説明

反射防止フィルム

【課題】3層薄膜構成の反射防止フィルムにおいて高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、製造効率、均一性が高く、密着性が良好な極低反射率の反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム基材上またはハードコート層を有するフィルム基材上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムであって、高屈折率層が特定ポリマーによって表面修飾された50nm以下である第一の金属酸化物微粒子を含有し、中屈折率層が第一の金属酸化物微粒子とは異なる平均粒径が50nm以下である第二の金属酸化物微粒子を含有し、さらに前記中屈折率層と前記高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層であるか、または前記中屈折率層と前記高屈折率層が同時重層塗布された2層である反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関する。特に、高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、製造効率が高い、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)などのような様々な画像表示装置において、ディスプレイの表面に配置され、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するとともに、高い物理強度(耐擦傷性など)、透明性等が要求される。
平均反射率が1%以下の極低反射率を示す反射防止フィルムは、基材上またはハードコートされた基材上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の異なる屈折率である3層の薄膜を積層することによって得られることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
これら反射防止フィルムは、通常、塗布法により製造されるものであるが、異なる屈折率である3層の薄膜を積層することは、少なくとも3回の塗布工程が必要であり、製造コストが高くなるという問題を有していた。
この問題に関し、1の塗膜から2以上の層を形成することができる技術が開示されている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかしながら、この技術は、3層を必要とする反射防止フィルムを少ない塗布工程で製造できる点では優れているが、塗布溶剤の選択肢の自由度がなく、塗布後の乾燥工程の制御が困難であり、条件の変動や乾燥の不均一性によって均一な反射防止フィルムを得ることが困難であった。
【特許文献1】特開2003−121606号公報
【特許文献2】特開2003−262702号公報
【特許文献3】特開2006−206832号公報
【特許文献4】特開2007−038199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、3層薄膜構成の反射防止フィルムにおいて、高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、製造効率が高く、均一性の高い極低反射率の反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、3層薄膜構成の反射防止フィルムにおいて高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成する技術であり、特に高屈折率層に必須である高屈折率の金属酸化物微粒子を表面エネルギーが低下する特定の化合物で表面修飾することによって、塗布液膜内で自発的に表面に偏在するように制御する技術である。
3層薄膜構成の反射防止フィルムは、高屈折率層および中屈折率層がともに150nm以下の膜厚で設計されるため、上記のような表面エネルギーが低下した高屈折率の金属酸化物微粒子は、空気界面側の上層に偏在させることができ、それに併せて中屈折率層用の金属酸化物微粒子は下層を占めるようにでき、その結果、高屈折率層と中屈折率層を分離することができる。このような現象は、高屈折率層の金属酸化物微粒子、および中屈折率層の金属酸化物微粒子の平均粒径が50nm以下と超微粒子であるときに発現させることができる。
本発明において、金属酸化物微粒子を表面修飾する表面エネルギーが低下する特定の化合物とは、一つめには含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーであり、二つめにはポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーである。
本発明の課題は下記構成の反射防止フィルムによって達成される。
【0006】
(1)フィルム基材上またはハードコート層を有するフィルム基材上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムであって、
高屈折率層は平均粒径が50nm以下である第一の金属酸化物微粒子を含有し、含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって該第一の金属酸化物微粒子は表面修飾されており、
中屈折率層は第一の金属酸化物微粒子とは異なる平均粒径が50nm以下である第二の金属酸化物微粒子を含有し、
さらに前記中屈折率層と前記高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層であるか、または前記中屈折率層と前記高屈折率層が同時重層塗布された2層である反射防止フィルム。
【0007】
(2)フィルム基材上またはハードコート層を有するフィルム基材上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムであって、
高屈折率層は平均粒径が50nm以下である第一の金属酸化物微粒子を含有し、ポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって該第一の金属酸化物微粒子は表面修飾されており、
中屈折率層は第一の金属酸化物微粒子とは異なる平均粒径が50nm以下である第二の金属酸化物微粒子を含有し、
さらに前記中屈折率層と前記高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層であるか、または前記中屈折率層と前記高屈折率層が同時重層塗布された2層である反射防止フィルム。
【0008】
(3)前記含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーが下記一般式[I]で表される構造を有する上記(1)に記載の反射防止フィルム。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表す。L1は炭素数10以下の2価の連結基を表し、n1は0または1を表し、Rfは−CFまたは−CFHを表し、pは1〜10の整数であり、Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、mは0または1を表し、Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、xはモル%を表す。)
【0011】
