説明

反射防止フィルム及び反射防止フィルムを有する偏光板並びに画像表示装置

【課題】使用するレベリング剤の種類、添加量及び塗液の固形分濃度を調整することにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラ及び白化の発生を抑えた反射防止フィルム及び反射防止フィルムを用いた偏光板並びに画像表示装置を提供すること。
【解決手段】基材と、基材上に形成された電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、有機ケイ素系撥水剤及びシリコーン系レべリング剤を含有した低屈折率層と、を有することを特徴とする反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム及び反射防止フィルムを有する偏光板並びに画像表示装置に関する。特に、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイの表示画面に適用される反射防止フィルム及び反射防止フィルムを有する偏光板並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須である。
【0003】
一般に反射防止機能は、基材上に金属酸化物等の透明薄膜からなる多層膜を形成することで得られる。これらの多層膜は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法により形成することが可能だが、真空蒸着法による形成方法は生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、多層膜の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能であるウェットコーティング法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0004】
ウェットコーティング法による生産方式において、生産性を向上させる為にはライン速度を上げることが必須であるが、ライン速度を上げると塗工後の搬送工程及び乾燥工程において膜厚が不均一になり、それによる色味の発生や色ムラの発生が問題であった。
【0005】
この色ムラを低減させる為にレベリング剤を用いて膜厚を均一にする手法を使用してきたが、使用するレベリング剤と撥水剤、潤滑剤、低屈折率微粒子との相性が問題となり、特性である耐擦傷性、防汚性、光学特性の性能を低下してしまうことがあった。
【特許文献1】特開2008−191544号公報
【特許文献2】特開2007−102206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使用するレベリング剤の種類、添加量及び塗液の固形分濃度を調整することにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラ及び白化の発生を抑えた反射防止フィルム及び反射防止フィルムを有する偏光板並びに画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、基材と、基材上に形成された電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、有機ケイ素系撥水剤及びシリコーン系レべリング剤を含有した低屈折率層と、を有することを特徴とする反射防止フィルムとしたものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、低屈折率層における電離放射線硬化型樹脂とシリコーン系レべリング剤のモル比(電離放射線硬化型樹脂/シリコーン系レべリング剤)が0.09以上0.25以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、低屈折率層における電離放射線硬化型樹脂と有機ケイ素系撥水剤のモル比(電離放射線硬化型樹脂/有機ケイ素系撥水剤)が0.50以上1.00以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、低屈折率層の形成用塗液の固形分濃度が4.00%以上8.00%以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、低屈折率層が、粒径0.5nm以上200nm以下の低屈折率微粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、L色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0013】
本発明の請求項7に係る発明は、平均視感反射率(Y)がY≦1.3%であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の反射防止フィルムとしたものである。
【0014】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板としたものである。
【0015】
本発明の請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする画像表示装置としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用するレベリング剤の種類、添加量及び塗液の固形分濃度を調整することにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラ及び白化の発生を抑えた反射防止フィルム及び反射防止フィルムを有する偏光板及び画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、基材11と、基材11上に低屈折率層12とを備えている。低屈折率層12は、電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、有機ケイ素系撥水剤、シリコーン系レべリング剤を含有している。
【0019】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12は、電離放射線硬化型樹脂、有機ケイ素系撥水剤を含有することにより膜の摩擦強度が増加し、耐擦傷性向上することができ、シリコーンレベリング剤を用いることにより色ムラ低減することができる。
【0020】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の基材11には、有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、画像表示装置等の光学部材に通常使用される基材11が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらに耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより、機能を付加させたものも使用できる。また、基材11は、上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでなく、複数の層を積層されたものであってもよい。
【0021】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12は、低屈折率微粒子と適宜選択した電離放射線硬化型材料もしくは紫外線硬化型材料と光重合開始剤を主成分とする形態が好ましい。
【0022】
