反射防止および防汚性能を有する三次元ナノポアポリマーフィルムとその製造方法
【課題】有効屈折率が大幅に低下された三次元ナノポアポリマーフィルムを提供する。
【解決手段】三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程からなる製造方法である。
【解決手段】三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程からなる製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元ナノポアポリマーフィルムおよびその製造方法に関し、特に、スポンジ状構造(sponge structure)の断面を有し、反射防止および防汚性能に優れた三次元ナノポアポリマーフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ装置の製造工程では、グレアや反射光の発生を回避する目的で、液晶ディスプレイの透明基板などのディスプレイ装置の最外層に反射防止フィルムを設けている。
【0003】
単層構造の反射防止フィルムは、加工性に優れると共に、高歩留り、高生産性、および低設備コストで製造できるというメリットがあるため、反射防止技術における研究開発の主流となっている。ところが、反射防止用の複合光学フィルムを製造するのに従来より用いられている、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムなどの含フッ素無機材料は、大量のフッ素原子を含んでおり、化合物自身に凝集力(cohesion)が備わっていないため、形成される単層構造の反射防止光学フィルムの耐摩耗性が使用可能な水準まで達せず、硬い被覆層(hard coat layer)をもう一層加えなければならない。さらに、この従来の反射防止光学フィルムは、特定の波長領域(520〜570nm)において高い反射防止能力を備えるのみであって、屈折率の異なる材料から構成される多層構造としない限り、可視光波長領域(400〜780nm)での反射防止効果は得られず、かつ、含フッ素無機材料を含む組成配合では、有効屈折率(Neff)を1.40以下にまで低下させることはできない。
【0004】
これに関し、単層構造の反射防止光学フィルムの有効屈折率(Neff)を効果的に低減させてディスプレイ装置全体の反射率を抑えるため、屈折率が傾斜的に変化する(gradient)反射防止光学フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この公知の反射防止光学フィルムは、非相溶である2種のポリマーを共通溶媒に溶かして溶液を製造してから、この溶液を基板に塗布し、最後に、このうちの1種のポリマーを除去する、という方法により作製される。溶液を基板に塗布する際、非相溶である2種のポリマーは相分離するため、これら非相溶である2種のポリマーが横方向に入り組んでなる(laterally alternating)フィルムが形成される。よって、溶剤によりこのうちの1種のポリマーを除去した後残るもう一方のポリマーは、深さの異なる垂直な孔が複数備わったフィルムを形成することとなる。図1は、この反射防止フィルムの断面構造を説明する図である。上記方法により形成されたフィルムは、深さが異なる開放状の垂直な孔を複数有しているため、その屈折率が傾斜的に変化することとなって、反射率が反射防止可能な程度まで低減される。
【0005】
しかし、2種の非相溶のポリマーをブレンドすることにより生じる相分離の機構に起因して、反射防止フィルムの最大表面粗さ(Rmax)がその膜厚と等しいものとなってしまい、その結果、フィルムの機械強度と防汚性能が不足することとなる。
【0006】
したがって、屈折率が低く、かつ、防汚性能を有する反射防止フィルムおよびその製造方法を開発することは、ディスプレイ技術上急務である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6605229号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述に鑑みて、本発明の目的は、スポンジ状構造の断面を有してなり、その均一に分布するナノポアに空気が充填されることにより有効屈折率(Neff)が1.45以下まで大幅に低下される三次元ナノポアポリマーフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、低屈折率の三次元ナノポアポリマーフィルムを得るべく、三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明のもう1つの目的は、反射防止(anti−reflection coatings)、アンチグレア(anti−glare)または防汚(antifouling)の性能を備え、光学デバイスまたはディスプレイ装置に適用される反射防止および防汚性能を有する光学ポリマーフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法に関する。
【0012】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層であることが好ましい。
【0013】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とすることが好ましい。
【0014】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーであることが好ましい。
【0015】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含むことが好ましい。
【0016】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整することが好ましい。
【0017】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1であることが好ましい。
【0018】
三次元ナノポアポリマーフィルムのポアサイズが20〜80nmであることが好ましい。
【0019】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含むことが好ましい。
【0020】
基板が透明基材からなる基板であることが好ましい。
【0021】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材であることが好ましい。
【0022】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法が、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムであって、
その膜厚が50〜200nmであり、かつ、そのポアサイズが20〜80nmである三次元ナノポアポリマーフィルムに関する。
【0024】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層であることが好ましい。
【0025】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことが好ましい。
【0026】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーであることが好ましい。
【0027】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含むことが好ましい。
【0028】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整することが好ましい。
【0029】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1であることが好ましい。
【0030】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含むことが好ましい。
【0031】
基板が透明基材からなる基板であることが好ましい。
【0032】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材であることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明は、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した反射防止光学ポリマーフィルムであって、
反射率が2%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が0.1〜35%である反射防止光学ポリマーフィルムに関する。
【0034】
水接触角が90°より大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、複数のナノポアがフィルム中に均一に分布してフィルムの断面がスポンジ状構造となるため、ポリマーフィルム内の空気の量が大幅に増加して、フィルムの有効屈折率(Neff)が1.45以下まで低減される。したがって、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、反射率2%以下、透過率93%以上、ヘイズ値0.1〜35%を達成すると共に、その水接触角が90度よりも大きくなり、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして用いた場合に、極めて優れた反射防止、アンチグレアおよび防汚性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、スポンジ状構造(sponge structure)断面を有してなる。この三次元ナノポアポリマーフィルムは、以下の工程によって得られる生成物である。
【0037】
基板に三次元ナノポアポリマー塗料を塗布し、該塗布膜に所定のエネルギーを与えることにより、基板の所定の塗布面にポリマー層を形成し、次に、第2の溶剤によりポリマー層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアポリマーフィルムを形成するものである。
【0038】
本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、反射防止および防汚性能に極めて優れるため、これを光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ装置の最外層に設ければ、グレアや反射光が映像に影響を与えるといった事態を回避することができる。
【0039】
そして、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムのより詳細な製造方法は、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程
からなる。
【0040】
上記製造方法からなる三次元ナノポアポリマーフィルムには、スポンジ状構造の断面が形成される。
【0041】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法は、重合誘起相分離(polymerization induced phase separation)の機構を利用したものであって、非相溶な2種のポリマーをブレンドすることで起こる相分離の機構を利用する公知技術とは全く異なっている。本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムを作製する過程において、テンプレート剤は、重合可能な化合物の重合反応中に、樹脂の分子量が急速に増大するのに伴って相分離を起こし、樹脂中に均一かつ粒子状に分散する。そして、溶剤を利用してこのテンプレート剤を選択的に溶出することにより、三次元ナノポアを有したポリマーフィルムが形成されるのである。さらに、本発明では、組成物中における樹脂モノマーの反応速度、重合可能な化合物とテンプレート剤の相溶性、重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比、および塗料におけるテンプレート剤の粘度などといったパラメータにさらなる調整を加えることを通し、三次元ナノポアのサイズ、空間分布、およびフィルム中のポアの体積分率を制御して、スポンジ状構造の断面を有するポリマーフィルムを得る、という点である。一方、重合誘起相分離の機構を利用する公知のフィルムは、重合反応速度や分離相の粘度などにさらなる調整を加えることなく形成されるので、相分離の過程が延長される上、異なる相間の斥力によって生じる分離現象がより強まって、波状のナノ分布の構造となり易い。
【0042】
以下、図面と対応させながら、いくつかの実施例および比較例をあげて、本発明の方法、特徴および長所を詳細に説明していくが、これによって本発明の範囲が制限されるようなことはなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決まる。
