反応性多層フォイルの製造方法および得られる製品
【課題】 結合、点火または推進に有利に使用し得る自立型反応性多層フォイルの提供。
【解決手段】 発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該層が冷間圧接により張り合わされているものであることを特徴とする自立形反応性多層フォイル、並びに該フォイルを用いた結合方法。
【解決手段】 発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該層が冷間圧接により張り合わされているものであることを特徴とする自立形反応性多層フォイル、並びに該フォイルを用いた結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の詳細な説明〕
発明の分野
本願は、反応性多層フォイル、および特に塑性変形を利用してその様なフォイルを製造する方法に関する。
【0002】
発明の背景
反応性多層コーティングは、平らな領域で強力な、制御された量の熱を発生する必要がある広範囲な用途に有用である。その様な構造は、従来、基材に支持された一連のコーティングからなり、コーティングは、正確に制御された量の熱を発生する層により覆われる領域を横切って広がる発熱化学反応を適切な刺激により受ける。これらの反応性コーティングを主として溶接、半田付け、またはろう付け用の熱源として説明するが、これらのコーティングは、制御された局所的な発熱を必要とする他の用途、例えば推進および点火、にも使用できる。
【0003】
ほとんどすべての工業で、技術の進歩と共に接合の改良が益々重要になっている。これは、接合すべき物体がより小さく、より脆くなるにつれて特に当てはまる。さらに、新しい材料は、接合が困難であることが多く、工業界に多くの問題を投げかけている。
【0004】
多くの接合方法は、熱源を必要とする。この熱源は、接合すべき構造物に対して外部または内部に存在してもよい。外部熱源は、典型的には、接合すべき物体(バルク材料)および接合材料を含む、結合すべき全体を加熱する炉である。外部熱源は、バルク材料が接合に必要とされる高温に対して敏感であることがあるので、問題を引き起こす。バルク材料は熱収縮における不適合によっても損傷を受けることがある。
【0005】
内部熱源は、反応性粉末の形態をとることが多い。反応性粉末は典型的には、発熱反応して最終的な化合物または合金を形成する金属または化合物の混合物である。その様な粉末は、1960年代初期に開発され、自己伝播高温合成(SHS)による結合を促進した。しかし、SHS反応では、放出されるエネルギーおよびエネルギーの拡散を制御するのが困難であることが多い。その結果、粉末による結合は、信頼性が低く、不十分になることがある。
【0006】
続いて開発された反応性多層構造物は、反応性粉末結合に関連する問題を軽減した。これらの構造物は、発熱反応を起こす薄いコーティングからなる。例えば、T.P. Weihs, Handbook of Thin Film Process Technology, Part B, Section F.7、編集D.A. GlockerおよびS.I. Shah (IOP Publishing, 1998);1996年7月23日Barbee, Jr.らに付与された米国特許第5,538,795号;および1995年1月17日Makowieckiらに付与された米国特許第5,381,944号を参照。反応性多層構造物により、より制御可能で一定の熱発生を有する発熱反応が得られる。その様な反応の背後にある基本的な駆動力は、原子結合エネルギーの減少である。一連の反応性層に点火すると、個別の層が原子的に混合して熱が局所的に発生する。この熱が構造物の隣接領域に点火し、それによって反応を構造物の全長に移動させ、すべての材料が反応するまで熱を発生する。
【0007】
しかし、この進歩にも関わらず、多くの問題は残っている。例えば、反応性コーティングが反応時に基材から脱離することが多い。この脱離は、反応の際の反応性フォイル固有の緻密化と加熱および冷却の際の不均一な熱膨脹または収縮とにより引き起こされる。この脱離は、接合用途における結合を著しく弱くする。さらに重大なのは、現在の反応性多層フォイルは、延性が限られた脆い金属間化合物を生じることであり、金属間化合物は従って、結合した構成部品間にこれらの金属間化合物が存在することにより、得られた接合部が劣化することがある。その結果、内部または外部の応力が結合の破滅的な機械的欠陥を引き起こすことがある。
【0008】
反応性コーティングに加えて、冷間圧延により自立形反応性層を開発する努力がなされた。L. BattezzattiらのActa Materialia, Vol. 47, pp.1901-1914 (1999)参照。Ni−Al多層反応性フォイルは、NiおよびAlの2層シートを冷間圧延し、続いて繰り返し手作業で折り曲げ、繰り返し冷間圧延することにより、形成されていた。最初の2層細片をその元の厚さの半分に圧延した後、再度折り曲げてその本来の厚さに戻し、層の数を倍にしていた。この工程を数多く繰り返していた。
【0009】
この圧延フォイルの製造は時間がかかり、困難であった。圧延機に通すには潤滑油が必要であり、圧延した材料の表面を圧延に通す度に清浄にしなければならない。さらに、シート原料の手作業による折り曲げは、大規模製造には容易に適用できない。金属シートの積層体から出発し、次いで数回圧延および折り曲げることにより、製法を簡素化できる。しかし、多くの金属層を一度に圧延すると、これらの層は跳ね返り、層の分離および得られたフォイルの劣化を引き起こす。その様な分離も、層間表面の好ましくない酸化を引き起こし、冷間圧接による層の単一化を妨害する。
そのため、反応性多層フォイルの改良された製造方法が求められている。
【0010】
発明の概要
本発明により、反応性層のアセンブリ(積層体ないし多層)を用意し、アセンブリをジャケット中に挿入し、ジャケットで被覆しアセンブリを変形してその断面積を減少させ、ジャケットで被覆したアセンブリを平らにしてシートを形成し、次いでジャケットを除去することにより、反応性多層フォイルを製造する。ジャケット中に挿入する前に、アセンブリを巻いて円筒を形成すること、および変形の際にジャケットで被覆したアセンブリを100℃未満、好ましくは25℃未満の温度に冷却することが有利である。形成される多層フォイルは、結合、点火または推進に使用する自立形反応性フォイルとして有利である。
【0011】
添付の図面を参照しながら以下に例示のために詳細に記載する実施形態から、本発明の性質、利点および様々な他の特徴は明らかである。
これらの図面は、本発明の概念を例示するためであり、写真を除いて、原寸ではない。
【0012】
詳細な説明
図面に関して、図1は、本発明の反応性多層フォイルを製造する工程を模式的に示す流れ図である。図1のブロックAに示す第一の工程では、発熱反応し得る材料の交互層のアセンブリ(積層体ないし多層)、例えば、NiフォイルとAlフォイルの交互層のアセンブリを用意する。ここで使用する用語「積層体」は、結合されていない層のアセンブリ(組立品)を意味する。用語「多層」は、例えば冷間圧接により、一緒に接合された層のアセンブリを意味する。
【0013】
ブロックBで示す次の工程では、アセンブリをジャケットの中に挿入する。これは様々な様式で行うことができる。例えば、図2に示す様に、平らなアセンブリ20を平らにした管状ジャケット21の中に挿入することができる。平らなアセンブリ20は、交互層の積層体でも、交互層の円筒を平らにしたものでもよい。あるいは、図3に示す様に、平らなアセンブリを巻いて円筒30を形成し、管状ジャケット31の中に挿入してもよい。ジャケット31は、アセンブリの材料を損傷せずに容易に取り外せるべきであり、例えば銅の管は、硝酸中でNiまたはAlよりもはるかに迅速にエッチングすることができる。
【0014】
第三の工程(ブロックC)では、ジャケットで被覆したアセンブリを変形して、その断面積を減少させる。円筒形アセンブリを管状ジャケット中に挿入する場合、好ましい変形はすえ込み(swaging)により行うことができる。すえ込みにおけるサイズ縮小は、係合するテーパーの付いたダイのハンマー作用によるものであり、ダイの中にジャケットを挿入し、すべての側部から圧縮する。すえ込みには、圧延に対して3つの利点がある。第一は、ジャケットで被覆した円筒を半径方向で圧縮できることである。この様に巻き付けたフォイルに対称的に負荷をかけることにより、圧延で見られる様な跳ね返りにより引き起こされる層の分離が最少に抑えられる。第二の、主要な利点は、変形が立体的であり、従って、変形が二次元的でしかない圧延よりも、より大きな伸張を与える。第三の利点は、第二の利点と関連している。圧延では、部品の厚さを2分の1に減少させることにより、2層の厚さが半分に減少し、長さが2倍増加する。しかし、管の直径を2分の1に減少させると、2層の有効厚さは半分以下に減少し、断面積が4分の1になるので、長さは4倍増加する。ジャケットで被覆したアセンブリは、変形の際に100℃未満、好ましくは25℃未満に維持すべきである。