低屈折率層12に含有される電離放射線硬化型の材料として好ましくは、アクリル系材料を用いることである。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0023】
なお、本発明の実施の形態ににおいて「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0024】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0027】
また、多官能ウレタンアクリレートとしては、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0028】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12に含有される紫外線硬化型樹脂組成物としては、この中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12に含有される低屈折率微粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFもしくはAlF(以上、いずれもn=1.4)、NaAlF(氷晶石、n=1.33)などを使用することができ、好ましくは、シリカゾル微粒子を使用する。シリカゾル微粒子の表面をアルミニウムアルコキシドなどアルミニウム有機物で修飾することが好ましい。
【0030】
低屈折率微粒子としては、平均粒径が0.5nm以上200nm以下の範囲内であるのが好ましい。この範囲に低屈折率微粒子の平均粒径があることにより、屈折率を下げることと透過性を損なわないことを両立することができる。低屈折率微粒子の平均粒径が200nmを超えると、低屈折率層12の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、透明性が低下する。また、低屈折率微粒子の平均粒径が0.5nm未満であると、微粒子が凝集しやすくなってしまう。
【0031】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12に含有される低屈折率微粒子の添加量は、低屈折率層12中、10質量%〜80質量%が好ましい。また、低屈折率層12の屈折率は、1.30〜1.40が好ましい。
【0032】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12に含有されるシリコーン系レべリング剤としては、フッ素を含有せず、且つ、(メタ)アクリル基を有するシロキサン化合物を用いることができる。具体的には、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有する水酸基含有ポリジメチルシロキサンを用いることができる
【0033】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12に含有される有機ケイ素系撥水剤としては、フッ素を含有せず、(メタ)アクリル基を持たない有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物、シランシロキサン化合物、ポリエステル基を含有するシラン化合物、ポリエーテル基を有するシラン化合物、シロキサン化合物を用いることができる。
【0034】
低屈折率層12に含有される電離放射線硬化型樹脂とシリコーン系レべリング剤とのモル比が、電離放射線硬化型樹脂/シリコーン系レべリング剤として0.09以上0.25以下の範囲にあることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂とシリコーン系レべリング剤とのモル比がこの範囲にあることにより、耐擦傷性向上かつ色ムラ低減を両立することができる。電離放射線硬化型樹脂/シリコーン系レべリング剤のモル比が0.25を超えると、耐擦傷性が弱くなってしまう。また、電離放射線硬化型樹脂/シリコーン系レべリング剤のモル比が0.09未満になると、塗工後の膜厚が不均一になり色ムラが顕著に発生してしまう。
【0035】
低屈折率層12の形成時における低屈折率層12の形成用塗液の固形分濃度が4.00%以上8.00%以下の範囲にあることが好ましい。低屈折率層12の形成用塗液の固形分濃度がこの範囲にあることにより、色ムラを低減することができる。低屈折率層12の形成用塗液の固形分濃度が8.00%を超えると、撥水剤成分が表面に析出し白化が生じてしまう。また、低屈折率層12の形成用塗液の固形分濃度が4.00%未満になると、塗工後の膜厚が不均一になり色ムラが顕著に発生してしまう。さらには、低屈折率層12の形成用塗液の固形分濃度は、4.00%以上5.00%以下の範囲にあることが好ましい。
【0036】
低屈折率層12に含有される電離放射線硬化型樹脂と有機ケイ素系撥水剤のモル比が、電離放射線硬化型樹脂/有機ケイ素系撥水剤として0.50以上1.00以下の範囲にあることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂と有機ケイ素系撥水剤とのモル比がこの範囲にあることにより、耐擦傷性向上かつ色ムラ低減を両立することができる。電離放射線硬化型樹脂/有機ケイ素系撥水剤のモル比が1.00を超えると撥水剤成分が表面に析出し白化が生じてしまう。また、電離放射線硬化型樹脂/有機ケイ素系撥水剤のモル比が0.50未満になると耐擦傷性が弱くなってしまう。
【0037】
本発明の実施の形態において、L表色系における反射色相を0≦a≦5かつ−3≦b≦3の範囲内にすることにより反射色としての赤色、青色の出現を抑え、反射色が無色に極めて近く色ムラの少ない反射防止フィルム10を得ることができる。ここで、L表色系とは、心理的に色を見たとき、色違いに見える色同士の心理的な距離感を均等にしてある色立体(色空間)のことをいう。また、Lは、明度のことをいい、aは、色相と彩度に相当する位置を示すことをいう。
【0038】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の平均視感反射率(Y)は、反射防止機能の出現による反射率の低下を示すものであり、平均視感反射率(Y)の値が小さいほど視認性が良くなる。従来の反射防止フィルムでは、平均視感反射率(Y)が1.3%以下であると反射色が出現してしまうが、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、平均視感反射率(Y)が1.3%以下においても反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であり、反射防止機能と反射光の色味の低減とを同時に満たすことができる。
【0039】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の低屈折率層12は、低屈折率層12の形成用塗液を基材11上に塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。
【0040】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の製造方法について説明する。まず、上述した材料を適宜選択して基材11を準備する。次に、基材11上に低屈折率層12を形成する。低屈折率層12には、上述した材料を適宜選択して用いることができる。低屈折率層12の形成用塗液の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0041】
