説明

反射型フォトセンサを用いた位置検出装置

【課題】磁気センサや大型マグネットを用いることなく、簡単な構成で、1mm以上の位置センシングが良好にでき、反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルする。
【解決手段】1対の反射型フォトセンサPR1,PR2を対向配置し、この1対のフォトセンサ間に、可動体に取り付けられた両面反射板5を移動可能に配置し、これらフォトセンサPR1,PR2の2つの出力から反射板5の移動位置を検出する。この位置検出では、反射板の移動距離に応じてリニアな値が得られる演算式を用い、例えば1対の反射型フォトセンサの一方の出力をVo1、他方の出力をVo2とすると、(Vo1−Vo2)/(Vo1+Vo2)の演算式を用いて位置検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射型フォトセンサを用いた位置検出装置、特にカメラ等の装置内の可動体(移動物)の位置検出を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば各種のカメラ、ズーム機能カメラ付き携帯電話等では、ピエゾモータや、マグネット及びコイルを組み合わせたもの等のアクチュエータを使用してレンズを駆動しており、この可動レンズ等の位置を把握するために位置検出装置(センサ)が用いられる。
【0003】
上記アクチュエータを使用した5mm以上の位置検出装置には、例えば下記特許文献1,2のように、MR素子(磁気抵抗効果素子)やホール素子等の複数の磁気センサ上に、これらの素子を覆う大きさのマグネットを配置するような構成が主流であり、装置自体が大型化していた。また、このような位置検出装置が搭載されるアプリケーション内に他の磁気を使用するような場合には、磁気かぶり等の影響を受け誤動作する可能性があった。
【0004】
このようなことから、従来から位置検出装置に反射型フォトセンサを用いて構成する要求があり、従来の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置としては、1mm以下の位置検出を目的として、携帯電話用オートフォーカスレンズ検出用のアクチュエータ等に使用されている。一方、1mm以上の位置検出を行う場合には、装置が大型化するため実現が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平10−225083号公報
【特許文献2】特願平11−289743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、ピエゾモータ等のアクチュエータを使用して移動させる物の5mm以上の位置センシングを行う検出装置は、磁気センサ(MR素子又はホール素子)と大型マグネットの構成となるため、装置の小型化には難があった。しかも、磁気センサの場合、各センサの出力を、オペアンプを介して又は集積回路内蔵型センサ出力としてADC(アナログデジタルコンバータ)に入力しなければならず、システムを構成するための部品コストが高価になるという問題があった。
【0007】
また、1mm以上の位置センシングを反射型フォトセンサ1つで実現しようとする場合、例えばこのフォトセンサの発光素子と受光素子とを結ぶ線方向へ可動体を移動させる構成となり、上記受光素子の検出距離方向(可動体の移動方向)のサイズが検出距離以上に必要となることから、必然的にフォトセンサの外形サイズが大きくなるという問題があった。
【0008】
更に、反射型フォトセンサを用いて位置検出をするとき、その検出出力が温度の変化に応じて変動するという温度特性があり、この温度特性の影響をなくす必要があり、このために、従来では、例えば装置内温度をサーミスタでモニタし、その温度変化分を解消するフィードバック制御回路や反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルするための回路を設ける必要があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気センサや大型マグネットを用いることなく、簡単かつ小型な構成で、1mm以上の位置センシングが良好にでき、反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルすることが可能となる反射型フォトセンサを用いた位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置は、対向配置された1対の反射型フォトセンサと、この1対のフォトセンサ間に配置された両面反射板と、を設け、上記1対のフォトセンサの出力から該フォトセンサ間の上記反射板の移動位置を検出することを特徴とする。