【0043】
上記方法で得られる本発明のスポンジ状構造断面を有する三次元ナノポアポリマーフィルムは、複数のナノポアが均一に分布してなるため、その反射率が2%以下であり、1.5%以下であることが好ましい。反射率が2%をこえると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0044】
また、透過率が93%以上である。透過率が93%未満であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0045】
ヘイズ値は、0.1〜35%である。また、ヘイズ値が前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0046】
水接触角が90度より大きいことが好ましい。水接触角が90度以下であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0047】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、上記特性を有するため、反射防止ないし防汚用のコーティングとして非常に適している。
【0048】
また、三次元ナノポアポリマーフィルムの膜厚は、50〜200nmであり、90〜112nmであることが好ましい。膜厚が前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0049】
さらに、ポアサイズが20〜80nmであり、17〜80nmであることが好ましい。ポアサイズが前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0050】
また、フィルム中のポア体積分率は、限定されるものではないが、ポア体積分率が低すぎると、反射率が大きくなる傾向があり、逆にポア体積分率が高すぎると、得られるフィルムの機械強度が低下する傾向がある。
【0051】
三次元ナノポアポリマー塗料は、第1の溶剤中に、
(成分1)平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、
(成分2)テンプレート剤5〜55重量%、および
(成分3)前記重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、1〜10重量%の開始剤、
が均一に分散しているものである。
【0052】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法は次のとおりである。まず、三次元ナノポアポリマー塗料を基板の所定の塗布面に塗布して、三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜を形成する。この三次元ナノポアポリマー塗料は、前記したものでよい。続いて、三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射などを行って所定のエネルギーを与えることにより、基板上の重合可能な樹脂をポリマー層にする。最後に、第2の溶剤を用い、ポリマー層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する。図2aは、本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの断面構造を説明する図であり、図2bは、ポリマーフィルム12の表面局部Bを拡大した図である。基板10上にナノポア14を有するスポンジ状構造のポリマーフィルム12が形成されている状態が示されている。
【0053】
本発明において、基板としては、透明基材からなる基板であることが好ましい。透明基材としては、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材などがあげられ、具体的には、光学素子ガラスなどがあげられる。
【0054】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法としては、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法などを用いることができる。
【0055】
加熱または光線照射の手段としては、特に限定されるものではなく、通常の重合時に用いられる手段であればよく、たとえば、紫外線露光装置等をあげることができる。
【0056】
本発明で用いる重合可能な化合物としては、平均反応性官能基の数が2.0より大きいものであれば特に限定されないが、平均反応性官能基の数が2.5より大きいことが好ましく、2.7よりも大きいことがより好ましい。平均反応性官能基の数が、2.0より大きいことによって、初めて重合反応の速度が加速してテンプレート剤が速やかにポリマーに被覆されて、ポリマーフィルム中に均一に分散することができるようになるのものである。
【0057】
このような重合可能な化合物としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどを形成するモノマーがあげられるが、これらの中でも、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマーが好ましく、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol tetraacrylate)誘導体、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Ethoxylated pentaerythritol tetraacrylate)誘導体、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol pentaacrylate)誘導体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol hexaacrylate)誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)誘導体、トリメチロールプロパントリメタクリレート(Trimethylolpropane trimethacrylate)誘導体、トリメチロールプロパンペンタエリスリトールトリアクリレート(Trimethylolpropane pentaerythritol triacrylate)誘導体などをあげることができるが、これらの中でも、官能基が比較的多く、反応速度が速い点から、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol tetraacrylate)誘導体が好ましい。
【0059】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、o−クレゾールノボラックエポキシ(o−Cresol Novolac Epoxy(CNE))、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ ジフェニルメタン(tetraglycidyl−4,4’−diamino diphenylmethan(TGDDM))などをあげることができ、イソシアネート基を有するモノマーとしては、通常ポリウレタンを形成する際に用いられるモノマーであれば好適に用いることができる。
【0060】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基1〜2個を有するアクリルモノマーを用いてもよい。
【0061】
反応性官能基1〜2個を有するアクリルモノマーとしては、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropyleneglycol diacrylate)誘導体、ネオペンチルグリコールジアクリレート(Neopentylglycol diacrylate)誘導体、メチルアクリレート(Methyl acrylate)誘導体、エチルアクリレート(Ethyl acrylate)誘導体、ブチルアクリレート(Butyl acrylate)誘導体、2−エチルヘキシルアクリレート(2−Ethyl hexyl acrylate)誘導体、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)誘導体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyl−ethyl acrylate)誘導体、2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(2−Hydroxyl−ethyl methylacrylate)誘導体、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−Hydroxy propylacrylate)誘導体、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(1,4−Butanediol dimethacrylate)誘導体、1,6−ヘキサンジオールジメチルアクリレート(1,6−Hexanediol dimethylacrylate)誘導体、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−Hexanediol diacrylate)誘導体、エチレングリコールジアクリレート(Ethyleneglycol diacrylate)誘導体などをあげることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明の三次元ナノポアポリマー塗料において、開始剤としては、例えば、光重合開始剤または熱重合開始剤などをあげることができる。重合開始剤としては、トリフェニルトリフラート、t−ブチル パーオキシベンゾエート(t−butyl peroxybenzoate)誘導体、t−ペンチル 1,2−ジパーオキシブチレート(t−pentyl 1,2−diperoxybutyrate)誘導体、t−ブチルパーオキシマレート(t−butyl peroxymaleate)、t−ペンチル イソパーオキシブチレート(t−pentyl iso−peroxybutyrate)誘導体、t−ペンチル パーオキシホルミレート(t−pentyl peroxyformylate)誘導体、t−ブチル パーオキシ2‐エチルヘキサノン(t−butyl peroxly−2−ethyl hexanone)誘導体、フェニルパーオキシド(Phenyl peroxide)誘導体などをあげることができる。これらの中でも、トリフェニルトリフラートが好ましい。
【0063】
また、テンプレート剤としては、非反応性の有機化合物、オリゴマー、重合体またはこれらの混合物などがあげられる。具体的には、ポリエチレングリコール(分子量200、400、800)、ビスフェノールA誘導体、ポリソルベート(Tween40、Tween60、Tween80)などがあげられる。これらの中でも、ネマチック性を示す液晶高分子であることが好ましい。
【0064】
また、上記以外にも、テンプレート剤として、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(N,N’−dicyclohexyl carbodiimide)誘導体、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide)誘導体、t−ブチル 1,3−ジパーオキシアセテート(t−butyl 1,3−diperoxyacetate)誘導体、アクリルアミド(Acrylamide)などがあげられる。
【0065】
本発明で用いる第1の溶剤としては、重合可能な化合物、テンプレート剤、開始剤を同時に均一に溶解させることのできる単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合溶剤であればよい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)などがあげられる。
【0066】
第2の溶剤は、テンプレート剤を充分に溶解させることはできるが、重合可能な化合物が重合した後にできる重合体を溶解させることはできない、単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合物であればよい。具体的には、ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあげられる。
【0067】
