説明

双極型電池

【課題】内部短絡によって電池の異常な状態が生じること防止する。
【解決手段】外装体(30)と前記外装体に収容された発電要素(10)とを含み、前記発電要素は積層された双極型電極(11)と電解質層(12)とを備える双極型電池において、前記双極型電極(11)は、正極(42)と、負極(43)と、前記正極と前記負極との間に配置される集電体(41)と、を備える。前記集電体(41)は、前記積層方向において空間的に離れ得る第一の層状部分(41a)と第二の層状部分(41b)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型の電極を有する双極型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術において、電池の軽量化のために、集電体の一部が樹脂層になっている。そして、樹脂層のみでは、イオンに対するバリア性が充分でないため、集電体において金属層が両側の樹脂層の中間に配置され、集電体の劣化が抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−92664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、内部短絡等の異常時には、電気抵抗の低い金属層が集電体に存在するために、短絡が生じた短絡部に電流が集中し、電池の発熱等の異常な状態が生じる。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、内部短絡によって電池の異常な状態が生じること防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る双極型電池は、外装体と前記外装体に収容された発電要素とを含み、前記発電要素は積層された双極型電極と電解質層とを備える。前記双極型電極は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置される集電体と、を備える。前記集電体は、前記積層方向において空間的に離れ得る第一の層状部分と第二の層状部分を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、短絡電流が抑制され、内部短絡によって電池の異常な状態が生じること防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】各実施形態に係る双極型電池を示す縦断面図である。
【図2】第一実施形態に係る発電要素(積層体)の通常時の一部断面図である。
【図3】第一実施形態に係る発電要素(積層体)の異常時の一部断面図である。
【図4】従来技術に係る発電要素の異常時の短絡電流の流れと等価回路を示す一部断面図である。
【図5】第一実施形態に係る発電要素の異常時の短絡電流の流れと等価回路を示す一部断面図である。なお、等価回路において、電気抵抗が大きい場合にその抵抗の記号は大きく示されている。
【図6】第二実施形態に係る発電要素の異常時の一部断面図である。
【図7】第二実施形態に係る発電要素の異常時の短絡電流の流れと等価回路を示す一部断面図である。なお、等価回路において、電気抵抗が大きい場合にその抵抗の記号は大きく示されている。
【図8】第三実施形態に係る発電要素の異常時の一部断面図である。
【図9】第三実施形態に係る発電要素の異常時の短絡電流の流れと等価回路を示す一部断面図である。なお、等価回路において、電気抵抗が大きい場合にその抵抗の記号は大きく示されている。
【図10】第三実施形態に係る集電体の第一の金属層と第二の金属層の間の面圧と電気抵抗(接触抵抗)の関係を示す。
【図11】比較例に係る双極型電池の構造を示す一部断面図である。
【図12】第三実施形態と比較例の充放電時(通常時)の電池内部抵抗を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では図面を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、各実施形態に係る双極型電池を示す縦断面図である。双極型電池1は、発電を行う発電要素10と、電池外部との電流の入出力を行う端子である電極タブ20と、発電要素10を収容する外装体(ケース)30と、を含む。発電要素10は、双極型電極11と、隣り合う双極型電極11の間に配置される電解質層(セパレータ)12と、シール13と、を含む。発電要素10は、複数の双極型電極11と複数の電解質層12が積層された積層体である。以下、双極型電池1がリチウムイオン電池である場合を説明するが、他の種類の電池でもよい。
【0011】
双極型電極11は、集電体41と、正極42と、負極43と、を含む。正極42は、集電体41の片側の面(図1では上面)に形成される。負極43は、集電体41の反対側の面(図1では下面)に形成される。従って、集電体41は、正極42と負極43との間に配置される。通常、正極42と負極43は、塗工によって集電体41の面上に形成される。正極42は、充電時にイオン(ここではリチウムイオン)を放出し放電時にイオンを吸蔵する材料を正極活物質として含む。負極43は、充電時にイオン(ここではリチウムイオン)を吸蔵し放電時にイオンを放出する材料を負極活物質として含む。イオンの種類は、特に限定されない。