(4)前記ポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーが下記一般式[II]で表される構造を有する上記(2)に記載の反射防止フィルム。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表す。L2は炭素数10以下の2価の連結基を表し、n2は0または1を表し、R11〜R15は同一であっても異なってもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜5のアルキル基またはアリール基を表し、qは10〜500の整数であり、Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、mは0または1を表し、Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、yはモル%を表す。)
【0014】
(5)前記第一の金属酸化物微粒子が酸化チタンまたは酸化ジルコニウムの微粒子である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0015】
(6)前記第二の金属酸化物微粒子が導電性の酸化亜鉛系微粒子である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0016】
高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、均一性が高く、密着性が良好な極低反射率の反射防止フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の反射防止フィルムについて説明する。
〔光学フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明な基材(支持体とも言う)上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に有し、目的に応じてその他の機能層を単独又は複数層設けることができる。
好ましい一つの態様としては、基材上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層された反射防止フィルムを挙げることができる。反射防止フィルムは、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成する。構成例としては、基材側から、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
【0018】
上記態様のフィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成においてフィルム基材は、フィルムで構成された支持体を指している。
・フィルム基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・フィルム基材/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・防湿層/フィルム基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・防湿層/フィルム基材/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・フィルム基材/ハードコート層/導電性層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・フィルム基材/ハードコート層/導電性中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・防湿層/フィルム基材/ハードコート層/導電性中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
以下各構成層について説明する。
【0019】
(低屈折率層)
本発明において、低屈折率層は、反射防止フィルムの最表面側に位置し、反射防止フィルムの層の中で最も屈折率が低い層である。
低屈折率層の屈折率は、1.50以下であることが好ましく、特に1.40以下であることがより好ましく、1.20〜1.40であることが最も好ましい。
【0020】
また、低屈折率層の厚みは、150nm以下であることが必須であり、さらに20nm〜150nmであることがより好ましく、40nm〜130nmであることが最も好ましい。
【0021】
低屈折率層は、低屈折率物質として、紫外線照射による硬化が可能なエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物を含有することが好ましい。
エチレン性不飽和基とは、具体的には末端がビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基であることを意味し、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
エチレン性不飽和基は一分子中に一つであってもよいが、エチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物が一分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有することがより好ましい。
【0022】
2個以上のエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物の具体例としては、公知の技術を使用することができ、例えば特開平9−301925号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開平10−182745号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開平10−182746号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開2001−72646号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0023】
さらにエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物が重合体であることが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCともいう)で、テトラヒドロフラン(以下THFともいう)を溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が1000〜500,000であることが好ましい。数平均分子量が500,000以下であると、組成物の粘度が抑制され、薄膜化が容易になる。
【0024】
本発明において好ましいエチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体は、具体的には公
知の技術を使用することができ、例えば特開2005−89536号公報、特開2005−290133号公報、特開2006−36835号公報に記載されたエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を挙げることができる。
【0025】
これらエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物の添加量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して10〜100質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましく、30〜90質量%が最も好ましい。
【0026】
