表面層の導電性を有する樹脂層や正極層寄りの導電性を有する樹脂層とで、好ましい導電性フィラー材料を使い分けてもよい。
【0076】
正極層に接する導電性を有する樹脂層や正極層寄りの導電性を有する樹脂層(正極層側導電性を有する樹脂層)に好適に用いられる導電性フィラーとしては、導電性、高分散性の観点から粒子形態のアルミニウム粒子、SUS粒子、金粒子およびカーボン粒子が好ましい。なかでもカーボン粒子がより好ましい。
【0077】
負極層に接する導電性を有する樹脂層や負極層寄りの導電性を有する樹脂層(負極層側導電性を有する樹脂層)に好適に用いられる導電性フィラーとしては、導電性、高分散性の観点から、銀粒子、金粒子、アルミニウム金属粒子、銅粒子、チタン粒子、SUS粒子、およびカーボン粒子が好ましい。またこれらの導電性フィラーは粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料をめっき等でコーティングしたものでもよい。なかでも、カーボン粒子がより好ましい。
【0078】
カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。これらカーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れているためである。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極(特に正極層)の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。また、負極層に接する導電性を有する樹脂層にカーボン材を用いる場合には、該導電性を有する樹脂層の厚さを薄くしたり、他の導電材を配合比率を増やすなどして、該導電性を有する樹脂層内に含有されているカーボン材(導電材)を低減するのが望ましい。すなわち、負極層に接する導電性を有する樹脂層内のカーボン材(導電材)が負極活物質としても機能し得る。そのため充放電過程(特に初回充放電過程)で該カーボン材(導電材)の一部がリチウムイオンとの不可逆反応により失活すると共に導電性能が低下するのを抑制する上で有効である。なお、カーボン粒子を導電性フィラーとして用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、導電性を有する樹脂層の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
【0079】
(ii−2)導電性フィラーの平均粒子径
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0080】
(ii−3)導電性フィラーの添加量
導電性を有する樹脂層中の導電性フィラーの添加量は、1〜30wt%であることが望ましい。導電性を有する樹脂層中の導電性フィラーの添加量が1wt%以上あれば、双極型電極の集電体に必要な導電性能を有効に発現することができる。一方、導電性フィラーの添加量が30wt%以下であれば、導電性フィラーを含有する導電性を有する樹脂層の重量増加を抑制することができる。
【0081】
(iii)高分子材料(樹脂マトリックス)
また、上記2)の形態のように導電性を有する樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、導電性を有する樹脂層を形成する高分子材料は、当該導電性を付加する為の導電性フィラーを結着させる絶縁性の高分子材料(導電性のない高分子材料)を含む。また、上記3)の形態でも、導電性を有する樹脂層を形成する高分子材料は、導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料、上記1)の導電性高分子のいずれでもよく、これらを併用してもよい。
【0082】
導電性を有する樹脂層の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。また、導電性を有する樹脂層では、金属層や正極層や負極層に熱融着するために、該導電性を有する樹脂層に含まれる導電性のない高分子材料や上記1)の導電性高分子は、熱可塑性であることが好ましい。但し、通常のスラリー塗布による導電性を有する樹脂層の形成も可能であるため、必ずしも熱可塑性であるものに限られない。
【0083】
導電性高分子の例としては、上記1)の形態で例示したものを用いることができる。
【0084】
導電性のない高分子材料の例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)等のポリエステル;シリコーン、ポリイミド(PI);ポリアミド(PA);ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);スチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム材料;ポリアクリロニトリル(PAN);ポリメチルアクリレート(PMA);ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。これらの高分子材料は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。中でも、電解質(有機溶媒)に対して膨潤性がない点で、エポキシ樹脂が好ましい。また、以下の観点からは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。さらに熱を加えることで融解し易く、金属層や正極層や負極層に融着することが容易である。
【0085】
(iii)高分子材料の配合比率
上記2)、3)の形態のように導電性を有する樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、導電性を有する樹脂層における、高分子材料と導電性フィラーとの比率は、(ii−3)で規定した通りである。好ましくは、高分子材料および導電性フィラーの合計に対して、2〜20wt%の導電性フィラーが存在する。十分な量の導電性フィラーを存在させることにより、集電体における導電性を十分に確保できるためである。