【0012】
正極活物質の例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどである。このような正極活物質は、単独で使用されても、2種以上の混合物で使用されてもよい。
【0013】
負極活物質の例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料など、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物が挙げられる。
【0014】
電解質層12は、例えば、電解液を保持する微多孔性のセパレータである。セパレータの例として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を材料とする微多孔性の樹脂膜が挙げられる。電解質層12は、片側の面において正極42に接し、正極42と反対側の面において負極43に接する。電解液は、非水系の電解液であり、有機液体溶媒にリチウム塩の溶質を溶かしたものである。例えば、電解液として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を混合した溶媒に、リチウム塩としてLiPFを溶解させたものが用いられてよい。
【0015】
シール13は、上下の集電体41の間であって、正極42、負極43及び電解質層12の周囲に配置される。シール13は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する。シール13の材料は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0016】
電極タブ20は、発電要素(積層体)10に当接する金属部21を含む。金属部21は、外力が作用するか否かによって変形可能な弾性部材であってもよい。電極タブ20の一端は、外装体30の外部に露出する。電極タブ20は、たとえば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などで形成される。正極の電極タブ20及び負極の電極タブ20は、同一の材質であっても、異なる材質であってもよい。さらに材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0017】
外装体30は、発電要素10を収容する。外装体30は、柔軟で変形可能である。外装体30の材料は、種々考えられるが、たとえば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)を、ポリプロピレンフィルムで被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムのシート材である。外装体30は、発電要素10を収容した後、周囲が熱融着にて接合される。図1に示された組み立てられた状態では、外装体30の内部は、大気圧よりも低く、ほぼ真空である。
【0018】
外装体30は、内部気圧が大気圧よりも低い状態、たとえばほぼ真空状態で密封されるため、外装体30には、外装体30の外部と内部との差圧(大気圧)が作用する。このため、双極型電池1の通常状態で、外装体30は、電極タブ20の金属部21を介して発電要素10に外力を付加して、積層方向最外面において発電要素10を押圧する。
【0019】
以下に、図2と図3を参照して本実施形態の特徴である集電体41の構成について説明する。
【0020】
図2は、発電要素(積層体)10の一部断面図を示す。集電体41は、導電性を有する第一の樹脂層101と、導電性を有する第二の樹脂層102と、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102との間に配置される金属層103とを備える。第一の樹脂層101は、双極型電極11の正極42に接する。本実施形態では、正極42の第一の樹脂層101への塗工によって、第一の樹脂層101と正極42は接合している。第二の樹脂層102は、双極型電極11の負極43に接する。本実施形態では、負極43の第二の樹脂層102への塗工によって、第二の樹脂層102と負極43は接合している。
【0021】
第一の樹脂層101と第二の樹脂層102は、導電性フィラー(金属成分)が添加された樹脂を用いて形成されている。本実施形態では、第一の樹脂層101を構成する樹脂として、ポリイミドが使用され、第二の樹脂層102を構成する樹脂として、ポリオレフィンが使用される。第一の樹脂層101と第二の樹脂層102は、導電性フィラー(金属成分)を添加せず、導電性高分子樹脂で形成されてもよい。
【0022】
上記の導電性フィラーとして、導電性カーボンや、銀やアルミニウムなどの金属またはその合金からなる金属フィラーが挙げられる。または、導電性フィラーとして、樹脂等の非導電性フィラーの表面を銀やアルミニウムなどの金属やその合金で被覆したフィラー等が挙げられる。
【0023】
図3のように、集電体41は、積層方向において空間的に互いに離れるように移動できる第一の層状部分41a(第一の板状部分)と第二の層状部分41b(第二の板状部分)とを備える。第一の層状部分41aは、第一の樹脂層101とこれに接合した金属層103から構成される。第二の層状部分41bは、第二の樹脂層102から構成される。
【0024】
