説明

反応性希釈剤中にポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む非水系分散物

【課題】反応性希釈剤中のポリウレタン(メタ)アクリレート粒子からなる非水系透明分散物が開示される。さらに本発明は、そのような分散物を製造する方法、そのような分散物の接着剤、鋳込ガラス又は耐衝撃性改良剤としての使用、及び該分散物から作られる成形品に関する。
【解決手段】反応性希釈剤中で、ポリイソシアネートを、少なくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させることにより得られる。本発明の分散物は、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が40nm未満の平均直径を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に接着剤、鋳造ガラス又は耐衝撃性改良剤としての用途に適するポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む微細な非水系分散物、及び該分散物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系ポリウレタン分散物は近年ますます重要になってきている。それらは特にコーティング、カップリング、及び接着剤結合の組成物として使用される。
【0003】
下記特許文献1〜4には、コーティング組成物として主に使用するためのポリウレタンの非水系分散物が記載されている。かかる非水系分散物の溶媒は炭化水素により構成される。溶媒を蒸発させることにより硬化が起こり、予め分散されたポリウレタン粒子の薄膜が形成される。下記特許文献1に記載の分散物は、不透明(光を通さない)として記載されている。
【0004】
しかし、完全に透明な接着剤を生成させるのに使用できる接着剤系が必要とされている。これは、最終製品でも同様に透明性を保持することが必要なガラスの接着剤結合にとって特に重要である。一方、機械的に丈夫な接着剤結合をもたらすよう、硬化された接着剤が衝撃強度のある限界値を超えることも重要である。
【特許文献1】独国特許出願公開第3248132号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3513248号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0320690号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0318939号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術に鑑み、本発明の目的の一つは、上記特性を満足するとともに、高い透明性に加えて、硬化後において高い衝撃強度及び引っ張り剪断強度を有するポリウレタン分散物系接着剤配合物を特定することにある。
【0006】
さらなる目的は、その製造をより経済的なものとするため、比較的少数の成分で製造することができる分散物を提供することにある。例えば、結果として分散物の安定性を損なうことがなければ、安定剤の添加はできるだけ避けるべきである。
【0007】
さらなる目的は、接着剤結合あるいは成形物を形成するのに直接硬化させることができる分散物を提供することにある。
【0008】
上述した特性に加えて、本発明は、高い割合でポリウレタン固形分を分散物に含ませることで、その衝撃強度特性を最適化しようとするものである。同時に、取り扱い性及び加工性も良好なものとするものである。
【0009】
本発明に係る分散物は、望ましい価格で市販品として容易に入手できる成分を用いて調製するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的、及び、特に言及していないが、ここに述べられた事柄から明らかに導き出せる目的、あるいは、そのような事柄から自動的に生じる目的は、請求項1に記載の分散物によって達成される。
【0011】
従属請求項2〜10は、該分散物の有利な実施形態を規定するものである。本発明の分散物を製造する方法は、請求項11〜15に規定される。請求項16〜18は、本発明の分散物が適する用途に関するものである。
【0012】
本発明により、反応性希釈剤中にポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む非水系透明分散物が提供され、これは、該反応性希釈剤中で、ポリイソシアネートを、少なくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させることにより得られるものであり、かつ、該ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が40nm未満の平均直径を有することを特徴とする。
【0013】
反応性希釈剤中のポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含有する耐衝撃性改良剤の分散物が提供される。該分散物は、透明であり、かつ該反応性希釈剤を硬化させた後も透明のままである。
【0014】
本発明の分散物は直接硬化されることにより、接着剤結合又は成形物を形成することができる。硬化開始剤を除いて、さらなる材料を添加する必要はない。しかし当然のことながら、本発明の分散物を通常の接着剤系又は成形材料と混合することができ、次いでその混合物を硬化させることができる。
【0015】
同時に、分散物がポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む結果、固体に硬化された分散物は、顕著な衝撃強度特性を有するとともに、顕著な他の機械的特性、より具体的には高い引っ張り剪断強度を有する。
【0016】
さらなる利点は、液相中の粒子を安定化させるため、本発明の分散物に安定剤を添加する必要がないということである。
【0017】
上述した引っ張り剪断強度及び透明性のため、該分散物は、高い透明性が必要条件である接着剤の用途に顕著に適している。該分散物は、例えばガラスの接着剤として有利に使用することができる。
【0018】
透明性及び顕著な衝撃強度の結果、該分散物は、高い衝撃強度を有する透明製品を製造するための成形材料としても適している。
【0019】
さらにここに記載する分散物は、安定であり、従って長期間(すなわち、少なくとも2ヶ月)室温で保存することができる。
【0020】
これまで多く使用されてきた反応性希釈剤中のポリウレタン耐衝撃性改良剤の溶液と比べた場合、本発明の分散物の一つの特徴は、組成物の総重量に対して、反応性希釈剤中の溶液よりも高い含量にて、ポリウレタン(以下「PU」とする)の固形分を含むことができるということである。後者の溶液においてPUの含量は、粘度の急激な上昇のため大きく制限される。従って、良好な取り扱い性及び加工性を得ると同時に、高い固形分のPU耐衝撃性改良剤を得ることが可能である。
【0021】
上述した従来技術の分散物とは対照的に、本発明における反応性希釈剤は、接着剤結合生成のための重要な成分である。それが硬化されるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に関して用語「求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」は、アルコールに由来するその基において、遊離のイソシアネート基と反応する求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルを指す。好ましい求核性基は、水酸基(ヒドロキシル基)、アミノ基、及びメルカプト基である。水酸基は特に好ましい。特に好ましい求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルでヒドロキシル官能基を有するものは、「ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」と呼ぶ。求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルについては、後でさらに説明することとする。
【0023】
本発明に関して用語「ポリウレタン(メタ)アクリレート」は、その遊離の末端イソシアネート基が求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応したポリウレタンを指す。この場合、イソシアネート基は、求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの求核性基(例えば、水酸基、アミノ基又はメルカプト基)と反応して、(メタ)アクリレートに由来する末端のエチレン性不飽和官能基を形成する。ここで用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸、アクリル酸、及びそれらの酸の混合物を指す。求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、ポリウレタンの遊離のイソシアネート基と反応するため、言い換えればイソシアネート基を「キャッピング」するため、「キャッピング試薬」とも呼ばれる。
【0024】
本発明に従う用語「反応性希釈剤」は、少なくとも一つのエチレン性二重結合を含む物質を意味する。反応性希釈剤は、以下の機能を果たすものである。1)反応性希釈剤は、ポリイソシアネートと、すくなくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの反応にとって、液体の反応媒質として働く。反応性希釈剤は、その反応に加わるものではない。2)1)に記載した反応が終わると、反応性希釈剤は、形成されたポリウレタン(メタ)アクリレート粒子の液体分散媒となる。3)反応性希釈剤は、さらなる工程で重合により硬化することができ、すでに形成されているポリウレタン(メタ)アクリレート粒子は、反応が終わると、硬化された反応性希釈剤中に包埋される。
【0025】
工程3)が終わったときに得られる生成物は、本発明に関して、「硬化された分散物」とも呼ばれる。
【0026】
重合されたマトリックスにより構成される高分子中に、粒子の末端エチレン性不飽和官能基が重合によって組み込まれることにより、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子は硬化された分散物中に包埋される。ここで用語「重合されたマトリックス」は、重合された反応性希釈剤を指す。
【0027】
上記機能を果たすことができる任意の物質は、基本的に、適切な反応性希釈剤となる。さらに必要な条件は、反応性希釈剤が、その硬化の前及び後の両方において透明であるということである。
【0028】
例えば、ビニル芳香族モノマーは、適当な反応性希釈剤である。好ましいものに、例えば、スチレン及び置換スチレン、例えば側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン(例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン)、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン(例えばビニルトルエン)、ハロゲン化スチレン(例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、及びテトラブロモスチレン)がある。
【0029】
最も好ましい反応性希釈剤は(メタ)アクリレートである。本発明の目的に対し、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートの両方を包含する。(メタ)アクリレートは一つ以上の二重結合を含んでもよい。本発明に関し、2つ以上の反応性二重結合を含む(メタ)アクリレートを、多官能(メタ)アクリレートと呼ぶ。
【0030】
(メタ)アクリレートのアルコールに由来する基は、例えば、エーテル、アルコール、カルボン酸、エステル、及びウレタン基の形態において、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0031】
本発明において反応性希釈剤として特に好ましく使用できる(メタ)アクリレートには以下のものがある。飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリル酸アルキル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなど;不飽和アルコールから誘導されるアルコール(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸2−プロピニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニルなど;(メタ)アクリル酸のアミド及びニトリル、例えばN−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジブチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル−N−(ジエチルホスホノ)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、N−(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−アセチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド;アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アミン、N−メチルホルムアミドエチル(メタ)アクリレート、3−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ウレイドエチル(メタ)アクリレート;その他の窒素含有(メタ)アクリレート、例えばN−((メタ)アクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2,2,6,6−テトラメチルピペリジル;(メタ)アクリル酸アリール、例えば(メタ)アクリル酸ノニルフェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ナフチル、(メタ)アクリル酸フェニル(それぞれの場合、アリール基は4つまで非置換又は置換が可能である);カルボニル含有(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシメチル、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸オキサゾリジニルエチル、N−((メタ)アクリロイルオキシ)ホルムアミド、(メタ)アクリル酸アセトニル、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリジノン;(メタ)アクリル酸シクロアルキル、例えば(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸3−ビニルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸シクロペンタ−2,4−ジエニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−メチルシクロヘキシル;グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;エーテルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ビニルオキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシメトキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルオキシメチル、(メタ)アクリル酸フェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸アリルオキシメチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル;ハロゲン化アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸2,3−ジブロモプロピル、(メタ)アクリル酸4−ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸1,3−ジクロロ−2−プロピル、(メタ)アクリル酸2−ブロモエチル、(メタ)アクリル酸2−ヨードエチル、(メタ)アクリル酸クロロメチル;(メタ)アクリル酸オキシラニル、例えば(メタ)アクリル酸10,11−エポキシウンデシル、(メタ)アクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル;リン含有−、ホウ素含有−及び/又はケイ素含有−(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸2−(ジブチルホスホノ)エチル、ホウ酸2,3−ブチレン(メタ)アクリロイルエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルホスファト)プロピル、メチルジエトキシ(メタ)アクリロイルエトキシシラン、(メタ)アクリル酸2−(エチレンホスフィト)プロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルホスフィノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルホスホノエチル、ホスホン酸ジエチル(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリル酸ジエチルホスファトエチル、リン酸ジプロピル(メタ)アクリロイル;硫黄含有(メタ)アクリレート、例えば(メタ)アクリル酸チオメチル、(メタ)アクリル酸チオシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸チオフェニル、(メタ)アクリル酸エチルスルフィニルエチル、(メタ)アクリル酸4−チオシアナトブチル、(メタ)アクリル酸エチルスルホニルエチル、(メタ)アクリル酸チオシアナトメチル、(メタ)アクリル酸メチルスルフィニルメチル、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)スルフィド;トリ(メタ)アクリレート、例えばトリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート;テトラ(メタ)アクリレート、例えばペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート。
【0032】
上記化合物は、単独で又は2種以上の混合物で反応性希釈剤として使用することができる。
【0033】
本発明において特に好ましい反応性希釈剤の成分には、飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリル酸アルキル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなど、アクリル酸アリル、メタクリル酸フェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、マレイン酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、(7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−12−ジアザヘキサンデカン−1,16−ジオールジ(メタ)アクリレート)、3−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ−カルボニル]−プロピオン酸、又はそれらの混合物がある。
【0034】
最も好ましい反応性希釈剤は、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸2−フェニルオキシエチル(POEMA)である。
【0035】
例えば、極性モノマー(例えば水酸基を有するもの)を、接着性向上のために使用することができる。しかし、その場合、念頭に入れておかなければならないことに、この種のモノマーは、イソシアネートとの反応に加わるため(例えば水酸基含有モノマー)、付加重合工程が終わるまで分散物に加えることができない。しかし、水膨潤に対する感受性が不必要に高まらないよう、そのような極性モノマーの量を制限することが好都合である。反応性希釈剤の総重量に対し、極性モノマー、より具体的には水酸基含有モノマーの量を0.1〜20重量%に制限することが特に好ましい。
【0036】
反応性希釈剤には、架橋剤として機能するメタクリル酸エステルがさらに存在してもよい。そのようなメタクリル酸エステルには、特に2官能、3官能及び4官能以上の多官能化合物等がある。特に好ましいのは、2官能(メタ)アクリレート及び3官能(メタ)アクリレートである。
【0037】
(a)2官能(メタ)アクリレート
下記式記載の化合物:
【化1】