【0086】
(iv)他の添加剤
導電性を有する樹脂層には、導電性フィラーおよび高分子材料の他、本発明の作用効果に瑛キュを与えない範囲内であれば、撥水剤、結着剤などの他の添加剤を適量含有していてもよい。
【0087】
(b)導電性を有する樹脂層の厚さ
導電性を有する樹脂層の厚さは、上記したように少なくとも1つの金属層よりも厚ければよく、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極層と負極層の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能であり、集電体内の導電性を有する樹脂層の厚さも薄くできる。そのため、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
【0088】
上記観点から、例えば、図2A〜2Cのように、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層を含む3層積層構造の集電体の場合、集電体内の導電性を有する樹脂層(1層分)の厚さは、1〜200μm、好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。導電性を有する樹脂層の体積抵抗率にもよるが前記範囲内であれば導電性を有する樹脂層の厚み方向の抵抗は電池内部抵抗全体に対しほぼ無視できる領域である。そのため、集電体の導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。更に液絡低減による寿命特性向上のほか、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。また、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。
【0089】
但し、図2D〜2Fのようにより多くの導電性を有する樹脂層を配置する場合でも、これら導電性を有する樹脂層で上記した導電性や薄膜軽量化を達成し得るものであればよいことから、導電性を有する樹脂層の層数に応じて、各導電性を有する樹脂層の厚さを適宜調整すればよい。そのため、導電性を有する樹脂層を複数用いる場合、各導電性を有する樹脂層の厚さは、略同じ厚さであってもよいし、それぞれ異なる厚さであってもよい。
【0090】
好ましくは、上記図2B、2Fに記載したように、集電体の負極層側(特に表面層)が、高分子材料に導電性カーボンや金属フィラー(銀やAlなど)等の導電性金属フィラーを分散させた層である場合には、該負極層側(特に表面層)の導電性を有する樹脂層の厚さは、他の導電性を有する樹脂層の厚さよりも薄いことが望ましい。負極層−導電性を有する樹脂層−金属層間の該導電性を有する樹脂層を薄くすることによって、該導電性を有する樹脂層内に含有されている導電性金属フィラー(導電性カーボンや金属フィラー等)の含有量を低減することができるためである。その結果、該導電性金属フィラー(導電性カーボンや金属フィラー等)とリチウムイオンの不可逆反応を抑制することができ、充放電効率が上昇し、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
【0091】
(c)金属層と導電性を有する樹脂層との厚み比(導電性を有する樹脂層/金属層)
金属層と導電性を有する樹脂層(1層分)との厚み比(導電性を有する樹脂層/金属層)は、上記した金属層の厚さと、導電性を有する樹脂層(1層分)の厚さの範囲内であれば、特に制限されるものではない。任意の厚さの金属層と導電性を有する樹脂層とを組み合わせることができる。
【0092】
例えば、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層を含む3層構造の集電体において、金属層と導電性を有する樹脂層(1層分)との厚み比(導電性を有する樹脂層/金属層)は、0.05〜20000、好ましくは0.5〜2000、更に好ましくは2〜500である。かかる範囲の厚み比(導電性を有する樹脂層/金属層)を有することで、液絡低減による寿命特性が向上し、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。また、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。その結果、長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築することができる。
【0093】
(3)集電体全体の構成要件
(3−1)集電体の厚さ
集電体の厚さは、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極層と負極層の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。そのため、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
【0094】
上記観点から、集電体の厚さは、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。かかる範囲であれば、集電体の導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。更に液絡低減による寿命特性向上のほか、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。また、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体を形成することが可能になる。
【0095】
(3−1)集電体の抵抗値
集電体の抵抗値に関しては、双極型電池用の集電体に求められる積層方向の導電性が十分に確保できれいればよく、特に制限されるものではない。好ましくは、電池全体の抵抗値に対して、集電体の積層方向における抵抗値が、1/100以下、好ましくは1/1000以下となるように、集電体の金属層と導電性を有する樹脂層の構成配置や材料、厚さなどを選定するのが望ましい。