本発明において低屈折率層は、平均粒子径は1nm〜100nmのシリカ微粒子を含有することが好ましい。シリカ微粒子は、中実粒子でも良いが、屈折率を低下させるために中空状シリカ微粒子を用いることが好ましい。
該中空状シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空状シリカ微粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(VIII)で算出される。
(数式VIII) x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空状シリカ微粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空状シリカ微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0027】
これらシリカ微粒子または中空状シリカ微粒子の添加量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が最も好ましい。
【0028】
(高屈折率層)
本発明において高屈折率層は、反射防止フィルムの表面側から低屈折率層の直下にある隣接層であり、前述の低屈折率層よりも屈折率が高い層である。
【0029】
高屈折率層の屈折率は、1.60〜2.00であることが好ましく、特に1.65〜1.90であることがより好ましく、1.70〜1.85であることが最も好ましい。
【0030】
また本発明において高屈折率層の膜厚は、高屈折率層内の金属酸化物微粒子を均一に含有させるうる範囲であることが必要であり、150nm以下であることが必須であり、特に20〜150nmであることが好ましく、さらに30〜130nmであることが最も好ましい。
【0031】
高屈折率層は、第一の金属酸化物微粒子として屈折率調整の必要に応じて公知の金属酸化物の種類を選択することができるが、特に酸化チタン微粒子または酸化ジルコニウム微粒子を用いることが好ましい。
また第一の金属酸化物微粒子の平均粒径は、高屈折率層内の金属酸化物微粒子を均一に含有させるうる適切な範囲が存在し、50nm以下であることが必須であり、特に5〜40nmであることが好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真などにより測定することができる。
【0032】
高屈折率層の第一の金属酸化物微粒子は、高屈折率層内の金属酸化物微粒子を均一に含有させる観点から、高屈折率層の全固形分に対して50〜95質量%含有することが好ま
しく、さらに60〜90質量%含有することが好ましい。
【0033】
以下では、含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマー、そしてポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーについて記述する。
【0034】
・含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマー
本発明の一つにおいて、第一の金属酸化物微粒子は含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって表面修飾されている。
【0035】
本発明において含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーの質量平均分子量としては、分子量が300未満の成分を除いた場合に、5000〜100000が好ましく、10000〜80000がより好ましく、10000〜50000が最も好ましい。
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0036】
特に含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーとしては下記一般式[I]で表される構造を有することが好ましい。
【0037】
【化3】

【0038】
式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
L1は炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは−COO−L’−または−O−L’−(L’はアルキレン基)で表される連結基であり、n1は0または1を表し、好ましくは1である。
Rfは−CFまたは−CFHを表し、好ましくは−CFであり、pは1〜10の整数であり、好ましくは3〜6である。
Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは−COO−L’−または−O−L’−(L’はアルキレン基)で表される連結基であり、mは0または1を表す。
Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基で
ある。
xはモル%を表し、好ましくは60〜99.9であり、特に好ましくは70〜95である。
【0039】
一般式[I]で表される構造を有する含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーの具体例を下記表1に示すが、これに限定されるものではない。
【0040】
【表1】

【0041】
例えば例I−1は、特開2004−163610号公報に記載されたテロマー法を用いて得られるモノマー「F−5」とアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルを所望のモル比となるように有機溶媒中で混合し、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより合成することができる。
【0042】
上記一般式[I]で表される構造を有する含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーは、無機酸化物微粒子に対して1質量%〜100質量%使用することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%であり、更に好ましくは10質量%〜50質量%である。
【0043】
・ポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマー
本発明の一つにおいて、第一の金属酸化物微粒子はポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって表面修飾されている。
【0044】
本発明においてポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーの質量平均分子量としては、分子量が300未満の成分を除いた場合に、10000〜200000が好ましく、20000〜150000がより好ましく、30000〜100000が最も好ましい。
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0045】
特にポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーとしては下記一般式[II]で表される構造を有することが好ましい。
【0046】
【化4】

【0047】
式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
L2は炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは−COO−L’−または−O−L’−(L’はアルキレン基)で表される連結基であり、n2は0または1を表し、好ましくは1である。