式中、Rは水素又はメチルであり、かつnは3〜20の正の整数である。例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、及びエイコサンジオールのジ(メタ)アクリレートがある。
下記式記載の化合物:
【化2】

式中、Rは水素又はメチルであり、かつnは1〜14の正の整数である。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びテトラデカプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;グリセロールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[p−(γ−メタクリロイルオキシ−β−ヒドロキシプロピル)フェニルプロパン]又はビス−GMA、ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、一分子あたり2〜10のエトキシ基を有する2,2’−ジ(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、及び1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタンがある。
【0038】
(b)3官能以上の多官能(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート。
【0039】
上記架橋モノマーは、単独で又は2種以上のモノマーの混合物の形態で使用される。
【0040】
反応性希釈剤中に存在させることができるさらなる多官能(メタ)アクリル酸エステルには、2,2−ビス−4−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン(ビス−GMA)、及び/又は7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン1,16−ジオキシジメタクリレート(UDMA)、並びに下記式記載のDiacryl(ジアクリル)121(AKZO)及び類似物がある。
【化3】

、R=H、アルキル(好ましくはH、CH
、R=アルキル又は
【化4】

例えば、
【化5】

例えば、式中、nは1〜100であり、かつmは1、2又は3である。
【0041】
多官能(メタ)アクリレートの含量は、上記詳細を考慮すると、基本的に限定されるものではない。しかしながら、その含量は、反応性希釈剤の重量に対して40重量%までにすることが好ましいことが見出されている。それを超えた場合、機械的特性又は重合の挙動に悪影響が生じる可能性があるためである。
【0042】
(メタ)アクリレートを主成分とする反応性希釈剤は、上述した(メタ)アクリレートと共重合することができる他のコモノマー(共単量体)をさらに含んでもよい。そのようなコモノマーには、例えば、ビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン(例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン)、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン(例えばビニルトルエン及びp−メチルスチレン)、ハロゲン化スチレン(例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、及びテトラブロモスチレン)、ビニルエーテル及びイソプロペニルエーテル、マレイン酸誘導体(例えば無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、マレイミド、メチルマレイミド、フェニルマレイミド、及びシクロヘキシルマレイミド)、ジエン類(例えば1,3−ブタジエン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、及び1,4−ブタンジオールジビニルエーテル)がある。
【0043】
コモノマーの含量は、反応性希釈剤の重量に対して40%までに制限される。それを超える場合、硬化された分散物の機械的特性に悪影響が生じる可能性があるためである。この量においてビニル芳香族の含量は、反応性希釈剤の重量に対して30%までに限定される。より高い含量は、系の分離、従って曇りを生じさせる可能性があるためである。
【0044】
上記モノマーのすべては、市販品として入手することができる。
【0045】
以上より、特に好ましい反応性希釈剤は、a1)60〜100重量部の(メタアクリレート、a2)0〜40重量部の多官能(メタ)アクリレート、a3)0〜40重量部のコモノマーにより構成される。
【0046】
本発明に関し、ポリイソシアネートは、その分子中に2つ以上のイソシアネート基を含む低分子量化合物である。本発明において、ジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0047】
しかし、特定の実施形態において、3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートをさらに加えることも可能である。3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートの含量を選択することにより、破断伸び及び引っ張り強度特性の範囲を調節することができる。3つ以上の官能基を有する化合物の含量が高くなれば、引っ張り強度が増す。しかし、この場合、破断伸びの急激な低下がみられる。かくして、3つ以上の官能基を有するポリイソシアネートの含量は、ポリイソシアネートの総質量に対して、10重量%以下とすべきであり、5重量%以下とすることが好ましいことが見出された。
【0048】
本発明で使用できるポリイソシアネートには、特に、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI))、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、2,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート及びp−テトラメチルキシレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジ(2−イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシレート、2,2,4−トリメチレンヘキサメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネート、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオフォスフェート、及びそれらの混合物がある。
【0049】
適切なポリイソシアネートは、例えば、多価アルコールをジイソシアネートと反応させることにより、あるいはジイソシアネートの重合によっても得ることができる。また、ヘキサメチレンジイソシアネートを少量の水と反応させることによって調製されるポリイソシアネートをさらに用いることも可能である。これらの化合物はビウレット基を含む。
【0050】
これらの化合物は、当該技術において広く知られており、その多くが市販品として入手できる。市販品の具体例には、(登録商標)Desmodur(デスモジュール)H、(登録商標)Desmodur T、(登録商標)Desmodur N100、(登録商標)Desmodur N3300、(登録商標)Desmodur CD(BAYER(バイエル))、(登録商標)Basonat (バソナート)PLR8401、(登録商標)Basonat PLR8638(BASF)、(登録商標)Tolonate (トロネート)HDB75MX、(登録商標)Tolonate HDT90(Rhoene Poulenc(ローヌ・プーランク))、(登録商標)Vestanat (ベスタナート)IPDI、(登録商標)Vestanat T1890/100、(登録商標)Vestanat H12−MDI、(登録商標)Vestanat TMDI、及び(登録商標)Vestanat T2960(Huls)がある。
【0051】
最初に記載したように特に有利な特性を有する分散物は、芳香族成分をもたない脂肪族構造及び/又は脂環式構造を有するポリイソシアネートを用いる場合に得られる。イソホロンジイソシアネート、2,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、2,2,4−トリメチレンヘキサメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができ、イソホロンジイソシアネートが最も好ましい。
【0052】
本発明に関し、類似物であるイソチオシアネートもポリイソシアネートとして適当である。しかし、そのような化合物は市販品としてあまり容易に入手できないため、あまり好ましくない。
【0053】
上述したイソシアネートはすべて単独で又は混合物として使用することができる。
【0054】
請求項1に記載するとおり、イソシアネートは少なくとも一種のポリオールと反応させられる。本発明のためのポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化合物である。ポリオールは、単一の分子量を有するものであってもよいし、分子量のランダムな分布を有するものであってもよい。
【0055】
ポリオールは、ランダムなモル質量分布を有する高分子量ポリオールであることが好ましい。この意味において本発明のための「高分子量ポリオール」は、2つ以上の水酸基を有するポリオールであってその重量平均分子量が500g/molを超え約20000g/molまでの範囲にあるものである。ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるその重量平均分子量は、500g/molを超え15000g/molまでの範囲にあることが好ましく、500g/molを超え10000g/molまでの範囲にあることが好都合であり、500g/molを超え5000g/molまでの範囲にあることが非常に好ましい。
【0056】
高分子量ポリオールの具体例にはポリエーテルポリオールがある。ポリエーテルポリオールの具体例には、下記式記載のポリアルキレンエーテルポリオールがある。
【化6】