【0015】
次の工程(ブロックD)ではジャケットで被覆したアセンブリを平らにし、例えばすえ込み変形した材料を圧延により平らにし、平面的な幾何学的構造にする。点火を容易にしかつ反応速度を高くするために、追加の冷間圧延をすることにより、2層の厚さをさらに減少させる。平らにする際、アセンブリは100℃未満、好ましくは25℃未満に維持すべきである。次いで、例えばジャケットの縁部を化学的エッチング、切り取り、または摘み取りにより、ジャケット材料を除去し、反応性多層シートを取り出す。
【0016】
下記の例は、図1の方法の利点を例示する。Ni/Al多層フォイルを冷間圧延しようとする場合を考える。所望の反応性フォイルの総厚さが1mmであり、2層周期(priod)が0.250ミクロンである場合、機械的加工をNiおよびAlの比較的薄いフォイルで開始して、初期2層周期を0.250ミクロンに下げるのに必要な圧延の度合いを限定することが好ましい。しかし、25ミクロン未満の初期2層周期は、非常に高価なNiおよびAlのフォイルを必要とし、個々のフォイルを数千枚を有する積層とすることが必要になる。例えば、所望の最終製品を得るのに、25ミクロン2層周期のフォイル4000枚を有する総厚さ10cmの初期積層体を、100分の1の厚さに減少させて総厚1mmにする必要がある。その様な層数の大きい積層体の取扱いおよび機械的加工は、特に、材料の温度を室温近くに維持して層間の原子混合を阻止する必要があるので、非常に困難である。
【0017】
同じ目的を達成するための、より効率的で、効果的な手段は、(Cuジャケット中の)直径3.5cmの円筒形状に巻いた2層積層体をすえ込み加工して、その直径を0.5cmに減少させ、それによって有効2層周期を(3.5/0.5)2=49〜7分の1に減少させることである。次いで、得られる0.5cmのロッドを、約2〜14分の1で容易に圧延して平らにして、必要な厚さ1mmの反応性リボンにすることができる。その様なすえ込み加工は比較的簡単であり、容易に達成できる。この技術では、平らにした後のリボンの幅を横切ってある程度の不均一が生じるが、この変動は外側縁部に限られ、所望により容易に除去することができる。望ましいすえ込み変形の量は、断面積の30%〜99%減少であり、好ましくは60%〜95%減少である。すえ込み加工の代わりに、ロッド圧延、ロッド引き抜き、または押出によっても該面積を減少させることができる。この様式における該面積の減少は、典型的には各層を一緒に冷間圧接して多層を形成する。
【0018】
図1の製法は、経済的に有利であり、広範囲な用途に有用な高品質反応性フォイルを製造する。本製法は蒸着よりも安価で迅速である。本製法は簡単な装置および安価な原料を使用し、大量生産に容易に採用できる。また、本製法は、従来の蒸着により製造するのでは非常に高価になる(厚さが500マイクロメートルを超える)非常に厚いフォイルを経済的に製造することもできる。
【0019】
図4に示す様に、図1の製法により製造される反応性フォイル44は、熱発生源として特に使用する自立形の多層反応性フォイルである。このフォイルは、第一材料46および第一材料と発熱反応し得る第二材料48の交互層の連続からなる。自立形のフォイルは、「バルク」試料の様に取り扱えるので、薄いフィルムよりも容易に特徴を表わすことができる。反応性フォイル44を自立形にすることにより、可能な用途が大きく広がる。その様な反応性フォイルは、必ずしも特定の用途に結びつけられるものではないので、自己伝播性の局所的熱源を必要とするあらゆる目的に大量生産することができる。大きなまたは繊細な物体を真空室に入れて反応性多層フォイルにより被覆されることにより、反応性フォイルの製造が制限を受けまたは妨げられることは無い。さらに、自立形フォイルは、基材への好ましくない熱吸収を最少に抑えることができる。
【0020】
図1の方法により製造される自立形フォイルは、結合、点火および推進を包含する様々な用途に使用するために適合させることができる。例えば、自立形フォイルは、材料の本体(ここでは「バルク材料」と呼ぶ)と一緒に結合し、一体化された製品を形成するのに使用できる。自立形フォイルは、あらゆる種類の結合、半田付け、ろう付け、溶接または他の、バルク材料を接合するための用途にも使用できる。2個以上のバルク材料50を一緒に接合する典型的な接合用途を図5に示す。バルク材料50はセラミック、金属ガラス、金属/合金、重合体、複合体、半導体、および他の形態の材料でよい。図5では、接合材料52を使用してバルク材料50と一緒に接合する。接合材料52は、融解してバルク材料50と一緒に接合する材料の層(または複合体層)でよい。接合材料52は、金属ガラス、金属/合金、機能的に格付された層、Ni−Bフィルム、半田、ろう材、自己伝播ろう材、それらの組合せ、または接合材料のような他の材料から製造された自立形シートの形態でよい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、反応性フォイル44を接合材料52同士の間に配置し、サンドイッチの様な構造を形成する。この様にして形成された反応性フォイルの「サンドイッチ」を好ましくはバルク材料50同士の間の、バルク材料50同士を一緒に接合する場所(例えば、終点、継ぎ目、交差点等)に配置する。あるいは、反応性フォイル44を、接合材料52で予め被覆したバルク材料50の間に配置する。
【0022】
接合工程では、力(図5では万力51により象徴的に示す)を作用させ、バルク材料50、接合材料52、および反応性フォイル44の相対的な位置を維持する。すべての構成部品は一緒に圧迫された自立形要素であることが有利である。別の実施形態では、接合材料52は反応性フォイル44との複合体として示される。
【0023】
接合工程における部品を配置した後、刺激(点火したマッチ55として示す)を、好ましくは反応性フォイル44の一端に作用させ、多層反応を開始する。反応性フォイル44中で原子が混合されることにより、接合材料52を反応性フォイル44の全長に沿って融解させるのに十分な急速で強力な熱が発生する。この状態で、接合材料52がバルク材料50と一緒に接合する。この直後に、接合したバルク材料50は周囲の温度(例えば室温)に戻り、加えている力を取り外すことができる。
【0024】
接合材料52および反応性フォイル44から構成された複合構造は、接合材料52を反応性フォイル44の片側に堆積(例えば蒸着)させること、または機械的力(例えば冷間圧延)を加えることにより形成することができる。次いで、接合材料の別の一層を、反応性フォイル44の第二の側に蒸着すること、または機械的力を加えることにより、反応性フォイル44と結合させる。
【0025】
反応性フォイル44、バルク材料50、または両方の表面濡れを容易にするために濡れ/接着層を加えることができる。濡れ/接着層により、接合材料を均一に広げ、バルク材料を確実に一定して接合することができる。濡れ/接着層は、接合材料(例えば、ろう材)、Ti、Sn、金属ガラス等の薄い層でよい。市販の合金、例えばAg−Sn、Ag−Cu−Ti、Cu−Ti、Au−Sn、およびNi−Bも使用できる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、総厚さを増加させた自立形反応性フォイル44として使用できる。その様な反応性フォイルの総厚さは、フォイルの形成に使用する構成層の厚さおよび数によって異なる。10μm未満のフォイルは、それ自体でカールする傾向があるので、取扱が非常に困難である。100μmのオーダーのフォイルは堅く、従って、取り扱い易い。フォイルが厚いほど、自己伝播反応がフォイル中で急冷される危険性が最小限となる。反応性フォイルを使用する接合用途では、フォイルが発熱する速度と、熱が周囲のろう材層および形成すべき接合部の中に伝わる速度との間に臨界的なバランスがある。熱が発生するより速く遠くに伝わる場合、反応は急冷されて接合部は形成できない。より厚いフォイルは、熱が失われる同じ表面積に対して、熱を発生する体積がより大きいので、反応が急冷され難くい。
【0027】