低屈折率層12の形成用塗液が基材11上に塗布された後、基材11上の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。
【0042】
次に、基材11上の塗膜に対し、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され、低屈折率層12を形成する。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。上述した方法を用いて本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を形成することができる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、基材11と低屈折率層12との間にハードコート層を設けることができる。ハードコート層は、反射防止フィルム10の低屈折率層11の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができる。また、基材11の屈曲により低屈折率層12にクラックが入るのを抑制することができ、反射防止フィルム10の機械的強度を改善することができる。
【0044】
次に、ハードコート層の形成方法について述べる。ハードコート層は、電離放射線硬化型材料を含むハードコート層の形成用塗液を基材11上に塗布し、基材11上に塗膜を形成し、塗膜に対し、必要に応じて乾燥を行い、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより電離放射線硬化型材料の硬化反応を行うことにより、ハードコート層とすることができる。電離放射線硬化型の材料としては、公知のものを使用することができる。
【0045】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、偏光板に適用することができる。例えば、画像表示装置用として通常用いられる偏光板における偏光膜の保護膜として、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムを使用することができる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いた偏光板は、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラ及び白化の発生を抑えることができる。
【0046】
さらに本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いて画像表示装置を形成することができる。このような画像表示装置としては、特に限定されず、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等、いずれの方式のものであってもよい。画像表示装置に本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いることにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラおよび白化の発生を抑えることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
以下のL−1〜L−9に示すように、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0049】
[低屈折率層12の形成用塗液(L−1)]
多官能アクリレート化合物と有機ケイ素系撥水剤としてアルキルアルコキシラン化合物とシリコーン系レベリング剤としてBYK−UV3500(ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン/ビックケミー株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で4.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0050】
[低屈折率層形成用塗液(L−2)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物とBYK−UV3500(ビックケミー株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で3.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0051】
[低屈折率層形成用塗液(L−3)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物とBYK−UV3500(ビックケミー株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で2.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0052】
[低屈折率層形成用塗液(L−4)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物を、モル比1:0.75の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で4.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0053】
[低屈折率層形成用塗液(L−5)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物を、モル比1:0.75の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で3.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0054】
[低屈折率層形成用塗液(L−6)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物を、モル比1:0.75の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で2.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0055】
[低屈折率層形成用塗液(L−7)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物とメガファックF470(DIC株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で4.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0056】
[低屈折率層形成用塗液(L−8)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物とメガファックF470(DIC株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で3.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0057】
[低屈折率層形成用塗液(L−9)]