【0096】
なお、図1に示す正極層側の最外層集電体11a及び負極層側の最外層集電体11bは、双極型電極構造とする必要がなく、そのため双極型電極の正極層と負極層の間での液絡の心配が無い反面、積層方向に水平な方向(面方向)の導電性が必要となる。そのため、これら最外層集電体に関しては、既存の金属箔集電体(金属層のみで構成したもの)を用いてもよいし、導電性を有する樹脂層に加える導電性フィラーの添加量を上記に規定した量以上に高めて用いてもよい。
【0097】
<III>本発明の双極型二次電池の集電体(特徴部分)以外の構成について
以上が、本発明の双極型二次電池の特徴的な構成要件である集電体に関する説明であり、他の構成要件に関しては特に制限されるものではない。よって、以下では、本発明の双極型二次電池の特徴的な構成要件である集電体以外の他の構成要件に関し、双極型リチウムイオン二次電池を例に取り説明するが、本発明がこれらに制限されるものではない。
【0098】
[正極層及び負極層]
電極層(正極層13および負極層15)は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0099】
正極層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0100】
負極層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0101】
各正極層13、負極層15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
【0102】
電極層(正極層13および負極層15)は、結着高分子材料(単に、バインダともいう)を含む。
【0103】
電極層13、15に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;合成ゴムなどが挙げられる。中でも、好適には、ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;合成ゴムである。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり電極層13、15に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。集電体の導電性を有する樹脂層と熱融着して結合される電極層に用いられるバインダとしては、PVdF、エポキシ樹脂などが好ましい。これらの材料では、熱融着が行いやすく製造時の生産性が向上するためである。また、バインダが熱硬化性であっても熱融着が行いやすいため、好ましい。好適な熱硬化性バインダとしては、熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミド、エポキシ樹脂、合成ゴム等が挙げられ、エポキシ樹脂などがより好ましい。
【0104】
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0105】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0106】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0107】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0108】
正極層13および負極層15中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0109】
各電極層13、15の厚さについても特に制限はなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して適宜決定すればよく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各電極層13、15の厚さは、2〜100μm程度である。
【0110】
[電解質層]
電解質層17を構成する電解質としては、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有するものであれば特に制限されず、液体電解質、ポリマー電解質、無機固体電解質(酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質)等が用いられうる。
【0111】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の合剤層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0112】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性(全固体)ポリマー電解質に分類される。
【0113】
ゲルポリマー電解質は、マトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体層への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
【0114】
真性ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系ポリマー電解質が挙げられる。通常、真性ポリマー電解質に支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有しており、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体層への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる。
【0115】
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0116】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0117】
[最外層集電体]