本発明においては、重合可能な化合物が重合反応している時にも、形成されるポリマーの膜中でテンプレート剤が均一に分散することができ、異相間の斥力によりテンプレート剤が凝集しないようにするため、塗料における化合物の粘度、および重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比などのパラメータにさらなる調整を加えて、三次元ナノポアの空間分布、およびフィルムにおけるポアの体積分率を制御している。こうすることによって、より確実に、形成されたナノポアポリマーフィルムにスポンジ状構造断面が形成されることとなる。
【0068】
したがって、本発明において、第1の溶剤に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、25℃における粘度が、0.5〜18000cpsの範囲に制御することが好ましく、50〜18000cpsの範囲に制御することがより好ましく、3000〜8000cpsの範囲に制御することがより好ましい。
【0069】
また、重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は、20:1〜1:1でありことが好ましく、10:1〜2:1であることがより好ましい。重合可能な化合物とテンプレート剤との重量比がこの範囲にあることで、樹脂中に適度なナノポアを存在させることができ、その均一に分布するナノポアに空気が充填されるため、有効屈折率(Neff)が大幅に低下されて1.45以下を達成することができる。
【0070】
本発明において、三次元ナノポアポリマー塗料は、必要に応じ、0.5〜50重量%の添加剤をさらに含んでいてもよい。この場合、添加剤は、平坦化剤(flattening agent)、平滑剤(leveling agent)、充填剤、接着促進剤、消泡剤またはこれらの組み合せなどである。平坦化剤としては、尿素、グリセリン、ポリピレングリコール、ソルビトール、アミノエタノールなどがあげられ、平滑剤としては、テルペン樹脂、ロジン樹脂および可塑剤として一般的に用いられているものなどがあげられ、接着促進剤としては、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(γ−Methacryloxypropyl trimethoxy silane)誘導体などがあげられ、充填剤、消泡剤としては、通常用いられているものであれば好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例1〜7によって本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムおよびその製造方法を説明するとともに、本発明がより明瞭に理解されるよう、本発明の実施例において用いる化合物の構造、名称および符号をあげる。
【0072】
<反射率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、反射率測定用の試料を作製した。
【0073】
5°の反射測定器を分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)内にセットすると共に、試料を入れて測定を行った。測定モードは、反射モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、反射スペクトルおよびデータを得た。
【0074】
<透過率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、透過率測定用の試料を作製した。
【0075】
分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)に試料をセットして測定を行った。測定モードは、透過モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、透過スペクトルおよびデータを得た。
【0076】
<膜厚>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0077】
<ポアサイズ>
BET法により測定した。
【0078】
<有効屈折率>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0079】
<粘度>
ブルックフィールド粘度計を用いて、測定温度25℃にて測定した。
【0080】
<ヘイズ値(H%)試験>
透過率計(Hazemter、MODEL TC−HIII)によりヘイズ値を測定した。
【0081】
実施例1
反応容器を用意し、この容器に、多官能性重合可能な化合物としてのペンタエリスリトールトリアクリレート8g(26.82mmol)を入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)10gで溶かして、ペンタエリスリトールトリアクリレートの溶液濃度を8重量%とした。続いて、テンプレート剤としてのネマチック液晶(メルク社製、E7)3.43gを加え、溶解するまで攪拌したのち、光開始剤としてのトリフェニルトリフラート0.24gを加えて、三次元ナノポアポリマー塗料(A)を得た。重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は7:3、三次元ナノポアポリマー塗料(A)中におけるペンタエリスリトールトリアクリレートの粘度は520cps/25℃とした。次いで、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行うことにより、この三次元ナノポアポリマー塗料(A)をガラス基板に塗布し、さらに、60℃のオーブンで3分間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素雰囲気下、紫外線露光装置を用いて露光することにより、ペンタエリスリトールトリアクリレートを窒素雰囲気下で重合反応させてポリマーフィルムを形成した。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをヘキサン中に浸漬してテンプレート剤を選択的に溶出し、ポアサイズ30nm、膜厚150nmの三次元ナノポアを有するポリマーフィルムを形成した。
【0082】
図3に示すのは、実施例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0083】
実施例2
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を5.6gに減らし、ウレタンアクリレート2.4gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を7/3としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ35nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0084】
図4に示すのは、実施例2により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0085】
実施例3
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を4gに減らし、ウレタンアクリレート4gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を1/1としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ55nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0086】
図5に示すのは、実施例3により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0087】
実施例4
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を2.4gに減らし、ウレタンアクリレート5.6gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を3/7としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ72nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0088】
図6に示すのは、実施例4により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0089】
比較例1
実施例1と同じ手法を用いたが、実施例1のペンタエリスリトールトリアクリレート(多官能アクリルモノマー)をウレタンアクリレート(二官能アクリルモノマー)に置き換えて作製した。
【0090】
図7に示すのは、比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。これより、ポアサイズ120nm以上であることがわかる。
【0091】
表1には、実施例1から4および比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムの二官能モノマーと多官能モノマーの割合が示してある。上述したように、図3から7は、実施例1から4および比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である(拡大率10万倍)。図7に示される比較例1では、重合樹脂を成すものとして二官能アクリルモノマーを使用しているだけなので、三次元ナノポアがはっきりと形成されていない。一方、実施例1では、重合樹脂を成すものとして三官能アクリルモノマーを使用したため、図3から明らかなように、三次元ナノポアポリマーフィルムのスポンジ状構造が鮮明に形成されている。つまり、本発明において、重合可能な化合物の平均反応性官能基数は、2.0よりも大きい必要がある。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例5
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から9:1に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法により、ポアサイズ15nm以下、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0094】
図8に示すのは、実施例5により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0095】
実施例6
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から8:2に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法によりポアサイズ40nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0096】
図9に示すのは、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で、実施例6により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを観察したSEM図である。
【0097】
比較例2
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から6:4に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法により三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0098】
図10に示すのは、比較例2により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で観察したSEM像である。これより、ポアサイズ120nm以上であることがわかる。
【0099】
表2には、実施例2、5、6および比較例2により作製されたポリマーフィルムの重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が示してある。また、上述したように、図8から10はそれぞれ、実施例2、5、6および比較例2によって作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像(拡大倍率10万倍)である。図10より明らかなように、比較例2のフィルムの重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は1.5であるため、形成されたポアは不ぞろいでサイズの差異が大きく、すでにナノメートルサイズでなくなっているものさえあった。一方、上記のごとくに本発明においては、重合可能な重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が2:1よりも大きいため、三次元ナノポアを有するポリマーフィルムが確実に形成された。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例7