式中、置換基Rは、水素又は1〜5の炭素原子を有する低級アルキル基であり、複数種の置換基の組み合わせを含み、かつnは典型的に2〜6であり、かつmは2〜100又はそれ以上である。これに含まれるものとして、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(=ポリテトラメチレンエーテルグリコール=ポリテトラヒドロフラン)、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコール、並びに、1,2−プロピレンオキシド、エチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの混合物とエチレングリコールとの反応生成物がある。
【0057】
一つの特に好ましいポリオールはポリテトラヒドロフランである。それは、例えば、BASFから商品名(登録商標)PTHF650又は(登録商標)PTHF2000で得ることができる。
【0058】
種々のポリオール(例えばグリコール類、例えばエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなど)のオキシアルキル化によって得られるポリエーテルポリオールを使用することも可能である。
【0059】
少なくとも3つのヒドロキシル官能基を有するポリエーテルポリオールも同様に用いることができる。
【0060】
イソシアネート基と反応できる少なくとも3つのヒドロキシル官能基を得るため、例えば、少なくとも3つの水酸基を含むアルコールを出発分子として使用することができる。そのようなアルコールには、特に、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、及びイノシトールがある。その中でグリセロールが好ましい。
【0061】
少なくとも3つの水酸基を有する上記アルコールは、例えば、環状エーテル(例えばオキシラン類、さらにはテトラヒドロフラン)の重付加によって反応させることができる。重付加に使用できるオキシラン類には、特に、上述したオキシラン類が含まれる。それらの中で、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましい。
【0062】
環状エーテルの多価アルコールへの重付加は、当該技術において広く知られている。例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,「polyoxyalkylenes」の項に、当業者に有用な記載がある。
【0063】
好ましい3官能ポリオールの一つは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、及びグリセロールから形成される3官能ポリプロピレンエーテルポリオールである。そのようなポリオールの一つは、Bayerにより(登録商標)Baycoll BT5035の名称で販売されている。
【0064】
2つのヒドロキシル官能基を有するポリオキシアルキレンを3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートで結合することにより、3つ以上のヒドロキシ官能基を有するポリオキシアルキレンをその場で調製することも可能である。
【0065】
中間分子量共重合ポリエステルジオール、末端の第1級水酸基を有する線状ポリエステルも同様に高分子量ポリオールとして使用することが可能である。その重量平均分子量は、3000〜5000g/molが好ましい。それらは、有機ポリカルボン酸又はその誘導体を有機ポリオール及び/又はエポキシドでエステル化することにより得られる。一般的に、ポリカルボン酸及びポリオールは、脂肪族又は芳香族の二塩基酸及びジオールである。
【0066】
共重合ポリエステルジオールに使用される好ましいジオールには、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、あるいは、グリコール類、例えばビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンから誘導されるジオール、例えばε−カプロラクトンとエチレングリコールの反応生成物、ヒドロキシ−アルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、例えばポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどがある。より官能基の多いポリオールを同様に用いることができる。それらには、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、及びより高分子量のポリオール、例えば低分子量ポリオールのオキシアルキル化により調製されるものがある。
【0067】
共重合ポリエステルジオールの酸成分としては、2〜36の炭素原子を一分子あたり有する単量体のカルボン酸又はカルボン酸無水物を用いることが好ましい。使用できる酸の具体例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、デカン二酸、及びドデカン二酸がある。該ポリエステルは、少量の一塩基酸、例えば安息香酸、ステアリン酸、酢酸、及びオレイン酸を含んでもよい。より多価のポリカルボン酸、例えばトリメリト酸を用いることもできる。
【0068】
本発明に従って好ましい中間長の共重合ポリエステルジオールには、Degussa(デグサ)によりDYNACOLL(登録商標)7380及びDYNACOLL(登録商標)7390の商標名で販売されているものがある。
【0069】
本発明に従って使用できる他の種類の高分子量ポリオールには、ラクトン型のポリエステルがある。このポリエステルは、ラクトン(例えばε−カプロラクトン)とポリオールの反応により形成される。酸含有ポリオールとラクトンとの生成物もまた使用できる。
【0070】
ポリ(メタ)アクリレートから誘導される高分子量ポリオールも同様に使用することが可能である。そのような化合物の一例には、ポリ−n−ブチルメタクリレート−ジオール(Goldschmidtから(登録商標)BD1000の名称で入手できる)がある。
【0071】
特に有利な特性、より具体的には顕著な衝撃強度を有する分散物は、ヒドロキシル末端基を有するポリブタジエンジオールをポリオールとして使用する場合に、得られる。この種の好ましいポリブタジエンジオールの重量平均分子量は、2000〜5000g/molの範囲にあることが好ましい。
【0072】
そのようなポリブタジエンジオールとして、(登録商標)KRASOL LBH2000、(登録商標)KRASOL LBH3000及び(登録商標)KRASOL LBH5000の商品名でSartomer(以前はKauchuk,CZ)により販売されているものを入手できる。
【0073】
一種以上の高分子量ポリオール(その具体例は上述したもの)を基本的に用いることができる。本発明において、高分子量ポリオールはジオールであることが好ましい。
【0074】
一つの特に好ましい実施形態において、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を形成するため、高分子量ポリオールとともに低分子量ポリオールが反応混合物に加えられる。従って、非常に好ましい一実施形態では、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルを反応性希釈剤中でポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が得られる。
【0075】
本発明に従う「低分子量ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル官能基を有しかつ50〜500g/mol、好ましくは50〜250g/molのモル質量を有する化合物である。分子量は、単一であってもよいし、ランダムに分布していてもよい(重合物の場合)。後者の場合、分子量は重量平均分子量を指す。
【0076】
好ましい低分子量ポリオールは単一の分子量を有するものであり、特に好ましいものには、2〜18の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール、並びに脂環式ポリオール、例えば1,2−シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールがある。エーテル基を有するポリオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びジプロピレングリコールも同様に使用に適している。2つより多い水酸基を有する低分子量ポリオールの具体例には、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、及びペンタエリトリトールがある。最も好ましくは、1,4−ブタンジオール及び1,3−プロパンジオールが低分子量ポリオールとして使用される。
【0077】
ランダムな分子量分布を有する低分子量ポリオールを用いることも可能である。上述した高分子量ポリオールと同じモノマー単位から合成されている一方、上述したように相応の低分子量を有する任意のポリオールを、ランダムな分子量分布を有する低分子量ポリオールとして基本的に用いることができる。当業者に明らかなとおり、ランダムなモル質量分布を有する低分子量ポリオールの場合の重量平均分子量は、主に、上述した範囲の上限近くの50〜500g/molである。
【0078】
求核性官能基を有する特に好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。本発明に従う「ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸とのエステル化後も、少なくとも一つのヒドロキシル官能基をアルコール由来の基に保持している(メタ)アクリル酸エステルである。言い換えれば、当該エステルは、(メタ)アクリル酸とジオール又はポリオール(好ましくはジオール類)のエステルである。
【0079】
「ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」の特に好ましい種類の一つは、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルである。本発明に従って使用できる(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルには、(メタ)アクリル酸と2価の脂肪族アルコールのエステルがある。これらの化合物は当該技術において広く知られている。例えば、それらは、(メタ)アクリル酸とオキシラン類との反応により得ることができる。
【0080】
オキシラン化合物には、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及び/又は2,3−ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、及びグリシジルエステルがある。これらの化合物は、単独及び混合物のいずれにおいても使用することができる。(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを与える反応は、例えば、独国特許出願公開第2439352号明細書、独国特許出願公開第1568838号明細書、及び英国特許出願公開第1308250号明細書に記載される。
【0081】