最外層集電体11aおよび11bとしては、上記したように、双極型電極用の集電体11を用いることができるほか、既存の金属集電箔を用いることができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが挙げられる。中でも正極電位、負極電位に耐えうる最外層集電体とするためには、アルミニウム箔、ステンレス箔が好ましい。
【0118】
ただし、後述する実施例のように、最外層集電体にも双極型集電体を用いてもよい。さらに該双極型集電体を用いて形成された双極型電極を最外層にも適用してもよい。この場合、例えば、正極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する負極層は実質的に充放電反応に寄与しない。同様に負極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する正極層は実質的に充放電反応に寄与しない。しかしながら、実施例のように最外層にも双極型電極を用いることで電池の構成部品点数が削減できる。また、わざわざ最外層電極専用の最外層集電体11a、11bを用いて正極層13のみや負極層15のみを形成するための製造ラインの組み替え(ないし切り替え)や生産管理(品質管理)を行う必要がない。さらに、最外層とそれ以外の双極型電極とを取り違えるという不具合の発生も防止できる点などで優れている。
【0119】
[シール部]
シール部(シーラントないし周辺絶縁層とも称されている)31は、電解質層17の漏れを防止するために単電池層19の周辺部に配置されている。この他にも電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。該シール部31としては、例えば、PE、PPなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが使用でき、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ただし、これらに何ら制限されるものではない。
【0120】
シール部31は、スパッタ、蒸着、CVD、PVD、イオンプレーティングおよび溶射のいずれかの方法により形成することもできる。こうした形成法に適したシール部31としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、イットリアなどが好適に利用可能である。
【0121】
[タブ(正極タブおよび負極タブ)]
電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が電池外装材の外部に取り出されている。具体的には、図3に示すように最外層正極集電体11aに電気的に接続された正極タブ25と最外層負極集電体11bに電気的に接続された負極タブ27とが、電池外装材29であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0122】
タブ(正極タブ25および負極タブ27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、最外層集電体11aおよび11bの一部を延長することにより正極タブ25および負極タブ27としてもよいし、別途準備した正極タブ25および負極タブ27を最外層集電体11aおよび11bに接続してもよい。
【0123】
[正極および負極集電板]
正極および負極集電板(電極端子板、強電端子などとも称されている)は、必要に応じて使用する。例えば、最外部の集電体11a、11bから正極タブ25及び負極タブ27を直接取り出す場合には、正極および負極集電板は用いなくてもよい。この電極集電板の一部を延長することにより正極タブ25および負極タブ27としてもよい(強電端子;実施例参照のこと)。あるいは、別途準備した正極タブ25および負極タブ27や正極および負極端子リードを正極および負極集電板に接続してもよい。
【0124】
正極および負極集電板の材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、これらの合金を利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。さらに、電極集電板での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極集電板の厚さは、通常、0.1〜2mm程度が望ましい。
【0125】
[正極および負極端子リード]
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、最外層集電体11aおよび11bから出力電極端子となる正極タブ25および負極タブ27を直接取り出す場合には、正極端子リードおよび負極端子リードは用いなくてもよい。
【0126】
正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0127】
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0128】
[双極型二次電池の外観構成]
図3は、本発明に係る双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0129】
図3に示すように、積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。また、正極層13、電解質層17および負極層15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0130】
なお、本発明の双極型二次電池は、図1に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の双極型二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0131】
また、図3に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図4に示すものに制限されるものではない。また、巻回型の双極型二次電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0132】
