説明

反射シートを備えた標識

【課題】迅速かつ容易にガードケーブルに装着することができ、その視認性を向上せしめ得る標識を提供する。この標識はガードケーブル以外の機器にも装着してその視認性を向上せしめることができる。
【解決手段】ガードケーブル4に外嵌し得る内径寸法を有する、ゴム又は樹脂製の管状発泡体5aを構成し、その外周に反射シート6を貼着する。上記の反射シート6は、管状発泡体5aを1周して、少し余った部分が貼着片6aとなり、この貼着片6aに粘着剤7が塗布され、離型紙8で覆われている。前記の管状発泡体5aには縦方向の切れ目5cが設けられている。上記の切れ目を利用して、該管状発泡体5aをガードケーブル4に被せると(B)のようになる。前記の貼着片6aを張り付けると装着作業が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射シートを備えた視線誘導標識に関するものであるが、狭義の視線誘導標識に限らず、遮断機の竿状部材やトラックのガードバー等のように視認によって注意を喚起すべき機器に広く適用することができる。
【背景技術】
【0002】
道路の路肩に沿って、ガードレール又はガードケーブル4が設置されている。(図7参照)路肩2に沿って多数のポール3が列設され、このポールに対してガードレール1が取り付けられ、又はガードケーブル4が張り渡される。上記のガードレールやガードケーブルは、
イ.所定の走行車線から逸脱しようとする自動車を撥ね返す役目と、
ロ.自動車を正しい走行車線に導く役目(視線誘導)と、を担っている。これらのガードレールとガードケーブルとにはそれぞれ長短が有るから、道路の建設者及び管理者は、その長短を勘案して選択している。
【特許文献1】特開2007−270467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガードレールとガードケーブルとの優劣を一概には言えないが、視認性という面ではガードレールが優れている。その反面、衝突した自動車の運動エネルギーを吸収して緩衝作用を果たすという面ではガードケーブルの方が優れている。ガードレールは比較的に幅寸法が大きいので、自動車の運転者から見たときの視角が大きいのに反して、ガードケーブルは比較的に太さ寸法が小さいので視角が小さく、目立ちにくい。その上、ガードレールは図7(A)に示すように、標示板1bを取り付けて、この標示板に誘導マーク1aを描くこともできる。
図7(B)に示すガードケーブル4は、ガードレールほどの剛性を有していないので、
強風時の安定性などを考慮すると標示板を取り付けることに躊躇せざるを得ない。
こうした事情によりガードケーブルは、降雨時、降雪時、及び霧発生時等に視認性が良くない。
【0004】
ガードケーブルの緩衝機能という長所を生かしつつ、その視認性を改良する技術として
特許文献1に挙げた特開2007−270467号公報「ガードケーブル用視線誘導型間隔保持材」が公知である。この公知発明は、複数本のガードケーブルに直交させて取り付けられる筒形の間隔保持材に反射シートを貼着したものである。この公知技術によれば、ガードケーブル用のポール間に配列されている間隔保持材が目立つようになるが、ガードケーブルそのものの視認性は良くならず、これを実際に道路に設置したとき、反射シートの配置が連続的でなくて間欠的であるから、視線誘導効果が充分でない。
【0005】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、ガードケーブル、又は、これに類する棒状の部材を適用の対象とし、迅速容易に装着することができ、装着によって視認性を改善し、降雨時、降雪時、及び霧発生時にも視線を確実に誘導し得る標識を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えばガードケーブルのような、手で握れる程度の太さを有する細長い部材を対象とし、これを目立たせる。目立たせるための方策として、
イ.対象部材の太さを大きく見せること、及び
ロ.目立つ色彩・色調・光沢にすること、について工夫改良した。
単に太く見せることや、単に目立つ色彩にすることだけならば先行技術が公知であるが、本発明においては、製造コストや取り扱いの容易さ(特に、迅速かつ容易な装着)を勘案しつつ、実用性の有る新規な構成を創作した。
例えば、単にガードケーブルを太く見せかけるためには、筒状の部材を被せれば良いのであるが、それだけではコスト高である上に、重くて取り扱い難い。さらに、既設のガードケーブルに装着する作業が容易でない。
そこで本発明は、ガードケーブルに被せる部材を発泡体で構成して軽量・低コストならしめるとともに、被せる部材に切れ目を入れ、若しくは被せる部材を渦巻き状に形成して装着を容易ならしめた。