このように得られる(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルは、多くの場合、市販されており、従って本発明の目的に特に適している。
【0082】
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルは、置換基、例えばフェニル基又はアミノ基を含んでもよい。
【0083】
好ましい(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルには、アクリル酸1−ヒドロキシエチル、メタクリル酸1−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル及びメタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メタクリル酸カプロラクトンヒドロキシエチル、並びにアクリル酸カプロラクトンヒドロキシエチルがある。これらの中で特に好ましいものは、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及びアクリル酸2−ヒドロキシプロピルである。最も好ましいものはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0084】
ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルのさらに好ましい種類の一つは、ポリエーテルメタクリレートである。これは、(メタ)アクリル酸をポリエーテルポリオール、好ましくはポリエーテルジオールでエステル化することにより得られる物質を意味する。この種のポリエーテルポリオールは、好ましいポリオールの特定に関して上記ですでに挙げている。ポリエーテルメタクリレートの場合、該エステルのヒドロキシアルキル基はポリオキシアルキレン基を有する。ポリオキシアルキレン基は、直鎖であっても枝分れ鎖であってもよく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリテトラメチレンオキシドである。これらの基は、多くの場合、2〜10のオキシアルキレン単位を有する。具体例には、ポリエトキシメタクリレート、ポリプロポキシメタクリレート、ポリエチレンオキシド/ポリテトラメチレンオキシドメタクリレート、及びポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドメタクリレートがある。
【0085】
基本的に、上述したポリオールの任意のもの(高分子量ポリオール及び低分子量ポリオールのいずれも)を、本発明のヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの形成に用いることができ、ジオールが特に好ましい。
【0086】
有利なさらなる実施形態において、キャッピング剤であるアミノ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルを、求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして用いることができる。本発明に従う「アミノ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸とのエステル化後も、少なくとも一つのアミノ官能基をアルコール由来の基に保持している(メタ)アクリル酸エステルである。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルの好ましいものには、アクリル酸1−アミノエチル、メタクリル酸1−アミノエチル、アクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸2−アミノプロピル、メタクリル酸2−アミノプロピル、アクリル酸3−アミノプロピル、メタクリル酸3−アミノプロピル、アクリル酸6−アミノヘキシル及びメタクリル酸6−アミノヘキシル、メタクリル酸3−フェノキシ−2−アミノプロピル、並びにアクリル酸4−アミノブチルがある。これらの中で、メタクリル酸1−アミノエチル、メタクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸1−アミノエチル、アクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸2−アミノプロピル、及びアクリル酸2−アミノプロピルが特に好ましい。最も好ましいものはメタクリル酸2−アミノエチルである。アミノ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルで、窒素上に炭化水素基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル)を有するものも考慮することができる。具体例には、メタクリル酸2−(N−メチル)アミノエチル、アクリル酸2−(N−メチル)アミノエチル、メタクリル酸2−(N−メチル)アミノプロピル、及びアクリル酸2−(N−メチル)アミノプロピルがある。
【0087】
もう一つの有利な実施形態において、キャッピング剤であるメルカプト官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルを、求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして用いることができる。本発明に従う「メルカプト官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸とのエステル化後も、少なくとも一つのメルカプト官能基をアルコール由来の基に保持している(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸のメルカプトアルキルエステルの好ましいものには、アクリル酸1−メルカプトエチル、メタクリル酸1−メルカプトエチル、アクリル酸2−メルカプトエチル、メタクリル酸2−メルカプトエチル、アクリル酸2−メルカプトプロピル、メタクリル酸2−メルカプトプロピル、アクリル酸3−メルカプトプロピル、メタクリル酸3−メルカプトプロピル、アクリル酸6−メルカプトヘキシル及びメタクリル酸6−メルカプトヘキシル、メタクリル酸3−フェノキシ−2−メルカプトプロピル、並びにアクリル酸4−メルカプトブチルがある。これらの中で、メタクリル酸メルカプトエチル、アクリル酸メルカプトエチル、メタクリル酸2−メルカプトプロピル、及びアクリル酸2−メルカプトプロピルが特に好ましい。最も好ましいものはメタクリル酸2−メルカプトエチルである。
【0088】
求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの量は、ポリイソシアネートとポリオールの間の重縮合反応が十分に進行した後も、遊離のイソシアネート基が依然として存在するように、選択される。求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの最適量を決定するため、重縮合の後、遊離のイソシアネート基の含量を測定することができる。遊離のイソシアネート基の含量を測定することは、当業者に知られた方法を用いて行うことができる。そのような方法には、特に、赤外線分光分析法又は滴定がある。
【0089】
最初に述べたとおり、本発明の分散物には、必ずしも安定剤を添加する必要はない。しかし、もし必要であれば、安定剤を加えてもよい。基本的に、ポリウレタン分散物の安定化のため当業者によく知られている安定剤のあらゆるものを添加することができる。より具体的には、ジメチロールプロピオン酸、並びにエチレングリコール及び2−アミノ−2−メチルプロパノールをベースとする相媒介物質がある。
【0090】
本発明の分散物は、ジアミン類又はより多価のアミン類を用いて調製されるものではない。この制約には、触媒の使用及びキャッピング剤である上記アミノ官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用は含まれない。
【0091】
本発明の分散物の粒子を構成するポリウレタン(メタ)アクリレートは、3000g/mol〜600000g/molの重量平均分子量を有するが、好ましくは、3000g/mol〜500000g/molの重量平均分子量を有する。
【0092】
本発明の分散物において、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子は、40nm未満の平均直径を有するため、必要な透明性をもたらす。20nm未満の平均粒子直径が好ましく、10nm未満の平均粒子直径がより好ましく、7nm未満の平均粒子直径がさらに好ましい。本発明に従って得られる特に有利な粒子直径は、2〜7nmであり、より有利には2〜6nmであり、さらに有利には3〜6nmであり、最も有利には3〜5nmである。
【0093】
上記直径は、光散乱法によって測定することができる。詳細は、添付の実施例を参照されたい。
【0094】
本発明に関し、固形分は、分散物全体の重量に対するポリウレタン(メタ)アクリレート粒子の重量である。本発明の分散物において、固形分は、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。50〜80重量%の固形分が特に好ましく、50〜70重量%の固形分が最も好ましい。
【0095】
本発明の分散物の粘度は、コーン/プレートの形態で100s−1のずり速度においてT=25〜26℃で測定した場合、一般的に0.1〜5.0Pa・sである。この方法の詳細については添付の実施例を参照されたい。その粘度は、0.1〜2.0Pa・sの間にあるのが好ましい。
【0096】
本発明の重要な利点は、分散物の透明性である。本発明に関し、透明性の尺度の一つは、吸光度であり、それは、透過率の負の10進対数E=−lg(I/I0)として規定される。I/I0は透過率であり、Iは透過光であり、I0は入射光である。
【0097】
本発明によれば、400〜800nmの波長範囲において、6重量%〜9重量%の粒子を有する分散物の吸光度は0.4未満である。好ましい実施形態において、吸光度は0.2未満であり、より好ましい実施形態において吸光度は0.1未満である。最も有利な実施形態において、400〜800nmの波長及び6重量%〜9重量%の粒子含量に対する吸光度は0.05未満であり、好ましくは0.03未満である。
【0098】
硬化された分散物でも、顕著な透過率及び低い吸光度が同様に達成される。400〜800nmの波長範囲において、6重量%〜9重量%の粒子含量を有する硬化された分散物の吸光度は、180〜300μmの測定光路長に対して0.03〜0.7である。最高0.2までの範囲が特に好ましい。
【0099】
本発明の分散物のさらに顕著な特徴は、非常に高い安定性である。本発明に関し、安定性は、目に見える変化なく、観察可能な分散粒子の凝集及び沈殿なく、少なくとも2ヶ月間室温において分散物を保存できることを意味する。
【0100】
さらなる態様において、本発明は、最初に記載した分散物の製造方法に関する。
【0101】
この方法では、撹拌容器において、反応性希釈剤中、ポリイソシアネートを、少なくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させる。これらの反応物は、上記で詳細に説明している。この方法は、反応を5m/s以上の撹拌速度で行い、容器直径に対する撹拌子直径の比が0.3〜0.80であり、かつ容器の底面から撹拌子までの距離が撹拌子直径の0.25〜0.5倍であることを特徴とする。