[組電池]
本発明の組電池は、本発明の双極型二次電池を複数個接続して構成したものである。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本発明の組電池では、本発明の双極型二次電池と、他の非双極型リチウムイオン二次電池とを組み合わせて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
【0133】
また、図4は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図4Aは組電池の平面図であり、図4Bは組電池の正面図であり、図4Cは組電池の側面図である。
【0134】
図4に示すように、本発明に係る組電池300は、双極型リチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図4Aは、組電池の平面図、図4Aは正面図、図4Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型リチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0135】
[車両]
本発明の車両は、本発明の電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明の双極型二次電池は高い出力であるから、電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明の双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。車両としては、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0136】
図5は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
【0137】
図5に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は十分な出力を提供しうる。
【0138】
<IV>本発明の双極型二次電池の製造方法について
次に、本発明の双極型二次電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
【0139】
本発明の特徴部分である、双極型二次電極の集電体を形成する方法としても、特に制限されるものではない。導電性を有する樹脂薄膜と金属薄膜とを交互に積層配置するための手法として、既存の樹脂薄膜や金属薄膜の成膜技術や積層・貼合せ技術などを適宜組み合わせて利用することができる。
【0140】
即ち、前記集電体は、(1)導電性を有する樹脂層と金属箔を熱融着(熱硬化)によって張り合わせる手法により形成される。また(2)金属箔の両面に導電性フィラーが添加された樹脂や導電性高分子などの導電性樹脂材料を含有する導電性樹脂スラリーを塗布する手法によっても形成される。さらに(3)導電性を有する樹脂層に金属層を蒸着、スパッタ法などによって被覆する。この金属層の表面に、(a)上記(1)の手法を用いて更に他の導電性を有する樹脂層を熱融着(熱硬化)によって張り合わせる手法、あるいは(b)上記(2)の手法を用いて更に導電性樹脂スラリーを塗布する手法などにより形成される。なお、3層以上の積層構造の集電体も上記(1)ないし(3)の手法を繰り返すことでで、金属層と導電性を有する樹脂層とを交互に多数積層させた集電体を作製することができる。しかしながら、これに限る製造方法以外のものでもよい。
【0141】
次に、本発明の双極型二次電池の製造方法としては、集電体を上記にて説明した適当な手法にて形成すること以外は、特に制限されるものではなく、従来公知の製造方法を適用して作製することができる。
【実施例】
【0142】
(実施例1)
1.集電体の作製工程
表1に示す実施例1の3層積層構造の集電体を構成した。
【0143】
詳しくは、エポキシ樹脂にカーボン材を分散させた導電性を有する樹脂層1(厚さ50μm)を用い、上記導電性を有する樹脂層1の片面に、ステンレスを蒸着法によって表面コーティングを行って金属層1(厚さ20μm)を形成した。上記金属層1表面に、エポキシ樹脂にカーボン材を分散させた導電性を有する樹脂層2(厚さ50μm)を形成したフィルムを置き、金属層1と導電性を有する樹脂層2との間の接合(接着)は、導電性を有する樹脂層2のエポキシ樹脂を加熱によって硬化し、接着させて行った。
【0144】
なお、これ以上の積層構造の集電体(実施例6〜8)も上記と同様の手法で、金属層2、3、導電性を有する樹脂層3を作製した。なお、比較例1では、厚さの異なる導電性を有する樹脂層1(厚さ100μm)のみからなる、いわゆる樹脂集電体とした。比較例2は、上記導電性を有する樹脂層1(厚さ50μm)に金属層1(厚さ20μm)を形成した2層積層構造の集電体とした。
【0145】
ここで、上記導電性を有する樹脂層1〜3は、いずれも、導電性のない高分子材料(樹脂)である液性未硬化エポキシ樹脂(95wt%)、および導電性フィラーとしてカーボン粒子(カーボンブラック;平均粒子径:0.1μm)(5wt%)からなる固形分を50℃の温度で混練し導電性樹脂スラリーを調整した。離型フィルム上に導電性樹脂スラリーを塗布し乾燥させて、エポキシ樹脂にカーボン材を分散させた導電性を有する樹脂層を形成した。尚、離型フィルムは、導電性を有する樹脂層の離型フィルム面に正極層や負極層や金属層を形成する際などに取り除いて用いた。また、エポキシ樹脂には、熱硬化前のプレポリマーである1液性未硬化エポキシ樹脂を用いた。さらに離型フィルムには、離型性、耐熱性に優れるPETを用いた。
【0146】
また、上記金属層1〜3は、いずれもステンレスとして、SUS316を用いた。
【0147】
2.正極層の形成工程
正極活物質として、LiMn(平均粒子径:10μm)85wt%、導電助剤としてアセチレンブラック 5wt%、およびバインダとしてPVdF 10wt%からなる固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。