より厚いフォイルは、より低い反応温度で使用することができ、一般的により安定したフォイルを形成する。形成反応温度が高いフォイルは、一般的に不安定であり、脆く、従って、危険であり、使用し難い。脆いフォイルは、例えば容易に亀裂を生じ、(弾性ひずみエネルギーおよび摩擦により)フォイルを発火させる局所的なホットスポットを生じさせる。その様な脆いフォイルの(例えば特定な接合サイズのための)裁断は、使用できない小片に割れたり、裁断工程中に発火する可能性が高いので、非常に困難である。自立形の厚いフォイルには、従来の方法で障害となっている熱衝撃および緻密化に関連する上記の問題を解決するという利点がある。どちらの現象もフォイル寸法の急速な変化に関連する。反応の際、従来のフォイルは急速に加熱し、それを抑制する基材を越えて膨脹しようとする。これが熱衝撃につながり、基材上に堆積したフォイルが脱離し、一定しない、効率の悪い結合を引き起こすことがある。反応が進行するにつれて、フォイルは、化学結合が変化するために緻密化も起こす。緻密化も基材からの脱離を引き起こし、一定しない、効率の悪い結合を引き起こすことがある。反応性フォイルを自立形にすることにより、脱離は阻止され、フォイルの操作および取扱が容易になる。従って、フォイルはより広範囲な応用に適したものになる。好ましい実施形態により、厚い反応性フォイルは50μm〜1cmのオーダーの厚さにある。
【0028】
フォイル44は、図6に示す様に、フォイル構造を通して1個以上の開口または穴62を有するように加工することができる。好ましくは、開口62はフォイル面積を横切る周期的なパターンで、例えば長方形の列として、形成する。開口の形成には、公知のどの様な方法でも使用できる。例えば、フォイル44上にフォトレジストを堆積させ、フォトレジストをパターン化し、次いでパターン化された穴を通して下にあるフォイルをエッチングすることにより、開口62を形成することができる。別の代表的な技術は、フォイル44に物理的に穴62を打ち抜くものである。好ましくは、開口の有効直径は10〜10,000マイクロメートルである(非円形開口の有効直径は、等面積の円形開口の直径である)。
【0029】
図6に示す様に、フォイル44中の開口により、接合材料52、または状況によってはバルク材料50が、加熱され、フォイル44の発熱反応により融解したことにより、これらの穴62を通して(矢印66に示されるように)押し出される。この押出により、接合材料52またはバルク材料50の1層が、自立形フォイル44の反対側にある他の層52またはバルク材料50と接触および結合することができる。パターン化された穴62により、バルク材料50相互の、および反応性フォイル44との結合がより強化され、より強力で、より一定した結合が得られる。
【0030】
本発明の一つ以上の実施形態を利用することにより、多くの異なる応用をより効果的に、効率的に達成することができる。例えば、金属ガラスバルク材料を接合することができ、その場合の最終製品は、結合部および反応したフォイル層を包含する、金属ガラスのみから製造された単一の構造物である。これまでは結合させるのに多くの難点があった、化学組成、熱的特性、および他の物理的特性が非常に異なったバルク材料の接合も今や可能である。半導体または超小型電子デバイスを回路基盤または他の構造物に結合させ、同時に、デバイスに複雑に関連する多くのリード線も形成することができる。半導体および超小型電子デバイスは密封することもできる。
【0031】
これらの接合適用は、本発明により、半田付け、ろう付け、および溶接の様な適用に通常関係する熱損傷の可能性が回避されるか、または少なくとも最少に抑えられるという点で、改良される。
【0032】
さらに、図1の製法により製造される反応性フォイルを利用することにより、接合されたバルク材料は自立することができる。つまり、バルク材料を実際に接合する前に、個々のバルク基材の上にろう材層を直接堆積させる必要がない。さらに、バルク基材は、反応性フォイルを予め結合すること、または他の前処理をすることを必要としない。強力で永久的な接合を行う時点で、必要とするバルク材料を自立形のろう材層または自立形の反応性フォイルに単純に堅く保持するだけでよい。
【0033】
本発明の実施形態により、金属ガラスである少なくとも1個のバルク材料を結合することができる。接合工程で、そのガラスにろう材を使用する必要はない。これは、反応性フォイルを、反応により金属ガラスに直接結合する様に設計できるためである。この接合工程を達成するには、反応性フォイル自体が反応して金属ガラスを形成できればよい。詳細に関しては、下記の実施例3参照する。
【0034】
本発明の実施形態により、バルク材料が超小型電子デバイスまたは半導体デバイスを含む場合に、より優れた結合が可能になる。その様なデバイスを基材、例えば回路基板に接合する場合、デバイスに対する損傷の可能性は、考慮しなければならない要因である。自立形反応性フォイルを使用してデバイスを基材に接合することにより、デバイスまたは隣接する構成部品に損傷を与えることがある熱はほとんど発生しない。半導体デバイスを基材上に大きな自由度で容易に配置することができる。特定のフォイル組成物、例えばNi/Alまたはモネルメタル(Monel)/Alを使用できる。その様な組成のフォイルは、従来のフォイルよりも取扱が容易であるのみならず、Ni、CuおよびAlの組合せは、自立形フォイルがより高い熱的および電気的伝導性を有することを可能にさせる。
【0035】
別の実施形態では、反応性多層ろう材(例えばNi−Cu合金の層とAlの層とTi−Zr−Hf合金の層が交互に配列するもの)を接合材料として、接合用途に使用する反応性フォイルと併用することができる。反応性多層ろう材は、層混合物として追加のエネルギー源を与え、接合材料を形成する。反応性多層フォイルと反応性多層ろう材の組合せにより、フォイル無しには自己伝播し得ない反応性ろう材を使用することができる。
【0036】
図7Aは、反応性フォイルの製造に使用する積層体の内側に延性の金属を包含する製法を図式的に示す。延性の金属メッシュスクリーン70または金属粉末を構成層46、48の一部または全部の間に包ませる。ついで、この積層体を図1に説明する様に処理する。図7Bは、結合させる2個の部品の間に反応性フォイルを配置し、続いて反応させた後の、形成される延性金属ストリンガ71またはアイランドの配置を示す。その様な延性アイランドまたはストリンガ71が存在することにより、一般的に脆い金属間反応生成物中の亀裂を阻止し、接合部の全体的な機械的安定性および信頼性を改善することができる。
【0037】
図1の製法は、酸化物層および発熱反応して酸化物層を還元する材料の層を含む多層フォイルの製造にも使用できる。発熱に加えて、これらのフォイルは、ろう材または半田の様な接合材料として使用できる延性の反応生成物を生成することができる。例えば、図1の製法をAl/CuOx層のアセンブリに応用することにより形成されるフォイルは、反応により、接合材料として作用する銅を生成する。下記の実施例2が参照される。
【0038】
図1の製法により厚い多層フォイルを製造した後、その厚い多層の上に、一連の比較的薄い反応性層を蒸着することにより、厚い層を点火し易くすることができる。使用の際、薄い層はより急速に点火して、横に広がる点火が厚い層に垂直方向に点火する。あるいは、図1の製法により厚い多層フォイルおよび薄い多層フォイルの両方を製造し、それらを冷間圧延により張り合わせることもできる。
【0039】
実施例
ここで下記の具体的実施例により、本発明をより良く理解することができる。
【0040】
実施例1−Ni/Al多層の機械的形成
NiおよびAlフォイルの交互層を積層することにより、試料を準備した。次いで、この積層体を圧延し、Cuジャケットの中に挿入し、繰り返し大まかにポンプ吸引し、Arで再充填し、密封した。このジャケットで被覆したアセンブリを直径の小さなロッドにすえ込み加工し、圧延して平らにした。圧延で平らにする前の試料の一部は、同じ厚さのリボンでより大きな変形(より小さい厚さの2層)を達成するために、50%硝酸でCuをエッチングすることにより、ジャケットを取り除き、再充填し、再度すえ込み加工し、次いで平らにした。次いで、エッチングによりCuジャケットを除去し、有効混合熱(示差走査熱量測定を使用して)、反応速度、機械的特性(引張試験)、および微小構造に関して分析した。それぞれ12ミクロンNiフォイルおよび18ミクロンAlフォイルの5個の(100cmx10cm)細片から出発し、これらの層を交互に積層し、長さ100cm、幅10cmの、5個の2層からなる積層体を形成した。この長い細片を周囲6cmのロッドの周りに巻き付け、末端を滑らせて除去し、平らにし、10cmx3cmの、200個の2層からなる積層体を形成した。次いでこの積層体を短い方向に圧延し、長さ10cmの巻物を形成し、この巻物を適切なサイズのCu管中に入れた。この管を外径0.0875”から外径0.187”に漸進的にすえ込み加工した。次いでこの小ロッドを、40〜250ミクロンの様々な厚さに冷間圧延した。
【0041】
図8は、反応性フォイルの微小構造を示す顕微鏡写真である。この図に示す微小構造では、Al(80)とNi(81)の交互層が存在することが明らかである。この様にして製造した反応性フォイルは、点火により大きな発熱を示したが、これは示差走査熱量測定分析によっても確認された。これらのフォイルは、延性であり、曲げることができ、切断、打ち抜きまたはさらなる成形が可能であることが分かった。