R11〜R15は同一であっても異なってもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜5のアルキル基またはアリール基を表し、好ましくは全てがメチル基であり、qは10〜500の整数であり、好ましくは10〜200である。
Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは−COO−L’−または−O−L’−(L’はアルキレン基)で表される連結基であり、mは0または1を表す。
Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
yはモル%を表し、好ましくは10〜90であり、特に好ましくは30〜90である。
【0048】
一般式[II]で表される構造を有するポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーの具体例を下記表2に示すが、これに限定されるものではない。
【0049】
【表2】

【0050】
例えば例II−1は、チッソ(株)製の片末端サイラプレーン「FM−0711」とアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルを所望のモル比となるように有機溶媒中で混合し、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより合成することができる。
【0051】
上記一般式[II]で表されるポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーは、無機酸化物微粒子に対して1質量%〜100質量%使用することが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%であり、更に好ましくは10質量%〜50質量%である。
【0052】
さらに高屈折率層は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含有することが好ましい。
多官能性モノマーとしては、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2、3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1、2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1、2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3、8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1、4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、一種類のみを使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0053】
本発明において、これら多官能性モノマーの添加量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して1〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%が最も好ましい。
【0054】
(中屈折率層)
本発明においては、ハードコート層または防眩層が設けられた透明支持体と高屈折率層の間に中屈折率層を設ける。
中屈折率層の屈折率はハードコート層または防眩層の屈折率と、高屈折率層の中間的な値であるように調節し、値としては1.55〜1.80であることが好ましい。
【0055】
また本発明において中屈折率層の膜厚は、中屈折率層内の金属酸化物微粒子を均一に含有させるうる範囲であることが必要であり、150nm以下であることが必須であり、特に20〜150nmであることが好ましく、さらに30〜130nmであることが最も好ましい。
【0056】
また第二の金属酸化物微粒子の平均粒径は、中屈折率層内の金属酸化物微粒子を均一に含有させるうる適切な範囲が存在し、50nm以下であることが必須であり、特に5〜40nmであることが好ましい。
【0057】
中屈折率層の第二の金属酸化物微粒子は、中屈折率層の全固形分に対して50〜95質量%含有することが好ましく、さらに60〜90質量%含有することが好ましい。
【0058】
本発明において、中屈折率層に含有する第二の金属酸化物微粒子は、前記ポリマーで表面修飾されていないことが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど中屈折率層の屈折率を調整可能な金属酸化物微粒子であってもよいが、とりわけ導電性の酸化亜鉛系微粒子は、屈折率が1.9〜2.0と適切な範囲にある点、帯電防止性を付与することが可能な点の両方の観点で好ましく用いることができる。
導電性の酸化亜鉛系微粒子は、導電性を発現するために3価の金属元素をドープすることが好ましく、特にアルミニウムをドープしたアルミニウム含有酸化亜鉛微粒子であることが好ましい。
【0059】
・アルミニウム含有酸化亜鉛粒子
アルミニウム含有酸化亜鉛粒子の一次粒径は、通常、5nm〜100nmのものを使用できる。また、結晶構造も特に限定されないが、単斜晶系等を使用できる。アルミニウム含有酸化亜鉛粒子の一次粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒径として測定することができる。粒子が球形でない場合は、長軸と短軸の平均を粒径とし、長軸/短軸の比が2以上の場合は短軸を粒径とする。
【0060】
アルミニウム含有酸化亜鉛粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは、球状である。
このようなアルミニウム含有酸化亜鉛粒子の市販品としては、ハクスイテック(株)製
商品名:パゼットAB、パゼットAK、パゼットCK、堺化学工業(株)製 商品名:SC−18等が挙げられる。
【0061】
さらに中屈折率層は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含有することが好ましい。
多官能性モノマーとしては、高屈折率層の記載と同じである。
これら多官能性モノマーの添加量は、中屈折率層の固形分100質量%に対して1〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%が最も好ましい。
【0062】
(フィルム基材)
前記フィルム基材は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0063】
本実施の形態に係る反射防止フィルムを保護フィルムとして偏光板に使用する場合には、フィルム基材としては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等が好適である。また、フィルム基材は、後述の偏光子自体であってもよい。この様な構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、偏光板を一層薄層化することができる。また、防眩性ハードコートフィルムは、液晶セル表面に装着されるカバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0064】
フィルム基材の厚さについては適宜に決定しうるが、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点を考慮し、10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。更に、フィルム基材の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