具体的には、以下に述べるごとくである。この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面のとおりに限定するものではない。
【0007】
本発明に係る反射シートを備えた標識の構成は、
(図1参照)表面に反射シート(6)を貼着されたゴム製又は樹脂製の管状発泡体(5a)に、縦方向の切れ目(5c)が形成されていて、
前記管状発泡体の切れ目を広げる形に弾性変形させることにより、これと別体の棒状部材(例えばガードケーブル4)に対して外嵌し得る構造であり、
かつ、前記切れ目の付近で、反射シート同士が対向している縁を結合する粘着手段(例えば粘着剤7を塗布された貼着片6a)又は弾性係合手段(図5に示した凹形係合部10及び凸形係合部11)が設けられていることを特徴とする。
前記管状発泡体の切れ目について「縦方向」とは、管の長さ方向の意であり、管の端から端まで切れ目が設けられる。切れ目を設けた管状部材は、その断面形状がC形をなす。
【0008】
本発明に係る反射シートを備えた標識の構成は、
(図4参照)全体的に細長い形状であり、単一の断面形状を有するゴム製又は樹脂製の発泡体と、その片側の面に貼着された反射シート(6)とから成り、
前記の単一な断面は、渦巻状部(9a)と板状部(9b)とを連結した形状であり、
かつ、少なくとも前記板状部の片面に反射シート(6)が貼着されていることを特徴とする。
上記の反射シートとして、後に詳述するごとくミニウェーブリフレクタを用いることが望ましい。
【0009】
本発明に係る反射シートを備えた標識の構成は、前記請求項1又は請求項2の発明の構成要件に加えて(図3参照)
前記の反射シートが、その長手方向について等間隔に区分され、複数種類の色調が交互に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を適用すると、管状部材(管状発泡体)を棒状の部材に外嵌するので、該棒状部材の見かけの太さ寸法が増大して目立ち易くなる。そして、該管状部材が発泡体で構成されているから軽量で取り扱い易く、低コストである。
その上、該管状発泡体に縦方向の切れ目が形成されているから、既設の棒状部材に対して迅速容易に装着することができる。
更に、前記管状発泡体の表面に反射シートが貼着されているので、いっそう視認性が良くなり、特に、降雨時、降雪時、及び霧発生時においても確実に視線を誘導することができる。
その上、ガードケーブル本来の「衝突車両の運動エネルギーを吸収して緩衝機能を果たす」という長所を妨げない。
【0011】
本発明を適用すると、
既設の棒状部材に対して発泡体の渦巻状部を迅速容易に被せることができ、該渦巻状部
に板状部が連結されているので、視角が増大して良く目立つ。
その上、これらの部材が発泡体で構成されているから軽量で取り扱い易く、低コストである。
しかも、前記の板状部に反射シート(望ましくはミニウェーブリフレクタ)が貼着されているので、降雨時、降雪時、及び霧発生時においても確実に視線を誘導することができる。
さらに、前記請求項1の発明におけると同様に、ガードケーブル本来の「衝突車両の運動エネルギーを吸収して緩衝機能を果たす」という長所を妨げない。
【0012】
本発明を前記請求項1又は請求項2の発明に併せて適用すると、反射シートが、その長手方向について等間隔に区分され、複数種類の色調が交互に配置されているので、極めて優れた視認性が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る標識管5の1実施形態を示す。(A)は単品の横断面図、(B)はガードケーブルに装着した状態の断面図である。
(図1(A)参照)管状発泡体5aは標識管5の本体部分を形成している。符号5bを付して示したのは中心孔である。
上記中心孔5bの内径寸法は、ガードケーブル4の外径寸法とほぼ等しく設定されている。
この管状発泡体5aの長手方向(紙面と垂直)に、切れ目5cが形成されて、断面がC形をなしている。上記の切れ目5cは、管状発泡体5aの端から端まで縦方向に設けられている。
上記管状発泡体5aの外周面に反射シート6が貼着されており、該反射シート6の周方向長さは、管状発泡体5aの周囲長さよりも大きく設定されている。
反射シート6は、切れ目5c付近の点αから一周して切れ目5c付近の点βまで帰り、
余った部分が貼着片6aを形成している。このため、貼着片6aは切れ目5c付近に形成される。
この貼着片6aには粘着剤7が塗布され、離型紙8で覆われている。
【0014】
図2は前掲の図1に示した実施形態に係る標識管の斜視図である。図2(A)のように離型紙8を剥がし取って粘着剤7を露出させると、図2(B)のようにして、反射シート6を張り合わせ、標識管5の表面を覆うことができる。この状態の断面は図1(B)のごとくである。