【0042】
図1の製法により製造される、圧延した反応性多層フォイルは、表面形態、層形成、粒子径、および組織において、蒸着されたフォイルとは異なっている。表面では、圧延したフォイルは蒸着フォイルよりも粗い表面を有する(rms粗さが0.1マイクロメートルより大きい)傾向がある。層形成では、圧延したフォイルは、フォイルの長さおよび幅に沿って層の厚さが大きく変化する。事実、塑性的なしなやかさが少ないシート(例えばNi)は、断面が細長い粒子の様に見える板に破断する傾向がある。これらの板は長さ、幅および厚さが十〜数百%変化する。圧延したフォイルは、巻き方向に細長い粒子(「パンケーキ構造」の粒子)を有する。対照的に、蒸着フォイルは、粒子の幅および長さがそれらの厚さと近似しているか、またはそれらの厚さよりも小さい傾向があり、その際、厚さは層の厚さにより決定される。
【0043】
組織は、結晶中の面と方向の結晶学的整列に関連する。冷間すえ込みおよび冷間圧延したフォイルでは、面心立方元素(FCC元素)が、それらの{110}面および変形の方向と平行の<112>方向で整列しているのが最も一般的である。体心立方元素(BCC)は、{100}面および変形の方向と平行の<110>方向で整列しているのが最も一般的であり、六方稠密元素(HCP)は、{0001}面および変形の方向と平行の<21 10>方向で整列している。
【0044】
実施例2−Al/CuO多層の機械的形成
Al/CuO反応は、Al/Ni混合反応により放出される熱のほぼ3倍の熱を生成する。この熱は多くの用途には大きすぎ、反応中に到達する温度は高すぎるので、生成物の多くが蒸発し、溶融した金属のシャワーとなって爆発する。これは燃焼および推進の用途には有利であるが、結合に理想的な生成物は、例えば、反応生成物を単に液化するだけの生成物である。これによって生成物が玉になりまたは蒸発する傾向を小さくし、接合する表面を濡らすことを助長する。さらに、金属とセラミックの機械的合体化は一般的には極めて困難である。希釈剤を(90質量%まで)含むことにより、二つの目的が達成される。この方法を使用することにより、最終的な反応温度が低下し、合体すべき材料同士の機械的相容性が高められる。
【0045】
その様な多層を形成するために、酸化反応物のフォイル(この場合はAl)および反応生成物のフォイル(この場合Cu)から出発する。次に、Cuフォイルを炉中で流動する空気環境中で酸化させる(この環境を変えて、異なる化合物を製造することができる)。ここではCuフォイルは、Cuの内側層とCuOの表面コーティングからなるサンドイッチ構造体である。炉の温度および加熱および冷却の時間−温度プロファイルを変えることにより、CuOのコーティングの厚さおよび品質を調整することができる。CuOの冷間加工性が(特にコーティングが薄く、成長中に急激な温度変化にさらされない場合)大幅に改良され、Cu希釈剤との協力で変形する。担体(Cu)上で反応物(CuO)を成長させることにより、前駆物質の取扱も容易になる(CuOは脆く、折り曲げまたは加工により粉塵になる)。こうして、図1で説明した方法により、AlおよびCuO/Cu/CuOフォイルが積層され、反応性多層フォイルに形成される。
【0046】
実施例3−無定形−成形反応性フォイルの機械的製造
Al、Ni、Cu、Ti、Zr、またはHf、またはNi−CuまたはTi−Zr−Hfの合金のシートからなる金属シートを積層し、これらの積層体を上記の様に密封し、すえ込み加工し、冷間圧延することにより、室温で、またはその近く(<200℃)で自己伝播する反応性フォイルを形成することができる。これらのフォイルは反応して無定形材料を形成する。すえ込み加工および冷間圧延工程中、積層体を室温以下に維持し、製造工程中のエネルギー損失を最少に抑える注意が必要である。得られる反応性フォイルには、下記の様な幾つかの有用な用途がある。
1)バルク金属ガラスの形成:上記のすえ込みおよび圧延したフォイルを使用し、自己伝播様式でバルク金属ガラスを形成することができる。
2)接合:一般的な自立形反応性フォイル(形成反応によるフォイル、レドックス反応によるフォイル、または反応により無定形になるフォイル)は、ろう材を使用せずに、バルク金属ガラスを他の部品に結合することができ、上記の反応性フォイル(Al、Ni、Cu、Ti、Zr、またはHf、またはNi−CuまたはTi−Zr−Hfの合金のシートで機械的に形成したもの)は、金属ガラスバルク材と接合して、接合部および反応したフォイル層を包含する、金属ガラスのみから製造された単一の構造体になる。
3)反応性接合材料:上記の反応性多層フォイルは、接合用途に使用する反応性フォイルと併用して接合材料としても使用できる。反応性フォイルにより与えられるエネルギーに加えて、反応性多層ろう材は、層混合物として接合材料を形成してエネルギー源を与える。反応性多層フォイルと反応性多層ろう材の組合せにより、フォイル無しには自己伝播できない反応性ろう材を使用することができ、総熱量を少なくして反応性多層フォイルを使用することができる。
【0047】
上記の実施形態は、本発明の原理の応用を表わす、多くの可能な具体的実施形態の幾つかを例示しているものと理解される。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの様々な他の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の多層反応性フォイルの製造方法を模式的に示す流れ図である。
【図2】平らなアセンブリをジャケット中に挿入する様子を示す図である。
【図3】円筒形アセンブリの挿入を示す図である。
【図4】図1の方法により製造した自立形多層反応性フォイルを示す図である。
【図5】代表的な接合方法を模式的に示す図である。
【図6】穴の開けられた自立形多層反応性フォイルを示す図である。
【図7A】反応性フォイル中に延性部品を組み入れる様子を示す図である。
【図7B】反応性フォイル中に延性部品を組み入れる様子を示す図である。
【図8】代表的な反応性フォイルの微小構造を表わす顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
〔発明の詳細な説明〕
発明の分野
本願は、反応性多層フォイル、および特に塑性変形を利用してその様なフォイルを製造する方法に関する。
【0002】
発明の背景
反応性多層コーティングは、平らな領域で強力な、制御された量の熱を発生する必要がある広範囲な用途に有用である。その様な構造は、従来、基材に支持された一連のコーティングからなり、コーティングは、正確に制御された量の熱を発生する層により覆われる領域を横切って広がる発熱化学反応を適切な刺激により受ける。これらの反応性コーティングを主として溶接、半田付け、またはろう付け用の熱源として説明するが、これらのコーティングは、制御された局所的な発熱を必要とする他の用途、例えば推進および点火、にも使用できる。
【0003】
ほとんどすべての工業で、技術の進歩と共に接合の改良が益々重要になっている。これは、接合すべき物体がより小さく、より脆くなるにつれて特に当てはまる。さらに、新しい材料は、接合が困難であることが多く、工業界に多くの問題を投げかけている。
【0004】
多くの接合方法は、熱源を必要とする。この熱源は、接合すべき構造物に対して外部または内部に存在してもよい。外部熱源は、典型的には、接合すべき物体(バルク材料)および接合材料を含む、結合すべき全体を加熱する炉である。外部熱源は、バルク材料が接合に必要とされる高温に対して敏感であることがあるので、問題を引き起こす。バルク材料は熱収縮における不適合によっても損傷を受けることがある。
【0005】
内部熱源は、反応性粉末の形態をとることが多い。反応性粉末は典型的には、発熱反応して最終的な化合物または合金を形成する金属または化合物の混合物である。その様な粉末は、1960年代初期に開発され、自己伝播高温合成(SHS)による結合を促進した。しかし、SHS反応では、放出されるエネルギーおよびエネルギーの拡散を制御するのが困難であることが多い。その結果、粉末による結合は、信頼性が低く、不十分になることがある。
【0006】
続いて開発された反応性多層構造物は、反応性粉末結合に関連する問題を軽減した。これらの構造物は、発熱反応を起こす薄いコーティングからなる。例えば、T.P. Weihs, Handbook of Thin Film Process Technology, Part B, Section F.7、編集D.A. GlockerおよびS.I. Shah (IOP Publishing, 1998);1996年7月23日Barbee, Jr.らに付与された米国特許第5,538,795号;および1995年1月17日Makowieckiらに付与された米国特許第5,381,944号を参照。反応性多層構造物により、より制御可能で一定の熱発生を有する発熱反応が得られる。その様な反応の背後にある基本的な駆動力は、原子結合エネルギーの減少である。一連の反応性層に点火すると、個別の層が原子的に混合して熱が局所的に発生する。この熱が構造物の隣接領域に点火し、それによって反応を構造物の全長に移動させ、すべての材料が反応するまで熱を発生する。