【0065】
(塗布溶媒)
本発明において、高屈折率層および中屈折率層に用いる塗布溶媒としては特に制限はなく、従来知られているものが使用できる。一般的な塗布に使用されるトルエン、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどの溶媒を用いることができる。
【0066】
(乾燥工程)
本発明において、高屈折率層および中屈折率層の塗布液をフィルム基材またはハードコート層を有するフィルム基材上に塗布した後の乾燥工程には特に制約はなく、中屈折率層と高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層である場合や中屈折率層と高屈折率層が同時重層塗布された2層である場合でも通常の塗布後乾燥に使用できる方法を用いることができる。
【0067】
(各層の形成方法)
本発明の反射防止フィルムの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。
ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
【0068】
ここでマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
【0069】
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
【0070】
また本発明において、中屈折率層と高屈折率層が同時重層塗布された2層であるとは、中屈折率層の上に乾燥工程を経ずに高屈折率層をwet on wetで積層することを意味し、それには、押し出しコーターにより乾燥を経ずに逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
本発明では、複数のスリットを有するスロットダイによる同時重層が好ましい。
【0071】
(硬化方法)
本発明において、塗布乾燥された反射防止フィルムを熱、およびまたは紫外線照射により硬化することができる。ここで紫外線照射による硬化とは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等、また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等の光源を用いて乾燥した膜に紫外線を照射して膜を硬化させることをいう。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2が好ましく、さらに好ましくは、100〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400〜2000mJ/cm2である。
紫外線による硬化の場合、各層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよい。
【0072】
〔画像表示装置〕
本発明の反射防止フィルムは、液晶パネル画面の表面フィルムとして使用することが好ましい。
使用される液晶パネルとしては、棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向
させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させるVAモード、さらにそれをマルチドメイン化したMVAモードや、ネマティック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式のIPSモード、さらに棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に対称的に配向させるOCBモードが、視野角が広いモードであるため本発明の反射防止フィルムを好ましく使用することができる。
さらに液晶パネルは、高精細なものほど本発明の反射防止フィルムを好ましく使用することができ、特に画素数が1920×1080または1440×1080のフルスペックハイビジョンと称される高解像度の液晶パネルに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
〔比較例1:反射防止フィルム101〕
(ハードコート層用塗布液Aの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液Aを調製した。
【0075】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
アルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)の調製
アルミニウム含有酸化亜鉛微粒子(ハクスイテック(株)製、パゼットCK(商品名)、一次粒径30nm)、分散剤(楠本化成(株)製、PLAAD ED211(商品名)
:数平均分子量40,000の高分子ポリカルボン酸のアミドアミン塩、固形分量50%)、メチルエチルケトンを、30/3/67(質量比)の配合量で混合した。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、33%であった。また、この分散液を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、30%であった。
ペイントシェーカの50mlポリ瓶に、ガラスビーズ40g(TOSHINRIKO製、BZ−01、ビーズ径0.1mm、体積約16ml)と上記混合液(30g)を入れて8時間分散し、アルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)を得た。
【0076】
アルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)21.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0077】
(高屈折率層用塗布液Aの調製)
酸化ジルコニウム微粒子ゾル(メチルエチルケトン酸化ジルコニウムゾル、住友大阪セメント(株)製 平均粒子径10nm、酸化ジルコニウム質量濃度30%)21.0質量
部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、高屈折率層用塗布液Aを調
製した。
【0078】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体P−1の合成)
【0079】
【化5】

【0080】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0081】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し
8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱を
やめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体P−1を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
【0082】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水31部を加え、61℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1620であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0083】