【0148】
上記正極スラリーを、上記1.で作製された集電体の片側(集電体表面層の導電性を有する樹脂層1側と反対側の表面層;詳しくは表1参照のこと)に片面塗布し乾燥させて正極層を形成した。この正極層の厚みが片面で36μmになるようにプレスを行った。
【0149】
3.負極層の形成及び双極型電極の完成工程
負極活物質として、ハードカーボン(平均粒子径:10μm)90wt%およびバインダとしてPVdF 10wt%からなる固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるNMPを適量添加して、負極スラリーを作製した。
【0150】
上記負極スラリーを、片面に正極層が形成された上記集電体のもう一方の片面(集電体表面層の導電性を有する樹脂層1;即ち、各実施例及び比較例すべて負極層側表面層が導電性を有する樹脂層1となるようにした。表1参照)に塗布し乾燥させて負極層を形成した。負極層の厚みは片面で30μmになるようにプレスを行った。
【0151】
これにより集電体の片面に正極層、もう一方の片面に負極層が形成された双極型電極を形成した。
【0152】
得られた双極型電極を140mm×90mmに切断し、電極の周辺部10mmはあらかじめ電極層(正極層、負極層ともに)を塗布していない部分のあるものを作成した。これにより120mm×70mmの電極部と、周辺部に10mmのシールしろができた双極型電極を作製した。
【0153】
次に、以下の材料を所定の比で混合して電解質材料(プレゲル溶液)を作製した。
【0154】
電解液として1.0M LiPFを含有するプロピレンカーボネート(PC)−エチレンカーボネート(EC)(1:1(体積比))90wt%を用いた。ホストポリマーとして、HFP成分を10wt%含むポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)10wt%を用いた。粘度調整溶媒としてDMCを用いた。電解液、ホストポリマー、粘度調整溶媒を混合して電解質材料(プレゲル溶液)を調製した。
【0155】
該電解質材料(プレゲル溶液)を先に形成された双極型電極両面の正極層及び負極層の電極部の全面に塗布し、室温で乾燥することによりDMCを除去することで、ゲル電解質の染み込んだ双極型電極を完成させた。なお、正極層の厚さは36μm、負極層の厚さは30μmのままであった。
【0156】
4.ゲルポリマー電解質層の作製工程
ポリプロピレン製の多孔質フィルムセパレータ(厚さ20μm)の両面に、前記電解質材料(プレゲル溶液)を塗布し、室温でDMCを乾燥させることでゲルポリマー電解質層(厚さ20μm)を得た。
【0157】
5.積層工程
上記で得られた双極型電極の正極層上にゲル電解質層をのせ、その周りに幅12mmm厚さ100μmのPE(ポリエチレン)製フィルムをおきシール材とした。このような双極型電極を6層積層したのちにシール材を上下からプレス(熱と圧力)をかけ融着し、各層をシールして(プレス条件:0.2MPa、160℃、5s)、シール部を形成した。
【0158】
得られた電池要素の投影面全体を覆うことのできる130mm×80mmの100μm厚さのAl板(電極集電板)の一部が、電池要素の投影面外部まで伸びている部分(電極タブ:幅20mm)がある電極集電板(強電端子)を作製した。この集電板で電池要素を挟み込みこれらを覆うように、電池外装材としてアルミニウムを含むラミネートフィルムで真空密封し、電池要素全体を大気圧で両面を押すことにより加圧され、電極集電板−電池要素間の接触が高められた5直構造(5セルが直列に接続された構成)の双極型二次電池が完成した。
【0159】
(実施例2)
集電体の金属層1として、厚さの異なる金属層1(厚さ10μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0160】
(実施例3)
集電体の金属層1として、厚さの異なる金属層1(厚さ5μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0161】
(実施例4)
集電体として、厚さの異なる導電性を有する樹脂層1(20μm)、金属層1(厚さ5μm)及び導電性を有する樹脂層2(80μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0162】
(実施例5)
集電体として、厚さの異なる導電性を有する樹脂層1(10μm)、金属層1(厚さ5μm)及び導電性を有する樹脂層2(90μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0163】
(実施例6)
集電体として、導電性を有する樹脂層1(20μm)、金属層1(厚さ5μm)、導電性を有する樹脂層2(20μm)、金属層2(厚さ5μm)及び導電性を有する樹脂層3(20μm)からなる5層積層構造の集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0164】
(実施例7)
集電体として、導電性を有する樹脂層1(10μm)、金属層1(厚さ5μm)、導電性を有する樹脂層2(20μm)、金属層2(厚さ5μm)及び導電性を有する樹脂層3(30μm)からなる5層積層構造の集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0165】
(実施例8)
集電体として、導電性を有する樹脂層1(10μm)、金属層1(厚さ5μm)、導電性を有する樹脂層2(20μm)、金属層2(厚さ5μm)、導電性を有する樹脂層3(20μm)及び金属層3(厚さ5μm)からなる6層積層構造の集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0166】
(実施例9)
集電体として、厚さの異なる導電性を有する樹脂層1(80μm)、金属層1(厚さ20μm)及び導電性を有する樹脂層2(20μm)からなる6層積層構造の集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0167】