反応容器を用意し、この容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート9.8g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート18.9g、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(Propoxylated(6) Trimethylolpropane Tri−acrylate)18.9g、ウレタンアクリレートオリゴマー18.9g、および接着促進剤であるγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.5gを入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)900gで溶解して、溶液濃度を10重量%とした。続いて、テンプレート剤としてのネマチック液晶30gを加え、溶解するまで攪拌してから、光開始剤としてのトリフェニルトリフラート3.5gを加えた。重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は7:3とした。また、このようにしてできた三次元ナノポアポリマー塗料(A)におけるプロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレートの粘度は125cps/25℃、ウレタンアクリレートオリゴマーの粘度は18000cps/25℃、総平均粘度は7300cps/25℃となった。次いで、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行うことによりこの三次元ナノポアポリマー塗料(A)をガラス基板に塗布し、さらに、60℃のオーブンで3秒間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素を流しながら紫外線露光装置で露光し、窒素雰囲気下で反応性化合物を重合反応させてポリマーフィルムを形成した。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをヘキサンに浸してテンプレート剤を選択的に溶出し、ポアサイズ30〜60nm、膜厚120nmの三次元ナノポアを有するポリマーフィルムを形成した。
【0102】
図11に示すのは、実施例7により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で観察したSEM像である(拡大倍率50万倍)。
【0103】
実施例7の手法により三次元ナノポアポリマーフィルムを光学ガラス上に形成して、その可視光領域(400〜700nm)における反射率(R%)と透過率(T%)を測ったところ、図12および13にそれぞれ示されるように、平均反射率は2%、平均透過率は93%であった。また、そのサンプルの接触角試験を行ったところ、水接触角は114°であった。このようなナノポアポリマーフィルムは、極めて優れた防汚力を備える。
【0104】
本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、その複数のナノポアがフィルム中に均一に分布してフィルムの断面がスポンジ状構造となるため、ポリマーフィルム内の空気の量が大幅に増加し、ひいてはフィルムの有効屈折率(Neff)が1.4以下まで低減される。図14には、実施例7によって作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのAFM像が示してあり、その断面分析(section analysis)を見ればわかるように、このポリマーフィルムの最大表面粗さ(Rmax)は15.06nmと、全膜厚(120nm)の僅か1/8ほどしかない。このように、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムはスポンジ状構造を成しており、波状断面を呈する公知の反射防止フィルム(Rmaxと膜厚さの比が約1:1)とは異なるものである。また、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは表面粗さが抑えられているため、波状断面を有する公知の反射防止フィルムに比して防汚力により優れている。
【0105】
以上、好適な実施例により本発明を説明したが、これによって本発明が限定されることはなく、当業者であれば、本発明の思想および範囲を逸脱しない限りにおいて、各種変更および修飾を加えることができる。すなわち、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義したものを基に決定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】公知技術による屈折率が傾斜する(gradient)反射防止光学フィルムの断面図である。
【図2】aは、好ましい形態による、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムの断面構造説明図、bは、aにおける部分Bを拡大した局部拡大図である。
【図3】本発明実施例1による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図4】本発明実施例2による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図5】本発明実施例3による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図6】本発明実施例4による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図7】比較例1による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図8】本発明実施例5による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図9】本発明実施例6による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図10】比較例2による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図11】本発明実施7による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図12】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムの反射率と波長との関係を示す図である。
【図13】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムの透過率と波長との関係を示す図である。
【図14】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムのAFM像である。
【符号の説明】
【0107】
10 基板
12 三次元ナノポアポリマーフィルム
14 ナノポア
B 表面の局部
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元ナノポアポリマーフィルムおよびその製造方法に関し、特に、スポンジ状構造(sponge structure)の断面を有し、反射防止および防汚性能に優れた三次元ナノポアポリマーフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ装置の製造工程では、グレアや反射光の発生を回避する目的で、液晶ディスプレイの透明基板などのディスプレイ装置の最外層に反射防止フィルムを設けている。
【0003】
単層構造の反射防止フィルムは、加工性に優れると共に、高歩留り、高生産性、および低設備コストで製造できるというメリットがあるため、反射防止技術における研究開発の主流となっている。ところが、反射防止用の複合光学フィルムを製造するのに従来より用いられている、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムなどの含フッ素無機材料は、大量のフッ素原子を含んでおり、化合物自身に凝集力(cohesion)が備わっていないため、形成される単層構造の反射防止光学フィルムの耐摩耗性が使用可能な水準まで達せず、硬い被覆層(hard coat layer)をもう一層加えなければならない。さらに、この従来の反射防止光学フィルムは、特定の波長領域(520〜570nm)において高い反射防止能力を備えるのみであって、屈折率の異なる材料から構成される多層構造としない限り、可視光波長領域(400〜780nm)での反射防止効果は得られず、かつ、含フッ素無機材料を含む組成配合では、有効屈折率(Neff)を1.40以下にまで低下させることはできない。
【0004】
これに関し、単層構造の反射防止光学フィルムの有効屈折率(Neff)を効果的に低減させてディスプレイ装置全体の反射率を抑えるため、屈折率が傾斜的に変化する(gradient)反射防止光学フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この公知の反射防止光学フィルムは、非相溶である2種のポリマーを共通溶媒に溶かして溶液を製造してから、この溶液を基板に塗布し、最後に、このうちの1種のポリマーを除去する、という方法により作製される。溶液を基板に塗布する際、非相溶である2種のポリマーは相分離するため、これら非相溶である2種のポリマーが横方向に入り組んでなる(laterally alternating)フィルムが形成される。よって、溶剤によりこのうちの1種のポリマーを除去した後残るもう一方のポリマーは、深さの異なる垂直な孔が複数備わったフィルムを形成することとなる。図1は、この反射防止フィルムの断面構造を説明する図である。上記方法により形成されたフィルムは、深さが異なる開放状の垂直な孔を複数有しているため、その屈折率が傾斜的に変化することとなって、反射率が反射防止可能な程度まで低減される。
【0005】
しかし、2種の非相溶のポリマーをブレンドすることにより生じる相分離の機構に起因して、反射防止フィルムの最大表面粗さ(Rmax)がその膜厚と等しいものとなってしまい、その結果、フィルムの機械強度と防汚性能が不足することとなる。
【0006】
したがって、屈折率が低く、かつ、防汚性能を有する反射防止フィルムおよびその製造方法を開発することは、ディスプレイ技術上急務である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6605229号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述に鑑みて、本発明の目的は、スポンジ状構造の断面を有してなり、その均一に分布するナノポアに空気が充填されることにより有効屈折率(Neff)が1.45以下まで大幅に低下される三次元ナノポアポリマーフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、低屈折率の三次元ナノポアポリマーフィルムを得るべく、三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明のもう1つの目的は、反射防止(anti−reflection coatings)、アンチグレア(anti−glare)または防汚(antifouling)の性能を備え、光学デバイスまたはディスプレイ装置に適用される反射防止および防汚性能を有する光学ポリマーフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法に関する。
【0012】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層であることが好ましい。
【0013】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とすることが好ましい。
【0014】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーであることが好ましい。
【0015】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含むことが好ましい。
【0016】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整することが好ましい。
【0017】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1であることが好ましい。
【0018】
三次元ナノポアポリマーフィルムのポアサイズが20〜80nmであることが好ましい。