金属層103は、第一の樹脂層101上において正極42が形成された面とは反対側の面上で、金属(ここでは銅)のスパッタや蒸着などによって形成される。従って、第一の樹脂層101と金属層103は、物理的及び/又は化学的に接合されている。なお、金属層103の材料としては、安価で導電性の良い銅が使用されるが、他の金属(アルミニウムなど)が使用されてもよい。第二の樹脂層102は、形成してから金属層103に、負極43と反対側で重ねているだけであり、第二の樹脂層102と金属層103に物理的及び/又は化学的に接合されていない。従って、第一の層状部分41aと第二の層状部分41bは、金属層103と第二の樹脂層102との間で空間的に分離されて隙間を生じ、互いに非接触とすることができる。なお、図3は、異常時の集電体41の構成を示し、通常時において、金属層103と第二の樹脂層102は接している。
【0025】
外装体30の破損などの原因で外装体30の内部の圧力が増加する異常時において、外装体30の外部と内部との差圧が減少して、外装体30から発電要素10に加わる積層方向の外力が減少する。この場合、金属層103と第二の樹脂層102が空間的に分離され(非接触となり)、これらの間で隙間を生じ得る。特に、外装体30の内部の真空が破れて差圧がゼロになった場合、外装体30は膨張するため、金属層103と第二の樹脂層102は、空間的に離れ得る。
【0026】
樹脂層が変形して浮き上がる可能性を考慮して、外装体30の内部の真空が解除された後に、外装体30のサイズ(特に積層方向の長さ)は、発電要素10のサイズ(特に積層方向の長さ)よりも大きくなるようにしてよい。そうすれば、第一の層状部分41a(金属層103)と第二の層状部分41bの接触が外れやすくなる。また、外装体30と、電極タブ20の金属部21と、発電要素10とが、接合又は接着している場合には、外装体30が膨張すると、発電要素10の最外面が外装体30から引っ張られて、さらに第一の層状部分41a(金属層103)と第二の層状部分41bの接触が外れやすくなる。
【0027】
−作用効果−
以下に、本実施形態の作用効果をまとめて説明する。双極型電池1に内部短絡が生じる典型的な例は、双極型電池1に導電性を有する金属製の釘200が刺さる場合である。この場合、従来技術の構成では、集電体41において、第一の層状部分41a(金属層103)と第二の層状部分41b(第二の樹脂層102)が接合されており離れないため、異常時に図4のように短絡電流が流れて、電池は発熱する。
【0028】
しかし、本実施形態では、双極型電極11を構成する集電体41は、外装体30の内部の圧力が増加した場合に、積層方向において空間的に離れ得る第一の層状部分41aと第二の層状部分42bを備える。従って、図5のように、外装体30の破損などの原因で外装体30の内部の圧力が増加した場合に、集電体41において、第一の層状部分41aと第二の層状部分42bの間で接触抵抗(電気抵抗)が増加する。そして、内部短絡の短絡電流が大幅に減少して、電池の発熱等の異常な状態が生じることが防止できる。
【0029】
集電体41の第一の層状部分41aは、双極型電極11の正極42に接した導電性の第一の樹脂層101を備え、集電体の第二の層状部分41bは、双極型電極11の負極43に接した第二の樹脂層102を備える。そして、外装体30の内部の圧力が増加した場合に、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102は積層方向において空間的に離れるよう移動する。この場合、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102の間の電気抵抗が増大して、短絡電流を大幅に抑制でき、簡便に短絡電流によって電池の発熱等の異常な状態が生じることが防止できる。
【0030】
集電体41の第一の層状部分41aは、第一の樹脂層101とこれに接合した金属層103を備える。第一の層状部分41aの金属層103と、第二の層状部分41bの第二の樹脂層102とが、積層方向において空間的に離れ得る。外装体30の内部の圧力が増加する異常時には、容易に、対向した正極42と負極43の絶縁が可能になり、短絡電流を抑制できる。なお、金属層103は銅から形成される場合、通常時の内部抵抗を小さく押さえることができ、かつ電池の低コスト化が可能となる。
【0031】
<第二実施形態>
以下に、図6を参照して第二実施形態の特徴である集電体41の構成について説明する。第一実施形態と同じく、集電体41は、積層方向において空間的に互いに離れるように移動できる第一の層状部分41aと第二の層状部分41bとを備える。しかし、第一実施形態と異なり、第一の層状部分41aは、第一の樹脂層101から構成される。第二の層状部分41bは、第二の樹脂層102とこれに接合した金属層103から構成される。他の構成は、第一実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0032】