(比較例1)
集電体として、導電性を有する樹脂層1(100μm)のみからなる、いわゆる樹脂集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0168】
(比較例2)
集電体として、導電性を有する樹脂層1(50μm)及び金属層1(厚さ20μm)からなる2層積層構造の集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして双極型二次電池を作製した。
【0169】
各実施例及び比較例1に用いた集電体の積層配置構成を表1に示す。表1の導電性を有する樹脂層1が負極層側表面層となる。但し、比較例1は、導電性導電性を有する樹脂層1のみからなる樹脂集電体であるため、導電性を有する樹脂層1が両面が正極層側表面および負極層側表面となる。
【0170】
【表1】

【0171】
(評価1:充放電試験)
実施例1〜9、比較例1〜2それぞれの電池で初回充放電試験を行った。試験は0.5Cの電流で21.0Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて10時間充電し、その後1Cの放電容量で容量測定を行った。
【0172】
初回充放電後、SOC(State of charge:電気容量に対して、充電している電気量を比率で表したもの)を50%に合わせ振動と熱(70℃)を長時間加えた。その後、充放電試験(1CのCCCV充電2時間 1CのCC放電)を行い放電容量を確認した。加振前の容量を100%とし、加振後の放電容量を表2に示す(充放電は定電流(CC)充放電により行い満充電を21.0V、放電末を12.5Vとした)。
【0173】
なお、上記振動(試験)は、しっかり固定した電池に対して垂直の方向(積層方向)に振幅が3mmで50Hzの単調な振動を200時間加えることにより行った。
【0174】
【表2】

【0175】
表2中の容量維持率(%)は、初期放電容量に対する加振後の放電容量の比率を表す。即ち、容量維持率=加振後の放電容量(Ah)/初期放電容量(Ah)×100(%)である。
【0176】
表2中の比較例1に対する容量向上率(−)は、比較例1の容量維持率を1.00とした場合の、他の実施例ないし比較例の容量維持率の比率(相対値)を表す。即ち、比較例1に対する容量向上率=他の実施例ないし比較例の容量維持率(%)/比較例1の容量維持率(%)である。
【0177】
(考察)
上記表2の結果より、実施例と比較例の容量維持率結果から集電体内に、金属層が導電性を有する樹脂層により挟まれた構造(導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の構造を有する3層積層構造以上)を設けることで集電体内のイオン透過を抑制できることが確認された。
【0178】
実施例4、5では負極層側の表面層である導電性を有する樹脂層1を、他の導電性を有する樹脂層2、3に比べて薄くすることによって容量維持率が向上している。これは、負極層側の表面層である導電性を有する樹脂層1内のカーボン(導電性金属フィラー)量が低減しているため長期信頼性試験時の上記カーボンの容量劣化を抑制した為だと考えられる。このカーボン容量劣化の原因としては、導電性を有する樹脂層1内の導電性カーボン材が活物質としても機能するが、充放電を繰り返すうちに該カーボン材の膨脹収縮によるひび割れ等で微粉末化するなどして失活し、容量ロス(劣化)につながるものと考えられる。また実施例の集電体では、該導電性を有する樹脂層1内の導電性カーボン(導電性金属フィラー)は、膨脹収縮した際に高分子材料(エポキシ樹脂)により応力を吸収緩和されるため、より一層、当該カーボン材の劣化を抑制することができると考えられる。
【0179】
実施例6、7、8では、5層以上の多積層構造にすることよって3層構造(実施例1〜5、9)に比べ若干容量維持率が向上している。多積層構造をとることによってさらに耐振動性が向上したため、寿命特性の向上につながったものと考えられる。
【0180】
比較例2のように、集電体内に導電性を有する樹脂層と共に金属層を設けた2層構造であっても、既存の樹脂集電体(比較例1)に比べれば、集電体内のイオン透過を抑制でき、液絡低減による寿命特性が向上することが確認された。但し、比較例2と実施例1〜9の容量維持率結果から集電体内に、金属層が導電性を有する樹脂層により挟まれた構造(導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の構造を有する3層積層構造以上)を設けることで、導電性を有する樹脂層と共に金属層を設けた2層構造に比べて、集電体内のイオン透過が大幅に抑制できることが確認された。
【0181】
なお、同じ厚さの金属集電箔に比べて、導電性を有する樹脂層を有する実施例1〜9の集電体は、いずれも軽量であり、電池の出力が向上することは、特許文献1等から既に確認されている為、同様の実験は行っていない。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。
【図2A】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内積層配置の例として、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の3層積層構造であって、金属層が中央に配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。
【図2B】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の積層配置の例として、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の3層積層構造であって、金属層が負極層側寄りに配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。