【0102】
すでに上述したとおり、特に好ましい実施形態の一つでは、高分子量ポリオール及び低分子量ポリオールを、分散物の製造に使用する。上述した構成成分の反応に対し、種々の方法が可能であると考えられる。従って、該方法の好ましい実施形態の一つでは、例えば、高分子量ポリオールを導入することができ、次いで低分子量ポリオール、ポリイソシアネート、及び反応性希釈剤を加えることができる。一方、もう一つの好ましい実施形態に従って、ポリイソシアネートを導入し、次いで高分子量及び低分子量のポリオール並びに反応性希釈剤を加えることができる。必要に応じて、反応性希釈剤の一部を最初に導入してもよい。
【0103】
いずれの場合も、求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルは最後に加えられる。ポリウレタン粒子を形成した後、残存する遊離のイソシアネート基と反応させ、そしてポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を形成するためである。
【0104】
当業者に明らかなことであるが、留意すべきことに、使用する反応物、特にポリオールは、無水のものとすべきである。
【0105】
反応を加速するため、触媒を有利に使用することができる。そのような触媒には、例えば、第3級アミン(特に、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルモルホリン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンが挙げられる)、あるいは、有機スズ化合物(特に、ジラウリン酸ジブチルスズ及びジオクチル酸スズが挙げられる)がある。これらの触媒、及びそれらの化合物の使用量は、当該技術において広く知られており、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,「polyurethanes」の項に記載されている。
【0106】
反応中(メタ)アクリレートの遊離ラジカル重合を防止する抑制剤を反応において添加することができる。この抑制剤は、当該技術において広く知られている。本発明に従って有用な抑制剤は、より具体的には、ジヒドロキシベンゼン類、ベンゾキノン類、ヒンダードフェノール類、及びトリアジン誘導体に基づくヒンダードフェノール類の群から選ばれる。反応混合物全体の重量に対して、抑制剤の含量は、単独で又は混合物として、通常0.01%〜0.5%(重量/重量)である。
【0107】
本発明の分散物の製造にとって重要なパラメーターの一つは、撹拌速度であり、それは、撹拌子の周速度として表わされる。周速度は、撹拌子の回転速度及び最大直径から、以下の式に従って計算することができる。v=(π・D・n)/60[m/s]、nは回転速度(分−1)、Dは直径(m)、vは周速度(m/s)。
【0108】
製造方法の好ましい実施形態の一つにおいて、周速度は12m/s以上であり、さらに好ましくは14m/s以上である。
【0109】
本発明に従う上記粒子径を得るため、反応の過程において反応物を反応性希釈剤中に分散させる。この目的のため、作業容器の形態のみならず、撹拌子の直径、周速度、及び底面からの距離をも調和させる必要がある。本発明によれば、上述したとおり、容器の直径に対する撹拌子の最大直径の比は0.3〜0.80であり、かつ容器底面から撹拌子までの距離は撹拌子直径の0.25〜0.5倍である。
【0110】
最適の結果をもたらすため使用される撹拌子は、高速で半径方向に移送を行う撹拌子又は高速で軸方向に移送を行う撹拌子である。特に好ましく使用される撹拌子は、ディスク撹拌子又は分散ディスクである。分散ディスク(歯付きディスク)の使用が最も好ましい。本発明に従って有用な分散装置の一つは、DISPERMAT(登録商標)F1の名称でVMA−Getzmannから入手することができる。
【0111】
DISPERMAT(登録商標)F1分散装置の製品説明書は、いかにして実験室での実験をプラント生産に置き換えることができるかにつき、下記の情報をもたらす。
【0112】
分散の結果は、一方で集塊を歯付きディスクの近傍に輸送することに依存し、また他方で分散容器に機械的に投入される撹拌の仕事量に依存する。仕事の機械的投入量は、解凝集(デアグロメレーション)の達成可能な最終状態の上限を決める一方、集塊の輸送は、分散の最終的な状態を得るために必要な時間を決める。集塊は、主に、分散ディスクの端面で生じる剪断場の範囲内で分散される。最大剪断場は、歯付きディスクの最外端によって決定される。分散を通じてそれが最も高い速度で運動しているからである。従って、この速度(周速度)は、実験室での結果をプラントでの実施に置き換えるための基準の一つとして用いることができる。このことは、達成可能な最終状態に関係する一方、それを達成するのに必要な時間には関係しない。それ以外の条件が同じ場合、分散の最終状態は、実験室スケールにおいてより早く達成される。その場合、集塊が歯付きディスクに至る経路は、溶解機での生産の場合よりも短いからである。また、達成可能な最終状態についての正確な相関関係は、実験室において分散される材料の温度が、プラント生産規模での分散における温度と同等の場合にのみ得られる。
【0113】
上述した情報に基づき、当業者は、本発明の分散物の製造を実験室規模からプラント規模に移行させることができ、また、その逆も可能である。
【0114】
分散物の製造のため、一種又は複数種のポリオールからの水酸基に対するイソシアネート基のモル比は、1.01〜1.8に選択され、好ましくは1.03〜1.7に選択される。
【0115】
高分子量ポリオールのOH基に対する低分子量ポリオールのOH基のモル比は、0〜1.4(ここで0の値は、低分子量ポリオールを全く使用しない実施形態を示している)とされ、好ましくは0.3〜1.2とされる。
【0116】
イソシアネート基と水酸基の反応は、当該技術において広く知られている。従って、反応温度は広範囲にわたるが、多くの場合、その温度は、30℃〜120℃の範囲にあり、60℃〜90℃の範囲にあることが好ましい。反応が行われる圧力についても同様のことがあてはまる。従って、反応は、大気より低い圧力下で行うことができ、また、大気より高い圧力下で行うこともできる。しかしながら、大気圧で反応を行うことが好ましい。反応は、大気下で行うことができ、あるいは、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。そこにおいて酸素含量は低いことが好ましい。酸素は可能な重合を阻害するからである。
【0117】
分散物の硬化は、重合開始剤を添加することによる反応性希釈剤の遊離ラジカル重合によって起こる。これに関し、重合による接着剤の硬化について当業者に知られているあらゆる方法を基本的に用いることができる。従って、硬化用開始剤は特に限定されるものではない。使用できる開始剤の具体例には、過酸化物及びヒドロペルオキシド(ヒドロ過酸化物)、例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジアセチル、及び過酸化t−ブチルがある。開始剤のさらなる種類として、熱活性化開始剤、より具体的にはアゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリルがある。
【0118】
過酸化物の分解は、低温で促進剤により誘発させることができる。特に好ましい促進剤の一つは、例えばN,N−ビス−2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(DEPT)である。
【0119】
硬化された分散物は、非常に高い衝撃強度と引っ張り剪断強度を有している。本発明に関し、引っ張り剪断強度は、接着強度τとも呼ばれ、標準DIN EN 1465に従って測定され、MPaで示される。
【0120】
硬化された分散物の引っ張り剪断強度の値は、1〜12MPaの範囲にあり、使用される分散物及び基材(裏打ち材)によって変わってくる。
【0121】
ここに記載した接着強度の結果として、本発明の分散物は、接着剤として特に適している。従って本発明のさらなる態様は、該分散物を分散物系接着剤として使用することに関する。接着剤の配合に関し、該分散物を純粋な形で(すなわち上述したとおりのまま)使用することができる。しかし、さらなる反応性接着剤、より具体的には、(メタ)アクリレートをベースとする反応性接着剤系と混合してもよい。
【0122】
特に適切な(メタ)アクリレート接着剤系には、以下のものがある。
【0123】
A−B型:成分Aは促進剤とともにアクリレート樹脂からなり、成分Bは硬化剤添加物とともに樹脂からなる。両成分は、ポットライフに制限なく貯蔵可能である。促進剤、硬化剤、及び樹脂が混合されないかぎり、反応は起こらない。従って、混合物のポットライフを再度考慮する必要がある。成分Aを一つの被着材に塗布し、成分Bをもう一つの被着材に塗布することも可能である。これらの被着材を合わせると、2成分が混合され、接着剤の膜が硬化される。
【0124】
硬化剤の直接添加:硬化剤は、約1%〜3%の少量で、粉末の形態において樹脂に混合される。硬化剤が少量であるため、この場合、非常に入念な混合が特に重要である。この方法による場合、ポットライフが制限されるため(数分の範囲、あるいは、例外的に最高1時間)、結合は速やかに行う必要がある。この方法は、反応速度が高いモノマーとともに用いることはできない。そのような場合、硬化剤ワニス法により処理を行う。
【0125】
硬化剤ワニス法又は「非混合(no−mix)」法:この場合、硬化剤は、有機溶媒中の溶液で2つの被着材の一つに塗布される。溶媒が蒸発すると、硬化剤は、非常に薄い膜で表面に残り、変化することなく十分長い時間そこにとどまることができる。促進剤とともに樹脂成分がもう一方の被着材に塗布される。この場合もポットライフは制限されない。これら2つの被着材が互いにあわされたときにのみ、硬化剤と樹脂/促進剤系との接触の結果、接着剤膜形成の化学反応が起こる。
【0126】
本発明のさらなる態様は、上述した分散物を透明な鋳造ガラスの製造に使用することに関する。この場合、分散物は、同様に、純粋な形態で、あるいは他の鋳造ガラス混合物(より具体的には(メタ)アクリレート)との混合物として、使用することができる。鋳造ガラス混合物及び鋳造ガラスの製造方法は、当業者に知られており、ここでは詳細に記載しない。鋳造ガラスの形成のため、分散物を、上述したように硬化させることができる。
【0127】
さらなる態様において、また本発明は、上述した本発明の分散物を硬化させることにより該分散物から得られる成形物に関する。好ましくは、成形物は鋳造ガラスであり得るが、成形物の形態は特に限定されるものではない。
【0128】
上述したように、硬化された状態の本発明の分散物は、顕著な結合強度(引っ張り剪断強度)及び高い透明性を有するだけでなく、非常に良好な衝撃強度特性を有する。本発明のさらなる態様は、従って、成形材料、接着剤、及び鋳造ガラスにおいて、より具体的には、(メタ)アクリレートをベースとする系において、本発明の分散物を耐衝撃性改良剤として使用することに関する。
【実施例】
【0129】
本発明を実施例により説明するが、実施例は、本発明の技術的思想を限定するものと解釈されるものではない。
【0130】
1.化学物質
1)イソシアネート
(A)Vestanat IPDI(Degussa)
下記式記載のIPDI イソホロンジイソシアネート
【化7】