請求項2の発明は、上記1対の反射型フォトセンサ出力による演算であって、上記反射板の移動距離に応じてリニアな値が得られる演算式を用い、この演算式により位置検出を行うことを特徴とする。
請求項3の発明は、上記1対の反射型フォトセンサ出力による演算であって、上記反射型フォトセンサの温度変化による出力の変動をキャンセルする演算式を用い、この演算式により位置検出を行うことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、例えばカメラの可動レンズに両面反射板を取り付け、この反射板の移動位置を検出することで、可動レンズ等の位置を特定することができる。この反射板の位置検出には、反射板の移動距離に応じてリニアな値が得られ、かつ温度変化による出力の変動をキャンセルする演算式が用いられ、この演算式としては、例えば1対の反射型フォトセンサの一方の出力をVo1、他方の出力をVo2とすると、Vo1−Vo2の演算式、或いは(Vo1−Vo2)/(Vo1+Vo2)の演算式又は(Vo1+Vo2)/(Vo1−Vo2)の演算式を用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置によれば、対向配置した1対の反射型フォトセンサ間の出力電圧(又は電流)を用い、リニアな距離特性となる演算式を利用することにより、磁気センサや大型マグネットを用いることなく、小型かつ安価で高精度な位置検出が可能となる。そして、デジタルスチールカメラ、ズーム機能カメラ付き携帯電話、一眼レフカメラ、カムコーダー等ズーム機能が必要なカメラモジュールのレンズ位置検出等、1mm〜10mm程度の長距離の位置検出が必要なレンズ駆動用アクチュエータ等に使用できる利点がある。
【0013】
また、2つの反射型フォトセンサの出力を利用した演算式を用いることで、反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルすることが可能となり、従来の例えばサーミスタでモニタした温度変化分を解消するフィードバック制御回路や反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルするための回路等を設ける必要がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る位置検出装置のセンサ部の構成を示す図である。
【図2】実施例に係る位置検出装置のセンサ部の回路構成を示す図である。
【図3】実施例に係る反射型フォトセンサの距離特性を示す特性グラフ図である。
【図4】実施例の演算式を説明するための反射板−反射型フォトセンサ間距離対演算値を示すグラフ図である。
【図5】実施例の演算式による反射板−反射型フォトセンサ間距離対演算値を示すグラフ図である。
【図6】実施例に係る位置検出装置のセンサ部及び演算部の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本発明の実施例に係る反射型フォトセンサを用いた位置検出装置のセンサ部の構成が示されており、実施例では、1対(2つ)の反射型フォトセンサPRl、PR2が対向配置され、この反射型フォトセンサPRl、PR2のそれぞれは、発光素子3と受光素子4を有してなる。また、この反射型フォトセンサPRl、PR2の間に、反射板(例えば、厚さt=0.5mm)5が配置されており、この両面反射板5は、表裏両面が同一の反射率を有する両面反射板であり、その面積は反射型フォトセンサPR1,PR2の対向面の面積よりも大きく形成される。そして、この反射板5は、レンズ等の可動体に接続され、可動体と一体となってフォトセンサ間を移動するように構成される。
【0016】
図2には、センサ部の回路構成が示されており、図示されるように、反射型フォトセンサPR1は、抵抗R、発光素子(フォトダイオード)3、受光素子(フォトトランジスタ)4、抵抗Rを有してなり、電圧Vo1(電流でもよい)を出力する。また、反射型フォトセンサPR2も、同様に抵抗R、発光素子3、受光素子4、抵抗Rを有してなり、電圧Vo2を出力するように構成される。
【0017】
図3には、図1及び図2に示される反射型フォトセンサPR1とPR2の間の両面反射板5を0mm〜8mmまで移動させたときの反射型フォトセンサPR1とPR2の出力電圧Vo1,Vo2が示されており、PR1からの距離dにおいて、このPR1の出力電圧Vo1は、高い電圧から急激に降下する電圧となり、他方のPR2の出力電圧Vo2は、低い電圧から急激に上昇する電圧となり、それぞれの電圧特性は対称的なものとなる。
【0018】