【0019】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含むことが好ましい。
【0020】
基板が透明基材からなる基板であることが好ましい。
【0021】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材であることが好ましい。
【0022】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法が、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムであって、
その膜厚が50〜200nmであり、かつ、そのポアサイズが20〜80nmである三次元ナノポアポリマーフィルムに関する。
【0024】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層であることが好ましい。
【0025】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことが好ましい。
【0026】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーであることが好ましい。
【0027】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含むことが好ましい。
【0028】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整することが好ましい。
【0029】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1であることが好ましい。
【0030】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含むことが好ましい。
【0031】
基板が透明基材からなる基板であることが好ましい。
【0032】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材であることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明は、(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した反射防止光学ポリマーフィルムであって、
反射率が2%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が0.1〜35%である反射防止光学ポリマーフィルムに関する。
【0034】
水接触角が90°より大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、複数のナノポアがフィルム中に均一に分布してフィルムの断面がスポンジ状構造となるため、ポリマーフィルム内の空気の量が大幅に増加して、フィルムの有効屈折率(Neff)が1.45以下まで低減される。したがって、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、反射率2%以下、透過率93%以上、ヘイズ値0.1〜35%を達成すると共に、その水接触角が90度よりも大きくなり、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして用いた場合に、極めて優れた反射防止、アンチグレアおよび防汚性能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、スポンジ状構造(sponge structure)断面を有してなる。この三次元ナノポアポリマーフィルムは、以下の工程によって得られる生成物である。
【0037】
基板に三次元ナノポアポリマー塗料を塗布し、該塗布膜に所定のエネルギーを与えることにより、基板の所定の塗布面にポリマー層を形成し、次に、第2の溶剤によりポリマー層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアポリマーフィルムを形成するものである。
【0038】
本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、反射防止および防汚性能に極めて優れるため、これを光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ装置の最外層に設ければ、グレアや反射光が映像に影響を与えるといった事態を回避することができる。
【0039】
そして、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムのより詳細な製造方法は、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程
からなる。
【0040】
上記製造方法からなる三次元ナノポアポリマーフィルムには、スポンジ状構造の断面が形成される。
【0041】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法は、重合誘起相分離(polymerization induced phase separation)の機構を利用したものであって、非相溶な2種のポリマーをブレンドすることで起こる相分離の機構を利用する公知技術とは全く異なっている。本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムを作製する過程において、テンプレート剤は、重合可能な化合物の重合反応中に、樹脂の分子量が急速に増大するのに伴って相分離を起こし、樹脂中に均一かつ粒子状に分散する。そして、溶剤を利用してこのテンプレート剤を選択的に溶出することにより、三次元ナノポアを有したポリマーフィルムが形成されるのである。さらに、本発明では、組成物中における樹脂モノマーの反応速度、重合可能な化合物とテンプレート剤の相溶性、重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比、および塗料におけるテンプレート剤の粘度などといったパラメータにさらなる調整を加えることを通し、三次元ナノポアのサイズ、空間分布、およびフィルム中のポアの体積分率を制御して、スポンジ状構造の断面を有するポリマーフィルムを得る、という点である。一方、重合誘起相分離の機構を利用する公知のフィルムは、重合反応速度や分離相の粘度などにさらなる調整を加えることなく形成されるので、相分離の過程が延長される上、異なる相間の斥力によって生じる分離現象がより強まって、波状のナノ分布の構造となり易い。
【0042】
以下、図面と対応させながら、いくつかの実施例および比較例をあげて、本発明の方法、特徴および長所を詳細に説明していくが、これによって本発明の範囲が制限されるようなことはなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決まる。
【0043】
上記方法で得られる本発明のスポンジ状構造断面を有する三次元ナノポアポリマーフィルムは、複数のナノポアが均一に分布してなるため、その反射率が2%以下であり、1.5%以下であることが好ましい。反射率が2%をこえると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0044】
また、透過率が93%以上である。透過率が93%未満であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0045】
ヘイズ値は、0.1〜35%である。また、ヘイズ値が前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0046】
水接触角が90度より大きいことが好ましい。水接触角が90度以下であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0047】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムは、上記特性を有するため、反射防止ないし防汚用のコーティングとして非常に適している。
【0048】
また、三次元ナノポアポリマーフィルムの膜厚は、50〜200nmであり、90〜112nmであることが好ましい。膜厚が前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0049】
さらに、ポアサイズが20〜80nmであり、17〜80nmであることが好ましい。ポアサイズが前記範囲外であると、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして好適に用いることができない傾向がある。
【0050】
また、フィルム中のポア体積分率は、限定されるものではないが、ポア体積分率が低すぎると、反射率が大きくなる傾向があり、逆にポア体積分率が高すぎると、得られるフィルムの機械強度が低下する傾向がある。
【0051】
三次元ナノポアポリマー塗料は、第1の溶剤中に、
(成分1)平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、
(成分2)テンプレート剤5〜55重量%、および
(成分3)前記重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、1〜10重量%の開始剤、
が均一に分散しているものである。
【0052】
本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法は次のとおりである。まず、三次元ナノポアポリマー塗料を基板の所定の塗布面に塗布して、三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜を形成する。この三次元ナノポアポリマー塗料は、前記したものでよい。続いて、三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射などを行って所定のエネルギーを与えることにより、基板上の重合可能な樹脂をポリマー層にする。最後に、第2の溶剤を用い、ポリマー層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する。図2aは、本発明の三次元ナノポアポリマーフィルムの断面構造を説明する図であり、図2bは、ポリマーフィルム12の表面局部Bを拡大した図である。基板10上にナノポア14を有するスポンジ状構造のポリマーフィルム12が形成されている状態が示されている。
【0053】
本発明において、基板としては、透明基材からなる基板であることが好ましい。透明基材としては、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材などがあげられ、具体的には、光学素子ガラスなどがあげられる。
【0054】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法としては、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法などを用いることができる。
【0055】
加熱または光線照射の手段としては、特に限定されるものではなく、通常の重合時に用いられる手段であればよく、たとえば、紫外線露光装置等をあげることができる。
【0056】
本発明で用いる重合可能な化合物としては、平均反応性官能基の数が2.0より大きいものであれば特に限定されないが、平均反応性官能基の数が2.5より大きいことが好ましく、2.7よりも大きいことがより好ましい。平均反応性官能基の数が、2.0より大きいことによって、初めて重合反応の速度が加速してテンプレート剤が速やかにポリマーに被覆されて、ポリマーフィルム中に均一に分散することができるようになるのものである。
【0057】
このような重合可能な化合物としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどを形成するモノマーがあげられるが、これらの中でも、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマーが好ましく、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol tetraacrylate)誘導体、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Ethoxylated pentaerythritol tetraacrylate)誘導体、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol pentaacrylate)誘導体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol hexaacrylate)誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate)誘導体、トリメチロールプロパントリメタクリレート(Trimethylolpropane trimethacrylate)誘導体、トリメチロールプロパンペンタエリスリトールトリアクリレート(Trimethylolpropane pentaerythritol triacrylate)誘導体などをあげることができるが、これらの中でも、官能基が比較的多く、反応速度が速い点から、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol tetraacrylate)誘導体が好ましい。