>99.5%,Mw(222.29),d20(1.058−1.064),fl.p.(155),37.5−37.8%NCO
(B) Vestanat TMDI(Degussa)
下記式記載の2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(1:1)
【化8】

Mw(210.28)≧99.5%,d20(1.010−1.016)fl.p.(148℃),39.7−40%NCO
2)ポリオール
(C)PTHF 2000(BASF)
下記式記載のポリテトラヒドロフラン=ポリテトラメチレンエーテルグリコール
【化9】

Mw(〜650)
(D)Krasol LBH2000(Kaucuk)
下記式記載のOH末端基を有するポリブタジエンジオール
【化10】

Mw(2160),≧99.5%,d25(0.900),fl.p.(>225℃)
(E)Krasol LBH2000(Kaucuk)
下記式記載のOH末端基を有するポリブタジエンジオール
【化11】

Mw(約3000)
(F)Krasol LBH5000(Kaucuk)
下記式記載のOH末端基を有するポリブタジエンジオール
【化12】

Mw(4638),≧99.5%,d25(0.900)fl.p.(>225℃),nOH(23.62gKOH/kg)
(G)Baycoll BT5035(Bayer)
ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドグリセロール3官能ポリプロピレンエーテルポリオール
Mw(−4800),m.p.(290),d20(1.04),fl.p._(195℃)nOH(35.0+/−2.0mgKOH/g)
(H)BD 1000(Goldschmidt)
下記式記載のPBMA メタクリル酸n−ブチルモノマーをベースとするポリ−n−ブチルメタクリレートジオール
【化13】

Mw(1000),Tg(−30℃)
(I)1,4−BDO(Applichem)
下記式記載の1,4−ブタンジオール
【化14】

Mw(90.12),>99%,d20(1.02),m.p(−20℃),b.p.(230℃)
3)触媒
(J)DBTL(Merck)
下記式記載の合成用ジラウリン酸ジブチルスズ=ジドデカン酸ジブチルスズ(触媒)
【化15】

>97%Mw(631.55),d20(1.05)
4)メタクリル酸エステル
(K)HEMA(Degussa−Rohmメタクリル酸エステル)
下記式記載の2−HEMA 98 メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
【化16】

≧98%Mw(130.14),d20(1.07),fl.p.(101℃),b.p.(+250℃)
(L)POEMA(Degussa−Rohm GmbH)
下記式記載のメタクリル酸2−フェノキシエチル(1.5%の2−フェノキシエタノールを有する)
【化17】

>95.0%,Mw(206.24),d20(1.080),fl.p.(>100℃),b.p.(80−85℃ at 0.1hPa)
5)安定剤
(M)Bis−MPA Perstrop
下記式記載のDMPA ジメチロールプロピオン酸(粒子径制御用)
【化18】

>97%,mw(134.13),d20(0.840),m.p.(180−190℃),fl.p.(>150℃),nOH(835 gKOH/kg),nH(415 gKOH/kg)
(N)AMP(90(登録商標)/95(登録商標))(Angus chemie GmbH)
下記式記載の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(粒子系用共分散剤)
【化19】

100%,mw(89.14),d40(0.928)b.p.(165℃),m.p.(49−53℃),fl.p.(81℃)
6)硬化剤及び促進剤
(O)DPBO
下記式記載の過酸化ジベンゾイル(硬化剤)
【化20】

>97%,mw(242.23)m.p.(104−106℃)
(P)DEPT
下記式記載のN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(促進剤)
【化21】