金属層103は、第二の樹脂層102上において負極43が形成された面とは反対側の面上で、金属(ここでは銅)のスパッタや蒸着などによって形成される。従って、第二の樹脂層102と金属層103は、物理的及び/又は化学的に接合されている。金属層103は、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102との間に配置される。しかし、第一の樹脂層101は、形成してから金属層103に、正極42と反対側で重ねているだけであり、第一の樹脂層101と金属層103に物理的及び/又は化学的に接合されていない。従って、第一の層状部分41aと第二の層状部分41bは、金属層103と第一の樹脂層101との間で空間的に分離されて隙間を生じ、互いに非接触とすることができる。なお、図6は、異常時の集電体41の構成を示し、通常時において、金属層103と第一の樹脂層101は接している。
【0033】
外装体30の破損などの原因で外装体30の内部の圧力が増加した場合に、外装体30の外部と内部との差圧が減少して、外装体30から発電要素10に加わる積層方向の外力が減少する。この場合、金属層103と第一の樹脂層101は、空間的に分離され(非接触となり)、これらの間で隙間を生じ得る。特に、外装体30の内部の真空が破れて差圧がゼロになった場合、外装体30は膨張するため、金属層103と第一の樹脂層101は、空間的に離れ得る。
【0034】
第二実施形態によると、集電体41の第二の層状部分41bは、第二の樹脂層102とこれに接合した金属層103を備え、金属層103は、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102の間に配置されている。そして、第二の層状部分41bの金属層103と、第一の層状部分41aの第一の樹脂層101とが、積層方向において空間的に離れ得る。このため、外装体30の内部の圧力が増加する異常時には、容易に、対向した正極42と負極43の絶縁が可能になり、短絡電流を抑制できる。
【0035】
<第三実施形態>
以下に、図8を参照して第三実施形態の特徴である集電体41の構成について説明する。第一実施形態と同じく、集電体41は、積層方向において空間的に互いに離れるように移動できる第一の層状部分41aと第二の層状部分41bとを備える。しかし、第一実施形態と異なり、第一の層状部分41aは、第一の樹脂層101とこれに接合した第一の金属層103から構成される。第二の層状部分41bは、第二の樹脂層102とこれに接合した第二の金属層104から構成される。第一の層状部分41aの第一の金属層103と、第二の層状部分41bの第二の金属層104は、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102の間に配置され、積層方向において空間的に離れ得る。なお、図8は、異常時の集電体41の構成を示し、通常時において、第一の金属層103と第二の金属層104は接している。他の構成は、第一実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0036】
第一の金属層103は、第一の樹脂層101上において、正極42が形成された面と反対側の面上で、金属(ここでは銅)のスパッタや蒸着などによって形成され、第一の樹脂層101と金属層103は接合されている。第二の金属層104は、第二の樹脂層102上において、負極43が形成された面と反対側の面上で、金属(ここでは銅)のスパッタや蒸着などによって形成され、第二の樹脂層102と第二の金属層104は接合されている。しかし、第一の金属層103と第二の金属層104は、重ねているだけであり接合されていない。従って、第一の層状部分41aと第二の層状部分41bは、第一の金属層103と第二の金属層104との間で空間的に分離されて隙間を生じ、互いに非接触とすることができる。
【0037】
外装体30の破損などの原因で外装体30の内部の圧力が増加した場合に、外装体30の外部と内部との差圧が減少して、外装体30から発電要素10に加わる積層方向の外力が減少する。この場合、第一の金属層103と第二の金属層104は、空間的に分離され(非接触となり)、これらの間で隙間を生じ得る。特に、外装体30の内部の真空が破れて差圧がゼロになった場合、外装体30は膨張するため、第一の金属層103と第二の金属層104は空間的に離れ得る。
【0038】
第三実施形態によると、集電体41の第一の層状部分41aは、第一の樹脂層101とこれに接合した第一の金属層103を備え、集電体41の第二の層状部分41bは、第二の樹脂層102とこれに接合した第二の金属層104を備える。そして、第一の層状部分の第一の金属層103と、第二の層状部分の第二の金属層104は、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102の間に配置され、積層方向において空間的に離れ得る。従って、外装体30の内部の圧力が増加する異常時には、容易に、対向した正極42と負極43の絶縁が可能になり、短絡電流を抑制できる。
【0039】
図10に、第三実施形態に係る集電体41の第一の金属層103と第二の金属層104との間に働く面圧と電気抵抗(接触抵抗)の関係を示す。外装体30の内部の圧力が増加した場合に、第一の層状部分41aの第一の金属層103と第二の層状部分41bの第二の金属層104が離れるように移動する。そして、第一の金属層103と第二の金属層104間で働く面圧が、通常時の圧力0.1Mpaから、異常時の0Mpaになると、電気抵抗(接触抵抗)は10倍以上に増加する。このように、外装体30の内部の真空が保持された通常時において、外装体30の内部と外部の差圧が大気圧相当の0.1Mpaであり、第一の金属層103と第二の金属層104は、面接触して電気抵抗が低く、充放電可能である。そして、外装体30の内部の真空が開放された異常時には、第一の金属層103と第二の金属層104の接触面積が小さくなり、電気抵抗が10倍以上に増加し、短絡電流が抑制される。