【0059】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、o−クレゾールノボラックエポキシ(o−Cresol Novolac Epoxy(CNE))、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノ ジフェニルメタン(tetraglycidyl−4,4’−diamino diphenylmethan(TGDDM))などをあげることができ、イソシアネート基を有するモノマーとしては、通常ポリウレタンを形成する際に用いられるモノマーであれば好適に用いることができる。
【0060】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基1〜2個を有するアクリルモノマーを用いてもよい。
【0061】
反応性官能基1〜2個を有するアクリルモノマーとしては、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropyleneglycol diacrylate)誘導体、ネオペンチルグリコールジアクリレート(Neopentylglycol diacrylate)誘導体、メチルアクリレート(Methyl acrylate)誘導体、エチルアクリレート(Ethyl acrylate)誘導体、ブチルアクリレート(Butyl acrylate)誘導体、2−エチルヘキシルアクリレート(2−Ethyl hexyl acrylate)誘導体、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)誘導体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyl−ethyl acrylate)誘導体、2−ヒドロキシエチルメチルアクリレート(2−Hydroxyl−ethyl methylacrylate)誘導体、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−Hydroxy propylacrylate)誘導体、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(1,4−Butanediol dimethacrylate)誘導体、1,6−ヘキサンジオールジメチルアクリレート(1,6−Hexanediol dimethylacrylate)誘導体、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−Hexanediol diacrylate)誘導体、エチレングリコールジアクリレート(Ethyleneglycol diacrylate)誘導体などをあげることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明の三次元ナノポアポリマー塗料において、開始剤としては、例えば、光重合開始剤または熱重合開始剤などをあげることができる。重合開始剤としては、トリフェニルトリフラート、t−ブチル パーオキシベンゾエート(t−butyl peroxybenzoate)誘導体、t−ペンチル 1,2−ジパーオキシブチレート(t−pentyl 1,2−diperoxybutyrate)誘導体、t−ブチルパーオキシマレート(t−butyl peroxymaleate)、t−ペンチル イソパーオキシブチレート(t−pentyl iso−peroxybutyrate)誘導体、t−ペンチル パーオキシホルミレート(t−pentyl peroxyformylate)誘導体、t−ブチル パーオキシ2‐エチルヘキサノン(t−butyl peroxly−2−ethyl hexanone)誘導体、フェニルパーオキシド(Phenyl peroxide)誘導体などをあげることができる。これらの中でも、トリフェニルトリフラートが好ましい。
【0063】
また、テンプレート剤としては、非反応性の有機化合物、オリゴマー、重合体またはこれらの混合物などがあげられる。具体的には、ポリエチレングリコール(分子量200、400、800)、ビスフェノールA誘導体、ポリソルベート(Tween40、Tween60、Tween80)などがあげられる。これらの中でも、ネマチック性を示す液晶高分子であることが好ましい。
【0064】
また、上記以外にも、テンプレート剤として、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(N,N’−dicyclohexyl carbodiimide)誘導体、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide)誘導体、t−ブチル 1,3−ジパーオキシアセテート(t−butyl 1,3−diperoxyacetate)誘導体、アクリルアミド(Acrylamide)などがあげられる。
【0065】
本発明で用いる第1の溶剤としては、重合可能な化合物、テンプレート剤、開始剤を同時に均一に溶解させることのできる単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合溶剤であればよい。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)などがあげられる。
【0066】
第2の溶剤は、テンプレート剤を充分に溶解させることはできるが、重合可能な化合物が重合した後にできる重合体を溶解させることはできない、単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合物であればよい。具体的には、ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあげられる。
【0067】
本発明においては、重合可能な化合物が重合反応している時にも、形成されるポリマーの膜中でテンプレート剤が均一に分散することができ、異相間の斥力によりテンプレート剤が凝集しないようにするため、塗料における化合物の粘度、および重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比などのパラメータにさらなる調整を加えて、三次元ナノポアの空間分布、およびフィルムにおけるポアの体積分率を制御している。こうすることによって、より確実に、形成されたナノポアポリマーフィルムにスポンジ状構造断面が形成されることとなる。
【0068】
したがって、本発明において、第1の溶剤に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、25℃における粘度が、0.5〜18000cpsの範囲に制御することが好ましく、50〜18000cpsの範囲に制御することがより好ましく、3000〜8000cpsの範囲に制御することがより好ましい。
【0069】
また、重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は、20:1〜1:1でありことが好ましく、10:1〜2:1であることがより好ましい。重合可能な化合物とテンプレート剤との重量比がこの範囲にあることで、樹脂中に適度なナノポアを存在させることができ、その均一に分布するナノポアに空気が充填されるため、有効屈折率(Neff)が大幅に低下されて1.45以下を達成することができる。
【0070】
本発明において、三次元ナノポアポリマー塗料は、必要に応じ、0.5〜50重量%の添加剤をさらに含んでいてもよい。この場合、添加剤は、平坦化剤(flattening agent)、平滑剤(leveling agent)、充填剤、接着促進剤、消泡剤またはこれらの組み合せなどである。平坦化剤としては、尿素、グリセリン、ポリピレングリコール、ソルビトール、アミノエタノールなどがあげられ、平滑剤としては、テルペン樹脂、ロジン樹脂および可塑剤として一般的に用いられているものなどがあげられ、接着促進剤としては、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(γ−Methacryloxypropyl trimethoxy silane)誘導体などがあげられ、充填剤、消泡剤としては、通常用いられているものであれば好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例1〜7によって本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムおよびその製造方法を説明するとともに、本発明がより明瞭に理解されるよう、本発明の実施例において用いる化合物の構造、名称および符号をあげる。
【0072】
<反射率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、反射率測定用の試料を作製した。
【0073】
5°の反射測定器を分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)内にセットすると共に、試料を入れて測定を行った。測定モードは、反射モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、反射スペクトルおよびデータを得た。
【0074】
<透過率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、透過率測定用の試料を作製した。
【0075】
分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)に試料をセットして測定を行った。測定モードは、透過モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、透過スペクトルおよびデータを得た。
【0076】
<膜厚>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0077】
<ポアサイズ>
BET法により測定した。
【0078】
<有効屈折率>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0079】
<粘度>
ブルックフィールド粘度計を用いて、測定温度25℃にて測定した。
【0080】
<ヘイズ値(H%)試験>
透過率計(Hazemter、MODEL TC−HIII)によりヘイズ値を測定した。
【0081】
実施例1
反応容器を用意し、この容器に、多官能性重合可能な化合物としてのペンタエリスリトールトリアクリレート8g(26.82mmol)を入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)10gで溶かして、ペンタエリスリトールトリアクリレートの溶液濃度を8重量%とした。続いて、テンプレート剤としてのネマチック液晶(メルク社製、E7)3.43gを加え、溶解するまで攪拌したのち、光開始剤としてのトリフェニルトリフラート0.24gを加えて、三次元ナノポアポリマー塗料(A)を得た。重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は7:3、三次元ナノポアポリマー塗料(A)中におけるペンタエリスリトールトリアクリレートの粘度は520cps/25℃とした。次いで、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行うことにより、この三次元ナノポアポリマー塗料(A)をガラス基板に塗布し、さらに、60℃のオーブンで3分間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素雰囲気下、紫外線露光装置を用いて露光することにより、ペンタエリスリトールトリアクリレートを窒素雰囲気下で重合反応させてポリマーフィルムを形成した。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをヘキサン中に浸漬してテンプレート剤を選択的に溶出し、ポアサイズ30nm、膜厚150nmの三次元ナノポアを有するポリマーフィルムを形成した。
【0082】
図3に示すのは、実施例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0083】
実施例2