>97%,mw(195.26),m.p.(49−53℃),fl.p.(>150℃),
【0131】
2.配合及び手順
装置
分散機:VMA−Getzmann GmbHによるDispermat F1(d=22mm)
溶解機ディスク
250mLガラス反応器(蓋、リングシール、スチールクロージャー付き)
滴下漏斗250mL(温度調節可能)
サーモスタット
100mL滴下漏斗
ホットプレート付きオイルバス
温度センサー付き温度計(ホットプレートに接続)
乾燥キャビネットの真空ポンプ
【0132】
実施例1(t37):Krasol 5000、11000rpm
化学物質:
Vestanat IPDI、イソホロンジイソシアネート、Degussa
POEMA、メタクリル酸フェノキシエチル、Degussa
Krasol LBH 5000、Kaucuk、M=4638g/mol、OH基:0.421mmol/g
n−ブタンジオール、BASF
DBTDL、ラウリン酸ジブチルスズ、Merck
2−HEMA、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 97%、Degussa
【0133】
パートI:イソシアネート混合物
4.2504gのVestanat IPDIと18.99gのPOEMA
【0134】
パートII:ジオール混合物
24.9723gのKrasol LBH 5000、0.5348gのn−ブタンジオール及び11.2080gのPOEMAを50℃に加熱。
【0135】
パートIII:触媒
0.0324gのDBTDL
【0136】
パートIV:HEMA
2.03gの2−HEMA
【0137】
手順:
恒温滴下漏斗を介してパートIIを250mLガラス反応器中のパートIに滴下し、それらの成分をDispermatにより11000rpmで室温において1時間混合した。250mLガラス反応器を60℃に加熱し、加熱を30分間保持した。次いで、パートIIIを滴下し、30分間分散した。その後、2−HEMAを加え、混合物を室温に冷却した。最後に真空を付与(max.)し、脱気を最高1時間行った。
【0138】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0139】
実施例2(t37):Krasol 3000、11000rpm
以下の変更を除いて、実施例1のとおりであった。
Krasol LBH 3000、M=2650g/mol、OH基:0.737mmol/g。
【0140】
パートII:ジオール混合物
14.2650gのKrasol LBH 3000、0.5348gのn−ブタンジオール及び11.2080gのPOEMAを50℃に加熱した。
【0141】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0142】
実施例3(t37):Krasol 2000、5000rpm
以下の変更を除いて、実施例1のとおりであった。
Krasol LBH 3000、M=2160g/mol、OH基:0.887mmol/g。
Dispermatは5000rpm。
【0143】
パートII:ジオール混合物
11.8527gのKrasol LBH 2000、0.5348gのn−ブタンジオール及び11.2080gのPOEMAを50℃に加熱した。
【0144】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0145】
実施例4(t37):Krasol 2000、11000rpm
以下の変更を除いて、実施例1のとおりであった。
Krasol LBH 2000、M=2160g/mol、OH基:0.887mmol/g。
【0146】
以下の変更を除いて、手順は実施例3のとおりであった。
Dispermatは11000rpm。
【0147】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0148】
実施例5(t34)
化学物質:
ラウリン酸ジブチルスズ
メタクリル酸フェノキシエチル
Vestanat IPDI
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
ポリテトラヒドロフラン2000
アルゴン
【0149】
パートI:27.8466gのPTHF200及び16.20gのPOEMAをT=60℃で、10000rpmにおいてt=120分にわたり撹拌した。
【0150】
パートII:5.4947gのVestanat IPDI及び16.00gのPOEMAを、滴下漏斗(アルゴン下)を介してT=50℃において加えた。
【0151】
パートIII:0.0367gのDBTDLを加え、混合物をt=60分にわたって撹拌した。
【0152】
パートIV:2.80gの2−HEMAを加え、混合物を均質になるまで撹拌した。
【0153】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0154】
実施例6(t33)
化学物質:
トルエン
1Mの塩酸
ブロモクレゾールグリーン
イソプロパノール
2−ヒドロキシエチレンメタクリレート97%
ラウリン酸ジブチルスズ
POEMA
1,4−ブタンジオール
Vestanat TMDI
Krasol LBH 2000
ジエチルアミン
【0155】
パートI:28.399gのKrasol 2000及び0.611gのn−ブタンジオールをT=110℃で、10000rpmにおいてt=30分間にわたり撹拌した。
【0156】
パートII:次いで10.82gのPOEMAを加えた。混合物をT=60℃に冷却した。次いで0.0096gのDBTDLを加えた。
【0157】
パートIII:次いで4.22gのVestanat TMDI及び20.65gのPOEMAを、t=30分間にわたって滴下漏斗を介して加えた。
【0158】
パートIV:混合物をさらにt=30分間撹拌した。最後にt=90分間にわたって撹拌しながら0.054gの2−HEMAを加えた。
【0159】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0160】
実施例7(t32)
パートI:20.77gのPOEMA及び2.02gのVestanat IPDIをT=60℃においてt=60分間にわたり撹拌した。
【0161】
パートII:次いで0.0268gのDBTDLを加えた。
【0162】
パートIII:次いで27.13gのBaycoll 5035及び10.12gのPOEMAを、T=50℃で、11000rpmにおいてt=30分間にわたり滴下漏斗を介して加えた。
【0163】
パートIV:最後に0.072gの2−HEMAをt=30分間にわたり加えた。
【0164】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0165】
実施例8(t27)
パートI:27.1311gのKrasol LBH 5000、0.526gのBD−1000、0.07560gのbis−MPA、0.0584gのAMP−90、及び15.54gのPOEMAをT=80℃で1時間混合した。
【0166】
パートII:20分後、1.72gのVestanat IPDI及び15.22gのPOEMAを、12000rpmで撹拌しながら滴下した。
【0167】
パートIII:その後0.0184gのDBTDLを加えた。
【0168】
パートIV:最後に0.054gのHEMAを加えた。
【0169】
分散物は室温で2ヶ月にわたり安定したままであった。
【0170】
3.透明性/透過率
a)液体試料
THF中、300〜1100nmのスペクトル領域において、スペクトルを記録することにより、透過率を測定した。希釈していない試料は、完全に透明であったが、測定系の感度のため、直接測定には適していなかった。表1に示す量を、それぞれにおいて、2000μLのTHFで補足し、Agilent 8453UV/VIS分光計を用いる測定に供した。
【表1】

【0171】
スペクトルを添付の図1に示す。分かりやすくするため、400、600、及び800nmでの吸光度の値を表2に示す。
【表2】

【0172】
b)硬化された試料
試料調製の手順:2つのスライドガラスをエタノールで洗浄した。スライドガラスの2つの端部を約15mmまで覆うようアルミニウムフィルム(0.03mm)を切断した。厚みを厚さ計によって測定した。その後、切断したフィルムを、スライドガラスの両側の端部に置いた。化学天秤上、アルミニウムボートにおいて0.5003g(100%)の試料(実施例によるそれぞれの分散物)を秤量し、そして0.0252g(5.03%)の過酸化ジベンゾイルを加えた。ガラスロッドを用いて、それらの成分を入念に混合した。秤量ボートにおいて、0.0041g(0.82%)のN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジンを秤量し、同様にして入念に混ぜ合わせた。混合物がゆっくり粘性になってきたら、ガラスロッドを用いてそれを慎重にスライドガラスに塗布し、もう一つのスライドガラスで覆った。樹脂が硬化するまで、2つのスライドガラスを互いに押圧した。
【0173】
使用した樹脂、促進剤(ジエチロール−p−トルイジン)及び過酸化ジベンゾイル粉末の量を表3にまとめた。
【表3】

【0174】
硬化された試料について得られたスペクトルを添付の図2に示す。分かりやすくするため、選択した波長についての吸光度の値を表4に示す。
【表4】

【0175】
吸光度の値は、0.03〜最高0.7単位である。最高0.2単位までの範囲が特に好ましい。
【0176】
上記試料において、測定の過程でガラスビーズをスペーサーとして使用したため、散乱光が生じた。測定の際にガラスビーズの試料スペーサーを使用しなければ、表4Aに示すように、さらに良い値を得ることができる。
【表4A】

【0177】
4.粘度
粘度を調べるため、試料をそのままの形で、Bohlin CVOレオメーターによるずり速度範囲2.3〜100s−1でのプレート/コーンテストエレメントを用いた測定に供した。コーンの形態は4°/40mm、ずり速度勾配は100であった。温度は25℃〜26℃であった。その結果を添付の図3に示す。分かりやすくするため、40、60、80、及び100s−1での粘度を表5で比較した。
【表5】