【0007】
しかし、この進歩にも関わらず、多くの問題は残っている。例えば、反応性コーティングが反応時に基材から脱離することが多い。この脱離は、反応の際の反応性フォイル固有の緻密化と加熱および冷却の際の不均一な熱膨脹または収縮とにより引き起こされる。この脱離は、接合用途における結合を著しく弱くする。さらに重大なのは、現在の反応性多層フォイルは、延性が限られた脆い金属間化合物を生じることであり、金属間化合物は従って、結合した構成部品間にこれらの金属間化合物が存在することにより、得られた接合部が劣化することがある。その結果、内部または外部の応力が結合の破滅的な機械的欠陥を引き起こすことがある。
【0008】
反応性コーティングに加えて、冷間圧延により自立形反応性層を開発する努力がなされた。L. BattezzattiらのActa Materialia, Vol. 47, pp.1901-1914 (1999)参照。Ni−Al多層反応性フォイルは、NiおよびAlの2層シートを冷間圧延し、続いて繰り返し手作業で折り曲げ、繰り返し冷間圧延することにより、形成されていた。最初の2層細片をその元の厚さの半分に圧延した後、再度折り曲げてその本来の厚さに戻し、層の数を倍にしていた。この工程を数多く繰り返していた。
【0009】
この圧延フォイルの製造は時間がかかり、困難であった。圧延機に通すには潤滑油が必要であり、圧延した材料の表面を圧延に通す度に清浄にしなければならない。さらに、シート原料の手作業による折り曲げは、大規模製造には容易に適用できない。金属シートの積層体から出発し、次いで数回圧延および折り曲げることにより、製法を簡素化できる。しかし、多くの金属層を一度に圧延すると、これらの層は跳ね返り、層の分離および得られたフォイルの劣化を引き起こす。その様な分離も、層間表面の好ましくない酸化を引き起こし、冷間圧接による層の単一化を妨害する。
そのため、反応性多層フォイルの改良された製造方法が求められている。
【0010】
発明の概要
本発明により、反応性層のアセンブリ(積層体ないし多層)を用意し、アセンブリをジャケット中に挿入し、ジャケットで被覆しアセンブリを変形してその断面積を減少させ、ジャケットで被覆したアセンブリを平らにしてシートを形成し、次いでジャケットを除去することにより、反応性多層フォイルを製造する。ジャケット中に挿入する前に、アセンブリを巻いて円筒を形成すること、および変形の際にジャケットで被覆したアセンブリを100℃未満、好ましくは25℃未満の温度に冷却することが有利である。形成される多層フォイルは、結合、点火または推進に使用する自立形反応性フォイルとして有利である。
【0011】
添付の図面を参照しながら以下に例示のために詳細に記載する実施形態から、本発明の性質、利点および様々な他の特徴は明らかである。
これらの図面は、本発明の概念を例示するためであり、写真を除いて、原寸ではない。
【0012】
詳細な説明
図面に関して、図1は、本発明の反応性多層フォイルを製造する工程を模式的に示す流れ図である。図1のブロックAに示す第一の工程では、発熱反応し得る材料の交互層のアセンブリ(積層体ないし多層)、例えば、NiフォイルとAlフォイルの交互層のアセンブリを用意する。ここで使用する用語「積層体」は、結合されていない層のアセンブリ(組立品)を意味する。用語「多層」は、例えば冷間圧接により、一緒に接合された層のアセンブリを意味する。
【0013】
ブロックBで示す次の工程では、アセンブリをジャケットの中に挿入する。これは様々な様式で行うことができる。例えば、図2に示す様に、平らなアセンブリ20を平らにした管状ジャケット21の中に挿入することができる。平らなアセンブリ20は、交互層の積層体でも、交互層の円筒を平らにしたものでもよい。あるいは、図3に示す様に、平らなアセンブリを巻いて円筒30を形成し、管状ジャケット31の中に挿入してもよい。ジャケット31は、アセンブリの材料を損傷せずに容易に取り外せるべきであり、例えば銅の管は、硝酸中でNiまたはAlよりもはるかに迅速にエッチングすることができる。
【0014】
第三の工程(ブロックC)では、ジャケットで被覆したアセンブリを変形して、その断面積を減少させる。円筒形アセンブリを管状ジャケット中に挿入する場合、好ましい変形はすえ込み(swaging)により行うことができる。すえ込みにおけるサイズ縮小は、係合するテーパーの付いたダイのハンマー作用によるものであり、ダイの中にジャケットを挿入し、すべての側部から圧縮する。すえ込みには、圧延に対して3つの利点がある。第一は、ジャケットで被覆した円筒を半径方向で圧縮できることである。この様に巻き付けたフォイルに対称的に負荷をかけることにより、圧延で見られる様な跳ね返りにより引き起こされる層の分離が最少に抑えられる。第二の、主要な利点は、変形が立体的であり、従って、変形が二次元的でしかない圧延よりも、より大きな伸張を与える。第三の利点は、第二の利点と関連している。圧延では、部品の厚さを2分の1に減少させることにより、2層の厚さが半分に減少し、長さが2倍増加する。しかし、管の直径を2分の1に減少させると、2層の有効厚さは半分以下に減少し、断面積が4分の1になるので、長さは4倍増加する。ジャケットで被覆したアセンブリは、変形の際に100℃未満、好ましくは25℃未満に維持すべきである。
【0015】
次の工程(ブロックD)ではジャケットで被覆したアセンブリを平らにし、例えばすえ込み変形した材料を圧延により平らにし、平面的な幾何学的構造にする。点火を容易にしかつ反応速度を高くするために、追加の冷間圧延をすることにより、2層の厚さをさらに減少させる。平らにする際、アセンブリは100℃未満、好ましくは25℃未満に維持すべきである。次いで、例えばジャケットの縁部を化学的エッチング、切り取り、または摘み取りにより、ジャケット材料を除去し、反応性多層シートを取り出す。
【0016】
下記の例は、図1の方法の利点を例示する。Ni/Al多層フォイルを冷間圧延しようとする場合を考える。所望の反応性フォイルの総厚さが1mmであり、2層周期(priod)が0.250ミクロンである場合、機械的加工をNiおよびAlの比較的薄いフォイルで開始して、初期2層周期を0.250ミクロンに下げるのに必要な圧延の度合いを限定することが好ましい。しかし、25ミクロン未満の初期2層周期は、非常に高価なNiおよびAlのフォイルを必要とし、個々のフォイルを数千枚を有する積層とすることが必要になる。例えば、所望の最終製品を得るのに、25ミクロン2層周期のフォイル4000枚を有する総厚さ10cmの初期積層体を、100分の1の厚さに減少させて総厚1mmにする必要がある。その様な層数の大きい積層体の取扱いおよび機械的加工は、特に、材料の温度を室温近くに維持して層間の原子混合を阻止する必要があるので、非常に困難である。
【0017】
同じ目的を達成するための、より効率的で、効果的な手段は、(Cuジャケット中の)直径3.5cmの円筒形状に巻いた2層積層体をすえ込み加工して、その直径を0.5cmに減少させ、それによって有効2層周期を(3.5/0.5)2=49〜7分の1に減少させることである。次いで、得られる0.5cmのロッドを、約2〜14分の1で容易に圧延して平らにして、必要な厚さ1mmの反応性リボンにすることができる。その様なすえ込み加工は比較的簡単であり、容易に達成できる。この技術では、平らにした後のリボンの幅を横切ってある程度の不均一が生じるが、この変動は外側縁部に限られ、所望により容易に除去することができる。望ましいすえ込み変形の量は、断面積の30%〜99%減少であり、好ましくは60%〜95%減少である。すえ込み加工の代わりに、ロッド圧延、ロッド引き抜き、または押出によっても該面積を減少させることができる。この様式における該面積の減少は、典型的には各層を一緒に冷間圧接して多層を形成する。
【0018】
図1の製法は、経済的に有利であり、広範囲な用途に有用な高品質反応性フォイルを製造する。本製法は蒸着よりも安価で迅速である。本製法は簡単な装置および安価な原料を使用し、大量生産に容易に採用できる。また、本製法は、従来の蒸着により製造するのでは非常に高価になる(厚さが500マイクロメートルを超える)非常に厚いフォイルを経済的に製造することもできる。
【0019】