(中空シリカ粒子分散液の調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30.5部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し
、アセチルアセトン1.8部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2%の分散液を得た。得られた分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0084】
得られた中空シリカ粒子分散液やゾル液を用いて、下記組成の組成物を混合し、得られた溶液を攪拌後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0085】
(低屈折率層用塗布液Aの組成)
DPHA 1.6g
P−1 6.3g
中空シリカ粒子分散液(18.2%) 60.0g
RMS−033 0.5g
イルガキュア907 0.3g
ゾル液a 7.4g
MEK 263.9g
シクロヘキサノン 10.0g
【0086】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・ P−1 : パーフルオロオレフィン共重合体P−1
・ DPHA : ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・ 中空シリカ粒子分散液 : 前記アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%。
・ MEK : メチルエチルケトン
・ RMS−033 : 反応性シリコーン(Gelest(株)製)
・ イルガキュア907 : 光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
【0087】
(ハードコート層Aの作製)
層厚80μmの透明支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士フィルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記組成のハードコート層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ
/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層Aを形成し
た。
【0088】
(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の作製)
以上のハードコート層Aの上に、中屈折率層用塗布液A、高屈折率層用塗布液A、低屈折率層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて逐次塗布した。
中屈折率層は、屈折率1.62、膜厚60nm、高屈折率層は、屈折率1.72、膜厚110nm、低屈折率層は、屈折率1.36、膜厚90nmであった。なお、各層の屈折率の測定は、各層の塗布液を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定した。各層の膜厚は反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子(株)製)を用いて、算出した。
【0089】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
【0090】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
【0091】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0092】
〔実施例1:反射防止フィルム102〕
比較例1に示した反射防止フィルム101の作製方法における高屈折率層塗布液Aを以下に記載する高屈折率層塗布液Bに変更し、さらに中屈折率層と高屈折率層の塗布方法を下記方法に変更した以外は比較例1と全く同じ作製方法により反射防止フィルム102を作製した。
【0093】
(酸化ジルコニウム分散液Z−1の調製)
酸化ジルコニウム微粒子ゾル(メチルエチルケトン酸化ジルコニウムゾル、住友大阪セメント(株)製 平均粒子径10nm、酸化ジルコニウム濃度30%)333部に、一般
式[I]の例I−1を30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、含フッ素アルキル基を有するポリマーで表面修飾した酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−1を得た。
酸化ジルコニウム分散液Z−1の酸化ジルコニウムの質量濃度は30%に調節した。
【0094】
(高屈折率層用塗布液Bの調製)
酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−1(酸化ジルコニウム質量濃度30%)21.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、高屈折率層用塗布液Bを調製した。
【0095】
(中屈折率層および高屈折率層の塗布方法)
2スロットの押し出しコーターを用いwet on wetにて同時に重層塗布を行った。
【0096】
尚膜厚については単層で塗布した場合の流量に従って設定した。
(第1スロット;中屈折率層)
・塗布液:中屈折率層塗布液A
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が60nmになるように調整した。
(第2スロット;高屈折率層)
・塗布液:高屈折率層塗布液B
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が110nmになるように調整した。
【0097】
乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグ
ラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
フィルム断面切片を透過型で電子顕微鏡にて観察すると、高屈折率層と中屈折率層の界面が存在し、高屈折率層の厚みは約110nm、中屈折率層の厚みは約60nmであった。
上述の中屈折率層と高屈折率層の塗布を実施した後に反射防止フィルム101と同一条件で低屈折率層Aを塗布、乾燥、硬化し、反射防止フィルム102を作製した。
【0098】
〔実施例2:反射防止フィルム103〕
比較例1に示した反射防止フィルム101の作製方法における中屈折率層および高屈折率層の塗布液を、下記中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−1に変更して1液性とし、さらに塗布方法を下記の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法に変更した以外は比較例1と全く同じ作製方法により反射防止フィルム103を作製した。
【0099】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−1の調製)
酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−1(酸化ジルコニウム質量濃度30%)13.6質量部とアルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)7.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−1を調製した。