前記管状発泡体5aはゴム又は合成樹脂で成形されている。本実施形態においてはポリエチレンフォームで構成した。
この材料は適宜の弾性と剛性とを有しているので、前記の切れ目5cを広げる形に弾性変形させて既設のガードケーブル4に被せることができ、前述のごとく貼着片6aを貼り付けて管状を保持させる。
【0015】
図3は本発明に係る標識管5の全体的外観図である。本実施形態においては標識管5の直径が40mmである。長さは各種あり、大半は3〜4mである。長さ寸法が直径寸法の約100倍であって、非常に細長い部材である。本図3は標識管の中間部を切り縮めて描いてある。
実際のガードケーブルにおいては、ポールとポールとの間の距離が一定ではないが、本例のような標識管5を準備しておくと、望ましい長さに切り詰めたり、望ましい長さに継ぎ足したりして、既設のガードケーブルに適応することができる。
図3(A)の例では、赤色反射シート6rと白色反射シート6wとを交互に配置してある。赤色は注意を喚起し易い色調であり、白色は夜間に良く目立つ。
図3(B)の例では黄色反射シート6yと緑色反射シート6gとを交互に配置してある。この色調の取り合わせも非常に良く目立つ。
本発明者らの実験によれば、上記のごとく、赤・白の取り合わせと、黄・緑の取り合わせとは視線誘導効果が優れていて推奨される。しかし、本発明を実施する際、任意の色調を選択して配列することができる。
【0016】
図4は前記と異なる実施形態を示す。(A)は単品の横断面図、(B)はガードケーブル4に装着した状態の横断面図、(C)はガードケーブル4に装着した状態の部分的斜視図である。
本実施形態の板付き標識管9は、ゴム又は合成樹脂の発泡体で成形された渦巻状部9aと、板状部9bとが連結されて、図4(A)に示すような断面形状をなしている。
本実施形態においては、渦巻状部と板状部とを連設した形状の発泡体を押出し成形によって構成した。従ってこの部材は、端から端まで同じ断面形状を有している。
ただし、本発明において「単一の断面形状を有する」とは、その構成を分かり易く表現したものであって、同じ断面形状の箇所が有れば足り、必ずしも端から端まで同一の断面形状であることを要せず、全長の中の一部分で断面形状が多少変化していても本発明の技術的範囲に属する。
【0017】
前記のゴム又は合成樹脂の発泡体で成形された渦巻状部9aを弾性的に変形させてガードケーブル4に被せると図4(B)のようになる。
渦巻状部9aが、弾性復元力でガードケーブル4を巻き締めているので、別段の接着手段もしくは粘着手段を用いなくても、渦巻状部9aでガードケーブルを包み込んだ状態が維持される。
図示を省略するが、前掲の図1、図2に示した実施形態における断面C字状の管状発泡体に、図4のような板状部(9b)を連設することもできる。
このように板状部材を設けると、自動車の運転者から見たときの視角が大きくなり、視認性が向上する。
前記板状部9bの片側の面に、実線で描いたように反射シート6が貼付されている。
【0018】
これと異なる実施形態として、仮想線で描いたように、渦巻状部9aの外側面にも反射シート6を貼付することもできる。これにより視認性が更に向上する。
上記反射シートとして、公知の平板状の再帰反射フイルムを用いても良いが、板状部9bにはミニウェーブリフレクタ(国土交通省新情報提供システム登録番号KT−000123号・NTW社製)を用いることが望ましい。
板状部にミニウェーブリフレクタを貼着する場合は、ウェーブの稜線が垂直方向となるようにする。
ミニウェーブリフレクタは各種色調のものが市販されているから、板状部9bの長手方向を等間隔に区分して、例えば赤色と白色、黄色と緑色、というように、異なる色調のものを交互に配列すると、いっそう優れた視認性が得られる。
【0019】
図5は、前掲の図1、図2に示した実施形態の変形例である。前記の実施形態においては、反射シートが対向している縁同士を貼着片(6a)で粘着させて接合したのに比して、本例では係合手段で接合してある。
図5(A)の標識管5の切れ目5c付近に、仮想線で囲んで示した係合手段bが設けられている。その拡大詳細は(B)のごとくである。
反射シートの片方の端縁に凹形係合部10が、他方の端縁に凸形係合部11が、それぞれ設けられていて、これらを相互に係合させると(C)のようになる。
この図5の実施形態(係合方式)は、図1及び図2の実施形態(粘着方式)に比して、装着作業が若干難しい。しかし、一旦装着した標識管を取り外したり再装着したりすることが容易である。
【0020】
図6は、本発明に係る標識管が道路に設置された状態を模式的に描いた斜視図である。
路肩2に沿って多数のポール3が列設され、4本のガードケーブル4a,4b,4c,4dが上下4段に張り渡されている。
最上段のガードケーブル4aには、前掲の図4に示した板付き標識管9が装着されている。