多官能アクリレート化合物とアルキルアルコキシラン化合物とメガファックF470(DIC株式会社製)を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合した。この溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合した。さらに光重合開始剤を加え、固形分換算で2.5%になるように、イソプロピルアルコールで希釈させ、低屈折率層12の形成用塗液を調整した。
【0058】
次に、上述したL−1〜L−9に示す低屈折率層12の形成用塗液を用いて反射防止フィルム10を形成した。
【0059】
まず、図1に示すように、基材11として、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用意した。次に、基材11上にハードコート(HC)層(図示せず)を形成した。ハードコート層には、紫光 UV−7605B(日本合成化学社製)100重量部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4重量部、酢酸メチル50重量部、2−ブタノン50重量部部を混合し、ハードコート層の形成用塗液を調液した。基材11であるトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層の形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射を行い膜厚5μmのハードコート層を形成した。
【0060】
次に、ハードコート層上にL−1〜L−9に示す低屈折率層12の形成用塗液を用いて低屈折率層12を形成した。ハードコート層を設けた80μm厚のトリアセチルセルロースフィルムに低屈折率層12の形成用塗液であるL−1〜L−9をマイクログラビア法を用いて塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚100nmの低屈折率層12を形成した。実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例6における低屈折率層12の形成用塗液であるL−1〜L−9を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
以下、上記の実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例6について、各種物性評価方法を示す。
【0063】
(1)耐擦傷試験
スチールウール♯0000を用い、500g/cmの荷重で10回往復擦傷試験を実施し、目視による傷の外観を検査した。評価は、傷なし(◎)、程度が小さい傷あり(○)、相当傷つく(△)、著しく傷つく(×)の4段階とした。
【0064】
(2)目視評価(色ムラ)
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、色ムラの発生を評価した。評価は、明るい環境下でも色ムラが見えにくい(◎)、明るい環境下にて色ムラが見える(○)、暗い環境下でも色ムラが見える(△)、暗い環境下にて色ムラがはっきりと見える(×)の4段階とした。
【0065】
(3)目視評価(白化)
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、白化の発生を評価した。評価は、明るい環境下でも白化が見えにくい(◎)、明るい環境下にて白化が見える(○)、暗い環境下でも白化が見える(△)、暗い環境下にて白化がはっきりと見える(×)の4段階とした。
【0066】
(4)油性ペンの拭き取り性
反射防止フィルムの表面に付着した油性ペンのインキをセルロース製不織布[旭化成工業(株)製:ベンコットM−3]で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。評価は、油性ペンのインキを完全に拭き取ることが出来る(○)、油性ペンのインキの拭き取り跡が残る(△)、油性ペンのインキを拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0067】
(5)指紋の拭き取り性
反射防止フィルムの表面に付着した指紋をセルロース製不織布[旭化成工業(株)製:ベンコットM−3]で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。評価は、指紋を完全に拭き取ることが出来る(○)、指紋の拭き取り跡が残る(△)、指紋を拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0068】
(6)光学特性
分光光度計により入射角5度で550nmにおける平均視感反射率を測定した。
【0069】
(7)色相
分光測色計光度計によりaとbとを測定した。
【0070】
【表2】

【0071】
評価結果を表2に示す。表2に示すように、本発明に係る反射防止フィルム10は、使用するレベリング剤の種類、添加量及び塗液の固形分濃度を調整することにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラおよび白化の発生を抑えていることがわかる。
【0072】
本発明に係る反射防止フィルム10は、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラ及び白化の発生を抑えていることができる。したがって、本発明の反射防止フィルム10は、各種偏光板及びそれを備えた、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等の画像表示装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10…反射防止フィルム、11…基材、12…低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された電離放射線硬化型樹脂組成物を主成分とし、有機ケイ素系撥水剤及びシリコーン系レべリング剤を含有した低屈折率層と、
を有することを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層における前記電離放射線硬化型樹脂と前記シリコーン系レべリング剤のモル比(前記電離放射線硬化型樹脂/前記シリコーン系レべリング剤)が0.09以上0.25以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折率層における前記電離放射線硬化型樹脂と前記有機ケイ素系撥水剤のモル比(前記電離放射線硬化型樹脂/前記有機ケイ素系撥水剤)が0.50以上1.00以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記低屈折率層の形成用塗液の固形分濃度が4.00%以上8.00%以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記低屈折率層が、粒径0.5nm以上200nm以下の低屈折率微粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
平均視感反射率(Y)がY≦1.3%であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−152056(P2010−152056A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329487(P2008−329487)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】