【0100】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法)
ハードコート層Aの上に、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−1をグラビアコーターを用いて塗布した。膜厚は170nmになるように調整した。
乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
フィルム断面切片を透過型で電子顕微鏡にて観察すると、高屈折率層と中屈折率層の界面が存在し、高屈折率層の厚みは約110nm、中屈折率層の厚みは約60nmであった。
【0101】
上述の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布を実施した後に反射防止フィルム101と同一条件で低屈折率層Aを塗布、乾燥、硬化し、反射防止フィルム103を作製した。
【0102】
〔評価方法〕
上記各反射防止フィルム(101、102,103)を以下の方法で評価した。
【0103】
(積分反射率)
フィルムの裏面をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分反射率の算術平均値を用いた。
【0104】
(反射光色ムラ)
各試料の反射防止フィルム1mを白色蛍光灯下で目視観察し、反射光の色ムラの発生頻度を以下の3段階に分類、評価した。
○:反射光色ムラが1mに全く認められなかったもの。
△:反射光色ムラが1mに1箇所のもの。
×:反射光色ムラが1mに2箇所以上のもの。
【0105】
(密着性)
反射防止フィルムの低屈折率層を有する側の表面にカッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)を圧着して密着試験を同じ場所で繰り返し5回行った。剥がれの度合いを以下の4段階で評価した。
◎:100個の升目中に剥がれが全く認められなかったもの。
○:100個の升目中に剥がれが認められたものが2升以内のもの。
△:100個の升目中に剥がれが認められたものが3〜10升のもの。
×:100個の升目中に剥がれが認められたものが10升を越えたもの。
【0106】
(表面抵抗値)
反射防止フィルムの低屈折率層を有する側の面について、25℃60%RH環境下に2時間置いた後に同条件下で表面抵抗値(SR)を円電極法で測定した。測定結果は、表面抵抗値の対数(logSR)で表した。
logSR値は11以下であれば、充分な帯電防止効果がある。
以上の評価方法に従った評価結果を下記表3に示した。
【0107】
【表3】

【0108】
表3から分るように、比較例1では中屈折率層、高屈折率層が層別に逐次塗布されたため、反射光色ムラがあり、密着性がやや劣る。それに対し、本発明の実施例1では、中屈折率層、高屈折率層を1度の塗布で形成しており、生産効率が高く、密着性に優れた結果が得られた。実施例1の反射防止フィルム102が密着性に優れているのは、1度の塗布で同時重層塗布を行ったため、層の界面結合が良好であったためだと考えられる。
一方、実施例2では、中屈折率層、高屈折率層を1層塗布で2層分離させているので、
比較例1の反射防止フィルム101で実施された層別の逐次塗布に対して膜厚の変動が少ない。そのために実施例2の反射防止フィルム103は反射光色ムラが少なくなっていると考えられる。また、実施例2では1層塗布で2層分離させているので層の界面結合が良好であり、良好な密着性が得られたと考えられる。
これらの比較から、本発明によれば、高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、従来技術に比して優れた特性が得られることが分った。
【0109】
〔実施例3:反射防止フィルム201〕
実施例1(反射防止フィルム102)の高屈折率層塗布液Bを下記高屈折率層塗布液Cに変更した以外は、実施例1と同様にして反射防止フィルム201を作製した。
【0110】
(酸化ジルコニウム分散液Z−2の調製)
ポリジアルキルシロキサン基を有するポリマーとして、一般式[II]の例II−1を用いて表面を修飾した金属酸化物微粒子分散液を以下の方法で調製した。
酸化ジルコニウム微粒子ゾル(メチルエチルケトン酸化ジルコニウムゾル、住友大阪セメント(株)製 平均粒子径10nm、酸化ジルコニウム濃度30%)333部に、一般
式[II]の例II−1を40部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。80℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、ポリジアルキルシロキサン基を有するポリマーで表面修飾した酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−2を得た。
酸化ジルコニウム分散液Z−2の酸化ジルコニウムの質量濃度は30%に調節した。
【0111】
(高屈折率層用塗布液Cの調製)
上記酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−2(酸化ジルコニウム質量濃度30%)21.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、高屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0112】
〔実施例4:反射防止フィルム202〕
比較例1に示した反射防止フィルム101の作製方法における中屈折率層および高屈折率層の塗布液を、下記中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−2に変更して1液性とし、さらに塗布方法を下記の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法に変更した以外は比較例1と全く同じ作製方法により反射防止フィルム202を作製した。
【0113】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−2の調製)
酸化ジルコニウム微粒子分散液Z−2(酸化ジルコニウム質量濃度30%)13.6質量部とアルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)7.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−2を調製した。
【0114】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法)
ハードコート層Aの上に、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−2をグラビアコーターを用いて塗布した。膜厚は170nmになるように調整した。
乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
フィルム断面切片を透過型で電子顕微鏡にて観察すると、高屈折率層と中屈折率層の界面が存在し、高屈折率層の厚みは約110nm、中屈折率層の厚みは約60nmであった。
【0115】
上述の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布を実施した後に反射防止フィルム101と同一条件で低屈折率層Aを塗布、乾燥、硬化し、反射防止フィルム202を作製した。
【0116】
上記実施例3及び4で得られた反射防止フィルム201、202を前記反射防止フィルム101〜103と同様の方法で評価した。
評価結果を下記表4に示した。
【0117】
【表4】

【0118】