【0178】
5.ISO 180/Uに従う衝撃強度試験
試験した材料の特定
試料1:実施例1(Krasol 5000、11000rpm)
試料2:実施例2(Krasol 3000、11000rpm)
試料3:実施例3(Krasol 2000、5000rpm)
試料4:実施例4(Krasol 2000、11000rpm)
試料5:実施例5
試料6:実施例6
試料7:比較例−POEMA
【0179】
特性の説明:試料は、l=80±2mmの長さを有し、ノッチなしであった。その幅はw=6.0±0.2mm、その厚みはh=4.0±0.2mmであった。
【0180】
試験装置:使用した試験装置は、Zorn Stendal PSW4J振り子衝撃装置であった。試料の中心に衝突させる振り子ハンマーの速度は2.9m/sであった。振り子の公称エネルギーは1ジュールであった。
【0181】
試料の調製:調製のため、内側にPTFAフィルムを有するアルミニウム型を使用した。それは、対向する両側をガラスプレートで閉じたり開いたりすることができるものである。あらかじめ80℃に加熱した乾燥キャビネットにおいて、WTBバインダーFD、型に導入した材料をT=80℃で2時間重合させた。その後、得られた試料を型から取り出し、乾燥キャビネットにおいてT=120℃で20時間硬化させた。POEMAの試料の場合、重合のためT=70℃の加熱温度を選択した。重合のため、型に充填する前に、材料を0.2%のAIBN(アゾイソブチロニトリル)と合わせ、それらの成分を混合した。特性を表6にまとめている。
【表6】

【0182】
試験した試料の数は1であった。
【0183】
前処理条件:標準条件DIN 50014−23/50−2(23℃、50%RH)。
【0184】
観察された破壊の種類:POEMAは完全な破壊(C)として不合格であった。これに対し、試料5及び6では、部分的な破壊(P)のみが観察された。測定結果を表7に示す。
衝撃強度
【表7】

ここでEは試料の破壊で消費されたジュールエネルギーであり、aiUは衝撃強度である。
【0185】
6.粒子サイズ
樹脂試料をメタクリル酸メチルで1:10に希釈し、均質化のため2分間撹拌した。ガラスピペットを用いて、試料をガラスキュベット(充填レベル:10〜15mm)に移し、Malvernナノサイザーに載置した。2〜3分間の調節段階の後、装置のオートマチックモードで測定を行った。その結果を以下の表8にまとめる。
【表8】

【0186】
7.引っ張り剪断強度
DIN EN 1465に従って接着試験を行った。試験は、Hegewald & Peschker Mess−und Prueftechnik GmbHによるInspekt 20 desk引っ張り試験機を用いて行った。
【0187】
あらかじめ紙やすりで研磨した25×100×1.5mmのサイズのスチール、アルミニウム、及び木材の被着材上で、テストプレートを使用して以下の表8Aのように試料を硬化させた。
【表8A】

N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
過酸化ジベンゾイル
【0188】
15mm/分の引っ張り速度を使用に使用した。
【0189】
使用した比較材料は、純粋なメタクリル酸フェニルオキシエチル(POEMA)と、3種類の市販のアクリレート接着剤であった。
引っ張り剪断強度
【表9】

n.d.=検出されず
Sichel Werke GmbH(Henkel)によるSico Met 8400(登録商標)(一成分型シアナクリレート接着剤)
Pattex KgaAによるPattex Blitz Gel(登録商標)
Agomer GmbHによるAgometF252(登録商標)(アクリレートをベースとする構造用接着剤(硬化剤入り)で、メタクリル酸メチル及び過酸化ジベンゾイル(硬化剤)を含有する)
【0190】
特に注目すべきは、実施例5(t−34)及び実施例1(t−37)による分散物を用いて得られた結果である。同等の基材上で、これらは、POEMA(純粋な反応性希釈剤)よりも、はるかに高い接着強度を有している。実施例2による分散物は、少なくともスチール及びアルミニウム上で、POEMAと同等の結果をもたらしている。
【0191】
最良の結果は、実施例1による分散物を用いて得られた。この場合、引っ張り剪断強度は、スチール上で10.9MPaであった。比較すると、この試料は、比較例4による最も良い市販品の接着強度(14.9MPa)の70%以上を達成した。
【0192】
実施例及び特性評価の結果のすべてを、再度一覧にして以下の表10A−10Dに示す。
試験一覧:
【表10A】

略語の説明についてはセクション1−化学物質を参照。
試験一覧の続き:
【表10B】

略語の説明についてはセクション1−化学物質を参照。
試験一覧の続き:
【表10C】

略語の説明についてはセクション1−化学物質を参照。
試験一覧の続き:
【表10D】

略語の説明についてはセクション1−化学物質を参照。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】UVスペクトルの比較
【図2】UVスペクトルの比較(固体)
【図3】粘度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性希釈剤中にポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む非水系透明分散物であって、
前記非水系透明分散物は、前記反応性希釈剤中で、ポリイソシアネートを、少なくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させることにより得られるものであり、
前記ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が40nm未満の平均直径を有することを特徴とする、反応性希釈剤中にポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む非水系透明分散物。
【請求項2】
前記ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が20nm未満の平均直径を有することを特徴とする請求項1記載の分散物。
【請求項3】
前記ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子が10nm未満の平均直径を有することを特徴とする請求項1記載の分散物。
【請求項4】
前記分散物の総重量に対して、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子の含量が50〜70重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の分散物。
【請求項5】
前記反応性希釈剤が(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の分散物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートがメタクリル酸メチル及びメタクリル酸2−フェノキシエチルから選択されることを特徴とする請求項5記載の分散物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートから選択されることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の分散物。
【請求項8】
前記ポリオールからの水酸基に対するイソシアネート基のモル比が1.03〜1.7であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の分散物。
【請求項9】
前記ポリオールが500g/molを超え5000g/molまでの重量平均分子量を有する高分子量ポリオールであることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の分散物。
【請求項10】
前記高分子量ポリオールが、ポリブタジエンジオール、ポリテトラヒドロフラン、並びにプロピレンオキシド、エチレンオキシド及びグリセロールから形成される3官能ポリプロピレンエーテルポリオールから選択されることを特徴とする請求項9記載の分散物。
【請求項11】
前記高分子量ポリオールとともに、50〜500g/molのモル質量を有する低分子量ポリオールをさらに用いて得られるものである、請求項9又は10記載の分散物。
【請求項12】
前記低分子量ポリオールが1,4−ブタンジオール及び1,3−プロパンジオールから選択されることを特徴とする請求項11記載の分散物。
【請求項13】
前記高分子量ポリオールのOH基に対する前記低分子量ポリオールのOH基のモル比が0.3〜1.2であることを特徴とする請求項11又は12記載の分散物。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか記載のポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む分散物の製造方法であって、
前記分散物の製造方法は、撹拌容器において、反応性希釈剤中、ポリイソシアネートを、少なくとも一種のポリオール及び求核性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させるものであり、
少なくとも5m/sの撹拌子周速度にて、容器直径に対する撹拌子直径の比を0.3〜0.80とし、かつ前記容器の底面から前記撹拌子までの距離を前記撹拌子直径の0.25〜0.5倍として前記反応を行うことを特徴とする、ポリウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む分散物の製造方法。
【請求項15】
前記撹拌子周速度が少なくとも12m/sであることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
分散ディスクを撹拌子として用いることを特徴とする請求項14又は15記載の製造方法。
【請求項17】
第3級アミン、及び/又は有機スズ化合物、より具体的にはジラウリン酸ジブチルスズから選択される触媒の存在下で行うことを特徴とする請求項14〜16いずれか記載の製造方法。
【請求項18】
分散物をベースとする接着剤としての、又は分散物をベースとする接着剤成分としての請求項1〜13いずれか記載の分散物の使用方法。
【請求項19】
鋳造ガラスとしての、又は鋳造ガラス成分としての請求項1〜13いずれか一項記載の分散物の使用方法。
【請求項20】
成形材料、接着剤、及び鋳造ガラスにおける耐衝撃性改良剤としての、請求項1〜13いずれか記載の分散物の使用。
【請求項21】
請求項1〜13いずれか記載の分散物を硬化することにより得られる成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−503159(P2009−503159A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523176(P2008−523176)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006886
【国際公開番号】WO2007/012412
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508024371)
【Fターム(参考)】