図においてガードケーブル4aの引出線を付した箇所の付近は、板付き標識管9の構造を分かり易くするため、その一部分を切り欠いて描いてある。
【0021】
2段目のガードケーブル4bには標識管が装着されておらず、ガードケーブルが露出している。
3段目のガードケーブル4cには、前掲の図3(C)に示した実施形態の標識管5を装着してある。ガードケーブル4cの引出線付近は、標識管5とガードケーブル4cとの関係を表すために、標識管5の一部分を切り欠いて描いてある。
最下段のガードケーブル4dには標識管5を装着せず、ガードケーブルを露出させてある。
この図6に示したのは本発明に係る標識管を使用した一例である。本発明は、既設のガードケーブルに対して各種の標識管を任意に選定して装着することができる。
また、複数本のガードケーブルの内の1本だけに装着することもでき、複数本に装着することもでき、全部に装着することもできる。
また、図1に例示した板状部の無い標識管と、図4に例示した板状部を備えた標識管とを取り混ぜて装着することも任意である。
【0022】
更に本発明の反射シートを備えた標識は、ガードレールに限らず、視認性向上のために広く応用することができる。
例えばトラックの荷台に設けられているガードバーや、踏切遮断機ポールなどのように視認性の向上が望ましい棒状の部材に適用すると有効である。これらの場合「既設の機器に対して迅速容易に装着し得る」という本発明の長所が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る反射シートを備えた標識管の1実施形態を示し、(A)は単品の断面図、(B)はガードケーブルに装着した状態の断面図である。
【図2】(A)は前掲の図1に示した実施形態の部分的斜視図、(B)は同じくガードケーブルに装着した状態の斜視図である。
【図3】本発明に係る反射シートを備えた標識管の実施形態2例を示す全体的な外観図である。
【図4】前掲の図1,2と異なる実施形態を示し、(A)は単品の断面図、(B)はガードケーブルに装着した状態の断面図、(C)はガードケーブルに装着した状態の部分的斜視図である。
【図5】前掲の図1,2の実施形態の変形例を示し、(A)は組立て前の状態の部分的斜視図、(B)はそのb部を拡大して描いた詳細図、(C)は組立てた状態の部分的斜視図である。
【図6】本発明に係る反射シートを備えた標識管を道路に設置した状態の斜視図である。
【図7】(A)はガードレールの外観斜視図、(B)はガードケーブルの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1…ガードレール
1a…誘導マーク
1b…標示板
2…路肩
3…ポール
4…ガードケーブル
5…標識管
5a…管状発泡体
5b…中心孔
5c…切れ目
6…反射シート
6a…貼着片
6g…緑色反射シート
6r…赤色反射シート
6w…白色反射シート
6y…黄色反射シート
7…粘着剤
8…離型紙
9…板付き標識管
9a…渦巻状部
9b…板状部
10…凹形係合部
11…凸形係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に反射シートを貼着されたゴム製又は樹脂製の管状発泡体に、縦方向の切れ目が形成されていて、
前記管状発泡体の切れ目を広げる形に弾性変形させることにより、棒状の部材に対して外嵌し得る構造であり、
かつ、前記切れ目の付近で反射シート同士が対向している縁を結合する粘着手段、又は係合手段が設けられていることを特徴とする、反射シートを備えた標識。
【請求項2】
全体的に細長い形状であり、単一の断面形状を有するゴム製又は樹脂製の発泡体と、その片側の面に貼着された反射シートとから成り、
前記の単一な断面形状は、渦巻板と平板との連結体を切断した形状であり、
かつ、少なくとも前記平板部分の片面に反射シートが貼着されていることを特徴とする、反射シートを備えた標識。
【請求項3】
前記の反射シートが、その長手方向について等間隔に区分され、複数種類の色調を交互に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の反射シートを備えた標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221740(P2009−221740A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67161(P2008−67161)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(593210352)株式会社協立研究所 (4)
【出願人】(501252216)株式会社技工社 (3)
【Fターム(参考)】