図4に示す様に、図1の製法により製造される反応性フォイル44は、熱発生源として特に使用する自立形の多層反応性フォイルである。このフォイルは、第一材料46および第一材料と発熱反応し得る第二材料48の交互層の連続からなる。自立形のフォイルは、「バルク」試料の様に取り扱えるので、薄いフィルムよりも容易に特徴を表わすことができる。反応性フォイル44を自立形にすることにより、可能な用途が大きく広がる。その様な反応性フォイルは、必ずしも特定の用途に結びつけられるものではないので、自己伝播性の局所的熱源を必要とするあらゆる目的に大量生産することができる。大きなまたは繊細な物体を真空室に入れて反応性多層フォイルにより被覆されることにより、反応性フォイルの製造が制限を受けまたは妨げられることは無い。さらに、自立形フォイルは、基材への好ましくない熱吸収を最少に抑えることができる。
【0020】
図1の方法により製造される自立形フォイルは、結合、点火および推進を包含する様々な用途に使用するために適合させることができる。例えば、自立形フォイルは、材料の本体(ここでは「バルク材料」と呼ぶ)と一緒に結合し、一体化された製品を形成するのに使用できる。自立形フォイルは、あらゆる種類の結合、半田付け、ろう付け、溶接または他の、バルク材料を接合するための用途にも使用できる。2個以上のバルク材料50を一緒に接合する典型的な接合用途を図5に示す。バルク材料50はセラミック、金属ガラス、金属/合金、重合体、複合体、半導体、および他の形態の材料でよい。図5では、接合材料52を使用してバルク材料50と一緒に接合する。接合材料52は、融解してバルク材料50と一緒に接合する材料の層(または複合体層)でよい。接合材料52は、金属ガラス、金属/合金、機能的に格付された層、Ni−Bフィルム、半田、ろう材、自己伝播ろう材、それらの組合せ、または接合材料のような他の材料から製造された自立形シートの形態でよい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、反応性フォイル44を接合材料52同士の間に配置し、サンドイッチの様な構造を形成する。この様にして形成された反応性フォイルの「サンドイッチ」を好ましくはバルク材料50同士の間の、バルク材料50同士を一緒に接合する場所(例えば、終点、継ぎ目、交差点等)に配置する。あるいは、反応性フォイル44を、接合材料52で予め被覆したバルク材料50の間に配置する。
【0022】
接合工程では、力(図5では万力51により象徴的に示す)を作用させ、バルク材料50、接合材料52、および反応性フォイル44の相対的な位置を維持する。すべての構成部品は一緒に圧迫された自立形要素であることが有利である。別の実施形態では、接合材料52は反応性フォイル44との複合体として示される。
【0023】
接合工程における部品を配置した後、刺激(点火したマッチ55として示す)を、好ましくは反応性フォイル44の一端に作用させ、多層反応を開始する。反応性フォイル44中で原子が混合されることにより、接合材料52を反応性フォイル44の全長に沿って融解させるのに十分な急速で強力な熱が発生する。この状態で、接合材料52がバルク材料50と一緒に接合する。この直後に、接合したバルク材料50は周囲の温度(例えば室温)に戻り、加えている力を取り外すことができる。
【0024】
接合材料52および反応性フォイル44から構成された複合構造は、接合材料52を反応性フォイル44の片側に堆積(例えば蒸着)させること、または機械的力(例えば冷間圧延)を加えることにより形成することができる。次いで、接合材料の別の一層を、反応性フォイル44の第二の側に蒸着すること、または機械的力を加えることにより、反応性フォイル44と結合させる。
【0025】
反応性フォイル44、バルク材料50、または両方の表面濡れを容易にするために濡れ/接着層を加えることができる。濡れ/接着層により、接合材料を均一に広げ、バルク材料を確実に一定して接合することができる。濡れ/接着層は、接合材料(例えば、ろう材)、Ti、Sn、金属ガラス等の薄い層でよい。市販の合金、例えばAg−Sn、Ag−Cu−Ti、Cu−Ti、Au−Sn、およびNi−Bも使用できる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、総厚さを増加させた自立形反応性フォイル44として使用できる。その様な反応性フォイルの総厚さは、フォイルの形成に使用する構成層の厚さおよび数によって異なる。10μm未満のフォイルは、それ自体でカールする傾向があるので、取扱が非常に困難である。100μmのオーダーのフォイルは堅く、従って、取り扱い易い。フォイルが厚いほど、自己伝播反応がフォイル中で急冷される危険性が最小限となる。反応性フォイルを使用する接合用途では、フォイルが発熱する速度と、熱が周囲のろう材層および形成すべき接合部の中に伝わる速度との間に臨界的なバランスがある。熱が発生するより速く遠くに伝わる場合、反応は急冷されて接合部は形成できない。より厚いフォイルは、熱が失われる同じ表面積に対して、熱を発生する体積がより大きいので、反応が急冷され難くい。
【0027】
より厚いフォイルは、より低い反応温度で使用することができ、一般的により安定したフォイルを形成する。形成反応温度が高いフォイルは、一般的に不安定であり、脆く、従って、危険であり、使用し難い。脆いフォイルは、例えば容易に亀裂を生じ、(弾性ひずみエネルギーおよび摩擦により)フォイルを発火させる局所的なホットスポットを生じさせる。その様な脆いフォイルの(例えば特定な接合サイズのための)裁断は、使用できない小片に割れたり、裁断工程中に発火する可能性が高いので、非常に困難である。自立形の厚いフォイルには、従来の方法で障害となっている熱衝撃および緻密化に関連する上記の問題を解決するという利点がある。どちらの現象もフォイル寸法の急速な変化に関連する。反応の際、従来のフォイルは急速に加熱し、それを抑制する基材を越えて膨脹しようとする。これが熱衝撃につながり、基材上に堆積したフォイルが脱離し、一定しない、効率の悪い結合を引き起こすことがある。反応が進行するにつれて、フォイルは、化学結合が変化するために緻密化も起こす。緻密化も基材からの脱離を引き起こし、一定しない、効率の悪い結合を引き起こすことがある。反応性フォイルを自立形にすることにより、脱離は阻止され、フォイルの操作および取扱が容易になる。従って、フォイルはより広範囲な応用に適したものになる。好ましい実施形態により、厚い反応性フォイルは50μm〜1cmのオーダーの厚さにある。
【0028】
フォイル44は、図6に示す様に、フォイル構造を通して1個以上の開口または穴62を有するように加工することができる。好ましくは、開口62はフォイル面積を横切る周期的なパターンで、例えば長方形の列として、形成する。開口の形成には、公知のどの様な方法でも使用できる。例えば、フォイル44上にフォトレジストを堆積させ、フォトレジストをパターン化し、次いでパターン化された穴を通して下にあるフォイルをエッチングすることにより、開口62を形成することができる。別の代表的な技術は、フォイル44に物理的に穴62を打ち抜くものである。好ましくは、開口の有効直径は10〜10,000マイクロメートルである(非円形開口の有効直径は、等面積の円形開口の直径である)。
【0029】
図6に示す様に、フォイル44中の開口により、接合材料52、または状況によってはバルク材料50が、加熱され、フォイル44の発熱反応により融解したことにより、これらの穴62を通して(矢印66に示されるように)押し出される。この押出により、接合材料52またはバルク材料50の1層が、自立形フォイル44の反対側にある他の層52またはバルク材料50と接触および結合することができる。パターン化された穴62により、バルク材料50相互の、および反応性フォイル44との結合がより強化され、より強力で、より一定した結合が得られる。
【0030】
本発明の一つ以上の実施形態を利用することにより、多くの異なる応用をより効果的に、効率的に達成することができる。例えば、金属ガラスバルク材料を接合することができ、その場合の最終製品は、結合部および反応したフォイル層を包含する、金属ガラスのみから製造された単一の構造物である。これまでは結合させるのに多くの難点があった、化学組成、熱的特性、および他の物理的特性が非常に異なったバルク材料の接合も今や可能である。半導体または超小型電子デバイスを回路基盤または他の構造物に結合させ、同時に、デバイスに複雑に関連する多くのリード線も形成することができる。半導体および超小型電子デバイスは密封することもできる。
【0031】
これらの接合適用は、本発明により、半田付け、ろう付け、および溶接の様な適用に通常関係する熱損傷の可能性が回避されるか、または少なくとも最少に抑えられるという点で、改良される。
【0032】
さらに、図1の製法により製造される反応性フォイルを利用することにより、接合されたバルク材料は自立することができる。つまり、バルク材料を実際に接合する前に、個々のバルク基材の上にろう材層を直接堆積させる必要がない。さらに、バルク基材は、反応性フォイルを予め結合すること、または他の前処理をすることを必要としない。強力で永久的な接合を行う時点で、必要とするバルク材料を自立形のろう材層または自立形の反応性フォイルに単純に堅く保持するだけでよい。