【0040】
また、第三実施形態によると、第一の層状部分41aの第一の金属層103と、第二の層状部分41bの第二の金属層104は、外装体30の内部の真空が保持された通常時において、金属間の接触状態にある。このため、通常時においては、第一の金属層103と第二の金属層104の接触抵抗が小さく、内部抵抗を低く抑えることができる。
【0041】
図11に、比較例として、従来技術に係る双極型電池の構造を示す。図11の双極型電池は、第一実施形態の双極型電池1において、第二の樹脂層102と、第一の層状部分41aの金属層103がホットプレスで接合されたものに相当する。図12に、第三実施形態と比較例の充放電時(通常時)の電池内部抵抗を示す。第三実施形態と比較例の充放電時(通常時)の電池内部抵抗は同等である。このように、第三実施形態では、集電体41の金属層が物理的に分離した構造であっても、通常時において、双極型電池1の内部抵抗の増加を招くことがない。
【0042】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0043】
例えば、第一の樹脂層101と第二の樹脂層102と金属層103を、第一、第二、第三の層状部分とし、集電体41は、互いに分離する第一、第二、第三の層状部分を備えてよい。金属層103をなくして、集電体41は、分離可能な第一の樹脂層101と第二の樹脂層102だけから構成してもよい。双極型電池はリチウムイオン電池以外の電池であっても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 双極型電池
10 発電要素
11 双極型電極
12 電解質層(セパレータ)
13 シール
20 電極タブ
30 外装体(ケース)
41 集電体
41a 第一の層状部分
41b 第二の層状部分
42 正極
43 負極
101 第一の樹脂層
102 第二の樹脂層
103 金属層(第一の金属層)
104 第二の金属層
200 釘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と前記外装体に収容された発電要素とを含み、前記発電要素は積層された双極型電極と電解質層とを備える双極型電池であって、
前記双極型電極は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置される集電体と、を備え、
前記集電体は、前記積層方向において空間的に離れ得る第一の層状部分と第二の層状部分を備えることを特徴とする双極型電池。
【請求項2】
前記集電体の前記第一の層状部分は、前記双極型電極の正極に接した導電性の前記第一の樹脂層を備え、
前記集電体の前記第二の層状部分は、前記双極型電極の負極に接した前記第二の樹脂層を備え、
前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層は前記積層方向において空間的に離れるよう移動できることを特徴とする請求項1に記載の双極型電池。
【請求項3】
前記集電体の前記第一の層状部分は、前記第一の樹脂層とこれに接合した金属層を備え、前記金属層は、前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層の間に配置され、
前記第一の層状部分の前記金属層と、前記第二の層状部分の前記第二の樹脂層とが、前記積層方向において空間的に離れ得ることを特徴とする請求項2に記載の双極型電池。
【請求項4】
前記集電体の前記第二の層状部分は、前記第二の樹脂層とこれに接合した金属層を備え、前記金属層は、前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層の間に配置され、
前記第二の層状部分の前記金属層と、前記第一の層状部分の前記第一の樹脂層とが、前記積層方向において空間的に離れ得ることを特徴とする請求項2に記載の双極型電池。
【請求項5】
前記集電体の前記第一の層状部分は、前記第一の樹脂層とこれに接合した第一の金属層を備え、
前記集電体の前記第二の層状部分は、前記第二の樹脂層とこれに接合した第二の金属層を備え、
前記第一の層状部分の前記第一の金属層と、前記第二の層状部分の前記第二の金属層は、前記第一の樹脂層と前記第二の樹脂層の間に配置され、前記積層方向において空間的に離れ得ることを特徴とする請求項2に記載の双極型電池。
【請求項6】
前記金属層は、銅から形成されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の双極型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−69549(P2013−69549A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207381(P2011−207381)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】