図4は、図3で説明した反射型フォトセンサPR1の出力電圧とPR2の出力電圧の加算(Vo1+Vo2)及び減算(Vo1−Vo2)の処理を行った結果である。
【0019】
図5には、更に、(Vo1−Vo2)/(Vo1+Vo2)[演算式A]の演算処理を行った結果が示されており、図示のように、この演算式Aによれば、点線で示す理想直線に近似する直線性が高いリニアな特性が得られることが理解される。また、検出のための演算式としては、(Vo1+Vo2)/(Vo1−Vo2)[演算式B]を用いてもよく、この演算式Bの特性線は、図5の傾きとは逆に右肩上がりとなるが、この場合も、上記と同様に反射板の移動距離dに応じて理想直線に近似する高いリニア特性が得られる。更に、上記の演算式A,Bは、後述するが、反射型フォトセンサPR1,PR2の温度特性により出力値が変動した場合でも、その変動分をキャンセルできるものである。
【0020】
図6には、演算部を含めた位置検出装置の構成が示されており、この演算部7は、検出部からの出力電圧Vo1,Vo2を入力するADC(アナログデジタルコンバータ)8a,8b、Vo1+Vo2を演算する加算器9、Vo1−Vo2を演算する減算器10、(Vo1−Vo2)/(Vo1+Vo2)又は(Vo1+Vo2)/(Vo1−Vo2)を演算する割算器11からなる。
【0021】
このような構成によれば、図1の移動する反射板5に対し、1対の反射型フォトセンサPR1,PR2のそれぞれの発光素子3から検出光が出力されると、反射板5から反射される光がそれぞれの受光素子4で受光され、フォトセンサPR1から電圧Vo1、フォトセンサPR2から電圧Vo2が出力される。そして、これらアナログ電圧値は、ADC8a,8bでデジタル値に変換され、これらのデジタル値を入力する加算器9、減算器10及び割算器11によって、例えば(Vo1−Vo2)/(Vo1+Vo2)[演算式A]が演算される。そして、この演算値によって、図5に示される特性に基づいて、反射板5の位置(距離d)、即ち可動体の位置が良好に検出されることになる。
【0022】
上記実施例は、ピエゾモータを組み込んだ位置検出装置等として、例えばデジタルスチールカメラ、ズーム機能カメラ付き携帯電話、一眼レフ、カムコーダー等ズーム機能か必要なカメラモジュールのレンズ位置検出装置等に使用することができ、これらの1mm以上の位置センシング等において、小型化ができ、かつ安価なシステム構成が実現できるという利点がある。
【0023】
また、反射型フォトセンサPR1,PR2の温度特性に基づき、出力電圧が温度により変化したとき、2つのフォトセンサ出力に基づいた上記の加減算及び割算の処理によれば、その変動分が完全にキャンセルされる。例えば、温度の影響がなく、Vo1=0.4(V)、Vo2=0.1(V)であるとき、上記演算式Aによる値は0.6となるが、これに対し、温度の影響により1割の変動があったとすると、Vo1=0.44、Vo2=0.11となるが、この場合も、演算値は0.6となり、変動分がキャンセルされている。従って、装置内温度をサーミスタでモニタしフィードバックをかける回路や、反射型フォトセンサの温度特性をキャンセルするための回路等を設ける必要がない。
【符号の説明】
【0024】
PR1,PR2…反射型フォトセンサ、
3…発光素子、 4…受光素子、
5…反射板、 7…演算部、
8a,8b…ADC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された1対の反射型フォトセンサと、
この1対のフォトセンサ間に配置された両面反射板と、を設け、
上記1対のフォトセンサの出力から該フォトセンサ間の上記反射板の移動位置を検出することを特徴とする反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項2】
上記1対の反射型フォトセンサ出力による演算であって、上記反射板の移動距離に応じてリニアな値が得られる演算式を用い、この演算式により位置検出を行うことを特徴とする請求項1記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。
【請求項3】
上記1対の反射型フォトセンサ出力による演算であって、上記反射型フォトセンサの温度変化による出力の変動をキャンセルする演算式を用い、この演算式により位置検出を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の反射型フォトセンサを用いた位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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