【0033】
本発明の実施形態により、金属ガラスである少なくとも1個のバルク材料を結合することができる。接合工程で、そのガラスにろう材を使用する必要はない。これは、反応性フォイルを、反応により金属ガラスに直接結合する様に設計できるためである。この接合工程を達成するには、反応性フォイル自体が反応して金属ガラスを形成できればよい。詳細に関しては、下記の実施例3参照する。
【0034】
本発明の実施形態により、バルク材料が超小型電子デバイスまたは半導体デバイスを含む場合に、より優れた結合が可能になる。その様なデバイスを基材、例えば回路基板に接合する場合、デバイスに対する損傷の可能性は、考慮しなければならない要因である。自立形反応性フォイルを使用してデバイスを基材に接合することにより、デバイスまたは隣接する構成部品に損傷を与えることがある熱はほとんど発生しない。半導体デバイスを基材上に大きな自由度で容易に配置することができる。特定のフォイル組成物、例えばNi/Alまたはモネルメタル(Monel)/Alを使用できる。その様な組成のフォイルは、従来のフォイルよりも取扱が容易であるのみならず、Ni、CuおよびAlの組合せは、自立形フォイルがより高い熱的および電気的伝導性を有することを可能にさせる。
【0035】
別の実施形態では、反応性多層ろう材(例えばNi−Cu合金の層とAlの層とTi−Zr−Hf合金の層が交互に配列するもの)を接合材料として、接合用途に使用する反応性フォイルと併用することができる。反応性多層ろう材は、層混合物として追加のエネルギー源を与え、接合材料を形成する。反応性多層フォイルと反応性多層ろう材の組合せにより、フォイル無しには自己伝播し得ない反応性ろう材を使用することができる。
【0036】
図7Aは、反応性フォイルの製造に使用する積層体の内側に延性の金属を包含する製法を図式的に示す。延性の金属メッシュスクリーン70または金属粉末を構成層46、48の一部または全部の間に包ませる。ついで、この積層体を図1に説明する様に処理する。図7Bは、結合させる2個の部品の間に反応性フォイルを配置し、続いて反応させた後の、形成される延性金属ストリンガ71またはアイランドの配置を示す。その様な延性アイランドまたはストリンガ71が存在することにより、一般的に脆い金属間反応生成物中の亀裂を阻止し、接合部の全体的な機械的安定性および信頼性を改善することができる。
【0037】
図1の製法は、酸化物層および発熱反応して酸化物層を還元する材料の層を含む多層フォイルの製造にも使用できる。発熱に加えて、これらのフォイルは、ろう材または半田の様な接合材料として使用できる延性の反応生成物を生成することができる。例えば、図1の製法をAl/CuOx層のアセンブリに応用することにより形成されるフォイルは、反応により、接合材料として作用する銅を生成する。下記の実施例2が参照される。
【0038】
図1の製法により厚い多層フォイルを製造した後、その厚い多層の上に、一連の比較的薄い反応性層を蒸着することにより、厚い層を点火し易くすることができる。使用の際、薄い層はより急速に点火して、横に広がる点火が厚い層に垂直方向に点火する。あるいは、図1の製法により厚い多層フォイルおよび薄い多層フォイルの両方を製造し、それらを冷間圧延により張り合わせることもできる。
【0039】
実施例
ここで下記の具体的実施例により、本発明をより良く理解することができる。
【0040】
実施例1−Ni/Al多層の機械的形成
NiおよびAlフォイルの交互層を積層することにより、試料を準備した。次いで、この積層体を圧延し、Cuジャケットの中に挿入し、繰り返し大まかにポンプ吸引し、Arで再充填し、密封した。このジャケットで被覆したアセンブリを直径の小さなロッドにすえ込み加工し、圧延して平らにした。圧延で平らにする前の試料の一部は、同じ厚さのリボンでより大きな変形(より小さい厚さの2層)を達成するために、50%硝酸でCuをエッチングすることにより、ジャケットを取り除き、再充填し、再度すえ込み加工し、次いで平らにした。次いで、エッチングによりCuジャケットを除去し、有効混合熱(示差走査熱量測定を使用して)、反応速度、機械的特性(引張試験)、および微小構造に関して分析した。それぞれ12ミクロンNiフォイルおよび18ミクロンAlフォイルの5個の(100cmx10cm)細片から出発し、これらの層を交互に積層し、長さ100cm、幅10cmの、5個の2層からなる積層体を形成した。この長い細片を周囲6cmのロッドの周りに巻き付け、末端を滑らせて除去し、平らにし、10cmx3cmの、200個の2層からなる積層体を形成した。次いでこの積層体を短い方向に圧延し、長さ10cmの巻物を形成し、この巻物を適切なサイズのCu管中に入れた。この管を外径0.0875”から外径0.187”に漸進的にすえ込み加工した。次いでこの小ロッドを、40〜250ミクロンの様々な厚さに冷間圧延した。
【0041】
図8は、反応性フォイルの微小構造を示す顕微鏡写真である。この図に示す微小構造では、Al(80)とNi(81)の交互層が存在することが明らかである。この様にして製造した反応性フォイルは、点火により大きな発熱を示したが、これは示差走査熱量測定分析によっても確認された。これらのフォイルは、延性であり、曲げることができ、切断、打ち抜きまたはさらなる成形が可能であることが分かった。
【0042】
図1の製法により製造される、圧延した反応性多層フォイルは、表面形態、層形成、粒子径、および組織において、蒸着されたフォイルとは異なっている。表面では、圧延したフォイルは蒸着フォイルよりも粗い表面を有する(rms粗さが0.1マイクロメートルより大きい)傾向がある。層形成では、圧延したフォイルは、フォイルの長さおよび幅に沿って層の厚さが大きく変化する。事実、塑性的なしなやかさが少ないシート(例えばNi)は、断面が細長い粒子の様に見える板に破断する傾向がある。これらの板は長さ、幅および厚さが十〜数百%変化する。圧延したフォイルは、巻き方向に細長い粒子(「パンケーキ構造」の粒子)を有する。対照的に、蒸着フォイルは、粒子の幅および長さがそれらの厚さと近似しているか、またはそれらの厚さよりも小さい傾向があり、その際、厚さは層の厚さにより決定される。
【0043】
組織は、結晶中の面と方向の結晶学的整列に関連する。冷間すえ込みおよび冷間圧延したフォイルでは、面心立方元素(FCC元素)が、それらの{110}面および変形の方向と平行の<112>方向で整列しているのが最も一般的である。体心立方元素(BCC)は、{100}面および変形の方向と平行の<110>方向で整列しているのが最も一般的であり、六方稠密元素(HCP)は、{0001}面および変形の方向と平行の<21 10>方向で整列している。
【0044】
実施例2−Al/CuO多層の機械的形成
Al/CuO反応は、Al/Ni混合反応により放出される熱のほぼ3倍の熱を生成する。この熱は多くの用途には大きすぎ、反応中に到達する温度は高すぎるので、生成物の多くが蒸発し、溶融した金属のシャワーとなって爆発する。これは燃焼および推進の用途には有利であるが、結合に理想的な生成物は、例えば、反応生成物を単に液化するだけの生成物である。これによって生成物が玉になりまたは蒸発する傾向を小さくし、接合する表面を濡らすことを助長する。さらに、金属とセラミックの機械的合体化は一般的には極めて困難である。希釈剤を(90質量%まで)含むことにより、二つの目的が達成される。この方法を使用することにより、最終的な反応温度が低下し、合体すべき材料同士の機械的相容性が高められる。
【0045】
その様な多層を形成するために、酸化反応物のフォイル(この場合はAl)および反応生成物のフォイル(この場合Cu)から出発する。次に、Cuフォイルを炉中で流動する空気環境中で酸化させる(この環境を変えて、異なる化合物を製造することができる)。ここではCuフォイルは、Cuの内側層とCuOの表面コーティングからなるサンドイッチ構造体である。炉の温度および加熱および冷却の時間−温度プロファイルを変えることにより、CuOのコーティングの厚さおよび品質を調整することができる。CuOの冷間加工性が(特にコーティングが薄く、成長中に急激な温度変化にさらされない場合)大幅に改良され、Cu希釈剤との協力で変形する。担体(Cu)上で反応物(CuO)を成長させることにより、前駆物質の取扱も容易になる(CuOは脆く、折り曲げまたは加工により粉塵になる)。こうして、図1で説明した方法により、AlおよびCuO/Cu/CuOフォイルが積層され、反応性多層フォイルに形成される。
【0046】
実施例3−無定形−成形反応性フォイルの機械的製造