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を5.6gに減らし、ウレタンアクリレート2.4gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を7/3としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ35nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0084】
図4に示すのは、実施例2により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0085】
実施例3
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を4gに減らし、ウレタンアクリレート4gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を1/1としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ55nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0086】
図5に示すのは、実施例3により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0087】
実施例4
実施例1で用いたペンタエリスリトールトリアクリレートの量を2.4gに減らし、ウレタンアクリレート5.6gを新たに加えて、多官能アクリルモノマーと二官能アクリルモノマーの重量比を3/7としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、ポアサイズ72nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0088】
図6に示すのは、実施例4により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0089】
比較例1
実施例1と同じ手法を用いたが、実施例1のペンタエリスリトールトリアクリレート(多官能アクリルモノマー)をウレタンアクリレート(二官能アクリルモノマー)に置き換えて作製した。
【0090】
図7に示すのは、比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。これより、ポアサイズ120nm以上であることがわかる。
【0091】
表1には、実施例1から4および比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムの二官能モノマーと多官能モノマーの割合が示してある。上述したように、図3から7は、実施例1から4および比較例1により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である(拡大率10万倍)。図7に示される比較例1では、重合樹脂を成すものとして二官能アクリルモノマーを使用しているだけなので、三次元ナノポアがはっきりと形成されていない。一方、実施例1では、重合樹脂を成すものとして三官能アクリルモノマーを使用したため、図3から明らかなように、三次元ナノポアポリマーフィルムのスポンジ状構造が鮮明に形成されている。つまり、本発明において、重合可能な化合物の平均反応性官能基数は、2.0よりも大きい必要がある。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例5
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から9:1に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法により、ポアサイズ15nm以下、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0094】
図8に示すのは、実施例5により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S‐4200)で観察したSEM像である。
【0095】
実施例6
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から8:2に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法によりポアサイズ40nm、膜厚150nmの三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0096】
図9に示すのは、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で、実施例6により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを観察したSEM図である。
【0097】
比較例2
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比を7:3から6:4に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法により三次元ナノポアポリマーフィルムを作製した。
【0098】
図10に示すのは、比較例2により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で観察したSEM像である。これより、ポアサイズ120nm以上であることがわかる。
【0099】
表2には、実施例2、5、6および比較例2により作製されたポリマーフィルムの重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が示してある。また、上述したように、図8から10はそれぞれ、実施例2、5、6および比較例2によって作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像(拡大倍率10万倍)である。図10より明らかなように、比較例2のフィルムの重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は1.5であるため、形成されたポアは不ぞろいでサイズの差異が大きく、すでにナノメートルサイズでなくなっているものさえあった。一方、上記のごとくに本発明においては、重合可能な重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が2:1よりも大きいため、三次元ナノポアを有するポリマーフィルムが確実に形成された。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例7
反応容器を用意し、この容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート9.8g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート18.9g、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(Propoxylated(6) Trimethylolpropane Tri−acrylate)18.9g、ウレタンアクリレートオリゴマー18.9g、および接着促進剤であるγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.5gを入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)900gで溶解して、溶液濃度を10重量%とした。続いて、テンプレート剤としてのネマチック液晶30gを加え、溶解するまで攪拌してから、光開始剤としてのトリフェニルトリフラート3.5gを加えた。重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比は7:3とした。また、このようにしてできた三次元ナノポアポリマー塗料(A)におけるプロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレートの粘度は125cps/25℃、ウレタンアクリレートオリゴマーの粘度は18000cps/25℃、総平均粘度は7300cps/25℃となった。次いで、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行うことによりこの三次元ナノポアポリマー塗料(A)をガラス基板に塗布し、さらに、60℃のオーブンで3秒間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素を流しながら紫外線露光装置で露光し、窒素雰囲気下で反応性化合物を重合反応させてポリマーフィルムを形成した。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをヘキサンに浸してテンプレート剤を選択的に溶出し、ポアサイズ30〜60nm、膜厚120nmの三次元ナノポアを有するポリマーフィルムを形成した。
【0102】
図11に示すのは、実施例7により作製された三次元ナノポアポリマーフィルムを走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製、S−4200)で観察したSEM像である(拡大倍率50万倍)。
【0103】
実施例7の手法により三次元ナノポアポリマーフィルムを光学ガラス上に形成して、その可視光領域(400〜700nm)における反射率(R%)と透過率(T%)を測ったところ、図12および13にそれぞれ示されるように、平均反射率は2%、平均透過率は93%であった。また、そのサンプルの接触角試験を行ったところ、水接触角は114°であった。このようなナノポアポリマーフィルムは、極めて優れた防汚力を備える。
【0104】
本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは、その複数のナノポアがフィルム中に均一に分布してフィルムの断面がスポンジ状構造となるため、ポリマーフィルム内の空気の量が大幅に増加し、ひいてはフィルムの有効屈折率(Neff)が1.4以下まで低減される。図14には、実施例7によって作製された三次元ナノポアポリマーフィルムのAFM像が示してあり、その断面分析(section analysis)を見ればわかるように、このポリマーフィルムの最大表面粗さ(Rmax)は15.06nmと、全膜厚(120nm)の僅か1/8ほどしかない。このように、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムはスポンジ状構造を成しており、波状断面を呈する公知の反射防止フィルム(Rmaxと膜厚さの比が約1:1)とは異なるものである。また、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムは表面粗さが抑えられているため、波状断面を有する公知の反射防止フィルムに比して防汚力により優れている。
【0105】
以上、好適な実施例により本発明を説明したが、これによって本発明が限定されることはなく、当業者であれば、本発明の思想および範囲を逸脱しない限りにおいて、各種変更および修飾を加えることができる。すなわち、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義したものを基に決定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】公知技術による屈折率が傾斜する(gradient)反射防止光学フィルムの断面図である。
【図2】aは、好ましい形態による、本発明にかかわる三次元ナノポアポリマーフィルムの断面構造説明図、bは、aにおける部分Bを拡大した局部拡大図である。
【図3】本発明実施例1による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図4】本発明実施例2による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図5】本発明実施例3による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図6】本発明実施例4による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図7】比較例1による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図8】本発明実施例5による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図9】本発明実施例6による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図10】比較例2による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図11】本発明実施7による三次元ナノポアポリマーフィルムのSEM像である。