【図2C】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の積層配置の例として、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の3層積層構造であって、金属層が正極層側寄りに配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。
【図2D】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の金属層と導電性を有する樹脂層との積層配置の例として、導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層の5層積層構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。そして、本図面では、負極層側表面層の導電性を有する樹脂層が他の導電性を有する樹脂層より薄くなるように配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図となっている。
【図2E】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の積層配置の例として、(正極層側)金属層−導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層(負極層側)の6層積層構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。そして、本図面では、負極層側表面層の導電性を有する樹脂層が他の導電性を有する樹脂層と同じ厚さになるように配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図となっている。
【図2F】本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内の積層配置の例として、(正極層側)導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層−金属層−導電性を有する樹脂層−金属層(負極層側)の6層積層構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。そして、本図面では、負極層側寄りの導電性を有する樹脂層が他の導電性を有する樹脂層よりも薄くなるように配置された構造を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図となっている。
【図3】本発明に係る双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
【図4】本発明に係る双極型二次電池モジュールの代表的な実施形態を模式的に表した外観図であって、図4Aは双極型二次電池モジュールの平面図であり、図4Bは双極型二次電池モジュールの正面図であり、図4Cは双極型二次電池モジュールの側面図である。
【図5】本発明の双極型二次電池の組電池(モジュール)を搭載した車両の概念図である。
【符号の説明】
【0183】
1、1a、1b、1c 金属層、
2、2a、2b、2c 導電性を有する樹脂層、
10 双極型リチウムイオン二次電池、
11 集電体、
11a 正極層側の最外層集電体、
11b 負極層側の最外層集電体、
13 正極層、
15 負極層、
16、16a、16b 双極型電極、
17 電解質層(ゲル電解質層)、
19 単電池層(=電池単位ないし単セル)、
25 正極タブ、
27 負極タブ、
29 電池外装材(たとえばラミネートフィルム)、
31 シール部、

50 双極型リチウムイオン二次電池、250 装脱着可能な小型の双極型二次電池の組電池(モジュール)、
300 双極型二次電池の組電池(モジュール)、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する樹脂層を含む集電体と、前記集電体の一方の面に電気的に結合した正極層と、前記集電体の他方の面に電気的に結合した負極層とからなる双極型電極であって、
前記集電体は、前記樹脂層より薄い金属層を含み、
前記金属層は、前記樹脂層により挟まれた構造であることを特徴とする双極型電極。
【請求項2】
前記集電体の負極層側の前記樹脂層が、高分子材料に導電性金属フィラーを分散させた層であり、かつ
該負極層側の前記樹脂層と正極層側で接する金属層が、集電体の中央より負極層側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の双極型二次電池。
【請求項3】
前記集電体の負極層側の前記樹脂層が、高分子材料に導電性金属フィラーを分散させた層であり、かつ
該負極層側の前記樹脂層の厚さが、他の樹脂層の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1または2に記載の双極型二次電池。
【請求項4】
前記集電体の正極層側および負極層側の表面層が、樹脂層で構成されていることを特徴とする特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の双極型二次電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の双極型電極と電解質層とが交互に積層されてなることを特徴とする双極型二次電池。
【請求項6】
請求項5に記載の双極型二次電池を少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されることを特徴とする組電池。
【請求項7】
請求項5に記載の双極型二次電池または請求項6に記載の組電池を搭載してなることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−92664(P2010−92664A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259878(P2008−259878)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】