Al、Ni、Cu、Ti、Zr、またはHf、またはNi−CuまたはTi−Zr−Hfの合金のシートからなる金属シートを積層し、これらの積層体を上記の様に密封し、すえ込み加工し、冷間圧延することにより、室温で、またはその近く(<200℃)で自己伝播する反応性フォイルを形成することができる。これらのフォイルは反応して無定形材料を形成する。すえ込み加工および冷間圧延工程中、積層体を室温以下に維持し、製造工程中のエネルギー損失を最少に抑える注意が必要である。得られる反応性フォイルには、下記の様な幾つかの有用な用途がある。
1)バルク金属ガラスの形成:上記のすえ込みおよび圧延したフォイルを使用し、自己伝播様式でバルク金属ガラスを形成することができる。
2)接合:一般的な自立形反応性フォイル(形成反応によるフォイル、レドックス反応によるフォイル、または反応により無定形になるフォイル)は、ろう材を使用せずに、バルク金属ガラスを他の部品に結合することができ、上記の反応性フォイル(Al、Ni、Cu、Ti、Zr、またはHf、またはNi−CuまたはTi−Zr−Hfの合金のシートで機械的に形成したもの)は、金属ガラスバルク材と接合して、接合部および反応したフォイル層を包含する、金属ガラスのみから製造された単一の構造体になる。
3)反応性接合材料:上記の反応性多層フォイルは、接合用途に使用する反応性フォイルと併用して接合材料としても使用できる。反応性フォイルにより与えられるエネルギーに加えて、反応性多層ろう材は、層混合物として接合材料を形成してエネルギー源を与える。反応性多層フォイルと反応性多層ろう材の組合せにより、フォイル無しには自己伝播できない反応性ろう材を使用することができ、総熱量を少なくして反応性多層フォイルを使用することができる。
【0047】
上記の実施形態は、本発明の原理の応用を表わす、多くの可能な具体的実施形態の幾つかを例示しているものと理解される。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの様々な他の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の多層反応性フォイルの製造方法を模式的に示す流れ図である。
【図2】平らなアセンブリをジャケット中に挿入する様子を示す図である。
【図3】円筒形アセンブリの挿入を示す図である。
【図4】図1の方法により製造した自立形多層反応性フォイルを示す図である。
【図5】代表的な接合方法を模式的に示す図である。
【図6】穴の開けられた自立形多層反応性フォイルを示す図である。
【図7A】反応性フォイル中に延性部品を組み入れる様子を示す図である。
【図7B】反応性フォイル中に延性部品を組み入れる様子を示す図である。
【図8】代表的な反応性フォイルの微小構造を表わす顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性多層フォイルであって、発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該各層が冷間圧接により張り合わされていることを特徴とする反応性多層フォイル。
【請求項2】
シートに接着した1個以上の接合材料層をさらに含んでなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項3】
シートの上部および下部に接着した接合材料層をさらに含んでなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項4】
シートを抜ける複数の開口をさらに含んでおり、該開口が10〜10,000マイクロメートルの範囲内の有効直径を有している請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項5】
開口が延性材料で充填されている請求項4に記載の反応性多層フォイル。
【請求項6】
交互層が、ニッケルまたはニッケル合金の層とアルミニウムまたはアルミニウム合金の層とを交互に配置したものからなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項7】
交互層が酸化−還元により反応する請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項8】
交互層が還元−形成により反応する請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項9】
交互層が、酸化銅の層とアルミニウムまたはアルミニウム合金の層とを交互に配置したものからなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項10】
交互層の積層体が、エネルギーを吸収し、それによって反応温度を下げる希釈材料を含んでいる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項11】
第一物体を第二物体に結合させる方法であって、
第一物体と第二物体との間に自立形反応性多層フォイルであって、発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該各層が冷間圧接により張り合わされている自立形反応性多層フォイルを配置する工程;
各物体を該反応性フォイルに押圧する工程;および
該フォイルに点火する工程
からなることを特徴とする方法。
【請求項1】
反応性多層フォイルであって、発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該各層が冷間圧接により張り合わされていることを特徴とする反応性多層フォイル。
【請求項2】
シートに接着した1個以上の接合材料層をさらに含んでなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項3】
シートの上部および下部に接着した接合材料層をさらに含んでなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項4】
シートを抜ける複数の開口をさらに含んでおり、該開口が10〜10,000マイクロメートルの範囲内の有効直径を有している請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項5】
開口が延性材料で充填されている請求項4に記載の反応性多層フォイル。
【請求項6】
交互層が、ニッケルまたはニッケル合金の層とアルミニウムまたはアルミニウム合金の層とを交互に配置したものからなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項7】
交互層が酸化−還元により反応する請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項8】
交互層が還元−形成により反応する請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項9】
交互層が、酸化銅の層とアルミニウムまたはアルミニウム合金の層とを交互に配置したものからなる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項10】
交互層の積層体が、エネルギーを吸収し、それによって反応温度を下げる希釈材料を含んでいる請求項1に記載の反応性多層フォイル。
【請求項11】
第一物体を第二物体に結合させる方法であって、
第一物体と第二物体との間に自立形反応性多層フォイルであって、発熱反応し得る材料の交互層を変形しかつ、張り合わせた積層体からなり、該積層体が圧力によりシートに変形されており、該各層が冷間圧接により張り合わされている自立形反応性多層フォイルを配置する工程;
各物体を該反応性フォイルに押圧する工程;および
該フォイルに点火する工程
からなることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2006−52130(P2006−52130A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229544(P2005−229544)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【分割の表示】特願2001−580237(P2001−580237)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(301059640)ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【分割の表示】特願2001−580237(P2001−580237)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(301059640)ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【Fターム(参考)】
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