【図12】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムの反射率と波長との関係を示す図である。
【図13】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムの透過率と波長との関係を示す図である。
【図14】本発明実施例7による三次元ナノポアポリマーフィルムのAFM像である。
【符号の説明】
【0107】
10 基板
12 三次元ナノポアポリマーフィルム
14 ナノポア
B 表面の局部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法。
【請求項2】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項3】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項4】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーである請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項5】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含む請求項4記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項6】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整する請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項7】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項8】
三次元ナノポアポリマーフィルムのポアサイズが20〜80nmである請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含む請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項10】
基板が透明基材からなる基板である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項11】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材である請求項10記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法が、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項13】
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムであって、
その膜厚が50〜200nmであり、かつ、そのポアサイズが20〜80nmである三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項14】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項15】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とする請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項16】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーである請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項17】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含む請求項16記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項18】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整する請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項19】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項20】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含む請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項21】
基板が透明基材からなる基板である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項22】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材である請求項21記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項23】
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した反射防止光学ポリマーフィルムであって、
反射率が2%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が0.1〜35%である反射防止光学ポリマーフィルム。
【請求項24】
水接触角が90°より大きい請求項23記載の反射防止光学ポリマーフィルム。
【請求項1】
三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法であって、
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法。
【請求項2】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項3】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項4】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーである請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項5】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含む請求項4記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項6】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整する請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項7】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項8】
三次元ナノポアポリマーフィルムのポアサイズが20〜80nmである請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含む請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項10】
基板が透明基材からなる基板である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項11】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材である請求項10記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項12】
三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する方法が、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法である請求項1記載の三次元ナノポアポリマーフィルムの製造方法。
【請求項13】
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムであって、
その膜厚が50〜200nmであり、かつ、そのポアサイズが20〜80nmである三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項14】
ポリマー層が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂および/またはポリウレタンからなる層である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項15】
重合可能な化合物の平均反応性官能基数が、2.5よりも大きいことを特徴とする請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項16】
重合可能な化合物が、反応性官能基を3〜9個有するアクリルモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはイソシアネート基を有するモノマーである請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項17】
さらに、重合可能な化合物として、反応性官能基を1〜2個有するアクリルモノマーを含む請求項16記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項18】
第1の溶剤中に重合可能な化合物を溶解させた溶液の、溶液の25℃における粘度を、0.5〜18000cpsに調整する請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項19】
重合可能な化合物とテンプレート剤の重量比が、20:1〜2:1である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項20】
さらに、重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、平坦化剤、平滑剤、接着促進剤、充填剤および消泡剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤を0.5〜50重量%含む請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項21】
基板が透明基材からなる基板である請求項13記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項22】
透明基材が、ガラス、熱硬化性基材または熱可塑性基材である請求項21記載の三次元ナノポアポリマーフィルム。
【請求項23】
(a)第1の溶剤中に、平均反応性官能基の数が2.0よりも大きい、重合可能な化合物45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および重合可能な化合物およびテンプレート剤の合計量に対して1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポアポリマー塗料を調製する工程、
(b)三次元ナノポアポリマー塗料を基板に塗布する工程、
(c)三次元ナノポアポリマー塗料からなる膜に、加熱または光線照射を行って、前記基板の所定の塗布面にポリマー層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記ポリマー層から前記テンプレート剤を溶出して、スポンジ状構造の断面を有した三次元ナノポアポリマーフィルムを形成する工程、
からなる製造方法により得られるスポンジ状構造の断面を有した反射防止光学ポリマーフィルムであって、
反射率が2%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が0.1〜35%である反射防止光学ポリマーフィルム。
【請求項24】
水接触角が90°より大きい請求項23記載の反射防止光学ポリマーフィルム。
【図1】
【図2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−69207(P2006−69207A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240016(P2005−240016)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【Fターム(参考)】
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