実施例3及び4で示した反射防止フィルム(201及び202)も実施例1及び2と同様、高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、優れた性能を示した。
【0119】
〔実施例5:反射防止フィルム301〕
比較例1に示した反射防止フィルム101の作製方法における中屈折率層および高屈折率層の塗布液を、下記中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−3に変更して1液性とし、さらに塗布方法を下記の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法に変更した以外は比較例1と全く同じ作製方法により反射防止フィルム301を作製した。
【0120】
(酸化チタン分散液T−1の調製)
含フッ素アルキル基を有するポリマーとして、一般式[I]の例I−2を用いて表面を修飾した金属酸化物微粒子分散液を以下の方法で調製した。
酸化チタン微粒子ゾル(TTO−51(A)のメチルエチルケトン分散液、石原産業(
株)製 平均粒子径30nm、二酸化チタン濃度30%)333部に、一般式[I]の例I−
2を40部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。80℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、含フッ素アルキル基を有するポリマーで表面修飾した酸化チタン分散液T−1を得た。
酸化チタン分散液T−1の二酸化チタンの質量濃度は30%に調節した。
【0121】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−3の調製)
酸化チタン分散液T−1(二酸化チタン質量濃度30%)10.5質量部とアルミニウム含有酸化亜鉛微粒子分散液(A−1)10.5質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)2.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルエチルケトン73.7質量部およびシクロヘキサノン2.5質量部を添加して攪拌し、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−3を調製した。
【0122】
(中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液の塗布方法)
ハードコート層Aの上に、中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−3をグラビアコーターを用いて塗布した。膜厚は160nmになるように調整した。
乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
フィルム断面切片を透過型で電子顕微鏡にて観察すると、高屈折率層と中屈折率層の界面が存在し、高屈折率層の厚みは約80nm、中屈折率層の厚みは約80nmであった。
【0123】
上述の中屈折率層と高屈折率層の1液2層塗布液W−3を塗布した後に比較例1と同一条件で低屈折率層Aを塗布、乾燥、硬化し、反射防止フィルム301を作製した。
【0124】
上記実施例5の反射防止フィルム301を前記反射防止フィルム101〜103と同様の方法で評価した。
評価結果を下記表5に示した。
【0125】
【表5】

【0126】
実施例5の反射防止フィルム301も実施例1〜4と同様、高屈折率層と中屈折率層を1度の塗布工程で形成することができ、優れた性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上またはハードコート層を有するフィルム基材上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムであって、
高屈折率層は平均粒径が50nm以下である第一の金属酸化物微粒子を含有し、含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって該第一の金属酸化物微粒子は表面修飾されており、
中屈折率層は第一の金属酸化物微粒子とは異なる平均粒径が50nm以下である第二の金属酸化物微粒子を含有し、
さらに前記中屈折率層と前記高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層であるか、または前記中屈折率層と前記高屈折率層が同時重層塗布された2層である反射防止フィルム。
【請求項2】
フィルム基材上またはハードコート層を有するフィルム基材上に、各層の膜厚が150nm以下である中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した反射防止フィルムであって、
高屈折率層は平均粒径が50nm以下である第一の金属酸化物微粒子を含有し、ポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーによって該第一の金属酸化物微粒子は表面修飾されており、
中屈折率層は第一の金属酸化物微粒子とは異なる平均粒径が50nm以下である第二の金属酸化物微粒子を含有し、
さらに前記中屈折率層と前記高屈折率層が1の塗布膜から分離した2層であるか、または前記中屈折率層と前記高屈折率層が同時重層塗布された2層である反射防止フィルム。
【請求項3】
含フッ素アルキル基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーが下記一般式[I]で表される構造を有する請求項1に記載の反射防止フィルム。
【化1】


(式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表す。L1は炭素数10以下の2価の連結基を表し、n1は0または1を表し、Rfは−CFまたは−CFHを表し、pは1〜10の整数であり、Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、mは0または1を表し、Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、xはモル%を表す。)
【請求項4】
前記ポリジアルキルシロキサン基を有するユニットと金属酸化物微粒子を表面修飾する反応基を有するユニットを持つポリマーが下記一般式[II]で表される構造を有する請求項2に記載の反射防止フィルム。
【化2】


(式中、R1、R2は水素原子またはアルキル基を表す。L2は炭素数10以下の2価の連結基を表し、n2は0または1を表し、R11〜R15は同一であっても異なってもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜5のアルキル基またはアリール基を表し、qは10〜500の整数であり、Lは炭素数10以下の2価の連結基を表し、mは0または1を表し、Aは水酸基または加水分解可能な基を表し、yはモル%を表す。)
【請求項5】
前記第一の金属酸化物微粒子が酸化チタンまたは酸化ジルコニウムの微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記第二の金属酸化物微粒子が導電性の酸化亜鉛系微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2008−310119(P2008−310119A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158559(P2007−158559)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】